ポートアクセスの心臓手術――大きな創(きず)は過去のものに?

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128627660これは、

体の表面つまり皮膚に小さな穴を開けて、

そこから柄の長い手術器具をもちいておこなうものです。

いわゆるミックス手術(MICS、低侵襲心臓手術)のひとつです。

 

もともとポートアクセスの心臓手術はハートポートという商品名の体外循環のセットを用いての手術という意味で使われていたような印象があります。

 

私が1990年代にアメリカ・カリフォルニアのスタンフォード大学に留学していたころ、開発されまし 179718260た。あの頃、ちょっとした感動ものでした。


当初は美容上のメリットつまり創が小さく見えにくいということから開発が進んだように思いますが、

実際に患者さんでの使用が始まり、

同じ体外循環を使っても患者さんの回復が速いことが明らかになりました。

そこでポートアクセスの心臓手術は

患者さんにやさしい低侵襲手術という認識が次第に確立して行ったのです。

 

  IMG_0627b  IMG_0628b 私たちもこの方法を積極的に行っており、

僧帽弁形成術、同置換術大動脈弁置換術、同弁形成術、心房細動に対するメイズ手術三尖弁形成術などにもちいています。

ポートアクセスによる標準的な僧帽弁形成術の手術事例をしめします。視野出しがちょっと難しいポートアクセスの同形成術の手術事例はこちらです。

やや複雑な同手術の事例もご参照ください。

こうした心臓弁膜症の関係以外にも、心房中隔欠損症(ASD)などの先天性心疾患、粘液腫などの心臓腫瘍などにもこの方法が使えます。

上の写真はポートアクセスによる僧帽弁形成術の術後1か月半での創を示します。

素早い社会復帰がうなづける創の治りぐあいです。

 

Ilm19_cb02025-sオペの後の痛みがないといえばうそになりますが、

患者さんのご意見を総合すれば

やはり従来の胸骨正中切開(胸の真ん中にある骨を縦に切り、心臓を治したあとでまたもとどおりつなぎます)より痛みも苦痛も少なく、

仕事などの社会復帰が早く、さらに輸血量も少ないことが明らかになって来ました。

 

ただしこのポートアクセスにも弱点や限界もあります。

それは体外循環つまり手術中心臓を肩代わりする器械を使うときに、血液を体に送る管を入れるのですが、

通常は上行大動脈に入れるものを、この方法では下肢の付け根にある大腿動脈から入れる必要があります。

そこで大腿動脈や大動脈に動脈硬化がないひとに限定されるのです。

 

逆に、動脈硬化がないかごく軽ければ、

比較的高齢者の患者さんでもポートアクセスが使えるとも申せましょう。

さらに、皮膚切開を多少大きくして通常の上行大動脈送血で行うこともあります。

 

Ilm01_ab06009-s要は患者さんの安全を第一に考え、

ついで快適性、早い社会復帰、美容上のメリットなどを順々に確保していくことと思います。

 

皮膚切開は約 6㎝ 前後になってきていますが、

これ以上皮膚の創を小さくする努力よりは、

手術治療の安全性や質をより高める努力、

あるいはより複雑な手技を行う努力により力をいれています。

 

ダビンチ・ロボット手術の導入も検討してい Nurse_man_ideaますが、

患者さんの自己負担がかなり高額になる割にはメリットが少ないこと、

体外循環時間が短縮されるとは限らないこと、

メインの創の周囲に多数のサテライト創(副次創)ができ美容上の効果が割引されること、

大きな機械のメンテナンスが大変で人件費や維持費がかかること、

さらには日本全体の医療経済から考えてもメリットに疑問が多く出されていることから、

現時点ではロボットは研究段階の治療法と考えています。

今後の展開を待ちたいところです。

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ロボットを使わないポートアクセスの心臓手術なら

医療費のほとんどが保険から出され患者さんの負担はわずかです。

 

高額医療が結局は国民つまり患者さんの負担としてのしかかってくることを皆で考え、

より適切な道を選ぶべき時代になっていると思います。

 

メモ: よく聞かれるご質問: ろっ骨とろっ骨の間を小さく切るポートアクセスでは、その場所に肋間神経があるため、術後の痛みが大きいのではないですか?

お答え: ただ肋間を切るだけでは痛みは強いです。そこでオペの際に肋間神経ブロックを行い、神経を一時的にマヒさせるようにしています。

それによって多くの患者さんたちで痛みはやわらぎます。少しピリピリする感じで痛くありませんとおっしゃる方が多いです。数週間たてば神経の感覚はもどってきます。

つまりそこに神経があるため、かえって痛みがやわらぐのです。

 

◆患者さんの想い出:

心臓手術を受ける患者さんの中には仕事が忙しくてなかなかその時間が取れない方もおられます。

Aさんは30歳前後の、まさにこらから仕事盛りになる獣医さんです。

僧帽弁閉鎖不全症を指摘され、心不全症状が出始めて心臓手術が必要となり私の外来へ来られました。

仕事に早くもどりたい、仕事も忙しくちからも必要で楽ではない、という状況から僧帽弁形成術とくにポートアクセス法で行うことが適切と判断しました。

手術では右胸を小さく開けて弁を修復しました。後尖のP3という部位が逸脱し瘤化していました。これを本来の形にもどしました。弁輪も小さくならず、運動能力にも制限がかからないようにしました。

術後経過良好でまもなく退院して行かれました。

ポートアクセス法では創が小さく見えにくいだけでなく、骨を切らずにすむため、手術後早期からフルに仕事ができ、クルマなどの運転も早い時期からできるというメリットがあります。しかも弁置換術ではなく弁形成術なのでばい菌などにもやられにくく、何かと安全なのです。

Aさん、これから楽しく仕事に打ち込んで下さい。

 

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  ハートポートとは
  
  ポートアクセスの位置づけ
  
  この方法が前向きに安全な場合
  
  美しいLSH法とは
  
  かかる費用は?
  
  ミックスは危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ ポートアクセス法による僧帽弁形成術
  

  
僧帽弁

  ミックスによる弁形成術

  同、弁置換術

  同、メイズ手術

  ポートアクセスによる弁形成術

  

大動脈弁

  ミックスによる弁置換術

  同、弁形成術

  ポートアクセス法による弁置換術

  

三尖弁

  ミックス法による弁形成術

患者さんやご家族からのお便り

お便り54: ポートアクセス法で僧帽弁形成術を受けた若者患者さん

お便り59: 被災地支援へ!同手術を受けられた患者さん

お便り63: 同、複雑僧帽弁形成術を受けられた患者さん

お便り65: 同手術で元気になられた患者さん

お便り68: バーロー症候群患者さん

お便り74: 僧帽弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

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