サリドマイドの原因が解明

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かつて悲劇の合併症を世界的に引き起こした睡眠剤・サリドマイドが四肢の奇形を起こすメカ図はイメージです ニズムが最近、解明され3月12日付の米科学誌サイエンスで発表されました。朝日ドットコムによれば、東京工業大(半田宏教授ら)と東北大のグループが、サリドマイドの副作用にかかわる体内のたんぱく質を見つけ、動物実験で確かめたのです。サリドマイドが手足の発育に重要なセレブロンというたんぱく質と結合し、セレブロンの働きを邪魔するために、手足の小さいこどもが生まれることがニワトリやゼブラフィッシュをもちいた動物実験で証明されたわけです。

医療と医学のつらい歴史の中で画期的な業績と思いました。

科学的に因果関係を証明するには時間がかかることが多いのです サリドマイドで悲劇的な合併症が1960年ごろから発生してメカニズム解明まで実に50年近い年月がかかったわけで、医学・科学の研究とはそれほど大変で難しいものであるというのを改めて痛感します。

では悲劇の発生の防止に50年もかかったかと言えばもちろんそうではありません。臨床医の経験や勘、そしてデータの検討から早い時期にサリドマイドの有害性は指摘されていました。行政がそれを直視した対策をとっていなかったことが被害を大きくした主因でした。

そこで一つ思うことは、科学的「因果」関係が重要であることは確かであっても「連関」関係だけでも急場をしのぎ多くの人たちを助けることができるということです。昔アメリカのスタンフォードで虚血性僧帽弁閉鎖不全症の研究していたころ、僧帽弁や左室のジオメトリーの変化と僧帽弁の逆流の因果関係を調べていて、それがほぼ因果関係と言えるレベルのものであっても、完全に科学的にそうとは言えない、そうしたときに連関関係 associationという表現で正確を期すように恩師に教えられたものです。あるいはより根拠と確信があれば「おそらく」とか「あり得る」因果関係、などの表現を使うなどですね。

つまり科学的な厳密さを追求することの意義は大きくても、それに長大な時間がかかりそのまず患者の安全を確保できるのが臨床疫学や医療統計の貢献です 間に多数の犠牲者がでるよりは、統計上の連関だけで警告と予防措置をとり、被害を食い止め、その間に真実を証明すればよいわけです。現代の生物統計学、医療統計学、臨床疫学は多数の犠牲者を救えるだけの方法論と信頼性を持っていると思います。とくにしっかりしたデータベースがある領域ではそれが一層容易です。

たとえば妊婦のサリドマイド服用と手足の発育障害との相関関係が判れば、一万人単位の妊婦さんでデータをとらせて頂き、服用薬剤などをすべて記録し、足の発育障害の原因になり得る要素たとえば心臓や骨その他の遺伝性疾患などもできるかぎりチェックし、それ以外の一般データとともに多変量解析すればサリドマイドが有力な要因として統計学的に浮かび上がってくるはずです。

かつての日本では学問や科学を厳密に追求するあまり、時間を浪費してしまい、その間に多数の被害者を出したケースが薬害などで多々あり、学問や科学のありかたにある種の疑問を抱かせることがあったことは残念なことです。かつてアインシュタインは言いました。科学研究とは単に知識や情報を増やすためにやるのではない。ヒューマンな目的性が必要という主旨です。サリドマイドの経験からこうしたことを再確認すべきと思います。

2010年4月11日 米田正始

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心臓弁膜症の名医とは―冠動脈の名医と必ずしも同じではありません【2025年最新版】

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最終更新日 2025年1月11日

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◾️弁膜症を熟知していることが必須です

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心臓弁膜症の名医とは?とよくご質問をお Fotosearch_CCP08004受けします。

心臓病の名医心臓手術の名医と共通するところも多いのですが、

以下の状況を熟知し、適切な治療(お薬か手術かなど)を適切なタイミングで行い、

ベストの寿命とQOL(生活の質)を取り戻してくれる医師、

ということになると思います。

したがって心臓弁膜症を深く理解していることが必要です。

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◾️弁膜症の診断は心エコーが中心です

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弁膜症の診断の多くは心エコーでつきます

カテーテルでは弁の逆流はカテーテル先端の位置が必ずしも一定でなく、

かつ造影剤という血液とは異なる液体を急速注入するため不正確な情報になることがあります。

Fotosearch_CCP02029かつてはエコーが未発達でしたのでカテーテルによる造影検査がGold Standard(ゴールドスタンダード)つまり検査の主流を占めていましたが、現在はそうとは限りません。

エコーを専門とする内科の先生に心臓弁膜症の名医が多いのはそのためもあります。

 

さらにカテーテルによる情報は圧の情報(たとえば左室圧など)が主でこれは有用です。

その一方、カテーテルによる造影の情報は影絵だけですので、

科学的な心臓生理学の観点から必要な左心室の各部位での壁運動性、左室の収縮機能(血液を送り出すちから)と拡張機能(血液を吸い込むちから)、

左室壁の各部位の厚さやその変化、

乳頭筋や腱索の3次元位置や機能の情報、

左室壁の各部位のねじれやたわみといった詳細な科学情報はエコーが断然有利です。

 

それもあってカテーテル中心の冠動脈の専門家が必ずしも弁膜症に詳しくないというケースがよく指摘されています。

 .

