事例: 大動脈弁狭窄症に冠動脈病変を合併したご高齢患者さん

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近年は弁膜症患者さんも多種多様な病気をお持ちの方が増え、総合的に治すことがより大切になりました。

患者さんは86歳男性です。 弁膜症と冠動脈疾患のため心不全と心肥大が発生していました

大動脈弁狭窄症と上行大動脈拡張、

そして冠動脈2枝病変のため心不全となり来院されました。

他に心房細動と腎機能障害をお持ちでした。

 

左室駆出率38%(正常は60%台)と心臓の力が落ち、

大動脈弁口面積0.66cm2(正常の5分の1以下)、

圧較差53mmで、左室肥大著明(壁厚13.3-14mm(正常は7-11mm))、

このままでは危険なため手術を行うことにしました。

 

全身麻酔のもとで、まず胸骨を正中切開し、

冠動脈バイパス手術に使う左内胸動脈と左大伏在静脈を採取しました。

 

心臓は拡張が強く、かつ上行大動脈には石灰化病変を多数触れしました。


また上行大動脈は直径が5cmで大動脈弁置換術の際に上行大動脈置換術を行うべき水準ですが、

この患者さんの年齢・体力を考え、置換せず無理なく形成することにしました。

体への負担を減らすため、メイズ手術も含めて敢えて行わないことにしました。

 

冠動脈バイパス術、左内胸動脈を左冠動脈前下降枝につないだとことです 体外循環・心拍動下に左内胸動脈を左冠動脈前下降枝に吻合しました

(写真左、グラフト先端部はわざと盲端にする吻合法です)。

上行大動脈を最も硬化の少ない部位で遮断し、これを横切開しました。

 

弁は3尖(弁の可動部分が3つある正常タイプ)で、

大動脈弁は板のように硬くなり、相互に癒着もして、ほとんど開かない状態になっていました。危険な状態でした。 いずれも肥厚・硬化・石灰化が顕著でした(写真右)。

典型的な動脈硬化性の大動脈弁狭窄症の所見です。

 


弁を切除し、石灰を大動脈弁輪まで摘除しました。

サイズは21mmというこの患者さんには十分な生体弁が入ることがわかりました。

静脈グラフトを右冠動脈の枝につないだところです。 ここで右冠動脈の4PD枝に静脈グラフトを吻合しました

(写真左)。

これ以後、右冠動脈への心筋保護液はこのグラフト越しにも注入することにしました。

ここで再びAVR操作にもどり、ウシ心膜弁21mmを縫着しました(写真右)。 人工弁(生体弁)が入ったところです

大動脈は当て布を用いて2層に閉鎖しました。

この時、長期予後を改善すべく上行大動脈を縫縮し、

直径を小さくするようにしました。

 

最後に静脈グラフトの中枢吻合を行い、

117分で大動脈遮断を解除しました。

 

入念なエア抜きののち、体外循環を離脱しました。離脱は容易でした。

人工弁・バイパスとも出来上がりました。上行大動脈もやや細くなりました。 写真上は完成図を示します。

 

術後経過はおおむね順調で術翌日朝、抜管しその翌日、一般病棟へ戻られました。

その後お元気に歩いて退院されました。

術後のMDCTで冠動脈バイパスは2本とも良好に流れ、

左内胸動脈バイパスは良く流れていましたエコーにて生体弁も良く作動していました。

左室の駆出率は59%まで改善し、

人工弁の圧較差も21mmHgまで良くなっていました。

 

静脈バイパスも良く流れています 高齢でかつ動脈硬化が強い患者さんの場合、

こうした大動脈弁狭窄症冠動脈疾患はしばしば合併します。

 

その結果、突然死を含めた危険な状態が心配になる患者さんが増えました。

 

大動脈狭窄症そのものが、動脈硬化と同様に起こる、いわば弁硬化なのです。

いったんこうした状態で心不全が強くなると手術が必要になります。

動脈硬化が強いときは、脳梗塞などのリスクが上がることがありますが、

うまく工夫してそれらを切り抜けることが大切で、

いったん元気なれば心機能の改善も良好で、

その後の予後(見通し)は良くなります。

 

おまけにジーンと来た後日談があります。それはこちらに。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例 病気を多くもった大動脈弁狭窄症の患者さん

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患者さんは、85歳男性。

大動脈弁狭窄閉鎖不全症(圧較差109mmHg)、

三尖弁閉鎖不全症(高度)、僧帽弁閉鎖不全症(軽度)、心房細動心不全、のため来院されました。

糖尿病、心筋梗塞後状態、睡眠時無呼吸症候群、呼吸機能障害などもお持ちでした。

現代の高齢化社会、西洋式生活の時代にはよくある状態です。

 

手術前の胸部レントゲン写真です。心臓が大きく肺にうっ血と胸水(胸に水が貯まる)が見られます。かなり苦しい状態です 上記疾患とくに大動脈弁狭窄症による心不全のためハートセンター内科にて治療を行っていました。

心臓カテーテルにて肺動脈せつ入圧が30mmHgもあり(つまり強い肺うっ血、心不全)、

このままでは退院できず危険なためご家族とも相談の上、準緊急で手術を行いました。

 

全身麻酔下でも肺動脈圧は50mmHg台で肺高血圧・左心不全の所見でした。

 

胸骨正中切開、心膜切開を行いますと、心臓は強く拡張し張っていました。

術前CTにて上行大動脈に多数の石灰化が見られたため、

表面エコーにて最も動脈硬化が少ない部位を調べ、ここを大動脈遮断部位としました。

 

体外循環(つまり人工の心臓と肺)・遮断(心臓を一時止めることです)下に大動脈を横切開しました。

できる最良の部位で遮断しましたが、それでも硬化はあり、

遮断が不十分で血液が少しは流出するためそれを心膜腔へ逃がすように工夫し、弁操作へと進みました。

なお大動脈や基部の内側にも多数の硬化病変がありました。

 

