弁膜症の手術、、、患者さんの想い出2

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Bさんは弁膜症の30代女性です。マルファン症候群のため僧帽弁が壊れて近くの病院で弁形成術を受けられました。しかし複雑な形成でうまく行かず、弁置換手術の予定が立った時点で私の外来へ逃げるようにして来られました。詳細は患者さんのお便り16をご参照ください。

何としてもこどもが欲しい、そのためにぜひとも僧帽弁形成術をと懇願されました。エコーを見てこの弁膜症は形成できると確信したためお引き受けしました。術後のご説明のとき、私も涙してしまいました。そして赤ちゃんを連れて外来に来られたときにもう一度感激してしまいました。

弁膜症の治療はいのちを救うことはもちろん、高いQOL生活の質をめざす時代になったのです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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弁膜症の手術、、、患者さんの想い出1

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想い出のある患者さんは多数ありますが、そのひとり、Aさんは若いころから弁膜症を患われ、僧帽弁置換術を過去に2回受け、3度目の手術のために当時私が勤務していた京大病院へ来られました。

比較的大きなオペでしたが、術後経過良好で間もなく元気に退院されました。

それから数年経って、弁の支えの部分が裂けたため、当時私が勤務していた豊橋ハートセンターに来られました。状態が悪く決死の覚悟で、しかしいのちを賭けた闘いのために来院して下さいました。2008年ごろのことです。

弁膜症 4回目の心臓手術もうまく行き、まもなく元気に退院されました。

その後は心臓は良くても鼻血や下肢の浮腫などの全身や血管の弱さに悩まされることが多く、その都度工夫し我慢と努力で切り抜けられました。

徐々に体力が低下され、数年後の昨年(2013年)、ご自宅で静かに息を引き取られました。その前日まではお元気だったそうです。永い間、本当にご苦労様でした。しかしその間、さまざまな楽しみを持ち、Aさんらしい知的な生活を送られたこと、うれしく思います。私はAさんのブログをいつも拝見し刺激を戴いていました。

もし今、同じ状態の弁膜症の患者さんが来られたら、さらにもう一段優れた手術治療をとも思い、自分やチームを磨いています。それがAさんへの弔いと思うのです。

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弁膜症の恐ろしさ、、、患者さんの想い出

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忘れられない患者さんは多くおられますが、Aさんは残念で忘れられない方です。

70代で慢性腎不全のため血液透析を受けておられたAさんは大動脈弁狭窄症という心臓弁膜症を発症されました。

この病気は高齢者になると急に増える病気で、血液透析の方に起こりやすい傾向があります。

ともあれAさんはこの心臓弁膜症のため透析中も血圧が下がり危険な状態でした。

Aさんは早い時期から手術の必要性をご理解下さったのですが、ご家庭の事情ですぐ心臓手術には進めませんでした。

traf_accident026しかしようやく話がまとまり、手術日も決定してあとはその日を待つばかりとなりました。

入院日も近いある日、連絡があり、Aさんが突然死されたことを知りました。

入院までに仕事をかたづけておこうと思われたのでしょうか、Aさんはいつもの軽四で配達をやっておられたそうです。ところがカーブを曲がり切れずにガードレールに激突し近くの病院に搬送されたときにはすでに死亡しておられたというのです。

これまでこうした事故を起こしたこともないAさんが、突然ガードレールに激突するのは不可解なのでかかりつけの先生にお聞きしたところ、ブレーキ跡もないことから、まず失神発作を起こして、それから交通事故、死亡へとつながったのではないかとのことでした。

私はもっと強く厳しく手術を勧めれば良かったと思い愕然としました。手術死亡率はAさんの場合、せいぜい3%程度、それを考えるとオペしないほうがはるかに危険だったからです。

しかし心臓弁膜症の患者さんたちは症状がないか軽いときにはこのままでずっと生きていけると勘違いしがちです。

それをデータをもとに判りやすく説得力のある説明をすることが必要と痛感しました。

Aさんの死を無駄にしないように頑張りたく思います。

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心臓弁膜症の動向、、、患者さんの想い出

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Aさんは70代 P1120201b女性ですが、大動脈弁狭窄症のため心不全となり来院されました。昨今ではよくある心臓弁膜症です。ある程度のご年齢になれば、動脈硬化が全身に起こり、弁にも同じ変化が起こることがあるからです。

