IE (感染性心内膜炎): どう治す?

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◾️感染性心内膜炎(IE)の治療の特徴は

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IE(感染性心内膜炎)の治療は通常以上にしっかりとした、完璧あるいはそれに近いものが求められます。

Gum06_fr01002-sばい菌が残っておれば手術の後といえども再発する恐れがありますし、手術せずにお薬で治せる場合でもIEの原因が残っているため高い再発率が知られています。

手術では完全にばい菌を取り去ることが原則で、この点、がんの手術と共通していると言われます。

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◾️感染性心内膜炎の内科的治療

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IE (感染性心内膜炎)の治療はまず的確な診断と状態の把握から始まります。

僧帽弁の場合でも大動脈弁の場合でも、心不全がなく、感染つまりばい菌が薬で消せるとき、あるいはばい菌のかたまり(疣贅(ゆうぜい)Vegetation)が安定しているときなどは抗生物質などを中心とした内科治療で治せます。

ただその場合、ばい菌がどこかに潜んでいる時には感染再発への注意がひつようです。

また感染の原因たとえば僧帽弁逸脱や大動脈二尖弁や心室中隔欠損症などが残っている以上、新たな再感染が起こりやすいことがあるためそれへの注意・予防が大切です。

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◾️感染性心内膜炎の外科治療は

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ilm17_ca06004-sIEの患者さんで、心不全や感染が薬ではどうにもならない場合は心臓手術が適応となります。

感染した組織を徹底的に切除し、そのうえで壊れた弁を再建します。

そのため感染性心内膜炎の手術では通常以上の高度な弁形成術のテクニックが求められます。

弁形成のテクニックにつきましては、それぞれの項目をご覧ください。感染でやられた部位によって、弁尖、腱索、乳頭筋、弁輪、ときには左室や左房まで再建することがあります。まさに心臓全体を再建する技術が必要なわけです。

IEでの弁形成に感染再発の懸念があったり、高齢者や確実に短時間で一発で治したいときには弁置換が適応になることもあります。(手術事例:感染性心内膜炎のため僧帽弁置換術)

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◾️熟練術者の手術が特に必要なとき

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若い患者さんほど、弁形成の意義が大きくなるため、エキスパート心臓外科医の手でしっかりと弁形成するのが望まれます。

なかでも若い女性で将来 Ilm08_cd06003-s妊娠出産を希望される場合は、弁形成ができるかどうかでこどもを得られるかどうかの差がでるため、人生をかけて弁形成を達成することが大切です。

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またアフターケアも大切で、IEの再感染のリスクを減らすため、教育や注意などが望まれます。手術しっぱなしでは、いくら経過が良くても長期の安全に心もとないこともあります。やはり全人医療の観点が良いと思います。

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◆患者さんの想い出:

Aさんは20歳前半の女性でエホバの証人の信者さんです。

僧帽弁閉鎖不全症に感染性心内膜炎(IE)を合併し、心臓手術などあり得ないとある大学病院で言われて私の病院へ来られました。

そのとき血液のヘマトクリットは20あまり、普通の半分もない状態で、しかも宗教上の理由で輸血ができない、加えて感染があり、たしかにこの状態の患者さんを受け容れる病院はないでしょう。

受け容れたときはチームの諸君からも無茶ですよ、先生正気ですか?と言われました。

しかし感染が制御できつつあること、心不全も当面何とかかわせる程度であること、そこで時間が稼げてその間に造血が図れること、若くて体力があり理解もあること、などから前向きに治療を進めました。

と言う以上に、将来のある若者ひとりの命がかかってるんじゃ、救命するのが当たり前だろ!という無敵モードでの決意でした。入院してからはチームの皆に頭をさげて頑張って頂きましたが。

しばらくして感染がほぼ収まり、血液もかなり増えたところで手術に臨みました。

絶対無輸血が患者さんの切なるご希望ですから、ポートアクセス法によるミックスMICS手術で僧帽弁形成術を行いました。これなら骨をまったく切らないため無輸血での手術がしやすいのです。

術後経過は良好で、しばらくは抗生物質でばい菌の徹底除去を行い、それから元気に退院して行かれました。創もほとんど見えないほど小さく、これは頑張ってくれたAさんへのご祝儀でした。

Aさん、来院時は絶体絶命でしたが、もう大丈夫、これから健康人として楽しく活発に、永い人生を歩んで下さい。

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僧帽弁膜症のリンク

原因 

閉鎖不全症 

弁逸脱症

リウマチ性

◆  HOCM(IHSS)にともなうもの

◆  機能性

弁形成術

◆ 形成用のリング

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するもの

④ 弁置換術 

⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

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米田正始   医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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