いい心臓・いい人生 【第109号】 胸の痛み、怖い場合とそうでない場合

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いい心臓・いい人生 【第109号】 胸の痛み、怖い場合とそうでない場合
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発行:心臓外科手術情報WEB

心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから


編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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季節の変わり目ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。

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さて最近、All About(オールアバウト)に新しい記事をUpしましたのでご紹介
します。

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体の症状の中でも胸の痛みはいろいろあり、中には命にかかわる大変なものも
あります。中にはそう心配のないものもあり、結構そうしたものが多いのです
が、一般の方にはもしも危険な痛みだったらどうしよう、とご心配になられる
ケースも少なくありません。

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これまで、多くのご質問を頂いたため、記事にいたしました。
All Aboutの健康・医療のページの米田正始のところにUpしてあります。
心臓が痛い・胸の痛みの症状から考えられる病気 というタイトルです。
https://aaprev.allabout.co.jp/gm/gc/474704/

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心筋梗塞や急性大動脈解離などは早く病院へ行き、早く治療を受ければ治る
病気になりました。そのためタイミングを逸しないことが大切です。
タイミングが遅れるといのちを失うことが多々あるのです。
上記の記事がお役に立てば嬉しいことです。

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なお私のHP、心臓外科手術情報WEB でも症状さくいんのページ

10b. 症状さくいん―症状や患者さんのお話しは大切です


に参考情報をあげてありますので、こちらもご参照ください。

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もし胸痛があり、それが軽いか重いかわからない、ということもよくあること
です。医者でも循環器内科や心臓外科以外の方々にはわかりにくいことさえある
のです。どちらか分からない時には直ちに病院へ行かれることをお勧めします。

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それから俳優ファン・チャンホさんの急死の一件から、若い元気な方でも起こり
得る、心臓突然死の記事もUpしました。
タイトルは、年間5万人を襲う突然死…6割を占める心臓突然死の前兆
です。こちらもご参照ください。

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平成30年5月23日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第108号】 アメリカで発表して参りました — その2

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いい心臓・いい人生 【第108号】 アメリカで発表して参りました — その2
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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天候が不順なこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。ゴールデンウイークの
疲れは取れましたでしょうか。

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米国胸部外科学会AATSの報告記その2です。
この学会はアメリカの医療だけでなく世界の医療を支援するという、アメリカ人
らしい誇りに満ちたところがあり、その志は随所に見られ、感心することが多い
です。

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今回の会長はカメロン先生で長年名門デューク大学で大動脈基部などの手術で
貢献して来られた先生です。いつも笑顔で親切、質問にも丁寧に答えてくれる方
で、日本も大好き、名刺に日本語で名前を書いているほどの方です。

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そのカメロン先生の会長講演では、「優しく」がテーマで、難しい手術を
てがける心臓血管外科医として血管や弁などの組織を優しく扱うことが
どれほど重要かをまず話されました。組織を乱暴に扱う外科医は組織がちぎれ
たり、糸が外れたり、あちこち出血だらけになって悲惨な姿になることは周知
の事実ですので、大動脈基部の比較的難しい手術を中心にしておられるカメロン
先生ならなるほどと思いました。

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話はそこから患者さんや周囲の仲間たちへの優しさへと広がり、なぜカメロン
先生がいつも皆に笑顔で親切であったか、理解できたような気がしました。

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ふと自分のことを考えると、自分は患者さんに対してはひと一倍というより5倍
以上優しくして来たつもりです。患者さんが何かからだに悪いことをした場合は
患者さんに怒ったこともありますが、それは家族を助けるときに怒るのと同じ
気持ちでした。私が病院を異動したときも、患者さんが遠方へ引っ越しされた
あとも、患者さんたちがついて来て下さったのは大変うれしいことでした。患者
さんの熱い支持があれば医者としては立派と思っていました。

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しかし自分が仲間たち、たとえば看護師さんたちに患者さんに対するほど優しく
接していたかを考えると、できていなかったと認めざるを得ません。自分が24
時間365日患者さんのそばにいるわけではないことを考えると、仲間たちを
がっちりサポートできないようではダメということですね。これから姿勢を
かえようと思いました。

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たまたま昨年度の会長、畏友サント先生と話する機会があり、彼の会長講演も
今年のカメロン先生と同じ方向性の話で、彼もまた皆に親切、いつも笑顔で
サポートというタイプの方なので、やはり心がけが優れていると同じ雰囲気
になるのだと知った次第です。

