いい心臓・いい人生 【第121号】 アジア弁膜症シンポジウム(その1)

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いい心臓・いい人生 【第121号】 アジア弁膜症シンポジウム(その1)
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発行:心臓外科手術情報WEB

心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから


編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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秋も深まって参りましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

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さて以前にもご案内いたしましたアジア弁膜症シンポジウム(愛称ムルシンポ
ジウム Mulu Heart Valve Symposium)をこの11月7日から10日まで京都
にて開催させていただき、盛況のうちに幕を閉じました。御礼とともにご報告
申し上げます。

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一日目は京都の東部を楽しんでいただこうという趣旨もあって東山にあるソウ
ドウという会議場(通常は結婚式場で使われる事が多いようです)にて開催し
ました。

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この会議場は寧年坂のすぐ近くにあり、場内から五重の塔が近くに見える絶好
のロケーションでいかにも京都という雰囲気で最初から盛り上がりました。
ディベートではひどく壊れた僧帽弁には弁形成と弁置換のどちらが良いか、

というテーマで白熱した議論が展開されました。

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始めに弁形成の賛成派としてベトナム・ホーチミン市のヴァンファンNguyen
Van Phan先生が話されました。リウマチ性僧帽弁弁膜症では世界トップの
2500例の実績を持つ同先生が様々な手技と成績を披露されました。
あの弁形成パイオニア・パリのカーパンチエCarpentier先生の直弟子でもある
同先生は、長期予後が不明な奇抜な方法よりもむしろ着実に信頼おける方法で
治す、無理はしないというスタンスでした。

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これに対して北京のジャンHaibo Zhang先生は長時間クランプの欠点を示し、
確実に弁置換する利点を強調されました。弁形成にも積極的な同先生には嫌な
役を押し付けて申し訳ないと後で謝っておきました。

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それから南京のチェンXin Chen先生が弁形成(変性疾患のMRに対しては
弁置換はクラスIIIつまりやっては行けない、65歳以上の高齢者でも弁形成の
メリットは大きいと)、マレーシアの大御所ヤクーAzhari Yakub先生が弁置換
の応援(弁形成の経験が少ない術者では無理な弁形成は良くない)をされ
ました。

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リウマチ性僧帽弁弁膜症の弁形成には高度な技術が必要で、欧米にはリウマチ
がほとんどないため、アジアの弁形成技術レベルは近年世界トップクラスの
水準になりました。そこでこのトピックスは大変参考になったものと思います。

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自分の長所と限界をわきまえ、確実に長期予後をベストな点に持っていく、
そこでその外科医にぴったりの弁形成と弁置換の住み分けが自ずとできて行く
と思います。自分自身の経験でも10年前に弁形成できなかった難症例が今は
できる、という状況に時々遭遇します。同じ基準で弁形成すべきとかすべき
でない、とは言えないわけです。

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熱いディスカッションの後は、恒例になったMuluレクチャーで今回はサウジ
アラビアのアルハーレス Zohair Al Halees先生がロス手術の復活について、
同先生の長年の経験をお話しされました。

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近年、大動脈弁形成術の進歩で、エキスパートの間では何とかロス手術を避け
ようという空気を感じますが、このロス手術は適切にやれば素晴らしい長期
予後を出せるだけの内容があり、弁形成のバックアップとしてもうまく使えば
患者さんに益するものと実感できました。
君のおかげでロス手術のすごさを改めて勉強できたよ、と御礼を言うと、無口
な同先生は満面の笑みで返してくれました。

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それからソウドウの見事なパーティ会場へ場を移しディナーとなりました。
皆様をどうしてもベストシーズンの京都でもてなしたいという理事会の強い
ご希望で高価な参加費になったことをお詫びしたところ、そりゃ当然でしょ
と応援して下さる方が多く、持つべきものは友達と感動いたしました。帰途
ライトアップの五重の塔を眺めながら皆さん京都は素敵と口々にお褒め下さり
光栄の至りでした。(つづく)

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平成30年11月13日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第120号】 日本胸部外科学会2018

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いい心臓・いい人生 【第120号】 日本胸部外科学会2018

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発行:心臓外科手術情報WEB

http://www.shinzougekashujutsu.com

編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始

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変な台風が急ぎ足で通り過ぎましたが皆様如何お過ごしでしょうか。

