事例:石灰化僧帽弁(MAC)と虚血性心筋症に僧帽弁置換を行った患者さん

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慢性腎不全・血液透析の患者さんには独特な注意とケアが大切です。

冠動脈はじめ全身の動脈に硬化がおこり、血管が詰まったり狭くなったりします。

また僧帽弁や大動脈弁も壊れやすくなります。

とくにMACと呼ばれる僧帽弁輪への石灰沈着は高度になると手術の障壁になりかねません。弁形成や弁置換しようにも針が石灰を通らなくなるからです。

しかし現代はこのMACにも対策があり、治せる病気になりました。

患者さんは56歳男性です。

19年前に慢性腎炎による腎不全のため血液透析を導入されています。

以前から僧帽弁閉鎖不全症大動脈弁狭窄症が見られていますが心電図で左脚ブロックが次第に強くなるため当院内科へ来られました。

00040121_20091111_CR_1_1_1内科にて精査の結果、冠動脈左前下降枝と右冠動脈に狭窄がみつかり、それぞれロータブレーターと薬剤ステントDESをもちいたカテーテル治療PCIにて軽快しました。3か月後の検査で左前下降枝は再狭窄していたためここにも薬剤ステントを入れられました。

その半年後に僧帽弁閉鎖不全症のため心不全がコントロールできなくなり、心臓外科に紹介されました。

右図はそのときの胸部X線写真です。

00040121_20091006_US_1_16_13b僧帽弁には僧帽弁輪石灰化MACがあり、肺高血圧症PHもある、虚血性心筋症・心不全(駆出率27%と正常の半分以下)ともいえる状態でした。(左図)

PCI後に時々起こる心筋症です。

胸骨正中切開・心膜切開で心臓にアプローチしました。心臓は拡張著明でした。
体外循環・大動脈遮断下に左房を右側切開しました。

僧帽弁は後尖のP2(後尖の中ほど部分です)弁輪に石灰化著明で、P1(後尖の前交連側)とP3(後尖の後交連側)にも石灰化は及んでいました。また前尖A1(前尖の前交連側)とAC(前交連部)にも石灰は強くありました。

後尖腱索の大半を切除し後尖を反転させてこれらの石灰化を左室筋肉に傷をつけないよう注意しながら摘除しました。

最初はロンジュールという道具で石灰を砕いてはずし、以後は超音波破砕器CUSA(キューサ)で石灰化を乳状化して溶かすように切除し心筋にまで影響が及ばないようにしました。

後尖と後尖弁輪が石灰摘除のためやや弱くなったため、前尖を弁輪から5mmのところで切断しこれを左右に二分して後尖側へ再固定し、後尖縫合部の補強と心機能の改善・左室破裂の予防を図りました。

その上でSJM機械弁27mmを縫着しました。

この患者さんの体格からは十分なサイズで、かつ拡張した左室の基部をある程度縮小し心機能を改善する効果も多少は期待できるサイズです。

石灰摘除部でも人工弁がきれいに乗っていることを確認し、念のため逆流試験にて縫合部や弁の開閉に問題がないことを確認しました。左房を2層に閉じて87分で大動脈遮断を解除しました。

00040121_20091124_US_1_18_18b体外循環を離脱しました。術前心機能の弱い患者さんでしたが離脱はカテコラミンなしで容易でした。入念な止血ののち、手術を終えました。
経食エコーにて良好な弁の縫着と機能を確認しました(右図)。

術後経過は順調で、血行動態安定し出血も少なく、術翌朝抜管し透析を行っています。

透析と心不全のため時間をかけて回復を促し、手術後1か月半で元気に退院されました。

00040121_20130115_CR_1_1_1手術から3年あまりが経過し、外来へ定期健診にこられます。

左室駆出率も術直後の11%から27%まで回復し、まずまずお元気です。

今後も健康管理をしっかりし、お元気で暮らして頂きたく思います。

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原因 

閉鎖不全症 

狭窄症

◆  機能性僧帽弁閉鎖不全症

弁形成術

◆ リング


虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するもの

腱索転位術(トランスロケーション法)

両弁尖形成法(Bileaflet Optimization)

乳頭筋最適化手術(Papillary Head Optimization PHO)

 

④ 弁置換術

◆ ミックス手術(ポートアクセス法)によるもの  


⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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