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今回のAATS学会では自分たちの成果を発表するだけでなく、手術や治療の
成果をいくつも学ぶことができました。重症心不全とくに機能性僧帽弁閉鎖不全症
や虚血性僧帽弁閉鎖不全症、拡張型心筋症や虚血性心筋症などでは2年続けて
発表しているように彼らをリードしているのも具体的にわかりました。

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それに加えて患者さんの安全をどう確立するかというセッションにも参加し、
米軍の指導者の話に感心しました。

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軍隊ではちょっとのミスや誤解が死を招く、という意味では手術室と似ている、
というところから始まった話です。高いレベルの手術をするためには、信頼と
気風(精神)、敬意、コミュニケーション、そして標準(ルーチン)が確立しない
といけないという話でした。そこにauthenticity(信頼できること、確実性)や
accountability(責任)、成長やコンセンサスなどが大切ということでした。卑近な
表現をすれば仲間を患者さんレベルで大切にする、なれ合いではなく仲良くなる、
それによって意見を出してもらいやすくする、などからのスタートということ
でしょうか。

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このセッションでは上記のサント先生も講演しておられ、negativeな批判ではなく
前向きのpositiveな意見で進めていこう、それがやりやすい雰囲気を作ろう、とくに
リーダーである外科医が率先してそうしようとのことでした。立派な友人に囲まれる
というのは幸せなことであると実感しました。

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恩師デービッド先生やワイゼル先生、トロントの仲間たちともゆっくり話ができ、
私の手術(乳頭筋の前方吊り上げ、PHO手術)をトロントで是非使いたいと言って
頂いたのも光栄なことでした。

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あっという間に過ぎ去った充実の4日間でした。機会をくださった医誠会病院の皆様方
に感謝申し上げます。
帰国して早速、大変な手術を皆さんのおかげで笑顔で乗り切り、成果を感じています。

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平成30年5月12日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝

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福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第107号】 アメリカでまた発表して参りました

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いい心臓・いい人生 【第107号】 アメリカでまた発表して参りました
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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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ゴールデンウィークの真っ只中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

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私は今週アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴで開催された第98回
米国胸部外科学会(略称AATS)に発表のため参加して参りました。

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この学会は名前は米国、、、ですが、実質は世界のトップに位置する学会で
世界中の心臓血管外科の主な先生方が参加されます。そのためここに参加する
ことは世界の動向を知ることになり、またここで発表できることは世界で認め
られたのと同じ意味を持つと言われます。日本からも熱心な先生が一定数
参加しておられました。

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私個人にとっては昔お世話になった内外の先生方や、旧友と再会する貴重な
機会でもあり楽しみにしていました。

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今年もまたこの米国胸部外科学会(AATS)で発表の機会をいただいたため、
行って参りました。

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昨年の発表に引き続いて2年連続の発表という大変光栄な機会になりました。
昨年は機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する新しい手術、PHOと呼んでいる手術
の成果を見て頂きました。今年は新しい左室形成術、心尖部凍結式左室形成術
の成果と今後の方向性を発表しました。

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左室形成術はもともと重症心不全の患者さんに使うこともあって、冠動脈
バイパス手術や普通の弁膜症手術より死亡率が高い、難しい手術として知られて
います。あまりのリスクの高さに近年は敬遠する心臓外科医も多く、話が
心臓移植や人工心臓ができない患者さんの治療ですので、患者さんにとっては
この左室形成術が最後の生きる手立てなのに、という困った状況にあります。

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昔、京大病院で勤務していた頃に、この左室形成術で90%の重症患者さん
(そのままでは間も無く死んでしまう状態)たちの救命に成功する一方で、
約10%の患者さんをお助けできず、その数字だけが一人歩きして周囲に誤解や
ご迷惑をおかけし、大学を去る原因になった、曰くつきの手術でもあります。

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私はその後もこの左室形成術を改良し、この10年ほどはもう誰も死なせない、
安全なレベルに引き上げることに成功していました。これを3年あまり前から
さらに改良し、普通では補助ポンプも要らない、原則全員助けられる、
そこまで完成度を上げた左室形成術がこの心尖部凍結型左室形成術でした。
私にとってはかつての不十分な手術や医学に対する自分なりの回答であり、
かつて助けられなかった患者さんやご苦労をおかけした仲間たちへの禊(みそぎ)
という気持ちが強くありました。

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発表の後、良いコメントや前向きのご質問をいただき、そのあとも、
是非これから使いたいから詳細を教えて!と言っていただき、この10数年の努力
が報われた思いでした。

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この手術の詳細は近いうちに米国のメジャージャーナルから発行されるため、
これから世界のあちこちで患者さんの救命にお役に立てればこれ以上の喜びは
ありません。

