2.メールマガジン始めました 2009年6月

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患者さんやご家族のご要望にお応えし、ささやかなメールマガジンをはじめました。

毎回ワンポイントで情報発信をしながら、皆さんのご意見をお聞きできればと思います。

Book_05情報過多の時代でも医療というのはなかなか理解しづらいところがあり、患者さんも治療に誤解があってなかなか治療の決心がつかないことがしばしばです。

心臓血管手術の場合はとくにそうだと思います。

心臓病をしっかり治すと言っても、そのために皮膚を切るというだけで野蛮な方法と思ってしまうのは理解できることです。

 

しかしいくら皮膚を切らなくても心臓病や血管の病気で患者さんが死んでしまっては元も子もないというのが医学的な見方です。

もっと細かいことでもいろいろな誤解が世の中にあ265り、そのために患者さんが困るということはあります。

 

たとえば安静臥床つまりじっと上向きに寝ることが良い養生で元気になる秘訣という誤解を持つ方は今も大勢おられます。

その方がよい場合もありますが、心臓手術の後などではその逆にどんどん動くことが最高の養生になる場合が多いです。

 

安静臥床ではタンが背中側の肺に貯まって肺炎を誘発して有害なことが多いです。

そうした誤解は日頃のコミュニケーションで改善できると思います。

 

このメールマガジンがそうした心臓病の患者さんとのコミュニケーションの一助になれば幸いです。

 

メールマガジンの申し込みコーナーはこのホームページの右側の段にありますので、そこにメルアドレスを記入して送信ボタンを押してください。

心臓病や血管病の患者さんあるいはご家族のご意見やご質問を歓迎いたします。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り9 重症の心房中隔欠損症の患者さん

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Suisen_b患者さんは鹿児島在住の76歳女性で、

心房中隔欠損症(ASD)が長年の経過の中で高度の肺高血圧(70mmHg)を合併し、

三尖弁閉鎖不全や慢性心房細動(約30年)、

さらにはうっ血肝、血小板減少症まで併発した危険な状態となりました。

しかも肺が悪く、肺活量も健康人の40%という状態でした。

 

心房中隔欠損症そのものは心臓手術のなかでも一番簡単な部類に入りますが、何しろいくつもの病気を合併して全身が衰弱しておられ、

他病院やセンターでも手術はできないと言われ、患者さんの息子さんからご相談を受けました。

 

相談の結果、手術可能と判断し、遠路ハートセンターまでご来院いただき、

手術施行、心臓リハビリも皆で頑張り、心不全や不整脈も治り元気に退院して行かれました。

 

手術は心房中隔欠損症(ASD)パッチ閉鎖術、両心房メイズ手術三尖弁形成術、左心耳閉鎖と右房縫縮でした。

以下はその息子さんからのメールの抜粋です。お許しを得て掲載します。

息子さんは優れた内科医で、ご相談の中で私たちの方こそ、いろいろと勉強させて戴いたほどの方ですので、

以下のメールにはかなり謙遜された部分もあることを申し添えます。

 

*****************************

米田副院長先生御侍史

この度は、先生には所謂、「神の手」の力により私の母の余命を伸ばして下さり、

心より感謝申し上げる次第です。

**日19時頃、無事鹿児島に帰宅致しました。

先生始め、心外科各Dr.及び病棟staffの皆様には、術前中後、そして本日の退院に至るまで、大変お世話になりました。

 

(臨床所見やデータ、中略)

先生から戴いた生まれ変わった母の命を大事にして参りたいと存じます。

先生ともなれば、私のような田舎の町医者とは違い、患者さんの為に大変ご多忙でprivacyの少ない時間を御過ごしの御様子。

同じ?医師でありながら、ゴルフに興じていた自分を恥じる契機ともなり、又、私とは技量のレベルの違いを痛感したこの6週間でもありました。

 

