【第三十二号】 東海テレビに出演いたします

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【第三十二号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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いつのまにか汗ばむ季節になりましたが皆様には如何お過ごしでしょうか。

私は相変わらずばたばたと忙しくさせて頂いております。

心臓手術は年々進化し、これまでどおり重症の患者さんから逃げずに頑張る
とともに、より確実に、かつ小さい創で早い社会復帰ができるような工夫も
しています。

そういう努力がどこからか伝わったのでしょうか、
東海テレビという、東海地方ではおなじみのテレビ局のスタイルプラスという
日曜日の人気番組の担当の方から連絡がありました。

その番組のなかの仕事人列伝というコーナーで心臓外科医としての仕事ぶりを
紹介したいというわけです。

今週1週間、毎日記者の方とカメラマンさんに追いかけられての仕事でした。
そのつど患者さんのOKを頂いて、インタビューにも応じて頂きました。
みなさん、手術前後のストレスのある時期にもかかわらず、笑顔で応対して
くださり、頭が下がる思いでした。

こうした番組を通して、心臓手術をあきらめて死を待っている患者さんたちや、
ベストタイミングを逸してしまった方々に元気を出して健康を勝ち取って
いただきたく、番組の取材に協力しました。

そういえばかつて京大病院に勤務していたころ、全国版の1時間テレビに出演
したときに、当時の院長さんから、そんな品のないことをしたらいけない、と
「ご指導」されたことを思いだしました。私はお高くとまった学者ではいたく
ない、庶民のお茶の間で啓蒙活動をするのも教授の立派な仕事と思っていまし
た。まあ見解や人生観の違いなのでしょうね。

この放送は6月3日、日曜日の正午からです。私が出るのは15分ほどらしい
ですが、なるべくお役にたつ内容のあるものに仕上げて頂けるものと期待して
います。

皆様のご意見を頂けましたら幸いです。
なお東海テレビが見れないエリアの方々には、後日、動画を私のHPに載せる
ことを考えております。

それでは皆様、6月3日でテレビでお会いしましょう。

敬具

平成24年5月26日

米田正始 拝

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Copyright (c) 2009 心臓血管情報WEB
http://www.masashikomeda.com
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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東海テレビのスタイルプラスで出演いたします

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緑が美しい季節になりました。みなさま如何お過ごしでしょうか。

名古屋ハートセンターは開設4年目、年々手術数も質も向上し、いまや北海道から沖縄まで、全国あちこちから患者さんが来て下さる心臓専門病院になりました。

大変光栄なことと、うれしく思うとともに、その責任の重さを感じています。

そうした中で地元では有名な番組、東海テレビのスタイルプラスから取材申し込みを戴きました。

東海仕事人列伝というコーナーで、6月3日日曜日正午から私、米田正始の仕事風景や患者さんとの協力場面などを通じて、心臓外科医療の実際をご紹介下さる予定です。

僧帽弁形成術などの心臓手術を小さい創で、骨をなるべく切らず、患者さんの体やこころの負担を軽くし、早い仕事復帰や社会復帰をはかる、ミックス手術ポートアクセス手術の現場や、難手術のひとつと言われる再手術を通じて、これまで何を求めて努力して来たか、あるいは医療のありかたはどうか、などが放送されそうです。

一部の大学病院などではなかなかできない、患者さん目線のキメの細かい、しかし足腰が強く迅速でベストタイミングで質の高い医療や心臓手術を提供するハートセンターの雰囲気も見て頂ければ幸いです。

また番組内容に対するご意見やご指導を頂けましたら、ぜひ参考にさせて頂きたく思います。

それではみなさん、6月3日にはよろしくお願い申し上げます。(追記:その放映録画はこちら

 

名古屋ハートセンター

心臓血管外科統括部長(豊橋ハートセンター副院長兼任)

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
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心臓外科のEBM(証拠にもとづく医学・医療)

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EBMは教授にもとづく医学医療ではなく、科学的データにもとづく医療とよく言われたものですEBMとはevidence based medicineの略称で、経験にもとづく医学医療や、教授や権威筋による医療などと対比して使われることもあり、「根拠(証拠)に基づく医療」の意味です。

