お便り130 地元の大病院でも三尖弁形成術は無理と言われて

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三尖弁形成術は通常は形成用のリングをつけるだけの、心臓手術の中では比較的簡単な部類に入るものですが、弁のあちこちが壊れるとまだまだ形成困難な難しい手術となります。

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しかしお若い患者さんや今後妊娠出産をご希望の方々を始め、弁形成術がこれかIMG_1624らの人生に絶対必要、人工弁では困る、という状況は少なくありません。

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私たちはこれまでの複雑な三尖弁形成術で幾多の修羅場を超えてきた経験から様々な方法を駆使して患者さんたちのご要望にお応えしています。

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こうした技術は恩師デービッド先生直伝のものから、その後難しい状況たとえばペースメーカー三尖弁閉鎖不全症や大怪我の時に発生する外傷性三尖弁閉鎖不全症あるいは感染性やリウマチ性三尖弁閉鎖不全症での三尖弁形成術を行う中で培うことができました。

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以下は九州から来られた10代の患者さんのお母さんからのお便りです。

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感染性心内膜炎(略称IE)のため三尖弁が複雑に壊れ、地元の大学病院でもこれは形成不可能つまり人工弁が必要、でもまだこども年齢で人工弁はこれから幾多の危険と苦労が避けられない、だから当面手術は見合わせようという方針でした。その中で、心不全が悪化し、学校での運動もしづらい状況となり、東京などの病院でも断られて私の外来へ来られました。

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弁形成は私の持つ技術を幾つも駆使して無事完遂できました。またまだ高校生で骨を切るのはかわいそうなのでMICSで痛みも少ない形でできました。傷跡もあまり見えません。すでに学校でスポーツが息切れなくこなせるようになっておられます。

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以下はその患者さんのお母様からの礼状です。複雑弁形成を成功させることが、お母さんたちにとって親子の愛情と信頼をかけた闘いであったことがよくわかります。そしてその闘いに勝ったことはその愛情と信頼が本物であった証と思います。感動してしまいました。こんな素晴らしいことのお手伝いができたことに私は感謝しています。

 

患者さんがこれから元気な青春を送られることを楽しみにしています。また外来でお会いしましょう。

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**************** お便り *****************

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米田 正始 先生

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14日に退院いたしました、****の母です。

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この度の入院・手術に際しまして、米田先生はじめスタッフの皆様には大変お世話になり、
ありがとうございました。
退院翌日に、リハビリと頑張ったご褒美を兼ねてのUSJを満喫し、台風が接近するなか
16日に**に戻って参りました。

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3月に感染性心内膜炎を発症し、2か月程かかって治癒したものの、三尖弁の破壊と逆流が
ひどいため手術が必要であることが分かった時には、息子もひどく動揺し葛藤の日々でした。

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しかし本人なりにいろいろと考え、とまどい、悩んで、ようやく手術を受け入れた息子は、
びっくりするほど前向きで、早く手術を受けて元気になりたいと言うまでになりました。

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しかし大学病院では予定していた手術はキャンセル、症状が出るまで未定となり、手術は
人工弁しかないと言われ、いつまで待てばよいのか、15歳で人工弁でよいのかと、親子で
心配な毎日を過ごしておりました。

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病気や手術のこと、弁置換についても色々と調べ、15歳であれば弁形成がいいのではと
思い始めました。本人も絶対に弁形成がいいとの希望があったのですが、地元にいても
医療の地域差を感じておりましたので、県外の病院も検討し始めました。

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都会にいれば普通に受けられる医療も、地方だからといって諦めていいのだろうか。
親である私たちには、ここで妥協しようとは思えませんでした。
〝大切な我が子を守れるのは親しかいない!〟その思いだけだったように思います。

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インターネットで調べた東京の有名な先生や、他の先生にも相談しましたが、全て断られ
てしまいくじけそうになった時期もありました。

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そんな時に米田先生の心臓外科手術情報WEBを見つけ、隅から隅まで読ませていただき
藁にもすがる思いで相談させていただきました。
お忙しい先生だし今回も断られるかもしれない・・・と思っていた私たちに、米田先生は
「一度、私の外来にお越しください。」
と言ってくださいました。その時の私たち家族の喜びといったら、大変なものでした。

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縁あって米田先生とお会いすることができ、
「15歳であれば弁形成にこだわるべき。難しい形成になると思うができると思います。」
と言っていただけた時には、来てよかったと心から思いました。

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そして、この難しい弁形成を完遂していただけたことは、息子にとって人生の大きな転機と
なりました。

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「大変な手術を乗り越えられたから、これからいろんな事があっても大丈夫だと思う!」
という息子の言葉は本心だと思います。
米田先生に助けていただいた命を大切に、夢に向かって頑張ってくれるはずです。