◾️心不全など重症弁膜症がらみの場合も心エコーが必須

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心エコーは外来や入院時のみならず手術室でも大活躍します。手術室に高性能機を常備し、常に役立つ情報を得られるようにしています。 また心臓弁膜症によって左室や右室が

拡張(心室壁が薄くなり心室容積が大きくなります)したり

肥大(心室壁が厚くなります)して変化を来たします。

 

中には拡張型心筋症心不全に進行するケースも多々あります。

 

これらの詳細な情報は上記のようにエコーが有利です。

冠動脈の検査とは異なる視点が必要となります。

 

MRI検査は、よりきれいな画像やエコーやカテーテルとは違う観点の情報も得られるため有用です。

ただし手術中やICUでは使えませんし、

町の診療所や地方などでは制約が大きく、

総合点ではエコーのほうが上と思います。

まして医療費節約を社会全体で求められている今日、高価なMRIの乱用を避けることが社会にやさしい医療です。

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◾️虚血性の僧帽弁閉鎖不全症でも心エコーは重要

図 虚血性MRメカ

近年、狭心症に対してカテーテル治療PCIを繰り返し行ったり、大きな心筋梗塞のあとは左室が大きくなり形も崩れて虚血性僧帽弁閉鎖不全症というある種の弁膜症になることがあります。

これは弁の病気の形をした心室の病気で、最近はこの病気が増えています。

これを治すには僧帽弁や左心室の各部位のジオメトリーを詳細まで理解していることが必須です。

それでリモデリングと呼ぶ心室の二次的変化をジオメトリー変化として良く理解している医師が名医になりやすいのです。

結果的にエコーに詳しい医師が虚血性僧帽弁閉鎖不全症を治せるということになります。

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◾️内科と外科の協力に慣れていることも弁膜症では必須

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弁膜症の治療そのものにつきましては循環器内科と心臓外科の両方の弁膜症は冠動脈とは別の視点が必要です。同時に内科も外科も重要です。 視点が必要です。つまりハートチームですね。

弁そのものは薬では治しづらいため治療の中心は心臓手術つまり外科医の仕事になりますが、

その前後のキメ細かい調整はお薬で行うため、

内科と外科の両方が大切になるわけです。

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◾️そこで、弁膜症の名医とは、、

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こうした状況から心臓弁膜症の名医とはステントやPCIなどの冠動脈のそれとは必ずしも同じでなく、

弁膜症に独特な科学的視点をもった、かつエコーなどの画像診断に詳しい内科医と外科医ということになるわけです。

実際、冠動脈の優秀な専門家が、症状が少ないからと大動脈弁閉鎖不全症の患者さんをそのままにして弁形成術のタイミングを逸したとか、

僧帽弁閉鎖不全症の患者さんを左室がかなり壊れてから外科医に紹介して弁形成術後も心機能低下が残った、

長生きできないなどのケースが知られています。

 .

そのため患者さんのみならず開業医の先生や一般内科の先生方におかれましても、

弁膜症の治療方針を決めるときに弁膜症に詳しい循環器内科や心臓外科あるいはその両方の意見を参考にして戴くのも一法かと思います。

これによって日米のガイドラインが活かせるというものです。

 .

質問1:今後の心臓弁膜症の名医の方向は?

 

回答1:弁膜症の領域でも今後は内科と外科が一体化した診療が増え、名医も内科外科の融合型になるかも知れません。

胸骨を切らずに早い社会復帰・仕事復帰を図る 小切開低侵襲手術(ミックス手術、MICS) あるいはポートアクセス法とか、

カテーテルをもちいた弁置換手術たとえば TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術) などは一体化診療の一例です。

それにも足の血管からカテーテルを入れる方法と左胸を小さく開けてそこから心臓の先端部経由で直接カテーテルを入れる方法があります。

現時点ではカテーテルの弁はまだまだですが、

将来、選択肢が増えれば、個々の患者さんに最も適した方法を吟味して選ぶ時代になることでしょう。

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日本マルファン協会につきまして―ますますの発展を期待しつつ

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日本マルファン協会は「マルファンネットワークジャパン(MNJ)」の発起人である古藤雅代さんが亡くなられた際に、

ご遺族の希望で造られた「古藤雅代マルファン基金」がそのルーツです。

その目的はMNJの情報収集や周知活動 を支援することです。2004年3月のことでした。

 

日本マルファン協会は「情報は命を救う」「情報は生きる支え」を基本理念とし、

全てのマル情報は命を救う、情報は生きる支えです ファン団体・関連組織との協調・連携を重視し、

社会に開かれた誰もが参加できる活動によって、

マルファン症候群を取り巻く環境改善を行なう事を目指しているということです。

大変重要なことと思います。

日本マルファン協会のHPによりますと、医療問題として以下の事柄が挙げられています。

・日本人における診断基準、類似疾患との鑑別が確立されていない

・人によって症状の差が大きく、その理由が解明されていない

・マルファンの中でも早期に解離する人がいるが、その原因および特定方法が定まっていない。

・ロサルタン等内科的治療の確立

・根本治療の確立

・治療リスク、負担の低減

・患者のための総合的な医療的、生活的管理ガイドラインが出来ていない

・医療における情報格差・地域格差の問題

・地域医療ネットワーク

・専門クリニックの拡充

・救急医療の問題

救急医療体制は大切です これらの諸問題のうち、私たちは心臓血管専門施設としてとくに地域医療や救急医療を中心に力を入れています。

たとえば同じ大動脈瘤でも現在のEBM(証拠に立脚した医療)にもとづき安全第一の方針で、過剰治療は避けつつ、

いざという時にはいつでも受け容れる方針を患者さんとまえもって相談し、その時に備えるようにしています。

実際それによって急性大動脈解離(解離性大動脈瘤)を発症しても患者さんは冷静に対処され、

協力して病気を迎え撃つ形で直ちに対応して事なきを得たという経験もあります。

 