多数の臨床試験で有効性が証明されている治療法を指します。心臓外科の例でいえば、最近のバイパス手術とカテーテル治療の比較をしたSyntaxトライアル(シンタックストライアル)でのバイパス手術が例として挙げられます。

EBMは、1991年にマクマスター大学(カナダ)で生まれ、その後広がって行きました。

当初は広く文献を調べ、目の前の患者への適応を判断し、診療することでしたが、しだいに個々の診療内容がどの程度、疫学的、統計的に効果を保証されているか、といった意味で使われることが多くなっています。

日本の医療界には1990年代後半に導入され、1999年ごろからかなり一般的になりました。心臓外科領域でもそのころから次第に認識されるようになりました。

EBMの証拠(エビデンス)にはいくつかのレベルがあります。

ランダマイズつまり無作為化が大切ですもっとも評価が高いのは、無作為化で比較した臨床試験データが多数ある場合で、その次は一つある場合、以下、臨床試験データや治療前後の比較報告、症例報告、専門家の意見、の順番になっています。

無作為化の臨床試験とは「二重盲検試験」とよばれるもので、患者をくじ引きで2グループに分け、医師にも患者にもどちらに当たるかを知らせず、片方に評価目的の薬、片方に偽薬などを与えるのです。

医師や患者の思い込みを排除し、治療効果を正しく確認するわけです。

ただし、患者にも医師にも歴然とわかる治療法は評価が1ランク落ちることになります。

厚生労働省は厚生省時代の1999年度(平成11)から標準治療として、EBMにかなった診療ガイドラインづくりを始めました。

学会独自のものも含め、多くのガイドラインが完成しています。

Ilm09_aj06018-sEBMでは、常に最新で最良の知識を得ることが出来ます。

したがって、EBMが普及すれば、知識の新陳代謝が活発な医師、つまり、患者さんにとってのよい医師が増えることにつながるのです。

また多くの情報を共有し合うことによって、患者さんと医師は、同じ視点に立てるようになるでしょう。

これからの医療は、そのような患者・医師の信頼関係、協力関係の上に実現されていくものと考えられます。

EBMによって、医療の質が高まり、患者さんがその恩恵に浴することが大いに期待されます。

しかしEBMは診療の参考にはなるものの絶対的なものではありません。

第一にデータ蓄積までに時間がかかるので、特定の医師しかしていない新しい治療は、たとえ有効でもEBMにはなりません。

とくに重い疾患では患者にとって生きるか死ぬかの状況で無作為化そのものが患者に対して大きな負担や苦痛、リスクとなる懸念もあります。

心臓外科の関係でも Ilm09_dd01002-s無作為割り付けの研究ができていない領域があり、それは重症例や手術による死亡率がまだ高い疾患の場合です。

たとえば全身状態が悪い患者さんでのバチスタ手術やバイパス手術などはなかなか無作為割り付けはできません。それは倫理上の問題があるからです。

また、日本の漢方薬のような多数成分の複合治療は高レベルのEBMにはなりません。

質のよい臨床試験はお金がかかるので、資本力の強い製薬企業などに有利、といった欠陥もあります。

EBM全盛のなかで、反省や反発もあります。

EBMを補う考えとしてNBM(narrative based medicine)も重要視されつつあります。

Ilm17_bc01015-sNBMは多数の統計ではなく、個々の患者との対話を重視し、病気の背景を理解し、全人格的な対応をする医療です。

narrativeは「対話に基づく医療」という意味です。

最終的にはEBMとNBMの組合せが大切になるものと予想されます。心臓外科の場合も同様でしょう。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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ハートチーム【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月6日

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◾️ハートチーム

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ハートチームという言葉が急速に市民権を得つつあります。

GuidelineCABGvsPCIなんとなく昔からあるような名前ですが、現在の意味のものは2010年のESC ヨーロッパ心臓学会/EACTS ヨーロッパ心臓胸部外科学会の狭心症治療ガイドラインのころからでしょうか。

