最終更新日 2019年1月6日
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◾️冠動脈瘻の手術
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冠動静脈瘻、または冠動脈瘻あるいは冠動脈瘤の手術にはいくつかの大切なポイントがあります。
そもそもこの病気ではつぎの2つの問題点があります。
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1.冠動脈の血液は心臓の筋肉つまり心筋へ流れて、心筋は酸素や栄養を受け取り、パワーがでて心臓としてポンプ機能を発揮します。
この心筋へ行くべき血液が静脈その他へ奪われるため、心筋が虚血つまり酸欠状態となります。
その結果として狭心症(胸が痛くなります)や心不全(息切れなどが起こります)となってしまいます。
患者さんの中には左室のパワーが著しく低下している方があります。
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2.冠動脈から静脈その他へ血液が逃げるため、逃げた分だけ血流が増えて、冠動脈が太く大きくこぶのようになります。
いわゆる冠動脈瘤の形になります。
これがあまり進んでいくと、瘤が破裂して突然死などが起こることがあります。
大動脈などの瘤(右図)と同じです。
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治療は冠動脈と静脈あるいは肺動脈などをつなぐ異常血管をすべて取り去るか閉塞させることです。これによって上記の1.と2.とも解決します。
軽ければお薬で行けることもあります。
上記の1.と2.が顕著になると手術が必要となります。
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◾️冠動脈瘻へのミックス手術
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冠動脈や異常血管の位置や状態によって手術法は異なります。
異常血管を閉塞させる、手短には潰すことで安定化が図れる場合は、体外循環を使わないオフポンプの形で、手術ができます。
私たちの経験では、こうしたケースの多くはミックス手術で骨を部分的に切り、
皮膚切開も通常より小さい胸骨下部正中切開が多くの場合、使えます。
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右の図が通常の正中切開、左図が胸骨部分切開の創です。
皮膚の創だけでなく、骨も一部しか切りませんのでさまざまなメリットが生まれます。
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これによって1.早い仕事復帰、社会復帰が図れ、2.痛みの軽減と創の治りの促進、3.ばい菌による感染症の予防などに役立ちます。
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◾️冠動脈瘻のため大きな冠動脈瘤になっている時は
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冠動脈や虚血つまり心筋の酸欠状態などによっては冠動脈を形成する aneurysmorapphyという術式になることもあります。瘤を切り開いて、中をきれいにしてからちょうど良いサイズまで瘤を小さくするのです。
こうした場合でも極力オフポンプバイパス手術の方法をもちいますが、それが危険な部位や状況では無理をせず、安全に体外循環(人工心肺)をもちいてゆうゆうと手術することもあります。
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◾️まとめ
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こうして高い成功率と低い合併症率を達成しつつ、痛みや苦痛の軽減や早い社会復帰、さらにミックスをうまく活用することで美しい美容効果を目指すわけです。
この病気は若い患者さんも多いため、こうした方針とくにミックスでの手術は一層喜ばれています。
冠動静脈ろうの患者さんには前向きに、安全を確保する治療法をご検討頂ければ幸いです。
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参考ページのIndex:
危険なの?
術後の痛み軽減について
社会復帰が早いわけは?
美容について
胸骨「下部」部分切開法とは
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法
患者さんやご家族からのお便り
お便り43 がんの術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん
お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん
お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん
お便り62: 同、弁形成と冠動脈バイパスを受けた患者さん
お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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