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これをバネにして、さらに精進したいと思いながらサンディエゴを後にしました。
次回のメルマガでは、その他今回の学会で学んだことなどをご報告したく思います。

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平成30年5月3日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝

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元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第106号】 シュワルツェネッガーさんと小澤征爾さん

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いい心臓・いい人生 【第106号】 シュワルツェネッガーさんと小澤征爾さん
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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暑さと寒さが混在するこの頃ですがいかがお過ごしでしょうか。

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さて最近話題になっている弁膜症のお二人、アーノルド・シュワルツェネッガー
さんと小澤征爾さんの弁膜症の治療につきましてAll Aboutに記事をお書きし
ました。

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弁膜症治療は昔は多くの場合、弁置換つまり手術して人工弁を入れるしか選択肢
がありませんでした。しかし近年は体に優しい、胸を切らずにできるカテーテル
治療が進歩し、だいぶ治療体系が進化したように思います。

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俳優で元カリフォルニア州知事を務めたシュワルツェネッガーさん(愛称シュワ
ちゃん)の治療もその一つでした。残念ながら治療の最中で問題が起こり、
通常の胸を開く、いわゆる心臓手術に切り替えられたようですが、あとは無事に
終了したようです。カテーテル治療の良さと課題を教えてくれた一件でした。
早くお元気に社会復帰していただきたいものです。

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有名な指揮者である小澤征爾さんはまだ精密検査などの段階で治療はこれからの
ようです。大動脈弁狭窄症という弁が硬く狭くなる病気で、小澤さんのご年齢
からカテーテル治療、いわゆるTAVI(タビ)が用いられるかも知れません。
これは胸を切らずにできることが多いため、早くコンサートなどに復帰される
かも知れませんね。ぜひそうなって欲しいものです。

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それらの詳細はAll About(オールアバウト)の心臓血管の病気の私のページを
ご参照ください。

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こうした高齢者や体力のない、他の病気を持った患者さんたちへの低侵襲治療
(体に優しい治療)の一方で、大動脈弁形成術や僧帽弁形成術が進化しつつあり、
若い患者さんや活発な生活、仕事、スポーツなどを楽しみたい人たちに好適な
心臓手術もより患者さんたちのお役に立てるようになってきています。

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それぞれの患者さんたちのニーズに合わせた治療ですね。私たちもますます
頑張りたいものです。

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平成30年4月20日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝

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お便り135: 熟考し決意して転院、MICSの手術を受けられたエプシュタイン病の患者さん

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成人先天性心疾患の中には様々なタイプがあります。

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子供の頃はそう悪くなくても、次第に弁や心室の状態が悪化し、大人のある時期になると心不全で危険な状態になる、そうしたことも少なくありません。

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以下の患者さんはエプシュタイン病という比較的稀な先天性IMG_0403 (2)心疾患で、大人になってから三尖弁が壊れ、不整脈が起こり、心不全が悪化し、いくつかの大学病院やセンターを受診されました。

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そしていよいよ心臓手術が必要という段階になり、通常の正中切開による手術では大好きなバレエが続けられなくなるため、傷跡が見えにくいMICSでの手術を求めて米田外来へ来られました。

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エプシュタイン病の三尖弁閉鎖不全症にはコーン手術というやや複雑な手術が優れた成績を上げることが知られており、それをMICSで行う事になりました。これまで複雑三尖弁形成術をMICSで行って来た経験からこれは十分可能なためお引き受けしました。

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手術はうまく行き、間も無く元気に退院して行かれました。手術前は三尖弁が存在しないほど逆流していたのが、術後はほぼゼロまでに改善し、右室や右房も正常サイズに近づいていました。

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あれから1年近く経ち、お元気に外来検診に来られるお姿を拝見しては嬉しく思っています。

以下はその患者さんからのお便りです。

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米田先生へ

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私の希望に応えて先生の執刀で難しく手間のかかる手術を行い生命線をつなぎ止めて下さり本当にありがとうございます。

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6歳の頃からずっと舞台に立ちそれがそれまでの私にとっての現実で存在場所と考えてそれを心の支えに生きて来ました。そういった私固有の生き方を汲み入れての手術跡はふくらみが無く線というほどきれいで早くも去年の11月の発表会に出演することができました。

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三尖弁の手術は症例も少なくエプシュタイン病も稀な病気で情報もほとんどなく恐い手術でした。それなのに思い切って米田先生、執刀して下さってありがとうございました。

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そして麻酔科の先生、ありがとうございました。

氏家先生、貯血時のお話もありがとうございました。

助けてくださったたくさんの方々、ありがとうございました。

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その後、もう一通のお手紙をいただきました。ここまでの苦悩と決意して良かったことを切々と綴っておられます。心臓外科医としてこの上なく嬉しい事です。

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 .