右図はそのガイドラインのまとめを示します。緑色のところが強く推薦されている治療法です。

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◾️ハートチームの仕事は

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Ilm09_aj06015-s具体的には、冠動脈狭窄症(虚血性心疾患)の治療の際に、内科と外科が集まって、議論ののち、両者のなっとく行く方針を立てる、その集まりがハートチームです。

ハートチームのOKなしには、これまでのように誰かが独自の判断で自分の好きな治療ができない、という方向性でのチームです。

この考え方は大きなインパクトがありました。

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◾️ハートチーム、日本では

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何しろ日本では、これまで、内科のPCIつまりカテーテルによる冠動脈治療は内科の先生がやりたければ何でもやれるという傾向があったからです。

患者さんは狭心症などがあればまず内科の外来へ来られます。

つまりほぼすべての患者さんを内科の先生は「握って」おられるわけです。

外科の冠動脈バイパス手術も同様かといえば、外科は内科からの紹介のうえで手術しますから、構造的に独走はできないようになっていました。

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◾️ハートチームの背景は

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MACCE3yrsHighハートチームが提唱されるようになった背景にはあのシンタックストライアル(Syntax Trial)で外科の冠動脈バイパス手術が内科のPCIにくらべて、重症例で有意に優れた成績を出していることが明らかになったことが挙げられます。

右図はその結果の一部を示します。冠動脈バイパス手術後は死亡やトラブルが少ないことがわかります。

冠動脈バイパス手術は治療成績が良い、とくに患者さんが長生きできるのに、なぜあまり行われないのか、という議論の中で内科にも適切なチェック機構が必要という考えが出てきたわけです。

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◾️ハートチーム、新たな展開

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ハートチームの効用は、冠動脈狭窄症にとどまらず、他の心臓病たとえば弁膜症でも出てきています。

Tavrなかでも大動脈弁狭窄症などに対するTAVITAVR)という折りたたんだ生体弁をカテーテルで大動脈弁位にもちこんで、そこで拡張し取り付ける方法では、内科と外科の両方の意見が十分にとおるような仕組みを造る方向で検討がなされています。

これも心臓手術の大きな進歩になることでしょう。

 

また大動脈瘤に対するステントグラフト(略称 EVAR)でも内科と外科の両方の意見が入るような仕組みができています。

 

患者さんに良いものを、ベストのものを、というスタート点からハートチームは当然の帰結と思います。

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◾️私たちのハートチーム

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私がかつて勤務していた名古屋ハートセンターでも平成25年4月から構造改革が進ilm20_ae04023-sみ、毎朝内科外科の合同カンファランスでお互いの意思疎通や理解を深める工夫を行っています。毎朝笑顔であいさつし、重症患者さんの治療方針や一般的な課題や問題を自由にディスカッションしています。

ようやく理想の病院づくりが本格化したと感慨深いものがあります。

2016年から仕事を開始した医誠会病院でも同様のハートチームが機能開始し、楽しくかつ効率的にEBMが実践できています。

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◾️困難を克服するハートチーム

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循環器の領域では日本のあちこちで内科と外科が競合し反発する傾向が指摘されています。

これでは患者中心の医療は進歩しません。

わがままな医師を再教育し、治らなければ排除してでも良い医療のしくみを勇気をもって進める時代なのです。

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循環器内科と心臓血管外科は競合的(competitive)ではなく相補的(complimentary)であるというのは欧米の学会でも強調されていることで、当然のことと思います。

今後こうした真のチーム医療がますます進歩してくれることを期待しています。

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執筆:米田 正始
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心臓外科医の資質

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HP用◎カバー+帯田正始― 外科医の資質

日本の医療界の慣習に異議を唱え、単身海外へ飛び、一流の外科医となった米田。グローバルな視点から、外科医の資質として必要なものはなにか聞いてみた。

「三つあります。一つは、ネバーギブアップの精神です。目の前の患者さんをなんとしても助けようと思って全力を尽くすこと。そのために必要な勉強や技術があれば、どんな努力をしても習得する、という気持ちがなくてはいけません。