上行大動脈を開けて大動脈弁を調べているところ。弁がカチコチに硬くなっていて開きません。 弁は三尖で、

いずれも高度に肥厚・短縮・石灰化し、

弁口は真ん中のわずかな小穴だけになっていました(写真左)。

高度の大動脈弁狭窄症です。

弁と石灰化を大動脈壁付近まで十分に切除しました。

切除した大動脈弁です。カチコチに硬化しており、弁の本来のしなやかさはありません。 写真左は切除した弁尖で、

写真右は弁切除後・石灰摘除後の大動脈基部を示します。 大動脈弁輪の内側を示します

ここでウシ心膜弁(代表的な生体弁です)21mmのサイズを調べましたが、

患者さんの弁の土台が小さいため入りにくく、

この患者さんの術前状態からなるべく短時間で手術をまとめあげる必要から

あえて最適サイズをほぼ満たす19mmサイズのものを選択しました。

人工弁(生体弁)が入ったところを示します。自然な形で弁が入りました。 そのおかげで基部や弁輪の硬化にもかかわらず、

人工弁の座りは良好でした(写真下左)。

上行大動脈を2層に閉じて

90分で遮断を解除しました。

心拍動下に右房を切開しました。

大動脈基部の拡張のため、視野展開に工夫を要しました(写真下左、拡張した三尖弁輪の一部が見えます)。

三尖弁輪は拡張著明でした。 三尖弁は拡張著明で硬性リング28mmを縫着し、

良好な弁の閉鎖とかみ合わせを確認しました

(写真下右、リングの左側は大動脈基部です)。 三尖弁輪形成後。弁はきちんと閉じるようになりました。

右房を縫縮しつつ2層に閉鎖しました。

エア抜きと止血ののち、168分で体外循環を離脱しました。

離脱には少量のカテコラミン(強心剤のことです)を要しましたがおおむね容易でした。

春日井 右房縫縮後下右の写真は縫縮後の右房の姿を示します。

かなり正常サイズにもどりました。


経食エコーにて大動脈弁(生体弁)と三尖弁の機能良好を確認し、僧帽弁の逆流は術前より減少し良好、右房が小さくなったのを認めました。

術前の肝うっ血のため出血傾向は予想どおりあり、平素より時間をかけて止血をしました。

 

術後の胸部レントゲン写真です。術前よりかなり改善しました。なお術前は状態が悪くポータブルレントゲンで、やや大きめに映りますが、それを勘案しても心臓はかなり小さくなり改善しました。 術後経過は予測よりは順調で、出血もまもなく治まり、

血行動態(心臓や血圧そして全身の血のめぐり)は良好で心配された呼吸機能もまずまずの回復ぶりでした。

 

術前から肝うっ血のために総ビリルビンが3以上に上昇していたため、慎重に治療しましたが、

大過なく軽快されました。お元気に退院されました。

 

近年はこうした生活習慣病のデパートのような患者さんが増えました。

心臓手術もそのあとの治療も大変で、リスクも高くなるのですが、

それぞれの問題に対して手を打っていけばほとんどの場合乗り切れるようになりました。

患者さんやご家族の理解と協力も大変力になりました(ありがとうございます)。

まさに関係者全員のチーム医療ですね。

 

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3) 大動脈弁 ②大動脈弁狭窄症ではどんな注意を? へもどる

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心血管再生先端治療フォーラム

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心臓外科医の日記 第10回心血管再生先端治療フォーラム

 

大学を去ってからは張り切って臨床専門の毎日を送る私ですが、世話人ということでこの再生フォーラムには引き続き参加させて戴いております。難病を何とかして治したいという気持ちからタイで再生医療を何とか続けたり、アメリカの再生医療ベンチャー会社と協力しているということからも大変参考になっています。

 

今回の日記は先端医療関係とはいえ、やや専門的になりました。一般の読者諸賢には内容よりもさまざまな努力と進歩がなされていることを感じ取って頂ければ幸いです。

 

今回は名古屋大学循環器内科教授の室原豊明先生の当番で例年どおり東京で開催されま 再生医療はさまざまな困難を乗り越えつつ進化をつづけています。図はイメージです。 した。世話人の京都府立医大循環器内科の松原弘明先生や慶応大学循環器内科の福田恵一先生、大阪大学の森下竜一先生、先端医療センターの浅原孝之先生、東北大学循環器内科の下川宏明先生らをはじめとするそうそうたるメンバーを始め、いつもながら多数の熱心な先生方が参加されました。

 

今年はとくにユニークな研究の発表があり、また招請講演のエモリー大学レファーDavid Lefer教授の新展開の研究のお話もあり、大変有意義でした。

 

心臓外科臨床医としていくつか印象に残ったものをご紹介します。

大阪にある田附興風会北野病院循環器科の宮本昌一先生、野原隆司先生らのグループは加速ベッドというある種の振動ベッド療法をヘパリン使用と併用して心臓の血管新生治療を行い、心筋虚血や心機能の改善を報告されました。野原先生らは以前からヘパリン運動療法などを用いた血管新生治療の実績が豊富で、それをさらに進められたわけです。この加速ベッドは数年前にアメリカで少し話題になった方法ですが、それをヘパリン使用によってさらに効果的なものにされたようです。ヘパリンによってHGFという血管新生たんぱくが増えますし。私たちが以前から試みているbFGF徐放による動脈新生治療と併用してみたく思いました。

 

佐賀大学の中山功一先生、森田茂樹先生、野出孝一先生らのグループは移植細胞を三次元的に組み立てる方法を開発されました。これまでは細胞を増やすことはできても、臓器を念頭に置いた3次元的組み立ては困難でした。東京女子医大の岡野先生らの心筋細胞シートなどのユニークな試みもある程度の厚さで壁に当たっていた感がありました。それを佐賀の先生方は生け花の剣山のような型をもちいて細胞を3次元的に組み立てることに成功されたのは大変立派と感嘆しました。心筋細胞は相互に接着する力があるため心室壁の3次元構造を再現することも可能で楽しみです。

