お便り105: 感染性心内膜炎(IE)のため僧帽弁形成術を受けられた患者さん

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感染性心内膜炎(略称 IE)は突然ひとを襲います。

きっかけは抜歯やけがその他さまざまですが、その背景に弁膜症先天性心疾患などの心臓病があります。

感染性心内膜炎のために弁がより壊れて弁膜症が悪化することもあります。

IMG_0364b感染や心不全がどうにもならなくなった時などに心臓手術が必要となります。

下記の患者さんは遠方からお越し下さいました。

当初入院しておられた大学病院では心配と連絡を取ってこられ、患者さんのご希望で主治医の許可と協力を得てかんさいハートセンターまで転院して来られました。

2つのメールを掲載いたします。ひとつは最初に私に送って下さったもの、もうひとつは退院後お元気になられたあとのお礼のメールです。

褒めすぎのところはお恥ずかしい限りで読み飛ばしてください。

病気と正面から向き合い、勉強し相談し熟考し、決断された患者さんとご家族には頭が下がります。

ポートアクセス法というMICSによる僧帽弁形成術で痛みも少なく、元気な生活に戻れたのは患者さんとご家族の努力の賜物です。

弁形成のあとはワーファリンも不要ですし自然な生活ができるでしょう

これから元気な健康生活を楽しんで下さい。


******ご家族からの最初のお便り******

お忙しい所大変申し訳ありませんが、インターネットを見て米田先生にメールさせて頂きました。

私は**市に住みます**と申します。

私の妻の母が微熱が長く続いて体調がおもわしくない為、今月始めに近くにある**大学病院で診察して頂いたら、感染性心内膜炎と診断され抗生剤の投与を続けています。

ですが効果があまり良くないらしく、近いうちに弁の手術をしなくてはいけないと先生から告げられたみたいでショックを受けています。

本当にこの病院で手術に踏み切って良いものなのか不安がっています。

実際に手術が近々に迫ってるこの状態でハートセンターへの転院は可能なのでしょうか?

まさか心臓の病気になるなんて思いもよらなくて慌ててしまい、先生のおみえになるような専門の病院があるなんて知識も無かったのですごく後悔をしています(泣) 

何か良い方法があれば教えて頂きたいです宜しくお願い致します m(_ _)m


*****ご家族から、退院後のお便り *****

米田院長先生

昨日は母が無事退院で お便り105きました事を心より感謝申し上げます。

本当なら院長先生に直接お会いして御礼を申し上げたかったのですがメールで申し訳ありません。

母は自分の病気を知った当初はもう助からないと絶望的でしたが、この病気 (感染性心内膜炎) をきっかけに米田院長先生の存在を知る事が出来まして、

神にすがる気持ちで先生にメールを送りましたら直ぐにお返事を頂き、そして先生のお導きによって母の命を繋いでいただけました。

本当に言葉では言い表せないほど感謝の気持ちでいっぱいです。

母の病気がきっかけではありますが、先生を知れば知るほど偉大さや人間性、様々な事が、職種は違えど私にとっても刺激になり勉強にもなりプラスになっています。

今後も母のアフターケアでお世話になりますが、宜しくお願い致します。

そして米田院長先生がいつまでもお元気でご活躍される事を心よりお祈り申し上げます。

ありがとうございました

              ****

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り96: 感染性心内膜炎のあとの僧帽弁閉鎖不全症

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感染性心内膜炎(IE)では僧帽弁が複雑に壊れた僧帽弁閉鎖不全症になることもあります。


A335_009患者さんは40代女性で半年前に感染性心内膜炎のため大学病院の循環器内科で治療を受けられました。

感染は治まり普通の生活に戻られましたが、徐々に心不全症状が出てきて、階段を登るのも苦しくなったり、動悸がときどき起こるようになりました。胸が痛くなることもあり、米田正始の外来に来られました。

持参されたデータでは僧帽弁閉鎖不全症はそう強くないため経過観察していました。

2か月後の外来での心エコーでは逆流が増えて高度になり、かつ労作時の息切れと動悸が強くなってきたため、ガイドラインでも手術適応と判断されました。

若い患者さんでもあり、仕事にも早く復帰したいという状況から、創の小さなポートアクセス法で僧帽弁形成術を行いました。

僧帽弁の傷みは強く、3か所を直してようやくきれいに逆流は止まりました。

手術前に心房細動の不整脈発作が起こっていたため、メイズ手術も併せて行いました。

術後経過は良好で、手術後9日目に元気に退院されました。

術後1か月もたたないうちから仕事にも復帰され、前向きに暮らしておられます。大変うれしいことです。

やはり創と痛みが小さいポートアクセス法のミックス手術はお役に立っているようで何よりです。

以下はその患者さんからのお便りです。過分のお褒めをいただき、逃げ出したい気持ちです。

また外来でお元気なお顔を拝見できるのが楽しみです。

 

***** 患者さんからのお便り *****


米田先生

米田先生に手術をしていただいた私は本当に幸運でした。

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先生の診察、ICと受けさせていただいて、丁寧で論理的なご説明に私自身も夫もオペ前から大きな安心感に包まれておりました。

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その後オペ当日までは、先生のホームページを隅から隅まで読み、all aboutの記事も併せて拝見しました。
同じ病気の人のブログを読んだり、自分なりに自分の病気を理解しようと考えたのです。

両親や友人は、「どうしても手術しかないのか?手術のデメリットはどれくらいか?」など心配してくれました。

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しかし、私自身は迷いはなく、調べれば調べるほど、米田先生の執刀で最新で最高の技術でオペしていただける喜びが大きくなり、
不安はどんどん小さくなりました。
「米田先生にお任せするのだから、大丈夫」という確信がありました!

