心臓再手術は何回までできるの?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️心臓再手術の回数の限界は

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これはその患者さんの体力や心機能、おかれている状況によっても異なります。

私自身の経験は6回目までで、心臓手術そのもIlm17_bc03011-sのは十分できます。

そもそも再手術の難しさとは次の諸点が考えられます。その難しさは再手術の回数に比例して増えるという印象があり、しっかりと取り組むことが大切です。

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◾️心臓再手術の問題点

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1.心臓や大動脈が胸骨や肺と癒着していて、そこをはがすときに出血する恐れがある。さらに術後にじわじわと出血が続くことがあり得る。

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2.以前の心臓手術のためと、初回手術より長い病悩期間のため心機能や全身のちからが低下しているかも知れない。年齢も一回目より高いことが多い

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3.以前の手術で切除した組織があると、その組織欠損が再手術の障害になることがある

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などですね。いずれも多数回再手術では大きな問題になりがちです。

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◾️それら問題への対策は

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1.に対 6629578しては高い剥離技術でかなり対処できます。胸骨正中切開はピタリのところで骨だけを切ることが大切です。それにはソー(のこぎり)の特殊な使い方が役立ちます。

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剥離についてはかつては電気メスとはさみで行いましたが、現在はそれにハーモニックメス(微振動で熱を出して切るメス)が加わり、術後の出血も抑えやすくなりました。これも正しい表面で剥離する技術が大切で、組織をできるだけ傷めないことが術後の出血を減らすことにつながるのです。

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しかし大動脈が胸骨に食い込んでいるようなケースでは、その胸骨をのこぎりで切る操作じたいは昔と同じなので相応の工夫が必要です。十分工夫はできるのですが、そのために体外循環時間が延びる場合は2.の体力の問題が発生するため、多角的に考えて対処する必要があります

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2.については、ポイントを押さえて効果的かつコンパクトな、したがって短時間に仕上げる心臓手術が良いでしょう。止血には時間をかけても良いのですが、心臓を止める時間や体外循環時間はできるだけ短くしたいものです。

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3.は手術手技の工夫で対処します。組織欠損があまりにも大きいのはやや不利ですが。

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◾️総じて

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こうした努力と工Ilm18_ab01042-s夫の積み重ねで再手術は6回目といえども可能です。なお前回の手術を私たち自身が行っている場合の再手術はそれだけ楽で安全性が高くなります。というのは将来の手術を考えて、心臓や大動脈が骨や肺などと癒着しないように、心臓と周囲組織の間にバリアーを作るなど十分な配慮をするからです。再手術はじつは前回手術から始まっているわけです。患者さんの遠い将来まで見据える手術、これが安全性の向上に役立つと信じます。

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ともあれ誰も好んで再手術などしたくはないのですが(初回手術のほうがよほど楽です)、それしか患者さんの救命の道がないというときにはぜひともやらねばなりません。

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これまでに3回目から5回目の再手術をも多数行っています。現在の医誠会病院でも同じポリシーで頑張っています。元気に退院して行かれる患者さんのお顔を拝見し、喜びもひとしおです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例:ペースメーカー三尖弁閉鎖不全症で心不全と肝不全となった再手術患者さん

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三尖弁閉鎖不全症(TR)は軽いうちはとくに問題にならないのですが、僧帽弁膜症などに合併して高度になりますと長期の間に肝臓や全身を悪くすることがあります。

とくにペースメーカーのケーブルが三尖弁を押さえておこるTRは重症化しやすく、要注意です。

00056432_20091029_CR_1_1_1この患者さんは70代の女性です。

鹿児島でかつて機械弁による僧帽弁置換術を来院18年前に受けられました。

来院5年前に洞結節不全症候群(SSS、つまり脈が遅くなりすぎる病気です)のため、永久ペースメーカーを埋め込みされています。

それ以後はお元気にしておられましたが、次第に三尖弁閉鎖不全症TRが発生し心不全、うっけつ肝が発生、悪化して行きました。2か月まえには心不全がさらに悪化し危険な状態となったため現地の病院に入院されました。

手術するとなれば再手術でリスクが高く、肝臓も弱っており、さらに腎臓もCKDと呼ばれる慢性腎機能障害(GFR41と低下)の状態で、現地の病院では手術できないと言われ、米田正始の外来へ来られました。(写真右上はそのときの胸部X線です)

とくに肝臓はChild分類(チャイルド分類)Bで、つねに総ビリルビンが4を超えるという危険な状態でした。

来院時は総ビリルビン値は5.74もあり、このままでは手術は危険なため、まず時間をかけて心不全や肝不全、体調を改善するようにしました。1か月でできるだけ改善したところで手術に踏み切りました。

肝不全のため血がなかなか固まらないため、正中切開(胸の真ん中にある胸骨を縦に切って心臓にアプローチします)をやめて右開胸でアプローチすることにしました。

体外循環を開始し、心拍動下に右房を房室間溝に平行に切開しました。

三尖弁は弁輪拡張し、ペースメーカーケーブルが中隔尖の後尖寄りに強く癒着し腱索を巻き込んでいました。長期間のTRのためか前尖・後尖ともやや短縮傾向にあり、先端部が肥厚していました。

