お便り110: ポートアクセスで心房中隔欠損症や心房細動などを完治された患者さん

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心房中隔欠損症(略称ASD)は先天性心疾患のなかでは一番多いもののひとつです。

多くはこどものころに検診などで発見され、こどものうちに手術を受けていただくのですが、検診でわかりにくいときなどにはそのままとなり、成人になってから心臓が大きくなったり心房細動などの不整脈がでたり三尖弁閉鎖不全症171107243を併発して心不全になってから病院に来られることも少なくありません。

以下の患者さんは岐阜県からかんさいハートセンターまでお越し下さいました。

長年の無理が影響してすでに慢性心房細動となり、心房中隔欠損症の血液の漏れのため右心室が巨大化し三尖弁の逆流も強くなっておられました。軽い運動でも息切れが出るほど心不全になっておられました。

手術ではミックス法・ポートアクセス法で骨も切らず、小さい創で上記の3つの病気をすべて一回で治しました。

お元気なお顔を外来で拝見するのが楽しみになっています。

157563164以下はその患者さんのブログからの引用です。ブログそのものも

さわさわ と・・・
 心臓手術をポートアクセスでしました 
   手術のこと・・日常の思いなど記します

というタイトルでさわやかで親しみやすいものです。心臓手術をご検討中の患者さんには参考になれば幸いです。❤こちらをご覧ください

なおここでは手術前日、当日、退院日、半年後、一年後の記事をUpさせて戴きました。それ以外はブログのほうをご覧ください。

***********患者さんのブログから**************

こんにちは!

このブログに来ていただきましてありがとうございます。
心臓手術のことだけではなく日常の事も織り交ぜて更新しています。

2014年1月 かんさいハートセンターで心房中隔欠損症、三尖弁形成、メイズ手術をしました。
その時私が感じたことを残しておきたいと思いブログを始めました。

心臓の手術はどうして怖いのでしょう?

特別な場所・・・
よくわからない事・・・

得体のしれないものは怖いです。
だったら「知ること」から始めましょう。
自分の事、心臓の事を知ることで、きっと恐怖は少なくなります。
手術や治療に前向きになれると思います。

心臓はほっておいてもよくなることはありません・・・

 

******* 手術前日の記事です ******

2014年07月**日(*)

手術日前日は麻酔科の先生やICUの看護師さん、

リハビリの担当者などが次々と来て説明を聞きました。

手術室やICUも見せていただきました。

(やっぱり明日手術なんだ・・・)

まだピンと来ていないのか、

特に不安もなく落ち着いていました。

夕方18時頃から先生のお話(インフォームド・コンセント)があるということで主人と娘が少し早めにやってきました。


手術に対する不安はありませんでした。

長年不安を抱えてきて、

やっと手術が受けられるのだから、安心していました。

それも米田先生の手術です。

心房をゴアテックスで塞ぎ、

三尖弁の形成をする。

僧房弁の状態が悪いようなら治すが、

問題なければそのまま。

心房細動はメイズ手術で治す。

これをポートアクセスで、

右の胸を少し切って行うということでした。


「右胸から心臓までの距離が遠いですが、見づらくありませんか?」
という私のばかげた質問に

「今ここで見ている20センチくらいの距離を見るのと変わりません」

と説明いただきました。

手術は15時頃に終わると言われ、

3時間前後かと思っていた私は、少しびっくりしました。

危険性なども説明いただきサインをして終わりました。


明日の手術の時間を確認して、主人と娘は帰っていきました。


******* 手術当日の記事です ******

2014年07月**日(*)
いつもと何も変わらない朝

起きると排便があったので
浣腸はしませんでした。(よかった!!)

7時頃にはシャワーを使いました。
ぜ~んぶきれいに洗って、
まな板の上のコイ?の心境でしょうか。
前日におへそのゴマもチェックされましたし・・

特に手術前に特別なことがあるわけではなかったので
落ち着いていられました。

他の病院では、剃毛をするという話を聞きましたが、
何も言われませんでした。
実際は麻酔が効いてから、

鼠蹊部近くを少しカットされていました。

家族も到着し後は時間が来るのを待つだけ。

午前9時半
みんなで歩いて6階の手術室へ。

そこで家族とはお別れ、
二度と会えなくなるというような思いは一切ありません。
身内のほうが、私よりも心配していたと思います。
ちらっと見た主人の姿が、心細げに見えたのでした。

扉を入ると、キャップ(白いふわふわのやつ)をかぶせられ

狭い手術台に自分で乗りました。
自分でもわからないのですが、わくわくするような気分もあり

少しも怖くはありませんでした。

すぐに麻酔が効いてあとは全く覚えていません。

手術は17時になっても終わらないと

娘が気をもんでいたというので、結構長引いたようでした。
その後主人は、先生から図を描いてもらい詳しい手術の説明があったということです。

ICUに運ばれた後で家族が面会したというのですが、
これも全く覚えていません。

のちにリハビリの泉さんに聞いた話ですが、

寝かされている私を見て主人が一言

「お前、サイボーグみたいだなぁ」と言ったそうです。

そういえば手術前に

「術後はたくさんの管が10本くらい体につながっているので、驚かないでください。」

と言われました。

私はまだ意識が戻っていませんから何も知らなかったことですが。

(写真を頼んでおけばよかった~)

 
気が付いたのはICU

誰かの呼ぶ声が聞こえてふわふわとぐるぐるとした感じで
それでも返事が出来ないのがもどかしかった。

一生懸命目を開けようとしていた気がします。

先生の腕が目に入りました。

やっと目が覚めた。

「終わったんだ!」

でも喉の奥がヘン

人工呼吸器?

何かが喉の奥にあたって吐きそう・・

すぐに外してもらえたのですが

今度は喉が渇いて仕方ありません。


看護師さんに頂いた水が「おっいっしい~!!」

お水ってこんなにおいしかったんだ!

その後も氷をいただき喉の渇きを潤しました。

 

******* 退院時の記事です *******


2014年07月**日(*) Bara

2日後

元の4人部屋に戻りました。

手術中に部屋の人数は私の他1人になっていました。

私より10歳ほど年上のその方は

手術は終わって人工透析が必要になり、

いまだ退院のめどが立たないようでした。

 

私はリハビリをがんばって早く回復するしかありません。
まだ足元がふらついていました。

少しふらつきながら点滴をぶら下げて、
両側から支えられて病室の廊下を歩きます。

 

廊下をどこまで歩いたかで

歩行距離を計算します。

この後毎日何メートル歩いたか記録するようになりました。

 

夜中に痰が絡むので「クッ!カッ!」と言って

うるさいんだろうな~(ごめんなさい^_^;)

ポータブルトイレの音もごめんなさい!

