いい心臓・いい人生 【第139号】 コロナ肺炎(COVID-19)に負けない対策

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いい心臓・いい人生 【第139号】 コロナ肺炎(COVID-19)に負けない対策

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発行:心臓外科手術情報WEB

心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから

編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始

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緊急事態宣言が部分的とはいえ解除の方向となり、少しほっとしておられる方も多いことと思います。もちろん伝えられているように、油断するとすぐ第二波、第三波のコロナ感染流行が襲ってくる可能性があります。

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ここまで発表されて来た感染予防策のポイントをいくつかまとめてみます。

どの病気もそうですが、予防こそ最大の治療ですので。

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1.まず飛沫感染の予防ということで三密を避け、マスクを使う、これはもちろん基本として大切です。

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2.しかし接触で感染することも多いため、接触関係にも注意が必要です。たとえば電車バスなどのつり革やてすりにはウィルスが付いていると思って行動するのが安全です。できれば触らない、しかし触った場合は早めに手を洗う。

このことは公園などで散歩やジョギングする際にも重要で、それ自体は人混みでない限り安全なのですが、ついベンチやてすりを触ってしまうと感染する恐れがあります。なのでなるべく触らな、念のために早めに手を洗うことが有益です。

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3.手を洗うのは石鹸となるべくお湯で、20秒以上かけて、そのあとなるべくペーパータオルなどで拭く、これが安全安心な手洗いです。コロナウィルスは脂肪で守られているため石鹸やお湯でこわれやすいのです。

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4.お茶をひんぱんに少しずつ飲む。これによって喉などにくっついたコロナウィルスが胃に落としこまれる、そこで胃酸によってウィルスは壊れるのです。お茶は緑茶がベストです。

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5.免疫抵抗力をつける。これは言うが易し行うは難しです。しかしやる意義があるのはまず十分な睡眠でしょう。ついで腸内細菌を守ること、そのためにはヨーグルト(できれば夕方に)、納豆やキムチなどの発酵食品を食べることです。

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6.いくら用心してもひとが動くとウィルスも動くと言われるように、なるべく家の中に居るのが安全です。しかし若い人たちは元気すぎて外で楽しく遊びがちです。元気な若者で症状がない感染者いわゆる不顕性感染者が怖いのです。家族とくに高齢者には危険な存在です。なので家族に若い人がいる場合はよく話し合い、上記の予防策を徹底していただきたいのです。

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まもなくアビガンその他の薬がもっと便利に使えるようになるでしょう。そしてフサンその他の薬もより根拠をもって使えるようになるでしょう。まだ特効薬はなくても、そこそこ効く、そうした薬が増えてくると重症化が防ぎやすくなり、死亡率も下がるでしょう。そして決定打はワクチンです。現在世界がワクチン開発を行っており、日本も有望なワクチンを開発中です。

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そうすると、今コロナ肺炎で死亡するのは大変残念なことになります。もうすぐもっと良い治療法が出てくるのですから。そのため、読者の皆さんには上記の予防策を徹底して実行し、無念の事態を是非とも避けていただきたく思います。

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令和2年5月15日

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米田正始 拝

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心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第138号】 第22回日本成人先天性心疾患学会にて

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いい心臓・いい人生 【第138号】 第22回日本成人先天性心疾患学会にて

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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始

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新年のご挨拶をと思っているうちに、いつのまにか2月に入り時間の速さに負けて

いるこの頃ですが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。

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先月、日本成人先天性心疾患学会に参加してまいりました。慈恵医大の森田紀代造

先生が会長で東京にて開催されました。

私は病院内の用事が多く、1日だけの参加となってしまいました。

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まず国際セッションで私たちが近年ちからを入れているオリジナル手術「Dual Repair」

を発表しました。虚血性僧帽弁閉鎖不全症や機能性僧帽弁閉鎖不全症に最近注目の

カテーテル治療(Mクリップ)は低心機能例などに効果が少ないという事が示されて

いる中で、低心機能例でも安定したMRの制御が長期間でき、心機能や運動能が改善

するため、Mクリップの良きパートナーになり得ることを示しました。これまでなす

すべもなく看取りになっていた患者さんたちをこれから多数お助けできればと思います。

海外の先生を含めていろいろと建設的なご質問をいただきうれしく思いました。

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つぎに今回の学会でほぼ唯一のビデオセッションにてKay-Reed法術後遠隔期のMRに

対する複雑弁形成をご紹介しました。Kay-Reed法とはこどもの弁形成によく使われる

簡便な方法で、逆流部分とくに交連部の弁輪を潰す形で閉じ、他の部分は温存します。

そのため術後も弁は体とともに成長するのです。小さいこどもさんには良い方法と

思います。

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それが大人になり、僧帽弁が両尖とも逸脱し弁輪形成部付近の後尖が低形成になって

