近畿大学医学部奈良病院・心臓血管外科

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この病院は近畿大学附属病院の第二病院として1999年に開設された。

私にとって母校の大先輩にあたる心臓外科医・城谷均先生が中心になって救急や循環器にちからを入れた内容になった。

当時ひとはこの病院を城谷病院と呼んだほどである。 A335_010

城谷先生は患者さんの手術や治療にあたっては頭脳明晰、冷静沈着、有言実行しかし酒を飲むと天真爛漫ときに狂喜乱舞といった心臓外科医で、先天性心疾患の外科治療で多大な成果を上げた方である。

近大奈良病院の開設時、私は京都大学に奉職していたため、城谷先生のご依頼を受け、医師チームを構成しこの新しい病院へお送りした。とくに心臓外科のヘッドには京大グループの中でも実績豊富な西脇登先生に着任いただき、大学としてもしっかりとサポートする中での発進であった。

近畿大学奈良病院は順調に発展を続け、とくに心臓血管外科は大阪や奈良、さらには京都府南部や兵庫県西部まで、もちまえの機動力つまり救急車を活かして緊急のバイパス手術と大動脈解離を中心に大きな貢献をするようになった。

この病院の草創期のサポートに携わったものとして大変うれしいことである。

その後私は京都大学を去り、名古屋ハートセンター等で第一線心臓外科臨床に没頭しながら近大奈良病院の展開をいつも頼もしく見守っていた。

御縁あって奈良の地に高の原中央病院かんさいハートセンターを開設することになり、医療圏は少々違うがおなじ奈良県で地域医療に携わることになった。大変光栄なことと感じている。

立ち上げ期ということで緊急対応できないときには近大奈良病院に患者さんをお願いしたこともすでに何度かあり、こうした地域の病々連携ができるのもうれしいことである。

昔風のパラダイムでものを考えるひとたちの中には、私たちが近大奈良病院とバッティングするのではと心配下さる向きもあるようだが、私たちは全国区のセンターであり、かつ連携重視した地域医療をこなす方針のため問題ないと考えている。

部長の西脇先生のプロ精神は私が個人的にもっとも尊敬しているところであり、今後同先生がご退官されても何らかのご指導を頂ければ幸甚である。

奈良の地が日本でももっとも心臓血管死の少ないエリアになるよう、近大奈良病院にご協力しつつ私たちは微力ながら貢献したく思うのである。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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講演 高の原中央病院 健康フォーラム 心臓手術と科学的ダイエット

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皆さんいかがお過ごしでしょうか

私は心臓手術の専門家で、毎日心臓や血管を治しております。


Health_0072しかし単にそれだけでは患者さんは一人の「ひと」として健康になりきれないことがあります。

たとえば弁膜症で心不全の患者さんに弁形成術を行い、手術のあとは「体調がよくなり、ごはんもおいしいです」ということで、次第に体重が増え、メタボになる方も少なくないのです。

それではいくら心臓病を治しても新たな病気を造ることになり、ひととしての患者さんのお役に立っているか、心配になってしまいます。

そこで心臓リハビリや科学的ダイエット(糖質制限食)にちからを入れるようになりました。

今回はこの科学的ダイエットのお話しを、心臓手術とセットでお話ししたく思います。

講演のときに、当院の管理栄養士からお役立ちレシピ情報も紹介いたします。

奮ってご参加ください。

日時: 2013年9月18日水曜日

      開場: 13:30

      開演: 14:00 15:00終了予定

講演内容: 心臓手術の実際を有名人の事例を参照しながらお話しします。とくに創が小さく痛みも少ないポートアクセス手術や安全なバイパス手術などを解説いたします。さらに糖質制限食の安全で効果的な方法もご紹介します。

場所: 奈良市北部会館 市民文化ホール 3階 多目的室1

     〒631-0805 奈良市右京1丁目1番地の4

定員: 先着50名 入場無料です

講師: 高の原中央病院特任院長、かんさいハートセンター長、心臓血管外科部長

     米田正始

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578477_10200646067299033_1176325649_nご報告

当日は会場満員御礼となりました。おおくの方々に聴いていただき、質問も制限時間を超えるほどいただき、深く感謝申し上げます。

みなさまの今後の健康管理にお役に立てれば幸いです。

ご参考までに皆様からの声の一部を掲載させて戴きます。

 