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2つの台風の合間を縫うような形で恒例の日本胸部外科学会総会が東京で開催

され参加して参りました。日本の心臓血管外科の学会としては最高峰に位置する

学会で、専門医資格維持に必要ということもあり皆と一緒に参加しました。

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今回は東京医科歯科大学の荒井裕国先生が会長を務められ、先生らしい親切で

内容たっぷりてんこ盛りの会で真面目に参加した人間の一人として、ぐったり

疲れるほど充実していました。

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海外からの招請演者も豪華な顔ぶれでした。

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弁膜症・ミックス関連ではニューヨークのDavid H. Adams(僧帽弁形成術で

ますます磨きがかかっています)、バンコックの Taweesak Chotivatanapong

(リウマチ性僧帽弁膜症の弁形成が年々完成度向上)、モナコのGilles

Dreyfus、シシリーのKhalil Fattouch(虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する

乳頭筋吊り上げの仲間、私が発明した乳頭筋前方吊り上げもきちんと引用して

くれてありがとう)、ライデンのRobert JM Klautz(SAMや機能性逸脱の話は

分かりやすかったです)、ミュンヘンのRudiger Lange(複雑僧帽弁形成術や

直視下MICSで話題を)、ザーランドのHans-Joachim Schaefers(大動脈弁

形成術がいよいよ佳境に)、ローマのHugo Baron Vanerman(MICS手術の

パイオニア、ますます冴えるご指導に感謝)、香港のSong Wan(抜群の安定感

ある弁形成)、スタンフォードのJoseph Woo(若きリーダー、大変柔軟性ある

頭と腕で、私発明の乳頭筋前方吊り上げも綺麗に活用)、シドニーのTristan

D Yan(MICSのホープ)らが講演されました。

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個人的にも旧交を温めたり、新たなプロジェクトで色々と相談ができ、大変

有意義なひと時でした。

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冠動脈関係ではバンコックの Suchart Chaiyaroj、オンタリオ・ロンドンの

Bob B Kiaii(MICSバイパスがさらに完成度を上げる)、ソウルのKi-Bong Kim、

オックスフォードのDavid Paul Taggart、大動脈関係ではボストンのDuke Edward

Cameron(日本のreimplantation手術のレベル向上にも貢献)、ボローニャの

Roberto Di Bartolomeoはじめ錚々たるゲスト陣でした。

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私自身はテクノアカデミー・虚血性心疾患の部で心筋梗塞後のVSDいわゆるVSPに

対する心筋梗塞除外術、通称David-Komeda手術と呼んで頂いている手術の歴史と

新型の解説を加えました。この手術を中心とした左室アプローチでしか治せない

病態、代表的な3つ(左室自由壁破裂合併、虚血性心筋症や心不全合併例、

心筋解離が高度で心室中隔が二つに割れたケース)をお示しし、若い先生にも

使って頂ける簡便な新型術式を披露しました。若手がこの手術で優れた成績を

上げているのをご紹介しました。さらにこれから左室形成術のリバイバルを引き

起こすかも知れない心尖部凍結型左室形成術をご紹介し、これによって左室内操作

に慣れればVSPへの左室内手術ももっと快適安全になる事をお示ししました。

左室は心臓外科の最後のフロンティアの一つである事、若い先生方に是非とも

挑戦して欲しいこともお話しました。

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VSP以外でも僧帽弁形成術のラピッドセッションで新しい連続ループ法の威力を

お示ししました。これは複雑僧帽弁形成術特にMICSで活躍する事をお示しし、

上記タイのTaweesak先生らからも良いご意見を頂きました。

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近年の学会の流れに沿って若手育成のためのセッションやアワード(賞や留学

支援など)のセッションも増え、親切で楽しい学会への脱皮努力が感じられる

良い内容でした。

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また心臓血管、呼吸器、食道の3本柱を持つ胸部外科総合学会ですが、年々

3つに分化する傾向が見られ、今後どのように統合性を維持するか、学会

そのものの存在価値を問われる状況になっていることも教えられました。

心臓外科医が日本外科学会に参加しても居場所が少ない、内容も薄いと感じる

(専門医資格維持のために止む無く参加)のと同様のことを呼吸器や食道の先生方

がこの学会に対して感じておられるのであれば、やはり抜本的な改正が必要なの

かも知れません。

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ともあれ極めて充実し、また楽しい4日間でした。会長の荒井先生、東京医科歯科