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オペ後はもうろうとしていて、あまり記憶がないのですが、一番印象的だったのは、翌朝米田先生がCCUに来て下さった時のことです。

背中が痛いと訴えた私に、先生ご自身が「ゴッドハンド」でマッサージをしながら、「こんな感じであとでご家族にもんでもらうといい」とおっしゃったのです。
私はゴッドハンドにマッサージしていただいたことが恐縮に思え、感激でぼーっとしていました。

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後から思い起こし、オペのお礼も申し上げず、自分の痛みだけを訴えて恥ずかしかったなと思っております。

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夫から、「オペでは、僧帽弁(の一部)が通常の場所になく、切ってからすぐに見えなかったのでその分大変だった模様。また、心房細動の処置も一緒にしていただけた。」と聞きました。
メイズ手術のメリットも後から調べて知りましたが、本当にありがたかったです。

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意識がハッキリしたオペ後5日目、病室に来て下さった米田先生のお顔をみたら、感無量になり涙が出てきました!

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助けていただいて本当にありがとうございます!という感謝の気持ちでいっぱいになりました。適切な感謝の言葉が浮かばず、残念に思いました。

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ハートセンターは本当に素晴しい病院です。
ドクター、看護師、理学療法士の方ばかりでなく、配膳やお掃除の方までとても温かく、病院の理念として皆さんに浸透していると思いました。

北村先生、深谷先生、木村先生も回診の際は丁寧に話を聞いてくださり、小さな疑問にも答えてくださいました。

また、いつも明るく接してくださり、どれだけ励まされたかわかりません。
こんなによくしていただいているのだから、早く回復したいという気持ちも強くなりました。

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最高の治療を受けながらも、夜中に背中と胸の痛みが強く出て、毎晩ぐっしょり汗をかいて痛みで目が覚めるということが続きました。
そんな中、看護師さんに温かい看護をしていただきました。

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アイスノンを背中に当てるために用意してくださった方
ロキソニンを持って来てくださった際、発熱で喉が渇いているだろうと、冷たい水と氷を下さった方
背中にシップを張る際に、ホットタオルで背中を拭いてくださり、さすってくださった方。

夜勤でお忙しい中、常にお願いしたこと+αで接してくださった看護師さんにもいくらお礼を言っても足りないです。

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もう一つ感激したことがありました。

あと一日でシャワーオッケーになる前日、「シャンプーだけでもできたらなーって思うんです」と担当看護師さんにふとお話したら、
後から部屋に来て下さり、
「今シャンプー台も私もあいてますから、今のうちにやっちゃいましょう!!」
と、何とシャンプーしてくださったのです。

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看護師さんは私の話に「明日シャワーできますからね!」と励ましてくださるだけでも十分な応対だったと思うのです。
それなのに忙しい中わざわざシャンプーしてくださった看護師さん。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

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今はハキハキと明るい理学療法士の方々と江原先生のご指導のもと、リハビリに励んでおります。
リハビリ室でも元気をたくさんいただいています。

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友人や知り合い、またその家族にも心臓病や心臓病予備軍の方がいますが、名古屋ハートセンターで早急に受診するよう勧めています。

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よい病院、そして最高のドクターに巡り会うのは本当に大切だと思うからです。それに加え、
自分の体験から思うのですが、日頃普通に過ごせると心臓病を甘く見てしまうことがあります。

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「まだ大丈夫」「普段は普通に過ごせるのだから、もうちょっと手術は伸ばしたい」「自分は健康には自信があるし、これくらい大丈夫」
「薬は体に悪いから、飲まないで様子を見よう」「仕事も忙しいし、それどころではない」と言う人もいます。

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そう思うのも納得なんです。まさに自分も思っていました。しかし、適切な診断を受けることは本当に大切だと思いました。
場合によっては命にも関わるんだと今は怖くも思います。

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元気にしていただいた心臓を大切に、これからいろんなことに挑戦し人生を楽しみ、さらに人様のお役に立てたらいいなと思っております。
頑張ります!

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本当にありがとうございました!
米田先生のますますのご活躍と、病院のご発展を心から願っております。

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それから8か月ほどしてまたお手紙を頂きました。

こんどはヨーロッパからのきれいな絵葉書でした。

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ワインの勉強のためイタリアにしばらく留学しておられたようで、

お元気に活躍しておられる様子を知り、私も幸せな気持ちになれました

ますますご活躍ください

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****** 患者さんからのお葉書 *****

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米田先生

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昨年7月に名古屋でオペをしていただいた**ですIMG_1492

先生のおかげで本当に元気になり

1月末ー3月**までイタリアに滞在しておりました

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主にワインの勉強でしたが

途中は公園で運動したり、

現地の人とプールでエクササイズしたりと、

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私の健康は本当に米田先生のおかげと

イタリアでも感謝しておりました!