小さな専門病院ですので専門クリニックという形でアクセスを限定せず、

心配時はいつでも対気軽にアクセスできることはマルファン症候群の治療にはとくに大切で有用です応という形をとっています。

ロサルタンも使える患者さんには使用し、

他科・他病院との連携を進め、できることはするようにしています。

同様に眼科や整形外科などとも連携を取るようにしています。

心臓や血管だけでなく患者さんの全身を守ることが大切だからです。

また日本マルファン協会のHPによりますと社会問題として以下のものが未解決です

・疾患が知られていない問題

・疾患への偏見

・家族や周囲の疾患自体への理解不足の問題

・学校生活での問題

・社会生活の問題

・患者にとって有益な地域情報が得にくい問題

・患者本人や家族の疾患自体への理解不足の問題

・運動の問題

啓蒙活動も大変重要です。マルファン症候群を皆が自分の問題として捉えることができれば大きな進歩が得られるでしょう これらも心臓血管専門病院としてできることが一つでも多くなるように努めています。

なかでも疾患への偏見をなくすことは医療者として大切と思います。

マルファン症候群は遺伝しないタイプ(つまり突然変異型)が多数あることが知られており、

国民全員の問題なのです。こうしたことも機会を見つけては啓蒙するようにしています。

 

将来的には手術も不要、薬さえ不要、遺伝子治療や再生医学的治療で未然に問題が解決され、

最終的には発生そのものが予防されるべき疾患と思います。

その日が来るまでの間、ハートセンター心臓血管外科は常時スタンバイ状態でマルファン症候群の患者さんや日本マルファン協会を守り支援する役割を果たしたく思います。

 

*今年8月8日、日本マルファン協会で講演させて戴きました。学ぶところが多く、楽しく有意義なひとときでした。

日本マルファン協会 ニュース

5b) マルファン症候群について へ戻る

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手術前に経食道エコー検査は必要でしょうか?

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このご質問をちょくちょく頂きます。お答えは次のとおりです。

 .

心臓手術の前準備としての経食道エコー(略して経食エコー)は不要なことが多々ありま経食道エコーは多くの有用な情報が得られますが、患者さんが苦しいため、なるべく麻酔中に行うようにしていますす。」

もちろん患者さんの状態・病態によりますし、情報は多いほうが良いのです。

とくにその道のスペシャリストがいる病院では、苦痛少なく精密な経食エコーができるところもあり、有意義な検査となります。

しかしそうでない施設では以下のように工夫できるという意味もあります。

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手術の適応つまりその患者さんにとって手術が必要かどうかは殆どの場合、症状や身体所見、通常の心エコーとドップラー、心電図、胸部レントゲン、CTなどで判定できます。

冠動脈の病気等では心臓カテーテルも活用します。

そして手術することがその患者さんにとって、手術しない場合よりも安全上有利と判断できれば手術適応として手術を前向きに検討することになります。

経食エコーをやるまでもなく、手術適応が判断できることは多いです。

 .

いまひとつの理由は経食エコーが患者さんにとって比較的苦しい検査であることです。スペシャリストがいない病院での話ですが。

普通の胃カメラでも吐き気がして苦しいのにそれより太い経食エコーの管を起きている患者さんの口の中に入れるというのにはつらいものがあります。

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それでは経食エコーは不要かというと決してそうではありません。

通常の経胸壁エコーとは異なる角度つまり後ろ側から心臓を見るため、経胸壁エコーでは得られないの性状や逆流・狭窄などの所見が判ることがあります。

とくに肺が膨張気味の患者さんのばあい、通常の経胸壁エコーはあまりきれいに見えないため、経食エコーの価値は大きくなります。

 .

手術中こそ経食エコーが活躍し、しかも患者さんに苦痛がありません そこで私たちはこれまで、通常エコーその他の検査で手術適応があると確実に判断できれば、

手術のときに、麻酔をかけて眠って頂いてから、苦しみなく経食エコーを行い、

より詳細な情報を得て、そのまま手術へと進むようにして来ました。

こうすることで、患者さんには苦痛なく正確な手術が可能となるわけです。

手術の完了までに再度経食エコーにて心臓が良くなっているのを確認し、

患者さんが眠っておられる間に経食エコーを抜いてしまいます。

 .

もちろんどうしても経食エコーが必要ということもあります。

その時は上記の心エコー専門家に患者さんにその必要性をお話し、麻酔剤などをうまく使って眠っておられる間に検査することにしています。

 .

どんな検査にも長所だけでなく短所があります。

経食エコーの長所と短所をしっかり把握し、

患者さんに苦痛が少ない形で長所をうまく活かす、これが良いと考えます。

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春日井市の臨床疫学研究会にて

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昨日、臨床疫学研究会に参加して来ました。愛知県春日井市のアカデミック開業医・灰本元質問が多数でて活気ある講演会になりました 先生の主催で定期的に開催されている会です。お世話になっている春日井市医師会の先生方も多数参加され楽しいひとときでした。春日井駅前の勝川ホテルで行われました。

今回は九州大学社会環境医学講座・環境医学分野教授の清原裕先生が長年積み重ねてこられた「久山町研究」の成果の一部を解説して戴きました。題して日本人のメタボリックシンドロームの実態と課題。私の専門である心臓血管外科手術とは直接関係はないのですが、かつてカナダで術後の患者さんのフォローなどをやっていた経験から、疫学研究やEBM(証拠にもとづく医学医療)そのものにも関心があり参加しました。

久山町は福岡県にある小さな町ですが、市街化調整区域のためあまり激しい開発や人口増減がなく、疫学調査にぴったりの特徴を持っていました。清原先生らは40年以上の時間をかけて住民の健康調査を行い、さまざまな疫学調査をつづけて来られました。脳卒中の研究から始まり、糖尿病、高血圧などの生活習慣病、さらに認知症やがんまで研究が広がっています。