大学の皆様、お疲れ様でした。

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平成30年10月7日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー

心臓血管外科専門医・指導医

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第119号】 NHK文化講座のお知らせ

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いい心臓・いい人生 【第119号】 NHK文化講座のお知らせ
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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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お騒がせの大型台風が過ぎましたが次の台風が迫っています。
皆様お怪我などされなかったでしょうか。備えは万全でしょうか。

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さて近々NHK文化講座にて恒例のお話をすることになりました。
今回は心臓病の患者さんを主な対象とし、冬の過ごし方をテーマとして
お話したく思います。
心臓病の中には高血圧や動脈硬化、大動脈などの病気も含まれますし、
心臓手術の前か後の方々も含みます。

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寒くなるとからだも血管も縮こまって血液が流れにくくなります。そのため
夏には高くなかった血圧がひどく高まる事があります。そのため元々何らか
の心不全を持っていた方の心不全が悪化することも少なくありません。
例えば寒波到来となれば、これまでの経験上、間も無く心不全の患者さんや
急性大動脈解離つまり大動脈の壁が内外に裂けて命に関わる状態になり、
病院に来られる事が増えるのです。一刻を争う緊急も増えます。僧帽弁や
大動脈弁などの弁膜症の患者さんが不整脈などを起こして急に苦しくなる
なども時に起こります。夏には落ち着いていた狭心症が再発することも。

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そこまで行かない場合でも、冬には温度が上がり、エアコンのために空気が
乾燥して、心臓病をお持ちの方は風邪を引いたり、こじらせて気管支炎や
肺炎になりやすい傾向が見られます。それが元の心臓病や高血圧などを一層
悪くすることもあります。不整脈が増えて心不全や脳梗塞などの心配が高まる
ケースもあります。

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という事で冬は油断ならない季節なのです。お薬を飲んでいる場合でも、夏用
と冬用では微妙に違うこともあります。

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しかし備えあれば憂いなし、少なくとも憂いや心配を減らす事はできるで
しょう。

そのあたりを含めてお話したく思います。あとは皆さんからのご質問を中心
にできるだけ多数の方のお役に立てるようにしたく思います。

個人的なご質問やご相談も受け付けたく思います。人数が多い時にはとり
あえず方針だけでも立て、後日さらに相談という手もあります。

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講座の予定は次の通りです。

11月4日(日曜日)13時30分から神戸
詳細はこちら→
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1157653.html
11月11日(日曜日)13時30分から大阪梅田
詳細はこちら→
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1139420.html

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本職が心臓外科医ですので心臓手術のご相談なども歓迎いたします。
それでは皆様、健康のため、そして楽しい冬のためふるってご参加ください

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平成30年10月6日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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いい心臓・いい人生 【第118号】 台風への対策について(心臓病の観点から)

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いい心臓・いい人生 【第118号】 台風への対策について(心臓病の観点から)
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編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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台風がまたしても近づいている今日、メルマガをお書きしています。

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皆さん、台風への備えはしっかりとなさっている事とは思いますが、山崩れや
交通マヒ、停電、避難所生活などを含めればもう一段強い対策が必要なのかも
知れません。

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当然とはいえ、まず身の安全の確保ですね。避難する場合は早めのタイミングで
お願いします。避難グッズも平素から準備しておられるかと思いますが、今一度
ご確認を。

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心臓手術を含めて心臓病の治療に当たっている者としてお願いは、そうした避難
グッズの中にいつも飲んでおられるお薬を忘れずに入れておいて下さい、という
事です。
特にワーファリンやバイアスピリンなどの血栓予防のお薬は必須です。機械弁
つまり金属製の人工弁をお持ちの方は特にご注意を。弁形成の術後でも心房細動
などの不整脈がある場合は油断禁物です。
そして高血圧や心不全のある方のお薬も大切です。1日2日で命にかかわる事は
少ないかも知れませんが、時間がかかることもあるでしょうから、必ず数日分は
お持ち下さい。

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そうしたことに加えて避難所での生活の工夫ですね。台風での避難は地震の場合
よりは短期間かも知れませんが、精神的ストレスや睡眠不足などが体を一層痛め
ます。