ありがとうございます!!

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今から帰国です

フィレンツェにて ****

(ハガキは昨日おとずれたローマです)

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IE (感染性心内膜炎):どう治す?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️感染性心内膜炎(IE)の治療の特徴は

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IE(感染性心内膜炎)の治療は通常以上にしっかりとした、完璧あるいはそれに近いものが求められます。

Gum06_fr01002-sばい菌が残っておれば手術の後といえども再発する恐れがありますし、手術せずにお薬で治せる場合でもIEの原因が残っているため高い再発率が知られています。

手術では完全にばい菌を取り去ることが原則で、この点、がんの手術と共通していると言われます。

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◾️感染性心内膜炎の内科的治療

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IE (感染性心内膜炎)の治療はまず的確な診断と状態の把握から始まります。

僧帽弁の場合でも大動脈弁の場合でも、心不全がなく、感染つまりばい菌が薬で消せるとき、あるいはばい菌のかたまり(疣贅(ゆうぜい)Vegetation)が安定しているときなどは抗生物質などを中心とした内科治療で治せます。

ただその場合、ばい菌がどこかに潜んでいる時には感染再発への注意がひつようです。

また感染の原因たとえば僧帽弁逸脱や大動脈二尖弁や心室中隔欠損症などが残っている以上、新たな再感染が起こりやすいことがあるためそれへの注意・予防が大切です。

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◾️感染性心内膜炎の外科治療は

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ilm17_ca06004-sIEの患者さんで、心不全や感染が薬ではどうにもならない場合は心臓手術が適応となります。

感染した組織を徹底的に切除し、そのうえで壊れた弁を再建します。

そのため感染性心内膜炎の手術では通常以上の高度な弁形成術のテクニックが求められます。

弁形成のテクニックにつきましては、それぞれの項目をご覧ください。感染でやられた部位によって、弁尖、腱索、乳頭筋、弁輪、ときには左室や左房まで再建することがあります。まさに心臓全体を再建する技術が必要なわけです。

IEでの弁形成に感染再発の懸念があったり、高齢者や確実に短時間で一発で治したいときには弁置換が適応になることもあります。(手術事例:感染性心内膜炎のため僧帽弁置換術)

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◾️熟練術者の手術が特に必要なとき

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若い患者さんほど、弁形成の意義が大きくなるため、エキスパート心臓外科医の手でしっかりと弁形成するのが望まれます。

なかでも若い女性で将来 Ilm08_cd06003-s妊娠出産を希望される場合は、弁形成ができるかどうかでこどもを得られるかどうかの差がでるため、人生をかけて弁形成を達成することが大切です。

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またアフターケアも大切で、IEの再感染のリスクを減らすため、教育や注意などが望まれます。手術しっぱなしでは、いくら経過が良くても長期の安全に心もとないこともあります。やはり全人医療の観点が良いと思います。

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◆患者さんの想い出:

Aさんは20歳前半の女性でエホバの証人の信者さんです。

僧帽弁閉鎖不全症に感染性心内膜炎(IE)を合併し、心臓手術などあり得ないとある大学病院で言われて私の病院へ来られました。

そのとき血液のヘマトクリットは20あまり、普通の半分もない状態で、しかも宗教上の理由で輸血ができない、加えて感染があり、たしかにこの状態の患者さんを受け容れる病院はないでしょう。

受け容れたときはチームの諸君からも無茶ですよ、先生正気ですか?と言われました。

しかし感染が制御できつつあること、心不全も当面何とかかわせる程度であること、そこで時間が稼げてその間に造血が図れること、若くて体力があり理解もあること、などから前向きに治療を進めました。

と言う以上に、将来のある若者ひとりの命がかかってるんじゃ、救命するのが当たり前だろ!という無敵モードでの決意でした。入院してからはチームの皆に頭をさげて頑張って頂きましたが。

しばらくして感染がほぼ収まり、血液もかなり増えたところで手術に臨みました。

絶対無輸血が患者さんの切なるご希望ですから、ポートアクセス法によるミックスMICS手術で僧帽弁形成術を行いました。これなら骨をまったく切らないため無輸血での手術がしやすいのです。

術後経過は良好で、しばらくは抗生物質でばい菌の徹底除去を行い、それから元気に退院して行かれました。創もほとんど見えないほど小さく、これは頑張ってくれたAさんへのご祝儀でした。

Aさん、来院時は絶体絶命でしたが、もう大丈夫、これから健康人として楽しく活発に、永い人生を歩んで下さい。

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僧帽弁膜症のリンク

原因 

閉鎖不全症 

弁逸脱症

リウマチ性

◆  HOCM(IHSS)にともなうもの

◆  機能性

弁形成術

◆ 形成用のリング

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するもの

④ 弁置換術 

⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

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執筆:米田 正始
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僧帽弁の感染性心内膜炎IE 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 僧帽弁の感染性心内膜炎とは?

