ミックスのバルサルバ洞瘤手術、、患者さんの想い出

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Aさんは私の知人の同僚というご縁で私の外来に来られました。

まだ20代の若者ですが、心不全症状がでており、これはおかしいと検査しました。

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その結果、バルサルバ洞瘤が大きくなって心室中隔欠損症という穴から右室へ飛び出し、右室の出口をふさぎそうになっていました。もしそうなれば突然死などの事態もあり得る状況です。

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まず右室側から心室中隔欠損症の穴をパッチで閉鎖し、バルサルバ洞瘤を右室から押し返しました。

さらに大動脈弁を形成して、バルサルバ洞瘤を創っていた弁組織をきれいに整えました。

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これらの操作をミックス手術で長さ8㎝ほどの小さい創で行いました。

術後経過は順調で、Aさんはまもなく元気に退院して行かれました。これから元気に仕事や楽しみに打ち込んで頂ければうれしいことです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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バルサルバ洞瘤の破裂、、患者さんの想い出

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Aさんは30代女性でバルサルバ洞瘤破裂のため自宅近くの大学病院で手術を受けられました。

しかし修復されたはずのバルサルバ洞瘤はまもなく再破裂し、心不全症状が出て、私の外来へ来られました。私がこうした病気の手術で成果を上げているのをHPで見られたようです。

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調べてみますと、以前の患者さんと同様、他病院で修復した部位の近くが破れて血液が漏れ、もとのもくあみ状態になっていたのです。

そこで私たちが開発した方法で、組織がもっとしっかりした部位にパッチを縫着するようにしました。

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術後経過良好ですでに半年後の定期健診でも完全にバルサルバ洞瘤は治った状態で血液もまったく漏れていません。

一回目の手術から私たちのところへ来て頂ければ、創もかなり小さくなるのですが、2回目の手術から来られたため、すでに前回手術で大きな創が胸の真ん中についており、今回は以前の創と同じ場所に同じものをつけるにとどめました。

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ともあれバルサルバ洞瘤破裂はしばし再発の注意をしながら、熟練チームにお任せいただくのが良いでしょう。

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ベントール手術、、患者さんの想い出

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  Ilm17_da05014-sTさんにベントール手術をさせて戴いたのはもう13年も前のことです。当時勤務していた京大病院でのことです。まだ30代でお若く、しかしマルファン症候群のため上行大動脈や大動脈弁が壊れたための手術でした。術後経過は順調でまもなく元気に退院して行かれました。

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当時から私は患者さん自身の弁を使うデービッド手術の経験はありましたが、マルファン症候群の患者さんの弱い弁組織に対してどれだけ良いかは不明でしたので、安全確実にベントール手術を行ったのです。今ならおそらくデービッド手術でしょう。

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私がハートセンターに異動してからは連絡がつかなかったのですが、その後Tさんは大阪の有名センターに通院しておられたようです。昨年9月にフェイスブックで再会し、高の原中央病院のかんさいハートセンターの内覧会にも来て下さいました。そのときにはマルファンネットワークジャパンという、私も顧問を務めさせていただいている、患者さんの会の一人としてお越し下さいました。久々の再会をうれしく思ったものです。医師ー患者というより旧友、もっといえば戦友のような熱いものを感じる再会でした。

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ところが昨年末、体調を崩され発熱し、近くの病院に入院されました。まもなく帰らぬひととなられたのです。それを知ったのはその1か月も後のことでした。

その時の話から、おそらく死因は感染性心内膜炎(IE)それもベントール手術の人工弁に起こったタイプ(PVE)だったものと推測されます。

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亡くなるまでに私が知っていたら、何 David & Bentallか違った結果を出せたのではないかと思うと残念でなりません。PVEならこれまで何度も救命できているからです。

それと、当時はベントール手術がただしいものと考えられた手術でしたが、現在行っているデービッド手術ならPVEにもなりにくいため、先駆的に後者をあのとき行えばよかったのでは、という悔いも残ります。

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時代の流れとはそうしたものかも知れませんが、少なくとも読者の患者さんにおかれましては、何かおかしいことがあれば、とくに発熱とか胸痛、失神、息切れなどは早めにご相談頂ければと思います。

Tさんのご冥福を祈りながら、自分なりに患者さんにもっと啓蒙活動や役立つことができないか、それがTさんへの供養になるのでは、と自問するこのごろです。

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(平成26年2月 米田正始 記)