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米田先生もお忙しいにも関わらず病室に来て下さり、お会いするだけで何故だか私の
方が元気をいただいておりました。今後もたくさんの患者さんや家族の方を元気にして
あげてくださいね。

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お忙しい毎日をお過ごしのことと思いますので、先生もどうぞご自愛ください。
また外来でお会いできるのを、親子共々楽しみにしております。
どうぞ氏家先生、内山先生、楠瀬先生にもよろしくお伝えください。

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ありがとうございました。

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Heart_dRR

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第九十七号】江東豊洲心臓血管外科カンファランス

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いい心臓・いい人生 【第九十七号】江東豊洲心臓血管外科カンファランス
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆: 心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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この9月2日に東京にて恒例の江東豊洲心臓血管外科カンファランス
が開催され、畏友山口裕己先生のお招きで私も参加して参りました。
昭和大学江東豊洲病院内の講堂で開催されましたが、すでに開院から4年とお聞きし、真新しい綺麗な病院と感心したのが昨日のように思い出されます。

 

今回は心房細動をテーマとして内科と外科の積極的な先生方が多数集まる面白い会になりました。
心房細動はどこにでもある病気ですが、そのためにどれだけ多くの方々がいのちを落としたり、寝たきりになったりしておられるか、まだまだ世間の理解は進んでいない病気です。中でも元気に仕事や家庭で活躍していた方が突然こうした悲劇に見舞われるという被害は甚大です。
心房細動の怖さは何と言っても脳梗塞が起こることで、その原因は左房の中で血栓ができることです。

 

かつてはワーファリンというお薬をきちんと使えばかなり脳梗塞は予防できるということでこれが標準的治療でしたが近年使い易いDOACというタイプの薬が使えるようになってさらに成績が上がりました。加えてカテーテルによるアブレーションという治療が進歩して、より根本的に治せるようになりました。
こうした最近の進歩をこの領域のエキスパートである奥村謙先生(前・弘前大学教授)が講演されました。私は以前から奥村先生のお仕事はよく存じており、加えて研究会前夜の食事会で最近の進歩を伺っていましたので、一層ちからが入り聴き入ってしまいました。

 

それから筑波大学の瀬尾由広先生が不整脈治療の豊富な経験から心房性僧帽弁閉鎖不全症のお話をされ、そうした概念がない時代、20年近く昔からこれに取り組んで来た私としてはようやく我々の時代が来たという気持ちで拝聴しました。
心房細動などで左心房が拡張すると僧帽弁や左室基部が変形し、弁が噛み合わなくなります。そのため僧帽弁形成術には特別な方法が必要となるのです。

 

私は20年前に少し違う角度でこの病気を見ていました。左房が巨大になるとカテーテル治療はもとよりメイズ手術も効かなくなる、何とかしようと左房縮小するメイズを開発しました。すでに多数の患者さんのお役に立っていますが、これからもっと多数の方々のお役に立てる日が来れば最高です。
この後心房性僧帽弁閉鎖不全症の診断と治療というテーマで東京大学の大門雅夫先生や宮崎の畏友・渡邉望先生、金沢大学の竹村博文先生らが興味深い症例を交えて発表されました。昭和大学江東豊洲病院の光山晋一先生は山口先生お得意の後尖パッチ拡大の成果を発表されました。
ランチョンセミナーは畏友・天野篤先生のいつの世代でも心臓外科医で活躍できるために、という熱く楽しいお話でした。皆さんご存知の通り、天皇陛下を冠動脈バイパス手術で救われた私たちの誇りとする天野先生で時間の経つのを忘れて傾聴しました。最後に先生はいつまで現役で心臓手術をされますか!と質問させて頂きました。質問の真意は、当分止めないでね!というところにありましたが、その通り回答頂き、嬉しいひとときでした。
午後から左心耳切除にまつわるトピックスが論じられ、それからメイズ手術の最近の話題に移りました。
私は心房縮小メイズを日本で最初に提唱したものとして、最近の成果を披露いたしました。巨大左房となり、もう看取りしかないと言われた患者さんたちを多数元気に社会復帰していただいたことをご報告しました。これからこの方法を自分だけでなく、多くの心臓外科医にも使って頂きたいという願いを込めてお話しました。
最後に心房細動アブレーションの最新治療のセッションがありました。興味深い内容揃いでした。内科のカテーテル治療と心臓外科の手術は常に協力し、お互いに補いあって、弱点を補強しながらベスト治療を提供すべきで、お互いの治療法を良く理解することがその第一歩で、良いセッションだったと思います。
都合でこのセッションの終わりごろに会場を後にしました。
山口先生、関係の皆さまがた、素晴らしい会をありがとうございました。

 

平成29年9月10日
米田正始 拝
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いい心臓・いい人生 【第九十六号】ソウルに行って参りました

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いい心臓・いい人生 【第九十六号】ソウルに行って参りました
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発行:心臓外科手術情報WEB

