お便り71 ミックス手術で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん

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大動脈二尖弁は先天性心疾患であるためこどもの時期から弁膜症で苦しむ患者さんは少なくありません。

患者さんは15歳の高校生で、弁の逆流が強くなり、これまで元気に活動しておられたのが最近心不全の症状が出てきたため相談をお受けしました。

Ilm23_he01001-s九州の地元では患者さんのニーズにあった手術ができないということで遠方からお越し下さいました。

このままで行けば近い将来、人工弁による弁置換になることが確実となったため、弁形成か自己心膜での弁再建を考えるようになりました。

さすがに私たちはこうした弁膜症の治療にちからを入れて来たため、選択肢もいつくかあり、ご本人・ご家族と時間をかけて検討しました。

その結果、これからの学校生活や将来の妊娠出産などを考慮し、極力弁形成で行こう、それならまだ弁があまり壊れていないうちが良いということで、ガイドラインでもすでに手術推薦のレベルにあることもあって、この時期に弁形成を行うことになりました。

手術で弁はやや硬く短縮もしていましたが、弁形成で細かい調整を行い、きれいなかみ合わせを取り戻すことができ、逆流は消失しました。大動脈二尖弁の場合、上行大動脈が弱いためこれを補強し、将来のカテーテル弁(TAVI)にも対応できるような工夫を合わせ行いました。そうすれば将来の再手術をかなり先延ばしにできるからです。

ミックス法で創もかなり小さく、夏服でもほとんど見えないレベルに抑えることができました。

術後経過は良好でまもなく元気に退院されました。

外来で笑顔を見せていただき、本当によく決断し、健康を勝ち取って下さったと、頭が下がります。15歳でもこれだけの熟考と決断をしてくれたことに感動を覚えます。またそれを落ち着いてご支援くださったご両親さまにも頭が下がります。

以下のお手紙はその患者さんのお母様からの感謝状です。

*************お便り**************

 この度は、米田先生はじめ、深谷先生、北村先生、看護師の皆様方には大変お世話になりました。

お便り71 お陰さまで、現在、娘は弁形成の手術が成功したことにより、体調もよく元気に高校に通学しています。

 2012年1月31日、当時15歳だった娘は発熱のため近所の循環器内科クリニックで受診をしました。心臓に聴診器を当てていた医師から、「心疾患の際に生じる雑音がします。」との 指摘を受け、その場でレントゲン、心エコー等複数の検査を受けました。

 「大動脈弁閉鎖不全症・先天性の大動脈二尖弁」との告知を受け、「将来的には手術が必要になるでしょう。」と言われました。

 今まで、学校の行事である体育祭やマラソン大会にも参加して、何の問題もなく日常生活を送ってきましたので、本人、親共々、衝撃を受け今後どうするべきか不安になりました。

 「親として、娘に何をしてあげられるのか?」と自分の心に問いかけた時に、「先進医療機関で名医に診てもらいたい。」という答えが返ってきました。

 二尖弁の治療方法や、受け入れてくれる病院をインターネットで検索していくうちに、「名古屋ハートセンター」という心臓の専門病院があることが分かりました。

こちらの病院では、一般の病院ではあまり行っていない手術や治療を受けることができ、ゴットハンドを持つ心臓血管外科医、米田先生に診てもらえる可能性がある、ということも分かりました。
 早速メールで米田先生に娘のことを相談させて頂いたところ、今後の治療方法や注意するべき点などの回答を頂き、「よろしければ私の外来にお越しください。」とのお返事を頂いた時には、主人と二人で大喜びしました。

 

 初診の予定を3月30日に入れてもらい、大分県から親子3人で名古屋に向かいました。検査終了後、米田先生よりお話がありました。

 現在の大動脈弁の状態は、血液のかなりの量が心臓へ逆流の形で戻ってきており、既に4段階中の3段階まで進行していること。娘が将来、妊娠・出産ができるように弁形成手術が望ましく、今であれば弁形成手術が可能であること等を、懇切丁寧に説明してくださいました。

の時点で私共は、この先生なら信頼できる、安心してお願いすることができると確信しました。
 6月14日に2度目の検査を受け、手術日は高校が夏休みに入った8月2日に行うことになりました。創のことも考慮してくださり、MICS手術で執刀してもらいました。

 手術後の回復も順調で、術後僅か11日で退院することができました。
 入院前も退院後も、不安なことや分からないことがあれば米田先生にメールで相談させて頂いていますが、時間を空けずに返事が返ってくることに驚いています。

ご多忙の上、毎日全国の患者さんや医療関係の方から膨大な数のメールが届くと思うのですが、先生の睡眠時間は足りているのだろうかと、こちらが心配になるくらいです。
 私共の、内容不足の質問にも決して否定することなく、素人にも分かり易く親身になって答えてくださいます。