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トイレ数が少ないためなるべく回数を減らすため水を飲まない傾向が指摘されていま
す。お気持ちはよくわかるのですが、脱水は様々な二次的問題を起こします。血栓
ができやすくなりますし、腎臓を悪くします。開き直ってでも水を飲みトイレへ行く
事が体を守ります。外に簡易トイレを造るなども必要かも知れません。また飲料水
はある程度準備しておきましょう。

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寝る環境が悪いため睡眠不足になりがちですが、眠る事が健康管理の第一歩ですので
積極的に工夫したいものです。耳栓かなければカナル型イヤホンでも防音に役立ちま
す。眩しい時にはサングラスやマスクを眼にかけても役立ちます。可能なら折りたたみ
式の空気マットは防災グッズに入れておけば安眠に役立ちます。
睡眠不足は不整脈や高血圧の原因になりやすく、また精神的にも負担になります。
できるだけの対策を立てましょう。

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心臓病を悪化させない工夫でできる事はいくつもあります。この機会に考えてみて
下さい。ともあれ台風情報に注意し、油断のないように、ご自愛をお願いいたします。

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平成30年9月29日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
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米田正始 拝

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いい心臓・いい人生 【第117号】 第66回日本心臓病学会にて

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 いい心臓・いい人生 【第117号】 第66回日本心臓病学会にて
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    編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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山間部では秋の気配が漂うこの頃ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。

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この9月7日から9日まで大阪で開催された日本心臓病学会に参加して参りました。
今年は兵庫医科大学循環器内科の増山理先生が会長を務められ、増山先生らしい、
「心臓病学をケースに学ぶ、エビデンスに学ぶ」というメインテーマでした。
もともと基礎研究(動物実験などに代表される科学的研究です)に偏らず、臨床
研究つまり患者さんの治療の中から生まれる研究をモットーにした学会のため、
明日の治療に直接役立つ、そうした内容が多数ある学会で楽しみにしていました。

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できれば3日全部参加したかったのですが、病院内での用事が多くて結局1日だけ
になりましたが収穫の多い会になりました。

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私は肥大型心筋症HCMのセッションでただ一人外科系の人間として発表しました。
閉塞性肥大型心筋症HOCMや心尖部肥大型心筋症の外科治療成績を約50例のデータ
から検討しました。比較的稀な病気で、その手術が安定した成績でできる病院が
少ないため50例でも随分多いですねと言われました。
カテーテルでは治療できないような、異常乳頭筋や異常心筋の切除をはじめ、
同時に行うことのある僧帽弁形成術などにも話題が広がりました。
お若い患者さんが多いため傷跡の見えにくいMICS(ミックス)手術を行っている
のも好評でした。内科の先生方が多く、日頃見る機会のない手術映像を見せて
もらってありがとうと言って頂き恐縮しました。

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こうしたかつての難病特に心室中部閉塞型HOCMや心尖部肥大型心筋症も治せると
いうことを知って頂けたのは大きな収穫でした。

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このセッションではHCMでは聴診でIV音が聞こえるタイプの方が心房細動になり
にくく心機能も良いという、臨床の原点に立ち返った優れた研究や、位相MRIを
用いた流体力学的研究などの先端的なものまであり、勉強になりました。

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そのあと弁膜症大動脈弁のセッションでも発表しました。
この数年以上取り組んで来た大動脈弁形成術と心膜再建と大動脈基部再建の3
グループの比較で、いつのまにか60例を超え、様々な検討ができるようになり、
前向きのご質問をいくつも頂きました。大動脈弁形成術をできない病院はまだまだ
多く、世間一般では十分信用されていないという印象があり、現代の大動脈弁形成
は昔のそれとは違うことをお示ししました。
また心膜再建のあと、数年経ってからの感染性心内膜炎が多いという問題を討論
し、今後の考察へのヒントを頂きました。やはり臨床に役立つ良い学会と改めて
思いました。

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TAVI(経カテーテル弁)での検討発表が複数あり、治療後の血栓弁は参考になり
ました。

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その他、心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症のセッションでは参考になる知見もあり
ました。これまで何となく知っていた病気をより正確に知ることは将来の
発展につながると思います。こうした病気への手術は昔からやっていましたが、
今後より早いタイミングで、より科学的に手術することが患者さんに益すること
になるでしょう。

