【第九号】 第7回患者さんの会のご案内

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【第九号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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皆さん、まだまだ寒い日が続きますが、如何お過ごしでしょうか。

第7回の患者さんの会のお知らせをさせて頂きます。

前回は昨年2009年9月でしたが、その後新型インフルエンザの大流行が予想さ

れ、皆さんに集まって戴くこと自体に慎重になる状況でした。次はいつですか

と患者さんたちから聞かれても答えられない状況でした。幸い今年に入って新

型インフルエンザは下火になって来ましたので、そろそろ次の集まりをと世話

人の方々と相談いたしました。その結果、

日時: 2010年3月7日(日曜日)午後1時ー午後4時

場所:  祇園ホテル (いつものホテルで地下の広間の予定です)

〒605-0074
京都市東山区祇園町南側555番地
TEL : 075-551-2111 FAX : 075-551-2200

ということになりました。お問い合わせは米田心臓外科オフィス(中村、連絡

法は下記を)までどうぞ。

テーマは

1.メタボリック症候群に負けない方法。しっかり食べても安全にやせる、低炭水

化物ダイエット法 についてお話します。糖尿病や高脂血症(コレステロールや

中性脂肪)の改善に役立ち、血圧や心臓にも役立ちます。

2.自由な質疑応答

3.患者さんの声

です。お誘い合わせのうえご参加下さい。この会はもとは米田正始の手術を受

けられた患者さんとご家族の会でしたが、最近はそれらの方々に加えてご友人

や心臓病の方、心臓の健康に関心のある方もご参加戴いています。

会費: 前回と同じ2500円です

なお時間の都合上、ゆっくりとしたご相談はできないかも知れませんが、その

場合はとりあえず概略をお聞きしておいて、その状況に応じて後日機会を

設けたく思います。

患者さんの会の連絡先 米田心臓外科オフィス 秘書 中村由佳
TEL:080-6105-8231(直通)
FAX:075-712-8835
Eメール:nakamura@heart-center.or.jp です。

(このメールマガジンは心臓血管外科情報WEBの中の患者さんの会のコーナー

から一部抜粋、転載いたしました)

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第八号】寒い日はご用心

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【第八号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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寒い日が続きます。この寒い季節にはハートセンターのような心臓専門病院は忙しく

なります。つまり寒くなると心臓の調子が悪くなるのです。

たとえば狭心症の患者さんでは寒くなるとそれまで安定していた症状が急に悪化し、

運が悪いと心筋梗塞を起こして緊急入院・緊急治療になることもあります。それは

寒くなることで全身の動脈が縮こまって血圧が急に上がり心臓への負担が急に増え

るからです。また寒さのために心臓に血液を送る冠動脈そのものが縮こまり血液が

流れにくくなることもあります。急な寒さは心臓の大敵なのです。

 

同様に、心不全をお持ちの患者さんでも、寒くなると心臓への負担が急に増え、それ

まで何とか安定していた心不全が一気に悪くなることがあります。弁膜症や心筋症

その他の病気でも同じことが起こりやすいため注意が必要です。

 

昔の人は偉かったと思うことがよくあります。まだ医学も医療も未熟であった時代でも、

心臓の悪い患者さんをみて、この冬を無事に乗り切ってくれれば良いが、などと普段

以上の注意をしたものです。実経験の中には科学が息づいているという一例ですね。

 

また寒くなると肺や気管支などの空気の通り道が寒さのために傷み、肺炎や気管支

炎のもとになります。現代のエアコン社会では暖房のために湿度が下がり、肺や気管

支の表面もカサカサとなって抵抗力は落ちてしまいます。そこへばい菌やウィルスが

つけこむと肺炎や気管支炎になりやすくなります。まして心臓がもともと悪い方の場合

は二重に肺もやられやすくなります。

 

そのため冬にはいつも以上の、ちょっとした気遣いが心臓や肺や体を守ります。たと

えば急に寒いところに行かないように、寒いときはポータブルトイレを寝室に置くとか、

やむなく外へ出るときは軽くウォームアップしてから出るとか、マスクをかけて冷たい

空気をいきなり吸わないとか、エアコンをつけるときは加湿器も使うなどですね。それ

らのケアに加えて、必要なときにはお薬を出してもらえば、効き目も上がるというもの

です。

 

そして心配なときは気軽に相談できるようなかかりつけの先生をもっておくというのも

有効です。私は自分が手術させて戴いた患者さんに、何か起こればいつでも病院

まで連絡して下さいとお伝えしています。そのおかげで寒い季節でも安全に回復され

たことは何度もあります。近くの患者さんでしたら直接病院へ来ていただき、関西、

首都圏や九州その他遠方の方はその地域の先生にこちらからもお願いして早期発見

・早期治療できるようにしています。

寒い季節を楽しく安全安心で過ごしましょう!