まずペースメーカーケーブルを中隔尖から剥離しました。このときケーブルが右室内側から外れたため、まずケーブルを中隔尖と後尖の間に埋め込みつつ、先端を右室肉柱に挿入しました。ケーブルが癒着していた腱索は肥厚短縮しており、その部分の中隔尖は右室側へ牽引されていたためこの肥厚腱索を離断し、ゴアテックス人工腱索でもとの腱索の長さより約5mm延長して再建しました。これによって三尖弁のかみ合わせは改善しました。

その上で柔軟リング27mmを縫着しました。ペースメーカーはリングの外側に位置し、リングはその部分のみ屈曲しケーブルを守る形でその部のTRもありませんでした。ペースメーカーの閾値が術前より改善しているのを確認し、念のため、ケーブルを右房側でも固定し、はずれないようにしました。

体外循環を離脱しました。離脱はカテコラミンなしで容易でした。心臓は一度も止めることなくすべての操作を完了できました。
経食エコーにてTRが軽微であることを確認しました。入念な止血ののち手術を終了しました。

術後経過は予想以上に順調で、出血も少なく、術翌朝抜管(人工呼吸の管から外れること、良いことです)し同日、一般病棟へ戻られました。術後2日目からは歩行も開始され、食欲も良好でした。ビリルビンは術直後は5前後まで上昇しましたが、術後4日目には約2.7まで改善し、うっ血が取れ肝腫大も軽快しました。術後3週間を待たずに元気に退院され鹿児島へ戻られました。

心臓手術から3年半が経ちます。お元気に半年ごとの定期健診に来院され、笑顔を見せて下さいます。心臓ホルモンであるProBNPは術前1740と大変高かったのが、いまでは367まで改善しています。肝機能も正常化しました。手術後は畑仕事も楽しんでおられるそうで、うれしいことです。

蛇足ながら、手術後しばらくしてから、患者さんのご主人さまも弁膜症になられ、手術をさせて頂きました。その時にはこの患者さん(奥様)が付き添いをして下さいました。

今後もお二人の元気なお顔を拝見するのが楽しみです。

 

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事例: 二弁置換の術後20年、高度の心不全で再手術を受けた患者さん

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弁膜症患者さんは機械弁で弁置換を受ければ、元気になります。

しかし10年、20年、30年と時間が経つと、人工弁やその周囲組織に新たな問題が起こることがあります。

日々の健康管理をしっかりする必要があるのです。

この患者さんは53歳男性で、起坐呼吸つまり横になると息苦しくなるという高度の心不全となって来院されました。

20年前に他院で大動脈弁置換術僧帽弁置換術を受け、元気にしておられました。

術前XPところが4年前に糖尿病と心不全のため、赴任地の病院で3回、入院治療が必要となりました。

以後も半年前と1か月前の2回、心不全のため近くの病院に入院を余儀なくされました。

そこで人工弁の機能不全という困った問題を指摘され、米田正始の外来へ来られました。

来院時の胸部X線では心臓が高度に拡張していました(右図、胸の大半が心臓になっています)。

心エコーでも左室拡張末期径73mm、左房前後径67mmといずれもひどく拡張していました。

術前エコーDさらに僧帽弁(機械弁)のむかし縫い付けた場所が裂けて逆流が発生し、肺高血圧も52-57mmHgと高くなし、三尖弁も強く逆流していました(左図、赤白黄青まじりのジェットが逆流です)。

心臓のホルモンであるProBNPも3260と極めて高く、総ビリルビンも2.4と上昇していました。

人工弁周囲の逆流のため赤血球が日々壊れているのです。

これまで重症心不全や肝臓・腎臓・肺などを含めた多臓器不全の患者さんへの治療に取り組んできた経験から、まず入院いただき時間をかけてじっくりと全身状態を改善しました。

その結果、1か月で体重は10kgも減少し体内の余分な水分が取れました。

まだ弁を治す前の段階ですから、左室や左房のサイズはさすがに不変でしたが、左室駆出率も18%から30%へ改善しました。

肺動脈圧も52-57mmHgから33-38mmHg へと軽減し、IVC下大静脈径も31mmから20mmへ改善しました。

術中PVL発見そのタイミングで満を持して心臓再手術を行いました。

人工弁(機械弁)は一部はずれて穴が開いた形になっており(右図、黒い人工弁の右側に見える黒い穴が逆流口です)、

それ以外の部位も今後はずれそうに弱いため、この古い機械弁を切除し、新しいものをしっかりと入れ直しました。

Done新しい機械弁のすわりはしっかりとし、良好でした。

左図は新しい人工弁を示します。

かつて穴が開いていたところもがっちりと補強し、安定をはかりました。

術後経過は、手術前の状態を考えると良好で、出血も少なく心不全も軽く、手術翌朝一般病棟へ戻られました。

術後2日目から歩行練習を開始、10日目に軽快退院されました。

術後XP術後胸部X線写真でも明らかな改善が認められ、ちょっと大げさに言えば人間らしい心臓になりました(右図)。

3年近く経った現在も外来でお元気な姿をみせて下さいます。

これからさらに健康管理し、楽しく元気に暮らして頂ければと思います。

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原 因 

閉鎖不全症 

逸脱症

狭窄症

リウマチ性

弁形成術

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するもの

④ 弁置換術

◆ ミックス手術(ポートアクセス法)によるもの  


⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

心房細動

メイズ手術

心房縮小メイズ手術

ミックスによるもの:

心房縮小メ イズ手術 

 

 

5) 再手術(再開心術)

どんな時に必要が?

② とくに弁形成の再手術について

 

 

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事例:三度目の手術、僧帽弁置換術を乗り切り元気に

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若いころにリウマチ性弁膜症で僧帽弁などをやられた方は長期的なケアが大切となります。

リウマチで弁が強く壊れた場合はもちろん、軽く壊れた場合でもそのあと何十年の間に弁破壊が進行し、重症化することが多々あるからです。

患者さんは76歳男性で、35年前に関西の大きな病院でリウマチ性の僧帽弁狭窄症に対して僧帽弁交連部切開術を受けられました。

その後年月を経て、僧帽弁がまだ悪くなり、心不全症状が出たため、12年前、上記と同じ総合病院で僧帽弁置換術を受けられました。このとき、金属製の機械弁を使用されています。

その後まずまずお元気にしておられましたが、3年ほど前から次第に息切れなどの心不全症状が再発しました。

2か月前、地元の病院で中等度の僧帽弁閉鎖不全症と、溶血つまり赤血球が壊れる病気を指摘されました。

右図はその僧帽弁閉鎖不全症を示します。

術前ドップラー実際、血液検査でLDH1800台は異常高値で強い溶血の所見で、総ビリルビン4.7とかなりの黄疸が出ていることと合致する所見でした。

しかもその溶血のために腎機能が低下しつつあり、クレアチニンCrは1.14と低下傾向がみられ、コリンエステラーゼ143、総コレステロール155と肝機能の低下も見られました。

僧帽弁閉鎖不全症つまり逆流はひどくはないものの、溶血が強く、このままでは輸血が延々とひつようとなり、次第に腎不全が合併して永くは生きられないという状態でした。しかも機械弁のためワーファリンが必要で、ご高齢で血管が弱いこともあって鼻血がよく出て、大変つらいということでした。

しかし地元の大病院でも3度目の手術で全身の状態が悪すぎるとして、再手術を拒否され、米田正始の外来へ来られました。

手術はややリスクが高いものの、このままでは死を待つだけという状態で、しかもこれまで同様の再手術の患者さんを多数お助けしてきた経験から、直ちに再手術を決定しました。

しかし全身の状態が悪く、このまま手術すると体力が持たず、そのためにいのちを落とす懸念があったため、まず入院していただき、1か月近い時間をかけてさまざまな治療で状態を改善し、そこで勝負をかける、つまり手術することにしました。

人工弁のすぐ上に見える黒いところに穴が開いており、そこから血液が漏れていました。昔の手術で弁を縫い付けたところが裂けたものと考えられます手術では以前の2回の手術のため癒着が高度で、これを丁寧にはがして行きました。

心臓の中に入ると、僧帽弁は人工弁の頭側が外れており、そこから血液が逆流し、またそのときに人工弁に擦れることで溶血しているという所見でした。人工弁の動きにも問題があり、パンヌスと呼ばれる自己組織が弁の動きを妨げている様子から、この人工弁(機械弁)を切除しました。パンヌスが弁の下に確認され、弁を切除して正解という所見でした。

上図は古い機械弁をほぼ外しつつあるところで、弁の上方の黒い穴のところが逆流口です。

生体弁MVR完了そして生体弁を植え込み、きちんと乗って、組織の裂け目もないことを確認しました。

右図は生体弁がきれいに入ったところを示します。

入念な止血ののち手術を終えました。

重症のわりには術後経過は良好で、術翌日には集中治療室を退室し、病棟にて運動を開始しました。

術後ドップラー遠方のためゆっくり回復に時間をかけて術後3週間で元気に退院されました。

左図は術後のエコー・ドップラーです。僧帽弁閉鎖不全症は消失しました。

あれから丸4年が経ちますがお元気にしておられます。あれほど悩んでおられた鼻血もなく、腎臓も回復し、普通の生活を楽しんでおられます。ご高齢の患者さんにとって生体弁がどれほどありがたいか良くわかる事例です。

勇気を出して決断し、手術を乗り切って下さったからこそ、以後の平和な生活があることをしみじみ感じます。また定期健診の外来でお会いしましょう。

 