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大動脈基部拡張症、、患者さんの想い出

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Aさんはマルファン症候群をお持ちの30代女性です。

大動脈基部拡張症のため私の外来へ来られました。

まだ手術は不要な状態なので薬を使いながら定期健診していましたが、まもなく結婚されこどもが欲しくなられました。

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ちょうどそのタイミングで大動脈基部も手術が必要な大きさになり、まして妊娠中は大動脈が弱くなるためそれまでに治してしまおうということになりました。

デービッド手術と上行大動脈置換術でAさんの大動脈基部拡張症はきれいに治りました。まもなく元気に退院して行かれました。

いつでも赤ちゃんをつくって下さいね!とご夫婦にお勧めしています。それと長期の安全安心のため、定期健診だけは欠かさないようにお願いしています。

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自己心膜による大動脈弁再建、、患者さんの想い出

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Aさんは40代男性で大動脈弁と僧帽弁の閉鎖不全症のため来院されました。

心不全がすでに発生しており、左室機能も低下していました。

そこで心臓手術ということになりました。

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大動脈弁はかなり肥厚硬化があり壊れ方が強いため弁形成には不向きと判断しました。自己心膜による大動脈弁再建術ならゆうゆうとやれるためこちらを選択しました。

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手術ではまずこの自己心膜大動脈再建(尾崎法)を行い、その際に大動脈弁経由で僧帽弁閉鎖不全症を直し左室機能をUpさせるため乳頭筋最適化手術(PHO)を行いました。これにより時間が節約でき患者さんの安全にも役立つのです。

術後経過は順調で、患者さんはまもなくお元気に退院して行かれました。

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自己心膜による大動脈弁形成術はこのように、弁形成が成り立たないときにバックアップとして十分役立つものと思います。

長期的な成績は未だ不明ですが、期待される方法です。

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ミックス大動脈弁形成術、、患者さんの想い出2

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Bさんは10代前半の中学生です。検診で二尖弁の大動脈弁閉鎖不全症を指摘され米田正始の外来へ相談に来られました。

九州からお越し下さいました。

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中学生とは思えないほどしっかりした方で、病気を正面から、冷静に受け止め、今後の方針を一緒に考えてくれました。

そして外来で自らの判断で、手術を決心されました。

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若い女の子ですから、もちろん弁形成です。

これが成功すれば長期間の健康と学生時代・青春時代をワーファリンを考えることなくのびのび過ごせますし、将来の妊娠出産も普通にできるでしょう。

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こうした将来のある患者さんに対する大動脈弁形成術にちからを入れて来た私ですので、全力をあげて頑張りました。

この数年のノウハウの蓄積のおかげで、より精確な弁形成をより小さい見えにくい傷跡で行う自信がついていました。

そこでBさんには腋窩つまり脇の下からアプローチするMICSで大動脈弁形成術を行いました。これも経験の蓄積が大いに役立ちました。

最近のこの領域の成果を十分に取り入れて二尖弁をしっかりと嚙合わせるようにし、同時に楽に開くこともできるように工夫しました。

将来大動脈が拡張して瘤にならないよう、大動脈もしっかりと固定し守るようにしました。

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術後の心エコーでも弁はきれいに開閉し、逸脱はもはや解消し、逆流も無視できる程度で狭窄もありませんでした。心機能もすでに正常化していました。

傷跡もきれいで夏の水着になってもほとんど見えない程度になりました。Tシャツや夏服も自由に楽しんでいただけるでしょう。お母さんに、まあきれいな傷!と言って頂いたのがうれしかったものです。

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Bさんは術後もしっかりと言いつけを守り治療に協力してくださいました。病棟の看護師さんたちにも愛され敬意さえ持たれていました。

まもなくご両親とともに元気に退院して行かれました。

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Bさん、これから楽しく実りある青春時代をお過ごしください。また外来で元気なお顔を見せて下さい。ご両親様もお疲れ様でした。

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ミックス大動脈弁形成術、、患者さんの想い出1

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Aさんは10代半ばの女子高 校生でした。九州から来てくださいました。大動脈弁閉鎖不全症のため学生生活も制約が多く、ひとりポツンとかわいそうな状況でした。

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是非この病気を治してあげたいと思いましたが、大動脈弁形成術でないと患者さんはかえってお気の毒な状態になるのです。

つまりもし人工弁になってしまうと、それが生体弁では数年後には次の手術(10代での生体弁寿命は5年程度のことも)、機械弁ではスポーツの制限や将来の妊娠出A302_048産に赤ランプという状況で、大動脈弁形成術しかないという状況でした。

