かかりつけ医の大切さ【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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◾️かかりつけ医の現状は

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かかりつけ医を持たない患者さんが意外に多いものですかかりつけ医と専門医の組み合わせが患者さんにとって安全かつ便利です

たとえば心臓が悪くなり循環器内科で診断・治療のあと、心臓外科に来られ、

手術の後、お元気に退院するときに、

「先生、私のかかりつけ医になってくれませんか」と聞かれることが少なからずあります。

 .

大変光栄なことではありますが、患者さんの安全のために、

前向きに丁重にお断りし、違う選択肢をお示しするようにしています。

 .胸部レントゲンは大変役立ちます

それは患者さんのご自宅または職場の近くにかかりつけ医を持って戴くことで、

それができない場合は私たちも協力して良い先生を探すようにしています。

もちろん心臓の長期管理は私たちが担当します。

心臓関係のお薬の内容は私たちが検討することが多いですが、

実際にお薬や処方箋はかかりつけの先生に出して戴くようにしています。

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◾️かかりつけ医のメリットは

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予防接種やがん健診を含めてかかりつけ医はさまざまな貢献を患者さんにしてくれます。大病院ではできないことも多々ありますそれによって、「人」としての患者さんの全体像を考えながら、

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生活習慣病の予防や早期治療、インフルエンザその他の予防接種がんの検診や早期診断などが確実に行え、

心臓関係の薬を含めた処方もして頂け、患者さんの負担軽減に役立ちます。

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かつ私たちのような循環器専門施設が循環器の観点から定期フォローと随時相談に乗ることで、

専門的医療のレベルも維持でき、全人的なケアが可能になります。

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◾️総合病院はかかりつけ医になるの?

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総合病院に行っておけばいつも全人的大病院に診てもらえるからかかりつけ医が要らないというお考えの患者さんが時々おられます。

体全体を見渡せる良い先生、気のあう先生にめぐり逢えばそれも一法かも知れませんが、

自分の専門の病気や臓器を中心に診てそれ以外はやや手薄になるケースをよく目にします。

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病院によっては人事異動で数年ごとに医師が変わることもよくあります。

かかりつけ医(開業医)は滅多に変わりません。

総合病院はかかりつけ医の代わりにはならない場合が多いのです。

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◾️かかりつけ医プラス専門医が理想

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私が患者さんなら、必要ならいつでも総合病院や専門病院にきちんと紹介してくれるかかりつけ医を持ちます。

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かかりつけ医+専門医=便利で安全安心への近道 というわけです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心臓手術を他病院で受けることは?―現代は患者さんが決めます【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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◾️よく戴くご質問

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心臓手術を他病院で受けることはできるのでしょうか
というご質問を頂くことはよくあります。多くの場合は

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心臓の手術は一生に一度あるかどうかのおおごとです。納得できる病院や医師を選ぶのは患者さんの権利です1.現在かかっている病院の循環器内科には満足しているが、

そこでの心臓血管外科があまり実績や例数がない

心臓手術で有名な先生もいない、

常勤の外科医がほとんどいない

 .

2.そこでの心臓血管外科も全般的には悪くはないが、

自分が受ける予定の手術の経験や実績が少ない

 .

3.その病院の医師や看護師らの対応や態度、あるいは説明が納得できない。
不親切であるなど。

 .

などが挙げられます。
いずれの場合も、現在の病院の心臓外科で手術を受けたくないが、

他病院で手術を受けると現在の循環器内科や外科の担当先生との人間関係にひびが入ることを恐れるわけです。ご自分でも調べ勉強されるのを勧めます。ネットの使い方はこどもさんやお孫さんに聞かれるのも一法です

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◾️昔と今の違いは

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昔は患者さんがあまり病院・医療情報を持っていなかったため、良いオペを求めて他院へ出向くこと自体が珍しかったのですが、

ネットやメディア情報が豊かな現代は患者さんがもつ情報も格段に充実しました。

活気bn1-24dそうするとよりよい心臓手術をもとめて患者さんが他院へ行くことは現代は権利の一つとして認められる方向にあります。

実際患者さんのお気持ちを尊重する内科医が大学病院も含めてずいぶん増えました。

古風な先生の中には学閥にこだわって自分の関係の病院での手術しか認めないような方もまだあるようですが、

こうした考えは医局がマンパワーを失うにつれ、急速に衰退しています。

心臓手術は他院で受けたいという患者さんは、

まず内科の担当先生に丁セカンドオピニオンをもらうため受け持ち医に依頼状、診療情報提供書を書いてもらうと良いでしょう寧に正直に考えと気持ちを伝えるのが良いでしょう。

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◾️担当医に言いづらいときは

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どうしても言いづらいときはセカンドオピニオンの依頼状を書いてもらうのも一つの方法かも知れません。

セカンドオピニオンは別の病院で意見を聞くという行為ですから、少しやわらいだ雰囲気で頼めるのです。

あるいは希望の心臓外科医に率直に相談するのも選択肢の一つです。

 .