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逸脱症

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リウマチ性

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◆ 交連切開術


虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するもの

④ 弁置換術

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⑤ 人工弁

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事例: バルサルバ洞瘤の再破裂を修復

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図7バルサルバ洞2バルサルバ洞(右図の「バ洞」のところです)は大動脈のいちばん根っこの部分、大動脈基部にあるふくろ状の構造物で、これが弱くなり膨らんで瘤(りゅう、こぶのこと)になりますと隣接する右房や右室に破れることがあります。

いわゆるバルサルバ洞破裂というものです。

とつぜん血液が多量に右房か右室へ流れ込むため、すぐに肺がうっ血し苦しくなります。酷い時には倒れてしまいます。いのちの危険があることもあります。

治療法は手術でこのやぶれたバルサルバ洞を修復することです。

心室中隔欠損症を伴っている場合はこれを閉じてバルサルバ洞を守るようにします。


さて患者さんは20代の男性で大阪から来られました。

術前エコーその2か月まえにこのバルサルバ洞の破裂に対して現地の病院にて緊急手術を受けられました。

術後まもなくバルサルバ洞が再破裂し、このままではどうにもならなくなって私の外来に来られました。

エコーで見ますと、バルサルバ洞が再破裂しており、しかも右房と右室の両方に血液が噴射されていました(写真右)。

このままでは心不全が進行し、いのちにもかかわってくるため、再手術することになりました。

瘤の再破裂前回の手術から2か月ほどしか経っていないため、癒着が高度で、ひとつ間違うと大出血する状況でした。

そこで丁寧に癒着を剥離し、心臓の全貌が見えました。

ここで体外循環を回し、心臓を止めてから右房と大動脈を開けて中を見ました。

前回の手術ではバルサルバ洞瘤が破れたところを大動脈側からと右房側からの両方で糸で閉じてありました(写真左)。

しかし残念ながら、瘤のところを縫われていたため、その組織が大変弱く、せっかく縫ったところがちぎれて穴が開いていました。

これでは血液がまた漏れて、瘤破裂の再発です。

バルサルバ洞形成パッチ縫着中瘤でない、しっかりとした組織を縫ってバルサルバ洞を守りつつ穴をふさぐことが大切です。

そこで私たちがいつも大動脈基部で行っているデービッド手術の要領で、大動脈弁輪に糸をかけ、そこへウシ心膜を縫着してバルサルバ洞を内側からガードし、あわせて血液の漏れを消すようにしました(写真右)。

同様に右房側からも前回の瘤を閉じたところを、もう少し遠巻きにして、三尖弁輪などのしっかりした組織を活用でして、右房側のバルサルバの破裂口をしっかりとふさぎました。

術後エコー再手術は出血しやすいためしっかりと止血し手術を終えました。

術後経過は順調で、手術翌日には集中治療室ICUを退室され、一般病棟へ戻られました。

術後エコーでバルサルバ洞の穴はきれいに取れ、正常の血流にもどっていました。

 

やや遠方からお越しのため、通常よりじっくり入院期間をおきましたが、13日目に元気に退院されました。

その後も外来でお元気なお顔をみせて下さいます。

手術後1年の心エコー検査でもバルサルバ洞はきれいで、血液の漏れもゼロで正常、心臓の大きさや形、パワーも正常でよろこんで頂けました。

これから自信をもって普通の生活を、スポーツなども含めて楽しんで頂ければと思います。

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事例:チャイルドB型肝硬変でも二弁手術の再手術を乗り切った患者さん

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図は健康な肝臓ですが、肝硬変になるとこれがしぼんで表面でこぼこになります。

肝硬変の患者さんとくに病気が進んだ肝硬変はいろいろな注意が必要な重い病気です。

 

そのため肝硬変の患者さんが心臓病になり、心臓手術が必要になると、手術を断るケースが多数あります。危険すぎるからです。

しかし手術しないと肝臓がさらに悪くなる、まもなく命を落とすという状況ではどうすれば良いのでしょうか。

私たちはこの問題に長年向き合い、努力して治療成績を改善して来ました。

 

患者さんは手術当時60歳男性で九州から来て下さいました。

10歳のときにリウマチ熱を患われています。これが弁膜症の原因になりました。

30代後半に地元の大学病院で連合弁膜症の診断で機械弁 術前心エコーによる僧帽弁置換術と大動脈弁置換術および三尖弁形成術を受けられました。

それから20年間、経過良好でお元気にしておられましたが、2年前から労作時の息切れが強くなりました。

大動脈弁(機械弁)はパンヌスと呼ばれる自己組織の張出しで平均圧較差が39mmHgとかなり狭くなり、動きが妨げられていました。ポンプである左室のサイズは拡張末期径44mmは正常で、駆出率76%も正常、つまり正常のちからが保たれていました。しかし強烈な三尖弁閉鎖不全症を合併しており、肝臓を含めた全身がうっ血し、内蔵の傷害が起こっている状況でした。

心臓と肝臓しかも不運なことに、昔の心臓手術のときに輸血を受けられ、当時のことですのでC型肝炎になってしまわれたのが、次第に進行していました。現代なら輸血でC型肝炎になるのは万にひとつ、千にひとつのまれなことなのですが、当時は少なからずあったのです。

