お便り117 HCMと好酸球増多症で絶体絶命と言われてから社会復帰まで

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世の中には難しい心臓病が今なお多数残されています

この患者さんも山口県からお越しいただいた時には、一瞬どうしようかと不安になったほどでした

 

というのはHCMつまり肥大型心筋症の重症で左心室の心尖部側半分が異常心筋で充満し、動きも悪く、血圧を上回るほどの肺高血圧症があり、僧帽弁閉鎖不全症と三尖弁閉鎖不全症とも高度になっていたからです。

 

加えて大動脈がお腹の部分でほぼ閉塞しており、下肢の血流の流れも危険レベルに近づいているというおまけまでついていました。以前に受けられた下肢バイパス(大腿動脈ー膝窩動脈バイパス)も十分には作動できない状態でした。

 

その背後には好酸球増多症というまだまだ詳細不明な病気がありました。IMG_0441

 

中でも肺高血圧はSuper-systemicと呼ばれる危険な状態で、無理すれば突然心臓が止まる、つまり突然死も起こり得る状態でした。

 

まずは状況をしっかり把握し、手術前に調整できるものは調整し、できるだけ勝てる要素を増やそうということでさっそく入院していただき、治療を開始しました。

 

抗凝固療法や心不全に対する治療そして好酸球への対策を積極的に行い、予想以上に反応がありました。

大動脈内の血栓が溶け、おそらく肺動脈の眼に見えないレベルの血栓も溶けたのでしょうか、肺高血圧も突然死のレベルよりは改善し、手術ができる状態になりました。

 

といっても日本ではこのタイプの肥大型心筋症HCMに対する手術の経験を持つチームはほとんどありません。

 

幸い私たちは左室緻密化障害の患者さんで同様の形をもつ左室の形成術をこれまで数例経験していたこと、そして拡張型心筋症に対する左室形成術は100例以上の経験があること、さらに左室の内部に狭窄を伴うHOCMへの手術経験も多いため、この心尖部肥大型HCMの手術を行いました。

 

結果は上々で左室はほぼ正常の形とパワーを取り戻し、患者さんはまもなくお元気に退院して行かれました。

 

手術前に数週間もかけて治療しましたが、術後は早かったです。退院の時にはご本人さまおよび奥様と一緒に、あの頃は絶望的だったけどうまく行って本当に良かったと喜び合いました。

 

外来でお元気なお顔を拝見するたびに苦しかった頃を想い出します。

 

以下はその患者さんからのメールです。頑張って下さりありがとうございました。

 

*******患者さんからのメール******

 

この度の手術では、大変お世話になり有難うございました。

 

手術を含め73日間の入院期間中、医師・看護師・スタッフの皆様方の温かい対応で
入院生活はとても快適でした。

 

昨年に心臓の病気が見つかり他病院で入院・治療中でしたが、妻が「心臓手術なら米田先生しか
いない」と言うことでお世話になることにしました。

 

手術に向けての血液状態調整や各種検査
状況もその都度説明を頂き不安な気持ちはありませんでした。

 

そして手術前の先生からの親切丁寧な説明を受け家族を含め安心して先生に託することができ手術に対する不安は全くなく前夜も不思議なほど眠れました。

 

術後の経過も順調で看護師の方がびっくりするほどの回復で先生に大変感謝しております。
退院後は自宅周辺を毎日、妻と一緒にウォーキングをしています。

 

以前は長い坂道等では息苦しくなり心臓に負担がかかっていましたが術後は見違える程体調もよく順調に推移しております。
今後も外来でお世話になりますので宜しくお願い致します。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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JAPAN MICS SUMMIT2015 に参加して

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発展途上にあるMICSの研究会、第二回の学術集会がこの7月4日に東京で開催されたため、参加いたしました。

この前身の会のから毎回盛況で、近いうちに学会に昇格する見込みです。私は大学病院を離れているにもかかわらず世話人にも加えていただき何か貢献したいと考えて行ってまいりました。

今回は榊原記念病院の高梨IMG_1629秀一郎先生が会長をされ、なかなか面白いプログラムでした。

参加者もざっと見て400数十名で、若い先生が多数おられ、関心の高さを実感できました。

 

まずはじめにビデオライブとして4つの発表がなされました。

 

田端実先生が右開胸MICS-TAPASD閉鎖について概説されました。ASD(心房中隔欠損症)やTAP(三尖弁輪形成術)は心臓手術の中では入門編といいますか、比較的簡単な操作になるのですが、それは正中の大きな切開での話で、MICSでは術野の広さや角度が限定されるため注意が必要です。ASDの閉じ方も通常とは少々異なる工夫がなされ、若い先生方には参考になったのではと思います。大動脈遮断せずに心室細動でやったらというご意見もあり、一理ありお気持ちはよくわかるのですが、やはり正中アプローチとは異なる手術であるという認識が必要と感じました。十分な勉強と準備ののちこの手術に取り組むことが安全上必要です。

 

ついで私、米田正始が右開胸MICS-MV Repair(僧帽弁形成術)とMazeの併用の手術をご紹介しました。MICSでメイズ手術をやっている施設はかなり少ないようですが弁膜症の治療のなかで心房細動の解決は重要です。これまでも日本胸部外科学会シンポジウムその他で発表して参りました。ふつうの正中アプローチとは違う注意点を含めて、そのノウハウをご紹介しました。私はお金がかかり効果に疑問のあるラジオ波焼灼・RFアブレーションよりも安価で確実な冷凍凝固を長年提唱して参りましたが、MICSでは冷凍凝固はさらに役立つことをお示ししました。

 

というのは冷凍凝固ではプローブつまり器械の先端が凍って心房壁にくっつくため安定度が良く、狭い視野での取り回しが楽で確実なのです。従来の正中切開アプローチの成績に遜色ないことをお示ししました。

ただし現在この冷凍凝固の器械が国内では入手できず、早く解決して欲しいという状況も再確認されました。

いろんなご質問やご意見をいただき、内容のあるディスカッションとなったこと、皆様に感謝申し上げます。

 

