事例: 二弁置換の術後20年、高度の心不全で再手術を受けた患者さん

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弁膜症患者さんは機械弁で弁置換を受ければ、元気になります。

しかし10年、20年、30年と時間が経つと、人工弁やその周囲組織に新たな問題が起こることがあります。

日々の健康管理をしっかりする必要があるのです。

この患者さんは53歳男性で、起坐呼吸つまり横になると息苦しくなるという高度の心不全となって来院されました。

20年前に他院で大動脈弁置換術僧帽弁置換術を受け、元気にしておられました。

術前XPところが4年前に糖尿病と心不全のため、赴任地の病院で3回、入院治療が必要となりました。

以後も半年前と1か月前の2回、心不全のため近くの病院に入院を余儀なくされました。

そこで人工弁の機能不全という困った問題を指摘され、米田正始の外来へ来られました。

来院時の胸部X線では心臓が高度に拡張していました(右図、胸の大半が心臓になっています)。

心エコーでも左室拡張末期径73mm、左房前後径67mmといずれもひどく拡張していました。

術前エコーDさらに僧帽弁(機械弁)のむかし縫い付けた場所が裂けて逆流が発生し、肺高血圧も52-57mmHgと高くなし、三尖弁も強く逆流していました(左図、赤白黄青まじりのジェットが逆流です)。

心臓のホルモンであるProBNPも3260と極めて高く、総ビリルビンも2.4と上昇していました。

人工弁周囲の逆流のため赤血球が日々壊れているのです。

これまで重症心不全や肝臓・腎臓・肺などを含めた多臓器不全の患者さんへの治療に取り組んできた経験から、まず入院いただき時間をかけてじっくりと全身状態を改善しました。

その結果、1か月で体重は10kgも減少し体内の余分な水分が取れました。

まだ弁を治す前の段階ですから、左室や左房のサイズはさすがに不変でしたが、左室駆出率も18%から30%へ改善しました。

肺動脈圧も52-57mmHgから33-38mmHg へと軽減し、IVC下大静脈径も31mmから20mmへ改善しました。

術中PVL発見そのタイミングで満を持して心臓再手術を行いました。

人工弁(機械弁)は一部はずれて穴が開いた形になっており(右図、黒い人工弁の右側に見える黒い穴が逆流口です)、

それ以外の部位も今後はずれそうに弱いため、この古い機械弁を切除し、新しいものをしっかりと入れ直しました。

Done新しい機械弁のすわりはしっかりとし、良好でした。

左図は新しい人工弁を示します。

かつて穴が開いていたところもがっちりと補強し、安定をはかりました。

術後経過は、手術前の状態を考えると良好で、出血も少なく心不全も軽く、手術翌朝一般病棟へ戻られました。

術後2日目から歩行練習を開始、10日目に軽快退院されました。

術後XP術後胸部X線写真でも明らかな改善が認められ、ちょっと大げさに言えば人間らしい心臓になりました(右図)。

3年近く経った現在も外来でお元気な姿をみせて下さいます。

これからさらに健康管理し、楽しく元気に暮らして頂ければと思います。

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② とくに弁形成の再手術について

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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