最終更新日 2019年1月5日
.
◾️ミックスによる心房中隔欠損症(略称ASD)の手術とは?
.
心房中隔欠損症を閉鎖する時に、骨も切らず、小さい目立たない傷で行う、そういう手術を指します。
.
心房中隔欠損症(略称ASD)は以前から右開胸による、創の目立ちにくい手術が行われて来ました(下図の真ん中)。
一般の心臓手術に使う胸骨正中切開(下図の左端)は手技もやりやすく、
複雑な病変にも臨機応変に対応しやすく、使い道はあるのですが、
心房中隔欠損症 (ASD)を治すだけのために胸骨を切ると、
治るまでに2-3か月かかるため、もう少し小さな負担でできないかと考えられてきました。
.
◾️ミックスの心房中隔欠損症の手術の特長は?
.
ミックス(MICS、小切開低侵襲手術、代表例がポートアクセス)は
従来の右開胸による心房中隔欠損症の手術をさらに進化させました(左図の右端)。
一部の施設ではより小さな皮膚の創で、しかし上行大動脈を遮断することで従来よりも優れた心筋保護法で手術ができるようになりました。
.
心房中隔欠損症ではアンプラッツカテーテルによる治療法があり、
これでうまく穴が閉じられる場合は良いのですが、
しばしばこの治療法ではうまく行かないことがあります。中には死亡例の報告さえ見られます。
そんなとき、ミックスによる心房中隔欠損症閉鎖術は
患者さんの苦痛や負担が少なく、
早い社会復帰、仕事復帰が図れるため、
そして結果的に創が外から見えにくく、
きれいな仕上がりになるため喜ばれています。
.
費用もこれまでの心臓手術と同様、追加出費はゼロで、医療費のほとんどが保険から出されます。
この点で高額な自己負担が必要なダビンチ・ロボット手術よりも有利です。患者さんの声やブログ記事を参照ください。
.
◾️ミックスの実際は?
.
上の写真は心房中隔欠損症と慢性心房細動に対して
心房中隔パッチ閉鎖術と両心房メイズ手術をミックスで行った患者さんの、術後6か月のものです。
.
.
この患者さんはLSH法への移行期の時期の方で、サテライト創が少なくなって来ています。
傷跡は時間とともにさらに薄く見えにくくなって行きます。
.
私たちが長年ちからを入れて来たメイズ手術(心房細動を治せます)や
同時に比較的短時間でできます。
.
心房中隔欠損症の患者さんにはお若い方も多いため、
ミックス手術(MICS)とくにポートアクセスでの上記の特長が一層お役に立っているようです。
こうした治療のラインナップができると、
患者さんにとって一番適切な、極力負担の小さな手術や治療が得られることになり、
大変良いことと思います。
.
メモ: ミックスとくにポートアクセスでの心房中隔欠損症の根治術にはどのくらい費用がかかるのでしょうかと聞かれることがあります。
そのお答えは、通常の心臓手術と同様で、患者さんの自己負担は約7万5千円プラス食費などの雑費で、あとは保険から高額医療費として出されます。
患者さんの自己負担額として県や収入にもよりますが、およそ15万円前後です。
.
ミックスではロボット手術とくらべて追加の自己負担がなく、しかし出来上がりの美しさに大差がない、というよりむしろサテライト創が少ないため有利です。
.
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
成人先天性心疾患のトップページにもどる
.
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。