そのたびに心の中で謝っていました。

それが大部屋のつらいところですね~

反面、いろいろな話ができるのがいいところ。

気分も明るくいられます。

 

毎朝採血と体重測定があります。
血液検査によって薬の種類や量を決めていたようです。

体重は体に水が溜まっていないかむくみを知るためです。

前日より1キロ多く数字が出たことがあって

測り直したことがありました。

結局機械が狂っていただけでしたが・・

 

切ってあるのは右胸の下と右足の付け根。
回診に来た増山先生に胸は何センチ切ってあるかと尋ねると
「6センチ」との事
ちゃんと測って切ったと言われました。

 

足の付け根は人工心肺のために4~5センチ切ってありました。

その他に左首にやや大き目なドレンの穴、

右胸の上部脇の下あたりに穴が一つ、

右の鎖骨あたりに跡があります。

 

手術直後から創はほとんど痛みません。
手術後に痛かったのは、
手術の創ではなく右肩から背中にかけてでした。
ポートアクセスの際、

右手を挙げる体勢で手術するからだそうです。

しばらくの間、看護師さんに背中に湿布を張ってもらいました。

 

この頃には腰痛もずいぶんよくなっていました。

背中の痛みのほうが気になって仕方ありませんでした。

 

また、深呼吸をすると、胸が(肺が)痛い。
これは手術でしぼんだ肺が元通りになるまでは仕方ないそうです。
「早く肺を元に戻すために深呼吸をしてください。」と言われました。

5日後には自転車のマシンをこいで汗だくになり、
それから毎日負荷を掛けながら20分。

リハビリのマシンに心電図のモニターがついているのですが、

規則正しいリズムで、どんなに息がはずんでも乱れることがない。

・・・感激でした。


この頃にはシャワーも使えるようになっていました。

気持ちがいいと思えるのは幸せなことです。

 

術後米田先生が病室を訪ねてきて

「肋間神経ブロックをしてあるから痛みはないはずですが、

どうですか?心臓の下の方もしっかりメイズ手術しておきましたから」
と言って下さいました。

本当に痛みがないのです。

神経の麻痺は2~3か月で戻ってくるようです。

しびれているような感覚があるだけです。

この後ず~~っとぴりぴりとした感覚は半年ほど続きました。

 

暇なときはリハビリを兼ねて、院内を散歩していました。
この病院は院内にローソンがあり病衣のままで買い物に行けます。
文庫本も少しあり、2冊ほど買って読みました。
浅田次郎「鉄道員・ぽっぽや」良かったです。

ヨーグルトが食べたくなって買いに行きました。

コインランドリーの洗剤も買ってきました。

 

このころ退院したら
絶対に食べたかったもの「激辛のラーメン」!!

今から思うとあっという間でした。

いつも優しく接していただいた看護師さんたち

その仕事の大変さを改めて知り本当にありがたく思いました。


******* 術後半年のブログ記事です ********


2014年07月**日(*) Hana_1

 

地元の循環器の先生が米田先生のお知り合いということで、

逆に紹介をいただき最近は地元で薬をもらっています。

 5月に奈良に行ったときは、
旅行気分でひとり電車に乗りました。
あの1月の入院の時とは全く違った気持ちで奈良へ行くのが楽しみでした。

後は1年後に来て下さいと言われ、
帰り際「気を付けてお帰り下さい」
との先生のやさしい言葉に感激して帰ってきました。

 順調に回復しているようです。

 しっかりとメイズ手術をしていただいたせいか、
不整脈も起きていません。

 規則正しい脈拍に安心する毎日です。

 頭痛も以前と比べると随分減ってきました。

 毎日のウォーキングもなるべく欠かさないように、

 姿勢と呼吸を意識して速歩だったり、

 少し走ってみたりしながら行っています。


田舎なので、周りの景色の美しさに改めて感動しています。

 筋力がつくようなストレッチも時間があればするようにしました。

 ただ、私の性格からいって
なにごともほどほどに出来ないこともあり、

 それがストレスにならないようにしなくては

 ・・と思っています。


最近、地元の循環器の先生に言われたことは

 「せっかく米田先生に手術してもらったのだから・・」

 という言葉でした。

 少しの動悸にも「心房細動?」と不安になり

 体のことばかり心配していた私に

 そのとき先生がおっしゃったのです。


以前よりも確実によくなっているのに心配ばかりして、

 毎日を楽しめないようでは手術をした意味がないのではないか

 ・・というようなニュアンスでした。


何のために手術をしたのか。
これからの人生を楽しむためにしたのではなかったか。・・・

 体をいたわりながらも充実した楽しい毎日を送ることに意味があると思います。

 半年にしてあらためて気づきました。

「せっかく米田先生に手術してもらったのだから・・・」

 ・・ですね!

 
自分の体に起きていることが不安だったり
信じたくないと思うのは仕方のないことだと思います。

 
それでも自分で行動を起こすことが
少しでも良くなる方向に向かうとしたら、
いろいろな方法を試してみるべきだと思います。

 私は迷った末に米田先生にメールを送ったことですべてが始まりました。
こんなに穏やかな気持ちで心臓の手術を受けられるとは思ってもいませんでした。
そして今、本当にありがたく毎日が幸せです。

 皆様に感謝です。
この手術で、一旦は自分の心臓が止まってしまったにもかかわらず、こうして生きていける。

 そのために尽力される医療の立場の方々には
本当に頭の下がる思いです。

 今まで気にしなかった自分の心臓が、とても気になります。

 私は、この先もきっと心臓に関しては、

 興味を持たないではいられないでしょう。

 ただ、心配はしないで暮らしていきたいと思います。

 最善を尽くしていただいたのだから、
これから先は何か起きた時に考えればいいのではないかと。

 30年も待ち続けた手術がやっと終わったのです。

 
****** 術後1年弱の記事です *******


2014年10月**日(*) Hamanasu
昨年の今頃は悩んでいた。


手術が必要なのか

本当に手術をした方がいいのか
このままではいけないのか
どこに相談するか
どこの病院にするか

わからないことだらけで・・・

それでも、30年来の答えを出さなければいけないのだろうとは思っていた。

「手術」という選択

確かに苦しい胸をそのままにしておくのはよくないだろうという気持ちはあったが、

自分が心臓手術を受けるという実感がわかなかった。

思いっきり脅かされて「長嶋さんみたいになりますよ~!」

今でもその言葉はドキッとする。

ありがたいと言えばありがたい
その言葉で踏ん切りがついたのだから・・・

そして、たった一つ

「ハートセンター」の心臓血管外科医を頼りに
少しづつ気持ちを固めていく。

心房中隔欠損症はポートアクセスで手術出来る。

心房細動はメイズ手術で治る。

名古屋で手術を受けたかったという気持ち

新しい「かんさいハートセンター」への不安

 