米田先生へ

 .

米田先生は覚えておいででしょうか?

仁泉会病院で初めて先生にお会いした時、

ほとんど私はものを言うことができませんでした。

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その理由は、前の病院のようにバッサリ断られたらどうしよう、、、

「正中切開しかできません」と言葉が出たらどうしよう、、、

それに京都大学の教授を勤めた人物だから何だかちょっと怖かったのです。

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この頃は立派なお人なのに親しみやすく、ざっくばらん、

常に前向きで、そして何よりお医者なのに普通の人に対して自然体で接するのには、主人と共に驚いています。

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前回の診察、長時間になりすみませんでした。

カウンセリングでは傾聴はしてもらえますが、つらかった。心中までは理解してはもらえませんので、今まで恐る恐るだったものが一気に爆発してしまいました。本当に申し訳けなかったです。

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小学校の5、6年生の頃からマラソンなどすると心臓がドキドキしたり、息切れの症状が出ていました。(疲れやすい)

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中学入学時の健診で心雑音を聴診器によって発見されました。それで地域の内科医院で踏み台による負荷を行なった後で心電図をしたら医者が「こりゃあかん!」と言って**大学病院を紹介され、 19**年8月(12歳)の夏休みに右足そけい部からのカテーテル検査をしました。

診断は心肥大と小さな穴があるが成長と共にふさがる。注意事項として妊娠、出産の話も出ていましたが、当時まだ中学一年生なので大ごととは受け止めませんでした。

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 6歳よりバレエを習い始めて10年。その後いろいろなダンスを経験し、現在も踊りを続けています。

平成*年(25歳)正常分娩を予定していましたが妊娠中毒症治療中、血圧上昇のため、緊急で帝王切開にて出産しました。普通出産の予定でしたが39週4日で手術) 出産後、なかなか体調が回復せず1ヶ月以上実家で寝込んでいました。

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それでその産婦人科の紹介で腎臓内科をいくつか渡り歩きましたが腎臓は心配するほどのものではない、とどこでも言われました。

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平成9年4月、三重県から兵庫県の**市に転勤になる。引越しで再び体調を悪くし、寝たり起きたりの生活が1年ほど続きましたので自分でやはりこれはどこか変だと思いまして**市立中央病院へ。

そこで初めてエプシュタイン奇形と診断されました。

 .

平成18年*月に有名な**センターを紹介状なしで初診いたしました。**はエプシュタイン病に詳しいので自分の病状を理解してもらえると期待したからでした。

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翌日の11日に心エコー検査をして、軽症とのこと。

医師より、ここは重症の患者の来る所だけれど、年に一度の心エコーの検診は外来でしてもいいです、と言って下さいました。1-2年ほどして心エコーでは変化もないのに、私が「えらい、えらい」と訴えるので、一度24時間心電図をしてみるか、という事になり、しましたが、異常なしでした。それでそのセンターに通うのはいったん止めたように思います。

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平成24年*月、心臓が締め付けられ息ができない状態になったため、**病院へ。

翌日再診。それでその時に以前**センターに行っていたと伝えたので、**病院の方が手続きをして、再び**センターへ行きました。

平成25年*月から**センターで再び年一回の心エコー検査を始めました。

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平成27年*月、医師より一度カテーテル検査を受けてみるか?と提言され、一度と言われたのが引っかかって、「私はもう中一の時にカテーテル検査はしました」と答えました。

平成18年の初診の問診に書きましたが、その間、医師も4、5人変わりましたし、知らなかったみたいでした。そして次回(来年)は主人と二人で来院するようにといわれました。

平成28年*月、医師はほとんど主人に、手術が前提の検査入院の必要性を伝えていました。平成29年*月、検査入院しました。

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(それからミックスでの手術はできないと言われ米田外来へ来られました)

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平成29年*月、心臓の手術を米田正始先生の執刀で受けました。

自分がこの先生なら命を預けていいと信頼し、リスクの不安も先生なら、と手術する決心に至りました。

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米田先生のこの骨を切らない仕上がりのきれいなMICS手術が成功したことをこれから手術を受ける人たちに知ってもらいたいなと思っています。あるいはこれからの手術の何らかの役に立てれば良いなと思います。

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いい心臓・いい人生 【第105号】 第82回日本循環器学会にて

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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満開の桜をお楽しみのことと存じます。同時に花粉症に悩まされたりしておら
れないでしょうか。