もう一つは、手術は一人ではできませんから、技士やナースなど、周りのスタッフをチームとして動かすことができる能力が必要です。そして、最後にバランス感覚です」

心臓手術をしていれば、突発的に予想もしなかったようなハプニングが起こることはよくある。その時に、パニックにならずに落ち着いて対処できるかどうか。ここでバランス感覚が重要となる。

そのためには、どんな状況にも慌てないよう、常にいろんなケースを想定した訓練をする必要があると米田は言う。

「縫うだけなら、ある程度のトレーニングでできるようになりますから、何もイレギュラーなことがなければ、上手に手術できる人はいます。でも、何か大変なことが起きたとたん、めちゃくちゃになってしまうようではいけません。

例えば、突然心臓が止まってしまった。どんな原因が考えられ、どう対処したらいいかなど、日頃から様々なシュミレーションをしておく必要があります。ですが、そのシュミレーション自体も場数を踏まなくては、どうやったらいいのかがわかりません。

だからこそ、数が大事なのです。自分が執刀しなくても、何千、何万という手術を真剣に見て、ディスカッションする。すると、中に数十例、数百例ぐらい、とんでもないことが現実に起こります。

その時の対処法を頭の中に入れておくことです。そうすれば、大変な事態が起こっても慌てることなどないはずです」

国内だけでなく海外でも豊富な経験を持つ、米田ならではの重みのある言葉だ。だが、それだけの症例を行っても、毎回必ず前向きの反省が生まれるという。

「今日は何も得るものがなかった、なんていうことはまずないです。若い先生なら、なおさら一例一例が勉強になります。他の先生の手技をできるだけ多く見て、いろんなシュミレーションをしながら、バランス感覚を磨くことです。『熟練度』が非常に大切なのです」
「手術は日常の中にある」という大川も同様の発言をしている。

「結果はよくて当たり前ですが、本当に満足のいく、完璧な手術ができたと思えるのは年にいくつあるかという感じですね」

どんなに経験を重ねても、またどんな立場になろうとも、一つ一つの手術から新たな学びを得て、さらに自分自身を成長させていく。この姿勢こそ、一流オペレーターに欠くべからざる資質なのではないだろうか。

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断らない、待たせない、温かい

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HP用◎カバー+帯米田正始― 断らない、待たせない、温かい

二〇〇八年一〇月、名古屋に新たなハートセンターが立ちあがると、米田は副院長(心臓血管外科部長)に就任。スーパーバイザーという特別な立場ではなく、どっしりと腰を据えて、患者と向き合うこととなった。

彼に絶大な信頼を寄せる京都時代の患者たちにとっても、身体に何か大きな異変があった時、名古屋であれば行けない距離ではない。彼らも正式な「米田の手術再開」を心から喜んだであろう。

同院は、「患者様第一」という鈴木の理念を受け、
「患者様サイドに立った医療の実践」
「やさしいまごころのある医療の実現」
をスローガンに掲げている。

「『断らない、待たせない、温かい』が当院のモットーです。当たり前のことなのですが、現実には多くの病院でこれができていません」と米田は言う。

リスクマネジメントとして、複数の病気を抱えているような重症患者を断る大病院もあるという。助かる見込みが薄いのなら、最初から受け入れなければ、労力をかけなくてもすむし、その病院としての死亡率も上がらなくていいだろうというわけである。さらに付け加えると、手術の失敗などによる訴訟の心配もない。

だが、ハートセンターではそうした重症患者でも、二四時間体制で、断ることなく受け入れる。そして、その困難な病状に、医師、スタッフ、患者が一丸となって全力で立ち向かっていく。これが、米田の目指す「断らない」医療である。

リスクは高いが、積み上げてきた経験と実績もある。最大限の努力で可能な限り危険度を低くすることはできる。そのために、患者との信頼関係を築くことも欠かさない。

「どんな患者さんに対しても、インフォームドコンセントとして、データベースに基づいたリスクの説明を必ずします。手術をした場合としなかった場合の比較、ほかの医療施設との比較。この二本を軸に、手術する箇所以外にこれといった病気をもってない患者さんとの比較などです。また手術前は、心ゆくまで質問していただけるように、外来とは別に時間をとって無制限一本勝負でやります」