(註:この記事は私のホームページにある心臓外科医の日記ブログから一部抜粋、転載い
たしました。日記ブログの方もご覧下さい)

2010年1月6日

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第七号】 新年おめでとうございます

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【第七号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
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           編集・執筆:米田正始
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明けましておめでとうございます

旧年中はこのブログを読んで戴きありがとうございました。今年もよろしくお願い申し上げます。

昨年は世の中も医療の世界もさまざまなことがありました。政権交代があり、医療についてもとくに医療崩壊について熱い議論がさ れるようになっています。新年早々ですので、なるべく肩の凝る話はしたくないのですが、医療の世界とくに公的病院での税金の無駄遣いに光が当てられるとともに、患者さんや社会を守るための予算を削減されないように皆で努力する必要があります。

福祉や医療のための予算を毎年2200億円ずつ削減されて来たのが昨年、ようやく止めになりました。しかしその打撃から立ち直るにはまだまだ時間がかかりそうで、その間、患者さんを守る必要があります。

医療は、とくに心臓関係は365日24時間体制でなければなりません。ただし現在の医療費・医療体制では完全シフト制を敷くだけの人手は雇えず、職員の献身的ボランティア精神で何とかうまくこなしているのが現状です。たとえばハートセンターでは緊急手術となれば待機メンバーが直ちに病院へ来てくれて当直医と合流し、いつでも必要な手術ができます。

逆にそうした工夫ができない病院では診療拒否とかたらいまわしなどが起こっています。救急車でのたらいまわしなどの目に見える医療崩壊はまだ議論になりやすいのですが、重症患者さんなどをリスクが高いからと手術・治療や検査さえ拒否するような形での医療崩壊は社会から見えにくく、根深い問題です。名古屋で仕事を始めて1年余り、そうした公的病院内での医療崩壊を多数見て来ました。

この不況の時代で明るいニュースはあまりないのですが、これまで私たちが主張してもなかなか議論にもなりにくかった上記の話が「話しになる」状態になっているのは幸いです。

またこれまで医療費亡国論つまり医療費に予算を投入すると日本経済はダメになるという誤解があり、そのために医療費を削って道路工事などに多額のお金を投入するというのが日本の姿でした。しかしそれは誤りであると科学的に証明がされました。

これからの時代は患者さんや市民の皆さんが声を出して問題を解決することも大切かと思います。結局堅苦しいお話になりました。申し訳ありません。

皆さん、今年も真摯にかつ明るく楽しく前向きに進みましょう。

(註:この記事は私のホームページにある心臓外科医の日記ブログから一部抜粋、転載いたしました。日記ブログの方もご覧下さい)

平成22年1月1日 

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第六号】 事業仕分け

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【第六号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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最近は国会やメディアで事業仕分けが話題になりさまざまな無駄があるもんだと感じました