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学会場では懐かしい先生方にお会いすることができ、心温まる一時でした。一日
しか参加できませんでしたが、それでも十分学び楽しめた学会でした。

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平成30年9月21日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
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心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症について 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月13日

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◆要約

  • 弁そのものは壊れていないのに逆流(MR)が起きるタイプの一つが「心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症」。

  • 長期の心房細動(AF)で左心房が拡大し、弁輪が広がる/後尖が外側へ引かれることで弁が閉じ切れなくなります。

  • 検査は心電図・胸部X線・心エコーが基本

  • 治療はAFの管理+僧帽弁形成術(リング)が軸。三尖弁逆流の合併巨大心房には三尖弁形成+心房縮小メイズを同時に行うと再発抑制に有利です。

  • カテーテルによるMクリップは長期的な成績に懸念があります
  • 私たちは**低侵襲(MICS)**の実績も多く、回復と社会復帰を後押しします。

 

◆心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症とは?

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僧帽弁閉鎖不全症(MR)のうち、弁尖や腱索など弁自体に構造的破綻がないのに逆流が生じるものを機能性MRと呼びます。
その一つが心房性機能性MRで、次の機序で起こります。

  • 長期の心房細動 → 左心房拡大 → 僧帽弁輪拡大

  • 後尖が左室外側へ偏位(後尖が足りなく見える)

  • 補おうとして前尖がまっすぐになり、それでも届かず逆流が発生

※文献で「ハムストリング現象」と表現されることがありますが、要するに左房拡大に伴う弁装置の引き伸ばしです。

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◆症状

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  • 動悸(パタパタ・ドキドキ)

  • 息切れ・疲れやすさ(逆流増悪で悪化)

  • 夜間の起座呼吸(横になると苦しい:危険サイン)

  • むくみ、体重増加(心不全の進行時)

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◆診断(どうやって見つける?)

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  • 心電図:心房細動の有無

  • 胸部X線:心拡大、うっ血の確認

  • 心エコー:逆流量、弁輪径、弁尖の動き、三尖弁の評価、肺動脈圧 など
    ※ 特に心房性機能性MRは見逃されやすいので、循環器専門外来での評価がおすすめです。

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◆治療

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1) 内科的治療

  • 心房細動の管理(リズム/レートコントロール、抗凝固療法)

  • うっ血のある時は利尿薬等で症状緩和

  • カテーテルを用いたMクリップ

2) 外科的治療(逆流が強い/心不全が進む場合)

  • 僧帽弁形成術(リングで弁輪を適正化)

    • 多くの症例でリング単独で逆流が軽減

    • 後尖の二次的変化(短縮・拘縮)があれば後尖延長や人工腱索を追加

  • 三尖弁形成術

    • 心房性機能性MRは三尖弁逆流を合併しやすいため同時手術が再発抑制に有利

  • 心房縮小メイズ手術(AF外科治療+心房縮小)

    • 巨大化した左・右心房を縮小し、AFの回路遮断を併施

    • 血液の淀みを減らし血栓・脳梗塞リスク低減にも寄与

  • 低侵襲(MICS)

    • 医学的適応があれば胸骨を切らない小切開での手術に対応

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◆私たちのアプローチ

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  • 僧帽弁形成術・三尖弁形成術に加え、心房縮小メイズ手術を早くから導入・報告。→英語論文169番

  • 巨大心房を放置しない総合再建を重視(弁だけ直しても再発しやすいため)。短時間で施行し体への負担を減らす。

  • 適応に応じてMICS(ミックス)で痛みと回復期間の軽減をめざします。MICSが適応でない場合でも痛みの少ない特殊正中アプローチを使います。

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◆受診の目安(こんな時はご相談を)

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  • 心房細動があり、最近息切れが増えた/むくみが出た

  • 検診や他院で**「僧帽弁逆流」**と言われた

  • 夜、横になると苦しい(起座呼吸)

  • 三尖弁逆流もあると言われた/心房が大きいと言われた

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◆よくある質問(Q&A)

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Q1. リングを入れるだけで良くなるの?
A. 多くの心房性機能性MRではリングで弁輪を適正化するだけで大きく改善します。後尖の縮みが強ければ後尖延長や人工腱索を追加します。