透析を受けていたり、糖尿病を患っていたりすれば、手術を受ける際の危険度は何倍にも増す。そのことを、本人(およびその家族)にしっかりと理解し、納得してもらった上で治療を行う。これは「温かい」医療にもつながってくる。

「待たせない」医療については、みなさんにも経験があるだろう。調子が優れないから病院へ行ったのに、一週間後にエコー検査、三週間後にCT検査、診断の結果は五週間後に外来で、というようなケースだ。

大学病院などの大きな施設では、複数の科との調整が必要なため仕方ないのかもしれないが、何度も行き来するのは実に不便だし、かなり先まで自分の病気が何なのかわからないということが何よりも不安だ。

その点、ハートセンターなら前もって相談しておけば、検査から医師による結果の説明まで、すべて一日で可能だ。患者にとっても、一カ月以上も待たされるより、その日に分かった方がいいに決まっている。

米田が京大ではできなかった、患者の側に立った三つの医療。名古屋ハートセンターで実践中だ。

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医師の一分

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  HP用◎カバー+帯米田正始― 医師の一分

米田をトップから外した京都大学病院の心臓血管外科は、OBの医師を呼び寄せ、四月一六日からなんとか手術を再開したものの、八月までの実績がたったの四件というお粗末な結果だった。患者たちは、「米田の手術再開」を待ち望んでいるのだ。

泥沼の様相を呈するかにみえた京都大学とのいざこざも、八月二四日、急遽解決をみることとなる。

「米田がいったん診療科長に復職した後で退職し、その後も病院の外部調査委員会による心臓血管外科の調査、検証に協力する」といった内容で和解したのである。

九月一四日、病院側に大学での手術実績を十分に認めさせた上で、診療科長に返り咲くと、翌日、辞任。母校を離れることにはなったが、結果として、心臓外科医としての面目を保つことになった。

米田は、この訴訟は「医師の一分」であったと、和解前に行われた『新潮四五』(二〇〇七年一〇月号「『神の手』心臓外科医辞任へ どこへ行く京大病院」)の石岡荘十によるインタビューの中で答えている。

「黙って辞めたら『あいつ手術成績が悪いから辞めたに違いない』と言われますから、訴訟で自分の筋を通したいのです。『武士の一分』というか、『医師の一分』みたいなものです」

世界が認めた外科医としての並々ならぬプライドが垣間見える。そして、同インタビューは以下の言葉で締めくくられる。

「九年間、京大病院を世界に誇れる高度で理想的な病院にしようと頑張ってきましたが、ダメでした。でも、努力を続けます。今度は京大の外に出て、患者を救うことに集中します。(中略)京大スピリットを忘れずに、二つの民間の心臓病専門病院を拠点に京大ではできなかった仕事をしていこうと思っています」

海外で当たり前のようにやってきたことが、一般に日本で最も信頼できる医療機関と思われている大学病院では、さまざまな構造的要因もあり、通用しなかった。

そこで米田は、「京大ではできなかった仕事」を実現するため、「二つの民間の心臓専門病院」に向かう。

一つが、米田同様に海外で修業を積み、多くの著書や、人気マンガのモデルとしても知られる南淵明弘(現・東京ハートセンター 心臓血管外科センター長)が心臓病センター長を務める大和成和病院。そして、もう一つが豊橋ハートセンターだった。いずれも、二四時間、常時患者を受入れられる体制を整えており、年間三〇〇例近くの心臓手術の実績もあった。

二〇〇七年末、自身にとって理想的な環境を持つこの両病院で、スーパーバイザーとして再スタートを切った米田。神奈川県と愛知県を行き来しながらも、臨床の現場で心臓手術を行える日々が帰ってきたのである。

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母校・京都大学との泥沼のたたかい

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HP用◎カバー+帯米田正始― 母校・京都大学との泥沼のたたかい

帰国した米田を待ち受けていたのは、海外とはおよそかけ離れた、旧態依然とした大学病院のシステムだった。彼を最も驚かせたのは、心臓手術の回数について「枠」があてられていたことだった。週三日、一日一件しか手術室を使えないというのだ。