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編集・執筆: 心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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お盆が過ぎましたが残暑がまだまだ続くこの頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

この8月17日から19日まで韓国のソウルに行って参りました。第19回国際弁膜症
シンポジウムに呼んでいただいたためです。

 

北朝鮮からグアム島にもしミサイルが発射されたら、場合によっては大変なことになる
のでは、という声もある中で、まあ関係者も人の子、お互いを滅ぼすような愚かなことは
するまいと考えて行ってきました。ソウルの雰囲気は全く平和なものでした。

 

今回会長のChang先生は韓国の名門・延世大学の教授で長年の友でもあり、是非おいで
と言われて断ることができなかったという事情もあります。

 

延世大学を訪問するのは3回目で、前回は10年ほど昔のことで、懐かしい思いでした。
日本の大学と比較すると、欧米の良いところがふんだんに取り入れられており、というより
欧米の大学にそっくりで、韓国は昔、良いものを導入したと改めて思いました。

 

病院の規模や内容、もっと具体的には手術数まで欧米レベル、日本の大学病院の5倍から
10倍はあり、まさに大学病院の名にふさわしいものでした。10年前、すごいなあと
感心した延世大学病院のメインの建物は今見ても立派なものでした。まあ日本では民間
病院が頑張って良い環境を創り、大学とコラボし支援するというのが現実的なのでしょうか。

 

シンポジウムでは世界の弁膜症手術のエキスパートが集まっており、私はその末席を汚せる
ことを光栄に思いました。それぞれが最新の成果を披露し、お互いにしっかりと
ディスカッションして学ぶ、そうした貴重な場となりました。また循環器内科の先生方も
韓国を中心に多数参加され、大変好ましいことでした。

 

例えば加齢性の僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術ではドイツのペリエ先生やイタリア
のアルフィエリ先生などお馴染の大家が最近の進歩をお話されました。最近の自分の経験
から色々意見交換でき、直接得られる貴重な一次情報でした。またスタンフォード
大学の畏友・Joseph Woo先生が持ち前の芸術的手術を披露され、また感心しました。
リウマチ性僧帽弁膜症に対する弁形成術はアジアが世界をリードしていますが、その中でも
トップランナーである畏友・Taweesak先生の最近の手術が見れたのも良かったです。
毎年、確実に進歩している内容を突っ込んで見たところ、よく見てくれてるねとお礼を
頂きました。特に心膜パッチを使わずに複雑形成ができるところが素晴らしいと思いました。

 

アジア弁膜症アカデミーの代表であるSaw先生やバンクーバーの Jian Ye先生らと久しぶり
に、それも中身のある話ができたのも良かったです。

 

心房細動の治療では本家本元のJ Cox先生(元セントルイスのワシントン大学)が開発の
苦労話から最新の技術、そしてこれからの方向性までをユーモアを交えて話しされました。
私がCox先生のお話を初めてお聴きしたのはまだトロントで修行していた1990年ごろだった
と思います。世の中にはこんなにすごいものがあるのかと感銘を受けたのを覚えています。
いつかはこうした手術をと思い、2000年代に入って心房縮小メイズを開発し、ちょっと
恩返しした気になっていました。Cox先生は心房縮小してこそメイズ手術の真価が発揮される
と言ってくださり、光栄でした。

 

Cox先生の直弟子でもある東京医大教授・新田隆先生が心房細動の病態の研究を発表され、
5年や10年では成し得ない、優れた研究で、同先生がもしアメリカ国民ならCox先生の
後継者になられたのではないかと思いました。

 

心不全に対する左室形成術はSTICHトライアルという欠陥研究のために現在下火になって
います。大阪大学医学部長の澤芳樹先生がこのSTICHトライアルの問題点を講演され、
内科の先生方にも少しは真実がご理解いただけたのではと期待してしまいました。

 

私はこの春にボストンのAATS100周年大会で発表した機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する
僧帽弁形成術、PHOと呼ばれる前方吊り上げ術の成果をお話ししました。
カテーテル治療であるMクリップではなし得ない、左室を甦らせるこの手術に賛同して
下さる先生が増えてきて、嬉しいことです。アメリカでもヨーロッパでも是非使いたい
と言って下さる大家が増え、これからが楽しみです。

 

2日間のソウル滞在で、北からグアムにミサイルが飛ぶこともなく、平和に楽しく熱い
時間を過ごせました。ご招待下さったChang先生や、参加の先生方に感謝申し上げます。
また出発直前に大きな心臓手術のお手伝いをし、うまく行ったのを確認してから飛行機に
乗ったのですが、その後も患者さんをしっかりと守ってくださった氏家敏己先生はじめ
医誠会病院の皆様に感謝申し上げます。

 

敬具

 

平成29年8月20日

 

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
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お便り129 複雑弁形成それもMICSで乗り切ったお若い患者さん