「心臓」という場所を切り開くことへの「安心」を手に入れたいと思っていた。

祈るような気持ちで米田先生にメールを送ったのを覚えている。

先生の返事をいただいてからはすべてが早く回りだしたような気がする。
気持ちが固まった以上、自分がどこまで納得して手術に挑めるかだけだった。
ただひたすら、「安心」を手に入れたかった。

そして今

確実に一年前とは違う「私」がいる。

胸が楽になっただけではない。
大きく変わった気持ちも感じている。

今までの人生への反省もあり
感謝もあり
今後の希望も大きくなった。
いい人生だったと最後に思いたい。

手術に対する「安心」は手に入れたものの

今後に対する「安心」は誰も手に入れられないもの・だと知った。

 

**********************

その後、手術から1年あまりたって、以下の記事がUpされました。

振り返って総括する内容ですのでここに転載させて頂きます。さらに詳しくはこのブログを直接見られると良いでしょう。

 

********1年あまり経っての記事******

 


2015年01月08日(木)
Haibisu

 

ちょうど1年

 

新しく心臓が動き始めてから・・・

 

 

あっという間の1年でした。

 

 

体だけではなく、気持ちまで大きく私を変えてくれた心臓手術でした。

 

 

手術をして本当によかったと思っています。

 

 

現在の状態はずいぶん良くなっていると思います。
手術をしたことを忘れるくらいに・・・

 

走っても苦しいことはありませんし、体力に自信もついてきました。

 

時々感じる「ドキドキ」感はあります。
咳も相変わらず出ますが、
横になった時というわけではないので少しあきらめています。

 

 

 

 

現在の創の状態です。

 

わきに一つの丸い傷

 

斜めに乳房の下
・・・とてもきれいです。

 

・・・痛みもありません。
創自体の痛みはないのですが、胸がチクン、ズキン、ということはあります

 

 

 

私の受けたポートアクセスについてまとめてみました。

 


 

心臓手術の一つの方法としてポートアクセスがあります。

 

MICS(ミックス:minimally invasive cardiac surgery)手術です。
以前からおこなわれていた胸の真ん中で縦に大きく切開し胸骨を切る胸骨正中切開に対して、切開が小さく低侵襲(体への負担が低い)という利点があります。

 


私が20代で心臓手術を考えた時に気になるのは胸の傷でした。
当時の手術は(30年ほど前)胸の真ん中を大きく切る正中切開が当たり前でした。

 

その後、心房中隔欠損症ではアンプラッツァーというカテーテルでの治療が出来るようになりましたから、胸を切らないでも済むわけです。
但し、心臓の欠損(穴)の状態にもよるようですし
私には若干の金属アレルギーがあることも心配でした。

 

 


そこで、ロボット手術に関心を持ちました。
金沢大学の渡辺剛先生(現:ニューハート・ワタナベ国際病院)が行っていらっしゃる「ダヴィンチ手術」

 

創がないということは魅力でした。
(創はないが穴の痕がいくつか残るということです)

 

 


しかし一番問題なのはお金がかかる事です。
保険がきかないなんて・・・
実費ということですよね。「○百万」
とてもダヴィンチ手術には踏み切れませんでした。

 

 


それと、私の場合心房細動がありました。
心房中隔欠損症の手術だけなら割と簡単なもののようですが、
心房細動があるということであれば、
メイズ手術をやっていただきたいと思っていました。

 

 

それもポートアクセスで・・・
そこで、メイズ手術もお願いするのであれば米田先生かと思いました。

 

 


実際に検査をしたら三尖弁閉鎖不全もありました。
心房中隔欠損症で穴をふさぐだけでは済まされない状態です。
メイズ手術と三尖弁形成も同時に施術していただきました。

 

 


それらを含めての手術という点では、
ポートアクセスは条件を満たしていたと思います。
6センチの創と1個の穴が残りましたが、

 

結果的によかったと思っています。
今見ても大変きれいで目立ちません。

 

 


胸に傷が残ることで心臓の手術を躊躇している人がいるかもしれません。
そうであれば、ぜひポートアクセスがいいと思います。
「創は勲章」とは思うものの、小さいに越したことはありません。

 

 

痛みの面でも、術後の回復の面でも、
本当に心臓の手術をしたのかと思うこともあります。

 


ポートアクセスも、もしかしたらいろいろなやり方があるのかもしれませんが、私にしていただいたものは全く痛みがありません。

右肋骨の間(乳房の下)を6センチほど斜めに骨に沿って切ってあります。
その際に肋間神経ブロックがしてあるということで痛みがないようです。
これはほんとにうれしいことです。
術後の痛みは随分なストレスになると思うからです。

 

 


病気の状態によってはポートアクセスが出来ない場合もあるようですが、
心房中隔欠損症、僧房弁置換術、僧房弁形成術 大動脈弁置換術、大動脈弁形成術、三尖弁形成術、メイズ手術などで行われるようです。

 


ポートアクセスは視野が狭いこともあり技術がいるようです
この手術を多くこなしているベテランの医師を選んでください
たくさんの経験が手術の質を上げるものだと信じています。

 

 

 

利点
①傷が小さい
②痛みがない
③社会復帰が早い
④保険適用

 

①については傷が右胸乳房に沿って下部を斜めに6センチ
胸骨正中切開と比べて傷は目立たず、温泉などでも気になりません。
正面から見ても傷痕は見えません。
この手術は右胸から心臓へ直接アプローチします。
あくまでも開胸手術で、胸腔鏡手術ではありませんでした。
小さい切開で長めの特殊な器具を使っての手術になります。

 

 


②痛みは全く気になりません。「痛みなし」と言ってもいいくらいです。
通常の心臓手術は胸骨を切りますが、

 

ポートアクセスは骨を切りません。肋骨の間からの手術です。
肋間神経ブロックをしているので、術後創そのものの痛みはありません。

 

 ピリピリした神経の感覚が残ります。

 

 