ついで岡本一真先生が慶応大学の長年の経験にもとづいて右小開胸僧帽弁置換術のお話をされました。弁形成と比べて地味な印象の弁置換術ですが、状況によっては、たとえば弁形成が極めて複雑で時間がかかり、かつ患者さんが長時間の手術に耐える体力が乏しいときなどには絶大な威力を発揮します。いざというときの切り札とも言えるでしょう。実際慶応大学でのMICSの死亡例の大半が僧帽弁置換術であったことをそれを物語っています。これは弁形成を頑張ったが結局仕上がらず、それから弁置換へと進んだために患者さんの体力が消耗したためと拝察いたします。つまり一歩早く方針を切り替えれば弁置換は悪くないわけです。こうしたことを皆で確認しました。

 

最後に坂口太一先生が左開胸MICS-CABGにおける視野展開の工夫についてお話されました。近年注目を集めるこの領域ですが、まだ課題がいくつもあります。それらへの対策を整理して解説されました。たとえばどの肋間を開けるのが良いか、上行大動脈に中枢吻合をつけるときに安全に部分クランプを使う工夫、狭い視野の中でオフポンプの条件で吻合部をうまく出すテクニック、左側から右ITAを採取する工夫など、盛りだくさんでした。1-2年あまり前までは、傷跡の小さいMICSのために、内容的には一昔前のバイパス手術に逆戻りするような感がありましたが、かなり解決されており、これからこの領域は大きく発展するでしょう。

 

ビデオライブのつぎには合併症とくに再膨張性肺水腫(略してRPE)のセッションがありました。

 

まず外科の立場から岡本先生が長い間の経験をもとに、実例をもとに解説をされました。体外循環が長時間になってしまったケースで起こりがちで、原因として長時間の体外循環と肺の機会的損傷を挙げられました。文献では多量のステロイドが有効とか、FFP新鮮凍結血漿の使用が関連しているとか、術前からのCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や右心不全あるいは右室圧が40mmHgを超える肺高血圧の存在もリスクファクターと報告されています。その他に心不全状態から十分な時間をおかずに短期間に手術せざるを得なかったケース、メイズ手術が必要で時間がかかったケース、分離換気を徹底しすぎたケース、なども検討されました。

 

予防策としてクランプ解除前によく肺を膨らます、クランプ中にもこまめに両肺換気を行う、ステロイドを使用する、などが提案され、いったん起これば重症ではVV ECMOつまり脱血も送血も静脈をもちいる方法を考慮することなどが論じられました。

 

私たちもこの問題に取り組み、予防策やいったん起こった時の対応策などを磨いて参りましたが、参考になりました。これから実験研究なども併用してより科学的な解明と対策の確立へ持っていければと思いました。

 

ついで清水淳先生が心臓麻酔の立場から考察を加えられました。この病態はやはりARDSであり、1994年のAECCの記事にも矛盾しないとのことでした。数時間の肺虚血でもサイトカインは増加しますし、ましてそこへ2度目の体外循環使用などが加わる難手術例では起こる条件がそろっているというわけです。再膨張性肺水腫の治療にはまず疑うこと!、疑えばX線写真を撮り、RPEがあるなら分離換気で治療することを提唱されました。まったく同感でした。

 

治療はARDSとしてのそれが必要で、肺血管外水分量の計測が役立つ、そして患側肺にPEEPつまり陽圧をかけることが有用とのことでした。ステロイドや適宜エラスポールなども使って良い印象とのご意見でした。

 

麻酔科からの貴重なお話に続いて呼吸器内科から緒方嘉隆先生が解説を加えられました。

 

RPEは呼吸器内科領域ではよくある病態で、気胸とくに大きなもののあとには16%とも言われる頻度で起こること、胸水があるときや気道内圧が高いときや糖尿病患者もリスクが高いこと、おそらく肺毛細血管の透過性が上がっていることなどを示されました。心拍出量が多いときに起こりやすいというご意見は興味深いと感じました。

 

血管内容量の移動があるため、PEEPは有用で、利尿剤の使用には血管内容量不足に注意が必要とのことでした。

 

体外循環の使用の有無という背景の違いはあっても、平素多数の再膨張性肺水腫の治療をこなしておられる同先生のお話は大変参考になりました。

 

 

ひきつづいて完全内視鏡セッションがありました。

 

宮地鑑先生はこどものPDAを手術支援ロボットAESOP3000を使用して内視鏡下にクリップにて長年にわたり治療して来られました。その成果を発表されました。

 

乳幼児の手術でもさまざまな注意が必要であることは理解できましたが、新生児、未熟児の手術は高度なものと感心いたしました。こうしたご経験、ノウハウを成人の手術にも活かせればと思いながら拝聴しました。

かつてAESOPが注目を集めたころ、今から10年以上昔ですが、当時アメリカまで行ってこの器械を使って内胸動脈を採取する研修を受けたころを懐かしく思いだしました。

 

伊藤敏明先生は内視鏡による右腋窩切開AVR大動脈弁置換術を供覧されました。名古屋で一緒に勉強して来た先生ですので、実感をもって拝聴しました。私も同様のMICSでのAVR手術を行っているため大いに参考になりました。

 

MICS手術にもいろいろありますが、この手術を行う施設は少なく、今後さらに完成度を上げてより有用なものにしていきたく思いました。お昼のセッションに出てくるSutuless Valveつまり無縫合弁が日本に入ってくれば、この手術はより有効でより安全なものになるでしょう。今後の展開が楽しみになりました。

 

このセッションのトリは大塚俊哉先生で、これまで取り組んでこられた非弁膜症性心房細動に対する完全内視鏡手術を供覧されました。

 

患者さんの病気や状態に合わせて、左心耳を切除するだけにとどめるか、左心耳切除+メイズ手術を行うかを選択して来られました。一過性の心房細動AFや短期持続性のAFには極めて有効という結果でした。

 

今後展開が期待できる治療法だけに早く保険適応になることを祈りながら拝聴しました。

 

 

ここで海外招請講演があり、イタリアはボローニア大学のMarco Di Eusanio先生が、上記のSuturelss Valveについて講演されました。

 

MICSの大動脈弁置換術AVRは現在すでに成果を上げていますが、これをこの弁を用いることでより短時間により安全に手術できることが示されつつあります。

 

現在ハイリスク患者さんを中心にカテーテルで入れるTAVIが話題になっていますが、より確実に、より脳梗塞を避けやすいこの弁は外科の新たな魅力になるかも知れないと思いました。ということを先日の関西胸部外科学会のシンポジウムでもお話しましたが、その期待をさらに膨らませてくれるご講演でした。