Q2. 三尖弁は同時に治すべき?
A. 推奨します。三尖弁逆流は心房性機能性MRに合併しやすく、同時形成が長期成績の安定につながります。

Q3. 心房縮小メイズは本当に必要?
A. 巨大心房が根本要因のため、弁+心房をセットで整えるほうが再発を抑え、脳梗塞リスク対策にも有利です。

Q4. 傷跡は目立ちますか?
A. 適応があればMICSで小切開手術が可能です(全例で適応になるわけではありません)。

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まとめ

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  • 心房性機能性MRは、AFに伴う左房拡大が原因の“弁以外”の問題

  • リングによる僧帽弁形成+三尖弁形成+心房縮小メイズ総合再建で、再発を抑え予後改善が期待できます。

  • Mクリップよりも完全な修復と長期の安定性を図る
  • **低侵襲(MICS)**も選択可能。諦めずご相談ください。

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心臓手術のご相談はこちら

患者さんからのお便りはこちら

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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お便り138 意を決して転院しMICSで大動脈弁置換術を受け、間も無く仕事復帰

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心臓病の患者さんにとって心臓手術を受けるというのは大変なことです。それこそ清水の舞台から飛び降りるような覚悟で手術に臨まれるように感じます。だから私たちも信頼に応えるのだという信念を持って手術や治療に当たらねばなりません。

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IMG_1683次の患者さんは二尖弁で高度の石灰化を来たし、来院された時には突然死の恐れさえあるほど大動脈弁が狭くなっていました。しかも、肥大型閉塞性心筋症(略称HOCM)を合併し、二重に危険な状態になっておられました。

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他府県からお越し下さいました。聞けば近くの病院では正中切開で骨を切って心臓に達する方法で、機械弁で弁置換するしかないと言われ、それでは困るということで大阪の私の外来まで来られました。

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MICSの大動脈弁手術は私たちが得意としている手術の一つですが、一般にMICSがやりにくいと言われている体型だったため、工夫を凝らして手術しました。大動脈弁だけでなくHOCMもあったため、それぞれの病気に対する経験を活かして対応しました。

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手術室で少々苦労しましたが、その後の患者さんの体力回復は目覚ましく、手術室での苦労が報われた思いでした。痛みもほとんどなく、MICSの良さが十分に生きる手術になりました。

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以下はその患者さんからの感謝のメールです。これから活発な生活と仕事を楽しんでください。

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********** 患者さんからのお便り ********

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米田先生

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このたびは、大変お世話になりました。
おかげさまで、本日から仕事に戻ることができましたので、報告させていただきます。

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8月2日に心臓手術を受けてから、3週間もたたずに職場に顔を出しましたので、周囲や取引先からは大変驚かれておりました。
これも米田先生からMICS手術を受けられたおかげです。

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大動脈弁狭窄症については、長年他病院で経過観察を受けておりましたが、昨年12月に手術適応であると言われておりました。
年齢を考慮して、生体弁の耐用年数が短いため、機械弁が第一選択肢になり、また術式としては、胸骨正中切開のため、術後半年ほどは重たいものが持てなくなると言われて、将来にわたってのワーファリンの定期的な服用や運動制限に抵抗を感じて、自分のなかで納得できないものがあり、日々の仕事が忙しいのにもかまけて、なかなか手術に踏み切れずにおりました。

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そんななか、ホームページや書籍で個人的にいろいろ調べておりましたら、たまたま米田先生のホームページに辿り着きました、何回かメールで質問させていただいて、そのたびにお返事をいただき、外来では自己弁形成の可能性も伺うなかで、ようやく心臓手術を受ける覚悟ができまして、最終的に米田先生に生体弁への置換をお願いすることになりました。

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術後、家族から手術当日の状況を聞きましたが、弁の石灰化等が進み、予想以上に大変な状況であったとのこと。
そんななかで、限られた時間で閉塞性肥大型心筋症等の処置も併せてしていただき、大変感謝しております。

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また、入院加療中は、他の先生方、臨床工学技士、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士の方々にも大変お世話になりました。
医誠会病院の皆様が医療従事者としての矜恃を持って、日々患者に対して親身に接しておられるのを見て、頭が下がる思いでした。