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感染性心内膜炎(IE)」とは、心臓の弁に細菌が付着して繁殖し、弁が破壊されてしまう病気です。
僧帽弁でも、大動脈弁と同様に小さな傷や細菌感染をきっかけにIEが起こることがあります。

発症すると以下のような重大なリスクがあります:

  • 弁が壊れ心不全が進行

  • 細菌が全身に広がり敗血症を起こす

  • 菌の塊(疣贅)が脳に飛んで脳梗塞や後遺症を引き起こす

  • 最悪の場合、命を落とす危険も

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◆ 僧帽弁に感染性心内膜炎が起こりやすい人は?

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特に僧帽弁逸脱症は頻度が高く、IEの主要な原因のひとつです。
逸脱症だけであれば手術は不要ですが、感染によって弁が破壊されると手術が必要になります。

つまり、僧帽弁の基礎疾患を持つ方は、感染性心内膜炎に対する注意と予防がとても大切です。

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◆ 手術が必要になるケース

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僧帽弁の感染性心内膜炎で以下のような場合、心臓手術が適応となります:

  • 薬や点滴では改善しない心不全がある

  • 抗菌薬でも感染が抑えられない

  • 脳梗塞など菌の塊による合併症が出ている

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手術の基本方針は 僧帽弁形成術(弁を温存して修復する手術) を優先することです。

しかし感染で弁が大きく壊れている場合は形成が難しく、人工弁置換術が必要になることもあります。
とくに若い女性では、機械弁を入れるとワーファリンを一生内服する必要があり、妊娠や出産に大きなリスクが生じます。

👉 そのため、僧帽弁形成術の経験豊富な外科チームに任せることが最善です。

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◆ ミックス手術(小切開・低侵襲手術)は可能?

感染性心内膜炎は高齢者だけでなく、10~30代の若年層や40~50代の働き盛りにも起こりま

通常の創(左側)とポートアクセス法ミックス手術での創(右側)。通常の方法では胸骨という骨を切りますが、ポートアクセス法では骨は切りません。

す。

そのため創をできるだけ小さく、胸骨を切らない MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery:ミックス手術) が喜ばれています。

特に「ポートアクセス手術」による僧帽弁手術は、

  • 傷が小さい

  • 骨を切らないため回復が早い

  • 将来の生活や仕事復帰に有利

というメリットがあります。

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当院でも LSH法という創が目立ちにくいアプローチ を導入しており、「目立たない傷なら将来も安心」「また必要なら同じ手術を受けたい」といった患者さんの声もいただいています。

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Ilm03_bd02003-s 感染性心内膜炎の再発予防 ― 日常生活でできること

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最も大切なのは 予防と再発防止 です。

  • 歯科治療(抜歯など)の際は必ず主治医と歯科医師に相談し、抗生物質を事前に服用

  • うがい(イソジンガーグル等)を血のにおいが消えるまで継続

  • 切り傷・擦り傷はすぐに流水で洗浄、必要なら病院で消毒と抗生物質を処方してもらう

  • 発熱が続く場合や体調が悪いときは、早めに心臓専門医に相談

これらを徹底することで、再発や重症化を防ぐことができます。

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◆ まとめ

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  • 僧帽弁の感染性心内膜炎は命に関わる重病

  • 基礎疾患(僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁逸脱症)がある人は特に注意が必要

  • 手術はできる限り僧帽弁形成術を優先し、人工弁置換は慎重に判断

  • 若年層や働き盛りには MICS(小切開手術) が有効

  • 再発予防には 歯科治療・外傷・感染対策の徹底 が欠かせない

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感染性心内膜炎でお悩みの方、また「手術が必要かもしれない」と言われた方は、ぜひ一度ご相談ください。

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大動脈弁の感染性心内膜炎IE 【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️大動脈弁が感染性心内膜炎になるのはどういう時?

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大動脈弁は健康な状態では、ばい菌にやられて感染性心内膜炎(略称IE)になることは珍しいです。

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h9991304_004
大動脈弁(aortic valve)の位置と、正常な三尖(tricuspid)の大動脈弁(右上)と二尖(bicuspid)のそれ(右下)。

しかしいったん逆流が発生して大動脈弁閉鎖不全症になったり、弁が狭くなって大動脈弁狭窄症になると、からだの中に何らかの原因でばい菌が入ったときに、感染性心内膜炎IEになりやすいのです。

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また大動脈二尖弁(右図の右下)つまり通常3枚の弁ひらひら部分が2枚になっている状態では感染性心内膜炎IEが起こりやすいことが知られています。

意外なところでは自己心膜弁再建後にもIEが多いことが報告されています。

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◾️大動脈弁が感染性心内膜炎になるとどうなる?