③骨を切らないので術後の治りが早いです。
私の場合術後10日で退院

 

 退院後10日目には自動車を運転して会社へ行きました。

 

 


④保険が適用されるので3割負担で済みます。
なおかつ高額医療制度がありますので、私は450万ほどの手術が13万強で済みました。

 

注意点


①ポートアクセスはどの病院でもやっているというわけではない。
狭い視野からのアプローチになりますから技術が必要です。

②人工心肺を右下肢の付け根にある大腿動脈につなぎます。
そのため、大腿動脈や大動脈に動脈硬化がないひとに限定される。

 

 


**********おわりに***********

素晴らしい体験談ブログをありがとうございました。  150464174

心臓手術を受ける患者さんの中でも、強い痛み症状のない病気の患者さんは将来の健康といのちをかけて、病気を勉強し理解し、克服する決心をされ実行された方々です。

私も含めて、手術は誰でもいやなものです。(私、20歳のころ、お腹の手術を受けるはめになって落ち込みと八つ当たり状態だったのを想いだします) 

それに敢然と挑戦し健康を勝ち取られたことに、あらためて敬意を表したく思います。

またその大切な手術をお任せ頂いたことを光栄に思います。

また外来でお元気なお顔を拝見するのを楽しみにしております。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り109 巨大な心房中隔欠損症などのためMICS手術を

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心房中隔欠損症(略称ASD)はそう怖くない心臓病と思われている 142991182ふしがあります。

しかしその穴が大きく、多量の血液が漏れたり、心臓や肺が壊れてくると危険なことさえあるのです。

つぎの患者さんは50代の男性で働き盛りの中、心房中隔欠損症のため心不全が発生し苦しくなって遠方から米田正始の外来へ来られました。

穴は巨大で、もれる血液が多いことから右心房や右心室も巨大、そのため三尖弁も付け根が広がり強い逆流つまり三尖弁閉鎖不全症を合併していました。心房細動などの不整脈も併発していました。

患者さんが安全に確実にお元気になれるMICSの皮膚切開よう、そして早い時期に仕事復帰ができるよう、ミックス(ポートアクセス)で手術を行いました。

巨大な穴を患者さんの自己心膜で閉鎖し、三尖弁を形成し、右心房のメイズ手術を行いました。

術後経過は不整脈などのため少し時間を要しましたが、おおむね良好で日一日と回復され、お元気に退院されました。

外来でも体力がついてきておられることがわかり、喜んでいます。

以下はその患者さんからのお便りです。これから楽しく活発に仕事や楽しみに熱中してください。

***** 患者さんからのお便り*****

 前略 IMG_0626

朝夕はずいぶんと涼しくなりました。米田先生はじめハートセンターの皆様にお

かれましては、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。

この度は私の心臓手術に関しまして本当にお世話になりありがとうございました。

当初はあまり自覚症状も無く病気に対してただ漠然と考えているだけで月日が経
つばかりでした。

しかし、二年ぐらい前から動悸、息切れなどを感じるようになり、地元病院の先生からも手術の事を促がされるようになり、不安も募ってきて、病気に対して真剣に向き合っていかねばと思うようになりました。

一年前ぐらいから自分の病気がどのようなものであるか、又、それの治療方法、手術と調べるようになり、今年の春先から手術をお願いする病院、先生を捜し始めました。

っと決めかねていた時に、七月初め、米田先生並びにかんさいハートセンターの
事を知りました。目の前が明るくなり、進むべき道が現れたと思いました。そし
て、ここでお世話になり手術受けようと思いました。

とは言っても人生で初めての入院、手術。しかも心臓という事で不安が無かったとは言えませんでした。

も先生に初めてお出会いした時から、判りやすい説明と身近に感じる先生の人柄
で、何の不安も無く手術に望む事ができました。

術後も何らかの症状が出る度に、先生方の説明や看護師さん達の暖かい対応により無事退院を迎える事ができました。

一カ月余りの入院生活を、このような環境の中で、送らせてもらったこと、本当にありがたく思っております。

今退院を終え、長い間頑張ってきてくれた心臓にお礼をいいたい気持ちで一杯です。そして、今回の手術によって、治していただいた心臓とうまく付き合っていけたらと思っております。

これからも、このハートセンターが多くの患者さんを救ってくれる事と信じております。皆様の御健康と御活躍をお祈り申し上げます。

本当にありがとうございました。

草々  

 

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お便り102: ポートアクセスで心房中隔欠損症ASDを

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心臓病のなかでも病脳期間つまり病気で悩む年月が長い病気では患者さんも手術がなかなか決心つかず、悩みつづけることがまれならずあります。生まれた時から病気をもつ先天性心疾患はその一例です。

下記 P1140323cの患者さんは心房中隔欠損症(略称ASD)のため長年の熟慮の末、私の外来へ来られました。はるばる岐阜県からお越し下さいました。

永い間待った甲斐があったねと言っていただけるよう、入魂の心臓手術をさせて戴きました。といってもいつもちからが入っており、手を抜いたことはありませんが、要するに喜んでいただけるよう、しっかり頑張りました。もちろん私だけでなくハートチーム、コメディカルや事務職の諸君を含めた拡大ハートチームの努力でした。

痛みが少なく普段の生活に早くもどれるようポートアクセス法というもっともMICSらしい方法で、心房中隔欠損症をパッチで閉鎖し、三尖弁閉鎖不全症を三尖弁形成術で手直しし、かつメイズ手術で心房細動を直しました。創は乳腺に隠れてほとんど見えないものになりました。副次創もほとんどないためお風呂に入っても心臓手術を受けたとは思われないレベルになりました。

心房中隔欠損症(ASD)は心臓手術のなかでもっとも簡単な手術と言われていますが、なぜか事故や訴訟が起こりやすい疾患とも言われています。やはりどんな病気に対してもちからのこもった入魂の手術が大切と思います。

お元気に、笑顔で退院していかれる患者さんのお姿をみて、理屈抜きでしあわせな気分になれました。私もまだ初心を忘れていないのかもしれません。

以下はその患者さんからのお便り(メール)です。またお会いしましょう。

*********患者さんからのお便り********

 

高の原中央病院 かんさいハートセンター

米田先生

 

今年1月8日に先生に手術をしていただきました岐阜県の**です。

半年が過ぎ、体調もずいぶんよくなっております。

遅くなりましたが先生をはじめ、

手術にかかわって下さった皆様に御礼が申しあげたくお便りしました。

 

手術から入院生活まで本当にお世話になりました。

心より感謝いたしております。

 