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僧帽弁形成術は進化を遂げましたが今でもまだまだ難問のことがあります。これは弁形成が複雑な場合や、形成の経験量が少ない施設でよく見られます。

 

次のお手紙は沖縄から来られたお若い患者さんからいただいたものです。

バーロー症候群という弁形成が難しいタイプの病気で、地元の基幹病院でも弁形成はできない、人工弁を用いた弁置換しかないと言われたそうです。IMG_0278 (2)

 

しかし弁置換になってしまうと、将来の妊娠や出産に大きな問題を残します。機械弁の場合はワーファリンというお薬が必須のため、それによる奇形や流産さらには母体の危険が付きまといます。生体弁の場合は若いご年齢に加えて赤ちゃんのホルモンの影響で生体弁が急速に壊れることがあるのです。

 

やはり患者さんのいのちや人生を守るためには弁形成しかないというのが結論でした。入魂の手術で(いつも入魂ですが)無事弁形成ができました。それもMICSで傷跡も見えにくく、社会復帰も早い手術で完遂できました。

 

以下はその患者さんが退院するときに下さったお手紙です。お許しを得て掲載します。これから新しい元気な活発な人生を楽しんでください。

 

 

********患者さんからのお便り*********

 

米田正始 先生へ

 

私の心臓を助けていただきましてありがとうございました。IMG_4503

沖縄の病院では手術が必要で選択肢が(機械弁か生体弁かの)2つしかないと言われたときは絶望しました。

 

でもたくさんの病院を調べて米田先生をみつけることができました。

心臓の手術は私の19年間生きてきた中で大きな出来事で正直こわかったけれど今ではやっぱり体が楽になっていて手術を受けて良かったと心から思います。

 

助けていただいた命を無駄にせずなんでも挑戦して夢に向かって頑張ります。

 

くじけそうになった時、壁にぶちあたった時は手術のこと、先生方の事を思い出して諦めず後悔のないように生きようと思います。

 

本当にありがとうございました。

今後も検診等でお世話になります。

 

またよろしくお願いします。

米田先生も体調には気をつけてくださいね!

 

******************************

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退院後1ヶ月の外来で患者さんはお元気なお顔を見せて下さり、すでに活発な生活を送っておられました

せっかくの大阪ですのでUSJにも行かれたようで、何よりでした

その際に患者さんのお母さんからお手紙をいただきました

親の愛は本当に美しく、そのお手伝いができて、私も喜びを噛み締めています。

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************お母さんからのお便り********

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米田正始 先生へ

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米田先生をはじめ、楠瀬先生、氏家先生、諸先生方、看護師の皆さん、理学療法士の皆様、娘が大変お世話になりました。

今年三月地元の病院の定期検査で、手術が必要となり、毎日不安な日々を過ごしていました。

娘の命を賭けた手術を、実績と信頼の置ける医師に助けていただきたい、その願いだけでした。

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そんな時娘が米田先生のホームページを見つけました。メールのやりとりで今の娘の心臓の状態や、自己血の説明来院する日を決めました。

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米田先生の丁寧でわかりやすく安心感のある説明を聞いていくうちに、手術に対する不安と恐怖心もうすれ、米田先生なら娘の心臓を預けても間違いない、絶対に米田先生に助けていただけると確信し、その日に手術の日を決めました。

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地元の病院では、生体弁か機械弁かの選択でしたが、米田先生は娘の将来を考え、絶対的に弁形成で、そして傷口が目立たないミックス手術でやるべきだとの説明でした。その時の驚きと嬉しさは今でも忘れられません。

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手術後すぐの説明で弁形成が難しいバーロー症候群であったと聞きました。

娘のような難易度の高い弁形成も米田先生の熟練された高い技術と工夫があったからこそ治せたのだと思います。

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術後の回復力も素晴らしいものでした。

リハビリも楽しみで、心身ともに日々元気になっていく娘の姿を見て、米田先生に巡り会え、手術をしていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

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本当にありがとうございました。

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またICUで弱気になった時、あたたかい言葉、励ましの言葉をかけて下さったり、退院後風邪気味になり、不安な気持ちに対応して下さった先生方、看護師の皆様、本当にありがとうございました。

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今後も検診等でお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

米田先生、大変お忙しいとは思いますが、ご自愛のほどお祈りしております。

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*******************************************

 

 

 

 

Heart_dRR

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いい心臓・いい人生 【第九十五号】弁形成手術とお若い女性患者さん

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いい心臓・いい人生 【第九十五号】弁形成手術とお若い女性患者さん
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編集・執筆: 心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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大型台風が去った後、また猛暑日が復活しているこの頃ですが、皆様いかがお過ごし
でしょうか。

私は相変わらず病院内で皆さんと賑やかに、忙しくさせていただいております。

 