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大動脈弁が感染性心内膜炎IEにかかってしまうと危険です。

高い熱がでて、全身に菌がまわったり、菌の塊が脳に流れていけば脳梗塞になります。脳こうそくが大きければいのちにかかわったり、生き延びても大きな後遺症が起こります。たとえば歩けなくなったりしゃべれなくなったり、意識がもどらないなどもあり得ます。大動脈弁が菌に食われて穴があいたりちぎれたりすると心不全となり、重くなれば心不全でも命を落とします。

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こうした悲劇を防ぐため、まず予防が第一、そして予防できないときには早期発見と早期治療が有用です。

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◾️予防と早期発見

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予防にはけがとくに土がつくけがや抜歯に注意して下さい。ばい菌が体に入りやすいのです。けがの場合は直ちに水道水その他きれいな水で土を十分洗い流し、出血していたらすぐ病院で消毒してもらい、適宜抗生物質をもらって下さい。

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もともと弁膜症や心雑音などが指摘されているひとの場合、上記をしっかりと行い、その後も発熱に注意して下さい。ケガなどのあとで38℃を超える高熱が出たり、37℃台でも何日も発熱する場合は医師に相談するのが良いでしょう。

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◾️大動脈弁の感染性心内膜炎、診断と治療は

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診断は血液検査と心エコーで大半が判ります。一回の検査でわかりにくいときにはしばらくして、また検査することで診断精度が上がります。

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大動脈弁が感染性心内膜炎になってしまうと、まず薬などの内科的治療を行います。しかし心不全が薬などで制御できなくなったり、感染つまりばい菌の勢いがどうしても抑えられないとき、あるいはばい菌の塊が飛んで脳梗塞などになる場合などに手術が必要となります。逆に感染が薬で制御でき、心不全も軽ければ内科的治療つまりお薬などで治せることもあります。経験豊富なチームがさまざまなデータをもとに判断するのがもっとも安全でしょう。

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またばい菌が弁を壊して、弁の付け根の大動脈や左室心筋にうみ(膿)を作ったり穴をあけたりすると、それも外科手術で治さねばならなくなります。いわゆる大動脈弁輪膿瘍です。こうなるとかなり大きい心臓手術になり、体力などによっては危険性が増すこともあり、なるべくこうなるまでに手術して直してしまうのが賢明です。

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◾️手術での工夫

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手術はかつては人工弁をもちいて大動脈弁置換(略称AVR)を行いました。いまも一般にはそうすることが多いですが、最近は患者さんご自身の弁を形成(大動脈弁形成術)したり、自己心膜をもちいて弁形成(弁再建)したり、なるべくいわゆる人工弁を避けるように私たちは努力しています。

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また患者さんご自身の肺動脈弁を使うロス手術もありますが、日本では肺動脈弁をおきかえるホモグラフトつまり他の方の弁が入手困難なためと他の弁の成績が上がったため、ロス手術は下火の印象があります。とくに二尖弁の方は肺動脈弁が弱っているためロス手術は不適切となります。

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◾️大動脈弁の感染性心内膜炎、まとめ

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このように大動脈弁の感染性心内膜炎IEはしっかりと注意すれば予防可能ですし、また予防できないときでも、早期発見と早期治療をすることで死亡率を下げ安全確保ができるようになりつつあります。軽くても大動脈閉鎖不全症がある方、IEの既往(かつてその病気になったことがある)、二尖弁などの方は注意とともに弁膜症の専門家に定期健診をしてもらうのが安全でしょう。

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感染性心内膜炎(自然弁)の治療ガイドライン―手術が威力を発揮する時は?

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感染性心内膜炎IE(右図)は強い感染としての問題だけでなく、

 

それが弁などを壊して心不全にNatural IEなる問題や

 

疣贅がちぎれて飛んで脳塞栓・脳梗塞などになる問題などがあり、

 

しっかりした治療方針が大切です。

 

 

 

米国ACC学会とAHA学会の合同ガイドラインが2014年に改訂されました。

今回の改訂では自然弁と人工弁、その他デバイスを合わせた総括的な内容で、さまざまな要求に応えようという意欲的なものとして評価されそうです。

次にその概要をお示しします。

 

2014AHA-ACC_GL IE

もとの言語は英語で、一般の方々にわかりづらそうなところは日本語訳にしました。

ここでクラスI は手術をすべきである、という意味です。

クラスIIaは手術が勧められる、

クラスIIbは手術をして良い場合がある、

クラスIIIは手術のメリットがないか、害が大きいという意味です。

 

以下に以前のガイドラインとその説明を掲載します。ご参考にしてください

***********************

アメリカの心臓病の主要学会であるAHAとACCの感染性心内膜炎ガイドラインを引用します。

邦訳はご参考までに著者が行いました。

 

ここでは自然弁つまり患者さん自身の弁の感染性心内膜炎IEを扱い、人工弁のIEは別のページに譲ります

4.6.1. Surgery for Native Valve Endocarditis

Class I (有効性が証明済み)

1. Surgery of the native valve is indicated in patients
with acute infective endocarditis who present with
valve stenosis or regurgitation resulting in heart
failure. (Level of Evidence: B)
急性心内膜炎で弁の狭窄や閉鎖不全のため心不全になった患者さんには手術が勧められる