 

慶応大学循環器内科の下地先生、福田恵一先生らのグループはES細胞やhiPS細胞(一世を風靡したヒトiPS細胞です)から心筋細胞を誘導するのにG-CSFが有用であることを示されました。福田先生は心筋細胞誘導の世界的権威ですが、これまでのノウハウを活かしてhiPS細胞をも使えるものにされたことは以前の研究会でもお聞きしていましたが、あらためてその力量に感嘆しました。あのhiPS細胞が一歩ずつ臨床応用に近づいていることは素晴らしいことです。

 

岐阜大学循環器内科の川村一太先生・湊口信也先生らのグループはマウス下肢虚血モデルで計画的瀉血(血液を抜くこと)が血管新生に役立つことを示されました。瀉血によって血中のエリスロポエチンが増えることでその血管新生作用が発揮されるというわけです。うまくやれば簡単に効果的血管新生ができる可能性があり、ユニークな発想に感心しました。普通は瀉血といえば貧血を連想し、貧血は虚血を悪化させるのが通常ですので、慧眼と思いました。

 

久留米大学循環器内科の小岩屋宏先生・今泉勉先生らのグループは血管内皮前駆細胞EPSに磁性体粒子を取りこませ、かつ虚血部に人工磁場を造ることで、EPSが虚血部に集まるように工夫した血管新生療法を発表されました。こうした局所集中型治療は効率が良く安全性が高いため私たちもbFGFの徐放などで試みて来ましたが、EPS細胞でも実現されたのは素晴らしいと感心しました。

 

東北大学循環器科の松本泰治先生・下川宏明先生らのグループは大動脈弁狭窄症で壊れた大動脈弁が、左室側ではなく大動脈側の内膜剥離や障害が多く、そこでは血管内皮前駆細胞EPCが少なくTRF2の発現も低下していることが示されました。過去にアメリカや日本で大動脈弁を削ったり肥厚部分を切除する試みが行われ、良い結果が出なかったことがなるほどとうなづける内容でした。将来の弁膜症治療の土台になる研究と思われました。

 

他のご発表もいずれも興味深く将来性のあるものと思いましたが、ここでは臨床医として応用できそうなものの一部を記載致しました。

 

一般演題の発表につづいて、エモリー大学のレファー教授の講演がありました。硫化水素H2Sの臨床応用についてのお話でした。

 

この20年ほどの間に解明開発されたガスで心臓血管病の治療に使えるものとして一酸化窒素NOや一酸化炭素COが有名ですが、H2Sはそれに続く画期的なものといえそうです。抗酸化作用、抗炎症作用、アポトーシス防止作用、血管新生作用、ミトコンドリア機能保護作用、心筋保護作用などのさまざまなメリットが示されました。それらの結果、心筋梗塞後に梗塞範囲を減少させたり、心不全時に心機能を保護するなどの改善に結びついたようです。

 

オフポンプ冠動脈バイパスで有名なパスカスJohn Puskas先生らと同じチームで、これからの展開が楽しみです。ちなみに日本の温泉でH2Sが成分の一つになっているところがあるから一度招待しましょうかと持ちかけたところ、受けました。あの臭気ある硫化水素が意外に体に良いとは、昔の人たちの知恵には感心してしまいます。

 

フォーラムの締めとして兵庫県立尼崎病院院長の藤原久義先生が挨拶をされました。かつてこの病院の心臓血管外科をより活発にすべく努力した際にサポートして下さった先生なので大変懐かしく思いました。

 

再生医療は多くの発見や発明に支えられ、着実に進化を遂げて来ましたが、まだまだ未解決の問題も多く、簡単な領域ではありません。しかしこうした立派な仕事を拝見し、これからの展開が期待できると思いました。私自身もせっかくここまでやってきた再生医療をタイや日本でさらに進める努力を続けようと教えられたような気がします。お世話になりましたファイザー製薬の皆さま方に感謝申し上げます。

 

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大切にされる患者道―医療者を理解し医療者に大切にされる

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大切にされる患者道(MK式)

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心臓手術を専門として仕事をする中で、患者さんにこうして頂ければお互いに良い治療と良 こうすれば患者さんも医師医療者ももっと前向きになるいう方法があります い信頼関係ができると思うことがいくつかあります。もちろん私ども医療者にこうして欲しいというご意見もありがたいですので、二方向のコミュニケーションという意味です。

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ツイッターでこれを順次掲載して来ましたが、ツイッターを使っておられない方々にも見れるようにして下さいというご希望を戴きましたので、これまでのものを以下に再掲いたします。心臓手術をご検討中の患者さんはもとより、一般の患者さんにも役立つ内容を心がけています。

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ツイッターは140字という字数制限があるため、十分意を尽くせないところもありますが、いずれもう少し加筆し判り易く改訂する予定です。なおツイッターにつきましては、このホームページの右段をご覧ください。そこから入れます。解説は こちら にあります。

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********(2010年6月28日掲載分までです)*******

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大切にされる患者道

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1.遠慮なく、簡潔に、やさしく聞こうilm09_af10026-s
その1:疑問点や納得行かないことは質問
遠慮して質問しないのは後で問題を大きくしたり誤解を生む元。ただし糾弾調ではなく共に問題を解決しようという姿勢で。質問を嫌がる医師は良くないかも。

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1.遠慮なく、簡潔に、やさしく聞こう
その2:ポイントを整理して聞く
丁寧なお話はうれしいのですが、「うちの近所の犬がこの前、、、」から始まるような長いお話は、多数の患者さんを待たせて診察している医師、特に聴く耳ある医師にとってはつらい事です。

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1.遠慮なく、簡潔に、やさしく聞こう
その3:お互い、質問には答える
医師は診断に必要なことを聴き出すために質問をします。笑顔で横道ばかりそれて答えてくれない患者さんには苦労します。患者さんも同じかも知れませんが。協力してお互いから情報を引き出しましょう。

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1.遠慮なく、簡潔に、やさしく聞こう
その4:問題点はどしどし指摘
病院の職員の対応からトイレの詰まりに至るまで、問題点があれば教えて戴くと助かります。中には現在の医療制度・保険制度では難しい事もありますが、指摘することでそれなりの納得や対策ができるものです

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2.医療の仕組みをある程度は知って下さいilm09_aj06011-s
その1:現行保険制度では夜中に看護師は2(-3)人しかいない
夜中に心配つのって話し込み看護師を独占すると、残る一人の看護師で他の数十名の患者さんを診なければならなくなります。お気持ちはわかりますが。この解決のためには?