*月** 日には、先生の外来に必ずや受診に参りますので、その節は、何卒、宜しくお願い申し上げます。

H21年5月30日

*****************************

米田副院長先生御侍史

先生のお力によって母の余命への絶望を希望に変えて下さり、心より感謝申し上げている処です。

私にとって、先生の様なスーパーDr.とこのようにmailや直接TELでにてお話しさせて戴くことは、恐れ多く大変有り難いことと感謝致しております。

 

さて、母ですが、基礎疾患により次第に体力が衰えてきていた状態での、今回の大手術でしたので、

術後の体力低下に加えて、腰痛等整形外科的症状や術創の痛みも時々あり、

未だ外出できるほどにはなっていませんが、徐々に可能になって行くもの思われます。

 

そして、きっと、「やはりあの時、思い切って名古屋まで行って先生の‘神の手’で手術して戴いてよかった」と実感できる日々が来るはずだと考えております。

というのも、先日、当方で検査をしてみたところ、(中略)、、と、うっ血性肝障害及び心不全の改善が診られている故です。

今後さらに、改善されるものと期待されます。

先生のお力のおかげだと改めて感謝申し上げているところです。

 

*月**日は、当院休診日を少しでも減らす(何しろ‘不況’なもので)為、日帰りとなりそうですが、

先生に元気になった母を御見せできること並びに先生に再度お会いできますことをお約束し又楽しみに致しております。

その節は、何卒宜しくお願い申し上げます。

H 21年6月8日


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執筆:米田 正始
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7b) 右室二腔症―重症になると突然死の危険性も、しかし、、【2019年最新版】

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最終更新日 2019年5月26日

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◾️右室二腔症(うしつにくうしょう)とは

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右室の中に異常な心筋が発達し、

右室が入口側(流入路)と出口側(流出路)の2つにくびれた形になる病気です(左下図)。

 .

B_2そのくびれがあまり強く狭くなると血液が流れにくくなり、

場合によっては血液が流れず血圧がでなくなって心臓が止まってしまうことさえあります。

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こどもの頃はそれほどくびれが強くなかったのに、大人になり、年月とともに悪化するというケースがよくあります。

これはくびれができ、圧較差が発生するためそれに打ち勝つだけの圧を出すように右室が分厚くなり、そのためにいっそうくびれが強まるという、悪循環のためです。こうなると自然に治ることは難しいです。

そこで右室二腔症で胸が苦しいとか、痛いとか、息苦しい、などの症状が強くなれば、早めにご相談戴くのが安全です。

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◾️右室二腔症の手術は

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手術ではこの異常に張り出した 193237727心筋を順序だててパーツごとに切除して行きます。

その時に右室内にある三尖弁乳頭筋や腱索などをきちんと温存し、

また必要な心筋とくに三尖弁乳頭筋を削り取らないよう注意することが肝要です。

 

そうすることで右室内の狭窄(きょうさく、狭くなること)はほぼ完全に取れます。

狭窄が取れれば再発もうんと少なくなります。

つまり病気離れしやすくなるわけです。

右室の状態が改善しますと左室にも良い影響がおよびやすくなりますし、

患者さんの運動のちからは大きく改善します。

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◾️右室二腔症、手術での工夫

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またこの右室二腔症には心室中隔欠損症(VSD)がしばしば合併することが知られており、右室内狭窄の上流側にVSDがある時などには術前検査でわかりにくいこともあります。185902403

手術中にこのVSDを検索し、見つけ次第閉鎖するようにしています。

右室二腔症の患者さんには20代―40代のお若い方が多いため、

なるべく創の小さいミックス手術(MICS)をもちいるようにしています。夏服が着易い手術として喜ばれています。

心臓手術事例―ミックス法にて根治しました)

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6. 先天性心疾患へもどる

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執筆:米田 正始
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(大動脈弁)二尖弁につきまして ―― 弁だけでなく大動脈にもご注意 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 大動脈二尖弁とは?