2. Surgery of the native valve is indicated in patients with
acute infective endocarditis who present with AR or
MR with hemodynamic evidence of elevated LV enddiastolic
or left atrial pressures (e.g., premature closure
of MV with AR, rapid decelerating MR signal by
continuous-wave Doppler (v-wave cutoff sign), or moderate
or severe pulmonary hypertension). (Level of Evidence:
B)
急性感染性心内膜炎の患者さんで大動脈弁閉鎖不全症や僧帽弁閉鎖不全症を発症し、左室拡張末期圧や左房圧が上昇したケースでは手術が勧められる

(たとえばARのため僧帽弁が拡張期の間に早期閉鎖するとか、連続ドップラーでMRが急速に弱るときに)

3. Surgery of the native valve is indicated in patients
with infective endocarditis caused by fungal or other
highly resistant organisms. (Level of Evidence: B)
感染性心内膜炎が真菌(かび)や薬剤抵抗性細菌によって起こったものでは手術が勧められる

4. Surgery of the native valve is indicated in patients
with infective endocarditis complicated by
heart block, annular or aortic abscess, or destructive
penetrating lesions (e.g., sinus of Valsalva to
right atrium, right ventricle, or left atrium fistula;
mitral leaflet perforation with aortic valve endocarditis;
or infection in annulus fibrosa). (Level of
Evidence: B)

感染性心内膜炎で伝導ブロックや弁輪膿瘍、あるいは膿瘍の穿孔などがあれば手術が勧められる

(たとえばバルサルバ洞から右房へ破れたり、同様に右室や左房に破れたとき、あるいは大動脈弁の心内膜炎で僧帽弁葉に穴が開いたり繊維骨格に感染が及ぶとき)

 

Class IIa (有効である可能性が高い)

Surgery of the native valve is reasonable in patients
with infective endocarditis who present with recurrent
emboli and persistent vegetations despite appropriate
antibiotic therapy. (Level of Evidence: C)
感染性心内膜炎で抗生物質を使っているのに塞栓を繰り返したり疣贅が消えないケースで手術をするのは理にかなっている

Class IIb (有効性がそれほど確立されていない)

Surgery of the native valve may be considered in
patients with infective endocarditis who present with
mobile vegetations in excess of 10 mm with or
without emboli. (Level of Evidence: C)
 

感染性心内膜炎で動く疣贅の大きさが10mmを超えるときは塞栓の有無にかかわらず手術を考慮してよい

 

また日本循環器学会の感染性心内膜炎ガイドラインも大変参考になります。もとのページ(17ページ)をご参照ください。

以下、そこから引用します。

 

表33 感染性心内膜炎に対する手術の推奨 ○自己弁心内膜炎の場合

クラスⅠ
(著者註:有効性が証明済み)


1 自己弁の狭窄や逆流による心不全を伴ったacute IE

2 左室拡張末期圧や左房圧の上昇を伴うARやMRを
合併したacute IE

3 真菌や高度耐性菌によるIE

4 心ブロックや弁輪膿瘍,穿通性病変(Valsalva 洞と
右室や左房の穿通,大動脈弁感染による僧帽弁尖の
穿通など)を合併したIE


クラスⅡ a
(著者註:有効である可能性が高い)


1 適切な抗生剤治療にもかかわらず,塞栓症を繰り返

し疣贅が消失しないIE
 


クラスⅡb
(著者註:有効性がそれほど確立されていない)


1 可動性のある10mmを超える疣贅をともなうIE

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り34 感染性心内膜炎(IE)の患者さん

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感染性心内膜炎(略称IE)は怖い病気です。

ばい菌が心臓の中で増えて弁や筋肉、血管などを壊すだけでも重い病気ですが、

そのばい菌の塊が血液の流れに乗って脳へ行けば脳梗塞になりますし、

体のどの臓器へ流れてもその臓器に感染が起こります。

 

  9ilm17_da05017-s月下旬のある日、広島からメールが届きました。

感染性心内膜炎で脳梗塞を起こされた患者さんの御家族からでした。

内容から考えて、これは何とかできるし、

また何とかしなければならない、と判断し、

名古屋までお越し戴きました。

 

治療の方針として、お薬で感染がかなり落ち着きつつあるため、

まず完全に菌を消し、菌の心配がない状態にし、

そのうえで僧帽弁をしっかりと形成する、

脳梗塞はある程度時間が経っているため脳を守りながら手術をすれば経験上、十分行けるという方向で考えました。

 

手術は僧帽弁のほぼ右半分を形成する、

人工腱索も8本立てる、

比較的複雑なものになりました。

私たちはこうした手術は平素からこなしているため落ち着いて完遂でき、弁はきれいに治りました。

 

以下はご家族からのメール複数回を束ねたものです。

患者さんの状態が良くわかるすぐれたお便りですので、

この意味からもご参考になると考え、載せることにしました。

冗長に思われる部分は飛ばし読みして下さい。

 

******患者さんの御家族からのお便り******

(最初のお便り)

はじめまして。広島県在住の****と申します。母の病気の件で、いろいろ お便り34の実物写真 と調べている中で、こちらのホームページを見つけてメールをさせていただいてます。