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2.医療の仕組みをある程度は知って下さい
その2:高額医療の保険制度はありがたい
大手術は多数の人手と高価な材料が必要で、たとえば心臓手術では300万円前後かかりますが、患者さんの負担は7-8万円程度+諸費です。この制度を皆で 努力し、ぜひ守りたいものです。

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2.医療の仕組みをある程度は知って下さい
その3:医師が夜中や週末に出てきても手当はない ちょっと相談がと夜中や週末に医師をご指名で呼び出す患者さんがおられます。信頼はうれしいのですが、不急の用件で週末が日常的に潰れれば医師の家庭は破壊され医療も崩壊します。

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2.医療の仕組みをある程度は知って下さい
その4:患者さんから見た病診連携
たとえば心臓手術後の患者さんが手術の病院と自宅近くの診療所の両方にかかれば便利さと安全の両立が図れます。病院と診療所の連携で、薬も一括でき、がん早期健診や生活指導なども穴が開きにくい

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3.患者さんには選ぶ権利がある
その1:手術や治療の術者は選べる。堂々と希望をだそう。
手術は一生に数少ない大ごとです。患者さんが医師を指定するのは権利です。そこで遠慮は要りません。ただそこまでに世話になった方々に感謝の心を言葉で示しておくのは人間として大切と思います。

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3.患者さんには選ぶ権利があるhealth_0167
その2:セカンドオピニオンは遠慮なく希望できる
セカンドオピニオンは他の病院の医師に治療法を聞くことです。それによって今までの治療法に納得したり、もっと適した治療法に出会うことも。権利とはいえ、そのための紹介状をもらうときには人として丁重にお願いしましょう。

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3.患者さんには選ぶ権利がある
その3:データも必要ならもらえる
セカンドオピニオンに限らず、データが必要な時には担当医にお願いしましょう。画像は病気によって必要ならCDROMなどで情報豊かに。この時も、遠慮なく、しかし礼節の中で依頼すれば医師は気持ち良く応えてくれるでしょう。

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3.患者さんには選ぶ権利がある
その4:複数の病院・医院にかかるとき
複数の病気がある時に複数の外来が必要になります。その時には飲んでいるお薬のまとめ書きか、薬の現物を持参すると役立ちます。それによりそれぞれの医師が薬の全貌を把握でき重複や欠落が予防できます

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3.患者さんには選ぶ権利がある
その5:質問の窓口はお互い絞る
重症患者さんの治療等でご家族がばらばらでいろんな医師に質問されることがあります。同じ内容をお話してもしゃべる人や聞く人が違えばニュアンスは違います。その違いに一喜一憂するのは無用なマイナス。お互い窓口を絞りましょう。

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3.患者さんには選ぶ権利がある
その6:かかりつけ医(開業医)はレベルが低い?

時々そう質問されます。心臓専門医の立場でみても、ハイレベル開業医さんは多数おられます。一流病院の部長等を経ている先生も多いですし。開業医でできない検査は大病院に下請けに出せば良いことです。大切なのは人であり建物や器械ではありません

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3.患者さんには選ぶ権利がある

その7:総合病院にかかればすべて安心?

総合病院にかかれば自動的に全身すべてを診てもらえるわけではありません。複数の病気にはご自身または良いかかりつけ医でコオディネートするのが安全で す。かかりつけ医+専門科(専門病院か総合病院の)の二段構えが勧められます。

(つづく)

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執筆:米田 正始
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お便り27 収縮性心膜炎の患者さん

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患者さんは50歳男性で

難治性心不全のため大阪から名古屋ハートセンターまで来院されました。

 

ことの起こりは次のようなお手紙(①)を患者さんのお母様から頂いたことでした。

心筋炎後の心筋症のため心不全に陥っておられるものと拝察し

早速名古屋まで来て戴きました。

その段階では場合によって僧帽弁形成術左室形成術などが必要かも知れないと考えていました。

 

検査の結果、重度の収縮性心膜炎であることが判明し、

まもなく手術を行いました。 Ilm10_de01003-s

 

心膜は厚さが1cmにもなるほど肥厚しており、

それも心臓の前後左右ともで、収縮性心膜炎の中でもかなり重い状態でした。

患者さんはほとんど動けないほどになっておられました。

 

手術ではオフポンプ冠動脈バイパスの方法を用いて体外循環を使わず、

肥厚した心膜を徹底して剥離・切除しました。

横隔膜面の心膜も病変著明だっためこれも切除しました。

 

その結果、収縮性心膜炎はほぼ解消され、心臓の性能は大きく改善しほぼ正常レベルにまで回復しました。

患者さんの症状が軽快しお元気になられたのは言うまでもありません。

術前の硬いご表情が柔らかな笑顔に変わったのが印象的でした。

 

退院後に患者さんのお母さんからまたお手紙を頂いたのが②です。

簡潔なお手紙のなかに心のこもったものを感じ、うれしく思いました。

 

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お手紙①

 