外科の観点からは、

そうした患者さんを、心臓手術の後で、もとの循環器内科の先生に気持ち良く受け容れてもらえるよう、配慮するのが当然と心得ています。

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◾️一つお願いが

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患者さんやご家族の中には、ギリギリまで我慢して、もう体がどうにもならなくなってから相談して来られるケースが今も少なくありません。

例えば拡張型心筋症で心不全が酷くなり、ICU(集中治療室)へ入ってからメールなどを送ってこられる事があります。ここまで悪くなると転院も大変ですし、手術を乗り越える全身の体力がすでに失われていることも多く、私たちもお役に立てません。

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一つの目安として、まだ歩けるうちにご相談をお願いしています。

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◆参考ページ

心臓手術とはどういうもの?

そのこれからの方向

心臓外科の名医とは

さあ心臓手術と言われたら?!

安全に必要な症例数は?

病院の立派さと心臓外科の立派さは別?

対象となる病気は?

医師の選び方

私のお勧めは?

術後の社会復帰について 

美容について

必要な検査

術前のオリエンテーション

米田正始が考案したオペは

 

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執筆:米田 正始
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4b) 腹部大動脈瘤の手術について―もっとも確実な治療法、しかし、、【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月22日

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◾️腹部大動脈瘤の手術

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腹部大動脈瘤(略称AAA)の直径が通常約50mmになれば手術適応となります。

それは、「手術しない場合より、する場合の方が明らかに安全です」という意味です。

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これは瘤の直径が50mmを超えれば破れる確率が高くなることと、

腹部大動脈瘤の手術死亡率が1%を大きく下回り、ゼロに近いという安全性を勘案してのことです。

腹部大動脈瘤が破裂してからの死亡率は格段に上昇します。

病院にたどり着いた時にはすでにショック状態になっていたり心臓が止まったりして全身が壊れているからです。

破裂するまでにオペすることが大切なのです。

とくに高齢者の患者さんの場合、これはいっそう大切です。

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◾️腹部大動脈瘤の手術手技は

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腹部大動脈瘤は手術で99%以上治ります。手術できないときはステントグラフトという選択肢もあります。腹部大動脈瘤の手術手技は瘤の両サイドを遮断し、

出血しないようにしておいて、瘤を切開し、

止血ののちサイズが 合致する人工血管を縫合して瘤を人工血管で置き換えます。

 .

手術中には腎動脈が分岐するところより足側の腹部大動脈瘤では、腎動脈の足側を遮断しますが、

瘤がもっと頭側に進展している時には腎動脈の頭側を遮断し、なるべく短時間で吻合して遮断解除するようにしています。

これは腎臓を守るためです。

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◾️腹部大動脈瘤の手術、私たちの工夫

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私たちの腹部大動脈瘤手術の特徴は、普通の瘤だけでなく、以前に他院で腹部手術や瘤手術された患者さんが何年も経って再度悪化した再手術例が多いことです。

こうしたケースではお腹の中が癒着しているため、丁寧に剥離し、それからオペの核心部分へと進むため、手間暇がかかります。

しかし心臓での重症例・再手術例の経験を活かして患者さんの期待に応えるためにがんばっています。

状況によっては後腹膜アプローチといってお腹から瘤に行くのではなく、

斜め後ろから瘤に行く方法をもちいて、お腹の中の剥離なしで治療することもあります。000047m_b

 .

腹部大動脈瘤の人工血管置換手術は安全性も高く、長期間の安定性も良いため現在も重要な標準治療法となっています。

心臓のミックス手術(MICS)の方法を導入し、お腹にも小さい創で手術操作をおこなうようにしています。

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◾️腹部大動脈瘤に対するステントグラフト

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ただし瘤の部位や形態・状況あるいは患者さんの年齢・体力によっては、やや不完全で長期成績が未知数のステントグラフトEVAR)を用いて、

低い侵襲(体への負担)の治療をすることが増えつつあります。

たとえば超高齢者とか全身麻酔も心配なほど肺が悪い患者さんや、

その他体力に懸念があるようなケースですね。

手術事例をご参照ください)

 .