心臓に限らず、手術を行うには、手術室、看護師、麻酔科、ICU、病棟などのスタッフの協力が不可欠だ。彼らに負担がかかりすぎると、安全管理面にも支障をきたす、との理由から設定されたものだったのだが、大学病院という重症患者が多く集まる医療機関において、果たしてこれが妥当な「枠」なのだろうか。

米田は言う。

「症例数を絞ることが、安全確保につながるとは一概には言えません。それよりも、いくら頑張って仕事をしても報酬は一緒、という国公立病院の制度に問題があると言えます。海外では規程以上の仕事をすれば、それなりの手当ても出るし、評価もされます。努力しても報われないような環境だから、患者さんに対する気持ちより、公務員としての意識の方が強まってしまうのでしょう」

一人でも多くの患者に治療を施したい。またそうすることで、チームとしての「熟練度」と「スキル」がアップし、さらに多くの患者の命が救える。そう考える米田は、「枠」を増やすことに奔走する。各部門に頭を下げ、「枠」外の緊急手術を行ったこともしばしばあった。

だが、彼が扱うオペは難易度が高いこともあり、スタッフの負担や疲労度も大きい。他の科との手術室の調整も、頻度が増えるほど大変になる。病院の「調和を乱す医師」として、次第に浮いた存在となっていった。

手術前の患者に、自身の実績や情報をオープンにして細かく紹介する米田のやり方に対しても、院内からは「自己宣伝が過ぎる」と批判の声が上がったという。

当の患者やその家族からは、「執刀医のことがよくわかって助かる」と好評なのにも関わらず…。

そんな折、一つの事件が起こる。

二〇〇六年三月に京都大学病院で脳死肺移植手術を受けた三〇歳の女性が、手術中に脳障害を起こして意識不明となり、その後も意識が回復することなく、同年一〇月二四日に死亡したのである。

手術は、呼吸器外科を主担当に、心臓血管外科と麻酔科が協力する形で行われたが、病院はサポート役として立ち会っていた米田だけに、突如「手術停止」を宣告したのである。患者の死から二ヶ月後、一二月二六日のことだった。

理由は「安全上の問題」とされたが、EBM(evidence-based medicine:根拠(臨床結果)に基づいた医療)の視点からみても、それまでに彼が行ってきた心臓手術が「危険」なレベルにあるはずがなかった。到底納得することなどできない。

だが病院は、さらに追い打ちをかける。翌年四月より、心臓血管外科長のポストまで米田からはく奪することを決めたのである。

それを知った米田もさすがに黙っていなかった。

三月六日、「不当な降格人事で、手術できなくなる恐れがある」などとして、大学を相手取り地位保全を求める仮処分を京都地裁に申請する。

同日、米田の治療を受けている患者や家族らのグループもこの動きに呼応。二五〇一名の署名(註:その後2万5千に達しました)を添えて、手術の早期再開を求める嘆願書を病院側に提出した。

彼らは、この処分を「医療の安全の問題ではなく、病院側によるいじめのようなものだ」だと訴えた。

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海外修業で築き上げた「神の手」

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HP用◎カバー+帯米田正始― 海外修業で築き上げた「神の手」

「ハートセンターの真骨頂はハードというより、ソフトにあるんです」
開院三年目を迎えた名古屋ハートセンターで副院長(心臓血管外科)を勤める米田正始は、その特徴をこう話す。

それは、彼が前任地である、母校・京都大学医学部の教授職を辞し、ここにたどり着いた一つの答えでもある。

神の手を持つ医師―。

治療が極めて困難な病気を治すことができる名医に対して贈られる称号だ。彼は京都大学病院時代、いくつかの「余命数カ月」の命を救い、そう呼ばれるようになった。
当然ながら、患者の中には熱狂的な支持者も多い。では、そんな「神の手」がなぜ京都を離れなくてはならなかったのか?