世界でも類のない、質の高い疫学データで、今後医学や医療のために役立つでしょう 世界最長のコホート研究という我が国の誇る研究モデルに成長し、日本の病気の特徴や時代的推移なども含めた貴重なデータを提供しておられます。

疫学調査というのは地道な努力の膨大な、しかも長年月にわたる努力が必要な、大変な仕事です。とくに感心したのは追跡率が100%近く、剖検率も90%に達していることです。とくに剖検率90%とは、その住民のどなたが亡くなられても、ご遺族にお話しお願いして許可を得て大学病院で解剖させて戴く、それが亡くなられた住民の90%でできたということです。これは驚異的な努力、そして地域住民から信頼され感謝されていた証で、それ自体が感動に値するものと思いました。

ちなみに昨今の大学病院では入院中に病気でお亡くなりになった患者さんの剖検率でさえ30%を割り込むほどになっており、平素密な付き合いのある入院患者さんでも剖検の承諾を戴くのはこれほど難しいことを考えると、地域住民の90%というのはお見事というしかありません。キーは誠意と平素の努力かと拝察いたしました。

それらの緻密なデータがあって初めてさまざまな病気の研究ができます。今回のご講演ではメタボは日本人の生活や病気の内容にも着実に影響を与えて来ています。健康管理が大切ですね メタボリック症候群が40年間に激増し、脳卒中ひとつを例にあげても内容が細い血管の閉塞から太い血管や心臓由来という欧米化傾向がはっきり示されました。心疾患についても同様の変化が示されました。狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患や高血圧その他の循環器病・心臓病への影響が示されました。今後、テーマがメタボリック症候群からがんその他に広がるでしょう。心臓血管手術にも参考になるデータが得られるかも知れません。

講演の後、懇親会でも話題がひろがりました。地道な努力を40年続ければここまで行けるというお手本のような素晴らしいお仕事を拝見し、元気を頂いたように覆います。春日井市医師会の先生方もみな勉強になったと喜んでおられました。清原先生、灰本先生、春日井医師会の先生方貴重で楽しいひとときをありがとうございました。

2010年3月21日 米田正始 

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心臓病の名医とは―その全体を見渡せる医師であることが必要です【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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◾️心臓病の名医とは?

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「心臓病の名医」とはどういう医師でしょうか。さまざまな基準があるように思います。

患者さんから見た名医はやはり「良く診てくれる先生」でしょう 患者さん本位、話をよく聴いてくれる、

診立てが良い、しっかり治療してくれる、

いつでも受け入れてくれる、

心が通じる、気があうタイプが合う、やさしい、

といった医師ですね。

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とくに内科系について言えば冠動脈をカテーテルでしっかり治してくれる、

カテーテル検査が上手い、

外科系で言えば心臓手術が上手い、

その成績が良い、などなどが心臓病の名医として、とりあえず思い浮かぶことでしょう。

 .

◾️いろいろある名医の基準

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医者の世界ではそうした患者さん目線の選び方だけでなく、illust213

病気や薬のメカニズムの解明に功績があったひとを心臓病の名医と言うこともあります。

また新たな治療法や薬の開発も重視される傾向が見られます。

 .

大学や学会ではアカデミックな会の性質上、

どうしてもこう した研究領域で功績があったひとを名医あつかいする傾向がありますし理解できることです。

ただし現代の研究はネズミや細胞などを用いた分子生物学が主であり、大学の先生はどうしても堅苦しくなりがちですが、研究面での貢献は大きいのです

研究の実力は臨床の実力とはあまり関係がないのが残念です。

実際こうした研究は基礎医学も理学部も薬学部も大して変わらないという傾向があり、

臨床とは別世界であるという指摘は当たらずとも遠からずというのが現状です。

 .

医学も医療も細分化され、専門家が進んだ現在、

患者さんのニーズと必ずしも合致しない心臓病の名医が存在する傾向はある程度止むを得ないのかも知れません。

どれほど優秀な医師でも一人の人間がすべてを網羅するのは至難の技になっています。

それで心臓病の名医にもさまざまなタイプがある、と言えましょう。

 IP08_F18.

◾️患者さん目線での「心臓病の名医」

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すると患者さんから見た心臓病の名医とは、

前者つまり研究ではない、純然たる臨床の名人ということになります。

しかしそれさえ、さらに細分化されているのが現状です。

 .

たとえばカテーテル治療の先生はどうしても冠動脈などの血管に情熱が注がれるあまり、

他の領域たとえば心不全の管理や弁膜症の治療には後ろ向きになるケースがあります。

医師の世界ではそうした優れたスペシャリストを「luminologist」つまり「土管屋さん」と呼んで尊敬とともに視野狭窄を指摘することがあります。

同様に不整脈の専門家を「電気屋さん」と揶揄する向きもあります。

心臓外科医などは「butcher」つまり「肉屋さん」などと冷やかされる始末ですが言い得て妙という意見もあります。

 .

各分野、各職種のノウハウを結集することが総合力を高めます。一人の医師ではできないことができるようになりますしかしそれらの超スペシャリストのお蔭で難しい狭心症や不整脈や弁膜症心不全その他が治るわけで、

批判するのは酷かも知れません。

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◾️すると、なすべき事は

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それほど細臨床医学は分化・高度化が進んでいるわけで、

要はチーム全体で広い視野を確保することが重要ではないかと思います。

 .

患者さんにおかれましてはそうした医師person_0387の現状を知って戴き、

必要ならセカンドオピニオンを他の医師や病院でもらい、

そこで得た知識をもとにご自分でもネットなどで勉強されるのも一法かと思います。

 .