いたため両尖にそれぞれ4本、計8本の人工腱索を立て、低形成部は心膜パッチで拡大

してうまく逆流は消えました。人工腱索は多数になればなるほど、その長さ調整が

難しいと言われますが、恩師デービッド先生の方法を改良して使いやすくしたため問題

なく完遂できました。高い評価をいただき、ありがたく思いました。

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1日だけの参加でしたが、他発表にも参考になる事が多く、たとえば先天性心疾患術後

のデービッド手術(自己弁温存大動脈基部再建)では肺動脈弁付近の剥離に注意など、

有用な情報が得られました。また心疾患をもつ妊婦さんをどう守るかの議論には鬼気迫る

真剣さがあり、産科・小児科・内科・外科・麻酔科はじめ各分野の先生方の患者さんへの

愛情を感じました。

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またランチオンセミナーで筑波大学循環器内科教授の小池先生がCPXの最新の成果を講演

され、今後に役立つ優れた内容でした。リハビリロボットHALを使ってみたくなりました。

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朝早起きして日帰りで夜遅く帰宅してでも参加する甲斐がある学会でした。関係の皆さま、

会長の森田先生、ありがとうございました。

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令和2年2月5日

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米田正始 拝

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元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第137号】 第33回日本冠疾患学会にて

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いい心臓・いい人生 【第137号】 第33回日本冠疾患学会にて
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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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いつの間にか今年も残すところ僅かになりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
この12月13日と14日に岡山で日本冠疾患学会があり参加して参りました。
今回は倉敷中央病院の循環器内科門田一繁先生と心臓血管外科小宮達彦先生が会長で、
「人をつなぐ、医療をつなぐ」というテーマでした。

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循環器病領域は内科系と外科系の競合が厳しい領域の一つと言われて久しいのですが、
今これをハートチームの元にしっかりつなごうという趣旨が含まれる現代的なテーマ
です。私はご縁あって長年この学会の理事を務めさせて頂いておりますが、学会
そのものの方向性が内科と外科の垣根を超えた全面協力での患者さんベスト治療で
あるだけに、この学会にふさわしい立派なテーマと思いました。

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さて初日の合同シンポジウム「心原性ショックに対する補助循環」では主にインペラや
ECMOがらみの補助循環の最近の展開が論じられました。インペラやエクペラなどの強力
治療によってこれまでの不治の急性心不全、ショック状態が治せる可能性を感じました。

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ついで外科ビデオセッション・New TechniqueではInfarct Exclusion変法が近畿大学
の金田敏夫先生から発表されました。30年以上前にトロントから発表させていただいた
方法を強化していただき嬉しいことでした。私は機能性僧帽弁閉鎖不全症FMRに対する
Dual Repair僧帽弁形成術を2つのビデオで検討しました。座長の兵庫医大坂口太一
教授、福島県立医大横山 斉教授からいくつもの鋭いご質問を頂き、皆さん特長がわかり
やすくなったように思いました。内科系の先生もこの発表を聴いて下さっていたようで、
今後内科外科のハートチームでの参考になればと思いました。

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ランチョンセミナー・今CABGとどう向き合うか?では榊原病院の平岡有努先生がOff
the job trainingとして通常のブタ心臓だけでなく肋骨付き資材でのLITA―LAD吻合や
VSP練習、食道肺付き資材で弓部大動脈置換術練習なども行えることを紹介されました。
九州大学の塩瀬明教授はチャレンジャーズライブから始まり国内ローテーションや海外
留学などでも果敢に研修機会を広げて行く努力を紹介されました。昔から伸びるひとは
どんな環境でも伸びるという言葉がありますが、こうした立派な姿勢の人にはより立派
な環境を提供したいし、提供しなければと皆さん思われたのではないでしょうか。

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懇親会でビデオ発表へのご質問やコメントを内科・外科の先生方からもいただき、大変
有意義でした。とくに内科の先生方からの貴重なコメントをいただけたのはこの学会
ならではと改めて感じいりました。

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2日目は実践エコー講座(岸和田市立病院の六尾哲先生)を拝聴しました。広範囲の
テーマを網羅され、良くまとまっており、さっそく役に立つ実用的実践的な内容でした。
コメディカルの皆さんにも有益であったものと思います。

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外科シンポ・オンポンプ対オフポンプCABGは部分参加でしたが、オフポンプもオン
ポンプもその特徴を把握して使いこなせば良い結果に結びつくという印象を得ました。
無理なくできるならオフポンプが第一選択と思いました。オフポンプ先進国日本の
お家芸を皆で安全に進化させて頂きたいものです。

