リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出

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リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症で来院された患者さんはこれまでも多数おられます。かつてはほとんどが弁置換つまり人工弁を植え込むオペを行いました。患者さんはお元気にはなられますが、人工弁はやはり自然の弁よりメンテナンスに手間がかかるものです。弁形成のノウハウがずいぶん蓄積されたため、現在は積極的に僧帽弁形成術を行うようにしています。

約60歳のリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症(兼狭窄症)の女性が来院されました。人工弁を避けたいという気持ちがあり、頑張って弁形成を行いました。かなり複雑な形成でしたが、きれいな形で、逆流もなく自然に作動する状態となりました。

しかし人工心肺を外して調べると、弁はよく開き逆流もゼロなのですが、硬くて動きがやや悪い、ちょっと狭窄が残るという結果でした。それでも人工弁よりはベターかとも考えられたのですが、多少でも狭窄を残すとせっかくの手術のあとで存分に運動ができないという懸念が残るため、涙を呑んで生体弁に取り換えました。

患者さんはすっかりお元気になられ、創も小さいことから喜んでは頂けましたが、今ももう少しリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成の完成度を上げれば違った結果になるのではと思い、技術を磨いています。

日進月歩の弁膜症領域ですので、今もし、同じタイプの患者さんが来られたら、もっと洗練された弁形成でお応えできるでしょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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僧帽弁狭窄症、、患者さんの想い出

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Aさんが初めて私の外来に来られたのはもう10年近く前のことです。僧帽弁狭窄症のため心不全と不整脈が出ていました。

そのころからそろそろ心臓手術をとお勧めしていましたが、まだ症状が軽く、かつAさんが医療関係者で普通以上に手術を恐れておられたこともあり、外来で経過を見ていました。

まもなくAさんは脳梗塞に襲われました。想定された合併症ですので、まえもって予防のお薬を飲んで戴いていたため、後遺症を残さずに治りました。

その後もAさんは外来に通院され、僧帽弁狭窄症が徐々に進行するなかで、オペの決心はつきませんでした。

5年の月日が流れ、Aさんは2度目の脳梗塞に襲われました。この時も、予防薬が効いて、後遺症を残さずに済みました。

さすがにこの時にAさんは心臓手術を受ける決心をされ、まもなく僧帽弁置換術、メイズ手術と三尖弁形成術を受けられました。

現在なら僧帽弁形成術ができたかも知れません。

手術でお元気になられたAさんは、退院のときに、こんなんだったらもっと早くオペを受けたら良かった、と。それはともあれ、5年の遅れを取り戻せて何よりでした。Aさん、おめでとうございます。

僧帽弁狭窄症の患者さんたちにおかれましては、こうしたことも念頭においていただき、今元気だからと、やるべきオペを先延ばしにして脳梗塞などに襲われることのないように、十分考え、相談して頂ければ幸いです。

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僧帽弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出3

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Cさんは89歳の男性です。僧帽弁閉鎖不全症のため心不全が強くICUに入っておられましたが、肺も悪く、年齢体力も弱いため手術にはかなりのリスクがありました。

短時間で僧帽弁閉鎖不全症を治すことが必要で、そのためには僧帽弁置換術を決め打ちで行うことを考えていました。しかし同時に、それよりも短時間でかつ確実に僧帽弁形成術ができるならそうしようと心に決めていました。

僧帽弁は後尖のP2と呼ばれる部分の逸脱が広範囲のため、弁置換だろうというのがおよその予測でした。

術中にこれなら行けると判断し弁形成術で決めました。時間の余裕が生じたためメイズ手術もポイントをおさえて10分あまりで完遂しました。術前に心房細動でたいへん困っていたのを知っていたからです。

術後経過は予想より順調で、まもなくお元気に退院して行かれました。退院のとき、笑顔で何度もお礼を述べていただき、このうえなく嬉しく思ったものです。

Cさん、ご高齢でもまだまだ人生は続きます。これからお元気に楽しく過ごして下さい。

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僧帽弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出2

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Bさんは50代男性、有名国立大学の文化系の教授でした。

Ilm01_ab05023-s前から僧帽弁閉鎖不全症と言われていたそうですが、有名人でお忙しく、また勉強熱心で弁や心臓手術のこともある程度知っておられたため、いっそう決心がつかなかったようです。とくに人工弁つまり弁置換術になることを恐れておられたようです。以前の担当医に弁形成は難しいのでは、と言われていたからです。