◾️心臓手術の観点からは

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外科つまり心臓手術の観点からは、

172496525科の先生とくに専門医の中には多忙のあまり心臓外科の最近の状況を必ずしもご存じない方もあることを踏まえて、

循環器内科のみならず外科の両方の意見を聞かれることを勧めます。

すでに欧米では冠動脈の治療で循環器内科と外科の両方からなるハートチームの意見を聴かないと治療法の決定ができない規則を実行しているところもあるほどです。

 .

私の経験でも他病院の内科と外科で心不全のため心臓手術は危険と判断され、

ただ死ぬのを待心臓病の名医とは心臓病の名チームのことかも知れません つよりは生きるチャンスにかけようと私の外来へ来られ、

十分な検討の結果、実績と照らし合わせて「これは治せる」という判断のもとオペを受けて元気に回復された患者さんは少なくありません。

それは誰かが間違っていたとか、誰かが手を抜いたとかではなく、

その患者さんの病気の治療経験をたまたま私たちが豊富に持っていただけなのです。

 .

◾️要はハートチームの結集

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そういう私も自分で判 199821536断がしづらい病気や状態の時に内科や他病院の先生方の御意見を頂いたり、

超難度のケースでは海外の先生の御意見を戴くことさえあります。

要は総合力、友人も含めたチーム力の結集と思っています。

つまり心臓病の名医とは心臓病の名チームと言っても過言ではないのでしょう。

また熱い建設的議論を楽しく交わせる先生も心臓病の名医と呼びたくも思います。

 .

患者さんや開業医の先生方あるいは循環器内科の先生方におかれましては、

こうした現状をもとに、

方針が決めづらいケースをどしどしご質問ご照会頂ければ幸いです。

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10. よく戴くご質問

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2010年3月17日 懐かしの患者さんと再会しました

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医師と患者さんとの絆というのは本当に強いものがあります。

といっても何かのすれ違いや不運なことが重なってその絆や信頼が揺らぐことはあり、

お互いいつも注意と努力が必要ですが。

 

かつていのちをかけて、覚悟を決めて、一緒に病気と戦い、

そして誰もが祈るだけだった状態から元気になって下さった患者さん(Mさん)と先週末、8年ぶりにお会いしました。

感慨深く、このブログで少しご紹介したく思います。

 

Mさんは当時12歳の女の子で、以前に弁膜症の手術を他チームで受け、

その後心筋症・心心移植しかないという状況でした。しかしその心移植もほぼ不可能、そこで決断が必要でした不全が再発・悪化したため心臓手術のため私のところへ来られました。

今から8年前のことです。

 

Mさんの心臓は左室駆出率が7%未満つまり健康な心臓の9分の1のパワーしかなく、

以前に取り付けられた人工弁も動きが悪くなり、

危険な状態でした。

心臓は大人サイズ以上に腫れ上がり、あと何週間もつかという危篤状態でした。

 

あまりの心臓の弱さに、前向き治療を自認していた私でさえ、これは心移植のほうが患者さんのためになる、と考え、

当時、国立循環器センターの北村惣一郎先生や大阪大学の松田暉先生らをはじめとする心臓移植の先生方にコンサルトしたほどです。

その時に頂いたコメントは、

「たしかにこの患者さんには心移植が必要です。

しかしこの年齢と体サイズに合う心臓はいつ入手できるかまったく予想がつきません。」とのことでした。

当時はまだこどもの心移植は認められていませんでした。

カンファランスのあとで個人的にご相談しても「米田先生、頑張って」と真面目にお願いされ、とぼとぼと帰途についたことを覚えています。

しかし生きて戴くためには手術しかない、

手術は左室形成術再弁置換術しかないという結論に達し、

さまざまな角度から内外の智恵を集めて検討しました。

 

そしてMさんの部屋へ行って、手術をお話をしました。

「こんな苦しいときに嫌な話しで申し訳ないんだけど、君の心臓を治すには手術しなければいけないんだよ、手術させてくれる?」と聞きました。

まだ12歳のこどもさんですし、

これまで心停止やマッサージ、補助の風船ポンプ、人工呼吸、ICUその他さまざまな苦難を味わっておられるだけにきっと断られると心配していました。

ところがMさんの返事は「先生、手術して下さい」という、何と二つ返事のOKでした。

おそらく当時の京大小児科の先生方が患者さんとの信頼関係の中できちんと相談して下さったことと、

患者さんやご家族の強い意思、生きることへの姿勢などの賜物と思いました。

 

ともかく本来心移植すべき12歳の患者さんのいのちを、

それも患者さん自身の口から託されたわけで、

私は思わず襟を正したのを覚えています。

大変な手術と治療にはなるが、皆、絶対助けるという決意で臨みました。

 

この経験は海外へも発信しました 手術は当時(2002年)としてはまだあまり知られていないセーブ手術僧帽弁の再置換術、

それらを心臓を止めずに行いました。

念のため海外の先生や当時葉山におられた須磨先生らの御意見も戴き、

手術前にほぼ設計図が頭の中にできていました。

 

心臓手術は予定どおりの形で完遂できました。

心臓も予想以上に改善し、少しずつパワーが戻って来ました。

しかしそれまでの永く苦しい心不全の闘病生活でMさんの足腰は弱り切っており、

呼吸する力さえ足りない状態で、

何週間レベルの時間をかけてゆっくりと人工呼吸器を離脱し、リハビリを進めて行きました。

そして3カ月ほどたったころ、

彼女が病院から学校の卒業式に行く時には、チームの関係者は皆、涙したものでした。

 