 

せっかくの海外招請講演ですので私も一つご質問しました。TAVIで入れる生体弁の耐久性が現在議論になり始めていますが、このSutuless Valveではどうですかと。Eusanio先生のここまでの7-8年のデータでは良い印象で、ブラインドで入れるTAVIよりも良い可能性があるとのことで意を強くしました。

 

そこでお昼休みとなり、私は世話人会に少し顔を出してから大阪の別研究会の講演会場へと急ぎました。

 

MICS SUMMITとしては午後は弁のQuality評価、チューリッヒ大学のFrancesco Maisano先生の僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療への外科医の役割というご講演、コメディカルセッション、最後にイブニングセミナーとしておじさんが始めるMICSセッションと盛りだくさんでした。

 

残念ながら私はこれら午後のセッションには参加できませんでした。

しかし内容ある素晴らしい会であったことは間違いなく、会長の高梨秀一郎先生、代表の澤芳樹先生はじめ関係の先生方に厚く御礼申し上げます。

 

平成27年7月5日

 

米田正始

 

 

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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外来開始のご挨拶

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2015年7月から大阪の仁泉会病院にて心臓血管外科外来をスタートいたしました。

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早いものでもう1年以上になりますが全国から多数の患者さんにお越しいただき、うれしく存じております。

新型の心エコーの器械も導入し、より患者さんのニーズに応える態勢でがんばっております。CT、MRI、肺機能、ABIなどの検査も必要に応じてタイムリーに行い、なるべく一回の外来で結論がでるようにし、医療の高い質を維持し、ご希望に沿えるように努力しています。同時に食事と運動療法を重視し、なるべく少ない薬で健康を守ることをモットーにしています。こうした努力を理解して下さる患者さんが増え、うれしいことです。

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ilm17_ca06001-s医誠会病院の手術増加のため2016年12月からの仁泉会病院外来は

火曜日 午前9時半から午後5時まで(終日)

にしたく存じます。日時が多少とも変更となりますが内容で補いたく存じますので、どうかお許しください。

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心臓病や心臓血管外科手術のご相談はこれまでどおりHPからのお便りやメールで承っております。重症の方や急ぎの場合はその状態におうじて対応したく存じます。

 

なお仁泉会病院の外来では待ち時間をできるだけ減らすよう、コーディネーションできる看護師が予約を担当いたします。米田先生の外来希望、と仰ってください。

飛び入り受診も歓迎ですが、サービス向上のために電話での予約をお願い申し上げます。

 

電話番号は072―875―0100(代表)です。

恐れ入りますが、予約電話はなるべく13:30-16:30の時間帯にお願いいたします。

 

一回の外来で方針が立つようにさまざまな努力をします。037

地図などはこちらをご覧ください。

 

米田自身は異動しても患者さんたちをお守りできるよう、過去の外来と連続性が保てるように平素から工夫しています。

 

また心臓や血管だけでなく全身を考慮した外来を心がけています。心臓血管外科の外来ではございますが、心臓病によってはCTなどを撮ります。糖尿病や脂質異常症、高血圧症、CKD(慢性の腎臓の障害)などは心臓に関連しますので、とくにちからを入れています。またこれまで肺がんや乳がんを早期発見し直ちに専門家にご紹介して完全治癒して頂いたケースもあります。一般検査から胃腸や腎臓や肝臓などの病気を早く察知しかかりつけ医や地元病院での早期治療へとつないだことは多数あります。

 

全身医療のひとつがローカーボダイエット(糖質制限食)を心臓病の予防や治療に活かす工夫で、外来でも時間の許す範囲で活用しています。たとえばメタボ糖尿病をしっかりとコントロールできれば心臓や血管は大いに助かります。IMG_1535b

 

これまで私の外来には九州・沖縄や東京・東日本など遠方からも多数お越しいただいていますが、遠方からでも来てよかったと言って頂けるよう努力しています。

 

アクセスの情報などはこちらをご参照ください。

 

こうした外来ですので、皆様ご活用ください。

 

平成28年10月1日

 

米田正始 拝

 


心臓手術のお問い合わせはこちら

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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仁泉会病院——心臓血管外科 【2024年最新版】

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最終改訂日 2024年9月27日

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仁泉会病院

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郷里である奈良で新しいハートセンターを2013年に立ち上げたのち、大きな手術や重症140567890の患者さんをお助けすべく大阪へ異動し、2015年7月から大東市にある仁泉会病院にて心臓血管外科外来を開始しました。おかげさまで早や7年以上が経ちました。

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仁泉会病院では外来を中心に仕事しています。外来は毎週火曜日の午前と午後に開いており、単に心臓や血管の診察だけでなく、ガイドラインにもとづく心臓手術の正しい適応決定や、ガイドラインがまだないような稀な心臓病や新しい心臓手術ではこれまでのEBM(医学的データや証拠)をもとにした手術相談を行っています。

アットホームで小回りが利く病院のため、必要ならMRIやCTやエルゴメーターなどの精密検査もなるべく同じ日に行いすぐに役立つようにしています。

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また術後の患者さんにはバイパスや弁や大動脈の定期検診はもちろん、二次予防つまり病気が再発しないよう、あるいは新たな病気が発生しないよう、多角的にチェックし、地元のかかりつけ医や他科の先生方と協力して全身的に守られるような外来を心がけています。

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そうした努力を評価頂いているためか、北は北海道、南は沖縄さらに海外からも患者さんがお越し下さいます。これまでアメリカ、カナダ、イギリス、マレーシア、シンガポール、韓国などから来て戴いております。

「海外からでも行く価値がある外来」を目指して今後も努力いたします。

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なお2019年4月からJRおおさか東線が開業しました。新幹線新大阪駅や近鉄奈良線、近鉄大阪線から一回乗り換えで放出駅(はなてんえき)で学研都市線に乗り換えるか、下車頂ければそこからタクシーで比較的便利です。とくに新大阪駅からお越しの場合、放出駅の乗り換えは同じホームでの乗り換えのため大変便利と喜ばれています。

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🔳お知らせ 9年以上お世話になった仁泉会病院の心臓外科外来ですが、2024年9月末をもって閉鎖し、そのまま福田総合病院(枚方市)へ移転となりました。今後は福田総合病院の外来をご利用ください。

 

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ilm09_af06003-s.