次第に心不全が悪化し、私の外来に来られたときにはBさんの僧帽弁はすごい状態になっておられました。

つまり、弁を支える糸が切れた部位だけでなく、そこら中が変化し壊れていました。いわゆるバーロー症候群に近い形ですが、以前のエコーではそれほどの変化がなかったことから、二次的に変化したものと考えられます。

ともあれ、僧帽弁形成術を完遂することはBさんの切なる願いでしたので、私も力を入れて前尖も後尖も数か所修復しました。前尖の三角切除、後尖の四角切除、ゴアテックス人工腱索その他を駆使して弁はきれいに作動するようになりました。

Bさんは笑顔で退院して行かれました。このようによく勉強してから来院される患者さんのご期待に沿えるというのはいっそうの喜びです。Bさん、健康でますますご活躍ください。

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僧帽弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出1

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僧帽弁閉鎖不全症が重症になれば現代の世の中では病院へ来て診察を受け、診断がつけば心臓手術になるのがふつうです。

今なお複雑な弁形成はダメといって僧帽弁置換術を中心に行う病院は多数ありますが、先進的病院では複雑な形成でもしっかりやるところも散見されます。

そうし A307_111た中で、ある30代の男性が来院されました。心臓は心移植の患者さんに準じるほど大きく弱くなっており、僧帽弁閉鎖不全症は高度でした。聞けば、長年にわたり手術が怖いため病院を避けていたとのことで、弁の逆流をずっと放置したらこうなる!と言えるような、心不全教科書のような状態でした。左室の駆出率は20%台と健康なひとの3分の1近くまで低下していました。仕事にも支障がでてひきこもり状態でした。

要するにもう手遅れ状態の僧帽弁閉鎖不全症だったわけです。よくぞここまで我慢したねというわけです。しかしすんだことを論じてもだめで、やはり前向きの議論をして、この患者さんが元気さを取り返せるようにしようと思いました。

単に弁形成してもなかなか治りにくく、かといって弁置換では予後が心配なので、私たちが開発した乳頭筋最適化手術(PHO手術)を行いました。これによって弁だけでなく左室もあるていどは改善するのです。

結果は上々で、患者さんの回復は意外なほど良く、心臓はすでにかなり小さくなり、そのパワーはまだまだですが、回復の兆しが見られます。

手術前はいわゆる「手遅れ」の僧帽弁閉鎖不全症でしたが、なんとか間に合わせた、これから新しい人生を頑張りましょうというところまで回復できました。

手術だけでなく、その後のお薬や運動治療を併用して、心臓がもとのパワーを取り返せるよう、患者さんともども頑張っています。お役に立てて本当にうれしいことでした。

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僧帽弁弁膜症、、、患者さんの想い出

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Aさんは60代女性で僧帽弁膜症のため当時私が勤務していた名古屋ハートセンターへ来院されました。それも遠方からでした。病院は開設直後でまだチームを日々育てているところでした。

Aさんの僧帽弁膜症は弁の逸脱と逆流で、私がもっともちからを入れている弁形成術の良い適応でした。安全に確実に治せるという確信はありましたが、なにしろ病院開設一例目なので、申し訳なくて、正直にその旨お話ししましたが、敢然と手術を希望されました。

これほど信頼して戴いているからにはそれに応える十分な手術をしようと、皆しっかり準備して手術に臨みました。シュミレーションを繰り返し、関連の豊橋ハートセンターからも大勢の助っ人に来ていただき、万全の態勢で臨みました。

結果は上々で、Aさんの僧帽弁膜症はきれいに治り、逆流も狭窄もない、健康な弁と心臓にもどりました。まもなく元気に退院して行かれました。

患者さんが医者を育てて下さるというのはこのことだなあと今もAさんに感謝しています。

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心臓ペースメーカー、、患者さんの想い出2

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Tさんは昔、他病院で心臓弁膜症の手術を2回受けられたかたです。

縁あって私のところへ来院くださり、3回目と4回目の心臓手術を私が執刀させて戴き、お元気に暮らしておられました。

ところが自然のペースメーカーが次第に壊れ、脈がひどく遅くなりました。

心不全症状やだるさ、疲れなどが悪化し、また私の外来へ来られました。

一目であっ、これはペースメーカーでお元気になられる!