前略 突然のお手紙お許し下さいませ。

昭和35年生まれの長男が平成20年1月、急性心筋障害の為3ヶ月の入院、その時心臓の働きは健常者の2分の1ですと云われ多量の薬を服用して現在に至って居ります。

ダラダラ歩きは良いのですが、普通の速度ですと5分もしないうちに胸が苦しくなり顔は黒くなります。又、目の前が暗くなり座り込む事も有ります。

米田先生の事を知りまして、すがる思いでペンを取りました。私母74歳、母ひとり子ひとりですので私の元気なうちになんとか手術をして軽い仕事にでもつかせたいと願うばかりです。本人も強く望んで居り、希望が見えてきたように明るくなっています。

どうぞよろしくお願い申し上げましてペンをおきます。

米田先生御手許へ

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お手紙②

お便り27の実物写真 前略 退院の日はオペ室に入られたとのこと仕方なく帰って参りました。
本当に有難うございました。

帰路桜散る名古屋城の桜並木を歩いておりまして、気がつけば長男が先を歩いて居りまして、声をかけると本人も後ろを歩いている親を見て驚き感激して植込みに散り積もった桜の花びらを両手いっぱいにして頭からふりかぶって居りました。

外見とのギャップがありすぎて苦笑やら泣き笑いでございました。

18日はお伺い致しますが、お忙しい先生のこと必ずお遭い出来るとは限りませんのでお手紙致しました。
くれぐれもご自愛下さいますように。

米田先生御手許へ

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お便り26: メイズ手術の患者さん

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患者さんは40代の男性で、

以前に関東の大学病院で、

肺動脈弁狭窄症心房中隔欠損症(ASD)および心房細動への手術(いわゆるメイズ手術)を合計2度にわたって受けられました。

心房細動が難治性で手術でも治らず、

それを治して下さいと希望してハートセンターへはるばる来院されました。

 

このホームページの弁膜症のページなどでも論じていますように、

心房細動は近年、長期死 Hana_16 亡率の高い、予後の悪い疾患であることが認識されるようになりました。

それは心房細動が心房内に血栓を造りやすく、

それが壁から外れて血流に乗って脳に届くと脳梗塞になるからです。

たとえば野球の長嶋さんやサッカーのオシムさんらのように。

 

そこで心房細動の患者さんにはワーファリンという血栓予防のお薬を用いて対処するのですが、

ワーファリンは切れ味の鋭い薬で、

毎月病院へ通って血液検査を受け、薬の量を微調整することが安全上必要という、

患者さんにとって負担の大きい薬でもあります。

しかもワーファリンを飲んでいても、

時に脳梗塞や脳出血なども起こることがあるという困った状態なのです。

 

この患者さんは昔からよく勉強しておられ、

私たちが普通のメイズ手術では治せないような心房細動でも新しい術式や工夫で何とか治していることを知って、

心房細動をぜひ治してほしいと希望して遠方からお越し頂いたわけです。

 

外来で調べますと、上行大動脈が拡張して瘤になっていましたので、それだけでも手術が必要な状態でした。

一般に心房細動単独で手術することはほとんどないのですが、

他の心臓・大動脈の手術が必要ならそれを治すついでに心房細動も治すというのはガイドラインでも認められていることですので、

手術することになりました。

 

3度目の手術のため、いつもどおり丁寧に癒着(心臓と周囲組織が貼りつきます)をはがし、

それから上行大動脈を人工血管で置換し、

強化メイズ手術(心房縮小メイズ手術)を行いました。

術後経過はスムースでまもなくお元気に退院されました。

今回のメイズ手術は威力を発揮し、無事心房細動も正常リズムに戻りました。

 

以下はその患者さんからのお便りです。

特定の病院等の批判になってはいけませんし、

患者さんに迷惑がかかるのは避けたいものですから、

固有名詞は一部省略してあります。

表現は褒めすぎのところも多々あり、私はそれほどのものではありません。

ただ患者さんの苦悩を何とかしようと努力する執念が人一倍強いだけと思います。

 

より強力なメイズ手術もそうした気持ちから生まれたもので、発表して5年ほど経ちますが、

最近は欧米の学会等でも評価され始め、うれしく思っています。

 

 

******************************

私は、4*年前、先天的に心臓に奇形がある未熟児として、東京に生まれました。

 

当時から心臓の権威と言われていた、**大学病院(以下大学病院)で診察を受け5才までの成長を待ち、

昭和44年に1回目の心臓外科手術が行なわれました。

病名は、肺動脈弁狭窄でした。

心房中隔欠損も認められましたが、成長に従って閉じるであろう。と言う判断から放置されました。

 

Carnation_1 その後、母が心臓病で他界し、父が私を育ててくれました。

私は自分のハンディに負けまいと努力を重ね、美大のグラフィックデザイン科から最大手広告代理店に入社し第一線の現場で10年以上働きました。

その後一人息子と言う事情もあり実家に、

戻り鍼灸師と整体師の資格を取得して治療家の道を歩み始めました。

 

しかし長年の無理のせいか、私の心臓はとても悪い状態でした。

ついに平成20年6月私は急性心不全を起こし、大学病院に緊急入院しました。

検査の結果、慢性不脈脈があり、心房中隔欠損は1cm以上開き、

右心房と大動脈は拡大し、左心室は小さくなっていました。

 

経食道エコー検査では、左心耳のくぼみに血栓が見つかり、

血栓が完全に解けないと手術はできないと言うことで、

1年に渡るワァーファリンの治療が始まりました。

 

翌平成21年7月、2回目の胸部大手術が行われました。

目的は、中隔欠損の閉鎖と不整脈根治のためのメイズ手術でした。

東京ではこと心臓において同大学病院が日本一の病院であると、多くの人に信奉され、

実際多くの心臓病患者は同病院に頼るのが現実です。

 