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ilm20_ae04023-s◆ 高の原中央病院かんさいハートセンターで心臓手術を受けて下さった患者さんたちにはこちらもご参照ください。すでに大多数の患者さんが新しい大阪での外来に来て下さり、絆が健在であることを幸せに思い感謝しております(2015.6.)。

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◆以下は以前に勤務していた病院で作成した啓蒙ビデオです。心臓病対策にお役立てください。音声が小さいためボリュームを少し上げてください。

なお心臓や血管関係のご相談はこちらへどうぞ。

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まず狭心症と冠動脈バイパス術です。予防が一番ですが、いざとなれば役に立ちます。

 

ついで弁膜症につきまして。全体像をお話します

 

傷跡が目立たない心臓手術: MICSとかポートアクセスと呼ばれている方法です。豊富な経験が役立っています。

 

弁形成術 あとの人生が上向きに変わるかも。ただし人工弁もうまく使えば患者さんを救います。

 

大動脈疾患マルファン症候群の方も) 予防と早期発見・早期治療で悲劇をなくしましょう

 

大動脈弁狭窄症 ご高齢のかたを中心に近年増えています。治せる病気になりました

 

心臓外科手術糖質制限食。健康に楽しく美しく。

 

エンディング まとめとお知らせです

 

管理栄養士さんからの糖質制限食のお話です。食べ物は食べ物の専門家に。私たちは科学にもとづく、正しく安全なダイエットを提唱しています。

 

 

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執筆:米田 正始
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【第五十九号】異動のお知らせです

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いい心臓・いい人生 【第五十九号】異動のお知らせです
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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拝啓

初夏の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて私こと、

このたび高の原中央病院を退職し、より良い医療を求めて平成二十七年七月から

ハートセンターを設立するために大阪にある仁泉会病院へ異動することになりま

した。

患者目線で質の高い心臓・血管の医療を目指し、まず外来を7月1日からスタ

ート致します。

心臓・血管病の定期検診や治療・手術のご相談にお役立て下さい。

飛び入り受診も歓迎ですが、よりスムースな診察のため、できましたら事前の電

話予約をお願い申し上げます。

なお何かご質問やご相談がありましたら、外来あるいはHPのお問い合わせコーナー
から遠慮なくどうぞ。

敬具

平成二十七年六月吉日

仁泉会病院ハートセンター設立準備室
米田正始 拝
〒574-0044 大阪府大東市諸福8-2-22  JR学研都市線(旧片町線)鴻池新田駅か
ら専用送迎バスがございます

大阪市交通局の地下鉄では長堀鶴見緑地線 横堤駅(よこつつみ)が最寄り駅で
、こちらからも専用送迎バスがございます

お車では近畿自動車道・中央環状線の大東鶴見ICから近いです

電話 072─875─0100(代表)ご予約はこちらからどうぞ
病院の概要やアクセス詳細につきましては仁泉会病院ホームページを。 「仁泉

会病院」でご検索下さい。ハートセンター関係は只今準備中です
治療内容は心臓外科手術情報WEB 「米田正始」でご検索下さい。ちかいうちに

ここでもご案内をUpいたします。
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Copyright (c) 2009 心臓外科手術情報WEB
http://www.masashikomeda.com
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お便り116: MICSの複雑三尖弁形成術で人工弁を免れ、、

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三尖弁閉鎖不全症はそれ単独では心臓手術が必要になることは比較的まれです。

 

しかしあまり高度な逆流で心不全が強まり、症状が強く肝臓などの内臓にまで影響が及ぶようになれば手術が必要となることがあります。

IMG_1532B

実際、タイミングを逃して外科に紹介されたときにはすでにDICという末期状態のため手術ができず、そのまま失ったという経験が昔あります。

 

高度な三尖弁閉鎖不全症は油断できないわけです。

 

下記の患者さんは昔の交通事故が遠因となり胸部大動脈が傷ついて手術を受けられました。その後重症の三尖弁閉鎖不全症が発生し遠方からはるばるお越し下さいました。

 

弁尖つまり弁のひらひら部分がほとんど作動しない、ぶらぶらになって全然閉じることができない状態でした。おそらくは昔の交通事故のため弁を支える糸が多数切れてしまったのでしょう。

 

こうした場合、通常のリングをもちいた三尖弁形成術は効果がありません。

 

人工腱索が必要なのですが、三尖弁でこの方法を使える病院は数少ないのです。

 

私たちはこれまでペースメーカーによる三尖弁閉鎖不全症の手術経験を積むなかで、人工腱索を使うノウハウを蓄積して来たため、これは得意種目のひとつです。

 

下記の患者さんも、前尖、中隔尖、後尖とも逸脱していましたが、ゴアテックス糸による人工腱索を合計12本立ててきれいに治りました。つまり人工弁を回避できたわけです。

 

この操作を傷跡の小さい、骨も切らないMICSで行いました。患者さんには大変よろこんで頂けました。

 

以下はその患者さんからのお便りです。

 

 

これから楽しく活発な生活を楽しんで下さい!

 

 

******** 患者さんからのお便り *********

米田正始先生へ

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先だってお世話になりました石川県**市の**です。

お便り116.
あれほど苦しかった症状がなくなり、今は衰えた体力を取り戻そうと少しずつ活動を増やしているところです。

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思えば、4年前の大動脈瘤発症から急激に心機能が衰え、まだまだ働き盛りの年齢にも関わらず、仕事も続けられないほど病状が悪化し、米田先生に出会う頃には、息苦しさや動悸で自宅の階段がまともに登れなくなり、ほんの少しの距離でさえ休みながらでないと歩けなくなっていました。

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それまで、定期的に地元の病院で診察を受けており、「まだ手術の適用には至ってない」とのことで投薬治療を続けていましたが、自分の感覚では医師の言葉とは裏腹に、あまりのしんどさから、このまま薬の治療で本当のいいのだろうかと疑心暗鬼になっており、気持の落込みも酷くなる一方でした。

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そんな時、ネットで米田先生のサイトを見つけ、その中の“患者さんの声”を読ませていただき、自分よりももっと重症の患者さんが、米田先生の手術を受けて健康を取り戻した例を沢山拝見し、この先生ならきっと今の自分の状態を的確に判断してもらえると確信しました。