この<否定されない>ということが患者側にとって、どれほど精神的に安定することができ、救われていることか…本当にありがとうございます。

 娘が心疾患を持って生まれてきたことは不運でしたが、すぐれた技術とすぐれた人格をお持ちの米田先生に出会えたことは幸運でした。

 今後とも宜しくお願い致します。

****

**********************

その後、心臓手術から5ヶ月ちかく経って、年末にまたメールを頂きました。

お元気で楽しく暮らしておられるご様子、何よりと思いました。

*******その後のお便り********

米田 正始  様
 

暮れもおしせまり今年も残りわずかとなってしまいましたが、米田先生には大変お世話になりました。
 

お陰さまで娘の体調も良好で、今日は元気に大掃除のお手伝いをしていました。
 

大学生の息子も帰省して、家族揃って笑顔で新しい年を迎える準備が出来ること、本当に感謝しております。

来年もどうぞよろしくお願い致します。

****

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り57: 上行大動脈置換術後の大動脈弁置換術の患者さん

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大動脈二尖弁大動脈弁膜症を発生しやすいだけでなく、上行大動脈瘤などを合併しやすいことでも知られています。

患者さんは関西在住の69歳の男性で数年前に京都で上行大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けておられます。

もとの術者にお聞きしますとその時点では大動脈二尖弁はそう悪くなく、そのままになっていました。

IMG_5500bこれは正しい判断だったと思います。

 

それから時間が経ち、大動脈弁が狭くなって(大動脈弁狭窄症)危険な状態となったため、名古屋ハートセンターの私の外来へ来られました。

再手術は私の得意種目のひとつであり、患者さんたちもそれをよく御存じのようで、全国から再手術の患者さんが名古屋まで来て下さいます。

 

ところがこの患者さんの場合は診察と検査で、以前の手術で植え込まれた人工血管が胸骨という骨にびったりと癒着し、一部は骨に食い込んでいることがわかりました。

Illust191こうしたケースでは骨をのこぎりで切る際に人工血管が破れやすいため、一般には極めてハイリスクと言われます。

「安全管理」と称してこうした患者さんを断る公的病院も少なくありません。

しかしこの患者さんは生きるために大動脈弁置換術が絶対必要なのです。

そこでさまざまな安全対策を立ててのぞみました。

 

結局、強い癒着の剥離には長い時間を要しましたが、手術はスムースに進み、病気で壊れた二尖弁はきれいな生体弁に取り換えられました。

さらにまだ比較的お若いご年齢を考慮し、将来はカテーテルで人工弁が入る(略称TAVIあるいはTAVR)ことができるような工夫も行いました。

同時に、もし将来何らかの心臓手術が必要となったときにも困らないように、今回は人工血管などをがっちりと守り、骨に癒着しないようにしました。

 

患者さんは術後経過順調でまもなく関西にもどられました。

まさにいのちを預けて下さる、死んでも悔いはないとまで言って下さる厚い信頼にお応えできてこんなにうれしいことはありません。

医療はやはり患者さんあってのものと改めて痛感いたしました。

 

**********患者さんからのお便り*********

 

米田先生
手術に携わっていただいた諸先生
看護師の皆様

 

お便り57大変ご無沙汰いたしております。私の大動脈弁置換手術に際しましては大変お世話様になりました。

お陰様で経過もよく順調に回復しています。

 

思えば、今年の2月上旬に京都の病院で定期検査を受け、

大動脈弁閉鎖不全症でこのままでいると心臓が送り出している血液が逆流し心不全等で突然倒れて死に至る恐れがあり、倒れた時の緊急手術もリスクが高いと聞き愕然としました。

それまでシニアー野球で投打走と又、ジムにも通い鍛えて身体的には何もなく安心していたのですが、それから一週間は悩みました。

 

しかし、同じ倒れて手遅れになるより手術をして元の生活へ戻れるのであれば早くやろうと決心しました。

その時、家内がテレビでスーパードクターの番組をよく見ていて、気にかかる病気の名医のお名前と病院を記録していましてその中で米田先生を知る事になりました。

弁置換術においては沢山の手術を手がけられいろんな修羅場を潜ってこられた先生とお聞きし、同じ手術を行うのであればGod Handと言われている米田先生にお願いしようとお探ししました。

 

前京都大学病院に勤められていたと聴いていたのですが、代わられていて名古屋のハートセンターへ勤務されている事を聞き早速電話をして受診をお願しました。

当日はエコー検査、CT検査等を行い映像やデーターを基に米田先生から私の現在の心臓の状態と手術の方法やリスク等懇切丁寧に解りやすく説明して頂きました。

「手術は任して下さい。後はあなたのリハビリ次第で回復も早くなりますよ」と自信に満ちたお言葉を頂きお願いしようと決心しました。

 

又、私が4年前別な病院で大動脈瘤の手術を行いかなりの癒着もあり、米田先生が前の手術を行った先生をご存知で情報をとって頂きより安全な方法で手術を行うことにしました。

そして、2月27日に入院いたしました。

病院の前の学校のグランドに集う学生の元気な姿を見るにつけ「もう一度元気になってスポーツをやりたい。ガンバルぞ!」という気持になり勇気が湧いてきました。

 

そして3月2日手術の日を迎えました。当日は、意外と落ち着いて手術室へ行き2~3分の内に全身麻酔がかかり、家族の心配をよそに眠ってしましました。

 
翌朝に目を覚ましましたが、先生や看護師さんの優しいお顔が目に入り、再生さして頂いた実感がこみ上げてきました。

丁度、浦島太郎の感覚でした。

 