このステントグラフトなら術当日から食事が再開でき、

翌日からはほぼ普通の生活に戻れ、社会復帰もきわめて早くなります。

今後はその進歩によりこちらが標準治療になるかも知れません。

 .

その一方でステントグラフトよりも従来型の外科手術の方が安全と判断される場合はそちらを選択します(手術事例)。

最近の米国の報告では70歳を超えるとステントグラフトよりも従来型手術のほうが生存率が高く、成績が良いという結果がでていて、波紋を呼んでいます。

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要は複数の選択肢をもち、個々の患者さんに有利な方法を選ぶのが良いと考えます。

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3.大動脈疾患に戻る

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執筆:米田 正始
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3b) 腹部大動脈瘤(AAA)―破れれば致命的、しかし本来はすべて治せる病気?【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 腹部大動脈瘤(AAA)とは?

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腹部大動脈瘤(AAA:Abdominal Aortic Aneurysm) とは、
お腹の中を通る大動脈が 動脈硬化や血管壁の弱さ によってこぶ状に拡張した状態を指します。

  • 正常の腹部大動脈の直径:約20mm

  • 直径が30mmを超えると「動脈瘤」と診断されます

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腹部大動脈瘤は 破裂すれば致死的 ですが、診断さえつけば 手術で根治できる病気 です。

 .

◆ 腹部大動脈瘤の症状は?

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多くの場合 無症状 で進行します。
そのため「沈黙の病気」とも呼ばれます。

  • おへその周囲に 拍動を伴うこぶ状のしこり を触れることがある

  • 瘤の中で血流がよどみ、血栓ができる

  • 血栓が流れると 下肢の血流障害(痛み・冷感) を起こすことがある

痩せている方では腹部を触診しただけで発見されることもあります。

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◆ 腹部大動脈瘤が破裂すると?

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腹部大動脈瘤破裂 は非常に危険で、放置すれば死亡率は極めて高いです。

  • 背中側に破れる → 強い腰痛

  • お腹側に破れる → 激しい腹痛・腹部膨満

  • その後 → 出血性ショックとなり、救命が困難に

特に 切迫破裂(破れかけ) の段階では激しい痛みを伴い、時間との勝負になります。

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037_2◆ 腹部大動脈瘤の診断方法

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診断は比較的容易で、以下の検査で確定します。

  • 腹部エコー:低侵襲で簡便、スクリーニングに有効

  • CTスキャン:正確な大きさや形を把握でき、手術計画に有用

破裂リスクとサイズの関係

  • 直径45mm以上 → 破裂の危険が増す

  • 直径50〜60mm台 → 年間約7%の破裂リスクB_2

  • 直径70mm以上 → 年間約20%に急増

さらに、

  • 1年間で5mm以上拡大する瘤

  • 形がいびつな瘤
    も破裂リスクが高いため注意が必要です。

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◆ 腹部大動脈瘤の治療法

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治療の基本は 外科的修復 です。

1. 開腹人工血管置換術

  • 瘤を切除し、人工血管に置き換える標準的な方法

  • あらゆるタイプの瘤に対応可能

  • 長期成績が安定しており「根治が期待できる手術」

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2. ステントグラフト内挿術(EVAR

  • カテーテルで瘤の中に人工血管を挿入し、内側から補強

  • 開腹不要で傷が小さい

  • 高齢者や合併症の多い患者さんに適する場合がある

  • ただし瘤の形によっては適応外になることもあり、長期成績はまだ評価中

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◆ まとめ:腹部大動脈瘤は「早期発見・早期治療」で救える病気

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腹部大動脈瘤(AAA)は 破裂すれば致死的 ですが、

  • 定期的な検診(エコー・CT)

  • 適切な手術(人工血管置換術・EVAR)
    によって 予防・根治可能な病気 です。

破裂前に見つけ、適切な治療を受けることが何より重要です。

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3.大動脈疾患に戻る

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難病の心臓手術について―難病だからダメというわけではありません

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◾️難病への心臓手術

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難病の患者さんへの心臓血管手術はどのくらいできるのでしょうか?難病イコール治せない病気とは限りません。医学は日々進歩しています