Mさんに行った手術はその後アメリカ(ロッキーマウンテン弁膜症シンポジウム)やドイツ(ライプチヒ)の国際シンポジウムでも講演させて戴き、

他の患者さんの治療にも役立てて頂きました。

国内の講演などでもご紹介し参考になったとよく言われました。

 

その後もMさんの経過は定期的に小児科の先生からお聞きしては安堵していましたが、

私が京大病院を去ってから2年近く時間が経っており、

Mさんのことを思い出しては気にしていました。

そこへ昨年末、欧米のジャーナルにMさんの手術とその後の回復の報告が論文として発表されました

英語論文244番をご参照下さい)。

危機的状況の心不全から心臓手術で回復し7年以上元気に暮らしていることを知りました。

京大小児科の先生方は当時の心臓チームの努力がこうして報われ、

他の心不全患者さんの役に立つようにと論文発表して下さったものと感動しました。

 

その論文のおかげで小児科の先生方とお話したのがきっかけになり、

Mさんファミリーと久しぶりの面談になりました。

 

8年ぶりにお会いするMさんは立派な社会人になられ、

お母様も以前と変わらぬ活発な雰囲Mさんが描かれたイラストです。社会活動の一つとしてやっているそうです。 気で、うれしく思いました。

お父様は所用ができて来られませんでした。

Mさんが元気に毎日を暮らしているだけでなく、

社会に役立つような仕事をしたいと、勉強し、

また社会活動もやっておられることに感心しました。

 

あの厳しい状況、あとどのくらい命が持つかわからない状況で

自ら決断し手術に真正面から向き合ってくれた12歳のMさんの雰囲気は大人になっても同じでした。

来年は成人式に参加したいとのことでした。

先日のオリンピックのあと引退を決めたスピードスケートの清水選手のことばを借りれば、

私たちのやって来た治療は間違いではなかった、と思いました。

 

またMさんの重症心不全への心臓手術と治療の経験が、他の患者さんや先生方のお役に立っていることをMさんとお母さんは大変喜んでくれました。

その日、急用で来れなかったお父さんも、

私が京大病院にいた頃に心の中で熱く支援してくれていたサポーターであることを知り、じーんと来ました。

 

京大病院時代に感動することは何度もありましたが、

そのほとんどはこうした極限状態の患者さんの決断と頑張り、そして見事なカムバックでした。

この感動がある限り、いくら割に合わない3K職種と言われても心臓外科医は辞められない、そう思いました。

Mさん、お母さん、お父さん、ありがとうございました。

 

米田正始

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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新しいダイエット法、糖質制限食ダイエットについて―コロンブスの卵?

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私は心臓血管外科医ですのでメタボリック症候群の治療そのものはこれまで内科の先生方にお願いして来ました。

それは今後も同じと思いますが、手術前後の患者さんの治療の中で、私たち心臓血管外科医も積極的にメタボリック対策を進めることが患者さんに益するところが大きいと思うようになりました。

 

油が悪いのではありません、炭水化物が問題なのです。またカロリーがすべてでもありません。 名古屋ハートセンターがスタートした2008年10月から予想を大きく超える患者さんたちが手術のために来院下さり、

1年で約150例の心臓と大血管の手術ができました。

2年目は約200例、そして5年目には300例近くに達し、関係の先生方に深く感謝しております。(註:米田正始は2015年7月から仁泉会病院(外来や術後のリハビリ入院で)および医誠会病院(手術や治療)に異動いたしました)

毎日の仕事のなかでたまたま春日井市の開業医・灰本クリニックの灰本元先生から新しいダイエット法を学ぶ機会を得ました。

それが低炭水化物・高脂肪食ダイエット法(ローカーボダイエット、糖質制限食)です。

 

灰本先生はこのダイエット法(糖質制限食)を7年前に開始され、

豊富な経験の中で、血糖値を改善し、中性脂肪や悪玉コレステロールを下げ、善玉を増やし、それと同時に体重をしっかり減らせることを証明されました。

アメリカの国際ジャーナルでもその成果を発信しておられます。

その理論と実データを知り、私もこの低炭水化物・高脂肪ダイエットは良いと確信するに至りました。

 

そこで患者さんにいろいろご指導する前に、私自身でこのダイエット法(糖質制限食)を実践してみました。ステーキや焼き肉などもお腹いっぱい食べましたがダイエット成功しました

何しろ炭水化物を食べないときは脂肪はしっかり食べて良い、ということですから、

焼き肉やステーキ、ハンバーグ、魚は好きなように食べ、

天婦羅や唐揚げ、トンカツ・ヒレカツもしっかり食べ、

野菜にはドレッシングやマヨネーズ(!)をたっぷりかけて、

そこそこ運動はして半年間で8kg減量できました。

 

血液所見も、もともとすべて正常範囲でしたが、それがいっそう良くなりました。

中性脂肪や悪玉コレステロールがさらに減り、善玉は増えていました。

お腹にあった脂肪がぺしゃんこになり、体が軽いこと、比較的長時間の手術でも体が軽いため楽です。

灰本先生に感謝!しつつ、それを名古屋ハートセンター、かんさいハートセンターの心臓病患者さんや奈良の実家(米田医院)の患者さんに使うようになりました。

よろこびをおすそ分けするつもりでやっています。

真剣に取り組んで下さる患者さんでは効果は絶大です。

体重が5kg以上減った方は皆、上記の血液データや血圧などが明らかに改善していました。

中には10年も切れなかったインシュリン注射が3か月で切れ、しかも血糖値も良好安定したとか、

何年もA1cHbが10を超えていたのが、薬を変えずにダイエットだけで数か月で7まで改善したという方もありました。

 