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大動脈二尖弁と三尖弁の違いを示します通常、大動脈弁は「3つの尖(せん)」が開閉することで血液の流れを調整しています。
しかし先天的に尖が2つしか形成されない場合があり、これを 大動脈二尖弁(Bicuspid Aortic Valve, BAV) と呼びます。

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  • 発生率は 約100人に1人

  • 生まれつきの形態異常ですが、大半の方は症状なく一生を過ごせることもあります

ただし二尖弁には特有の弱点があり、年齢とともに弁膜症や大動脈の病気へ進展するリスクが高まります。

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◆ 二尖弁のリスクと合併症

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二尖弁は力学的に負担がかかりやすく、次第に以下の病気を起こす可能性があります。Gum06_fr01002-s

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特に二尖弁患者さんは、上行大動脈の拡張や瘤形成が多い ことが近年の研究で明らかになっています。

*また大動脈基部拡張症を合併することが多く、解離や破裂に注意が必要です。

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◆ 二尖弁による症状

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Cb018c-s二尖弁自体には症状がありませんが、合併症が進行すると以下の症状が出ることがあります。

  • 息切れ、動悸、疲れやすさ

  • 胸痛や失神(大動脈弁狭窄症が進行した場合)

  • 下肢のむくみや呼吸困難(心不全症状)

  • .

これらの症状が出た場合は 手術を含めた治療が必要 です。
診断には 心エコー検査 が基本で、必要に応じて CT検査心臓カテーテル検査 を行います。

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◆ 大動脈二尖弁の治療と手術法

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1. 大動脈弁形成術(弁を残す手術)194304509

  • 特に 若い患者さん(10〜40代) にメリットが大きい (お便り15)

  • 妊娠・出産や将来の生活を考え、ワーファリン内服が不要になる可能性がある

  • 技術進歩により耐久性が向上し、長期成績も改善  (弁形成術後10年以上、若い患者さんを守っている事例はこちらです)

*若い方の場合は可能であれば大動脈弁形成術を優先し、機械弁や生体弁置換を避ける工夫をします。

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2. 大動脈弁置換術

  • 弁の損傷が高度な場合に行います

  • 生体弁:寿命は10〜15年だが、将来 TAVI(カテーテル弁治療) による再治療(バルブインバルブ)が可能

  • 機械弁:長持ちするが、生涯ワーファリンが必要

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3. ミックス手術(低侵襲心臓手術)191151524

  • 胸骨を切らずに行う小切開手術

  • 傷跡が目立たず、回復も早い

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4. 自己心膜による大動脈弁再建術

  • 患者さん自身の心膜を使って弁を再建する新しい方法

  • 生理的で自然な血流が得られ、長持ちが期待される

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◆ 二尖弁と大動脈瘤への注意

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AscAoAneu2

大動脈二尖弁の患者さんは、弁膜症だけでなく 大動脈が弱く拡張しやすい体質 を持っています。

そのため、定期的なCT検査やエコーによる経過観察 が非常に重要です。
これはマルファン症候群などの結合組織疾患と似た対応が必要とされています。

 .

◆ なぜ専門医への相談が重要か?

.79769953

二尖弁は「今は問題ない」と言われても、将来的に病気へ進行する可能性があります。
実際に「健診で異常なし」と言われていた方が、後に大動脈瘤や重症弁膜症で来院されるケースもあります。

👉 二尖弁と診断されたら、必ず定期的に専門医でフォローを受けることが大切です。

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まとめ

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  • 大動脈二尖弁は100人に1人 と比較的多い先天的形態異常

  • 放置できる場合もあるが、弁膜症や大動脈瘤のリスクが高い

  • 手術選択肢(形成術・置換術・MICS・TAVI)が進化 し、患者さんに合わせた治療が可能

  • 定期健診と専門医のフォローで、安全に長期予後を確保できる

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◆ 二尖弁大動脈弁の治療ガイドラインこちらへどうぞ。

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患者さんの想い出はこちら:

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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お便り8 左室形成術の患者さん

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Sakura_b4年前に 冠動脈バイパス手術 と 左室形成術 を受けられた64歳男性の患者さんからのメールです。

当時は米田は京大病院にて仕事していましたので、この患者さんの手術も同病院で行いました。

 

左室形成術はクルマにたとえればエンジン本体を治す手術です。

テレビ等で有名になったバチスタ手術もこの左室形成術のひとつです。

細心の注意のもとでの大きな手術を乗り越えられ、現在もますます元気で前向きな生活を送っておられることをうれしく思います。

患者さんのご厚意で、実名記載させていただきました。

 

 

 

***********************************

2009.5.