手術した翌朝の朝までが本当に短い時間に感じました。

それから3日にはベッドに座れる様になり、5日目から歩行が出来る様に成りました。

8日を過ぎると食事もすすみ、痛みは有るものの院内の階段を1F~5Fまで上り下りするまでになりました。

院内散歩が唯一の楽しみになりました。

そして3月14日に無事退院する事が出来ました。

米田先生のオペの技術は勿論の事、手術に携って頂いた諸先生方、看護師の方々のチームワークは最高と思われます。

それは手術後のケアについてもよく分かりました。

回診時に手術を担当された先生方が優しく丁寧に術後の状態を診て頂き私達の不安を取り除いていただきました。

 

又、ベテランの看護師さん・若い看護師さん方のテキパキとした対応や気配りや笑顔はどんなに私達患者の心を癒して頂いた事でしょう。

その他、美味しい食事を造って頂いた栄養士さん・調理師さん、お茶や食事の準備をして頂いた方々、部屋を清掃して頂いた方々、その他、たくさんのスタッフの皆様へ支えられ 無事に退院する事が出来ました。

 

現在は、胸に違和感は少し残っていますが痛みもとれて、毎日散歩に花見や自身の野球のチーム練習の球拾いをやりながらリハビリに務めています。

本当に有難う御座いました。米田先生他、手術に携って頂いた諸先生方、看護師の皆様、その他スタッフの皆様方のご健康とご活躍、そして名古屋ハートセンターのご発展を心よりお祈り申し上げます。

 

2012年4月19日

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お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん

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大動脈二尖弁は100人にひとりの割合で発生する病気です。

本来3枚ある弁尖つまり弁のひらひら動く部分が2枚になっており、弁尖に力が過重にかかり次第に壊れていくことが知られています。

そのままとくに問題なく人生を送られる方も多数あるのですが、次第に弁が壊れて弁膜症として治療が必要になることも多々あります。

この大動脈二尖弁はかつては弁の病気と考えられていましたが、数年前、大動脈の病気でもあることが大動脈壁の遺伝子解析で解明されました。

私たちは以前から大動脈二尖弁の患者さんの大動脈は通常よりかなり弱いと考えていましたので、手術のときにも、このままでは将来瘤(こぶ)になると確信した場合は安全な限り、人工血管で取り換える治療をしてきました。

近年は、この大動脈二尖弁を比較的早期に形成つまり修復すれば、長持ちするというデータを得て、可能な場合に大動脈弁形成を行っています。

P1140323c下記の患者さんは大動脈二尖弁を勉強して私にメールで連絡を取ってこられました。

じっくり相談し、長期的にもっとも患者さんに有利な方法で心臓手術しました。

弁は破壊が強かったため、あえて弁形成せず、生体弁で、かつ将来のもしもの再手術を回避できるよう、カテーテル弁(TAVI)に対応できるかたちで大動脈弁置換を行いました。
また上行大動脈は拡張し薄く弱くなっていたため、これを人工血管で置換(取り換えること)し、かつ将来瘤になる恐れがある近位弓部大動脈にも人工血管を外張りの形で縫い付けるラッピングにて補強・保護しました。

創もミックス法(MICS)にて通常の半分程度の小さい創で手術を完了できました。

将来のさまざまな問題をできるだけ予防し、また対応できるようにしましたが、これも患者さんやご家族とじっくり長期計画を相談できたおかげです。

外来や入院中はこうして質疑応答をし、一緒に考え、大いに語る、これもこれからの医療の大切なポイントと思います。

***********************

米田正始 先生

このたび、先生にお世話になりました
****でございます。

PtLetter50予定通り、先日2日に退院させていただきました。

昨年末、不躾ながら突然メールを差し上げました
ところから、あっという間に入院・手術・退院と今に至り、
この間、夢の中にいたような気持ちでおります。

いままで、他の病院に通院し、手術の時期について
悩んでおりましたことが嘘のようです。

初めて先生にお目にかかった時、何の迷いもなく
すべてお任せする気持ちになりました。

入院中も、回診のたびに先生方に、小さな疑問にも
丁寧にお答えいただき、毎日小さな不安が払しょくされて
いきました。

なかなか、お医者様にくだらない質問をするのは勇気が
いることですが、そんな心配もないほど、親切にしていただきました。

たまたま見つけた先生のWEBサイトから、先生に巡り合え
ましたことを、周りのものが、「神様のお導き」では、なかったかと
申しましたが、本当にそう思います。

先生方には、感謝の気持ちで一杯です。
簡単には言葉にはできません。

それでも、まずはお礼をと思いメール差し上げました。
本当にありがとうございました。

************************

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お便り44: 大動脈二尖弁と上行大動脈の手術を受けた患者さん

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先天性心疾患は生まれた時からの心臓病です。

そのため身体の負担はもとより、

こころの負担が患者さんご本人だけでなくご両親たちにも重くかかってしまいます。

 

Hana_16 ご本人にとっては、ある日心臓が悪いと言われたとき、

なぜ何も悪いことをしていないぼくがこんな目に合わなければならないの?と思うでしょうし、

ご両親にとっては、私たちはこんな病気を創ってしまった、こどもに申し訳ない、どうしよう、

という苦悩に襲われるのです。

 