私の友人の中にこの方法(糖質制限食)が気に入り、1カ月で8kg減らしたひとがいます。

ちょっと凄すぎますが、それほど効くのです。

2-3kg減らした方はすでに多数おられます。

それでも血液のデータ、とくにA1CHb(1か月の平均血糖値)やTG(中性脂肪)、HDL(善玉コレステロール)などは大きく改善していました。

 

このダイエット法(糖質制限食)は自然の摂理に合ったところがすばらしいと思います。

昔、弥生時代に稲作稲作は画期的な素晴らしいことでしたがインシュリン分泌を刺激し、肥満のもとになったと言われています。ご飯は上手に食べることが大切です。 が始まるまでの何百万年の間、人類は木の実や動物昆虫などを食べて、低炭水化物・高脂肪食を普通に実践していたのです。

現在もエスキモーの方々は同じタイプの食事を摂り、糖尿病も高脂血症もありません。

つまり現代人は膵臓が耐えられないほどの多量の炭水化物を食べた結果、メタボリックになってしまったのです。

 

そのカギはインシュリンを体にあまり出させないというところにあります。

インシュリンとは別名肥満ホルモンですから食べたものを体に脂肪として取りこんでしまいます。

このダイエット法ではインシュリンを膵臓にあまり出させないため、膵臓にも良いですし、

あまったエネルギーは体に取り込まれることなく尿に溶けて体外へ出てしまうのです。

ケトン体という形で。なのであらゆるメタボに有用なのです。

 

なお動物性の油を摂りすぎるはよくない、なるべく植物性をと指導しています。

事実、最近のNEJM誌(世界でいちばん信頼されている臨床系雑誌です)でも動物油を摂りすぎるときの弊害が報告されました。

逆に、植物性の食べ物をしっかり食べているとその弊害がむしろ普通以上に減るとされています。

 

ということでこの新しいダイエット法(糖質制限食)は心臓血管手術の患者さんの中で肥満が気になる方に米田がお教えしています。

奈良県の患者さんには米田医院の私の外来(月2回)で指導致しております。

より高度なダイエット(糖質制限食)には愛知県春日井市の 灰本クリニック・灰本元先生にお問い合わせください。

 

また日本ローカーボ食研究会という研究会を灰本先生らと立ち上げ、HPも公開致しております(日本ローカーボ食研究会ホームページ)。

ここで最近の欧米の論文やデータも得られるでしょう。医師、医療者とくに栄養士、看護師、薬剤師、製薬業界、食品業界、厚生労働省、農林水産省などの広範な支援で日本の国民健康増進に役立つでしょう。

ご期待下さい。

 

このダイエット(糖質制限食)では炭水化物(糖質)を食べないときに脂肪を摂ることを勧めていますが、

それが従来の食事栄養指導と正反対に見えて混乱する患者さんや医師が少なからずおられます。

しかし私の意見では、まったく矛盾しないのです。

 

というのは従来の食事栄養指導はご飯などの炭水化物を食べるという前提で脂肪制限やカロリー制限を行っていたのに対し、

ローカーボ食(糖質制限食)では炭水化物を食べないときに脂肪を食べて良い、と指導しているからです。

つまり炭水化物を同時に食べるかどうかという前提が違うだけなのです。

 事実、ローカーボ食(糖質制限食)でも炭水化物を同時に食べるときには脂肪はほどほどに、少な目にして下さいと指導しています。

 

つまり従来の食事栄養指導とローカーボ食は矛盾するのではなく、

その前提条件(炭水化物摂取)を変えたともいえるわけです。現

代のコロンブスの卵ともいえましょう。

 

そういうことでこれまでの食事療法で社会貢献して来られた糖尿病の先生方や管理栄養士の方々にもどしどし参加し、

より立派なものをいっしょに造って頂ければと願うのです。

お知らせ:平成25年11月に待望の教科書「正しく知る糖質制限食」が出版されました。単なるダイエット本ではなく医学書としても通用する内容をもった、医療者や患者さん向けの書です。ぜひご一読下さい。

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名古屋徳洲会総合病院について

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名古屋徳洲会総合病院は昭和61年に愛知県春日井市に開設された総合病院です。

救急医療や地域医療等に力を入れている活発な病院と言われています。

 

私自身は名古屋徳洲会病院とはまだ直接の交流はありませんが、京都で仕事をしていたこ新しい心臓血管外科の立ち上げでも共同プロジェクトとしてお世話になりました ろから宇治徳洲会病院の心臓血管外科の設立や運営・支援で密な協力関係がありました。

何度も出張手術や応援をさせて戴きました。

また大阪の松原徳洲会病院でも同様の連携で徳洲会病院さんには大変お世話になりました。

神戸徳洲会病院とも人事交流がありました。

また関連の葉山ハートセンターでもセミナ―で発表させて頂いたり関東エリアの患者さんをお連れして手術させて頂いたこともあります。

そもそも学生時代に沖縄南部徳洲会病院で実習させて頂いたのは貴重な経験でした。

 

それらのご縁で徳洲会病院の総帥・徳田虎雄先生とは何度かゆっくりお話する機会があり、いろいろなことを教えて頂きました。

小医は病気を治し、中医は患者を治すが、大医は社会を治す、

とは徳田先生のお言葉ですが、それを実感することがよくあります。

 

当時、大学病院にいた私は手術も検査もなかなかスムーズに予定が立てられない、

待ち時間が長すぎる、若手医師の雑用が多すぎる、

何より患者さんへの負担も多い状況にすっかり落ち込んでいました。

徳田先生と京都に本格的なハートセンターを造って、地域医療から医学の世界発信までやろうという夢を相談させて頂いたことを今も覚えています。

 