医学が発展進化した現代でも難病はまだまだあり、多数の患者さんが苦しんでおられます。

医学医療の各分野でさまざまな取り組みがあり、私たちも専門家の観点から微力ながら努力して来ました。

心臓血管外科に関連した難病も少なからずあります。

厚生労働省の臨床調査研究分野対象130疾患の中でもいろいろな疾患に治療経験があります。

その一部を挙げます。

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◾️サルコイドーシス。。。

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この病気にやられるとサルコイド心として拡張型心筋症僧帽弁閉鎖不全症をおこします。
複雑な形態を示すことが多いですが、左室形成術僧帽弁形成術である程度以上、治せます。

心臓手術のあとの丁寧なフォローつまりアフターケアも大切です。→→もっと見る

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◾️Budd-Chiari症候群(バッドキアリー症候群)。。。

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下大静脈から心臓(右房) への血流が流れるようにすることで治せます。
ただし心臓手術までに肝臓が肝硬変となり機能しなくなっているとリスクが高くなります。場合によってはカテーテル治療もあわせて方針を立てるという柔軟な姿勢で臨んでいます。

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◾️ベーチェット病。。。

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ベーテェット病そのものは心臓手術では治せませんが、僧帽弁閉鎖不全症大動脈瘤を発症すればそれは手術で治せます。

組織が弱いため、相応の対策や工夫を行います。

内科の先生と協力したアフターケアも大切です。

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◾️全身性エリテマトーデス (SLE) 。。。

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この病気そのものを心臓手術で治すことはできませんが、二次的に起こる弁膜症などを人工弁などで治すことは可能です。

手術手技の工夫も大切ですが、その後のきちんとしたアフターケアも大切です。これには膠原病内科や内科の先生方と協力して長期の安全を図るようにしています。

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◾️高安病(大動脈炎症候群)。。。

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弁膜症大動脈瘤あるいは狭心症を発症すれば心臓手心臓や血管がやられる難病では心臓血管の定期健診を受けましょう術の適応となります。

組織が病気で壊れるため、縫いつけた人工弁や人工血管あるいはバイパスグラフトが不安定にならないうような工夫を行います。
大動脈弁が壊れればデービッド手術ベントール手術が役に立ちます
術後のステロイドなどのお薬による治療も術前同様、大切で、病気が進まないように、内科とくに膠原病内科の先生方とチームをつくって長期体制をつくっています。→→もっと見る

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◾️バージャー病。。。

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この病気は痛みが大変強いため、患者さんと向き合って治療に当たるものにとってはつらい残酷な業病でした。
bFGFによる血管新生・再生医療を開発し、これによってかなり治る病気になりました。(現在、中断しており準備中です)→→もっと見る

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◾️肥大型心筋症 HCM、HOCM、IHSS。。。

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肥大が左心室の出口を狭めるタイプ(HOCMまたはIHSS)では心臓手術は良く効きます。
経験がものを言う術式です。私たちはトロントのウィリアムズ先生直伝の方法で安定した成績を持っています。この手術で実績のある病院は少ないためご相談ください。→→もっと見る

左室の壁全体が分厚くなるHCMの中で、心尖部肥大型という、左室心尖部(先端部分)が筋肉で埋まるタイプも、心臓手術で治せるようになりました。この手術の実績がある病院はわずかですのでお問い合わせ下さい。→→もっと見る

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◾️拡張型心筋症DCM。。。

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難病の代表格の一つと言われています。あまり悪くなると人工心臓や心移植が必要となることがあるため、できるだけ先手を打って心臓を守る、できれば予防するという姿勢で臨んでいます。しかしいったん病気が進んで、左室がつよく拡張すれば心臓手術はむしろ効果的で成績も安定しています。
病気で壊れた左室部位によってバチスタ手術セーブ手術オーバーラップ手術ドール手術などを使い分けます。2012年から開始した心尖部凍結型の左室形成術は患者さんの体への負担が少なく、成績のさらなる改善が得られつつあります。→もっと見る

私たちのHGFをもちいた再生医療でも動物実験段階ではすでに治療効果を出しており、今後の実用化が期待されています。

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◾️拘束型心筋症。。。

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お薬も外科手術も容易ではない病気です。
左室形成術には適しませんが、弁膜症冠動脈病変が合併すればそれを治すことで比較的安全に左室を改善することはできます。

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◾️原発性肺高血圧症。。。

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現時点ではお薬などの内科治療が中心ですが、再生医療で動物では安全にかなりの改善が得られており、今後実用化を目指したく考えています。

難病をうまく克服し、あるいはコントロールし、元気に暮らせるようにしましょう

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◾️難病への対策まとめ

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難病でもそれに付随する病気は治せることも多々ありますし、完全治癒は難しくても、現状を守ることはできることもあります。

難病という言葉自体が良くない言葉と思います。治らないような印象を与えるからです。

難病と言われた患者さんにおかれましては、決して絶望されず、まず現実をしっかりと把握し、

専門家に相談し、病気と向き合い、時には病気と闘い、時には病気と仲良く共存し、

という粘り強い柔軟戦略が良い結果を生みやすいと思います。

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心臓手術前にカテーテル検査は必要ですか?―エコーが凌駕する項目も多い?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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◾️心臓手術に心カテーテル検査は必要?