「かんさいハートセンター開設がんばってください。期待しています。」

「目からうろこで大変勉強になりました。」

「友人が弁膜症手術を受けたので興味深く聞かせてもらいました。」

「心臓があまりよくないので関心をもっていた。今日は勉強になりました。今後どんどん講座を開いてもらいたい。もっと広い部屋でもよかったのでは!!米田先生の話が大変よかった。」

「ローカーボというダイエットを聞き驚いた。ずっと間違ったダイエット結果がでていなかった。ぜひ糖質制限食の本を買って勉強しようと思います。心臓病に関しては、こわいこわいと思っていましたが、医学の進歩と技術に驚きました。お世話になるときはよろしくお願いします。」

「質問には丁寧に答えていただきたいへん参考になりました。食事、運動プラス薬で頑張ります。」

「日頃、不安に思っている心臓のことを分かりやすくお話しいただきありがとうございました。バイパス手術、ステントも怖がることはないと思えるようになりました。」

「分かりやすくてとても良かった。実生活にぜひ活かしていきたいと思います。ありがとうございました。」

「もっとゆっくり説明が聞きたかったと思います。」

「次回の健康フォーラムがどこで、どんなテーマのものがあるのか知りませんが、このような情報を自治会に回してほしいです。」

 

皆様の貴重な御意見を活用し、有意義な勉強会にしていきたく存じます。ありがとうございました。

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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高の原中央病院かんさいハートセンター・内覧会のお知らせ

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Ilm2007_04_0143-s皆様ますますご清祥のことと存じます。

高の原中央病院かんさいハートセンターは平成25年10月1日にまず心臓血管外科がオープンいたします。

つきましては地域医療に貢献すべく医療関係者の皆様に以下のような内覧会を開催いたしたく存じます。

患者さんや奈良県をはじめ京都府南部、大阪府東部を含めた地域医療におやくに立てるよう、職員全員ちからを合わせて頑張ります。

ぜひ内覧会にお越し頂けますようお願い申し上げます。

なお患者さんや一般市民の皆様には公開講座などを別途開催し、心臓病の治療のみならず予防にもお役に立てるよう計画しております。

 

1.日程 平成25年9月28日(土曜日)と同29日(日曜日)

      いずれも14時から17時まで

2.場所 高の原中央病院7階講義室 

      

3.タイムスケジュール

   14:00 開会あいさつ 西村院長

   14:05 米田正始 特任院長・ハートセンター長 講演

          講演内容:最近の心臓血管手術をめぐって

            日進月歩の心臓外科の姿とお役にたてる内容をご紹介します

            体外循環を使わないバイパス手術や
創が小さく見えにくい弁膜症手術、弁形成術、
難治性心房細動への新しいメイズ手術、
大動脈手術、再生医療その他を予定しています

   14:40 心臓リハビリのお話。これから重要な役割を果たすでしょう。

   14:50 病棟からご挨拶。患者本位のケアとは。

   15:00 休憩

   15:10 内覧会 東館6階 手術室

               東館7階 会議室にて3D心エコーなど

               東館7階 講義室にてCPXなど

         何でもご質問、ご教示お願いいたします。

   16:30 意見交換会

   17:00 閉会あいさつ 斉藤正幸副理事長

 

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御礼

9月28日、29日とも良い天気に恵まれ、多くの方々のご参加を頂きました。

絶好の行楽日和にもかかわらず内覧会でお時間をとっていただき、恐縮いたしております。


中には京大病院時代や天理病院時代にお世話になった懐かしい先生方も多数おられ、なつかしくまたジーンとくるものがありました。

またすでにお世話になっている地域の先生方のお姿もあり、ご厚情に感謝申し上げます。

これから少しでも多く、お役に立てるよう努力いたします。

心臓手術、血管手術は年々着実に進歩をとげております。内覧会を通じてこうした心臓手術、心臓外科の最新の成果を見て頂き、光栄に存じました。

しかし実際に皆様のお役に立てて初めて意義のある会になったと言えるものと考えます。一歩一歩着実に努力して参ります。細かいことも含めて何でも、ご指導、ご鞭撻頂けましたら幸いです。
KHC内覧会

このたびは誠にありがとうございました。内覧会を立派に運営して下さった院内の事務、コメディカル、医師諸君や西村院長、斉藤副理事長、斉藤理事長にも心から御礼申し上げます。

 

平成25年9月29日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心臓血管外科のセカンドオピニオンはどのようにすればもらえるの?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月2日

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◾️まずセカンドオピニオンとは?