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この3月23日から25日まで大阪で日本循環器学会が開催され、参加して
参りました。
日本の心臓血管関係の頂点に立つ学会で、内科系・外科系の医師はもちろん、
様々なコメディカルの皆さんや研究者の方々も参加される巨大な学会です。

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私はこれまで開発し進めて来た手術を3つばかり発表しました。いずれも英語
発表のセッションで海外からの参加者もおられたためより意義のある機会に
なりました。

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まず新しい左室形成術の成果を報告しました。座長は東京大学の小野稔教授
と福島県立医大の横山斉教授でした。
心臓移植を受けたくても受けられない心不全患者さんは多数おられます。
例えば年齢や糖尿病などの条件が合わなければ、どんなに必要でも対象外に
なるのです。ドナー心が少ない現状ではやむないことですが、そうした患者
さんたちをこれまで多数お助けして来たので、その成果を報告したわけです。
拡張型心筋症に対する左室形成術は20年前から取り組んで来ましたが、改良に
改良を加え、短時間で確実にできる手術(心尖部凍結左室形成と呼んでます)
を行い、これまでお助けできなかった重症患者さんを元気に退院できるまでに
なりました。発表の後、前向きのご質問をいただき、また会場で移植の権威の
先生から「これは素晴らしい、これからもっと多くの患者さんを助けて」など
のコメントを頂きました。

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次に進化した僧帽弁形成術のお話をしました。座長は東京医科歯科大学の荒井
裕国教授と獨協医大の福田宏嗣教授でした。連続ループ法と呼んでいる方法
で多数の人工腱索が必要な複雑弁形成でも短時間に確実にこなせるため、術野
が狭いMICSでも使えることをお示ししました。これも有用なご質問を頂き、
光栄なことでした。
技術的にやや高度なため、トレーニングが必要ですが、熟練の先生から私も
使ってみたいと言って頂き、お役に立てて嬉しく思いました。これから世の中
に広めたいものです。

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もう一つは虚血性僧帽弁閉鎖不全症を含む機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する
PHOと呼んでいる乳頭筋前方吊り上げを行う僧帽弁形成術を発表しました。
これはすでにAATS(アメリカ胸部外科学会)などでも発表しているため、徐々に
知られるようになっているようですが、その最近の成果を報告し、良いコメント
を頂きました。
あとで会場にて、初対面の先生から「私も先生のPHOを使ったよ。患者さんは
元気になった」とコメントを頂き、光栄なことでした。

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学会では様々な発表があり、大いに参考になりました。
仕事面だけでなく恩師デービッド先生や内外の友人たちと歓談できたのは
何よりのことでした。

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特にデービッド先生には昨夏生まれた長男を紹介し、頭など撫でていただいた
ところ、息子は満面の笑顔で返してくれたので先生は大喜びされ、私には長年
待ちわびた瞬間でした。ちなみにデービッド先生には3人の娘さんがおられます
が息子さんがおられませんでした。しかし一昨年、男子のお孫さんが誕生し、
ぜひ心臓外科医に育ててくださいとお願いしたところこちらも満面の笑みで
返して頂きました。

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またアジアやアメリカなどの友人たちと記念撮影もでき、仲間のありがたさを
しみじみ感じた学会でした。

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大阪の良さを体感できるイベントも多く、皆さん楽しめたようで大慶です。
素晴らしい学会を主催された澤芳樹先生はじめ大阪大学の先生方、お疲れ様
でした。

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平成30年3月29日
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お便り134 人生を賭けた再手術で弁形成が決まった

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僧帽弁形成術の中には複雑で難しいものもあります。

以前に弁形成を受け、その後僧帽弁閉鎖不全症が再発してからの再手術はその一つです。

特に元の病気が先天性つまり生まれた時からの弁膜症の場合は弁が十分発育していないこともあり、工夫が必要です。IMG_1685

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以下のお便りはまだお若い、人生これからという患者さんからのものです。

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昔、子どもの頃に弁形成術を受け、ケイ・リード法という弁が漏れているところを弁輪レベルで閉ざす手術です。こどもは成長するため大人のようなリングは使えませんのでこうした方法も必要なのです。

問題は長年月ののち、再手術する時に弁が十分機能するだけのものを持っているかどうか、です。

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この患者さんの場合は、昔の手術で残した部位が前尖・後尖とも逸脱し、かつ昔閉ざした部位の近くは後尖が低形成になっていました。昔の手術で弁の3分の1は潰れた形のため弁輪形成はあまりできない形でした。