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しかしながら、調べれば調べる程大変有名な先生であるが故、何のつてもない自分が診察を受けることができるのだろうかと思ったり、又、自宅からも遠いので、先生のメアドを登録したものの発信する勇気がなかなか出ませんでした。

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そんな迷いに迷っていた時、間違えて発信ボタンを押してしまいました。本文の無い空メールに対して、驚くほど速く返信していただき、恐縮するやら感激するやらで、迷いに迷っていた自分の背中を押していただいた気がしました。

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すぐに自分の症状を伝えたところ、一度診察に来てくださいとのことで、コーディネーターと打ち合わせをして診察の予約をしていただきました。

 

診察の結果は、三尖弁閉鎖不全症と心房細動で、手術適用の時期とのことでした。

 

詳しい状況を分かりやすく説明していただき、自分の心臓の状態を確認することができ、手術を受けるしかないという一大決心もつき、その日のうちに手術を受けようと前向きな気持ちになれたのは、先生の的確な診断と手術の方法をお聞きできたからです。

 

又、遠方からということで、必要な検査も一日でしていただき、たいへんなご配慮をいただきました。これまでいくつもの病院にお世話にますましたが、ここまで気配りしていただいたのは初めてです。

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手術は、レアケースだったらしく、三尖弁の傷みが相当酷く、ほぼ人工弁にせざるを得ないだろうとの説明を受けていましたが、「弁形成」を希望していた自分の気持ちを汲んでくださり、相当な工夫や技術で弁形成をしていただきました。米田先生だからこそできたとありがたく思います。

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術後に肺気腫や、除脈等の合併症(?)発症というオマケがつきましたが、その都度、適切な処置をしていただき、無事退院までこぎつけました。

 

家までの帰り道、高の原駅まで歩いている時、入院の時に歩いたこの道がこんなにも近かったのかと驚きました。

 

手術前はやっとの思いで病院までたどり着いていたので、凄く遠かった気がしていたからです。本当に良くなったんだと実感できた瞬間でした。

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入院中は、米田先生はじめチーム米田のスタッフの気配りやサポートをいただき、遠方ゆえの寂しさも紛らわせていただき、深く感謝しております。

 

本当にありがとうございました。

 

お問い合わせはこちら

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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関西胸部外科学会にて

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第58回学術集会が岡山で開催され、出席して参りました。

 

会長は岡山大学呼吸器外科の三好新一郎IMG_1566教授でした。メインテーマは温故創新、三好先生らしい素晴らしいテーマと感心しました。温故知新から発展した考え方と思いますが、登録商標?のため5万円を権利者に支払われたという噂は本当でしょうか。それだけの価値はあったと個人的には思います。

 

岡山は榊原病院の吉田清先生のご縁があってこれまで何度もお邪魔しているせいか、何か楽しい地という印象が強く今回も楽しみにしていました。個人的にはシンポジウムでの発表が2つあり、さらに若手の受賞かけての発表も2つあったため、真面目に参加しました。

 

全体として若い先生方の教育やモチベーション向上のため配慮が十分された会だったと思います。学生諸君も多数参加しておられたようです。

 

3Kとも6Kとも言われる心臓外科、胸部外科にこころある若者が来てくださるよう、そのやりがい、楽しさを十分にアピールすることは大切です。ちょっと大げさに言えば、この国の将来がかかっているとさえ思えます。

 

さて一日目には朝からYoung Investigator Awardsのセッションが続き、若くて熱い議論が交わされていました。

それから心臓・大血管のビデオセッションに参加しました。神戸大学の肺肉腫に対する腫瘍摘出術+右肺全摘術はこれまでの心臓手術と集学治療を集めた優れたものと感心しました。ベントール手術がらみの興味深い症例が北野病院や徳島日赤病院から発表されていました。兵庫医大のベントール手術後の大動脈弁置換AVRは私にとっては25年も昔のトロント時代から行っているHome-madeグラフトなのでうれしく思いました。京都府立医大のELITE法による左室形成術と乳頭筋吊り上げの僧帽弁形成術も同様でした。

cTAGをもちいたステントグラフト、手術の際にそれを使うオープンステント、Jグラフトのオープンステントも興味深い内容でした。

 

ランチョンセミナーでは大阪大学の倉谷徹先生の大動脈解離にはcTAGでっか?という大阪人らしい実質本位の素晴らしい講演がありました。これからステントグラフトはさらに進化する、上行大動脈さえ外科手術から離れるかも、しかし急性解離のエントリー閉鎖パッチや、慢性解離でのTEVARなど、限界もまた見えて来た、おそらくその限界を超えて見せようという気概も感じられたハイレベルのご講演でした。

 

三好会長の立派な会長講演につづいて、ドイツのシェーファー先生の講演がありました。
大動脈弁形成術ではいまや世界の最高峰と言われるシェーファー先生の緻密なジオメトリー研究とより良い弁形成の結果を拝聴し大変参考になりました。ちかぢかブリュッセルで同先生と双璧をなすクーリー先生らとの共同シンポジウムがあり、私も楽しみにしてますよとお伝えしたところ、待ってるぜ!とのことでした。

 

大動脈弁形成術はまだ進化の途中にありますが、かなり完成度が上がったと思います。これからより多くの患者さんたちのお役に立つと期待しています。

 

それから大動脈弁形成・大動脈基部再建のシンポジウムがありました。畏友神戸大学の大北裕先生と同・倉敷中央病院の小宮達彦先生の司会で行われました。

 

まず東邦大学の尾崎重之先生が尾崎弁の最近の展開を報告されました。完成度がさらに上がった感があります。

有力施設からの大動脈基部再建や大動脈解離とARなどのご発表に交じって、私はMICSと弁形成とバルブインバルブTAVIの観点からお話させて戴きました。こうした視点の発表は他になかったためか、一部のMICS専門家の議論になったように思います。これからさらに完成度を高めつつ、多くの病院で役立てて戴けるよう、啓蒙活動が必要なようです。

 

医療安全講習会では疲労と事故についての貴重なお話を名古屋大学の相馬孝博先生から戴きました。これまで疲労なんてへっちゃらさと思って来ましたが、やはり人間が起こすミスを科学的に減らすという観点から一段高いところから自分自身を監視するマインドフルな姿勢、疲労対策は大切と思い、勉強になりました。