心房中隔欠損症で長年不安を抱えておりましたが、

やっと手術を受けることが出来ました。

先生にめぐりあえたこと、本当にうれしく思います。

 

心臓手術となるとやはりとても大ごとで、

なかなか踏ん切りがつかないものですが、

自分でも不思議なくらい安心して手術を迎えることが出来ました。

昨年10月、健康診断で心房細動を指摘され、やっと決断が出来ました。

 

以前から、もしも手術を受けるのなら、距離的にも近い

「名古屋ハートセンターにいらっしゃる先生」と決めていました。

それは1~2年前にTVで先生が取り上げられている番組を拝見したからです。

ネットで調べましたら、昨年10月には先生が奈良でハートセンターを

立ち上げるとのことで、すでに名古屋にいらっしゃらなかったのです。

先生のWEBを拝見しました。

素人の私にもわかりやすくいろいろな情報を知りました。

先生のお考えや、手術のことなどを読み、奈良で手術を受けると決めました。

 

自分で納得して、安心できる先生に手術をしていただくということは、

私の不安を取り除いてくれました。

周りの人には、「よく奈良まで行ったね」

「一人で遠いところは心配じゃなかった?」などと言われましたが、

私としては本当にやっと30年来の不安から解消される。

手術が受けられる。という安心感だけでした。

こんなに穏やかな気持ちで心臓の手術を受けられるなんて思ってもみませんでした。

それはたぶん、先生の手術や患者さんに対する思い、数多くの今までの症例、など

たくさんの情報を拝見させていただいたからです。

どんなに優秀な先生でも、立派な病院でも、

そこで患者さんと向き合う人としての姿が全くわからないのは不安です。

患者ではありますが、一人の人間として尊重されたいと思っています。

 

私に不安がなかったように、これから大きな決断をすることがある患者さんにも

先生のお気持ちが伝わりますようにと願っています。

そしてかんさいハートセンターがより一層充実することをお祈りいたします。

先生お体に気を付けてますますご活躍ください。

また来年には外来に参ります。

 

追伸  奈良が故郷のように感じられます。

 

7月19日

 

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執筆:米田 正始
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お便り89: 先天性僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症のエホバ信者さん

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僧帽弁閉鎖不全症なかでも先天性僧帽弁閉鎖不全症にはさまざまなタイプがあります。

他の心疾患を合併したり、病気ではなくても構造が通常とはちがうこともあります。

患者さんは40代女性で心房中隔欠損症(ASD)と先天性僧帽弁閉鎖不全症のため来院されました。


こどもの時から内蔵逆位つまりお腹の内A335_001蔵が左右反対に位置していると言われていました。

半年前から息切れや疲れなど心不全症状が強くなり、近くの総合病院では修正大血管転位症とまで言われて不安になり、米田正始の外来へ来られました。

幸いその病気はありませんでしたが、下大静脈(IVC)が欠損しており、手術にも工夫が必要な状態でした。

しかもエホバの証人の敬虔な信者さんで、絶対無輸血をご希望のため、血液を一滴も無駄にできない条件下での心臓手術でした。

いつものように先天性心疾患の専門家も含めたハートチームで検討し手術に臨みました。

手術は安全とお若い患者さんであることも考慮し、MICS法(ミックス)で小さい創で行いました。

いつもと違うばしょに脱血管を入れて人工心肺を回し、安全確保ののち心臓を止めて、中にはいりました。

心房中隔欠損症を一時的に広げて、そこから僧帽弁形成術を行いました。

心房中隔欠損症はSinus Venosusタイプというやや複雑なタイプでこれをパッチで修復しました。Sinus Venosusタイプでは上大静脈(SVC)のルート確保も大事ですが、これも問題なくクリアーしました。

手術は無輸血でゆうゆうと完了しました。

術後経過良好で、小さい不整脈はあったものの落ち着いたため術後8日目に元気に退院されました。

以下はその患者さんのご家族からの礼状です。

 

*********患者さんからのお便り**********

 

米田正始先生

拝啓


木村由紀さまメール新緑の鮮やかな緑が目に眩しく感じられる季節になっておりますが、米田先生のますますの御活躍を心よりお喜び申し上げます。

先月4月8日に米田先生に妻の手術していただきました、****と申します。
先月末に退院致しましたが、米田先生に直接感謝やお礼の言葉をお伝えできずにおりましたので、失礼ながらまずはメールをと思いお送りしております。

昨年末に妻の心臓の疾患が見つかりましたが、私たち夫婦にとってはまさに「寝耳に水」の状態で、一時は目の前が真っ暗になったことを思い出します。
 

妻が幼少期に検査を受けていたことは知っておりましたが、その後検診でひっかかったことや活動の制限なども無かったため、すっかり安心しておりました。
 

昨年の夏ごろから体調が悪くなっておりましたが、まさか心臓だとは思わず、しかも手術が必要なほどだとは夢にも考えませんでした。


ちょうどその時期、私たちはエホバの証人の聖書教育活動を増し加えるために、生活拠点などを変える予定で動き出しておりました。

 

ですので、今からという時に病気が見つかり、目標を見失ったようで、特に妻の落胆ぶりは本当に大変なものでした。

しかも無輸血での手術が必要になりますので、どんな病院で治療を受けることができるのか、という不安も同時に押し寄せておりました。

しかし米田先生のホームページを拝見し、メールをさし上げたところ、すぐに返信を頂いて診察の予定を整えていただきました。

そして診察で先生のお話をお聞きした時点で、すでに治ったかのような安心感を抱くことができました。

私たちの宗教信条をご理解していただき、「神様が応援してくださるように頑張ります」とおっしゃって頂いた時には、先生にお願いして本当に良かったと心から感じました。
そして手術も無事に成功に導いていただきました。

術後の先生からのご説明では、妻の心臓の血管の状態が非常にまれな配置になっていたようで、様々なご苦労をお掛けした中で素晴らしい手術を施していただいたことに重ねて感謝致します。

術後、一時期体調が安定せず、様々な面で皆様にご苦労を致しました。
北村先生、深谷先生、木村先生の治療や、看護師の方々の献身的で温かく優しい看護にも心より感謝しております。