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皆様のおかげで、せっかく元気になった心臓ですから、できるだけ長持ちするように大切にしていきたいと思います。
今後は引き続き外来で、よろしくお願い申し上げます。

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暑い日がまだまだ続きます。
米田先生におかれましてもお身体ご自愛くださいませ。

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ありがとうございました。

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平成30年8月20日 ** **

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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いい心臓・いい人生 【第116号】 第9回アジア弁膜症シンポジウム

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いい心臓・いい人生 【第116号】 第9回アジア弁膜症シンポジウム
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発行:心臓外科手術情報WEB

心臓外科手術情報WEB について――まず正しい情報を得る、すべてはそこから


編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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複数の台風にもかかわらず猛暑が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

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本日は医師向けのお知らせがあります。一般の方々にはちょっと申し訳ない気が
いたしますが、こんな努力がされているという参考にはなるかも知れません。

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アジア諸国での医学・医療の発展には近年、眼を見張るものがあります。
経済的発展を受けて、国民の生活も豊かになり、自ずと健康への関心も強くなって
いるためと思います。

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心臓外科の領域で言えば、アジアではまだまだリウマチ性の弁膜症が多く、毎年
多数の患者さんたちが命を落としておられます。そのため、心臓外科特に弁膜症
外科の発展は著しく、リウマチ性僧帽弁膜症に対する弁形成術などでは欧米を
凌駕するレベルになっています。

それ以外でもアジアの心臓外科は技術レベルや治療成績の向上がめざましいもの
があります。

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そうした中で20年の歴史を持つアジア弁膜症シンポジウム(愛称Muluシンポ
ジウム)をこの11月7日(水曜日)から10日(土曜日)まで、京都にて
開催させていただくことになりました。これまでの実績のおかげで、アジア
のみならず欧米からも手弁当で実力派の心臓外科医が参加されます。

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濃密なディスカッションをするために参加者は100名限定です。できれば日本の
若い先生方で将来アジアや世界に展開したいとお考えの方に参加いただきたく
思います。

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詳しくは私のHPの中のご案内のページをご参照ください。

第9回 アジア弁膜症シンポジウム(Muluシンポジウム)のお知らせとご報告

それでは覇気にあふれた先生方のご参加を楽しみにしております。
お問い合わせは米田( zeek-m@bf7.so-net.ne.jp )までどうぞ。

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平成30年8月14日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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第9回 アジア弁膜症シンポジウム(Muluシンポジウム)のお知らせとご報告

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御礼

アジア弁膜症シンポジウムは盛況のうちに無事終了いたしました。

京都の山麓部にある会場付近ではちょうど紅葉が始まり、熱帯地域からご参加の先生も多かったため、楽しんで頂けたようです。

シンポジウムそのものも、熱く中身のあるものが多く、良かったと思います。

多くの参加者の皆様に思い出深い良い学会になったよと言っていただき、感謝申し上げます。

またせっかくお申し込み頂いたのに、すでに定員超過のためお断りの止む無きに至った先生もあり、改めてお詫び申し上げます。

 

次回は2020年に北京にて開催されることになりました。立派な伝統をますます磨いて頂ければ、中継ランナーとしてこれ以上の喜びはありません。

末筆ながらこのシンポジウムのために大変な努力を払って下さったDr. Saw に深謝申し上げます。また留守中の病院を守って下さった医誠会病院の皆様にも御礼申し上げます。

 

2018年11月13日 記   米田正始

 

アジア弁膜症シンポジウム、ブログ記事その1はこちら

ブログ記事2はこちら

ブログ記事3はこちら

ブログ記事4はこちら

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伝統あるアジア弁膜症シンポジウム(愛称 Muluシンポジウム)を京都にて開催させていただくことになりました。

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このシンポジウムはロッキーマウンテン弁膜症シンポジウムのアジア版として20年前に、故Carlos M Duran先生のご指導と参加の元、スマトラのMulu国立公園(世界遺産)にてスマトラ州政府の支援下に開催されたのが始まりです。

これまでMulu(複数回)(スマトラ)、チェンマイ(タイ)、チェンライ(タイ)、ダナン(ベトナム)、カトマンズ(ネパール)、シェムリアップ(アンコールワット)(カンボジア)、などで開催されています。