私たち親子も、必ず手術は成功し、治ることを信じていました。

病院側も最大の努力はして頂いたと思います。

当初、手術は成功に見え、チアノーゼもなくなりました。

しかし、不整脈は残りました。

2度のDC(除細動)を行いましたが、治りませんでした。主治医は、私にワァーファリンを飲み続ける事、将来ペースメーカーを入れる事を進めました。

私は、将来を悲観し深く絶望してしまいました。

人はどんな境遇でも生きなければなりません。

しかし、なぜ自分だけがという無念の思いは、多くの心臓病患者に共通するものだと思います。

 

退院後、悩んでいた時、知人から名古屋に心臓外科専門の病院がある事を聞きました。

大学病院でも治らなかった、今の私の病気を本当に治して頂ける先生が居るのだろうかと、私は、藁をもすがる思いで、インターネットを検索していました。

そして、名古屋ハートセンターを見つけたのです。

そのホームページにあった米田正始先生の聡明なお顔を見て、私の胸は、不規則ながら高鳴りました。

先生のメイズ手術における論文や、輝かしい経歴を拝見しながら、

この先生なら私を助けてくれるかもしれないと思い、

父に相談すると早速、連絡する事を、承諾してくれました。

名古屋ハートセンターに電話すると、

担当の看護師さんが、米田先生の外来の日を速やかに決めて頂き、

先生にお会いすることができる事となりました。

私は茨城県に住んでいましたが、

先生に会うためにはどんな距離も厭わないと、名古屋行きを決めていました。

 

同センターの最新のCTなどの検査機器での検査後、初めて米田先生のお話を聞くことになりました。

先生は、私の画像データを見ながら、

一般に行なわれている簡易型メイズ手術と本物のメイズ手術では、その成績に差があると話され、

メイズ手術開発者のアメリカの先生と、この問題について議論されるそうです。

ですから名古屋ハートセンターでは、米田先生が本物のメイズ手術を行う事ができるので、

殆どの確率で心房細動を取る事かできる。とおっしゃっていました。

 

更に、先生は、わたしの拡張した上行大動脈瘤の将来の危険性を指摘され、

人工血管に置換する事を勧められました。

先生はこれらの話を、気さくにごく自然に話され、私は夢でも見ている心境でした。

同時にこの時、私の最後の救世主は、米田先生以外にいないと確信しました。

時期を見て、父との面談も経て、先生は心よく執刀を約束してくれました。

先生は、京都大学教授時代から日本を代表する心臓血管外科の名医として知られていた方で、

私は本当に幸運な患者の一人だと思います。

 

平成22年3月31日、私は三回目にして、

大学病院では治らなかった心房細動を治すための新メイズ術と、

最難関心臓血管外科手術と言われる大動脈瘤置換術を、

名古屋ハートセンターで、米田先生の執刀により受ける事となりました。

 

そして、集中治療室で、目を覚ました時、手術が成功した事を聞かされました。

 
米田先生からお父さんに電話してあげなさい。と言われ電話すると、

父は、嬉しさで号泣していました。

米田先生の優しさと偉大さには、心から感謝しています。

その後度々、先生が回診に来られ、私は順調に回復して行きました。

 

私は、大学病院と、米田先生の新メイズ術にどのような技術的な違いがあるのかわかりません。

しかし、はっきり自らわかる事は、拍動が以前より安定して、自分は助かったという実感につながったと言う事です。

あのままでは、一生薬を飲み続けなければならず、いつ脳梗塞になるかわからない、と言う状態から、

米田先生の手術で、健常者に近い状態にして頂いたという事です。

 

私は、幸運な偶然と皆様のお陰で、先生の手術を受ける事ができました。

しかし、全国の多くの心臓病患者は、先生の様なスーパードクターの存在をもっと知る必要があり、

心臓血管外科などの高度な専門医療おいては、

一般の社会通念では理解できない、技術に差がある現実を知る必要があると思います。

 

開かれた高度な日本の医療の発展と実現のために日々努力される先生方に対し、

我々患者も社会も国も深く理解を示し、敬意を持つ事が大切です。

米田先生も、日々後進のご指導にご尽力されている事と思いますが、

この分野において一人でも多くの経験豊かな先生の様な、名医が育つ事を、一患者として願ってやみません。

 

最後に私の治療のためにご尽力頂いた、米田先生はじめ若き先生方や、

ハートセンターのスタッフの皆様に心より感謝を表し、

私の手記とさせて頂きます。

本当にありがとうございました。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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古巣トロントで充電

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先週1週間、トロントのトロント総合病院(Toronto General Hospital)で充電して来ました。

かつて、20年近く前に6年間修業させて頂いた病院で、当時のレジデント仲間や指導していた学生が成長して教授や准教授になっており、恩師David先生らも一度遊びにおいでと言ってくれるので共同研究と私自身の生涯研修ということでお邪魔しました。

オンタリオ州会議事堂から見たトロント総合病院です。見えている建物のほとんどが病院です。 病院自体がずいぶん拡張や改修され大規模になっていたため最初は道に迷うこともありましたが、それなりに迷路の攻略法を覚え、そこそこ自由に動けるようになりました。

私が修行していたころお世話になった医師、技師、看護師さんたちが多数残っておられたのはうれしい驚きでした。医師は同業ですから学会等でちょくちょく顔を合わす機会があるのですが、看護師さんたちの多くとは本当に20年ぶりでした。しかしそのほとんどの方たちが私の名前を覚えていてくれて、感動してしまいました。あれから20年!と皆時間の経つ速さに驚いていました。あの頃みな若く可愛い看護師さんたちだったのですが、今はみな指導者的な立場となりりっぱなプロで、しかししばらく話しているうちに20年前の雰囲気にもどるのが不思議でした。

病院の職員が長続きするというのは素晴らしいことと思いました。これは待遇や条件もさることながら、世界のトップレベルの医療を提供するチームの一員であるという誇りが大きいと感じました。人間を動かす最後の切り札は誇りや喜びであると浅学ながら信じるものです。