自分だけでなく皆で楽しくストレス発散、なども大切なようです。

 

夜は全員参加の懇親会がありましたが、若い先生方や学生さんたちも参加されており、良い雰囲気でした。

 

学会2日目は朝から若手アワードつまり受賞のための発表コンテストに参加しました。当院の小澤達也先生が、興味深い症例2例を発表してくれました。小澤先生が発表してくれたのは次の2例でした。

 

1つは世界的にも珍しい神経鞘腫というタイプの心臓腫瘍でした。手術前は粘液腫と思われていましたが、その位置が普通と違い、大動脈基部に近いため、場合によっては大動脈弁や僧帽弁形成術を含めた大手術の可能性もあったため正中からアプローチしました。完全切除でき患者さんはお元気に退院されました。傷跡も小さく、夏服が着られるとよろこんで頂きました。

 

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受賞風景です。小澤君はこの日の夜当直のためすでに会場を去っていましたので彼の姿はこの写真にはありませんが。

もうひとつは、他の病院で2回弁置換手術を受けられた患者さんで、左室後壁が生体弁の先端のためにえぐれて瘤になり、このままでは破裂→突然死の恐れがあった患者さんでした。もとの弁を外して瘤になった左室後壁をがっちり修復補強し新たな人工弁を入れて治しました。患者さんは元気に退院されました。
あとで後者の症例提示が受賞したことを知り、小澤先生には大変良い経験をしていただけたこと、うれしく思いました。

 

立ち上げて軌道に乗って間もないかんさいハートセンターを去ることになった私ですが、最後にまたひとつ想い出が残せてうれしく思いました。

 

先天性心疾患の教育講演に少し顔を出し、国立循環器病研究センターの市川肇先生の右室流出路再建のさまざまな方法の講演を拝聴しました。頭の中がすっきり整理されたように思います。余談ながらあのラステリ手術のラステリ先生は37歳の若さで逝ってしまわれ、それを惜しんだメイヨクリニックの仲間たちがラステリの名前を残そうと努力して、ジャンプグラフトを何でもラステリ手術と呼ぶほどになったというエピソードをお聞きし、心に響くものがありました。

 

梯子してTEVARのシンポジウムを聴きました。天理病院の山中一朗先生のオープンステントの努力に頭が下がりました。

 

ランチョンでは滋賀医大の浅井徹先生の司会のもと、大動脈弁形成術の講演が2つありました。ひとつは心臓血管研究所の國原孝先生、いま一つは昨日に引き続きてシェーファー先生の大動脈弁形成術のお話の続編でした。

國原先生は日本での多施設研究を立ち上げつつあり、弁のジオメトリーや病態から始まって臨床結果さらに血行動態の詳細までを検討し始めておられ、その成果が楽しみです。

 

シェーファー先生は大動脈弁とそれを支える基部の形態を詳細に論じられ、大動脈弁形成で安定した成績を上げるために何が必要かを詳しく論じられました。同先生が創られたeffective Height測定ゲージの正しい使い方と誤った使い方なども、当然とはいえ、有用なお話でした。

 

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Chang先生の講演風景です

午後には韓国の畏友、Byung Chul Chang先生の不整脈外科の歴史と新たな努力についてのご講演がありました。思えば永い道のりを進んで来たものだと感慨深いものがありました。私にとってはまだトロント留学中の1991年ごろにアメリカの学会でJames Cox先生のお話に感銘を受け、それから徐々に進めて来た不整脈外科でしたが、そのころのデータなども拝見し私の心は若い日々にもどっていました。Yonsei大學での新たな試みなども紹介され、勉強になりました。

 

それを受けて、不整脈外科のシンポジウムがありました。

日本医大の新田隆先生はこの領域の新リーダーにふさわしい基調講演をされました。メイズ手術の際の肺静脈隔離のときにBox LesionとU Setのどちらが良いか、多角的に検討されました。これまで多数の立派な研究が一見矛盾するような結論になっていた理由がある程度理解できました。

ともあれ肺静脈隔離や冠静脈洞などのアブレーションを完璧に行うことの重要性は間違いないようです。

 

国立循環器病研究センターの草野研吾先生は循環器内科の不整脈治療とくにカテーテルアブレーションの最近の進歩と成果をきれいにまとめられました。正確な治療のための3Dマッピング、より安全に深達度を増やせるイリゲーションカテーテル、冷凍凝固バルン、その他新デバイスの数々は素晴らしいと思いました。

外科もこうした内科の進歩を積極的に取り入れ、ハートチームの仲間としてふさわしいものを着々と造らねばと思いました。

その他ガングリオンプレクサスへの外科的アブレーションの工夫努力、メイズ手術での盲点の克服その他興味深い内容たっぷりでした。

 

私はMICSでのメイズ手術とくに心房縮小メイズについてお話しました。心房拡張が心房細動IMG_0820bの治療成績をもっとも悪くする因子のひとつなのに、外科ではまだそれほど心房縮小の努力がされていません。

 

10年ほど昔にアメリカ胸部外科学会AATSその他で心房縮小メイズ手術を発表して以来、継続的に発表して参りましたが、なかなか普及するまでに至っていません。慣れるまでは難しい手術と思われているようです。

 

それをさらに難しいMICS(写真右、傷跡の長さは5cm台です)で行うのですから、いっそう多くの外科医が敬遠するのかも知れません。今日の手応えをもとに、これからは心房縮小メイズとMICSメイズの両方の視点から啓蒙活動したく思いました。

 

最後にこの秋から始まる医療事故調査報告制度のご説明が岡山大学名誉教授の清水信義先生からありました。この制度は医療事故を予防するために、10年近く前からモデル事業としてトライされた事業の完成版です。これによって訴訟が激減したという実績があります。ただ病院経営者のなかには、これによって訴訟が増える、おそらく報告書を患者さんのご家族に見せるから訴訟になるというお考えの向きが多々おられるそうです。

 

しかしそれは清水先生によればご家族に事実を見せない、結局は破たんする姿勢でありもともと論外の考えとのことでした。これはいわば、患者さんが不幸にして亡くなってもきちんとした説明がなされてご家族が疑義を抱かないことが大切であるという意味でもあるようです。私は一人立ちして以来20年以上、訴えられたことはありませんし、亡くなられた患者さんのご遺族さえご支援くださったのは、そうした姿勢のおかげと思っています。