そこでまず前尖後尖の逸脱部に人工腱索をそれぞれ4本合計8本立て、逸脱部はきれいにかみ合うようになりました。

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しかし後尖の低形成部は放置できないため、心膜パッチで拡大し、弁輪を小さくしなくてもきちんとかみ合うようにしました。その上でリングを用いて、弁輪を小さくしない、安定だけ図るようにし、弁はきれいに作動するようになりました。

この手術はこれまで蓄積して来たバーロー症候群やリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症、あるいは感染性心内膜炎への手術への技術を駆使したもので、慣れた方法の組み合わせだけのため比較的余裕がありました。

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世の中には弁形成は無理と言われて泣く泣く弁置換つまり人工弁挿入手術を受ける患者さんが多数おられます。できればご相談いただければ、お役に立てるかも知れません。

この患者さんのようにケイ・リード法などで昔弁形成を受けられた方には朗報になるでしょう。

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以下はその手術で人生を取り戻した患者さんからのお便りです。

また外来で元気なお顔を拝見させてください。

 

******** 患者さんからのお便り *******

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去年の**に僧帽弁閉鎖不全症の再手術で形成術をしていただいた****です。お礼の手紙を書こうと思いつつ、今になってしまいました。

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私は7歳の時、僧帽弁の形成術を受けました。

そして23歳で僧帽弁が壊れてしまい、再び手術しなければならなくなってしまいました。何ヶ所か病院を回り、医師と話しましたが、再手術は難易度が高く、人工弁を付ける確率が高いと言われました。

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私はまだ23歳です。生体弁をつけて3−6年で壊れて再々手術も嫌ですし、機械弁を付けて一生子供が産めなくなるのも嫌でした。

そんな時に偶然にも米田先生のホームページを見つけたのです。

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そしてそこには再手術で形成術が成功し、無事に赤ちゃんが産めた事がのっていました。もう米田先生に手術をお願いするしかないと思い、大阪に向かいました。そして初診日に手術の予約をしました。自己血輸血をする為に週に1回ずつ、4回通ったおかげで、他人の血液をもらう事なく手術できました。

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手術後、米田先生から「弁がぐちゃぐちゃに壊れていたから、他の病院だったら、恐らく弁置換術になっていたよ」と言われ、はるばる地方から大阪まで来てほんとうに良かったと思いました。再手術で形成術が大成功、心から感謝しています。ありがとうございました。

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今まではプールも顔をつけてはいけない、マラソンは禁止と規制を受けていましたが、これからは、どんなに激しい運動もOKと言われ喜んでいます。それに子供を産める身体である事が何よりも嬉しく思います。

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それから会社の定期検診で内科の先生が、心雑音がしないと驚いていました。先生が「機械弁を付けたの?」と聞いたので、「再手術だったけど形成術でできました」と言ったらヘェ〜と言ってました。

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手術後、半年近くたちましたが、顔色が良く、食欲があり、仕事をしても、手術前のように疲れません。

米田先生と出会えた事でこんなにも、健康を取り戻し幸福な気分を味わっています。どんなに感謝してもしきれないほどです。ありがとうございました。

.

*****

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米田先生へ

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第104号】 第8回日本ローカーボ食研究会のご報告

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いい心臓・いい人生 【第104号】 第8回日本ローカーボ食研究会のご報告
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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三寒四温のこの頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。

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去る3月11日に日本ローカーボ食研究会の第8回学術集会が開かれました。
思えばまだローカーボ食・いわゆる糖質制限食がまだあまり知られていない
頃に、患者さんのための食生活を考えるという方向性を持って糖質制限食の
あるべき姿を極めようという趣旨で、灰本クリニックの灰本 元先生を中心に
名古屋の熱い先生方が集まり、勉強を重ねたものでした。

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いつも医師だけでなく管理栄養士や薬剤師、食品会社、コメディカルの方々
など多数のご参加をいただいて中身のある議論を重ねて来ました。
私たちが教科書を出してゆるやかローカーボ食を提唱したのもすでに数年以上
前のことで、この領域も随分進歩したものと思います。極端な糖質制限食の
危険性がようやく理解され始めたこの頃ですが、私たちはその先を見て、
さらに進化した議論を今回も企画しました。

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テーマは「健やかに老いるための高齢者の生活管理」で、まず春日井市民病院
循環器内科の小栗光俊先生に中規模病院における高齢者心不全の実態と栄養
管理」のご講演を頂きました。高齢者の心不全が増えている中で、痩せや
低栄養が予後の悪化に関連すること、SGAなどの栄養スクリーニング法の
活用、減塩のあり方、たんぱく質の有用性など盛りだくさんでした。