私たちができること、それは

できるだけ安全性を高めて

できるだけ良い手術をして心臓病を治すこと、

そしてなるべく心の負担を軽くするお手伝いをすることです。

以下のお手紙は大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄閉鎖不全症のため

遠方から名古屋ハートセンターまで来て心臓手術を受け、

元気になって下さった患者さんとそのお母様からのお便りです。

ドットハート001154m初対面の時から、

正直に何でも打ち明けて下さった患者さんの男らしい姿勢に私は勇気づけられ、

力が入ったのを覚えています。

こころが通じていると実感したわけです。

またそれまでの苦しい経過の中で

命をかけてでも無輸血で治療を受けてお母さんを喜ばせてあげようという気持ちを戴き、

絶対無輸血という決意で手術をさせて頂きました。

大動脈二尖弁の患者さんは上行大動脈が弱く、

この患者さんの場合もすでに瘤になり始めていたため

併せて治すことができました。

彼にとってできるだけのことをしたく思ったのです。

以下はその患者さんとお母様からのお便りです。

**********患者さんからのお便り***********

私は、生後すぐに心臓病らしいと告知されたそうです。

お便り44実物 両親は私の成長するにしたがい、心臓病で有名な病院へ、つれて行き診察してもらいました。

ところが、現在とは違い当時、病名も判らず両親は、とても心配したそうです

その後、「大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症」と診断され医師から「35歳くらいで、階段の昇り降りも負担になる。人工弁を入れる手術が必要。」と聞かされましたが、ちょうどその頃、私は中学生で「そのうち心臓は止まり死ぬ。」と考え、つよくない体を、飲酒、喫煙や人に言えないような事を行ない、非行を繰り返す毎日でした。

そして、自業自得とはいえ、この時期から動悸、息切れ不整脈の症状が頻繁に、あらわれ、とうとう2009年5月に、重度の心不全、呼吸不全で14日間、生死をさまよう事となったのです。

救命医療で担当して下さった医師の治療のおかげで、なんとか一命は救われましたが、人工弁を入れる手術をしたわけではなく、真剣に手術について考える必要に迫られるのです。

まず、かかりつけの医師に「あと3年くらいしか心臓がもたない事、はやく手術すれば心機能の回復も見込まれる。」と説諭されましたので、地域の大学病院へ行きました。

それから心臓血管外科の医師から、初めて具体的に手術について説明をうけたのですが、あらたに、「上行大動脈瘤」がある事も聞かされました。

問題はそれだけでは、ありません、この手術には、絶対に輸血が必要との事でした。

私は、まだちがうのですが、母親はエホバの証人です。これまで私は社会や両親、とりわけ医療関係者、また神様にたいしても、ふざけた態度ですべてにそむいて来たので、ひとつだけでも、従いたいので輸血はしないと決めていたからです。

なんとか無輸血で、手術が出来ないものかと、困り果てたころに、WEBサイトを介し米田正始医師に、たどり着いたのです。

こんな私を米田先生は、なんの偏見も無く「手術は無輸血でします。これを機会に生まれ変わればいい。」と、やさしくおっしゃってくれましたので、私は安心し、すべてを頼る事にしたのです。

そのような訳で7日間の準備入院、そして8日目、手術が無事終わり数時間後には、歩くことも出来ました。そして10日後に退院して現在は、走る事も出来るのです。

最近、友人に手術痕を見せた時に「本当に心臓の手術したのか?」と言われ、みても分からないほど、手術あとも、とってもきれいです。

これまでは「ガタガタ」うるさく、気だるく、おもかった心臓が、術後は、心臓そのもの、存在すら感じられない不思議な、感覚、すごくかるい感じを私は、うまく文字や言葉では表現できません。

米田先生、治療していただいた事、本当にありがとうございました。

2011/1/17

**********お母さんからのお便り**********

お便り44実物2 2009年12月に、39才になったばかりの長男は、手術室に入っていました。

時間が止まってしまった様な長く感じられる日でした。

米田先生から手術がうまくいったと告げられた私は、まだ目ざめていない子に顔を見た時、安堵感と、よろこびで胸がいっぱいになり、「よかったね。手術はうまくいったのよ。もう大丈夫だからね。」と声をかけていました。

私が、どれほど、うれしくて、心から先生が他とチームワークをくんで、一丸となって長男のために全力をあげて、手術にとりくんでくださった若い先生方と、スタッフの方に、心を込めてありがとうございましたと伝えたくて。この胸中をわかっていただけるでしょうか。

本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

1970年12月に生まれた長男は、生後一か月検診で、医師から信じられない言葉を聞かされました。

今でも、昨日のように思い出します。「赤ちゃんは、心臓の雑音がひどいので検査をするように。」

私の耳に入ったこの言葉は、ショックで、どうしていいのかわからなくなってしまいました。私も、若いママになれたよろこびで、足取りも軽く病院へ行ったのに、帰り道は、とても不安な思いを抱く悲しい気持ちで帰宅し、誰にも言えずに、一人ぼっちで育児に専念することになりました。

初孫を、とてもよろこんでいた四人の若い祖父母には、心配をかけたくないので、言えなかったのです。

外見からは、チアノーゼもなく、よく食べ、よく眠ってくれて、泣いてぐずることもほとんどなく、楽に育てられたのですが、悲しい思いをしたのは、予防接種の度に、心雑音と告げるだけで、すぐにパスされて、冷たくされた思いでした。私の不安は、この先どうなるのか、つのるばかりでした。