高齢化社会のため心臓外科の世界も患者さんが高齢化し、老年科のような雰囲気に
なっているとよく言われます。

長年、社会のために尽くして来られた方々を大切にし、しっかり治してまた楽しく
暮らせるようなお手伝いをすることは大きな意義あることと思います。

 

同時にこれから将来がある若い患者さんたちの心臓手術には重責を担っているという
緊張感と将来の社会への貢献のような夢を感じます。

 

私の外来や病棟には10代から40代までのお若い患者さんたちもよく来られます。
中でもこれからこどもさんを産みたいという方々が弁形成手術を求めて全国から
お越しになります。あるいはこれから社会人としてしっかり仕事に打ち込みたいと
MICSでの弁形成や弁置換術を受けに来られます。この夏もそうした患者さんたちが
手術を受け、元気になって順次退院して行かれています。

 

とくにこれからあるいは将来こどもを産みたいという若い女性の場合は弁形成が
うまく決まるかどうかで、人生設計が違ってきます。そうした患者さんたちを意識
した項目をHPに載せました。

 

題して「これからこどもを産みたい患者さんにーーー妊娠・出産に合う心臓手術」

これからこどもを産みたい患者さんにーーー妊娠・出産に合う心臓手術 【2025年最新版】

です。ご参考になれば幸いです。

 

最近も遠方例えば沖縄からも同様の状況で若い患者さんが来られました。バーロー
症候群という、僧帽弁形成術としては難易度の高い病気でしたが、首尾良く進み
逆流もゼロとなりお元気になられました。MICSで傷跡も見えにくく、いっそう
喜んで頂けました。

 

中には弁形成術を希望しながら、熟練外科医がいない病院で希望が叶わなかった
という女性患者さんも多くおられます。そうした残念を繰り返さないように、
よく調べ、よく考え、よく相談して納得いく治療を一緒に創っていただければと
希望します。

 

厳しい暑さの折柄、皆様ご自愛ください。熱中症対策は十分にお願いします。

 

敬具
平成29年8月10日
米田正始 拝

 

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これからこどもを産みたい患者さんにーーー妊娠・出産に合う心臓手術 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月15日

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1. 妊娠・出産に合う心臓手術とは?

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妊娠・出産を希望する女性にとって、心臓手術の選択は非常に重要です。
理想的なのは、弁膜症や心不全を残さず、かつワーファリン(抗凝固薬)を使わなくて済む手術です。

心臓の弁膜症を放置して妊娠すると、心不全が進行し母子ともに命の危険が高まります。
一方、弁置換術(人工弁)を選んだ場合も、妊娠・出産に大きなリスクを抱えることになります。

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2. 人工弁が妊娠・出産に不利な理由

機械弁(金属弁)

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  • ワーファリンが必須
  • ワーファリンは胎児に奇形や流産のリスクを高める
  • 妊娠中も母体の命に関わるリスクあり

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生体弁(ブタやウシ由来の弁)

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  • ワーファリンは不要
  • しかし若い女性では耐久性が短く、5年以内に壊れることも
  • 再手術が必要になると、妊娠出産どころか再手術自体のリスクも増える

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👉 つまり「人工弁」は妊娠を希望する女性には不利なのです。

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3. 弁形成術(修復術)の利点

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ここで大きな意味を持つのが弁形成術です。

  • 自分の弁を修復するのでワーファリン不要

  • 生体弁よりも耐久性が長く、数十年持つケースも

  • 妊娠中も弁が急に硬化・石灰化する心配が少ない

  • 妊娠・出産を安全に迎えやすい

実際、私たちのチームでは、弁形成術を受けた多くの女性が無事に出産を経験し、その後も元気に育児・仕事を続けておられます。
外来にお子さんを連れて来られる患者さんもおられ、医療者として大きな喜びです。

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4. 対象となる弁は僧帽弁・三尖弁だけではない

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これまで主に僧帽弁形成術で妊娠出産を支援してきました。(お便り129など多数)
しかし近年は、

  • 大動脈弁形成術

  • 三尖弁形成術(お便り130

にも適応が広がり、より多くの女性患者さんが恩恵を受けられるようになっています。
(→参考:患者さんの会ページ)

 .