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心臓リハビリ教育セミナー(群馬県立心血管センターの安達 仁先生)は心臓外科医
の私には斬新な視点が多く、累積LDLや異所性脂肪、夜食を控える理由、Insulin
release解除のための食後リハ運動、ACSトリガーと酒・コーヒー・怒り・興奮、心リハ
とCAD早期発見、笑顔の重要性などなど、病気の予防だけでなく二次予防、術後予後の
一層の改善などにも有益と思われました。

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ランチョンセミナー(阿部幸雄先生)は心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症(AFMR)と
心房生機能性三尖弁閉鎖不全症(AFTR)で、冠疾患学会との関連は良くわかりませんでした
が、充実した内容であり良いセミナーと思いました。
AFMRはやや少ない疾患という印象でしたが高齢者MRの原因では最多であり油断禁物です。
AFTRも高齢者では多く僧帽弁と三尖弁はセットでしっかり治す必要があるとのことで、
同感でした。

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午後のポスター・心機能低下では座長(ピンチヒッター)を仰せつかりました。いずれも
興味深い内容でした。私は前日のビデオ発表の解析部分をポスターで解説しました。
さまざまなご質問をいただき、ポスターらしい少数精鋭検討となりました。内科の先生も
お越しくださり、嬉しいことでした。

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岡山はお隣の倉敷に大原美術館があり、学会前に行く機会を得ました。前回ここへ来た
のは小学校4年生の時なので大昔のことでしたが覚えのある絵があり懐かく振り返り
ました。個人的にはモネとエルグレコは圧巻と感動しました。大原美術館の起源(利潤の
社会還元、それも一般市民への還元)や小島虎次郎、印象派の時代進化なども興味深く
思いました。

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学会テーマのように今後の仕事につなげる有益な学会でした。留守を守って下さった
医誠会病院の皆様に感謝申し上げます。

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令和元年12月19日

米田正始 拝

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福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第136号】 第72回日本胸部外科学会にて

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いい心臓・いい人生 【第136号】 第72回日本胸部外科学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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この10月30日から11月2日まで、第72回日本胸部外科学会へ行って参りました。
日本の心臓血管外科関連の学会では最高峰に位置する学会で、充実したプログラム編成
でした。今回は京都大学呼吸器外科の伊達洋至先生が会長で、京都にて開催されました。

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胸部外科の伝統とイノベーションというテーマでした。

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1日目

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心筋梗塞合併症に対する手術術式というシンポジウムでは私がトロント大学から
発信したInfarct exclusion心筋梗塞除外術、David-Komeda法と呼んで頂いている手術
からの展開について、さまざまな改良や新たな方法が論じられました。いずれもメリット
を持つ良い方法と思いましたが、元々の状態が悪い患者さんでは限界があり、この意味で
現在アメリカで試みられている補助循環で状態改善を図ってからInfarct Exclusionを
行うのが最も確実で安全ではないかと感じました。

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ついで機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する治療選択:形成、置換、マイトラクリップ?と
いうフォーカストセッションではアルバートアインシュタイン大学のミックラー教授が
基調講演をされました。私たちが開発した乳頭筋最適化手術PHOも大きく取り上げていた
だき、光栄でした。人工弁を主体にした松居先生や、弁尖拡大で弁形成にこだわる山口
先生、そしてMクリップの大野先生など、いずれも使える方法の振り返りとして参考に
なったと思います。

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私と神谷先生とで、Michler先生と昼食とりながらDual Repair等のディスカッションを
する機会が得られました。様々なご意見をいただき、今後のプロジェクトに弾みがつく、
貴重なひとときでした。

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午後には京都大学・山中伸弥先生の特別講演があり、ノーベル賞に輝いたiPS細胞発見の
偉大さもさることながら、研究者としていかにその成果を世の中に還元し、役立てるか
に大変な努力をしておられることをあらためて知り、本物の研究者魂に触れたように
思います。お見事と感動しました。

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僧帽弁後尖形成術の長期成績のシンポジウムではいくつかの方法での長期成績の報告が
あり、良いセッションでしたが、すでに解決済みの問題をあまり突っ込んでもどうかな
という気も致しました。

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2日目

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慢性心房細動に起因する機能性房室弁逆流の外科治療ワークでは、この新しい病気の
概念と内科外科治療について論じられました。岡山榊原病院の畏友・吉田清先生、すば
らしいご講演ありがとうございました。心房細動や心房拡張から発生する病態のため、
僧帽弁以上に三尖弁が壊れやすいと感じており、その意味で房室弁逆流という名称は的
を得ていると思いました。またそう感じさせる一例をご紹介しました。16年前に
メジャージャーナルから発表した心房縮小メイズ手術を使って下さる病院が増え始め、
うれしいことでした。