その病院でチャイルド分類Bの肝硬変の診断を受けました。つまりかなり重症で、心臓手術に耐えるちからがないかも知れないレベルというわけです。

実際総ビリルビン値は3.4と高めで肝臓のちからを示すコリンエステラーゼは141、同じくコレステロールは154と低く、肝臓がかなりやられている所見でした。

CT写真で長年の弁膜症のため巨大化した心臓と、しぼんで小さくなってしまった肝臓が見られました。肝硬変が進行したときの姿です。

地元の大学病院で心臓手術は危険すぎると言われたのは当然のことでした。しかしこのままではそう永くは生きられない、もし生き残ろうとするなら、何としても弁膜症を治すしかないという抜き差しならぬ状態でした。

私たちはこうした患者さんを京大病院時代から全力をあげて手術治療して来ました。

何とかご期待に沿えるよう、これまでの経験、ノウハウを駆使して治療を開始しました。

 

まず何週間もかけて、適正な減塩食、くすり、点滴、ストレス軽減などでじっくりと肝臓のうっ血を減らし、少しでも肝臓のちからを回復させるようにしました。

その結果体重は3kgは減り、つまり水がそれだけ抜けましたが、それ以上は改善できませんでした。

ビリルビン(黄疸の原因色素です)も2.6前後までは下がりました。

しかし肝硬変のため血小板や白血球という、手術を乗り切るために必要なものが正常よりはるかに少なく、血小板4万、白血球は1600と危険なレベルでした。

 

このままでは死を待つという状況でしたので、せめて患者さんが歩く体力のあるうちにということで手術に踏み切りました。

人工弁摘除後 機械弁を入れているところ手術では再手術のため癒着はしていましたが、

丁寧に剥離し、心臓が見えてきました。

パンヌスが弁の周囲に造成していました。

パンヌスを取り去り、大動脈弁を新しい高性能機械弁で取り換え(大動脈弁置換術)、

三尖弁はすっかり弁が縮 ひどく壊れた三尖弁 三尖弁に生体弁が入りつつあるところまって使えない状況でしたので生体弁で取り換え(三尖弁置換術)しました。

手術がスムースに完了したため、手術の翌日には人工呼吸を外れ、話ができる状態になりました。

2日目には強心剤も不要になり、3日目にはICU(集中治療室)を無事に出て一般病棟へもどりました。

 

毎日歩き、食事も増え、思ったより楽でしたと笑顔が見られました。

しかし大変なのはこれからと皆、用心をしていました。

 

実際、手術から3日目ごろから次第に熱がでるようになり、検査や治療にもかかわらず1週間で高度の発熱をみるようになりました。

創もきれいでとくに悪いところはなく、おそらく術後よくある小さい無気肺が肺炎を起こしたものと考えられました。

それらへの治療を進めつつ、しかしビリルビンが急に上昇して9に達したためICUに戻っていただき、透析やビリルビン吸着などの集中治療を肺炎治療などとともに行いました。

一時は危険な状況のときもありましたが、術後経過2週間半で何とか落ち着き、一般病棟へ戻られました。

その後は毎日運動や食事を進め、術後4週間で元気に退院されました。

退院の日には腕をとって、私も思わず泣いてしまいました。

あれから2年以上が経ち、九州から飛行機で外来へ定期健診に来られます。お元気なお顔を見るたびに苦しかったときを想い出します。

いのちがけの戦いに勝った人だけがわかる、生きることの素晴らしさを共に感じています。

頑張ってくれたチームの諸君と、誰よりも患者さんに感謝申し上げます。

 

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事例: 僧帽弁の再々々手術をミックス法で

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機械弁つまり金属でできた人工弁は多くの弁膜症患者さんをお助けして来ました。

今後もその貢献は続くでしょう。

しかし自然の弁とくらべて弱点があり、注意が必要です。

以下の患者さんは10年前に他院(関東地方)にて機械弁の手術を受けられました。

Gum06_fr01002-sその2年後、感染つまりばい菌が機械弁を襲い、弁が外れていのちの危険が迫ったため、再度機械弁を入れる手術を受けられました。

しかし人工弁は異物であり、ばい菌に対する抵抗力はありません。これが自然の弁と大きく違う点のひとつです。

ばい菌がいるところへ人工物・異物を植え込まざるを得ない状況から、また新たな感染が起こり、新しい人工弁もまたはずれるという事態が起こったようです。

こうして2年後に3度目の僧帽弁手術を同じ病院で受けておられます。

3度目の手術で何とか落ち着いたようですが、やはりまた弁を縫い付けたところの一部が外れ、そこから血液が漏れ、逆流したようです。

Scho049-sこういう場合、その逆流は次第に増加し、そのために溶血(血液が壊れる)が起こり、高度の貧血のために頻繁に輸血を行わねばならなくなりました。

また溶血が続けば腎臓が次第にやられていきます。

人工弁とその周囲の逆流による貧血、心不全、腎機能障害、そしてやむなく輸血を続けておればいずれは肝炎にもなるでしょう。

ちなみにProBNP(心臓のホルモン)は6330と異常高値、総ビリルビン3.9と黄疸あり、LDH 1964と強い溶血の所見、輸血にもかかわらずヘマトクリット30と貧血が進行していました。