ところがAさんは慢性腎不全をお持ちで、くわえて肝硬変まで合併していました。そのため立派な大学病院でも匙を投げられギブアップ状態でした。

大事なことを「肝心な」と言いますが、大切な肝も腎も心もすべて危険な状態でした。

かんさいハートセンターを立ち上げてまもないころのことで、最初はこんな重症の心臓弁膜症を手術したくないという気持ちがありましたが、このままでは死んでしまう一歩手前でしたので手術いたしました。

お元気になり退院されましたが、こうした現代病の塊のような患者さんが弁膜症で来られる機会は増えました。今後よりしっかりと各科協力と全身サポートのもと、心臓手術を進めて行きたいものです。

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心臓弁膜症とは、、、患者さんの想い出

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Aさんは重症の心臓弁膜症に対して3回目の心臓手術を求めて来院されました。2回目のときに僧帽弁に植え込まれた機械弁が3分の1周はずれ、かつ三尖弁閉鎖不全症を合併していました。

人工弁がはずれ、かつ機能不全になっているのは大変重い状態です。

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心臓が悪いため腹水がたまって妊婦さんのようなお腹になってしまっていました。いのちの危険が迫る状態でした。

そのため20代の若い男性なのにお腹が腹水のため妊娠末期のようにぱんぱんに張って、肝臓も危険な状態になっていました。

このまますぐオペに突入すれば心臓手術そのものはできても体が耐えられない、つまり死んでしまう恐れがあるため、まず時間をかけて状態を改善しました。腹水もずいぶん減り、肝臓もある程度回復したところで勝負をかけました。

心臓弁膜症としてはもっとも末期の、手遅れ状態でしたが、術後経過はまずまず良好で、最終的にお元気で退院されました。術前は仕事などあり得ない状態でしたが、仕事復帰を見事に実現されました。

その後も外来でお元気な姿を見せてくれていましたが、転勤のため遠方へ異動されました。Aさん、あまり無理をせず、またときどき顔を見せて下さい。

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虚血性僧帽弁閉鎖不全症、患者さんの想い出

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Aさんは40代の男性です。今から9年前、当時私が勤務していました京大病院へ来られました。

来院12年前に心カテーテルによるPCI治療を受けられました。その後比較的安定していましたが2年前から心房細動が起こるようになり心不全が進行するようになりました。

来院時の検査では左室はかなり壊れて、駆出率は正常の半分以下である30%まで落ち、左室の形が崩れた結果、虚血性僧帽弁閉鎖不全症も合併していました。

仕事にも支障がでるようになっていましたので心臓手術することになりました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症ですから、まず左室形成術で左室を治し、僧帽弁形成術も普通の方法では効果がないため、私たちが開発した腱索移植術(chordal translocation)という方法で、乳頭筋を前へ吊り上げました。詳細はこちらをご参照ください。

患者さんの左室駆出率は40%まで改善し、僧帽弁閉鎖不全症も消失しました。

患者さんは元気な生活を取戻し、仕事復帰されました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症はそのメカニズムが通常の僧帽弁閉鎖不全症とは違いますので、それを踏まえた形成術が求められます。これまではそのメカニズムが詳細までわからなかったため手術が難しかったのです。たとえば一般によく行われる僧帽弁輪形成術(リングをもちいて弁輪を小さくする)では治しきれないのです。

上記の方法はその新しいコンセプトに沿ったものです。かつて人工弁による僧帽弁置換術に頼っていた治療が年々、弁形成で行けるようになってきています。

その後、この方法はさらに進化を遂げ、現在は乳頭筋最適化術(略称PHO法)として成果を伸ばしています。

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大動脈弁形成術、患者さんの想い出

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今から15年近く前、まだ京大病院で勤務していたころ、10代後半の男性がお父さんと一緒に来られました。

大動脈弁閉鎖不全症で心臓が大きくなっていました。まだ若い、学生ですのでぜひとも大動脈弁形成術を行おうと思いました。というのは若いため弁置換になると機械弁が必要で、それではワーファリンを服用する必要があり青春をのびのび楽しく過ごすには少々障壁になる恐れがあったからです。

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弁は二尖弁で破壊はそうひどくなかったためさまざまな工夫を凝らして大動脈弁形成術を完遂しました。