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ランチオンではスタンフォード大学時代の畏友Marc MoonとNYのGallowayがMVPの話をし、
せっかくの機会を盛り上げようと、いくつか質問させていただきました。Marcはprofessor
Komedaと自分はスタンフォードで一緒に研究した仲間で、とわざわざ紹介などしてくれて
気恥ずかしく思いました。セッションのあとで彼らと高梨先生らとで記念写真を撮りまし
た。

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昼休みにスロベニアの畏友Borut Gersakとゆっくり歓談する機会がありました。医誠会
病院の来し方行く末なども相談でき、有意義なひとときでした。

胸部外科と専門医制度の現状と今後について、ミスター専門医の愛称をもつ種本先生らの
お話があり、今後の流れがおよそわかりました。

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3日目

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シンポジウム・メイズ手術の長期成績。まずワシントン大学の畏友Marc Moon先生の基調
講演がありました。最近気になっているMICSでの左心耳クリップについて質問したところ、
transverse sinus越しに外側からクリップするとのことで自信をつけました。ついで日本
医大石井先生の見事なレビューがありました。

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クリニカルビデオセッションでは私たちのオリジナルであるDual Repairのビデオを発表
しました。これまで弁形成できなかった重症機能性僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症DCM
にも十分効果があり、その実際を見ていただきました。Marc Moonも大変関心を持ってく
れ、会場からも質問を多数いただきました。これから内外に広げることができればと思い
ました。

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Postgrad advanced courseでいくつかの有益な講演がありました。京大湊谷先生のデービ
ッド手術の講演はすぐ役立つ、実質的なものでした。東北大学斎木先生の感染性胸部・
胸腹部瘤のお話も得難い貴重なものでした。

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その他にも多くの旧友や仲間と有益な時間を過ごすことができました。留守を守って
くださった医誠会病院の皆さんに感謝申し上げます。

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米田正始 拝

2019年11月16日

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第135号】 キエフの国際学会に行って参りました

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いい心臓・いい人生 【第135号】 キエフの国際学会に行って参りました
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発行:心臓外科手術情報WEB
心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この10月24日から25日にかけてウクライナ・キエフの心臓再建外科2019という学会 に参加しました。国立キエフ循環器センターというウクライナ共和国を代表する ハートセンターからご招待を頂いての参加でした。 . 旧ソ連が15の共和国に分かれ、それぞれの道を歩んでいるのですが、ウクライナは もともとソ連の中心的存在で、ICBMミサイルの基地やあのチェルノブイリ原発でも 有名です。 . 学会の前日にこのキエフ循環器センターを見学しました。案内して下さった院長の トルドフTodurov先生は腕利きの心臓外科医でもあり、大変意欲的に心臓医療を進 めているという印象でした。有名なベルリンハートセンターをモデルとしてキエフ にハートセンターを13年前に造り、すでに年間2000例の心臓手術を行うまでに発展 していました。 . 病室もICUも広々とした空間で患者さんもくつろいでいる感がありました。2-3年後 に新病院を準備中の医誠会(国際)病院の参考になるセンターでした。またこうした 国際学会を開催し、世界と交流し人を育てる、まさに国際病院の姿は参考になりま した。 . 学会はキエフや旧ソ連系の各国からの参加に加えて欧米各国から1名ずつゲストが 招待され、なぜかアジアは私だけでした。 . 学会1日目は我が恩師デービッド先生(Tirone E. David、トロント大学)とランゲ 先生(ベルリン心臓センター)と私の三人で座長を行う特別セッションでした。 まず冠動脈バイパスとくにオフポンプバイパス術の展開が論じられ、日本での経験 や現状を紹介しました。 . ついで弁膜症関係で三尖弁形成術でのクローバーテクニックでも他法とのうまい 使い分けを論じました。 ランゲ教授はエプシュタイン病の三尖弁閉鎖不全症に対する弁形成術の変遷と現在 のコーン手術(Cone、円錐)まで解説されました。私も好きな手術のため議論させ て頂きました。 フランスの畏友・バシェー先生は心臓手術の失敗とその予防について、航空会社の 安全対策と対比して論じました。このレベルのしっかりした医療安全が必要と改め て思いました。 . 学会2日目は主に大動脈弁・大動脈基部再建と心不全の外科治療でした。 大動脈弁・基部再建がらみではホモグラフト、ロス手術、MICSでのスーチャーレス (無縫合)生体弁、自己心膜再建などが熱く論じられました。それぞれ使い道と 弱点があり、うまい活用がポイントと思いました。 . 心不全については私はここまで開発・改良してきた手術つまり乳頭筋最適化手術 (PHO)と心尖部凍結式左室形成術(FASVR)とくにその両者を組み合わせた新しい手術 Dual Repair(二元手術)を紹介しました。 反響は大きく、多くの質問をいただき、セッションの後も「自分もやってみたい」 「やり方を詳しく教えて」というご希望を幾つもいただき、光栄なことでした。 . ウクライナを始め旧社会主義国は経済的に苦しく、医療予算にも制約が強いため、 医療関係者は苦労しておられるようです。私のDual Repair手術なら補助循環 つまり人工心臓と心移植の10分の1から20分の1の費用で患者さんを助けられる ため、今後活用して頂ければと思いました。 . 最後に恩師デービッド先生やニューヨークのスチュワート先生らとともにパネル ディスカッションがありました。心臓外科の将来像について様々な意見を交換し ました。 . キエフでは日本大使館の方々にお世話になり、有意義で楽しいひとときが持てま した。日本の医療が優れている点や劣っているところを把握すれば国際貢献が できるのではといくつかの提案をさせて頂きました。 またウクライナなどの開発途上国の苦労は近い将来、経済が減速した日本でも現実 となり得るため、お金のかからない医療の有用性をお伝えしました。 . 学会の後、世界遺産のSt Andrews寺院などを皆で歩きました。旧社会主義国には 昔の良いものが残っており貴重な財産と感じました。 . お世話になったキエフ循環器センターのトルドフ先生やデマンチェックDemanchek 先生、日本大使館の皆様、そして留守を守って下さった医誠会病院の神谷賢一先生 や皆様に御礼申し上げます。 . 令和元年10月28日 米田正始  . ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright (c) 2009 心臓外科手術情報WEB
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いい心臓・いい人生 【第134号】 日本心臓病学会にて