心エコーでも僧帽弁(人工弁)周囲に強い逆流が2つもあり、右室圧も50-55mmHgと肺のうっ血が進んでいました。

しかし4度目の心臓手術とは世間一般にはかなり危険なこととされています。

 

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赤血球の姿です。これが壊れる(溶血)と、腎臓が次第に悪くなってしまいます

再手術や弁膜症になれたチームだけが救命できる、そういう手術です。

 

患者さんとそのご家族は生きるために一生懸命勉強され、弁膜症や再手術を得意としている外科医や病院を探されました。

そして私の外来へ来られました。遠い関東から手術を求めて来て下さったのです。

調べますと機械弁が僧帽弁の位置に縫い付けられているはずのものが、すでにかなり外れており、逆流も強く、貧血と腎不全が進行していました。

もはや手術しか救命する手立てはないという判断になりましたが、前回の手術で大動脈の枝が胸骨に食い込んだ形になっており、胸骨をのこぎりで開けたとたんに大出血が起こりやすく、いったんそれが起これば命にかかわる事態になるため、対策を考えました。

その結果、若い患者さんたちに行っているミックス手術とくに右開胸で小さ目の創で手術をするポートアクセス法が一番良いのではということになりました。

右開胸ならば大動脈の枝と胸骨が癒着していても出血などの問題は起こらず、スムースに手術できます。

ポートアクセス法は一般には創を小さくするという若者向けの美容効果狙いの手術という一面がありますが、この患者さんの場合は一義的に安全狙いでした。

左房剥離手術では予定どおり右開胸で左房まではアプローチできました。

特殊な状況のためいつものポートアクセス法よりは大きめの切開をもちいました。

しかしさすがに上行大動脈付近がガチガチに癒着し、これを遮断できない状態です。(左写真の矢印は剥離中の左房を示します)

そこで風船を上行大動脈の中に入れて内側から遮断しようとしましたが、

これもなかなか良い位置で安定せず、ここは人為的な心室細動で短時間心臓をけいれんさせ、その間に左房を開けて治すことにしました。

この方法はいざという時に有用な方法ですが、短時間しか安全には使えません。

人工弁外れていた部位

 

左房を開け、直ちに僧帽弁を調べると、

すでに3分の1周は外れており、残りもかなり弱っていました。

右写真の矢印は人工弁の一部、はずれていた部位を示します。

これは縫合部を補強するより新しい人工弁を入れ替えるほうが早いと判断。

切除した人工弁ただちに古い弁をはずし、新しい弁を縫い付けました。

(左写真は取り外した古い人工弁です。

右上の少し白っぽいところが完全にはずれていた部分で、その前後もすきまが開いていました。)

ただ以前の手術で裂けて外れていた部位は自然の弁輪がなく、

そのまま人工弁を縫い付けてもまた外れかねない状態でした。

僧帽弁輪補強パッチそこでウシ心膜であらたな弁輪をつくりつつ、新しい機械弁をがっちりと縫い付けました。

時間の余裕がないため、すべて一発で決める必要がありましたが、確実に処理しうまく行きました。

短時間で左房閉鎖まで進み、心臓の拍動を再開し、無事手術は終わりました。

(下の写真は新しい人工弁を取り付けつつあるところです。)

人工弁が半ば縫着されたところ術後経過は4回目の手術とは思えないほど順調で、翌朝には集中治療室を退室し、一般病棟へもどられ、

術後10日あまりで元気に退院されました。

 

外来の定期健診でお会いするのが楽しみです。

心臓が良くなったため、貧血は消え腎臓も回復し、これから体力をつけて元気に楽しく過ごして頂ければ幸いです。


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参考ページのIndex:

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お便り(心臓手術の体験記)74: ポートアクセス法で僧帽弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

 

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り82: 3度目の心臓弁膜症手術で

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弁膜症とくに機械弁つまり金属の人工弁の手術のあとは長年月にわたり、丁寧な治療やフォローアップが必要です。それによって元気で楽しい生活を長期間楽しむこともできます。そうした患者さんの人生をお支えするのも私たちの役目のひとつです。そこでは内科の先生方や開業医の先生方とのチームワークもたいせつです。

 

以下のお便りは東北地方在住の60代女性患者さんからA335_001のものです。

 

若いころ、僧帽弁狭窄症に対して僧帽弁交連切開術を受けられ、いったんお元気になられました。

その効果は20年近く続きましたが、そこで弁がまた狭くなり、カテーテルによる僧帽弁形成術を受けられました。

 

その後経過はまずまず良好でしたが、数年後また僧帽弁が狭くなり、大動脈弁もあわせて狭くなっていたため、ついに僧帽弁置換術と大動脈弁置換術を受けられました。どちらも金属製の、いわゆる機械弁でした。