北米の病院は国立大学病院といえども時代の動きに俊敏で、その進歩の速さは日本の民間病院以上です。あらためて感心しました。

たとえばカテーテルベースの生体弁手術(たとえばTAVI・経カテーテル的大動脈弁植込術)のめどが立つと、カテーテルや高性能CTまで装備し ハイブリッド手術室。つまり心臓手術とカテーテル操作の両方ができる部屋です。 た巨大な手術室を造り、すでに実績をあげていましたし、再生医療も大きなセンターができ、多数の研究者や技師さんらを擁して活発に臨床治験を推進するといった具合です。

1週間の滞在中に15例ほどの心臓手術を見学できました。洗練された僧帽弁形成術や、大動脈基部手術弓部大動脈手術小切開手術冠動脈バイパス手術、そして新しいカテーテルによる弁置換手術(TAVI)などでした。その間、雑談を含めたディスカッションというよりおしゃべりの連続で、いくら昔からの友達だらけとは言え、ちょっとはしゃぎすぎたと反省しています。しかしおかげでさまざまな手術や治療の良い点や弱点、欧米の最近の傾向などを具体的に学び確認できました。また日本でのさまざまな努力をお話し、それは使える!とけっこう受けました。このように遠慮なくものが言えて初めて切磋琢磨できるようです。

第二の故郷のようなところですので、病院関係や友人関係などで毎日何らかのパーティを開いていただき、感謝の塊になっていました。皆さまありがとうございます。また日系の永住の友人たちにも同様にして戴き、本当にうれしく思いました。お礼にひとつでも何かお役に立てるよう、健康相談を行いました。最近私が力を入れている科学的ダイエット法(低炭水化物・高脂肪食)が結構受けました。また私のこのホームページの写真ギャラリーを見て下さっている方がありがたいコメントを多数下さいました。

カナダの医療は原則無料つまりすべて税金でまかなわれています。貧富の差なく誰でも医療を受けられるという点では今や日本を超えて世界一の制度と思いますが、それを支える国や病院の努力は大変なものです。こまかい薬や物品の一つ一つにまで規制があり、倹約また倹約です。私が修行中だった20年近く前からこの傾向はあり、たとえばがんの放射線治療を6週間から4週間に削られたり、心臓手術後の予防的抗生物質を術後3日間を1日半に抑えられたり、なかなか大変でしたが、それはいっそう厳しくなっています。

何事も社会全体の英知と協力を通して皆で立派なものを創り支えるという姿勢が大切なのだとあらためて思います。

タイムトンネルのような、夢のようなトロントでの1週間でした。自分がどこから来て、どういう努力をし、どこへ行きたいか、あらためて判ったような気がします。トロントの皆さん、そしてこの出張を支えて下さった名古屋の皆さん、私が帰国するまで待ってくれていた患者さんたち、ありがとうございました。

平成22年6月22日

米田正始 拝

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【第十三号】 ツイッターのお勧め

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【第十三号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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いつの間にか時間が経ち、すでに汗ばむ季節となりました。

皆さん如何お過ごしでしょうか。私は名古屋でのなじみも増えて毎日忙しく手術に治療に走り回っています。多くの方々のご協力やご支援に感謝申し上げます。冬よりは夏の方が心臓にはやさしい一面がありますが、それでも夏バテや脱水など注意したいことはあります。

最近、巷でツイッターなるものが流行しつつあり、皆さんの中にもすでにそれをやって楽しんでいる方もおられるかも知れませんし、関心をお持ちの方もあるかも知れません。

ツイッターとは「つぶやく」という意味で、ネット上で短く発言するのです。それをフォロー(聞いてくれる、読んでくれる)する人たちがいてくれて、お互いコミュニケーションが出来上がります。さまざまな人たちの意見が、さまざまなテーマで聞けて、学ぶことが多く、ニュースなどは迅速で話題豊富にもなります。

皆が自由に発言できるという意味ではネットの掲示板に似ていますが、その方をフォローする方にしか見えないため、掲示板よりは仲間内での発言となります。また多くは実名かそれに近い自己紹介をしているため、発言もそれだけ責任のある真面目なものが多く、根拠ない誹謗中傷は稀で、社会悪も生まれにくい構造になっています。

ツイッターの発言は、140文字以内で書き込むのですが、それだけに手軽に、思ったことや感じたことを言えるのです。140字は読むのにちょうど便利で、慣れれば結構多くの情報が入ります。

最初はフォローしてくれる人がゼロから始まりますので、誰も見てくれないということからつまらなく思えるかも知れません。お伝え頂ければ私もフォローさせて戴きますので、そこから徐々に増えて行き、面白くなるでしょう。

やってみようと思われる方は以下のようにしてみて下さい。
まず私のHP、心臓血管外科情報WEBのトップページ右段中ほどにある「Twitter」をクリックして下さい。それでTwitterのページに入れます
そこで登録をして下さい。画面の指示に沿えばできます
それから上段の「友達検索」をクリックして下さい。そこでたとえば「米田正始」と入力すればツイッターの私のページへ行けます。

そこではこれまで私がつぶやいた事や、他の方々のつぶやきで面白いものを別の方々に披露するリツイートした内容が並んでいます。私なりに皆さまにお役に立つものをと考えて出しています。
そこで「フォローする」というボタンを押せば、それ以後は私のつぶやきが画面に自動的に出るようになります。見つけ次第、なるべく早く、私からもフォローします。これをりフォローと言います。それでお互いのつぶやきが見えるようになりますし、ダイレクトメッセージのところをクリックすれば直接言葉のやりとりもできます。

実はこのツイッターが面白く、学ぶところが多く、新たな友達や旧友と「再会」するなど楽しくて、メルマガが一時休止状態になっておりました。お詫び申し上げます。

今後は仕事の合間を使ってホームページHP、メルマガ、ツイッターなどを有機的に組み合わせ、情報や交流の幅を広げたく思っております。

皆さまのご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。

敬具

米田正始 拝

(このメールマガジンは心臓血管外科情報WEBの中の心臓外科医の日記ブログのコーナーから転載いたしました)