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台風一過のあと少し涼しくなったと思いきや、また真夏日が戻ったような最近ですが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

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この9月13日から15日まで第67回日本心臓病学会(於、名古屋)に参加して
まいりました。
三重大学の伊藤正明先生が会長で、教育マインドにあふれた、かゆい所に手が届く
ような素晴らしい学会でした。

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臨床主体かつ内科中心の、つまり患者さん目線の学会で、外科系学会とは一味ちがう
多くの情報や意見交換・交流ができました。

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私自身は2つ発表がありました。

ひとつは僧帽弁閉鎖不全症治療の最前線というシンポジウムで、虚血性僧帽弁
閉鎖不全症や機能性僧帽弁閉鎖不全症に対するDual Repairという新しい心臓手術の
成果を発表しました。もはや少々左室が壊れていても僧帽弁閉鎖不全症は治せる
ようになり、今後の展開が期待できるデータでした。

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もう一つは、昨年のアメリカ胸部外科学会で発信した新しい左室形成術(心尖部
凍結型左室形成)の中期遠隔期の結果で、患者さんはお元気になる方がほとんどで、
有望な結果でした。面白いのは術前に致死性不整脈が出ていた方が多い中、術後は
それがほとんど出なくなったことで、この手術の有効性を示す一つの指標と言われ
ました。

これまでの方法をより強化し、従来の外科治療の限界点を引き上げ、より多くの
患者さんたちに恩恵が届く、そうした成果について、有益なご質問やコメントを
いただきました。発表のあとも、ぜひこの新しい手術を使いたい、というお願いを
いただき、光栄でした。

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これから仲間を増やし、これらの手術を全国というより世界に広げていければ、
と思いました。
実際、私たちの患者さんの中には、すでに見捨てられ、あとは看取りだけ、
と言われてから手術を受けて社会復帰した方が複数含まれており、これまでの
常識に前向きに挑戦できる結果だったと思います。
今回の心臓病学会では、その他にも興味ふかい、役立つセッションが多数あり
ました。

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私は心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症のシンポジウムで発言させていただき、この
病気の本体が心房の高度拡張にある限り、弁を直すだけでなく心房も縮小して
適正化するのが本筋であることをお話しました。15-16年前に欧米のメジャー
ジャーナルで発表した内容をあらためてお伝えしました。
中には心房縮小のやり方を教えて!と言ってくださる先生方も複数あり、そのコツ
をお話しておきました。ちかぢかこのハウツーを記載した論文を出すつもりです
ので、ご期待ください。
皆様のお役に立ってこそ意義ある研究ですので、時間を捻出して頑張りたく思い
ます。

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その他がん心臓病学のセッション、心不全と心拍数、左心耳閉鎖デバイス、HOCM
(コロンビア大学高山先生、立派な講演ありがとう)、心エコーでのストレイン
解析、新しい補助循環・インペラ、負荷心エコー、などなど、大変参考になると
ともに、交流を楽しむことができました。

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素晴らしい学会を企画運営された伊藤正明教授はじめ三重大学の皆様と、私の留守
を守って下さった医誠会病院の皆様に感謝申し上げます。

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令和1年9月17日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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いい心臓・いい人生 【第133号】 日本低侵襲心臓手術学会(ミックスサミット)