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引き続いて名古屋大学教授の山田純生先生に「慢性心不全におけるフレイル
改善・予防のための栄養・運動管理」についてお話し頂きました。フレイル
サイクルとその予防、特にサルコペニアやカヘキシアとの関連、心不全に
おける腸うっ血の細菌のトランスロケーションなど広く深いお話でした。
いずれも栄養を今後さらに重視した治療や予防が必要で、この研究会の特別
講演にふさわしいものでした。

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午後はマニュアル通りの治療がかえってQOLを下げた症例というテーマで
6つの発表がありました。
いずれも大変興味深く、糖質制限の光と影を見るようなケースや、本来良い
こととされる塩分制限が患者さんをかえって悪化させたケースなど、今後の
治療に役立つ内容でした。

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私は心臓外科医の立場から病院食を考えるというタイトルでお話ししました。
私たちが医誠会病院心臓血管外科で積極的に行っている自己血貯血とそれに
よる完全無輸血の心臓手術を巡って、病院食では血液の回復が自宅食の場合
より遅く、それではと病院食+焼肉外食にするとほぼ有意に改善し、より
無輸血手術の達成に役立ったという内容でした。体への負担が少ないMICS
での心臓手術はもちろん、高齢者や再手術などでも患者さんの早期回復や
合併症予防に有用でした。

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病院食とは限られたコストの中で、塩分6gで栄養のバランスも良く、管理
栄養士さんたちのご苦労が偲ばれるものなのですが、手術など、これから
攻めに行く場合にはパワー不足であることが示され、今後の医療を考える
上で役に立つ内容とお褒めいただきました。

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心臓手術の成功だけでなく患者さんの健康生活それも長期のそれを達成する
ためにも、この研究会の活動を今後もしっかり支援したく思った一日でした。
関心がおありの方々には、日本ローカーボ食研究会のホームページをご参照
いただければ幸いです。

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平成30年3月21日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝

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お便り133:試練3回の後、ついに健康を勝ち取った患者さん

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僧帽弁形成術はまだまだ経験に基づく名人芸的な一面があります。

複雑僧帽弁形成術の場合はその傾向が顕著です。中でもMICSつまり小さい傷跡で行う方法の場合は術者間や病院間の差が大きいです。

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下記の患者さんは名古屋の病院でMICS僧帽弁形成術を受けられ、残念ながら不成功でした。

そのままでは心不全が進んで行くため、その病院で2回目の弁形成術を受けられました。今度は余裕がないため正中からの手術つまり通常の胸骨を切る形での手術となったようです。

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しかしIMG_1534それでもまた弁形成はうまく行かず、山のように利尿剤を処方され、何とか心不全をしのいでいるという状態で、医誠会病院の私の外来を受診すべく大阪まで来られました。次は人工弁を使う弁置換術しかない、と言われて来られました。

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診察し、心エコーを拝見すると、これは弁形成ができる!と判断しました。人工腱索を必要に応じて6本でも12本でもそれ以上でも立てられる独自技術を持っているためです。2本とかせいぜい4本しか立てられない技術では真似のできない手術です。

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沢山の利尿剤を飲んでおられ、心臓だけでなく腎臓まで壊れそうになっていたため手術を早めに予定しました。手術は首尾よく進み僧帽弁はすっかり良くなりました。

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以下はその患者さんの奥様からのお便りです。ちなみにご主人はこのままではダメになると必死にネットを調べ、運命を変えた奥様こそご主人のいのちの恩人と思いました。

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********* 患者さんの奥様からのお手紙 ********

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米田先生へ

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メルマガ「いい心臓、いい人生」103号届きました。
明日梅田で講演があるとのこと、ぜひお聞きしたい内容ですが残念ながら伺えません。

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暖かくなってきて夫は朝晩の散歩を楽しんでいます。

こんなに軽やかに再び歩き回れる日が来るとは思ってもいませんでした。

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名古屋の病院での2回の僧帽弁閉鎖不全症の形成術が上手くいかず絶望的な気持ちになりながらも何か光はないかとインターネットで「心臓手術は何回までOK?」と検索して米田先生を見つけました。

ホームページの「メールでのご相談受け付け中」という文字に「こんなに忙しそうな心臓外科手術専門の先生がほんとに返事をくれるのかしら?」と思いながらも藁をも掴む思いで送信しました。

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4時間後くらいに先生から「飲んでいる薬のリストを見ると状態は良くないです。詳しくは診察してみないと分かりませんし遠いですが来られますか?」と返事が来ました。それでもまだ半信半疑でした。