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心臓血管の手術の前に心カテーテル検査(右図)は必要ですか?と、よく聞かれます心カテーテル検査は有用ですが、心臓手術の前後には不要なことも多くなりました 

お答は:ケースバイケースですが、病気によっては不必要な場合も多いです。

その理由は次の通りです。

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◾️冠動脈疾患の場合

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狭心症・冠動脈疾患バイパス手術(左図)を受けられる患者さんでは、

冠動脈をすみずみまで正確に把握しておくことが治療上きわめて重要かつ有用です。

なので心カテーテル検査の中の冠動脈造影にて十分な情報が得られますので、術前にこの検査を行うわけです。

 

オフポンプバイパス手術の出来上がり図この場合の心カテーテルは「診断カテーテル」と呼び、

細いくだが使えるため、手の動脈から入れる場合が多く、その場合は検査直後から歩くことができ、苦痛も少なくてすみます。

私たちの施設では熟練した循環器内科医がカテーテルを行いますので、安全性も高く比較的快適といえましょう。MDCTで楽に冠動脈が見られるようになりました。患者さんに大変喜ばれています

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◾️弁膜症や心筋症などでは?

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弁膜症心筋症あるいは胸部大動脈疾患の患者さんの場合は異なります。

冠動脈に病気 がないかどうか未然にチェックしておくだけであれば、

現在は MDCT (右図)という、高性能CT検査で、苦痛少なく直径1mm弱の血管まできれいに調べることができますので、術前の心カテーテル検査は不要になります。

 

もしMDCT検査で冠動脈に病気が見つかれば、安全のためにバイパス手術などを術中に併用することがあり、カテーテルにて冠動脈造影を行うことが多いです。

病気があり、それを治す分だけより元気になるわけですし、

患者さんもこうした場合の心カテーテル検査には納得・満足されることが多いです。

 .

◾️お若い患者さんの場合は?

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心カテーテルには意外なメリットがありますまた若い患者さんなどで、放射線被爆量を少しでも減らすために、患者さんと相談の上、前向きな意味で心カテーテル検査をおこなうことがあります。

 

熟練した循環器内科医の先生方がされればMDCTより少ない被爆量で、しかも短時間で検査は完了しますし、上記の細いくだを腕から入れれば検査後も楽です。

 きちんと調べて良い治療を!

心機能や心不全の状態は、現在の高精度の心エコーと、MDCTの左室造影、そして必要に応じてMRI検査などの画像診断技術によって細部までわかります。

弁の逆流も、造影剤を使わない、より自然な状態で、苦痛なく、必要なら時間を追って繰り返し検査も安全にできますので、こうした画像診断を活用しています。

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◾️心不全がらみでは?

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SANYO DIGITAL CAMERA最近増えた心不全やそれによる弁逆流では、心エコー等によりそのメカニズムの詳細に迫る情報が得られることが多く、この意味からは心カテーテル検査をすでに凌駕しているとも言えましょう。

とくに心エコーは機動力にも優れ、エコロジーの視点でも優れた方法ですので、

手術室から入院中、外来、さらに遠方から来られた患者さんではその地域でも使えるため重宝しています。

欧米や日本のトップ学会が作成しているガイドラインも、心エコーのデータを基本にして造られているほどです。

 .

しかし術前に強い心不全肺高血圧症、あるいは右心系疾患がある患者さんの場合は、安全のため右心カテーテル検査を行うことがあります。こうした患者さんでは心エコーではわからないことがカテーテルでわかることが多いです。

これは静脈から入れるため、検査後の止血も短時間で済み、患者さんも比較的楽です。

 .

◾️心臓手術後の心カテーテルは?