。その中には快哉を叫びたくなるような面白い話や、ちょっと近視眼的で日本の将来を十分

考えていない話までいろいろありました。

後者の方の例を挙げますと、さまざまな研究予算が削られる方向にあります。日本は土地も

資源も少なく、あるのは人と技術だけです。人を育て技術を育てることがこの国にとって大切

です。研究予算は人と技術を育てるために必要不可欠でこの国の将来を決める重要なもの

です。世界中がしのぎを削って競争している中で日本だけがどんどん後退して行くのは危険

なことです。人と技術がダメになってしまうと食料を輸入することさえできなくなります。

前者の例を挙げますと、既得権を確保するために造らなくても良いダムを造り続けるなどの、

官公庁・官僚のためにお金を投入することなどがたくさんあります。またそれに群がり甘い汁

をすうような官僚や天下りの方々が多数います。この機会にしっかり大掃除してほしいと思

います。

医療の世界でもこうした官僚のための無駄遣いはたくさんあります。多額の税金を投入しても、

しっかりした医療ができない事例はすでに山積しています。いわゆる医療崩壊として救急の

たらい回しはよく知られていますが、病院内でもちょっと状態が悪いと、「安全上の理由で」

手術が許可されないなどの事例が国公立病院では増えています。手術を断られた患者さん

はどうなるのでしょうか。

また公的病院では天下りの人たちに多額のお金が巧妙な形で支払われているのは知る人

ぞ知る、大問題です。ぜひこの機会に皆の議論の場にあげて、改善したいものです。医療を

良くするために皆さんも関心を持っていただき、発言して頂ければ幸いです。

(註:この記事は私のホームページにある心臓外科医の日記ブログから一部抜粋、転載いたしまし
た。日記ブログの方もご覧下さい)

2009年12月12日

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第五号】 再生医療ご報告2

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【第五号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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秋も深まって参りましたが皆さん如何お過ごしでしょうか。

以前にご紹介しましたタイ国バンコックでの再生医療の手術の結果が出ました。今年8月に行った手術でした。

麻酔をかけた患者さんの左胸部に小さい切開を入れて、そこからbFGF(ビーエフジーエフ)というタンパク質を徐々に放出するゲルを心臓の表面に置くだけの、体にやさしい方法です。治療から4週間後の冠動脈造影にて、治療前には見えなかった新しい血管が何本も写っており、心臓に血液が良く流れるようになったわけです。まだ若いのにバングラデシュでは治療法なしとさじを投げられた患者さんでしたが、喜んで下さいました。

名古屋ハートセンターが開院してからちょうど1年が経ち、多くの患者さんが来て下さるようになりました。その中に他病院で打つ手なしと言われた方が少なくないので、何とかしたく思っていましたが、今回のタイ国での臨床試験の結果を受けて、これからこの治療法が必要な方で、タイまで一緒に行って下さるかたにこの治療法をと期待しています。

再生医療は世界でも日本でも一時脚光を浴び、さまざまな臨床試験が行われました。ある程度の成果が見られましたが、その多くは効果が不十分あるいは不確実ということで停滞しています。しかし医学の歴史ではこうしたことが多々あり、その後の周辺技術の進化により、かつて諦められた治療法が改善強化され復活したというケースは少なくありません。たとえば、ある種の細胞移植ではそれほどの効果が上がらなかったという実例がいくつかありますが、今回のbFGF徐放を併用すれば効果は格段に上がります。私たちの動物実験のデータからそれはかなり有望とみています。こうして近い将来、より優れた再生医療ができればと思いつつ、努力しています。

といっても私の本業は心臓血管外科の患者さんを手術によって救命し、元気に長生きしていただくことですので、普段は名古屋に張り付いて努力しています。もともと緊急手術を得意とする足腰の強い病院ですのでいざという時には電話連絡して下さい。

これから次第に寒い季節に入って行きます。平素の健康管理と、今秋から冬にかけてはインフルエンザに十分ご留意下さい。新しい情報を私のWEBに簡略記載していますので( http://www.masashikomeda.com/web/2009/08/post-9b03.html )ご参照頂けましたら幸いです。

2009年10月23日

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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【第四号】 新型インフルエンザ

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暑さが一段落したこの頃ですが、皆さん如何お過しでしょうか。

新型インフルエンザが流行しています。新聞の報道では、8月末の1週間
で15万人が発症確認されています。夏という、普通ならインフルエンザが流
行しにくい季節のことですので、やはり異常な流行ぶりです。

心臓血管外科の患者さんたちの中で、手術ですでに心臓が良くなった方々には
心臓という意味のリスクはそう多くないかもしれませんが、心不全が多少でも
残るタイプの病気や、糖尿病や年齢、肺機能障害や腎不全、その他さまざまな
付随病変があれば、一般の方々よりも注意が必要です。