5. 低侵襲手術(MICS/ミックス)でさらに安心

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対象となる患者さんは10代~30代の若い世代が中心です。
この世代では美容面・早期社会復帰の希望が強いため、私たちは**MICS(ミックス:骨を切らない低侵襲心臓手術)**を積極的に採用しています。

  • 傷跡が目立ちにくい

  • 術後の痛みが少ない

  • 早期に仕事や家庭生活に復帰可能

医学的にMICSが不適な場合でも、痛みの少ない胸骨正中切開の工夫を用い、同様のメリットを得られるよう配慮しています。

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6. メッセージ

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過去10年で、妊娠・出産に対応した心臓手術は大きく進歩しました。
「弁膜症があるから子どもをあきらめなければならない」――
それはもう昔の話です。

妊娠・出産を望む女性患者さんには、**弁形成術+低侵襲手術(MICS)**という選択肢があります。

どうか一人で悩まず、まずはご相談ください。
私たちは、患者さんと赤ちゃんの未来を守るため、全力でサポートします。

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参考

いい心臓・いい人生 【第九十五号】弁形成手術とお若い女性患者さん

重症弁膜症でこれからどうしようと悩んでおられる患者さんたちにおかれましては、老若男女を問わず、しっかり調べ、そして聞いたり問い合わせたりして情報を集め、前向きに熟考いただければと思います。私たちも及ばずながらお手伝いさせて頂きます。

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お便り128 インオペと言われた状態から三尖弁手術で復帰

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世の中にはさまざまな原因で手術のベストタイミングを逃して、手術を受けることなくいのちを失う患者さんが少なくありません。いわゆるインオペ(手術は手遅れという意味)状態ですね。

下記の患者さんも危険な状態になってからご家族が私に相談を持って来られました。IMG_2442

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患者さんは以前に他病院で心臓手術を受けておられ、今回は三尖弁閉鎖不全症が高度になり、どうしても心不全から脱却できない状態でした。

心臓だけでなく腎臓や肝臓も悪く、さすがにすぐ手術とは行かない状態でした。

手術はできてもその後の体力が持ちそうにない、という状態でした。

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そこで時間をかけて、薬や点滴、リハビリなどで粘り強く回復を図りました。

ご家族は、あまりの長さにしびれを切らしていつ手術になるのですか、いつまで準備するのですか、とお叱りを何度か頂戴しました。

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しかしそこは信念を持って、手術に耐えられるからだ造りを目指しました。

3ヶ月もかかったでしょうか、ようやくその時が来ました。

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長年培って来た再手術のノウハウを結集して、できるだけ短時間で無駄のない手術を行いました。

三尖弁は破壊がひどく、体力のある患者さんなら自己心膜などを用いて複雑三尖弁形成術を完遂するところでしたが、この患者さんの場合は、70代のご年齢と病気が多いことから短時間で確実に仕上げることが何よりの親切と判断し、生体弁による弁置換を行いました。

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患者さんは間も無く回復され、長かった準備期間がうそのように元気になられ、手術前とは別人のように笑顔で話しされるようになり、退院して行かれました。

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あれから5年が経ち、またお便りをいただきました。暑中見舞いの短い文面に、患者さんのお気持ちが感じられ、うれしく思いました。

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心臓は大丈夫ですので、身体の傷んだところをしっかりと治し守りつつ、これからも前向きに、楽しくお過ごしください!

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************** 患者さんからのお便り *************

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暑中お見舞い申し上げます。

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御無沙汰をしておりますが、夏本番となりました。

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お元気でお過ごしの事と存じます。先生にハートセンターで長い間お世話に成りました。手術をして頂いてずいぶんになりますが、年老いたのか暑さが感じるように成るまでずいぶんかかりました。若いという事は素晴らしいと思います。

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先生も遠くに行かれて淋しく思います。

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今年は入院生活もなく、なんとか主人に助けて頂いて普通の生活に戻って参りました。それも先生のおかげだと感謝をいたしております。

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先生も患者様のためにも、ご家族のためにも、寝苦しい夜がつづいておりますが、どうか御体に気をつけて下さいませ。私も頑張ります。

 

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いい心臓・いい人生 【第九十四号】小林真央さんの一件で思うこと

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心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから


編集・執筆: 心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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大雨や猛暑が交錯するこの頃ですが皆様体調を崩したりしておられないでしょうか。

 

乳がんで闘病しておられた小林真央さんの一件では本当に悲しい気持ちになりました。
人生まだこれからという時に命を奪われる、まだお子さんたちも小さいのに。

 

しかしその後、報道で伝えられる内容は、どこまで真実で正確かはわかりませんが、
残念な思いがさらに強くなるものでした。

 

様々なご事情があって乳腺のしこりの後の精密検査や治療が遅れぎみであったこと
は聞いていました。

 

しかし本来受けるべき治療、真央さんの場合は癌の根治術ですね、これを受けられ
なかったということは残念極まりないことです。

 

私は心臓外科医で乳がんの専門家ではありません。しかしかつて研修医の頃に、30
名以上の乳がん患者さんの治療に参画させていただきました。中には手遅れに近い
ほど、癌が大きくなり、リンパ節に転移していた患者さんも何名かおられました。

 

もう30年以上も昔のことですが、それでも患者さんも私たちも頑張り、そのほとんどの
方々は長生きしておられました。少なくとも1年やそこらで亡くなることは診断時に
よほど末期の患者さん以外にはありませんでした。

 

がんにも色々あり、急速に大きくなり、早く転移する、悪性度が高いものもあります。
しかしそうしたタイプでも渾身の治療で長期生存を得た方も少なくないのです。

 