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セカンドオピニオンは患者さんの権利です。それを認めない医師は良くない医師と言えます心臓血管外科の患者さんやご家族にとって、今受けている治療が本当に 納得できるかどうかわからないことはよくあります。

そこで他の病院の、意見をぜひ聞きたい先生のところへ行って直接戴くご意見をセカンドオピニオンと言います。

現代の医療ではこれは患者さんの権利として広く認められています。

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◾️とくに心臓血管外科では

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とくに心臓血管外科の手術ではどこの誰にオペ193237727をしてもらうかで結果に大きな差が出ることがあるため、セカンドオピニオンは広く普及する方向にあります。

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たとえば手術実績があまりない、年間開心術100例未満とか、常勤の心臓血管外科医が1-2名しかいないなどの病院から不安を抱えて相談に来られる患者さんが増えましたし、理解できることです。

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あるいは傷跡が見えにくいMICS(ミックス)での手術をやっていますと書いてあってもごく一部の患者さんにしかそれができない、弁形成できますとうたってあっても簡単な形成しかできない、などの事例が後を絶ちません。

なのでセカンドオピニオンが必要なのです。

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◾️セカンドオピニオンをもらうために

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病院によってはセカンドオピニオン外来と診療情報提供書や診療サマリーは役立ちますして受けているところもありますが、通常の外来でそれをお受けしているところもあります。

内容がセカンドオピニオンであればそれで良いわけです。

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それを円滑に行うために、現在の主治医の先生からのサマリーが役立ちます。

いわゆるどこにでもある診療情報提供書です。

主治医先生に依頼しづらいときは何もなくてもなり立ちますが、その場合、最初からお話をお聞きし、最初から検査を行うというむだや負担が生じますので、サマリーはあるほうが好ましいわけです。

IP08_F07サマ リーを依頼するときに、セカンドオピニオンをもらうためですということで主治医も書きやすくなり、患者さんももらいやすくなるというメリットがあります。

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◾️セカンドオピニオンをもらいづらい時

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しかし診療情報提供書がもらいづらい、頼みづらい雰囲気だからこそ、それが欲しいということもよくあります。

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セカンドオピニオンを他の病院でもらうことを嫌がる医師は時代遅れで良くない医師であるというのは、現代では常識です。

自分の治療に自信がなく、他人に見られては困る、つまり良くない医療をやっているからです。

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セカンドオピニperson_0388オンの情報書がもらいにくい時はまず外来や(私たちの場合)メールなどでご相談していただくのが良いでしょう。

突破口ができればそこから順次、形をつくるということもできますから。

心臓血管外科の手術は一生に一度あるかどうかのおおごとです。そこで遠慮は無用です。

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大切にされる患者道 はこちら.

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7. 病院や医師の選び方 (セカンドオピニオンも含めて)にもどる

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
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8)Q: 安全な心臓血管外科手術を受けるために、どのような基準で医師を選べば?

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心臓外科手術では名前より実質や内容が大切です ◾️理想的には、

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自分がこれから受ける治療に対して、最良の成果を出してくれる心臓血管外科医を選ぶことです。

それは肩書きよりも内容や治療実績本位で選ぶということです。

重症患者さんや難度の高いオペであるほど、その病気に精通した経験豊かな心臓血管外科専門医を選ぶべきです。

残念ながら専門医の中にも経験が少ない人もいるのが現実ですから。

また個人の実力と施設(病院)の実力を分けて考えることも必要です。施設として多大な実績をもっていても、その医師個人はまだ駆け出しということもあるのです。

威張る医師、納得できる説明をしてくれない医師、つっけんどんな態度の医師、セカンドオピニオンやデータを出し渋る医師なども良くないですね。

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◾️二極分化?

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昨今は、心臓血管外科患者さんの志向が二極化していて、お店に例えるならば、コンビニエンスストア派 と専門店派に分かれてきているように感じます。

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コンビニ派は一生に一度あるかどうかの心臓手術は専門家のいる専門店が有利です

家の近くの病院を重視し、病院を信じ切っておられるともいえます。

実際、年配の患者さんほど、自分のことよりもお見舞いや付き添いが大変だからという理由で、地理的な条件を気にされるようです。

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一方、専門店派は

自分が納得できる医師や病院を探してどこへでも行くという信念をもって行動されます。

医者や医療者に専門店派が多いのはそのほうが安全と知っておられるからです。

私自身も、自分や家族が患者として受診する場合はベストの専門店・専門医を選びます。医者選びも寿命のうちですから、本気で選びます。

いっぱんの皆様もご自分の体のことですから、安全策がお勧めできます。

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◾️地方の場合は

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さまざまなチームワーク(医師とコメディカル、外科と内科、都会と地方など)を発揮することが大切と考えます   地方や遠方の患者さんの場合、地元の病院と心臓血管外科専門病院がタイアップしてご家族に負担をあまりかけない工夫がある程度はできます。