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シンガポールの大御所・Dr Saw Huat Seongのリーダーシップで、アジアと豪州の実力派弁膜症外科医の多くが毎回参集し、欧米からもrenowned surgeonsが手弁当で来られます。アジア弁膜症アカデミーという組織が発足し、中国始めアジア各地で弁膜症学会の支援をしていますが、このアジア弁膜症アカデミーが正式母体です。

このMuluシンポジウム会期は4日間で、参加者は100名限定のセミクローズドな会です。全員で体育系合宿のように寝食を共にして親しく勉強や交流をするという特徴があります。同じホテルに個室を100室確保し、一緒に行動できるようにしています。

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今回の第9回シンポジウムは京都にて開催することになりました。費用を考慮し、オフシーズンの開催を提案したのですが、ベストシーズンに最高のおもてなしをし、心に残るシンポジウムにしたいとの理事会の強い意向で11月に開催することになりました。そのため参加費(シンポ、宿泊、食事すべて込み)は割高になりますが、これからアジアや世界に展開したい若い先生方が参加いただければ得るものは大きいでしょう。アジアとのネットワーキングには私もお世話いたします。

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アジアの心臓外科は施設集約が進み、欧米並みの態勢を整え、近い将来(あるいはすでに)日本を凌駕する勢いです。欧米だけでなくアジアで腕を磨き展開するという選択肢がこれから増えるでしょう。

少数精鋭のセミクローズドの会であり、かつ企業にできるだけ依拠しないという理事会方針のため、今回はHPも造っておりません。そのため必要な情報を日本では私がお伝えすることになりました。

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夢のある先生方のご参加をお待ちしております。    米田正始 拝

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名称:第9回アジア弁膜症シンポジウム(Muluシンポジウム)

主催:アジア弁膜症アカデミー

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Local Chairman:  Masashi Komeda (Japan)  (米田正始(医誠会病院))

Program Directors:  Dr. Jeswant Dillon (Malaysia),  Dr. Chua Yeow Leng (Singapore),  Dr. Nguyen Van Phan (Vienam),  Dr. Zohair Al Halees (Saudi Arabia), Dr. Meng Xu (China)

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期間: 2018/11/7(水曜日)-11/10(土曜日)

会場:11/7  THE SODOH HIGASHIYAMA   11/8-10 しょうざん京都

宿泊:東急ステイホテル

問い合わせ先: 米田正始  zeek-m@bf7.so-net.ne.jp   プログラムは末尾をご覧下さい

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ブローシュア:

図1図2

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Mulu弁膜症シンポジウムのプログラムはこちらをご覧下さい

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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肥大型(閉塞性)心筋症 【2025年最新版】

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最終更新日 2024年12月31日

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HOCM肥大型閉塞性心筋症:

HOCMは難病の一つと言われますが、エキスパートのチームによる手術なら治せる病気です。、、

HOCM肥大型閉塞性心筋症をミックスで:

より低侵襲にこの難病を治す努力をしています。左室内の狭窄(狭いこと)を解消することで予後は大きく改善します、、、

心室中部閉塞型HOCMを治す:

一般的にはまだ難病でこの手術をルーチンに行う病院はほとんどありません。私たちはHOCMでの多くの経験に支えられ、改良型モロー手術で左室の奥深くまで入れるためこの病気も治しています、、、

心尖部肥大型HCMや収縮期閉塞型(SCO型)HCMも治せるようになりました:

左室形成術のノウハウを活用し、心尖部を蘇らせるように造ります。有名な米国メイヨークリニックの畏友シャフ先生の方法を活用しています、、、

もう一つのミックス:

医学的理由でミックス(小切開心臓手術)ができない場合でも、比較的早い仕事復帰・早いクルマ運転復帰・少ない痛みが実現できています。重症患者さんに特に役に立ちます、、、

メールマガジンから:

米田正始のメールマガジンから参考記事を抜粋でご紹介、、、

いい心臓・いい人生 【第117号】 第66回日本心臓病学会にて

いい心臓・いい人生 【第102号】成人先天性心疾患学会にて

その他の記事はこちらに

(参考になりそうなページを心筋症・心不全の基本ページから抜粋しました。それぞれの前後のページもご参照ください。)

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Heart_dRR

 

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執筆:米田 正始
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