発端は、9月8日の朝7時頃に、同じ町内に住んでいる母が自宅の階段で急に動けなくなり、近くの**病院に救急車で運ばれました。

病院に着いてからCT・MRIの検査をしたところ、左脳の血管で詰まりかけている部分が見つかりましたが、また脳梗塞は起こしていませんでした。念のため入院をすることになり、病室に入るまでの待ち時間の間に脳梗塞を起こしたようで、その日からすぐに点滴が始まりましたが、後遺症として言語の失効と右足のしびれなどが残りました。

入院2日目くらいから37度5分~38度8分の熱が続きましたが、座薬と解熱剤の処方と途中から抗生剤の点滴など行いました。(熱は12日くらい続きました)入院3日目からは、左の頭に突き上げるような痛みが(見た感じのイメージです)続き、食事も取れないような痛みだったので、ロキソニンを処方され、痛くなると飲んでました。主治医の先生は、肩を触って、肩こりからくる神経痛でしょう。とのこでした。

熱が下がった頃、頭痛もなくなり(9月19日ころ)点滴とワーファリンを併用して、薬の量を調整していたので、そろそろ退院できると思っていたら、9月21日の早朝、激しい腹痛でCTを撮って、内科の先生に診てもらったところ、脾梗塞の可能性が高いとのこと。救急車で運ばれた時に、不整脈もあったので、心臓のエコーの検査をしました。

心臓血管内科の先生に診ていただいたら、弁膜が完全に閉じてなく、血液の逆流があるとのこと。(入院のときにもエコーを撮っていましたが、その時は逆流はありませんでした)ばい菌がいる可能性があるので、カメラを飲んで検査を・・・とのことで診てもらうと、やはり弁にばい菌が付いて、弁に少し穴も開いているようだとのこと。

その病院には心臓の外科がないので、すぐに紹介をしてもらい、9月22日に**病院に転院。その日に、また一通りの検査をしてもらい、心臓血管外科の主治医の先生から説明を受けました。診断は、感染性心内膜炎、僧帽弁閉鎖不全約3度とのことでした。(持病に甲状腺機能亢進賞、糖尿病もあります)お話の内容では、血液検査のCRPが11.3、白血球が14800と高く、かなり厳しい状態で、すぐにばい菌を殺す抗生剤投与により、炎症をコントロールしていきます。場合によっては心臓の手術が必要になります。(感染が制御できない・大きなゆうぜいがある・心不全の進行の場合)そして、今の状態でもし手術になると、かなりリスクが高く、もし菌がなくなって、良い状態で手術をすればリスクは少なくなります。などの説明を受けました。

心臓ということで、家族である私たちもかなりのショックを受け、どうすればいいのかとても不安になりました。そして、9月27日の血液検査ではCRPが3.0、9月29日の血液検査では0.8と幸いにも菌の方は落ち着いてきているようなのですが、主治医の先生のお話だと、心臓の弁の手術はしなくてはいけないとのことで、人工弁に置き換える手術をタイミングを見てするようになりそうなのですが、人工の弁ともなるとやはり術後の経過なども心配で、何とか他に方法はないものかと考えておりました。

更に心配なのが、母が転院してからというもの、気持ちの落ち込みが激しく、言葉が話せない情けなさなどもあると思うのですが、毎日のように泣いて精神的にもまいってしまっています。長文になり申し訳ありません・・・

家族としては、心臓の手術ともなると、やはりかなりのリスクがあって、不安や心配も耐えません。本人にも安心して受けてもらうためにも、より良い環境での手術を望んでいます。こちらのホームページをみて、ここしかない!と思いメールをさせていただきました。宜しくお願いいたします。

*****(感染性心内膜炎、手術後のお便り)******

米田副院長先生

10月28日の心臓の手術は、母が大変お世話になりました。当日は、私と妹も子供を連れて名古屋へ行っておりましたので、術後の説明などで先生にもお会いできませんでした。

父から心臓弁の形成術と心房細動の手術まで無事に終えていただいたと連絡をもらい、とても安心して広島に帰ることができました。ありがとうございました。

術後に母の顔を見ていなかったので、11月2日にそちらに伺った際も、とても元気そうでリハビリにも励んでいる様子だったので、つくづく遠方でも米田先生に手術していただいて良かったね~と話をしたことでした。

(中略、事務的なご相談など)

父も広島に戻り、しばらくは母ひとりでお世話になります。退院の日程が決まりましたら、その前々日くらいには父が名古屋の方へ行くようにする予定でおります。
名古屋ハートセンターの先生方や看護師さんたちも、とても気持ちの良い方たちばかりで、安心してお任せしております。宜しくお願いいたします。

***(追伸、ここまでを振り返って礼状を下さいました)***

米田正始先生

母が脳梗塞で近くの病院に運ばれたのは、9月のはじめのことでした。検査の後、すぐに入院・治療となりましたが、失語症という言語障害が残ってしまいました。本人はもちろんのこと、家族としても大変つらい思いでしたが、なんとか前向きにリハビリにも励もうと思っていた矢先、入院から2週間が経ってそろそろ退院という頃でした。