たとえば大きな心臓手術は専門病院で行い、

楽に歩けるぐらいに回復すれば、地元病院でさらに体力をつけ、

退院後の外来は地元で、ただし年1-2度の定期健診は専門病院で、などの方法があります。

ここでカギになるのは地元の病院と専門病院の協力関係です。

何事もじっくり相談することがまず大切でしょう。

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7. 病院や医師の選び方 (セカンドオピニオンも含めて)にもどる

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◆参考ページ

心臓手術とはどういうもの?

そのこれからの方向

心臓外科の名医とは

心臓手術と言われたら?!

安全に必要な症例数は?

病院の立派さと心臓外科の立派さは別?

対象となる病気は?

私のお勧めは?

術後の社会復帰について 

美容について

必要な検査

米田正始が考案した心臓手術は

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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京都大学医学部心臓血管外科 ――優れた研究機関

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京都大学医学部(京都大学病院)心臓血管外科では1998年から2007年までの約10年間教授として勤務した。

教授および一人の外科医の視点からこの施設を振り返ってみた。

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教授の守備範囲は臨床・研究・教育とそれぞれに関連して医学部や病院全体のさまざまな仕事や約30ある関連病院のサポートその他多岐にわたった。
京都大学医学部および付属病院は研究とくに実験研究をやるには極めて恵まれた環境であった。

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基礎医学、内科系、外科系の教室をはじめ、再生医工学研究所や理学部・工学部さらには他大学やセンター研究部門との連携が容易で、

さまざまな方法論、材料、経験を活用させていただき、単に大学院生が医学博士号を取得するための研究にとどまらず、心臓血管外科の新しい治療法とくに術式を開発したり、検証するという方向性の研究が多数できた。

この10年弱で約180本近い英語論文それも臨床または臨床に近いものを仕上げることができた。臨床主体の方針からは過剰達成と思えるほどの業績となった。

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教育では現在の研修制度がまだ実施される以前のことで、多数の学生や研修医が学内はもとより全国から参加し賑やかで夢のある時代であった。

学生の海外病院実習では150名以上の諸君を欧米豪の大学病院で学んで戴くことができた。

学生時代にしっかり指導やお世話をすれば卒業後、入局してくれる人が多いという素朴な時代で、毎年平均8名の研修医が京大を含めた全国の大学から京都に参集してくれた。

この数字は心臓血管外科のような少数精鋭の科では突出して大きなものと言われた。

彼らはまもなく全国の関連施設へ赴任して行き、医師・外科医として活躍し腕を磨いて行った。

多数の仲間の活躍のおかげて京都大学心臓血管外科同門会は発展し、年間4000例(全国の約10%)の開心術を行い、結果的に10名の教授を輩出した。

もともと教授職に関心のない臨床人が多かったことを考えるとこれは意外に大きな数だったかも知れない。

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臨床は研究と比べるとかなり回しづらいところで、症例数を約2倍弱に増やし、通常例をほぼ全例元気にし、重症例を一人でも多く救命するのが精一杯で、

病棟・ICU・手術室・麻酔科その他さまざまな制約を解決できず、社会・患者さんへの貢献や教室員の教育の観点から考えた目標数の半分にも届かなかった。

当初から京都大学病院で多数の心臓手術をすることは難しいというのが京大病院内外での大方の意見・忠告であり、常識的にも結果的にもそのとおりであった。

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独立行政法人化が手術数を倍増させる基盤を造ると予測し、実際そのようになった大学病院は旧帝大にも複数あるが、京大病院ではそのような方向性が生まれなかったのは著者の読み違いであった。

ある腕利きの心臓外科医が言われた。「先生、京都大学(病院)はやはり研究機関ですよ」。

研究機関でしっかり臨床をやろうとするのは場違い、それが結論なのだろう。

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新研修制度に関連したメジャー科離れや国公立病院に顕著にみられる医療崩壊、あるいは医学博士や専門医への社会的評価の逆転現象、さらには若手医師の人生観の変化から大学病院の位置づけに揺れが見られる。