術後は弁逆流はごくわずかで心臓も小さくなり、元気な学生生活を送られました。やや遠方ということもあってその後直接外来には来られなくなりましたが、聞いたところでは10年後も逆流は軽く心臓は良好で元気に暮らしておられるとのことでした。

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若い学生の青春時代をワーファリンなしで暮らせるようにとの私の願いは実現したことになり、うれしく思いました。その後、多くの患者さんたちがこの大動脈弁形成術で自然な生活を楽しまれることになるのです。

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僧帽弁形成術の再手術、患者さんの想い出

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僧帽弁形成術の再手術でも心に残る患者さんは何人もおられます。 P1120236b

ある立派な大学病院で弁形成を受けられ、逆流が残り、どうしたものかと私までご相談にこられた女性がおられました。

弁をエコーで拝見すると、修復したはずの部位が逸脱しています。人工腱索を立てたとのことだったのですが、その腱索が長すぎたようです。

し かし患者さんにそのようなことはお話しづらい、どうしようかと迷いました。再手術はそう簡単なものではないからです。私たちはたくさんの再手術をお引き受 けして、初回オペと変わらない成績は出していますが、上記のように弁の破壊変形が強いこともあり、いろいろと頑張らねばならないことが多いのです。

何か月か、外来で定期健診していましたが、心不全が強くなり、このままでは危険と判断するようになりました。患者さんも症状の進み具合からこのままではダメと理解して下さり、僧帽弁形成術の再手術をすることになりました。

手術では前回の人工腱索を取り外し、新たに適正な長さと形の人工腱索を付けました。しかし逆流試験をやってみるとそれでも不十分で、その周辺部2か所をさらに手直しし、ようやくきれいに仕上がりました。

かつてはこうした再手術はいちどリングを外して行ったものですが、この頃から、かつてのリングをそのままに、悪いところだけを修復する技を見出し、これで手術時間がさらに短くなりました。

それやこれやの工夫によって、患者さんはすぐにお元気になられ、今度は逆流のない優れた弁で元気な楽しい生活を送って頂けるようになりました。笑顔の患者さんとお会いするたびに、初めてお話ししたころはつらかったねえ、と今は昔話になります。幸いなことです。

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ミックスによるメイズ手術、患者さんの想い出

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Aさんは60代女性です。心房細動に悩まされ、薬もなかなか効かず、あるいは副作用がでて、カテーテルアブレー A306_082ションという治療を受けても効果がなく、最後の望みを心臓外科手術に賭けて来院されました。

創が小さく見えにくく、痛みも少ないポートアクセス法というミックス手術の中でも一番低侵襲な方法を用いることにしました。

右胸に6㎝弱の小さい切開で、左房と右房の両方を完全メイズ手術で治しました。

念のため左心耳は内側から閉じました。これは天皇陛下のバイパス手術のときにも使われた方法で、万一心房細動がぶりかえしても血栓や脳梗塞は起こりにくいという安全安心を得るためです。

術後経過は良好で心房細動はきれいに取れ、元気に退院して行かれました。

外来でお元気なお姿を拝見するたびにあのまま心房細動や薬に悩まされるより心臓手術で根治できてよかったと実感します。

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乳頭筋最適化手術、患者さんの想い出

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◆乳頭筋最適化手術(PHO法)は虚血性心筋症や虚血性僧帽弁閉鎖不全症などの患者さんに威力を発揮します。

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Aさんは60代後半の女性です。心筋梗塞後、心不全が悪化し、岐阜県からお越し下さいました。

心筋梗塞のため左室が壊れて左室瘤と僧帽弁閉鎖不全症が発生していました。

このままでは永くは生きられないため、心臓手術に踏み切りました。

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まず一方向性ドール手術という私たちが開発した左室形成術で左心室をきれいな形とサイズに戻しました。A302_078

ついで僧帽弁形成術です。乳頭筋最適化手術(PHO)で乳頭筋を吊り上げてベストの位置にもどしつつ、左室を守るようにしました。

最後に冠動脈バイパスを3本つけて仕上げました。

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術後経過は順調で、患者さんはまもなくお元気に退院されました。

あれから1年半、元気なお顔やお便りを拝見するたびにうれしく思います。Aさん、これから前向きに楽しくお過ごしください。

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