心臓病に詳しいと聞くと、どこへでも行って診てもらいましたが、東京の**大学の先生には、「赤ちゃんの時は、わかりにくいのですよ。」と言われるばかりでした。

でも本人は、親の心配も知らずに、丸々と太って、病院にかかることもなく、風邪などの熱には要注意と言われていたのに、四十度近い熱でも、とても元気で、すぐに治るし、心臓が悪いなんて信じられないくらいだったのです。

小学校に入学する前に、6才になったら、入院して、カテーテル検査をするようにと予約をして、受けましたが、その時は、心室や心房の壁に穴もなくて、原因はわからなかったのです。

そして、中学生になった時、学校側の要望により、***病院で受診しました。当時は、日本一と知られた病院でした。そこで、やっと病名がわかりました。大動脈の弁が狭いそうでした。

でも本人は至って、普通の子と変わらず、元気そうでしたが、病名を告げる事によって、学校側は責任上の理由で、ドクターストップがかかりました。

大好きなスポーツも制限されてしまって、自分の思うようにならなくなったので、ずい分、ヤケになりました。

それまで、明るくて活発な性格だったのに、心がすさんでゆき、悪い傾向のまま走り出してゆくようになり、悪い仲間と連れ立つようになり、愛情を示そうと努力する家族に背を向けてしまって、私の手から離れようとばかりして、心痛の元となりました。今でもあの頃を思い出すと、目に涙があふれてきます。

不安と悲しみ、親であるがゆえの惨めさ、恥辱の伴う苦しい時期だったのです

成長に伴い、身体が大きくなると、心臓も負担がかかってくるようになり、悪い生活習慣のため、発作も度々で救急のお世話にもなるようになり、もう年令は、38才になっていました。

病院へ行くと医師からは、早く手術をした方が良いと何度も告げられましたが、私自身が様々な思いがあって、決心がつかないのでしたが、ある時かかりつけの先生から「お母さん、そろそろ手術を考える時ですよ、このままでは死んでしまいますよ。」と告げられて、病院を探すことになりました。

大学病院では無輸血の手術は無理ですと断られて、困っていたところに、米田先生との出会いがあったのです。

先生は、とても優しく、ひろい心で、相談にのってくださり、先生の最高レベルの医術を駆使して、さまざまな工夫をこらし、出血も最小限にと全力を尽くして取りくんでくださったおかげで、もう限界だった心臓を治してくださった事、もう一度生きてゆく機会を与えられたので、大変な思いをして、これまで生きてくることができたのだからこれからは、もっと、もっと、自分の体を大切にして、命を尊重して生きて欲しいと心から願っています。

米田先生、先生の優しさと、勇気と、すばらしい医術に感謝を込めて、ペンを止めます。

本当にありがとうございました。

***の母**より。

 

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お便り42 大動脈二尖弁に弁形成術を受けられた若者のご家族から

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大動脈二尖弁そのものは必ずしも病気とは限らないのですが、

弁が壊れやすく、年齢とともに弁膜症が発生します。

 

二尖弁は先天性心疾患のなかに入るため、若い患者さんが多いです。

そのためおなじ心臓手術といっても、人工弁を使う弁置換手術よりも

患者さんの弁を修復して活用する弁形成術が患者さんを助けます。

 

Ilm10_df01004-s というのは若い年齢たとえば20代や30代では人工弁不利だからです。

つまり機械弁を使えば、

弁自体の耐久性は100年ほどもありますが、

一生涯ワーファリンを服用する必要があり、

そのために毎月病院通いし薬を調整して行くことが求められます。

きちんと調整していても、ときたま、脳出血や脳梗塞が起こります。

これはワーファリンというお薬の宿命的な弱点なのです。

かといって生体弁はこの若い年齢では早く壊れやすいのです。

しかし弁形成ならばそうした問題は少ないです。

また弁があまり壊れていないときには、手術がきれいに決まれば長持ちしやすいのです。

そこで私たちは大動脈弁形成術に力を入れています。

以下のお便りは大動脈二尖弁の若者のお母さんからのメールです。

近くの病院では人工弁による弁置換しかないと言われ、

ネットで勉強して九州から私のいる名古屋ハートセンターまで来て下さいました。

手術は大動脈二尖弁が狭くなりかつ逆流(閉鎖不全症)も起こすという、

形成しづらいタイプでしたが、さまざまな工夫ののち大動脈弁形成術は無事成功し、

狭窄も逆流もほぼ取れました。

二枚の弁のかみ合わせも良いため、今後長持ちする期待ができます。

 

仕事熱心で前向きな患者さんですので、一層うれしく思っています

**************************

米田正始先生

Sun, 7 Aug 2011 02:15:38 +0900 (JST)

お世話になっております。
私、6月初旬に手術をして頂いた**の母です。

お便り42実物 今回、先生に感謝の気持ちを伝えたくメールをさせて頂きました。
ご挨拶が遅くなりまして申し訳ありません。

先生に出会うまで、手術方法について非常に悩んでまいりましたが、先生に弁形成の手術をして頂けるという希望を頂き、本当に救われました。

そしてその通りの手術をして頂きまして本当に心からの御礼を申し上げます。

手術を終え、息子はまだ沢山の機械が繋がれておりましたがこれでもう大丈夫、と安心致しました。息子に少しでも早く伝えたくて《手術成功したよ、弁形成して頂いたよ》と紙に書いて見せました。それを見て息子が少し頷いた時のこと、忘れません。