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ツイッターのお勧め

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最近、巷でツイッターなるものが流行しつつあり、皆さんの中にもすでにそれをやって楽しんでいる方もおられるかも知れませんし、関心をお持ちの方もあるかも知れません。

ツイッターとは「つぶやく」という意味で、ネット上で短く発言するのです。

 

それをフォロー(聞いてくれる、読んでくれる)する人たちがいてくれて、お互いコミュニケーショ ツイッターではいつも皆が集まっていろいろ雑談している雰囲気になります ンが出来上がります。さまざまな人たちの意見が、さまざまなテーマで聞けて、学ぶことが多く、ニュースなどは迅速で話題豊富にもなります。


医療や医学の問題を真面目に論じることもあり、役立ちますし、そこからさらに調べ物をすればかなりの情報となります。話が心臓外科手術にも及ぶことがあります。


皆が自由に発言できるという意味ではネットの掲示板に似ていますが、その方をフォローする方にしか見えないため、掲示板よりは仲間内での発言となります。また多くは実名かそれに近い自己紹介をしているため、発言もそれだけ責任のある真面目なものが多く、根拠ない誹謗中傷は稀で、社会悪も生まれにくい構造になっています。

ツイッターの発言は、140文字以内で書き込むのですが、それだけに手軽に、思ったことや感じたことを言えるのです。140字は読むのにちょうど便利で、慣れれば結構多くの情報が入ります。

最初はフォローしてくれる人がゼロから始まりますので、誰も見てくれないということからつまらなく思えるかも知れません。お伝え頂ければ私もフォローさせて戴きますので、そこから徐々に増えて行き、面白くなるでしょう。

 

やってみようと思われる方は以下のようにしてみて下さい。

1.まず私のHP、心臓外科手術情報WEB(旧、心臓血管外科情報WEB)のトップページ右段中ほどにある「Twitter」をクリックして下さい。それでTwitterのページに入れます

2.そこで登録をして下さい。画面の指示に沿えばできます。
それから上段の「友達検索」をクリックして下さい。そこでたとえば「米田正始」と入力すればツイッターの私のページへ行けます。

3.そこではこれまで私がつぶやいた事や、他の方々のつぶやきで面白いものを別の方々に披露するリツイートした内容が並んでいます。私なりに皆さまにお役に立つものをと考えて出しています。

4.そこで「フォローする」というボタンを押せば、それ以後は私のつぶやきが画面に自動的に出るようになります。見つけ次第、なるべく早く、私からもフォローします。これをりフォローと言います。それでお互いのつぶやきが見えるようになりますし、ダイレクトメッセージのところをクリックすれば直接言葉のやりとりもできます。

今後は仕事の合間を使ってホームページHP、メルマガ、ツイッターなどを有機的に組み合わせ、情報や交流の幅を広げたく思っております。

TwitterはこれまでのHPやブログ、メルマガ、掲示板の良さを取り入れ、弱点を補った新しいITツールです。共に楽しみませんか。

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
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フィンランドの議論ルール

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「はてなブックマークニュース」に次のような興味深い記事が載っていました。抜粋を示しますと、

フィンランドは教育先進国で、学習到達度調査(PISA)において、毎回上位にランクインし「学力世界一」と言われる国です。そのフィンランドの小学生が考えた「ルール」が、今話題になっているそうです。

『図解 フィンランド・メソッド入門』という本があります。この中でフィンランドの小学5年生が フィンランド式 議論のルール 作ったとされる10個の「議論のルール」が紹介されているそうです。

 

1. 他人の発言をさえぎらない

2. 話すときは、だらだらとしゃべらない  

3. 話すときに、怒ったり泣いたりしない

4. わからないことがあったら、すぐに質問する  

5. 話を聞くときは、話している人の目を見る

6. 話を聞くときは、他のことをしない

7. 最後まで、きちんと話を聞く

8. 議論が台無しになるようなことを言わない

9. どのような意見であっても、間違いと決めつけない

10. 議論が終わったら、議論の内容の話はしない

 


これらのルールに背くと、「ルール違反しているよ」と注意されるそうです。

このルールを拝見し、私は反省することしきりでした。周囲の人たちにも是非参考にして頂きたく、このブログにも掲載しました。

良い議論をしたいものです 私の乏しい経験の中では、大学教授とくに功なり名を遂げた名誉教授レベルの先生方は、含蓄ある話をして下さる方が多い半面、7.ができない方が散見されるように思います。こうした方々はある意味、優秀すぎて凡人の話は結論まで予知できていて、ゆっくり聴くのが苦痛なのでしょうか。

実力派で腕に覚えのあるインテリは1.の問題が見られることがあります。賢い女性で2.のお付き合いをさせられ苦しかった覚えがあります。例外だとよいのですが。

5.はシャイな日本人ではありがちではないでしょうか。恋愛ドラマでも大事な話をお互い反対方向を見ながら真剣に論じているシーンは欧米人には奇異に感じるのではと思ったことがあります。

熱血漢で自力で何でも切り拓いて来た創業者タイプの方では9.逸脱のパタンが時にあったように思います。議論内容があまりに乏しく欲求不満が貯まりがちな官公庁タイプの会議ではついつい8.のパタンが頭をよぎったものです。

私などは頭の切り替えが遅く、いつまでも考え込んで10.のパタンに陥ったことがちょくちょくあったことを猛反省しています。心臓手術のときは十分な考察だけでなく頭の切り替えととっさの的確な判断が大切ですから、議論でも同様にすべきと思いました。

小学校の時からこうした議論の正しい方法を学び磨けば、その後の人生の中でずいぶんお互いの理解が深まり楽しく仕事や遊びができるのではないかと思いました。皆さんは如何でしょうか。

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