私たちは専門施設として広域医療にも努力しています。地域医療と広域医療、プライマリケアと専門医療、それらの広い広い守備範囲の中でさらなる協力体制が必要と思います 名古屋の医療関係者の皆さまの中には名古屋ハートセンターと名古屋徳洲会病院が競合すると思われている向きもあるかも知れません。

時にはそういうケースもあるかも知れませんが、それ以上に地域医療の中で協力できることも多いと思います。

私自身、他の病院ではあまりやらないような手術たとえばバチスタ手術

特殊な左室形成術や複雑な弁形成術

あるいは心不全への手術などを多数行って来た経緯から、相補的な協力ができると考えています。

 

さらに私たちの名古屋ハートセンター心臓血管外科の患者さんのかなりの部分は名古屋市の外、さらには愛知県の外から来られていることからいわゆるバッティングとは違う次元の仕事ができつつあると思います。

また緊急の心臓血管手術が同時に多数必要な時などにも地域としての協力体制が役に立つと考えています。

 

これまでの徳洲会さんとの連携プレーを思い出しつつ、今後、私たちなりにお役に立てることができればと願うものです。

 

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全国心臓病のこどもを守る会 について

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全国心臓病のこどもを守る会は心臓病のこどもさんとご家族を守るため昭和38年に発足した会です。多くの方々の支持と支援を受け、5300世帯の会員を有する大きな組織に成長し心臓病のこどもさんは手術で病気を治したあとは病気離れできることも多いのですが、何らかの注意、健康管理をしておけばより安心できるというケースも少なくありません ました。

私(米田正始)はかつて天理よろづ相談所病院で研修を受けていた1980年代に、こどもの患者さんが多数おられたことからこの会の活動はよく聞いていました。とくに日本の小児循環器のパイオニアのひとりである田村時緒先生から教えられたこともあり、機会があれば患者さんのご家族に入会を勧めていました。

長い留学時代を経て1998年に帰国し、京大病院で仕事をするようになり、この会の代表的な方々と交流ができ、講演などもさせて頂いたことがありますし、会誌に投稿させて頂いたこともあります。いつも皆で学び、考え、助け合って行動して行く雰囲気が素晴らしいと思いました。

先天性心疾患はこどもだけの病気ではなくなりました。大人になって発症あるいは悪化したり、生活習慣病と合体して重くなるなどのケースも増えました 大学病院から民間の成人専門の心臓専門病院へ移動した現在は、直接は心臓病のこどもさんと接する機会はありません。ところが15歳以上に成長された心臓病の患者さんたちの手術や治療をお引き受けする機会が増え、またこの守る会との交流が増えそうな状態になって来ました。

この数年間で修正大血管転位症心室中隔欠損症心房中隔欠損症動脈管開存症エプシュタイン病右室二腔症肺動脈弁狭窄症、ファロー四徴症、先天性僧帽弁閉鎖不全症IHSS(HOCM)三心房心大動脈二尖弁、部分肺静脈還流異常症、一次口欠損症の心房中隔欠損症、ファロー四徴症、心内膜床欠損症、冠動脈ろうバルサルバ洞破裂左室緻密化障害その他さまざまな成人先天性心疾患の手術・治療をさせて頂きました。

なかでも修正大血管転位症に続発する三尖弁 211247569閉鎖不全症(通常の心臓でいう僧帽弁閉鎖不全症)はもともと力が弱い解剖学的右室に大きな負担をあたえ、患者さんの予後を悪くする病気です。

私たちは先天性心疾患治療の経験と、拡張型心筋症の治療経験の両方を豊富にもつため、お役に立てる位置にあります。

そのため心臓手術はもとより、術後の長期間の薬物治療で心臓を守ります。できれば心移植や補助循環なしで元気に生きられるように、しかし必要な場合は移植施設との連携を密に取ります。

 

また川崎病は先天性心疾患ではありませんがこども時代に多い病気です。冠動脈が瘤(こぶ状にふくれた状態)となり放置すると危険ですが、ガンマグロブリンなどの治療を行えば治せます。ただしその子が大人になってから冠動脈が硬化や狭窄を起こすことがあり、要注意です。

心臓病のこどもさんたちの治療成績が改善し、皆が元気に大人になって行けば、その中に二次的な心臓病で治療が必要な方も増えるのが予想されたことです。心臓病のこどもたちを一生涯、長期間守れるシステムが重要と思います。そのことは成人先天性心疾患の治療には複数の視点やノウハウを集めて考えることが大切ですかつて留学していたトロント大学のトロント総合病院に成人先天性心疾患外来があり、多数の患者さんが来院しておられたことから、日本でもいつかはこうしたことをやりたいと思っていました。

私たちはハートセンターという足腰が強い、自由度の高い環境を活かし、小児科や小児心臓外科の先生方とも相談したり適宜応援に来院して頂いたり、遠方からの患者さんのための夕方外来にも対応したり、さまざまな工夫を凝らしています。

成人の先天性心疾患の患者さんはまだまだお若い年齢の方が多く、仕事が忙しかったり美容にも関心が強かったりするため、創が小さいミックス手術(MICS、小切開低侵襲203829112手術)が安全にできる場合はなるべくそのようにしています。

こども病院ではできない、おとな病院でもできない、そうした治療を提供できればと努力しています。幸い上記のように多数の患者さんによろこんで戴いており、さらに実績を積んでいく予定です。

全国心臓病のこどもを守る会は今後、患児とご家族を生涯にわたって支援して行く会に発展して行くのではないかと思いますし、心友会という15歳以上の(元)患者さんたちの会も活発に動いているようです。その中で私たちも貢献ができればうれしいことです。


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