なんとなくバタバタした状態での退院になってしまいましたので、きちんとお礼ができず本当に申し訳ございません。

妻は体調の回復に合わせて、改めて皆様への感謝をお伝えしたいと申しておりますので、甚だ失礼ではございますが今しばらくお待ちいただければ幸いでございます。

ただ今回不正脈が取れないまま退院になってしまいましたので、どのくらい動いていいものかまだ不安も残っております。
入院中は心電図で先生方や看護師の皆様に見守って頂いていたので安心だったのですが、今は目安になるものがありませんので、何となく不安感が取れずにおります。
また術後血圧が急激に下がったりして調子を崩した時期がありましたので、そのトラウマのようなものが少し残り、「またあんな風になったら」、という怖れも残っております。

不整脈に関しては、以前の米田先生の診察の際に、「時間があったらメイズ手術もできるかもしれない」とお聞きしておりました。
インフォームド・コンセントは、米田先生が緊急手術のため木村先生に行なっていただきましたが、その際にお聞きしたところ、「この程度の不正脈ならメイズ手術は必要ないと思います。」とおっしゃっていただきました。
退院前には木村先生からは、もし収まらない場合は「カテーテルアブレーション」という治療が今後必要になるかもしれないともお聞きしました。

入院中電気ショックも2度も行なって頂きましたが不整脈が収まりませんでしたので、今後自然と不整脈が収まる可能性はあるものなのでしょうか?
もしかしますと、今後メイズ手術を受ける必要はありますでしょうか?
また現時点で、どの程度動いてもいいのでしょうか?

妻も入院中は先生たちがいらっしゃるので何も聞かなくてもお任せしておけば大丈夫とばかり安心しきっていておりましたが、いざ退院してみますともっと先生方に教えていただく必要があったと反省しております。

1ヶ月後の検診が予定されておりますが、その時までよくわからずにいて、運動過多あるいは運動不足になってはいけないとも感じております。
このようなメールでご相談して本当に申し訳ありませんが、もし宜しければ教えていただければ本当に嬉しく思います。

せっかく米田先生の素晴らしい手術で健康な心臓にしていただきましたので、当初考えていた計画をまた再開できれば、とも願っております。

そのような目標を再び頭に思い浮かべることができるようにしてくださった米田先生に本当に感謝しております。

今後の米田先生の引き続きのご活躍を心よりお祈りしております。

敬具

平成25年5月5日

 

******************************

 

そう心配するような状態ではなかったのですが、患者さんがかなり神経質になっておられるようなので早速お返事をお書きしました。

すでにかなり落ち着いており、まもなく薬も切って行けるでしょうとお伝えしました。

それから次のお返事を頂きました。やはりコミュニケーションは大切ですね。

 

**********患者さんからのお便り続編***********

 

米田正始先生

早過ぎるご返信に驚くと共に、本当に恐縮しております。
先生のお言葉を頂いて、不安が全く無くなりました。

妻も心配が一気に吹き飛び、今朝から意欲的に動き始めております。

深夜3時ごろにご返信を頂いているようですが、先生を寝不足にさせてしまったのではないでしょうか。

入院中にしっかりお聞きしなかったこちらの不手際で、米田先生にお手数をおかけして本当に申し訳ございません。

これほどまでに患者を気遣ってくださる先生のような方に巡り合うことができて、私たち夫婦は本当に幸せ者です。

妻からの感謝は、また改めてお伝えさせていただきます。

本当にありがとうございました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例: 重い肺高血圧症を合併した心房中隔欠損症 (ASD)の高齢患者さん

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患者さんは70代後半の女性で九州南部から来られました。

心房中隔欠損症(ASD)が悪化し末期状態で、高度の肺高血圧症(血圧の70%)と三尖弁閉鎖不全症や慢性心房細動を合併し、右心不全のため肝臓も弱り血小板も減っていました。肺も弱く、肺活量は本来の半分以下の量にまで減っていました。

地元の大病院では心臓手術は危険すぎる、お薬で様子を見るしかないとのことでした。

それはすなわち、打つ手なし、ただ死を待つのみ、という意味でした。

患者さんのご子息は内科の先生で、お母様をなんとか助けようと調べ、私のところへご連絡を取ってこられました。

私の外来には九州・沖縄からもちょくちょく患者さんが来て下さいますが、それほど信頼して戴いたことを光栄に思いますし、来て良かったと言って頂けるよう、襟を正して頑張るきもちがこみあげてきます。

この患者さんの場合も何とか元気に九州へ戻って頂こうと努力しました。

まず調べた結果、肺高血圧症は重症でしたが左―右シャントが多量にあり、条件によって肺動脈圧も改善することがわかり、手術が成り立つことが判明しました。

さらに手術によって体力とくに心臓や肝臓や肺のちからは落ちていましたが、それぞれまだ回復の余地を残していること、とくに心臓のパワーアップが手術で図れればあとはうまく上昇気流に乗れると確信しました。肺については手術のあとじっくりと運動療法をやるしかないと開き直っていました。

そこで手術を行いました。

  上妻 左房メイズM弁輪周囲まず左房を開けて左心耳縫縮とメイズ手術を行いました。

左図はそのときの情景です。

心房細動対策を確実にするため左心耳を閉鎖しました。

あの天皇陛下の手術のときに左心耳を閉鎖されたのと同じコンセプトで、血栓ができたり脳梗塞になるのはぜひとも防ぎたいという方針でした。

ついで心房中隔欠損症( 上妻 ASDパッチ閉鎖ASD)をゴアテックスパッチで閉鎖しました。

右図の白いものがそのパッチです。

さらに三尖弁形成術をリングをもちいて行い、逆流がほぼゼロになるのを確認しました。

左下図はそのリングに糸をかけているところです。

上妻 TAP中後に右房のメイズ手術を行い、操作を完了しました。

右下図のように、キモになるところをしっかりと冷凍凝固して、悪い電気信号が通らないようにしました。

術後経過はまずまずで術翌日には集中治療室をでることができました。 上妻 右房メイズ Isthmus

しかし肺が悪く、すぐひしゃげて無気肺と呼ばれる状態になり、呼吸リハビリにじっくりと時間をかけ、お元気に退院されました。

あれから4年近くがたちますが、お元気に暮らしておられ、うれしいことです。

 

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ミックス(MICS)による心房中隔欠損症の手術―より早く社会復帰を 【2019年最新版】

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最終更新日 2019年1月5日

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◾️ミックスによる心房中隔欠損症(略称ASD)の手術とは?

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心房中隔欠損症を閉鎖する時に、骨も切らず、小さい目立たない傷で行う、そういう手術を指します。

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心房中隔欠損症(略称ASD)は以前から右開胸による、創の目立ちにくい手術が行われて来ました(下図の真ん中)。

一般の心臓手術に使う胸骨正中切開(下図の左端)は手技もやりやすく、

複雑な病変にも臨機応変に対応しやすく、使い道はあるのですが、

心房中隔欠損症 (ASD)を治すだけのために胸骨を切ると、

治るまでに2-3か月かかるため、もう少し小さな負担でできないかと考えられてきました。

 .

