2010年1月6日 寒い日にご注意を

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寒い日が続きます。お正月明けですからあたりまえですが、この寒い季節にはハートセンターのような心臓専門病院は忙しくなります。つまり寒くなると心臓の調子が悪くなるのです。

たとえば狭心症の患者さんでは寒くなるとそれまで安定していた症状が急に悪化し、狭心症が何度も起こったり、運が悪いと心筋梗塞を起こして緊急入院・緊急治療になることもあります。それは寒くなることで全身の動脈が縮こまって血液の流れが悪くなり血圧が急に上がったりしやすくなって心臓への負担が急に増えるからです。また寒さのために心臓に血液を送る冠動脈そのものが縮こまり血液が流れにくくなることもあります。つまり急な寒さは心臓の大敵なのです。琵琶湖西岸の冬景色

同様に、心不全をお持ちの患者さんでも、寒くなると心臓への負担が急に増え、それまでお薬や養生で何とか安定していた心不全が一気に悪くなることがあります。心不全の原因となる弁膜症や心筋症その他の病気でも同じことが起こりやすいため注意が必要です。(写真は心臓外科医の写真紀行記より引用)

昔の人は偉かったと思うことがよくあります。まだ科学技術がそれほど発達せず、医学も医療も未熟であった時代でも、心臓の悪い患者さんをみて、この冬を無事に乗り切ってくれれば良いが、などと普段以上の注意をしたものです。実経験の中には科学が息づいているという一例ですね。

また寒くなると肺や気管支などの空気の通り道が寒さのために傷み、肺炎や気管支炎のもとになります。現代のエアコン社会では暖房のために湿度が下がり、お肌もカサカサ、肺や気管支の表面もカサカサとなって抵抗力は落ちてしまいます。そこへばい菌やウィルスがつけこむと肺炎や気管支炎になりやすくなります。まして心臓がもともと悪い方の場合は二重に肺もやられやすくなります。

そのため冬にはいつも以上の、ちょっとした気遣いが心臓や肺や体を守ります。たとえば急に寒いところに行かないように、トイレは少しあたたくしておくとか、寒いときはポータブルトイレを寝室に置くとか、やむなく外へ出るときは軽くウォームアップしてから出るとか、マスクなしで冷たい空気をいきなり吸わないとか、エアコンをつけるときは加湿器も使うなどですね。それらのケアに加えて、必要なときにはお薬を出してもらえば、効き目も上がるというものです。

そして心配なときは気軽に相談できるようなかかりつけの先生とか主治医をもっておくというのも有効です。私は自分が手術させて戴いた患者さんに、何か困ったことが起こればいつでも病院まで連絡して下さいとお伝えしています。そのおかげで寒い季節でも安全に回復されたことは何度もあります。近くの患者さんでしたら直接病院へ来ていただき、関西、首都圏や九州その他遠方の方はその地域の先生にこちらからもお願いして早期発見・早期治療できるようにしています。

寒い季節を楽しく安全安心で過ごしましょう!

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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3b) 心不全の手術について――ネバー・ギブアップ【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月15日

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◆ 心不全とは?

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心不全とは、心臓が十分に血液を全身に送り出せなくなる状態を指します。
原因はさまざまで、「病名」というよりは**症候群(いろいろな病気の結果として起こる状態)**です。心不全とは心臓が十分動けなくなる危険な状態です

  • 収縮機能不全:心臓がしっかり収縮できない

  • 拡張機能不全:心臓がうまく拡がらず血液を受け入れられない

  • 左心不全(左心房・左心室が原因)と右心不全(右心房・右心室が原因)があり、しばしば両方が合併します

心不全は進行すると命に関わる重大な病気ですが、原因に応じた治療を行えば改善できるケースも少なくありません。

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◆ 心不全の治療 ― 薬だけではない

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従来、心不全の治療といえば薬物療法(利尿薬、強心薬、点滴など)が中心でした。
しかし現在では、外科治療(心臓手術)も心不全治療の重要な選択肢です。

心不全の原因に応じて、治療法は大きく異なります。

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◆ 心不全に対する外科治療(手術)

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オフポンプ冠動脈バイパス手術の出来上がり図です1. 冠動脈疾患が原因の場合

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重症心不全の中には外科手術で改善できるものがあります2. 弁膜症が原因の場合

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3. 心筋症が原因の場合

  • 左室形成術で拡大した左室を正常に近い形へ戻す

  • 2014年に私たちが開発した心尖部凍結型左室形成により、従来より成績が改善

  • 合併しやすい僧帽弁閉鎖不全症にはMクリップや弁形成術PHO法を追加

👉 症例によっては、弁形成のみで改善が得られる場合もあります。

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4. さらに重症の場合

薬やカテーテル治療、手術でも改善が難しい場合は、

  • 補助循環(VAD)

  • 心移植

といった先進治療が必要になります。
私たちは移植センターや大学病院と連携し、必要に応じて治療を橋渡ししています。

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◆ まとめ ― 諦めないでください

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心不全は「もう治らない」と言われがちですが、外科治療で改善できるケースは確実に存在します

  • 薬など内科的治療だけでは限界のある部分を手術で補う

  • Mクリップ、弁形成術、左室形成術、バイパス術などを組み合わせて最適化

  • 補助人工心臓や移植を含め、ハートチームで総合的に判断

私たちが開発した新しい手術により、多くの患者さんが「仕事復帰・日常生活復帰」を果たしています。

心不全=終わりではありません。
ネバー・ギブアップ。まずはご相談ください。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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