今、息子は元気に会社へ行っております。先日も家族で旅行へ楽しく行ってきました。

これから息子には楽しい人生が待っていると思います。
今までずっといろんな方々に見守られ、支えられてきました。そして先生に出会えて夢のような手術をして頂き、本当にありがとうございました。
息子の幸せは家族みんなの幸せであり、大変嬉しく喜んでおります。

くれぐれも先生もお身体にお気をつけ下さい。そしてこれからも私たちのような患者、家族を少しでも多く救ってあげてください。

米田先生、先生方、スタッフの方々、この場をお借りして心からの御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

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お便り40 大動脈二尖弁で後年、大動脈手術を受けた患者さん

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二尖大動脈弁(大動脈二尖弁)はかつては単なる弁膜症とみなされていましたが、

現在は研究が進み、

弁だけでなく大動脈の病気でもあることがわかっています。

そのため昔、大動脈弁の手術を受けた患者さんでも、

長年月の間には大動脈が拡張し瘤(こぶのように大きく)となることがしばしばあるため注意がひつようです。

 

Ilm17_da05014-s 実際、昔どこかの病院で大動脈二尖弁の手術(大動脈弁置換術)を受け、

5-15年して大動脈が拡張し瘤になって

私のいる名古屋ハートセンターへ来られる方が何人もおられます。

 

以下の患者さんは5年前、別の病院で大動脈二尖弁のため大動脈弁置換術(略称AVR)を受けられました。

最近上行大動脈が拡張し破れそうになっていることが判り、

かかりつけの先生からのご紹介で私の外来へ来られました。

 

外来でCTその他で調べたところ、

上行大動脈から弓部大動脈までかなり大きくなっており、

その拡張速度も速いため、心臓手術(再手術)することにしました。

 

手術では前回手術のための癒着(心臓と周囲の組織がくっついてそのままでは手術できない状態)があり、

これを丁寧に剥離し、それから上行大動脈から弓部大動脈まですべて人工血管で置換(弓部大動脈全置換術)しました。

再手術の、それもけっこう大きめの手術でしたが、

経過良好でまもなくお元気に退院されました。

 

Illust205これによって今後、大動脈の心配はほぼ解消し、患者さんはお元気な生活に戻られました。

 

下記の手紙は患者さんが他の方のお役に立つようにと、書いてくださったものです。

 

二尖弁の患者さんは、弁の手術後でも専門家のところで毎年定期健診を受けることがお勧めです。

これによって安全が確保できるようになるでしょう。

 

****************************

私は73才女性です。高血圧等で長年、近くのH医師の診察を受けています。

 

患者さんからのお便りの実物写真です 心臓に問題があるからと68才の時、T病院で大動脈弁の弁置換術をしました。

その時普通は3枚の弁が2枚しか無い(註:二尖弁)と知りました。

 

定期的にH医師の診察を受けていましたが、22年10月に「大動脈瘤があります。

信頼できる良い医師を紹介するので、是非、すぐ、診てもらいなさい」と言われました。

 

すっかり良くなったと信じていましたので、不安半分で息子・妹に付き添ってもらい、10月5日にハートセンターの米田先生の診察を受けました。

採血・CT等検査の後、緊急ではないので様子を見ましょうと、3ヶ月後再受診となりました。

 

大きくなっていませんようにの願いもむなしく、「H医師と相談の上、手術するかしないか決めてきてください」と言われました。

3週間後手術の決心をして米田先生に伝えました。初診から手術まで約4ヶ月の速さでした。

運が良かったと今は思います。

開胸手術も2度目の方がリスクが高いと言われましたが、先生に全幅の信頼を寄せました。

というのも最初の診察から手術まで私達に解り易く、何度も何度も丁寧に説明して下さったからです。

 

二尖弁が大動脈瘤になりやすい要因であることが、ここ2~3年前に解ったこと、どこからどこまでを人工血管に取り換えること、2度目のリスクとして癒着があると出血しやすく、その分手術時間がかかるけれど万全の態勢で臨むこと・・・。

 

一つだけ残念なことは、それだけのご説明を受けても、動揺している私の頭の中は真っ白で、付き添ってくれた息子達に家に帰ってから説明してもらい理解したことです。

ただ先生のご説明して下さっている様子からおまかせしたいという安心感だけ受け取りました。

 

術後すぐに先生から娘・妹に手術の結果とこれからの注意点のご説明がありました。

患者だけでなく付き添う身内にまできめ細やかな心くばりがありました。

 
現在順調な生活をしています。

本当にありがとうございました。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り37 二尖弁がらみの2度の大きな手術を乗り越えた患者さんから

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大動脈弁は通常3尖つまり Bicuspic AVひらひら動く部分が3つあるのですが、

それがときに2つしかないことがあります。

これを二尖弁と呼びます。

二尖弁は必ずしも病気ではありません。

一生弁膜症にならずに過ごされる方も多数おられます。

しかし二尖弁には構造上壊れやすいという弱点があり、弁膜症手術を受けるかたも少なくありません。

 

  近年はこの二尖弁は上行大動脈や主肺動脈の壁にも構造的弱点がある、

動脈疾患であることが遺伝子学的に解明されました。

そこで、マルファン症候群等と同様の結合組織疾患とし34

フォローし安全の確保につとめる方針が一般化しつつあります。

 