大学を離れた臨床現場の盛り上がりをみて、一層それを感じる。

海外の大学病院で見られるように本来大学病院は研究のみならず臨床の実力をつけるためにも重要拠点であり、大切な役割を持った病院であるべきなのであるが。

ただしこうしたジレンマは心臓外科に比較的特異的であり、研究主体の領域の方々には大学は住み心地良い場であるため共感も理解も得にくいと考えられた。

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個人的には、より改良洗練した手術でより多数の患者を救うには循環器専門施設とくに足腰が強く理解も深い私立病院、あるいはそうした方向性を持てる専門施設がこの国ではやはり適していると考えるこの頃であるし、数字はそれを物語っている。

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ともあれ私立の専門施設の良さが本当に理解できるのは、国立大学病院で10年間努力した賜物であり、若手中堅の先生方の行く末だけはまだまだ心配だが、私自身については多くを学べた点で大学病院での努力と経験は無駄ではなかったと思うのである。

ある優秀な医局員がかつて言ってくれた言葉にそれが凝縮されている。「関連病院では心臓外科を学べたが、京大病院では人生を学べました(苦笑)」。

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追記:

その後、京大病院はどうであろうか。

さまざまな事故がその後も起こり、2011年には肺移植や肝移植で死亡事故が起こっている。

大変遺憾なことである。

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しかしかつて京大病院で滅私奉公で医学医療や母校の発展を願い毎週90時間以上仕事し、臨床に力を入れたものとして残念なのは、何か事故が起これば、医師にその解決を押し付けて解決としていることである。少なくともそのように聞いているし医師専用サイトにそうした書き込みが多数なされている。

たとえば透析や血液浄化の回路組み立てを素人同然の若手医師に義務づけたり、ベンチレーターの回路交換を医師が行うことでナースの協力をとりつけたり、世界の標準からはおよそ考えられない形で「解決」が図られていることである。

こうしたルーチンワークこそ熟練コメディカルがチーム全体の責任と検証のもとで行うべきもので、医師はたとえ頭脳は明晰でも熟練度はゼロに近く、まして大学病院では毎年のようにメンバーが変わるため、熟練度の維持ができないのである。

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ちなみに民間専門病院では熟練コメディカルがすべてやってくれて、医師はチェックしたり意見を聴くだけで安全なルーチンができている。これは世界の標準と言える姿である。

労働組合や公務員気質におもねらない、患者中心の、世界に誇れる道を歩んでほしいと思うのは私だけではないのだが、ますますずれて行っているように見える。

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その上、事故のたびに警察署に届け出るのは一見潔いことだが、現実には刑事事件として扱われることとなり、現場で直接関与した人たちが送検されたり、運が悪ければ起訴されるのである。

たとえ事故がシステムエラーであっても刑事事件では現場の個人の罪となるのが決まりなのである。大学病院のこうした現状を聞くにつれ、ただ残念に思うのである。

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執筆:米田 正始
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がんをお持ちの心臓病患者さんについて――入念な治療戦略を【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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医学の進歩によってがんの患者さんも心臓病の患者さんも以前より長生きできるようになりました。

そうした中で、心臓手術を受ける患者さんががんを持っておられるとか、かつてがんのオペを受け今も治療中などのケースが増えました。

 

健康な胃です癌に侵された胃です。複数の病気をもつ患者さんほど、心臓のオペは迅速かつ的確に行う必要があり、心臓外科チームの腕の見せ所ともいえます。

 

また腫瘍免疫を守るための工夫を行っています。

これによって心臓手術の最中もできるだけがんを安定化させることを目指しています。

 

従来のハートセンターのような専門病院ではがんの専門家や検査・治療の体制がありません。

 

がんを持った患者さんが治療を求めて来院される機会が増え癌に侵された肺ですており、私たちもがんの専門家とタイアップし、がんが落ち着いている患者さんや、がん治療・オペの前あるいは後の心臓手術に積極的に取り組んでいます。

心臓・血管の病気を早く治し、もとのがんの先生にお返しして、安心してがんの治療を進めて戴けるようにしています。

手術事例(がんをお持ちの患者さんに対するオフポンプ冠動脈バイパス手術)をご参照ください。健康な肺です

 

 

とくに現在がんから出血していて止まらないなどの危急の状態での心臓手術の場合は総合病院内のハートセンターの利点が活かせます。

 

こうした病院の特長を考えた連携は地域医療や広域医療を良くするために大切と考えています。

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執筆:米田 正始
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お礼と第五回患者さんの会のご案内