「神の手」は一朝一夕に築き上げられるものではない。若い時からオペレーターや助手として関わっていくことがとても大切なのだが、日本の心臓外科の世界ではそれが非常に困難であることは先に述べた通りである。国内で早い段階から「熟練度」を上げていくことなど、先の大川のような例をのぞき、まず無理だ。

では、米田はどうしたか? この閉鎖的な日本を飛び出し、海外で経験を積むことを決心する。卒後六年目にあたる一九八七年、カナダのトロント大学へと渡るのである。

「欧米でも、日本以外のアジア諸国でも、世界の一流の大学病院では、年に六〇〇から一〇〇〇例ぐらいの手術が普通にあるのです。だから、病院側としても、学生に対して『君には今年一〇〇例受け持ってもらうよ、ぼくがちゃんと見ているからしっかりやるんだよ』というような形で、修練のプログラムが組める。こうして五年間なら五年間、その場その場で技術レベルを確認しながらステップアップさせて、修了時には、例えば三〇〇例を執刀できますよ、という保証をつけてあげられるのです」

在任した六年間に九〇〇例を執刀。そればかりでなく、恩師のTirone Davidとともに、心筋梗塞の合併症である心室中隔穿孔(左室と右室を隔てる心室中隔に穴が開く病気)に有効な術式「David‐Komeda法」を考案・発表するなど、多くの成果を残した米田は、その後、米スタンフォード大学へ赴任。ここでは、主に教育と研究に専念する。

一九九六年には、豪メルボルン大学へ移り、主任外科医(助教授)として、わずか一年半の間に三〇〇例の手術に携わった米田は、オーストラリアでも有数の心臓外科医として知られるようになる。

海外に滞在すること十余年。気付けば、執刀一二〇〇例、アシスト等八〇〇〇例超という輝かしい実績を積み上げていた。

当然のことながら、母校の京都大学がこれを見逃すはずはなかった。一九九八年、米田は心臓血管外科の教授として凱旋を果たすことになる。

四二歳の若さで、なおかつ研究畑ではなく、臨床一筋の医師を教授に抜擢することは、当時としては異例中の異例だった。大学はそれほどまでに高く彼を評価したのである。

 

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米田正始の心臓手術② 腱索転位術(Translocation)

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臨床に用いた時期 2003年―2009年
 

実施した施設 京大病院、名古屋ハートセンター
 

考案の目的と概略

虚血性僧帽弁閉鎖不全症で弁尖のテザリングが高度なケースでは僧帽弁輪形成術が通用しない。

Translocation1そこで乳頭筋吊り上げがKronらによって考案されたが、

生理的には乳頭筋先端から二次腱索を介して僧帽弁輪前中央部へ力がかかるため、

この方向に人工腱索を立て、左室を保護改善してから、自然の二次腱索を切断した。

これによって従来の二次腱索を切断する 術式よりも術後心機能が改善し患者の心不全が軽減した。

Translocation3 この術式は後に両弁尖形成法(Papillary Heads Optimization)へと発展していった。

上図は権威あるJTCVS誌の表紙に掲載されたときのものである。

左図は臨床でのデータを報告したものである。

 

内容の説明

Translocation2左図のように、

人工腱索を各乳頭筋ヘッドから僧帽弁輪の前中央部へ吊り上げ、

併せて二次腱索を切断する。

その後、積極的な吊り上げによって二次腱索の切断は不要となった。

 

Translocation4れによって左室機能は保護あるいは改善され、僧帽弁前尖のテント化は軽快―解消する。

上左図は動物心で左室Viewを示す。

左図は臨床例の成績を示す。

 

 

Translocation5Translocation6左図は乳頭筋先端にゴアテックス糸CV5を刺入しているところ、

右図はそのCV5を僧帽弁輪の前中央部から左房側へ刺出するところ。

このあと適切な張力のもと、プレジェット付で結紮する。

 
  この術式によってMRやテザリング高のみならず、左室収縮機能も改善した。

糸による左室形成術という位置づけで、機能性MRは心室の病気でその治療は心室を治すことが本質的と考える中で、この術式は妥当なものと考えられた。

 

発表論文(臨床の第一報)

Masuyama S, Marui A, Shimamoto T, Komeda M. Chordal translocation: secondary chordal cutting in conjunction with artificial chordae for preserving valvular-ventricular interaction in the treatment of functional mitral regurgitation.J Heart Valve Dis. 2009 Mar;18(2):142-6.

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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