下記の60代女性患者さんも二尖弁大動脈弁狭窄症上行大動脈瘤のため9年前、

当時私がいた京大病院大動脈弁置換術と上行大動脈置換術を行いました。

その当時は二尖弁にはまだ大動脈疾患という考え方はありませんでしたが、

私たちは安全のため、大動脈弁二尖弁の置換だけでなく、

拡張した上行大動脈を人工血管に取り換えるようにしていました。

すぐ元気になられ、その後健康な生活  を楽しんでおられました。

2007年ごろの京大病院のごたごた の際にも署名を集め支援をして下さいました。

その後も患者さんの会などでよくお会いしていましたが、

弓部大動脈瘤大動脈基部拡張が発生し、ハートセンターまで来られました。

 

弓部大動脈全置換術大動脈基部再建それも再手術とは大きな手術でしたが、

順調に回復されまもなく軽快退院されました。

 

以下はその患者さんからのお礼のお手紙です。

Person_0116二尖弁などの心臓手術を迷っておられる患者さんのお役にたてるようにと、詳しく書いて下さいました。

しかも、心がつたわりやすいようにと実名で。

 

患者さんと一体感を長年持てるのは医師としてこの上ない喜びです。

ありがとうございます。

 

***********患者さんからのお便り********

 

2002年3月、私は京都大学医学部心臓血管外科の米田正始教授に弁置換、人工血管の手術をして頂きました。

生れつき、心室中隔欠損症、心臓弁膜症の私は、手術後、呼吸が清々しく楽になり、肌の色が、みるみる白く赤みを増していくのを実感しました。

私にとって、不思議な事に、諸々の臓器、網の目のように広がる血管、リンパ管、神経等が、何ら損傷する事なく私は、元気に、生れ変わりました。

 

私は、三人の子供の結婚と、7人の孫達の誕生の世話、老いた母の看護、

母が岐阜市の老人保健施設喜びの里に入所した後の見舞い、

母が亡くなる前の1ヶ月間、母と笠松病院の病室で、起居を共にする事等が出来ました。


そして、私は、念願の絵画の作成に没頭し、

日本アンデパンダン展日本美術会の会員、日本水彩展、講談社フェーマス・スクール、アート・コンテストに入選し、

アメリカ、ニューヨーク市のオープンハウス・ギャラリーで、ジャパニーズ・アートポスター展にも出品する事が出来ました。

これも、すべて、米田正始先生が、多くの先生方達、スタッフの方達と完璧な心臓手術で、

私を健康にして下さったお蔭と思っています。


2度目の手術について、

私は、2010年11月13日、母の葬式を終えて、11月19日、

京都大学附属病院で、超音波検査を受けた結果、弓部大動脈瘤が見つかりました。

映像で、大動脈瘤の両側に、粥状の血の溜りを示して下さった時、

私は、いつも関西弁で検査結果を、丁寧に説明して下さり、患者の思いを聞いて下さる先生に、

「あー、かなんなー」と何度も、口にしました。

「私は、米田先生のところへ行きます」と言うと、先生は、すぐに、

CT検査をして、第1回目の手術の記録を渡して下さいました。

 

名古屋ハートセンターに連絡すると、

米田正始副院長は、第1回目の手術の時と同じように、すぐに診察して下さいました。

先生の優しい解り易い丁寧な説明を聞いていると、

手術の不安が消え、先生の励ましに、心が勇気づけられ安心しました。

12月2日に入院し、6日に手術をして下さる事になりました。

血栓がある6㎝の弓部大動脈瘤を抱えながら、

2~3ヶ月間、手術日を待たなければならなかったら、

その間、実に、辛い不安な生活だったと思います。

CT検査の結果、私は6㎝の弓部大動脈瘤と、その他にも二つありました。

2度目の手術は、前回の手術よりも、リスクが大きいでしたが、

米田正始先生の御執刀と、先生達、多くのスタッフの方達のお蔭で、

前回よりも短く5時間で終了しました。

生きるか、死ぬかというはざまで苦悩する心臓病患者にとって、

すぐに診察して頂き、手術日が早く決まり、

思いやりのある温かい説明、そして、

世界最高水準の心臓病治療をして頂ける事が出来るのは、

この上もなくありがたい事です。



ハートセンターの病室は、心穏やかな色調でまとめられ、

障子とカーテンで区切られたベッド、

心安らかに流れるクラシック音楽、

患者に合わせた減塩食、

毎日、隅々まで清掃して下さるスタッフの方達、

温かい言葉をかけて適切な処置をして下さる看護師さん達と検査技師の方達、

常に、患者の身体の状態を尋ね診察して下さる先生達、

ハートセンターは、何もかも患者の心と身体を配慮しての病院でした。

 

私は、2度、米田正始先生の御執刀で、生命を救って頂きました。

そして、私に、健康な身体と活力を与えて下さり、この上もない感謝の思いで一杯です。

退院後、友人のインターネットで、米田正始先生のホームページを拝読させて頂きました。

その中で、「大動脈疾患について」を検索したところ私の病状である弓部大動脈瘤について、

ある方の手術の経過の写真とその詳しい説明が記載されていました。

 

私が、麻酔で、意識を失っている5時間の間に、

米田先生、先生方達、スタッフの方達は、私には、不思議な事としか思えない高度な医療技術-ステップワイズアーチファースト法、選択的脳灌流等で、

手術をして頂いているのが分かりました。

 