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いい心臓・いい人生 【第133号】 日本低侵襲心臓手術学会(ミックスサミット)
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猛暑日が続きますが皆さん脱水などをうまく回避してお元気にお過ごしでしょうか。

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さて私、この7月20日にミックスサミット2019に参加して来ました。
この学会はミックスつまり傷跡の小さい心臓手術の学会で、現在の心臓外科の中でも
先進的な位置付けにある会です。今回は東京医科歯科大学の荒井裕国先生が会長で、
3D内視鏡やロボットを3Dで皆で勉強する、意欲的な会でした。題してLet’s do it.
という荒井先生らしい前向きなテーマでした。

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内視鏡を用いた心臓手術は私たちも以前から検討していましたが、直視下ミックスで
特に問題なく、まだ内視鏡の性能に不満があり値段も割高なので、ミックス手術は
直視下と補助的に内視鏡を使うようにしていました。しかし時代は変わり、高性能の
Stolz社製3D内視鏡が出てそろそろこのタイミングでと思うようになり、医誠会病院
心臓血管外科としてこれを導入、使用開始したところでした。関西初とのことでした。

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ミックスサミットでも3D内視鏡での僧帽弁手術などが供覧され、併せてダビンチ・
ロボットでの手術も供覧し比較するという全体の構成でした。
ダビンチもこの20年間で改良が加えられましたが、3D内視鏡としてはStolzのそれの
方が高性能で、当分の間はダビンチは将来の医学の発展のためにという位置付けと思い
ました。

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ダビンチ・ロボットを使う手術は何かAIで自動的に仕事をすると勘違いされる一般の方
もおありでしょうが、この手術ロボットは高級な孫の手で、自分の知恵で動くような
ものではありません(心臓外科手術情報WEBの手術ロボットのページ
(https://www.shinzougekashujutsu.com/robotics)をご参照ください)。

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ただ少し慣れれば関節がたくさんあるため操作がしやすく、誰にでも使えるという意味
で将来性を感じます。なのでダビンチの特許権が切れて、内外から安価で進化した手術
ロボットが出現するころに、大きな展開があるかも知れません。
医誠会病院では10年以上前に、このダビンチ・ロボットを2台も稼働するという超
先進的な試みをやっていましたが、あまり優れものではないことが判明し、売却したと
いう経緯があります。新病院ができる3年後にはもっと優れた、実用的な手術ロボット
が稼働しているかも知れません。

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ミックスサミットですので、私も2題発表しました。
ひとつは複雑三尖弁形成術のミックスで、とくにエプシュタイン病に対するコーン手術
をミックスで施行したのは、経験豊かな先生からお褒め頂きました。世界初でしょうと
いうことでした。患者さんには大変喜んでいただき、うれしい限りでした。

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もう一つの発表は、心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する心房縮小メイズ手術を
ミックスでも行うというもので、まだ誰もできない手術のため発表したのですが、
前向きのコメントを頂きました。

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次回は3D内視鏡による新しいミックスの報告ができればと思いました。
有意義な学会を開催された荒井先生と東京医科歯科大学の皆様、お疲れ様でした。

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令和1年8月4日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第132号】 第24回日本冠動脈外科学会にて

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いい心臓・いい人生 【第132号】 第24回日本冠動脈外科学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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梅雨が明けたと思いきや、台風が来て近畿はしっかり雨が降っています。台風進路
沿いの皆様にはくれぐれもご注意をお願いします。

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さてこの11日と12日、金沢市で開催された冠動脈外科学会に行って参りました。
金沢大学教授の竹村博文先生が会長で、金沢出身の大哲学者・西田幾多郎の言葉を
引用しての「潜心、そして、先進」というテーマでした。

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竹村先生のお人柄を反映したような、親切丁寧な企画が多く、皆さん大変勉強に
なったのではないかと思いました。
一般の読者の皆様にも冠動脈疾患(つまり狭心症や心筋梗塞など)の治療では
このような問題があり努力が行われているということを知って頂く機会になるかも
しれないため、ここで少し記載します。

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まず初日の「虚血性心疾患の新しいガイドラインを読み解く」では新しいガイド
ラインの説明と現状が論じられました。外科治療つまり冠動脈バイパス術は重症例
で患者さんの命を助ける、寿命を延ばすというメリットがあり、ガイドラインでも
治療法として推奨されるケースが多々あります。しかし、これが現場ではまだ浸透
しているとは言えず、カテーテル治療が行われるケースが多いことも論じられまし
た。どのようにして患者さんに最適の治療が行われるか、内科外科を含めたハート
チームをもっと機能させるにはどうしたら良いかが論じられました。