 

ともあれ、全力投球の医療を行い、第三者的評価に耐えられる内容としっかりした説明を行うことを基本にすればこの報告制度は良い結果をもたらしやすいと感じました。まずは襟を正して気をひきしめて日々精進して行こうということでしょう。

 

最後に上記の受賞式がありました。当科の小澤先生は当直業務があるため早々に帰途についていましたので式には出席できませんでしたが、私がその旨お伝えして了解を頂きました。

 

近年、心臓血管外科や呼吸器外科など、メジャー外科は厳しいしんどいつらいといういことで若手が敬遠する傾向が強くなっています。学会をあげて有為な若者を支援する、育てる、これは大変重要なことで、今回の関西胸部外科学会も大きな貢献をされたことと思います。

会長の三好先生、岡山大学の皆様、お疲れ様でした。

 

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り115: MICSの僧帽弁形成術で健康を回復し

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僧帽弁閉鎖不全症つまり弁がきちんと閉じずに血液が逆流する病気は残念ながら進行性です。

その程度が軽いあいだは良いのですが、重くなると左心室や左心房への負担も増加していきます。

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下記の患者さんはこの僧帽弁閉鎖不全症で半年以上前に神戸から私の外来へ来られました

歯の治療の際に感染性心内膜炎、略称IEを発症してからこの病気になられたそうです。

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当初は逆流は強くても心臓はがんばって持ちこたえていたため、お薬で経過を見ていました。

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ところが次第に左室、左房が拡張し症状も強くなって来たため心臓手術を決意されました

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もとの病院では弁が壊れているため胸の真ん中を大きく切って、しかも人工弁を入れる手術しかないと言われておられましたが、

私が拝見したところ、MICSで傷跡の目立たない、しかも僧帽弁形成術で行けると判断したため、

患者さんも前向きになって下さったようです。

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手術は弁の悪いところを取るだけでなく、壊れた部位が広かったためゴアテックスの人工腱索つまりきれいな糸をもちいて弁形成を完遂しました。

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お元気に退院して行かれました。

以下のお手紙はその患者さんからのものです。

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これから前向きに、楽しく活発にお過ごしください!

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****** 患者さんからのお便り *****

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米田先生へ

先生、この度はひとかたならぬお世話になりましてありがとうございました。

ミックス手術による自己弁形成をしていただき、私は今、もったいないくらい幸せです。

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ICUで術後初めて先生にお目にかかれました時の喜びは、心に深く刻まれています。

一口めのアイスクリームも甘くて冷たくておいしかったです。

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私は、先生に治していただいた心臓を大事にして、

充実した日々を過ごせますよう体調管理に努めてまいります。

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先生も大変お忙しいおからだと存じますが、どうぞ御大切になさって下さいませ。

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そして、先生をお慕い申し上げますたくさんの患者さんのひとりとしてこれからもずっとご指導下さいませ。

よろしくお願いいたします。

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先生、本当にありがとうございました。

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       ❤

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執筆:米田 正始
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お便り114: 92歳でも大動脈弁狭窄症を克服し

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大動脈弁狭窄症(略称AS 、エーエスと呼びます)は80歳前後から急速に増える病気です。

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かつてはリウマチ性の弁膜症として起こることが多かったのですが、近年は高齢化社会とあいまって、動脈硬化が弁尖(ひらひらと動き開閉する部分です)に起こり、弁が硬くなって起こることが増えました。193510016

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この大動脈弁狭窄症 ASになると、左心室の出口をなかば閉ざされたようになり、次第に無理が起こります。

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とくにこれが重症となり、息切れやふらつき、あるいは胸痛などが起こってくると1年以内に大半の方がいのちを落としてしまうというデータさえあります。

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そのため日本循環器学会のガイドラインでも症状のある重症ASには手術が必要ということが明記されています。

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この患者さんの場合は1年前から心不全が悪化し下肢のむくみなども起こっていました。心臓手術、具体的には大動脈弁置換術(AVR)が比較的安全にできる見込みが立ったことと、大動脈にも硬化がありカテーテルで入れるTAVIは当時まだ発展途上ということもあり心配があったため十分な検討ののち前者を選びました。

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術後経過は良好で十分な心臓リハビリののち退院して行かれました。

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外来でいつも最高の笑顔を見せていただき、うれしく思っています。

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ご高齢とはいえ、広い庭で草引きをしたり、買い物に行ったり、お元気な生活を楽しんでおられるご様子で、治療をお任せ頂いた者としてジーンとなってしまいます。

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以下はこの患者さんが退院されるときのご家族からのお手紙です。

毛筆の素敵なお手紙でした

短くても実感のこもったものでした。

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これからも外来でお元気な笑顔を見せてください。
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********患者さんからのお便り*******

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この度は先生のお陰により又、

生命を継ぐことが出来、

本当に有難うございました

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生かされた命を大切に日々送ってもらいたいと思って居ります

心より感謝申し上げます

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       ❤

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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2015年度のAATSアメリカ胸部外科学会にて

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今年もAATSに行って参りました。珍しく西海岸のシアトルで開催されました。

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心臓血管外科領域では世界の最高峰に位置する学会で、そこには世界の顔が集まり、最新の知見と豊富な経験をもとにした議論が交わされるため、参加しました。同時にこの会は正会員が世界で600名限定で、かつ毎年参加することが義務づけられていることも理由です。

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米国の学会といっても、実質世界学会で、ここにいればおのずと世界の情報が集まり、また旧交を温め、新たな仲間を造れるため重要な業務とさえいえる学会です。もともとヨーロッパからの参加も多かったのですが、近年はさらに増え、そしてアジアの仲間の数も増加の一途で、素晴らしいことと思います。

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その分科会ともいえるMitral Conclaveつまり僧帽弁の専門的シンポジウムが直前にニューヨークで開催されたため、多くの会員はニューヨークから一緒に移動していました。

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学会本会の前日に成人心臓血管外科、同先天性、そして胸部外科つまり肺縦隔の3つに分かれて恒例の卒後教育シンポジウムが開催されました。
私はもちろん成人心臓外科に参加しました。今年はDicision Makingにとくに重点を置いた構成でした。