先生のホームページには、医療に関する事柄、諸々の事柄が記載され、

患者達の生命を1人でも多く、救いたいという先生の熱い思いや、

生命への愛にあふれ満ちていると思いました。

ありがとうございます。

 

2011年2月  山田瑞恵


*******************

初回手術から12年半、2回目からでも4年以上の月日が経ちました。

患者さんの会でお会いし、お元気な様子は存じていましたが、お葉書を頂きました。

こころを打つ、うれしいお便りでした。

心臓血管外科医になってよかったと想うひと時です。

お孫さんたちと楽しくお過ごしください。またお会いしましょう。

*******お便り その2******


IMG_0545b残暑お見舞い申し上げます。

先生、ご健勝のことと存じ上げます。

私は、おかげ様で日常生活を元気に過ごし好きな絵画を描き、いくつもの発表の機会に出品しています。

このお盆には、2回目の手術の後に生まれた8番目の孫が加わり、

3家族が集まり賑やかなお盆を迎えました。

これもあれもすべて先生のおかげと感謝しています。

大勢の患者達の生命を救い、そしてその後も多大のご配慮を頂き、誠に感謝しています。

先生のご健勝とご多幸を日々心よりお祈り申し上げています。

 

 

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(大動脈弁)二尖弁につきまして ―― 弁だけでなく大動脈にもご注意 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 大動脈二尖弁とは?

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大動脈二尖弁と三尖弁の違いを示します通常、大動脈弁は「3つの尖(せん)」が開閉することで血液の流れを調整しています。
しかし先天的に尖が2つしか形成されない場合があり、これを 大動脈二尖弁(Bicuspid Aortic Valve, BAV) と呼びます。

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  • 発生率は 約100人に1人

  • 生まれつきの形態異常ですが、大半の方は症状なく一生を過ごせることもあります

ただし二尖弁には特有の弱点があり、年齢とともに弁膜症や大動脈の病気へ進展するリスクが高まります。

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◆ 二尖弁のリスクと合併症

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二尖弁は力学的に負担がかかりやすく、次第に以下の病気を起こす可能性があります。Gum06_fr01002-s

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特に二尖弁患者さんは、上行大動脈の拡張や瘤形成が多い ことが近年の研究で明らかになっています。

*また大動脈基部拡張症を合併することが多く、解離や破裂に注意が必要です。

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◆ 二尖弁による症状

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Cb018c-s二尖弁自体には症状がありませんが、合併症が進行すると以下の症状が出ることがあります。

  • 息切れ、動悸、疲れやすさ

  • 胸痛や失神(大動脈弁狭窄症が進行した場合)

  • 下肢のむくみや呼吸困難(心不全症状)

  • .

これらの症状が出た場合は 手術を含めた治療が必要 です。
診断には 心エコー検査 が基本で、必要に応じて CT検査心臓カテーテル検査 を行います。

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◆ 大動脈二尖弁の治療と手術法

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1. 大動脈弁形成術(弁を残す手術)194304509

  • 特に 若い患者さん(10〜40代) にメリットが大きい (お便り15)

  • 妊娠・出産や将来の生活を考え、ワーファリン内服が不要になる可能性がある

  • 技術進歩により耐久性が向上し、長期成績も改善  (弁形成術後10年以上、若い患者さんを守っている事例はこちらです)

*若い方の場合は可能であれば大動脈弁形成術を優先し、機械弁や生体弁置換を避ける工夫をします。

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2. 大動脈弁置換術

  • 弁の損傷が高度な場合に行います

  • 生体弁:寿命は10〜15年だが、将来 TAVI(カテーテル弁治療) による再治療(バルブインバルブ)が可能

  • 機械弁:長持ちするが、生涯ワーファリンが必要

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3. ミックス手術(低侵襲心臓手術)191151524

  • 胸骨を切らずに行う小切開手術

  • 傷跡が目立たず、回復も早い

  • .

4. 自己心膜による大動脈弁再建術

  • 患者さん自身の心膜を使って弁を再建する新しい方法

  • 生理的で自然な血流が得られ、長持ちが期待される

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◆ 二尖弁と大動脈瘤への注意

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大動脈二尖弁の患者さんは、弁膜症だけでなく 大動脈が弱く拡張しやすい体質 を持っています。

そのため、定期的なCT検査やエコーによる経過観察 が非常に重要です。
これはマルファン症候群などの結合組織疾患と似た対応が必要とされています。

 .

◆ なぜ専門医への相談が重要か?

.79769953

二尖弁は「今は問題ない」と言われても、将来的に病気へ進行する可能性があります。
実際に「健診で異常なし」と言われていた方が、後に大動脈瘤や重症弁膜症で来院されるケースもあります。

👉 二尖弁と診断されたら、必ず定期的に専門医でフォローを受けることが大切です。

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まとめ

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  • 大動脈二尖弁は100人に1人 と比較的多い先天的形態異常

  • 放置できる場合もあるが、弁膜症や大動脈瘤のリスクが高い

  • 手術選択肢(形成術・置換術・MICS・TAVI)が進化 し、患者さんに合わせた治療が可能

  • 定期健診と専門医のフォローで、安全に長期予後を確保できる

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◆ 二尖弁大動脈弁の治療ガイドラインこちらへどうぞ。

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