これから次第に寒くなるにつれて、この新型インフルエンザの
患者さんや、それによる死亡者が激増することが心配されています。

それを考え、私のホームページ(心臓外科手術情報WEB)に基本知識の整理を
載せました。

http://www.masashikomeda.com/web/2009/08/post-9b03.html

ぜひご一読の上、対策を立てて頂きたく思います。またもし新型インフルエンザ

になれば、早期の治療が救命につながるケースも多いと思います。

心臓血管外科の患者さんたちにおかれましては、急に発熱し、新型インフルエ
ンザの可能性があると感じたらすぐに受診・相談して頂くことをお勧めします。

以上、突然ですが、心配になりメルマガ号外としてお送りさせて頂きます。

2009年9月1日

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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【第三号】 再生医療ご報告1

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心臓の再生医療・手術をするためタイ国・バンコックへ先週、行って参りました。

ご存じのように、アジア諸国は近年大きく経済発展し、医療や医学でも実力をつけ

つつあり、個々の人たちも自信をつけられ、欧米の学会への参加や発表でも

昔よりずいぶん積極的になって来ておられます。アジアの先生方(というより多

くの国民)の真摯で勤勉な姿を知るものとしてうれしいことです。

 

さらに、最近数年間知られるようになったメディカルツーリズム(medical tourism)
でアジア諸国へ手術や治療を受けに来ることが増えました。

この背景にはアジア諸国の若い医師たちが欧米へ留学し先進医学を学びやすくなったという経済状況があります。欧米の患者さんから見れば、医療レベルも悪くない、英語もかなり通じる、そして何よりも安い、というわけです。


私たち日本の医師から見ますと、新しい治療法への認可が日本で特に厳しく、なか
なか実現できないという問題があります。

そのため心臓の再生治療の認可をタイで受け、準備を進めていましたが、政変が起こったため、様子を見ていました。

今回は政治状況が落ち着いたことと、この治療法しかないという患者さんが来られたため実現の運びとなりました。

 

患者さんはバングラデシュから来られた若い男性で、狭心症(虚血性心疾患)のため
自国で数年以上前に冠動脈バイパス手術を受けられました。

いったん元気になられましたが、病気が進行し、心筋梗塞を起こし、心不全+狭心症という形で自国では治療不可能と言われてバンコック心臓センターへ来られました。

この病院は日本でいえばハートセンターのような位置づけにある活発な民間病院で、その高機能さや快適さ美しさは日本の水準を超えており感心します。

手術はこの方法の特長つまり侵襲が低い(体への負担が少ない)ことを反映して、2
時間ほどで終了し、すぐ話ができる状態になりました。念のため術後数日間は入院
して頂きましたがそのまま退院され、外来フォローとなりました。

bFGFというたんぱく質を使うこの治療法では新しく動脈が育つまで何週間かかかるため、しばしはこのまま待つことになります。うまく行けばバイオバイパスと呼んでいる細い血管のバイパスができ心臓が良くなります。


同様のメディカルツーリズムはタイだけでなくアジア諸国では隆盛の一途で、それ

だけ国力も医療も進化しているわけです。日本には国民皆保険制度を始め、日本

ならではの良さはまだありますが、患者負担が増えたり先進国より医療費抑制が

強すぎて現場が崩壊したり、制度が古く国際化時代に遅れ、新しい治療の恩恵を

国民が受けられないといった問題点がでてきています。


ぐちっていてもはじまらないので、まずは実行とタイでの治療を始めました。実績

を積んで、日本の患者さんも安心してタイまで行って頂けるよう、さらに日本でも
これを開始できるよう、努力したく思います。


2009年8月22日記

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執筆:米田 正始
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【第二号】 冠動脈外科学会

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うっとおしい梅雨の季節ですが皆さんいかがお過ごしでしょうか?

先週、熊本の学会(冠動脈外科学会)に行ってきました。

この学会は狭心症心筋梗塞などの外科手術を主にあつかう学会ですが、それに
関連した弁膜症やさまざまな病気も論じます。

そこで感じたのは、まだまだ患者さんへ治療(お薬やカテーテル治療そして手術)
の情報が行きわたっていないということです。これは経験豊富な心臓外科医が
一様に感じていたことです。

たとえばこの学会でも狭心症の治療を例に取れば、世界的に高い評価を受けて
いる研究でバイパス手術は重症冠動脈疾患の場合はカテーテル治療より成績が
良いということを示しているのに、そうしたものを頭から否定する内科の先生
もおられました。