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まず冠動脈ではCABGがどんなときにカテーテルでのPCIより優れているか、動脈グラフトは何本使うのが良いか、質の維持をどうするか、ハイブリッド治療やロボットその他の方法とどう使い分けるか、などの観点から欧米の有名どころが最近の知見を解説してくれました。

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確かに心臓外科の占めるウェイトは減った、しかしまだまだお役に立てる領域がたくさんある、患者さんの重症度が増すにつれてそれはむしろ増えることもある、その場合にうまくハイブリッドや低侵襲治療を駆使してリスクが上がらぬようにする、そうしたことをあらためて認識しました。

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引き続いて弁膜症のセッションとなりました。大動脈弁と大動脈をどうするか、これはとくに二尖弁の場合に重要です。院内でもいつも熱いディスカッションになるのですが、ここでも最近の知見をもとにしてより長期の安全を確保する方法が論じられました。

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生体弁と機械弁の使い分け、ARに対する弁形成がどこまで使えるか、弁サイズの問題いわゆるPPM(患者と人工弁のサイズミスマッチ)、外科的AVRとTAVIと薬の比較、そしてステントグラフトまでが論じられました。TAVIの発展が患者さんに益する治療に結びつくよう、ハートチーム全体でしっかりと取り組まねばならないと再認識しました。

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ランチョンセミIMG_1412ナーはLegend(伝説)セッションで、心臓外科の中で伝説の名人にその半生を語って頂くという企画でした。今年は我が恩師Tirone E. David先生が話をされました(写真右)。Adams先生の司会で、弟子を代表して畏友Michael Boger先生が想い出を語りました。あのころを想い出し、思わず熱くなってしまいました。若い先生方にこうした忘れ得ぬ経験を積んで頂きたいとも思いました。その前後にこれらの先生方ともゆっくり話ができて楽しいひと時でした。

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午後にはMVRと心房細動の治療(心房細動は放置しないように)、僧帽弁と三尖弁の同時手術、僧帽弁形成術のときにSAMを防ぐこと、僧帽弁形成術の長期成績、虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対して弁形成するか弁置換するか、カテーテルによるMクリップをどんな患者に対して行うか、心房細動に対する外科アブレーションでどの方法を使うべきか、機能性三尖弁閉鎖不全症をどんなときに治すべきか、などなど、現代的課題がつぎつぎと論じられました。

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虚血性MRに対する僧帽弁形成術や心房細動の手術などでは我々のほうが進んでいるところもあり、あとでディスカッションすることになりました。もう少し症例数があれば講演でより多くの方々のお役に立てるのですが、そこはまず日々の努力からということでしょうか。

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最後のセッションでは救急での対応、カテ室での事故があったときの迅速な対応、術後の高度な心不全、大動脈解離、心筋梗塞後の心室中隔穿孔VSP、外傷による大動脈破裂、などが論じられました。ここでも我々のVSP治療の成果その他で貢献したいところでしたが数が足りず、今後の努力と楽しみにということにしました。

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翌日からAATS本会が始まりました。テキサスのCoIMG_1421selli先生(写真右)の胸腹部大動脈瘤3000例の検討は圧巻でした。これぞ心臓血管外科、これこそAATSという、かつての感動を新たにしながら拝聴しました。毎回、毎年、そして10年ごとにデータを解析し改良を加えていると聞き、うれしくなりました。

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Adams先生らの僧帽弁手術の際の三尖弁形成術の有用性という発表には激しい討論があり、これまた長期の膨大なデータで科学的にものを論ずる欧米ならではの良さを感じました。要するに将来三尖弁閉鎖不全症が発症する患者さんをきちんと見極め、それらの方々に予防的三尖弁形成術を行えばと思っています。そうした方々にはより短時間でできる、簡便な方法で侵襲を増やさずにできる、これも今後有益になるのではと思います。

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優れた発表が続いたあとで、新メンバーの紹介がありました。この会のメンバーになるということは一流の、少なくとも一人前の心臓血管外科医として認められることであり、皆嬉しそうでした。その中にはアメリカの友人も数名おられ、あとでお祝いを述べ、楽しいひと時でした。畏友Chris Malaisrie もその一人でした。おめでとう。

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会長講演はボストンこども病院のDel Nido先生(写真右)のIMG_1422「科学技術の進歩と心臓胸部外科」というテーマでこつこつと謙虚に貢献を続けてこられた同先生ならではの内容だったと思います。講演前から聴衆が総立ちで拍手したところに同先生の人徳がうかがわれました。

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そのあともTAVIや僧帽弁形成術、僧帽弁膜症にともなう肺高血圧症、AFに対するCox-Maze手術、などの優秀演題が続き、参考になりました。

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夕方にはレセプションがありましたが、今回は総じて日本からの参加が少な目で、Mitral Conclaveがニューヨークであったことも手伝ってか、あまり長期間あちこち行けない状況があったのではと感じました。

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本会二日目は朝7時から、実験研究や先端技術・デバイス、そして手術ビデオのセッションがあり、全部に出たいのですが一つしか選べないため今回は手術ビデオにしました。

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工夫された面白い手術が多数供覧され大変参考になりました。これまでの手術にさらに改良を加えて完成度を上げた、そうしたタイプのものが多く、概念を変えるほどのものはありませんでしたが、良いセッションだったと思います。
かんさいハートセンターがスタートして1年半がたち、そろそろこうした会で発表できそうな、他施設でもお役に立てそうな手術が増えて来たため、来年は演題を出そうと思いました。

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そこからまた本セッションが始まりました。大動脈基部再建の方法4つを比較した、クリーブランドクリニックからの優れた発表に、熱いディスカッションがあったのが印象的でした。機械弁ベントール手術は確かに安定性に優れた方法で、しかしTAVIとくにValve in valveを念頭に生体弁ベントールが急増しており、その中で確実に弁を治せるならDavid手術は素晴らしい、そうしたことを再確認できました。さまざまな状況下でそれに応じたきめ細かい対応がこれから重要になっていくとも思いました。

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それやこれやで充実した数日間でしたが、あまり仕事に穴をあけるわけにも行かず、あと一日あまりを残して残念の帰国となりました。

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留守を守って下さった高の原中央病院と同かんさいハートセンターの皆様方に深謝申し上げます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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