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患者さんの会の皆様へ

11月30日日曜日には第四回患者さんの会にご多忙の中をご参加下さりありがとうございま懐かしい患者さんたちと再会できるのは大きな喜びですした。60名以上の多数の方々のご参加を頂き、懐かしい皆さんのお元気なお顔を拝見できうれしく思いました。九州や福島県あるいは山陰地方などの遠方からも数名のご参加を頂き、ありがとうございました。また参加予定の方で風邪等のためこれなかった方も若干おられました。一日も早く回復されることを祈ります。

せっかくの機会にできるだけ役に立つ情報をお持ち帰り戴きたく、今回はさまざまなご質問にお答えするだけでなく、インフルエンザ予防接種や新型ウイルスの話と心臓血管外科でよく使うお薬の話もさせていただきました。また名古屋ハートセンターでの新しい仕事や試みについてもご紹介させていただきました。前向きのコメントやご質問を頂きありがとうございました。皆さんからまた多くのエネルギーをいただいたように思います。

世話人の皆さん(松岡さん、全さん、中村さん)のおかげで、次回(第五回)は平成21年(2009年) 3月15日(日曜日)午後1時から4時まで開催していただくことになりました。場所はまた祇園ホテルになると思いますが、あらためて連絡あるいはこのホームページにも掲示いたします。

またざっくばらんに何でも聞き、学べる場になれば幸いです。なお今回もこれまで参加したくても連絡法がわからなかったというケースが複数あり、皆さまには周囲の患者さん友達にお声をかけて頂ければ幸甚です。

それではまた3月に元気なお姿を拝見できるのを楽しみにしております。

平成20年12月1日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
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第四回患者さんの会のご案内

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患者さんの会の皆様へ

爽やかな季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて以前からご紹介致しております第四回患者さんの会につきまして、止む無い事情のためしばし延期になっておりましたが、世話人の方々とご相談して、1130(日曜日)に開催していただくことになりました。年末が近く恐縮ではございますが、ご参加戴ければ幸いです。

トピックスは「なぜこのお薬を飲むの?」ということで、よく使われるお薬のお話を米田の方からさせていただき、その後自由に(お薬はもちろんその他何でも)質問を頂くという形を考えています。あと時間が許す範囲で「新しい心臓専門病院で患者さんにしたいこと」を予定しています。

なおこれまで参加されたことのない方々も大歓迎です。これまで連絡がつけられず、参加できなかった方とお話する機会がありました。お知り合いの患者さんがおられましたらお声をかけて頂けましたら幸甚です。お問い合わせは米田心臓外科オフィス(電話080-6105-8231)までどうぞ。

それでは皆様のお元気なお顔を拝見できますことを楽しみにいたしております。

 

平成201010

患者さんの会(世話人:全、中村、松岡)、米田心臓外科オフィス

 記

第四回心臓血管外科患者さんの会

場所: 京都祇園ホテル

京阪電車「四条駅」より徒歩約4分/八坂神社近く

京都市東山区祇園町南側555番地
電話: 075-551-2111

日時:20081130(日曜日) 午後1時―4

 

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患者さんの会の皆様へのご連絡

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拝啓

猛暑日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか

さて以前からご紹介致しております患者さんの会につきまして、9月20日(土曜日)を予定し、皆様と再会できるのを楽しみにしておりました。ところが、この10月1日に開院する名古屋ハートセンターの開院式が諸般の事情によりやむなく同じ日になってしまいました。副院長兼心臓血管外科部長の私が開院式を欠席するわけにはまいりませんので、まことに申し訳ないのですが世話人の皆様にお願いし延期していただくことにいたしました。

すでに参加の申し込みを頂いておりました方々や以前の会にご出席の方々など、連絡がつく方々にはご連絡させていただいておりますが、この場でもお詫びとともにお知らせ申し上げます。

名古屋ハートセンターが開院する10月からしばらくは、念のため現地にて没頭すると思いますので、患者さんの会は少し時間をおいて11月下旬を世話人の皆様と相談しております。あらためてご連絡およびこのホームページでもご紹介いたしたく存じます。なおその間も、何かご心配あるいはご不安のある方には電話かメール・FAXその他でご相談戴けましたら、これまでどおりお返事その他の対応をいたします。

敬具

平成20年8月14日

米田正始 拝

追伸:暑い季節とくに最近の厳しい暑さには脱水や熱中症対策が役立ちます。
心臓外科患者さんのためのワーファリン情報サイト
http://blog.livedoor.jp/warfarin_cvs/
をごらん下さい。

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