医学にはまだまだ未完成、未熟なところがあります。しかしこれまでの多数の患者さんの
データをもとに検討し、より多くの患者さんがより確実に治るよう、常に検討し改善を
続けて来たのも事実です。

 

週刊誌などでこの薬は無意味とかこの手術はダメなどの記載が見られることがあり
ますが、それらは一面の真理をついていることはあっても全面的にそうであるとは
限らないのです。これらの疑問は医師に聴くのが一番です。例えばある優れた薬で
気になる副作用が玉にキズという状況なら、その薬が患者さんにとって必要不可欠
ならば、副作用を毎回チェックし大丈夫という確認を取りながらその薬をうまく使う
ようにします。もし副作用がダメだからとその薬を使わないと、元の病気のために
患者さんがやられてしまいます。患者さんが一番得する、高い妥協点を毎回相談確認
しながら確保するわけです。

 

しかしそうした無用な疑心暗鬼が皆の心にある中で真央さんが本来あるべき治療を受け
られなかったことを残念に思うのです。
それは民間療法や気功などをどうこう言うのではなく、科学的データに基づいた治療を受け
つつ、他の治療法を併用したらもっと良かったのではと思うからです。

 

済んでしまったことをとやかく言うのではなく、真央さんのようなケースは少なくない、
これからも起こり続けると感じるため、この一文をお書きしたくなったのです。

 

がんと同じことは心臓病、心臓手術でも経験することがあります。
重症でも心臓手術を受ければ95%助けられるという実績があっても、手術は怖い、
手術は嫌ですと、その他の治療法や民間療法を選び、死んで行った方を何人も見て
来ました。

 

手術を最初から好きな人はいません。でも手術で大多数の患者さんが助かり、逆に手術
しなければ大半が遠からず亡くなるというデータが出ている状況では、冷静に、問題を
直視し、患者さんに真に益する道を選んで欲しいと思います。また患者さんだけでなく、
ご家族はじめ周囲の方々にも真剣に考えて戴きたいのです。

 

自分が生きるか死ぬかの状況になれば、人間、誰でも不安になりますし、時には動転し、
どうしたら良いかわからなくなることさえあるのです。そうした時に、周囲の方々が
患者さんを精神的に支え、冷静に科学的に判断できるよう応援して欲しく思います。

 

小林真央さんの一件ではそうした昔の残念な患者さんたちを想い出し、悲しい思いに
なりました。
困った病気になれば、心を許せる人たちとじっくり考え、相談し、医師にもどしどし
質問し、情報を十分に得て、後悔を残さないようにしたいものです。多くの医師は
喜んで支援してくれるでしょう。現実から逃げても逃げおおせるものではないのです。

 

追伸:心臓病で普段から飲水制限をしておられる皆様へ、猛暑で汗をかく時はいつもの
飲水制限は適切でないこともあります。体調がおかしければ早めに医師にご相談
ください。一般的には体重が減っておれば発汗に応じて飲水を増やして良い場合が多い
です。

敬具
平成29年7月15日
米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第九十三号】カナダでも頑張りました

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 いい心臓・いい人生 【第九十三号】カナダでも頑張りました
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           https://www.shinzougekashujutsu.com
      編集・執筆: 心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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暑い季節になって参りましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は6月22日からしばしカナダのオタワに出張しておりました。
大動脈弁形成術サミットという、心臓血管外科の中でも特化したワンポイントを
深く追求する学会に参加して参りました。前回のメルマガにお書きしました
アメリカ胸部外科学会100周年記念大会から2ヶ月も経っていないため遠慮
しながらの出張でした。

心臓血管外科はもともと専門的領域ですが、その中でもこの大動脈弁形成術と
いう領域はさらに専門的なものです。つまりそれがこなす外科医はごく少数と
いうわけです。

そのため世界の各地でエキスパートが細々と努力を続けているという印象があり、
皆さんのノウハウを結集してレベルを上げようとヨーロッパやアメリカで研究会
が開催されていました。せっかくだから、それを一つにまとめて最高のものをと
いうことで、今回、初めて欧米の専門家が結集して合同の研究会つまりサミット
をオタワで開催することになったのでした。

超専門領域の割には世界中から多数の心臓外科医が参加しました。日本からは
さすがに少なかったようです。

私も大動脈弁形成術に力を入れているため、参加しました。これまでの努力が
評価され、発表の機会をいただけたことも光栄でした。

このサミットでは2日間で合計6例のライブ心臓手術が供覧されました。ベルギー
のクーリー(Khoury)先生やドイツのシェーファーズ(Schaefers)先生、我が恩師
デービッド(David)先生はじめおなじみの顔ぶれで執刀しておられました。