お便り34の実物写真2 心臓の弁にバイ菌が付いて、弁を破壊してしまう感染性心内膜炎になっていると分かりました。すぐに血液の中のバイ菌をなくすための抗生剤の投与を開始して、できれば心臓の外科手術ができる病院に転院した方がいいとの話を聞かされ、とてもショックを受け途方にくれました。でも、一刻をあらそう状況でしたので、すぐに地元の心臓血管外科のある病院に転院し、点滴治療を開始しました。

転院してからすぐに、心エコー・血液などの検査をして、主治医の先生から聞かされた話は、私たち家族にとっては、本当につらいものでした。心臓の僧帽弁が菌によって破壊されていて、血液の中の菌の値も非常に高く、とても危険な状態だということ、まずは菌をなくさないといけないが、もし緊急手術ということになるととてもリスクが高いこと、心臓の弁は破壊されたものは元には戻らないから人工弁をいれるしか方法はないということ・・・本当にどうしていいか分からなくなり、もうどうしようもないのかと諦めかけていました。

そんな中、少しでも希望の持てる話はないか、いろんなことをネットで検索していて、「心臓 名医」で調べたら、米田先生のお名前を見つけたのです。リンクをたどっていくと、先生が管理されているホームページがあり、隅から隅まで必死で読みました。

いろんなページを見る度に、今まで暗くて不安な気持ちしか持っていなかったのが、すごく明るく希望に満ちた気持ちになりました。そこには、僧帽弁形成術という方法があることが書かれていました。

いろんなメディアでも活躍されていて、とてもそんな先生に手術はしてもらえないかもしれない。と思いましたが、そこに書かれている一言一言が信頼でき安心できる内容だったので、私はすぐに米田先生にメールを送り、母の状況を相談しました。先生からのお返事はすぐに届きました。患者やその家族を気遣っていただく言葉もあり、絶対にこの先生に母の手術をお願いしたいと思いました。母にも家族にも話をして、血液の菌が落ち着いて退院をして間もなく、名古屋に向かいました。先生とお会いして直接話を聞いて、母もとても安心したらしく、1週間後には手術となりました。

手術は僧帽弁形成術と心房細動の方まで治していただき、思った以上に回復も順調で、母もほんとに先生にお願いしてよかったと言っております。今まだ入院中で、広島に住んでおりますので、ちょっと顔を見に行くということはできないのですが、米田先生をはじめ北村先生、小山先生、深谷先生も看護師さんたちも、とても良くしていただいて、安心してお任せしております。

今回思ったことは、心臓手術という大変なことだからこそ、患者やその家族を安心させてくれる先生に出会えたことはとても重要なことだったということです。もちろん、リスクが0ということはありませんが、同じリスクがあるにしても、気持ちを大切にしてくれる先生方がおられたから、母もこの大変な手術を受けることができたのではないかと思ってます。母が退院の際は、また名古屋ハートセンターに伺うのを楽しみにしております。

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執筆:米田 正始
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事例 ちょっと変わった僧帽弁形成術

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患者さんは26歳女性。

活動期の感染性心内膜炎( IEと呼びます)に対して僧帽弁形成術を施行しました。

4111.細菌感染のため破壊された僧帽弁の前尖・後尖が見えます。

最初は前尖から発症したものと考えられますが、感染があちこちに波及して破壊された部位がいくつも見られました。

若い女性の患者さんですので、通常以上に(人工弁による弁置換ではなく)僧帽弁形成術を行う意義が大きいため、じっくり形成をしすることにしました。

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42_22.上記の感染部をひとつ一つ (僧帽弁前尖、後尖、弁輪それぞれに) 切除・再建・形成し、

感染部を完全に切除するとともに弁が確実にかみ合い、逆流が再発しないようにしました。

普通の僧帽弁形成術と違うのは、感染組織を徹底して摘除することと、それを確実に再建すること、糸やリングなどの異物はなるべく使わないか、感染の無い安全な部位での使用に限定することです。

リングをつけて逆流も止まりました

 

431_23.逆流試験OKです。

これでほぼ手術完了です。

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444.心エコーで見ても弁は正常化し、その後5年以上経っても感染再発ありません。

弁形成術によりこの患者さんはワーファリンが不要となります。普通の妊娠・出産なども可能になりますし、生活や仕事もより病気離れした形になります。

外科医として患者さんの人生をお助けできるほどうれしいことはありません。
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今後妊娠出産を考えておられる女性や、格闘技などの激しいスポーツを続けたい男性、あるいは毎月の通院を忘れて仕事等に没頭したい人たちには弁形成術は極めて有効です。

人工弁(機械弁)はずいぶんよくなりましたが、まだQOL(生活の質)においては弁形成には及びません。

僧帽弁形成手術の弱点は、必ずしもワンパターンの手術ではなく、豊富な経験と深い研究・考察が求められるため、一通り修練すればどの心臓外科医でもできるという手術ではないことです。

僧帽弁形成術が複雑になればなるほど、経験量の差がものを言うのでます。

さらに現在ではポートアクセス法などのミックス手術つまり創が小さく、骨も切らずにできる心臓手術で痛みも軽く、仕事復帰も早く、心の創もちいさくできるようにしています。若い女性患者さんにはとくに適していますが、男性にも、そしてご高齢の方にも喜ばれるのは人間みな美しいものを愛するのは同じだからと思います。

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