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心臓手術のあとはカテーテル検査不要のことが多いです術後は、通常は心カテーテル検査は不要と考えています。例外として冠動脈バイパス術後にバイパスや細かい枝の状態を確認するために検査することはときおりあります。

その他、稀な病気などを中心に何かとくに確認しようとか、念のためにポイントを絞って調べるなどのケースはまれにありますが、

すべて患者さんの納得を頂いてから行っています。

 

ということで、冠動脈疾患以外の多くの場合、術前には心カテーテル検査は不要と考えています。

ただ内科の先生方がケースバイケースで患者さんのために有用と判断され、心カテーテル検査を前もってやって下さった場合は、

その情報も積極的に活用し、努力の無駄がないように配慮しています。

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◾️総じて、、

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私たちの基本姿勢として、どれが良いとかどれが劣るという偏狭な議論ではなく、

それぞれの検査法の特長を活かし、

こだわりなくケースバイケースでその患者さんの治療に役立つ検査は行い、

やらなくても良い検査はいざという時のために温存して使わない、

というスタンスで臨んでいます。

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お便り16 マルファン症候群の患者さん

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Sakura_b患者さんは約30歳の女性で、

僧帽弁閉鎖不全症のためハートセンターへ来院されました。

以前からマルファン症候群(結合組織・弁や血管が弱くなります)のため僧帽弁が壊れ、他病院で手術を受けられましたが治らず、

このままでは心不全が進んで危険なので、ちかぢか弁置換手術(機械弁という金属製の人工弁で弁を取りかえる手術)を予定されていました。

 

しかし弁置換手術を受けると、一生涯ワーファリン(血栓予防のお薬)を飲む必要があり、

赤ちゃんの奇形を誘発する薬なので妊娠や出産はもうできなくなります。

そこで弁形成手術をしてくれる病院を探して私のところへ来られました。この手術は患者さんの命と人生を守る闘いという感があり患者さん・ご家族を含めたチーム全員で努力しました

 

私の経験ではマルファン症候群の患者さんの僧帽弁は弁が全体的に悪くなっているケースが多く、

一流の病院でも治せなかったほど「壊れた弁」でしたので、手術はさすがに複雑な弁形成となりましたが、

さまざまなテクニックを駆使して無事に完遂できました(心臓手術事例)。

手術の直後、結果をお話するときにご家族だけでなく私まで泣きそうになってしまったのは不覚でしたが、

それほど感慨深いものがありました。

自分が弁形成手術を長年勉強し取り組んで来たのはこうした患者さんたちのお役に立つためだと改めて想ったからです。

 

患者さんは手術のあと、どんどん元気になられ、まもなく退院して行かれました。

今は外来などで時々お会いするのが楽しみです。

 

マルファン症候群の患者さんは全身の結合組織たとえば血管や骨や眼の一部などが弱くなることがあるため、

外来でも心臓だけでなく全身に気をくばりながら、定期健診していく予定です。

 

以下はその患者さんからの御礼のお手紙です。

**********************************

 

この度は米田先生はじめ**先生、**先生そして担当して頂いた看護師の皆さまに心より感謝申し上げます。現在はとても元気になり、わんぱく盛りになった1歳半の息子を追いかける日々で、楽しく過ごしています。

2008年10月、私は毎日毎日泣いて過ごす日々を送っていました。

ある総合病院での2度目の手術が決まり、1度目は形成術でできましたが、2度目は90%機械弁の弁置換だと言われ、今後の人生がお先真っ暗になり、どう出産や子育てができるのか、不安に押し潰されそうでした。

そんな時、米田先生のホームページを偶然にも見つけ、10月に開院したばかりの名古屋ハートセンターの存在を知り、かじりついて読みあさり、気がついた時には病院を変えたい気持ちがとても大きくなっていました。

そして翌日には、主人と病院へ向かい経緯をお話しました。私自身、当然主人もそうですが、あと2週間後に迫った総合病院での手術を変えるなんて思いもよらない事で、実際家族からは不安な声もありました。

けれど、主人も私も先生にお会いして不安どころか”手術”という現実は変わらないのに、とても明るい気持ちとなり、そればかりか嬉しくて嬉しくて、小さな息子と三人で喜びの涙を流しました。あの日、私の心臓のエコーを見ながら「形成術はできますよ」と簡単に言われた事にビックリしたのと、変な言い方ですが、正直ワクワクしました。

今はどういう状態で、手術では何をどうするのか、、、手術が決まっている病院に対しての丁重な対応など、たくさんの話を冗談まじりに、でも真剣に、そして家族のように私の話を聴き、知って、説明して下さいました。