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もう一つの親切企画、FFR(冠動脈にどれくらい血液が流れているかの指標)の
教育講演も好評でした。これまでは冠動脈に造影剤を入れて内側を動画にして、
どこが狭くなっているかを調べ、それに応じてカテーテル治療PCIやバイパス手術
を行なって来ましたが、一見狭くなっている冠動脈でも、実際にはけっこう良く
血液が流れている、つまりその部位には治療の必要がない、こうしたケースが多々
あることがわかって来ました。それを認識することは患者さんに本当に必要な治療
を行い、かつ、不要な治療を回避するという大きなメリットがあります。このFFR
そして冠動脈の内側を精密に知るOCTの講義がされました。すでに知っていること
とは言え、あらためて最近の知見を学び頭の中を整理する素晴らしい機会になり
ました。

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また国際セッションとしてアジアの有名心臓外科医が手術をビデオで披露する場が
ありました。畏友Jae Won Lee先生(韓国)やKi-Bong Kim先生(韓国)、
Suchart Chaiyaroj先生(タイ)はじめ、数名の先生らが参考になる貴重な手術
ビデオを見せてくださいました。蛇足ながらせっかくの友好セッションでもある
ため、中国のジョークをひとつお話ししなるべく場を盛り上げるようにさせて頂き
ました。

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2日目には重症虚血性僧帽弁閉鎖不全症のワークショップがあり、私も発表いたし
ました。この病気は弁膜症の形を持っていても本質は心室の病気であるため、心室
を治すことが必須である、という観点から、世界に先駆けて行なって来た2つの方法
(乳頭筋前方吊り上げと心尖部凍結型左室形成術)を同時に行う手術を披露しました。
こんな重症でも治るのですか、ぜひ使ってみたいと後でご質問をいただき、手術の
コツや、外科治療の持ち味つまり内科のカテーテルではできない治療を行うことが
患者さんやハートチームに貢献する道であることをお話ししました。

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午後には会長のもう一つの親切企画、Syntaxスコア計算の講演がありました。この
Syntaxスコアとは冠動脈疾患の重症度、複雑度を計算するもので、このスコアが高い
とバイパス手術が有利になり、スコアが低いとカテーテル治療PCIが有利になるという、
貴重な指標です。しかしその計算法を知らない人が多く、私も数年前に勉強したまま
になっていましたので有用なセッションだったと思います。

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2日目最後にブローアウト型左室破裂のビデオセッションがありました。ブローアウト
とは心筋梗塞のあと、文字通り、左室が爆発(ちょっとおおげさ)するように破れる
病気で、多くの患者さんが死亡されますし、手術も難しいと言われています。私は15
年以上前にアメリカのジャーナルで発表した手術法をさらに改良したものをお出しし
ました。工夫すれば出血を止めることは難しくない、それよりも患者さんが生きている
うちに手術室まで到達できる方法を考えよう、生きて到達できれば救命可能という
メッセージをお送りしました。発表の先生方もみなさんそれぞれ貴重な経験と努力を
披露され、今後の展開につなげる良いセッションだったと思います。

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それ以外にも若い先生らに役立つセッションも多く、充実した二日間で、私は金沢の
街を楽しむ時間なく、急いで大阪に戻ることになりました。立派な会を開催された竹村
先生はじめ金沢大学の皆様、ご苦労さまでした。

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令和1年7月27日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第131号】 講演会のお知らせです

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いい心臓・いい人生 【第131号】 講演会のお知らせです
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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昔、梅雨とはしとしとと長期間雨が降るうっとうしい、ある意味風流もある、そんな

時節でした。最近は晴れか豪雨かという亜熱帯型が定着したかのような梅雨が多かった

ように感じます。今年の梅雨は昔風で、懐かしくも困っておいでの方が多いのではない

でしょうか。

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さて今回は講演のお知らせです。

医誠会病院無料公開医学講座として開催いたします。

題して「心臓病や心臓手術を知る!――元気生活にもどるために」。

ざっくばらんに心臓病に向き合う方法、とくに心臓手術について解説します。

以下はご案内パンフレットからの引用です。

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息切れや胸の痛みや動悸などで困っておられませんか?

病院で心臓手術を勧められたが、どうしようと迷っていませんか?

心臓手術で胸に大きな傷跡が残ったり、後々痛みが強いと心配していませんか?

心臓手術が必要だが、手術できないと言われていませんか?