MICS_ASD

◾️ミックスの心房中隔欠損症の手術の特長は?

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ミックス(MICS、小切開低侵襲手術、代表例がポートアクセス)は

従来の右開胸による心房中隔欠損症の手術をさらに進化させました(左図の右端)。

一部の施設ではより小さな皮膚の創で、しかし上行大動脈を遮断することで従来よりも優れた心筋保護法で手術ができるようになりました。

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心房中隔欠損症ではアンプラッツカテーテルによる治療法があり、

これでうまく穴が閉じられる場合は良いのですが、

しばしばこの治療法ではうまく行かないことがあります。中には死亡例の報告さえ見られます。

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IMG_0172ASD2IMG_0171ASD2

そんなとき、ミックスによる心房中隔欠損症閉鎖術は

患者さんの苦痛や負担が少なく、

早い社会復帰、仕事復帰が図れるため、

そして結果的に創が外から見えにくく、

きれいな仕上がりになるため喜ばれています。

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費用もこれまでの心臓手術と同様、追加出費はゼロで、医療費のほとんどが保険から出されます。

この点で高額な自己負担が必要なダビンチ・ロボット手術よりも有利です。患者さんの声ブログ記事を参照ください。

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◾️ミックスの実際は?

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上の写真は心房中隔欠損症と慢性心房細動に対して

心房中隔パッチ閉鎖術と両心房メイズ手術をミックスで行った患者さんの、術後6か月のものです。

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  右の写真は別の患者さんです。2012-09-10b

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この患者さんはLSH法への移行期の時期の方で、サテライト創が少なくなって来ています。

傷跡は時間とともにさらに薄く見えにくくなって行きます。

 .

 

三尖弁2またこのLSH法でのMICSなら

私たちが長年ちからを入れて来たメイズ手術心房細動を治せます)や

三尖弁形成術三尖弁閉鎖不全症を合併したケースに)なども

同時に比較的短時間でできます。

 .

心房中隔欠損症の患Biyou_0023者さんにはお若い方も多いため、

ミックス手術(MICS)とくにポートアクセスでの上記の特長が一層お役に立っているようです。

こうした治療のラインナップができると、

患者さんにとって一番適切な、極力負担の小さな手術や治療が得られることになり、

大変良いことと思います。

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Cgre027-sメモ: ミックスとくにポートアクセスでの心房中隔欠損症の根治術にはどのくらい費用がかかるのでしょうかと聞かれることがあります。

そのお答えは、通常の心臓手術と同様で、患者さんの自己負担は約7万5千円プラス食費などの雑費で、あとは保険から高額医療費として出されます。

患者さんの自己負担額として県や収入にもよりますが、およそ15万円前後です。

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ミックスではロボット手術とくらべて追加の自己負担がなく、しかし出来上がりの美しさに大差がない、というよりむしろサテライト創が少ないため有利です。

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お便り9 重症の心房中隔欠損症の患者さん

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Suisen_b患者さんは鹿児島在住の76歳女性で、

心房中隔欠損症(ASD)が長年の経過の中で高度の肺高血圧(70mmHg)を合併し、

三尖弁閉鎖不全や慢性心房細動(約30年)、

さらにはうっ血肝、血小板減少症まで併発した危険な状態となりました。

しかも肺が悪く、肺活量も健康人の40%という状態でした。

 

心房中隔欠損症そのものは心臓手術のなかでも一番簡単な部類に入りますが、何しろいくつもの病気を合併して全身が衰弱しておられ、

他病院やセンターでも手術はできないと言われ、患者さんの息子さんからご相談を受けました。

 

相談の結果、手術可能と判断し、遠路ハートセンターまでご来院いただき、

手術施行、心臓リハビリも皆で頑張り、心不全や不整脈も治り元気に退院して行かれました。

 

手術は心房中隔欠損症(ASD)パッチ閉鎖術、両心房メイズ手術三尖弁形成術、左心耳閉鎖と右房縫縮でした。

以下はその息子さんからのメールの抜粋です。お許しを得て掲載します。

息子さんは優れた内科医で、ご相談の中で私たちの方こそ、いろいろと勉強させて戴いたほどの方ですので、

以下のメールにはかなり謙遜された部分もあることを申し添えます。

 

*****************************

米田副院長先生御侍史

この度は、先生には所謂、「神の手」の力により私の母の余命を伸ばして下さり、

心より感謝申し上げる次第です。

**日19時頃、無事鹿児島に帰宅致しました。

先生始め、心外科各Dr.及び病棟staffの皆様には、術前中後、そして本日の退院に至るまで、大変お世話になりました。

 

(臨床所見やデータ、中略)

先生から戴いた生まれ変わった母の命を大事にして参りたいと存じます。

先生ともなれば、私のような田舎の町医者とは違い、患者さんの為に大変ご多忙でprivacyの少ない時間を御過ごしの御様子。

同じ?医師でありながら、ゴルフに興じていた自分を恥じる契機ともなり、又、私とは技量のレベルの違いを痛感したこの6週間でもありました。

 

*月** 日には、先生の外来に必ずや受診に参りますので、その節は、何卒、宜しくお願い申し上げます。

H21年5月30日

*****************************

米田副院長先生御侍史

先生のお力によって母の余命への絶望を希望に変えて下さり、心より感謝申し上げている処です。

私にとって、先生の様なスーパーDr.とこのようにmailや直接TELでにてお話しさせて戴くことは、恐れ多く大変有り難いことと感謝致しております。

 

さて、母ですが、基礎疾患により次第に体力が衰えてきていた状態での、今回の大手術でしたので、

術後の体力低下に加えて、腰痛等整形外科的症状や術創の痛みも時々あり、

未だ外出できるほどにはなっていませんが、徐々に可能になって行くもの思われます。

 

そして、きっと、「やはりあの時、思い切って名古屋まで行って先生の‘神の手’で手術して戴いてよかった」と実感できる日々が来るはずだと考えております。

というのも、先日、当方で検査をしてみたところ、(中略)、、と、うっ血性肝障害及び心不全の改善が診られている故です。

今後さらに、改善されるものと期待されます。

先生のお力のおかげだと改めて感謝申し上げているところです。

 

*月**日は、当院休診日を少しでも減らす(何しろ‘不況’なもので)為、日帰りとなりそうですが、

先生に元気になった母を御見せできること並びに先生に再度お会いできますことをお約束し又楽しみに致しております。

その節は、何卒宜しくお願い申し上げます。

H 21年6月8日


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3) 心房中隔欠損症(ASD)―放置すると年齢とともに死亡する方が増加 【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月17日

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◾️心房中隔欠損症(略称ASD)とは?