様々な意見交換がされ、大いに参考になりました。自分ならこうする、こうしたら
さらに良くなるというのもあり、楽しく充実したひと時でした。内容的にはデービ
ッド手術や二尖弁への弁形成というおなじみの手術でした。

ライブ手術以外に多数のプレゼンがあり、参考になりました。

弁形成や自己弁温存手術のおかげでスポーツや(女性の場合)妊娠・出産、あるい
は仕事に打ち込む、様々な楽しみを持つ、ということが可能となり、患者さんへの
利点は大きいものがあります。

私自身の経験でも野球やスキューバなどを楽しむためにこの手術を受けて下さった
患者さんがおられ、またこの手術のおかげで妊娠・出産を無事果たしたという方も
あり、そうした方々を想い出しながら勉強できました。

しかしこれだけの充実した内容の中にあって、MICSで大動脈弁形成をやっている
施設はなく、この意味では私たちは一歩先んじているという感を持ちました。これ
からこうした手術をより完成させ、より多くの患者さんたちのお役に立てるように
とも思いました。

サミットの間に恩師デービッド先生や同じく恩師ミラー先生(D Craig Miller)ら
と話し(というより議論)ができ、また心エコーの大家、メイヨクリニックの
サラノ先生とも相談できたことが収穫でした。

こうした交流が次の患者さんの治療に活かされるため、前向きに取り組もうと思い
ました。

このサミットに出席するために、ほぼ同じ時期に地元大阪で開催された関西胸部
外科学会には早引きせざるを得ませんでした。代演を務めたり留守を守って下さ
った医誠会病院心臓血管外科の先生方・関係の皆様に感謝申し上げます。


暑さが本格化し、脱水や熱中症が気になる時節になりました。皆様どうかご自愛
ください。

                           敬具


平成29年6月25日


米田正始 拝

               

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成人期エプシュタイン病の三尖弁治療 ― MICSでのコーン手術【2025年最新版】

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更新日:2025年9月30日
執筆:福田総合病院 心臓血管外科専門医 米田正始

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◆エプシュタイン病と三尖弁の問題

エプシュタイン病(Ebstein奇形)は、三尖弁の位置や形に異常があり、重症例では弁形成が非常に難しい病気です。
従来の手術成績は安定せず、「外科医泣かせの疾患」と言われてきました。

この状況を大きく変えたのが2007年に登場したコーン(Cone)手術です。

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◆コーン手術とは?

コーン手術では、Cone手術シェーマ

  1. 三尖弁尖を一度取り外す

  2. 異常に右室へつながった筋肉を切除

  3. 弁尖を円錐(コーン)状に組み直す

  4. 本来の正しい三尖弁輪に縫い付ける

という手順で、弁を本来の機能的な形に再建します。
その結果、右心室の働きを取り戻し、三尖弁逆流を劇的に改善できるのです。

この方法は「三尖弁形成術の革命」と呼ばれ、現在ではエプシュタイン病の標準的治療の一つとなっています。

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◆コーン手術のもう一つの利点 ― 右室形成効果

コーン手術では、弁を修復するだけでなく、巨大化した右室を縫縮して正常な形に戻す効果もあります。
そのため、右心房のように拡張してしまった右室を再び本来の右室として機能させることができます。

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◆MICS(低侵襲心臓手術)でのコーン手術

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当院では、先天性心疾患の専門家と連携し、小切開(MICS)でのコーン手術を実現しています。

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  • 通常の胸骨正中切開(約25cmの大きな傷跡)と比べ、骨を切らず傷跡が小さい

  • 心エコーで見ると、術前は弁が閉じず強い逆流がありましたが、術後は円錐状の弁がきれいに閉じ、逆流がほとんど消失

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  • 患者さんは顔色が改善し、運動能力も大きく向上

  • 傷跡が目立たないため、社会復帰が早く、心理的負担も軽減

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特にお仕事や外見上の傷が気になる患者さんにとって、大きなメリットがあります。

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左写真はMICSで行ったコーン手術の術前(上)と術後(下)の心エコー写真です。三尖弁の逆流が減り、巨大だった右室と右房が著明に改善しています。

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◆安全性への配慮

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MICSによるコーン手術は魅力的ですが、心臓手術の原則は安全第一です。

  • 正中切開と同等の安全性を確保すること

  • 慎重な術前検討と綿密な手術計画が必要

これらを守ることで、患者さんにとって本当に有益な心臓手術になります。

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◆まとめ

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  • エプシュタイン病は従来難治とされた三尖弁の先天性異常です。

  • コーン手術は、弁を円錐状に再建し右室機能も回復させる革新的な方法です。

  • 当院では、MICSによる低侵襲コーン手術を導入し、傷跡の小ささと早期回復を両立しています。

  • 安全性を最優先に、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。

👉 成人期エプシュタイン病で三尖弁の手術が必要と診断された方は、ぜひご相談ください。

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Heart_dRR

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