それらを含めた心臓病、心臓手術について、とくに手術を中心にお話しします。

弁膜症(弁形成や傷跡の小さいMICS)、心筋症・心不全(新しい左室形成術)、

虚血性心疾患、大動脈疾患、成人先天性心疾患などを対象に事例の紹介をいたします。

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日時は: 2019年8月8日(木曜日) 14:00から1時間 入場無料です

会場は: 日本メディカル福祉専門学校3階

大阪市東淀川区大隅1−1−25

定員80名で、予約不要ですが、先着順です。

アクセスは阪急京都線上新庄駅下車 南出口より徒歩9分 または

大阪メトロ今里筋線だいどう豊里駅下車 徒歩11分

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講座に関するお問い合わせは医誠会病院の広報担当まで

06−6312−2151(代)

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パンフレット(地図付き)を米田のホームページ(心臓外科手術情報WEB)に

載せる予定です。

お知らせのページをご覧ください

(https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2008/11/post-4fa5.html)。

ご参照ください。

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みなさん奮ってご参加ください。

講演会の間にもご質問をお受けしますが、その後に時間があればご質問やご相談に

応じたく思います。時間がなければその後の相談の予定を立てることもできる

でしょう。悩むより相談です。

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令和1年7月22日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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いい心臓・いい人生 【第130号】 関西胸部外科学会にて

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いい心臓・いい人生 【第130号】 関西胸部外科学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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降ったり晴れたりという天候のこの頃ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。
私はこの6月14日に関西胸部外科学会のため、徳島へ行って参りました。
本来は委員会なども含めると3日間参加するのが普通なのですが、病院の仕事が
忙しく、1日だけの参加になりました。

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この学会は地方会とはいえ、西日本のほぼ全域をカバーする立派な学会です。
しかし昨今の心臓外科の若手育成政策に乗っかって、若手のための症例報告の
センションが近年増え、1日目の大半はそうしたセッションでした。
マイホーム主義に陥りがちな若手のモチベーションを上げ、学会という切磋琢磨
と友情の場へ彼らを誘うという意味で大変好ましいことと思いました。

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私は病院内の仕事に追われ、2日目だけの参加となりました。
午前中の僧帽弁形成術Redo(再手術から学ぶ)シンポジウムでは面白い発表が続き
ましたが、私は10年間で300例近い僧帽弁形成術の中で16例のRedoの検討を
行いました。そのうち10例は前回手術は他病院で施行されたもので、前回手術の
問題点と再手術時の工夫、そして前回つまり初回手術をどうすれば成功したかに
ついて発表しました。

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例えば前回、他院での人工腱索の長さが間違っていたとか、前回バタフライ
(砂時計)形成の時に大きく切除しすぎて弁尖が足りなくなっていたとか、他院
でリングをつける位置が間違っていたなどですね。
また虚血性MR、機能性MRで前回手術ではMAPつまり弁輪形成しかされておらず、
私が再手術する時に乳頭筋前方吊り上げ(PHO)を施行してうまく行ったという
ケースが4例もあったことなどをご紹介しました。

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さらに若い患者さんで前回手術が幼少時にKay-Reed法で成人してから再弁形成を
求めて私の病院へ来られたケースをご紹介しました。結構複雑な手術となり、前尖
と後尖それぞれに人工腱索4本ずつを立て、さらに後尖のパッチ拡大とリングで
逆流はうまく制御されました。幼少時の弁形成は大変良かった、弁置換術より
ずっと良いこともお話ししました。

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午後のMICSミックスの会長要望セッションでは、私がこれまで使ってきたアプローチ
について検討しました。

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僧帽弁形成術では右前小開胸でも手術はできますが、メタボなどで視野が悪い患者さん
でも手術がしやすい腋窩下部へと進んで行った経過をお話ししました。MICSの初心者
はどうしても浅い視野を求め、弁に少しでも近づこうと前開胸になりがちですが、それ
ではかえって手術の質を低下させると言うわけです。

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大動脈弁形成術では弁置換術で経験のある腋窩下部からスタートしましたが、上行
大動脈置換などにも対応しやすい第三ろっ間前開胸へ移行しつつあることも紹介しま
した。
三尖弁形成術特に複雑形成術では複数の角度から弁の観察ができる右前小回胸が良い
ことを報告しました。コーン手術や心室中隔欠損症VSDなどもこの方法で行なっている
ことをご紹介しました。

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MICSも他の心臓手術と同様、レベルが上がれば上がるほど、その方法も変化し、より
応用性の広い、発展性のあるものへと進化すると言うわけです。

これらの発表とディスカッションで多くの意見交換や学びを得たのは幸いでした。

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また心室中隔穿孔VSPのセッションでKomeda-David法と呼んで頂いているExclusion法
の最近の展開のご発表が浜松医大からあり、コメントをさせて頂きました。光栄なこと
でした。

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徳島では観光する時間が全く得られず、トンボ帰りの参加でしたが、高速バスで鳴門海峡
や瀬戸内海、淡路島や水の都徳島の景色を楽しむことができ、徳島での学会に感謝する
ひと時でした。阿波踊りの練習の音が聞こえていたのも情緒豊かでした。

充実した学会を主催運営された徳島大学の北川教授と教室員の皆様、素晴らしい学会を
ありがとうございました。お疲れ様でした。

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令和1年6月22日
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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝
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