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図1ASD日本語心房中隔欠損症(ASD)はよくある先天性心疾患のひとつで、大動脈二尖弁のつぎに多いものです。左心房と右心房の間にある心房中隔の一部が欠損し穴のようになっています。

長い間あまり強い症状がなく、心臓の雑音も小さいことなどのため学校検診などで発見されず成人期ときには50代―60代になって病院にこられることがまれならずあります。

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40歳を超えますと心不全や心房細動あるいは運動時息切れなどのためQOL(生活の質)の低下などが起こります。心臓もずいぶん大きくなっていることが多いです。

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また奇異性塞栓つまり右房から左房へ血栓など A306_078が流れてそれが脳や全身に飛んで塞栓を引き起こしたり、脳に膿がたまる脳膿瘍をつくったり、肺高血圧が高じて右ー左シャントとなりアイゼンメンガー症候群になることさえあります。

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それらのために手術なしで50歳に達するのは半分で以後も年間6%の死亡率があるとのデータもあります。

60歳を超える患者さんでもしばしば手術適応となるのはこのためです。つまり心房中隔欠損症では手術をしないと長生きできない恐れがあるわけです。

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◾️心房中隔欠損症(ASD)にはどんなタイプが?

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心房中隔欠損症(ASD)にはいくつかのタイプがあります。

治療の際にそれを把握しておくことは大切です。たとえば

1.二次口ASD: 卵円かとよばれるくぼんだところASDtypesに穴があります。二次中隔の成長が悪いときや、一次中隔の吸収が遅いときに起こります。

右図の2ですね。

ASDの3分の2以上を占めます。僧帽弁逸脱症を合併することがよくあります。

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2.一次口ASD: 一次中隔が心内膜床とくっつかないと一次口ASDとなります。ASD全体の15から20%を占めます。右上図の3.です。

房室弁(僧帽弁や三尖弁)の弁膜症を合併することが多いです。なかでもクレフトとよばれる僧帽弁前尖の裂け目や心室中隔欠損症VSDが代表的です。

トリソミー21つまりダウン症候群の患者さんによく見られます。

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3.静脈洞ASD(Sinus Venosus ASD): ASD全体の5-10%を占めます。部分型肺静脈還流異常症(PAPVR)がよく合併します。右上図の1.です。

Superior型(上大静脈欠損症)とInferior型(下大静脈欠損症)があります。

右肺静脈が左房に注いでいても、その血流がこのASDごしに右房に流れ込む場合は左右シャントが増えることになります。

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4.冠静脈洞ASD: 冠静脈洞と左房の間の隔壁がなく、冠静脈洞の血液が左房へ流れ込みます。

ASD全体の1%を占めます。左上大静脈の遺残をともなうことが多いです。

5.卵円孔開存(PFO): 健康成人の25-30%に見られます。シャントが起こることがあります。

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◾️心房中隔欠損症 ASDの治療は?

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心房中隔欠損症ASDの穴をとおる血液の量が多い時(肺を流れる血液の量が全身を流れる血液量の2倍以上になるとき)や、穴が小さくても右心房から左心房へも血液がもれている時(脳梗塞などが起こりやすくなります)は積極治療の対象となります。

 .

図1Amplatz近年はアンプラッツ法などのカテーテルをもちいてこの心房中隔欠損症を閉じることもありますが、ASDのタイプや位置などの制約があり、かつ不確実閉鎖となることもあり、長期成績がまだ不明です(右図)。

カテーテル治療の硬いパッチがそのお隣にある大動脈基部を圧迫し、大動脈が破裂したという報告さえあります。まだまだ課題があるわけです。要はそれぞれの特徴を踏まえて使い分けるということです。

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◾️心房中隔欠損症の手術は?

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一方手術は傷が残るという弱点はありますが、

安全性が高く、確実に治せるという利点、さらにしばしば合併する三尖弁閉鎖不全症僧帽弁閉鎖不全症あるいは心房細動・右房拡張を高い確率で治せるという利点があります。

 

Fotosearch_CAR05003.

三尖弁(図の左側にある白い大きな弁です)や僧帽弁は弁形成手術で治します。私たちはとくに心房細動の期間が長期におよぶケースでの治療に力をいれ、

必要に応じて心房縮小メイズ手術を使用し、心臓の機能や除細動率を上げています (手術事例 成人の心房中隔欠損症ASD)。

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肺高血圧症を合併した心房中隔欠損症ASD患者さんは一般に重症と言われますが、

心房中隔欠損症ASDを手術で閉じたあと肺高血圧が改善すると予測できる場合は積極的に心臓手術に取り組んでいます。

実際、患者さんは術後、呼吸も運動も楽になることがほとんどです。

手術事例: 重い肺高血圧を合併したASDの高齢患者さん)

 .

MICS3

◾️より進化した治療法・ミックス手術

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20代30代などの若い患者さんの場合は早い社会復帰に加えて美容も考慮しています。傷跡が小さく見えにくいと、心の傷も小さくなるからです。

ミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術、とくにポートアクセス手術)で右胸に小さい創を開けてここから心房中隔欠損症ASDや二次的に合併した病気を治すようにしています。

2012-09-10 09.43.25.

左写真はMICSのポートアクセス法による心房中隔欠損症の根治術後2か月の創部です。

痛みも少なく、創もみえにくいため、早く仕事復帰でき精神的ストレスも軽いです。これならあれこれ迷わずに早く心臓手術を受ければよかったと言って頂きうれしく思いました。

大切なことは安全の確保、ついで快適さや早い社会復帰、そしてできるだけ健康に、美しくという原則を守ることと考えています。

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やはりその患者さんの状況に合わせたアプローチが重要といえるでしょう。

なお心房中隔欠損症の外科手術はここまで100%の成功率で来ていますが、術前から他の病気(肺や血管や腎臓など)を合併した患者さんが増えたことと、心臓を開ける術式だけに油断なく慎重にていねいに進めなければならないという意味では他の心臓手術と同じ心構えで取り組んでいます。

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4) エプシュ タイン病 へ進む

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