その安心感は、これから手術を受ける私にとって、なくてはならない気持ちだったように思います。そしてその温かい支えは病院嫌いの私にとって初めて味わう気持ちでした。あれだけ後ろ向きな気持ちが180度転換してしまった自分に驚き、「手術ということに変わりはなかったものの、本当に前向きに明るい気持ちで手術を迎えられた」事、感謝しております。

術後も回復は早く、入院生活も楽しく過ごせました。とても早く家に帰る事ができ、今ではキズもほとんど目立つ事なく、ファッションを楽しんでいます。

これからも長いお付き合いとなりますが、助けていただいた命を大切に楽しく生活をして行きたいと思っています。

本当にありがとうございました。

 

***************************

あれから4年が経ちました。

この患者さんには無事二人目のこどもさんが誕生しました。

妊娠中も一人目のときよりずっと楽で心不全もなく、順調だったようです。

2013年3月の定期健診外来に赤ちゃんとご夫婦の三人で来られました。

努力が実った、と共に喜び合いました。

何物にも代えがたい、感動のひとときでした。

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第四号】 新型インフルエンザ

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暑さが一段落したこの頃ですが、皆さん如何お過しでしょうか。

新型インフルエンザが流行しています。新聞の報道では、8月末の1週間
で15万人が発症確認されています。夏という、普通ならインフルエンザが流
行しにくい季節のことですので、やはり異常な流行ぶりです。

心臓血管外科の患者さんたちの中で、手術ですでに心臓が良くなった方々には
心臓という意味のリスクはそう多くないかもしれませんが、心不全が多少でも
残るタイプの病気や、糖尿病や年齢、肺機能障害や腎不全、その他さまざまな
付随病変があれば、一般の方々よりも注意が必要です。

これから次第に寒くなるにつれて、この新型インフルエンザの
患者さんや、それによる死亡者が激増することが心配されています。

それを考え、私のホームページ(心臓外科手術情報WEB)に基本知識の整理を
載せました。

http://www.masashikomeda.com/web/2009/08/post-9b03.html

ぜひご一読の上、対策を立てて頂きたく思います。またもし新型インフルエンザ

になれば、早期の治療が救命につながるケースも多いと思います。

心臓血管外科の患者さんたちにおかれましては、急に発熱し、新型インフルエ
ンザの可能性があると感じたらすぐに受診・相談して頂くことをお勧めします。

以上、突然ですが、心配になりメルマガ号外としてお送りさせて頂きます。

2009年9月1日

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第三号】 再生医療ご報告1

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心臓の再生医療・手術をするためタイ国・バンコックへ先週、行って参りました。

ご存じのように、アジア諸国は近年大きく経済発展し、医療や医学でも実力をつけ

つつあり、個々の人たちも自信をつけられ、欧米の学会への参加や発表でも

昔よりずいぶん積極的になって来ておられます。アジアの先生方(というより多

くの国民)の真摯で勤勉な姿を知るものとしてうれしいことです。

 

さらに、最近数年間知られるようになったメディカルツーリズム(medical tourism)
でアジア諸国へ手術や治療を受けに来ることが増えました。

この背景にはアジア諸国の若い医師たちが欧米へ留学し先進医学を学びやすくなったという経済状況があります。欧米の患者さんから見れば、医療レベルも悪くない、英語もかなり通じる、そして何よりも安い、というわけです。


私たち日本の医師から見ますと、新しい治療法への認可が日本で特に厳しく、なか
なか実現できないという問題があります。

そのため心臓の再生治療の認可をタイで受け、準備を進めていましたが、政変が起こったため、様子を見ていました。

今回は政治状況が落ち着いたことと、この治療法しかないという患者さんが来られたため実現の運びとなりました。

 

患者さんはバングラデシュから来られた若い男性で、狭心症(虚血性心疾患)のため
自国で数年以上前に冠動脈バイパス手術を受けられました。

いったん元気になられましたが、病気が進行し、心筋梗塞を起こし、心不全+狭心症という形で自国では治療不可能と言われてバンコック心臓センターへ来られました。

この病院は日本でいえばハートセンターのような位置づけにある活発な民間病院で、その高機能さや快適さ美しさは日本の水準を超えており感心します。

手術はこの方法の特長つまり侵襲が低い(体への負担が少ない)ことを反映して、2
時間ほどで終了し、すぐ話ができる状態になりました。念のため術後数日間は入院
して頂きましたがそのまま退院され、外来フォローとなりました。

bFGFというたんぱく質を使うこの治療法では新しく動脈が育つまで何週間かかかるため、しばしはこのまま待つことになります。うまく行けばバイオバイパスと呼んでいる細い血管のバイパスができ心臓が良くなります。