 

以後も現地の大学病院に通院し、ワーファリンの治療を受けておられました。

 

15年経って、大動脈弁が狭くなって来ました。パンヌスと呼ばれる、患者さんご自身の組織が増殖し、機械弁の動きを妨げるようになったのです。

 

さらに2年たち、いよいよ弁が狭くなって、危険な状態となったため、ネットや本で勉強し決心して私の外来に来られました。遠方にもかかわらず、列車で長時間かけてお越し頂きました。

 

調べてみますと弁がきびしく狭くなり、しかも別の弁も二次的に逆流し、心不全が悪化していました。

 

再々手術はリスクがやや高くなりますが、このままでは永く生きられない危険な状態で、こうした手術に慣れている私たちに任せたいとのご希望のため地元の病院のご推薦も得て手術に踏み切りました。

 

 手術では心臓と周囲組織との間の癒着をはがし、それから大動脈弁とパンヌスを切除し、新しい人工弁を入れ、三尖弁も形成して無事終了しました。

 

術後経過は良好で、翌朝には集中治療室を退室され、術後10日目に元気に退院されました。

 

遠方のため、地元の病院と協力し役割分担しながら、名古屋へは時々健診に来られます。お元気にしておられます。

以下はその患者さんご本人からいただいたお礼のメールです。

 

 ***********患者さんからのお便り*********

(前略)

今私は台所で料理をしたり秋植えした花眺めたり、スーパーで買い物をしたり、また散歩をしていてもこのようにできるのは本当に米田先生に出会えて手術して頂いたからだなと毎日毎日思いながら喜びをかみしめ感謝しております。

三度目の手術が必要とわかった時の不安、ハイリスクであるらしいことなど考えて、いてもたってもいられずいろんな本買って読んだりネットで朝から晩まで調べました。

そして米田先生のページ見つけたのです。

読んでいくと先生の患者に対するあたたかい人間性や考え方とても尊敬できました。

そして米田先生にすべてをかけてお任せしようと決めました。

先生のページすべてネットから印刷しました。

だいぶ厚くなりましたが、何回も何回も読みました

まだ行ったこともない名古屋にはるばる主人と不安抱えながら行って説明聞き手術日まで決めました。

一回の外来ですべて検査できたのも助かりました。

 
手術も苦しいとか痛いとかなく入院もアッという間の夢中の二週間でした。

私は麻酔で何もわかりませんでしたが、さぞかし先生方は大変だったと思います。

外来で米田先生お見受けして思わずお声おかけしても気さくにお話ししてくださり本当にありがたいです。

治して頂いた命大事にしていきます。本当に有難うございます。

感謝

    

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お便り75 大動脈弁置換術の複雑な再手術を乗り越えた患者さん

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弁置換手術の際に生体弁が広くつかわれるようになり、その後長年月たってから再手術する機会も増えました。

Ilm10_de01004-s患者さんは三重県在住の80歳男性で、10年まえに他病院で生体弁での大動脈弁置換術を受けられました。

1年前から胸痛や全身のだるさを覚えられ、近くの病院で生体弁が壊れて逆流を発生しているため再手術が必要と言われてから私の外来へ来られました。

手術では前回手術の影響か、周囲組織との癒着が高度で(ようするにがちがちに貼りついて、心臓にすぐ到達できない状態で)、それを剥離するために時間を要しました。

とくに上行大動脈の癒着はきびしく、安全のためにこれを人工血管で置換しました。

通常の再手術ではこれほどの癒着は珍しいのですが、ときおり遭遇する状況ですのでじっくりと対処しました。

新たな生体弁を植え込み、術後8日目に元気に退院されました。

手術はけっこう大変でしたが、患者さんはすっかりお元気になられ、順調な回復ぶりで、チーム一同、やりがいのある大きな仕事だったねとうれしく思っています。

そのあとその患者さんの息子さんも心臓病があることが判明し、その心臓手術までお引き受けしました。

息子さんはまだお若いため、通常の生体弁よりも長持ちしやすい自己心膜による弁再建を行いました。

その患者さんの年齢や体力、ライフスタイルに合わせたきめ細かい治療、つまりオーダーメイド治療が良いと思うからです。

ともあれ、このように大切なご家族まで任せて頂けることを光栄に思います。


以下はその患者さんからの感謝のお便りです。病院のご意見箱に入れられました。

 

*************************

乱筆乱文をお許し下さい。

80才になろうとする私に新しい命をくださったことこの上もない喜びであります。

心から感謝し厚くお礼申し上げます。 ありがとうございました。

おそらく四日市などの他の病院へ行っていたらこの命はなかったのではないか
と思っています。

今までいくつかの病院へ入院しましたが、この名古屋ハートセンターのようなすばらしい病院ははじめてです。

まず米田先生の自信に満ちあふれた言動と説得力にそれまでの不安と迷いはかき消されました。

米田先生を中心に北村先生、深谷先生、木村先生のチームが12時間にわたる手術を成功させ、私の命を救ってくださいました。

次に看護師さんたちの真心のこもった対応が心に残りました。
 

まず、手術日前夜、家族のものも帰り、やや気持ちがふさいでいたところへ、若いめ
がねをかけた看護師さんが(名前を忘れて申し訳ない)来てくれて、「大丈夫けん元気
を出して、わたしのパワーをあげるけん」と言って私の手をぎゅっと握って何度も何度
もはげましてくれたこと、おかげで手術日当日は何の不安もなく、元気に手術室へむ
かえました。

