第5回ハートバルブカンファランスの御礼

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早いものでこの弁膜症の研究会がスタートして5回目になりました。思えば第一会のときはたまたま同じ日にあの東日本大震災が起こり延期になったという忘れられない想い出がありました。

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今回は私が当番世話人、学会でいえば会長を仰せつかり、1年前から準備を進めて参りました。
この会の「公式」報告は雑誌「心エコー」に掲載されますので、そちらをご参照ください。
ここでは自分なりに感じたことなどをお書きします。

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HVC2015この研究会は前回から大阪で開催されていますが、今回も当番の私が奈良ということで大阪開催となりました。パンフレットの阿修羅像は川副先生がデザインして下さったもので、同先生の美的センスに感嘆いたしました。

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そこで気がついたのですが、阿修羅はもともと仏にお仕えしていたのが、あまりやんちゃが過ぎ戦いに明け暮れ、仏の逆鱗に触れて改心し仏教を守護する神になったという伝説(諸説あり)で、古い大学の体制に嫌気がさして逆らったのを批判され、象牙の塔を出て市中病院で患者さんのために日々汗を流すようになったのとどこか似ていて、これからは大人しくしようとふと思ってしまいました。

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ともあれ1年かけて代表世話人の川副浩平先生や前回当番の中谷敏先生らと何度もミーティングを持ち、今大切なことは何か、今議論するにふさわしいテーマは何か、今何が面白いか、といったことを念頭にテーマを決めて行きました。

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出来上がったプログラムを見て多くの世話人の先生方が面白そうで楽しみですという旨のご意見を下さり、安堵したものです。当日は満員御礼に近い状態となり立ち見の方もでるほどで、皆さんに感謝一杯の一日となりました。

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まずPreconferenceセッション「ハートチームはもっと楽しくなる」から、心臓病センター榊原病院の坂口太一先生と東京大学循環器内科の大門雅夫先生に、より良いハートチームへの努力経験をお話頂きました。いろいろ反省しながら拝聴していたのは私だけではないでしょう。

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カンファランスの内容は上述の雑誌をご参照頂くとして、まずその骨子を以下にまとめます。

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まずCase Study1「外科医今昔物語―その2 ”How would you operate?”」。若手をベテランが叱咤激励する恒例の企画です。3名の新進気鋭の心臓外科医、神戸市立医療センター中央市民病院・小山忠明先生、東京ベイ・浦安市川医療センター・田端実先生、済生会中津病院・中桐啓太郎先生に苦労症例を提示していただき、辛口のエキスパートコメントを京都府立医科大学・夜久均先生と東京慈恵会医科大学・橋本和弘先生から頂きました。もちろん座長の川副浩平先生と東京女子医大・芦原京美先生からもご質問とご指導を頂きました。

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Case Study2「大動脈弁をもっと知ろう」ではまず東邦大学医療センター大橋病院の鈴木真事先生に二尖弁関係のユニークでハイレベルのお話を、ついで心臓血管研究所の國原孝先生が弁形成術で足りないもの、不確かなものについてお話されました。座長の神戸大学・大北裕先生と高の原中央病院・太田剛弘先生にはエキスパートのご指導を頂きました。

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ランチョンセミナーは少しディベート風に1.桜橋渡辺病院・小山靖史先生の「エコーに負けないCT」と、2.東京ベイ浦安市川医療センター・渡辺弘之先生の「CTを飲み込むエコー」でした。大変勉強になりました。座長の心臓センター榊原病院・吉田清先生の絶妙な司会のもとでよく理解できました。

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午後のCase Study3は今日的話題の「HOCM+MR 治療の深淵」でした。この道の権威でもある榊原記念病院・高山守正先生が最近の内科的治療とくにカテーテルアブレーションでのSeptal Reduction心室中隔縮小術を供覧されました。それに続いて不肖私、米田正始が近年話題の「Mid-Ventricular Obstructionの手術」で左室の奥深い、これまで手術困難とされて来た深い部位の手術を実際の症例群を提示しながらご紹介しました。HOCMでもハートチームで優れた治療ができればと思います。

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なおHOCMはトロントでは多数の患者さんがおられました。成人先天性心疾患の有名な外来があったからです。そこで当時トロントこども病院のチーフ心臓外科医であったWilliams先生が毎週、当時私がいたトロント総合病院(TGH)へ手術をしに来られていたのです。ほとんど毎週HOCMがあり、私もちょくちょくその手術に入って勉強させて頂きました。本場の手術を直伝で教えて戴いたことが25年もたった今、ますます役に立っています。

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このHOCMの手術は視野が悪く、慣れないとおいそれとはできない、たとえできても不完全手術となり再発の原因となるため普及していません。これからこの手術をより発展させ、次世代に伝えていきたく思っています。

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この手術によって、これまで心不全や発作、二次的な不整脈などのため仕事もできずつらい毎日を送って来られた方々が元気に社会復帰しておられます。ぜひとも多くの患者さんたちにお元気になって頂きたく思い、発表させて頂きました。

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さらに川副先生が「SAM+MRの変り種」で、最後に大阪大学・中谷敏先生が「病態生理のまとめ」をされました。座長の榊原記念病院・高梨秀一郎先生と三重大学・土肥薫先生には多数の有益なコメントやご質問を頂き、内容の理解を深めていただき、感謝申し上げます。

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最後のセッションはディベートでCase Study4「曲がり角に来た弁膜症の治療」でした。

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まず「TAVIはもっと軽症でもよいのでは?」では九州大学・有田武史先生が解剖要件を満たせばもっと積極的にTAVIをやって良いというデータを示され、それに対して岩手医科大学・岡林均先生はTAVIの成績は改善しても医療費が大変高騰して将来成り立たなくなる懸念を示されました。

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ついで「MitraClipは本当に使えるの?」ではイタリアはシシリー島帰りの東海大学・大野洋平先生がその有用性と限界を示されました。一方、外科からは長崎大学の江石清行先生が多数の僧帽弁形成術症例を提示しつつ、これにどうクリップを使えるのですかという疑問を投げかけられました。
座長のみどり病院・岡田行功先生、天理よろづ相談所病院・泉知里先生、うまくかじ取りしていただき、実りある内容として頂けたこと、感謝申し上げます。

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最後に川副先生が代表幹事としてのご挨拶と、この研究会が5年の節目を右肩上がり状態で迎え、今後さらに続けて行くという世話人会決定を報告されました。

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こうして第五回ハートバルブカンファランスは盛況の中に終了しました。蛇足ながら個人的にはかんさいハートセンターを認知していただいたのもありがたいことでした。皆様、来年もまたよろしくお願い申し上げます。

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米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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