同様のメディカルツーリズムはタイだけでなくアジア諸国では隆盛の一途で、それ

だけ国力も医療も進化しているわけです。日本には国民皆保険制度を始め、日本

ならではの良さはまだありますが、患者負担が増えたり先進国より医療費抑制が

強すぎて現場が崩壊したり、制度が古く国際化時代に遅れ、新しい治療の恩恵を

国民が受けられないといった問題点がでてきています。


ぐちっていてもはじまらないので、まずは実行とタイでの治療を始めました。実績

を積んで、日本の患者さんも安心してタイまで行って頂けるよう、さらに日本でも
これを開始できるよう、努力したく思います。


2009年8月22日記

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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【第二号】 冠動脈外科学会

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うっとおしい梅雨の季節ですが皆さんいかがお過ごしでしょうか?

先週、熊本の学会(冠動脈外科学会)に行ってきました。

この学会は狭心症心筋梗塞などの外科手術を主にあつかう学会ですが、それに
関連した弁膜症やさまざまな病気も論じます。

そこで感じたのは、まだまだ患者さんへ治療(お薬やカテーテル治療そして手術)
の情報が行きわたっていないということです。これは経験豊富な心臓外科医が
一様に感じていたことです。

たとえばこの学会でも狭心症の治療を例に取れば、世界的に高い評価を受けて
いる研究でバイパス手術は重症冠動脈疾患の場合はカテーテル治療より成績が
良いということを示しているのに、そうしたものを頭から否定する内科の先生
もおられました。

私は外科医ですが、こどもの頃から痛いのは嫌いで、手術も避けることができる
ものなら避けるのが良いと思ってこれまでやって来ました。

しかし手術することで患者さんがより安全に長生きできるなら、手術の方が結局
患者さんにはやさしい治療であるとも言え、見かけのやさしさ、たとえば皮膚を
切らずにすむなどは、こと命の重さを考える限り、一番の重要事ではないと思い
ます。

実際、カテーテル治療を何度も何度も繰り返し、それからバイパス手術などに
来られた患者さんはこれまで多数ありますが、それなら最初から一回手術を
受けておけばもっと安全で快適だったのに、というご意見を頂いたこともあり
ます。

あるいはカテーテル治療で新型のステントと呼ばれる網状のものを冠動脈に
入れると強力な血栓予防薬を長期間飲む必要があり、そのために別の病気に
なったときに手術治療ができないなどの話を十分に理解しないままの患者さん
が少なくありません。

結果論でものを論ずる必要はありませんし、カテーテルの先生方もなるべく
少ない負担で一回で治してあげようと一生懸命治療して下さるケースが多い
です。

しかし中には一方的な説明で、カテーテルは患者さんにやさしい、外科手術は
怖いという刷り込みをされたケースも見受けられます。皮膚の創だけ見ればそう
思えるだけに罪深い刷り込みになっていることもあります。カテーテル治療が
適しない病気があるためです。

このようなことが起こる原因は、患者さんがまず内科(循環器内科)を受診され、
そのまま外科の意見や情報を得ないままカテーテル治療へと進むことがよく
ある、この構造にあります。

そうしますと患者さんの視点からは、まず幅広く内科と外科の意見を聴き、
場合によっては3者で相談するぐらいの姿勢が好ましいのではないかと思い
ます。とくに病気が重症のときにそれは役立つでしょう。賢明な患者さんは

ネットや人脈を使って情報を得て、相談に来られ、あるいはメールを送って

こられます。

外科の観点からはガイドラインを尊重し、手術すべき時は患者さんやご家族の
協力を得て敢然とやる、手術不要なときは経過を見る、要するに患者さんに
メリットのある適正な治療をする、これが大切で、幅広く相談することでその
正しい姿勢が守られるようになるでしょう。

患者さんが自らを守る、そうした姿勢の上に立つ幅広い視点を持つ医療、
これが今求められる冠動脈疾患というよりあらゆる領域での医療の姿では
ないかと思うこのごろです。

なお上記はある程度以上、進行した冠動脈疾患の話で、軽症の方は、毎日の
生活習慣の工夫やお薬による予防が第一です。バランス良い食べ物、適度な
運動、太り過ぎの予防、定期健診でコレステロールや糖尿病などをチェック、
必要なら的確なお薬、できるだけ禁煙、などなどいずれも努力の意義はあり
ます。その上で、必要時には早期診断早期治療は効くでしょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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