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しかもまだ少女ですので 、創はできるだけ小さくしてあげたい。心臓がいくら治っても、心に傷がついては何にもならない、そういう状況でした。

私も入魂の大動脈弁形成術をやらせて戴きました。Tシャツが着られる小さい創で。あとでご本人やご両親の笑顔に接して、安堵しうれしく思いました。これでのびのびと楽しい学生生活がもどれば最高です。

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しかもAさんはこの闘病経験のなかから、将来の進路として看護師を選びたいと言ってくれました。私たちのチーム医療に共感してくださってのことなら、これほどうれしい事はありません。

 

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大動脈弁二尖弁、、患者さんの想い出

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この秋に私の外来に来られたAさんは二尖弁の大動脈弁閉鎖不全症と上行大動脈拡張をお持ちでした。

113300011弁の逆流は中等度ー高度で、ただちに手術が必要というほどではなかったのですが、上行大動脈のほうはすでに55mmを超えており、二尖弁の上行大動脈が弱いことを考えるとすでに手術適応でした。

破れるまでに治しておけば安全安心というわけです。

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二尖弁のこうした特徴がまだ周知されていないため循環器内科の先生が診ておられても上行大動脈のほうは認識されずそのまま放置になっていたのです。

やはり内科と外科で協力して診るのが良いのではと思いました。

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上行大動脈を手術する際に大動脈弁を放置するとどうなるでしょうか。上行大動脈置換術のあとまもなく、たとえば2-3年で二尖弁の手術治療になる恐れもあるのです。なので両方同時に治しました。

術後経過は良好で、まもなくお元気に退院されました。

傷跡も小さく目立たないミックス手術なので喜んで頂けたようです。

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大動脈弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出2

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Bさんは60代女性です。やはり大動脈弁閉鎖不全症のため左室が壊れ、左室駆出率が20%台にまで低下して私の外来に来られました。関西地区の有名センターや大学でも匙を投げられ、今から15年近く昔のことで移植もまだ始まったばかり、年齢も当時の限界を超えておられたため移植以外の治療でがんばるしかないという状態でした。

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ただ弁を取り換えるだけでは心機能が戻らず、まもなくBさんは死んでしまう、そうした予想が立ちました。

そこで手術のときにはまず大動脈弁置換を行い、あわせて僧帽弁形成術で拡張した僧帽弁輪を小さくすることで左室の縮小効果を狙いました。さらに術後の積極的な薬の使用で心臓をさらに磨きました。

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1年余りの間にBさんの心臓は大きく回復し、左室駆出率も50%を超え、正常の近くにまで戻すことができました。

その後さらに進んだ方法を考案し、薬も良くなったため、現在ではもっと安全かつ確実に左室を回復させることができるようになりました。たとえば乳頭筋最適化手術(PHO)ですね。

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Bさんの経験は私にとって大動脈弁閉鎖不全症の末期の患者さんの心不全治療の大きな一歩になったものと今なお印象強く覚えています。

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大動脈弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出

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大動脈弁閉鎖不全症は放置すると次第に左室を壊し、拡張型心筋症になることが知られています。

昔、まだ卒業してまもない研修医・修練医のころ、天理よろづ相談所病院で患者さんAさんの受け持ちをしました。

Aさんは60代男性、大動脈弁閉鎖不全症で心機能がすでに大きく低下した方で大動脈弁置換術を受けて弁は良くなったものの心機能がもどらず、生きるのに精いっぱいというレベルにまで落ち込んでいたのです。駆出率でいえば10%台、つまり心移植レベルの低い心機能だったのです。

寒くなったり無理をするとすぐ心不全が悪化して入院して来られました。

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当時、つまり今から30年ほど前は今ほど良い薬や治療法がないためできる範囲でいろいろな治療を試みましたが、なかなか十分には効きません。

今なお忘れられないのはAさんがいつも仰っていた言葉です。「私の心臓はそれはもう弱く、シーツ一枚胸の上に乗ると息苦しくてたまらないんです」と。何とかしてあげたかったのですが、当時の医学では限界がありました。

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そんな状態でもAさんはよく頑張り、3年ほどの闘病生活ののち、この世を去られました。今ならもっと治せる、良い薬もたくさんあるし、そもそも手術のときにもっと良くできる、そんな気持ちでAさんのことを想い出します。

私の心不全治療への原点ともいえる患者さんです。

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