最終更新日 2025年9月14日
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◆ 弁形成術とは?
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弁形成術とは、心臓の壊れた弁を「人工弁に置き換える」のでは
なく、自分の弁を修復して元の機能を取り戻す手術です。
人工弁置換術(弁を人工弁に取り換える手術)と比較されることが多く、
より自然で体に優しい治療といえます。
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◆ 弁形成術が人工弁置換より優れている理由
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人工弁置換の課題
弁形成術のメリット
ただし、形成術がしっかりと成功し、長持ちすることが前提となります。
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◆ 僧帽弁形成術
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僧帽弁形成術は1970年代にフランスのCarpentier先生が「French Correction」として体系化。
以後、David先生(カナダ)、Adams先生(米国)ら世界的な専門家の努力で確立しました。
当院でも前尖・後尖の複雑な逸脱やバーロー症候群など、難易度が高い僧帽弁形成にも積極的に取り組み、人工弁を使わず修復する方針をとっています。
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◆ 大動脈弁形成術
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大動脈弁閉鎖不全症に対する大動脈弁形成術はまだ特殊な手術とされますが、近年ドイツのSchaefer先生らが「有効高(effective height)」という客観的指標を導入し、成績が向上しています。
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若い患者さん(10〜40代)に特に有効
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生体弁では耐久性が短いため、形成術のメリットが大きい
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自己心膜パッチを必要最小限用いる方法もあり
当院では若年者の二尖弁大動脈閉鎖不全症を中心に積極的に弁形成術を行っています。
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◆ ご高齢の患者さんでは?
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80歳を超える患者さんや体力が弱い方では、短時間で確実にできる生体弁置換を選ぶ場合もあります。
一方で、若い方では弁形成術のメリットが圧倒的に大きいため、形成を最優先としています。
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◆ 三尖弁形成術
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三尖弁閉鎖不全症の多くは弁輪拡張が原因であり、弁形成術が可能です。
ペースメーカーが原因の三尖弁閉鎖不全症では形成が難しいとされますが、私たちは僧帽弁形成術の経験を応用し、できる限り弁形成で対応しています。
三尖弁は弁置換術の長期予後が良くないため、弁形成の価値が特に高い弁です。
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◆ 弁形成術に必要な専門性
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弁形成術は誰でも行える手術ではありません。
経験豊富な専門チームが行うことで初めて、長期予後が保証されます。
当院では、僧帽弁・大動脈弁・三尖弁すべてで形成術を第一に考え、必要に応じてMICS(低侵襲心臓手術)を導入しています。
小切開で傷跡を目立たせず、社会復帰を早めることを目標としています。
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◆ まとめ
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弁形成術は人工弁に頼らず自分の弁を守る治療
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特に若い患者さんでは大きなメリット
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三尖弁や大動脈弁でも形成の可能性を追求
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経験豊富な専門医に相談することが大切
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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