退院の日にもその看護師さんが来てくれて「よかったね」と笑顔で言ってくれたこと、CCUで苦しんでわがままを言う私に、やさしくはげましてくれた玉置さん、
天野さん、5階のチーフの草野さんは、CCUへ何度となく私をはげましに来て下さった
こと、私がナースカウンターの前のいすで休んでいると何人かの看護師さんが「**
さん、元気になってよかったね」とことばをかけてくださったこと、それにしてもどの看
護師さんも私の名前をきちんと覚えてみえることには私の家族もみなおどろき感心し
ていました。
 

私はお世話になった看護師さんの名前をすぐに忘れてしまって恥ずかしい。

次に掃除婦の方が毎朝すみからすみまでていねいにきれいにしてくださって「**さん名前、***と言われるの あたった」と明るく接してくださったこと。

配膳の係の方も、もらいにいかなければ、返しにいかなければ、と思っていると、先をこされてもってきてくださったこと。

おかげで辛いはずの入院生活の10日間は楽しく過ごさせていただきました。

改めて、先生方、看護師のみなさん、職員のみなさんに 心からお礼申し上げます。 ありがとうございました。

一生忘れることのできない名古屋ハートセンターのすばらしいことを。

私の娘も長男もハートセンターでお世話になります。 よろしくお願い申し上げます。

 

 

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お便り58: 弁膜症の再手術を乗り越えた血液透析の患者さん

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Ilm09_ag07002-s慢性腎不全・血液透析の患者さんは動脈や心臓の弁が壊れやすいことが知られています。

患者さんは以前に大動脈弁置換術を受けられた80歳近い透析患者さんですが、しだいに僧帽弁も壊れ、狭くなり僧帽弁狭窄症を合併されました。

心不全が悪化し透析もやりづらいという困った状況になりました。

 

ご家族が米田正始のホームページを探し当て、連絡を取ってこられました。

岐阜県の山間部からはるばる来院されました。

担当の先生も、患者さんが生きる最後のチャンスと全面的に支援くださり、大変良いチームワークで入院までの連携作業ができました。

 

Ilm17_da05006-sしかし調べてみますと上行大動脈に石灰化があり、しかも肺機能もかなり悪く、年齢も比較的ご高齢のため、あまり本格的な心臓手術にも難があるという厳しい状況でした。

僧帽弁じたいも血液透析の患者さんによく見られる石灰化が高度な病変で、単純には人工弁を取り付けにくい状態でした。

さまざまな工夫をこらして脳梗塞を予防しつつ、僧帽弁にアプローチし、十分な視野を確保してから、超音波破砕法(CUSA、キューサ)などを駆使して石灰化を十分にとり、人工弁を縫い付けました。

石灰を取り去ったあとの組織が大変弱いため、十分な補強をかけてまとめました。

三尖弁も形成術を行い、良い形になりました。

大変ハイリスクな患者さんでしたが、よく頑張って下さり、順調に回復され、翌日には一般病室で運動を始めるほどでした。

以下はその患者さんのご家族からのお礼状です。

 

**********ご家族からのお便り***********

 

米田先生
 

いつもより遅い春の訪れでしたが、飛騨でも山桜が満開になりました。

今年は名古屋と飛騨高山で二度の桜を楽しみ、喜びひとしおの春を迎えさせていただきました。

お便り58この度は父****の入院、手術に関しましてひとかたならぬお世話になりましてお礼の申し上げようもございません。

先生のホームページにメールをさせていただけた事に大変感謝しております。

 

透析患者で二度目、高齢の父の手術は大変なものになりましたが、本人の意志の強さと希望と共に、先生の丁寧なご説明と的確なご判断とご処置のおかげで一命をとどめることができました。

こちらの**病院にて今迄の様に透析治療の為に通院しておりますが、病院のスタッフの方も回復ぶりに驚かれております。

さほど傷の痛みもなく、これからも生かしていただいた命を大切にしてもらいたいと、私達家族も出来る限り協力していくつもりです。

入院中も、廊下でよく声をかけていただき、付添いの母のことも励まして下さって、ありがとうございました。

 

今後も何かの際にはご指導をお願い致します。

お忙しい毎日のことと思われますが、お身体にお気をつけ下さい。

北村先生、深谷先生、佐藤先生、病棟の看護師の皆様にも大変お世話になりました。よろしくお伝え下さい。

書中にて失礼でございますがお礼の言葉とさせていただきます。
かしこ

岐阜県**市**町
****

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