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会ってみなければ分からないと思い娘と3人で大阪に向かいました。11月27日でしたね。外来の患者さんの診察が終わった後、2時頃だったと思います。それから4時間の間、名古屋の病院での治療データと医誠会病院で受けた検査データをじっと眺めながら「もう一度形成術で行けると思いますよ」と私たちが耳を疑うようなことをおっしゃったのです。手術がたとえ受けられたとしても人工弁しかないと言われそう思っていたからです。

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先生はご自分の見解を経験に裏打ちされた自信を持って丁寧にとても分かりやすく説明してくださいました。その言葉の端々に患者の生活や人生を思いやる温かさがにじみ出ていてほんとに心強く昨日までの不安が一気に吹き飛びました。しかも飲んでいた薬の関係でなるべく早くに手術をした方がいいということで他の手術の予定を繰り下げて夫の手術を12月に入れてくださいました。

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手術は上手く行き、おまけに不整脈が起きにくくなるメイズ手術まで行ってくださいました。

麻酔から目覚めた夫が「気管挿管がいつ抜かれたのか気付かなかった。前の2回の手術ではあの菅を抜くのがものすごく辛かったのに。ほんとに手術をしたのかと思うくらい体が楽だ」と言ったのが印象的でした。その後も回復が早く、同じ手術でどうしてこんなに予後が違うのか不思議でした。

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医誠会病院はとても古く廊下も狭くて10人部屋があったりして驚かされましたが先生はもちろん、看護師さん、検査技師、スタッフの働きぶりに不満を感じたことはありませんでした。病院は建物ではなく中身だと改めて思いました。

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名古屋から新大阪までの新幹線通いは正直大変でしたが行く度に夫が元気になって行くのを感じられることが楽しみでした。
米田先生との出会いがなければ今こんなに幸せな気持ちではいられなかったと思います。

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先生は「僕が死んだ後を若い先生たちに引き継いで欲しいんですよ」と日本の心臓手術のレベルアップを本気で願っておられる話を熱く語っていらっしゃいましたね。私たちのように諦めることなく幸せになる患者本人、家族がどんどん増えると確信しています。

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3ヶ月後に診察に伺います。先生にお会いできるのがとても楽しみです。
何度感謝を申し上げても言い尽くせませんが本当にありがとうございました。

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いい心臓・いい人生 【第103号】 明日、NHKカルチャーでの講演です

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少し寒さが緩んで来たこの頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

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さて最近忙しさに取り紛れて、というより平昌オリンピックが気になって、
メルマガを書けずにおりました。

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明日2月25日(日曜日)13:30~15:00 に、「認知症と心臓病」というテーマで
大阪にて講演をいたします。まだ残席があると聞きましたので、このメールをお
書きしています。

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高齢化社会の中で認知症はますます大きな問題になっています。
日本の発展を支えて来られた団塊の世代の方々が引退後の生活を考えられるという
タイミングでもあり、自分だけは認知症になりたくない、どうしたらいいんだろう、
との思いの方も多いことと存じます。

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認知症にはご存知のように幾つかの病気タイプがあります。アルツハイマー病、
血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症その他ですが、これまで
アルツハイマー病に関心が集まっていたように思います。

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それらの予防をどうしたら良いのか、運動?魚を食べる?ビタミン?頭を使う?
様々な努力がされて来ましたがまだ決定打には至っていませんでした。

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ところが近年の研究で、認知症の予防のためには心臓血管病の予防策が効くこと
がわかって来ました。つまり心臓や血管病を予防するための様々な努力、例えば
塩分を減らすとか、タバコを止める(せめて減らす)とか、血糖値を下げるとか、
などなどの努力がアルツハイマー病を含めた認知症の予防に効果があることが
わかったのです。

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そこでそうした心臓(血管)病と認知症を同時に予防するようなお話をという
訳でこの企画になりました。私自身は本来は心臓血管外科専門医ですので、
認知症予防にも役立つ心房細動の心臓手術も含めてお話したく思います。

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直前のお知らせで申し訳なく思いますが、明日の午後、もし大阪梅田に来られる
方はご一考ください。お待ちしております。

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             記

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日時: 2月25日(日曜日)13:30~15:00
場所: NHKカルチャー 梅田教室
〒530-0017
大阪市北区角田町8-1
梅田阪急ビルオフィスタワー17階
交通: JR大阪駅、阪急・阪神・地下鉄梅田駅より徒歩3~5分
ネット: https://www.nhk-cul.co.jp/school/5000/5000_school_info.html
電話 06-6367-0880

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平成30年2月24日
米田正始 拝

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