私は外科医ですが、こどもの頃から痛いのは嫌いで、手術も避けることができる
ものなら避けるのが良いと思ってこれまでやって来ました。

しかし手術することで患者さんがより安全に長生きできるなら、手術の方が結局
患者さんにはやさしい治療であるとも言え、見かけのやさしさ、たとえば皮膚を
切らずにすむなどは、こと命の重さを考える限り、一番の重要事ではないと思い
ます。

実際、カテーテル治療を何度も何度も繰り返し、それからバイパス手術などに
来られた患者さんはこれまで多数ありますが、それなら最初から一回手術を
受けておけばもっと安全で快適だったのに、というご意見を頂いたこともあり
ます。

あるいはカテーテル治療で新型のステントと呼ばれる網状のものを冠動脈に
入れると強力な血栓予防薬を長期間飲む必要があり、そのために別の病気に
なったときに手術治療ができないなどの話を十分に理解しないままの患者さん
が少なくありません。

結果論でものを論ずる必要はありませんし、カテーテルの先生方もなるべく
少ない負担で一回で治してあげようと一生懸命治療して下さるケースが多い
です。

しかし中には一方的な説明で、カテーテルは患者さんにやさしい、外科手術は
怖いという刷り込みをされたケースも見受けられます。皮膚の創だけ見ればそう
思えるだけに罪深い刷り込みになっていることもあります。カテーテル治療が
適しない病気があるためです。

このようなことが起こる原因は、患者さんがまず内科(循環器内科)を受診され、
そのまま外科の意見や情報を得ないままカテーテル治療へと進むことがよく
ある、この構造にあります。

そうしますと患者さんの視点からは、まず幅広く内科と外科の意見を聴き、
場合によっては3者で相談するぐらいの姿勢が好ましいのではないかと思い
ます。とくに病気が重症のときにそれは役立つでしょう。賢明な患者さんは

ネットや人脈を使って情報を得て、相談に来られ、あるいはメールを送って

こられます。

外科の観点からはガイドラインを尊重し、手術すべき時は患者さんやご家族の
協力を得て敢然とやる、手術不要なときは経過を見る、要するに患者さんに
メリットのある適正な治療をする、これが大切で、幅広く相談することでその
正しい姿勢が守られるようになるでしょう。

患者さんが自らを守る、そうした姿勢の上に立つ幅広い視点を持つ医療、
これが今求められる冠動脈疾患というよりあらゆる領域での医療の姿では
ないかと思うこのごろです。

なお上記はある程度以上、進行した冠動脈疾患の話で、軽症の方は、毎日の
生活習慣の工夫やお薬による予防が第一です。バランス良い食べ物、適度な
運動、太り過ぎの予防、定期健診でコレステロールや糖尿病などをチェック、
必要なら的確なお薬、できるだけ禁煙、などなどいずれも努力の意義はあり
ます。その上で、必要時には早期診断早期治療は効くでしょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【創刊号】

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心臓血管外科の手術が必要な病気はけっこうあります。
それらの病気の多くはまず生きるために、あるいは長生きするための
手術が多いです。
同時に楽しい人生あるいは有意義な人生を送るための手術も多数あります。

たとえば狭心症に対する冠動脈バイパス手術糖尿病血液透析などの
血管の悪い患者さんではカテーテル治療よりも優れた安定度を示します。
手術のあとはより仕事に専念しやくすくなり、また旅行やスポーツなどの
楽しみに対する制限が少なくなります。

このメールマガジンではこうした情報を定期的にお知らせしていきます。

また同じ手術を受けたあとも、ちょっとした工夫や注意で、安全安心の
毎日が送りやすくなるということもよくあります。

たとえばある種の病気をもった患者さんでは大動脈の手術の後も、
大動脈の他の部分が次第に悪くなり、また手術が必要になることが
あります。それを前もって知っておけば、そうしたことがもし起こっても
十分な準備があるために、ゆうゆうと対処しやすくなります。

このメールマガジンではこのようなお役立ち情報もお伝えしたく思います。

心臓(血管)の病気をうまく解決し、良い人生を送っていただくのに役立つ
メールマガジンを目指して頑張ります。

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執筆:米田 正始
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