とわかりました。

しかしこれまで長年の間に4回も心臓手術を受け、すでに年齢や体力に心配をもっておられたせいでしょうか、ご家族が次の手術に耐えられないでしょうと反対されました。

そこで時間をかけてじっくりとその安全性と効果の高さをお話し、ペースメーカー植え込みに同意いただきました。

植え込み翌日のTさんは、すっかりお元気になられ、疲れも取れて快調そのもので、ご家族とともに喜んでいただきました。

このようにペースメーカーは体への負担が少なく、効果が大きい治療法です。

先入観を捨てて、まず相談が大事です。

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心臓ペースメーカー、、患者さんの想い出1

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Aさんは80代の男性です。来院時、あまり元気がなく、周囲からは認知症、老人ボケ、もう歳、などと言われていました。

しかし診察してみると脈拍が遅いことがよくあるのです。

失神発作などがあればそれまで診た先生らもペースメーカーを考慮されたものと思いますが、そういう強い症状がないためそのままになっていたようです。

そこで循環器内科の先生に相談し、検査の結果、心臓ペースメーカーが良いでしょうとのことになりました。

心臓ペースメーカーをつけてからのAさんは、単にお元気になるだけでなく、しゃきっとして話をしたり笑ったりする機会が増え、別人のように元気になられました。

Aさんを老人ボケと言ったかたにはお詫びにご馳走でもしていただきましょうか、という冗談がでるほどの改善ぶりでした。

やはり諦めるまえに、まず相談ですね。

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ポートアクセスが前向きに安全な場合、、患者さんの想い出

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Aさんは70代女性です。遠方の東北地方からお越し頂きました。これまで僧帽弁手術を3回、他病院で受けられました。

人工弁の付け根が外れて、弁周囲逆流が発生し、そのため血液が壊れ、溶血を起こしていました。そのために貧血が進み、さらに腎臓が弱っていました。

このままではいのちにかかわる事態となるため、心臓手術することにしました。

私たちは再手術の経験も豊富で4回目手術にも実績がありますが、Aさんの場合は心臓や血管が直接胸骨に癒着しているため出血リスクがあること、そしてポートアクセス法がうまく機能する条件があったため同法を選びました。

右胸を小さく開け、そこから左房に到達しました。上行大動脈を遮断しようにも、癒着が強かったため無理をせず、風船を入れてこれで心臓を一時止めました。

僧帽弁(人工弁)は3分の1周ちかくまで外れていたため、弁置換手術をやり直しました。このとき、同じような問題が起こりにくいように、十分な補強材をもちいて弁を縫い付けました。

術後経過は順調で、まもなくお元気に退院されました。

ポートアクセス法に代表されるミックス手術は通常はよりきれいな創・見えにくい創、あるいは早い仕事復帰や軽い痛みを目的として行いますが、このAさんのように、純然たる安全向上の目的で行うこともあるのです。

どれが良いとか悪いとかを決めつけるのではなく、さまざまな方法をもち、その患者さんにベストの選択をする、これが一番です。

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ポートアクセスの心臓手術、、、患者さんの想い出

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心臓手術を受ける患者さんの中には仕事が忙しくてなかなかその時間が取れない方もおられます。

Aさんは30歳前後の、まさにこらから仕事盛りになる獣医さんです。

僧帽弁閉鎖不全症を指摘され、心不全症状が出始めて心臓手術が必要となり私の外来へ来られました。

仕事に早くもどりたい、仕事も忙しくちからも必要で楽ではない、という状況から僧帽弁形成術とくにポートアクセス法で行うことが適切と判断しました。

手術では右胸を小さく開けて弁を修復しました。後尖のP3という部位が逸脱し瘤化していました。これを本来の形にもどしました。弁輪も小さくならず、運動能力にも制限がかからないようにしました。

術後経過良好でまもなく退院して行かれました。

ポートアクセス法では創が小さく見えにくいだけでなく、骨を切らずにすむため、手術後早期からフルに仕事ができ、クルマなどの運転も早い時期からできるというメリットがあります。しかも弁置換術ではなく弁形成術なのでばい菌などにもやられにくく、何かと安全なのです。

Aさん、これから楽しく仕事に打ち込んで下さい。

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