米田正始 先生  西村國男です。

メールを頂きまして、ありがとうございます、最近チョット太り気味ですが元気に暮らしています。昨夜はある会合とパーティがあり、少々チドリに変身して帰りました。

私、まもなく、65歳、60歳に続き、第二回目の定年、ひとつの区切りをつける日が近づいています、同年齢の連中が、隠居生活や、この世を去る人が出始めた中、私は20~30歳代の気持ちで生きています、相手は嫌がるかもしれませんが、できるだけ若い人たちのグループに交じり合い遊ぶ努力をしています。

あの手術の前後に、NHKテレビの生中継番組で毎朝、「最長片道切符 列島横断鉄道12000キロの旅」を放送していました、旅の好きな私、その放送の録画を見直すことが幾度かあります、そして、テレビ画面を見ながら、この放送の時に手術室、集中治療室、そしてあの病室に居たんだな、など思い出しています。

今も、病院で体の経過を診てもらっています、先生は「**」先生から「**」先生に交わられました。

自動車でいえはエンジンをオーバーホールして、軽やかに走っている気持ちです、心臓のスケッチを画かれ、バイパスと左室形成をするのだと説明していただいた様子、回診のときのお話、昨日のように覚えています、幾度御礼を言っても、言い過ぎてはないと思っています、この世に生まれ、一度の人生の手助けをしていただいたことの感謝は、永遠に忘れるものではありません。

ホームページに掲載の件、もちろんオーケーです、別に名前は伏せてもらわなくても、実名で掲載していただい結構です、心臓病の皆様のお役に立つようなら、何なりとお使いください。また、必要ならば、私の経験談も書いてもよいと思っています。

そして、検診にも、先生の病院にお伺いしたいと思っています、その折にはどうぞよろしく、お願い申し上げます。

先生の今後の、ご活躍を、お祈り申しあけます。

******************************

2008.1.

米田正始 先生へ

私、土曜日の集まり(註:米田の患者さんの会)で参加いたしました、西村國男でございます、先生には大変お世話になりました、そして、元気になり誠に感謝しております。

私は、4年前の平成16年のゴールデンウィーク明け1番に、バイパス手術と心臓肥大部分の削除をしていただき、今、こうして元気にすごしています。

そして、病院の中での話を耳にし、心配しておりましたところ、一昨日の集まりを知り、駆けつけさせていただきました。

先生の近況を知り、安心しております、新しいロケーションでの活躍をお祈りしております。

そして、いつの日か京都に帰られることを、期待しております。

電子メールで失礼ではございますが、命を救ってくださった御礼を申し上げたく、メールをおくらせていただきました。

2008.1. (追伸)

米田 先生

早速の、お返事ありがとうございます、あの手術のあと、仕事で行く、5階建ての公団住宅で、今まで、3階で休憩していたのが、一気に5階まで登れるようになり、今もその状態です、本当に調子よくなっています、最近の検診でも特に異常は無いそうです。

この人生で感謝することは、幾度かありましたが、先生に出会ったことが人生最高の感謝です、本当にありがとうございました、この再会を機会に今後とも本当によろしくお願い申し上げます

 

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お便り7 感染性心内膜炎(IE)の患者さん

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Katabami_b関西在住の60代の女性で、弁膜症と 感染性心内膜炎(IE) のためハートセンターへ転院、手術を受け、元気に退院されました。

 

感染性心内膜炎(IE)はひとつ間違うとばい菌の感染そのものだけでなく、脳梗塞や心不全などのためいのちにかかわる重病です。

迅速で的確な治療が必要です。

 

以下はそのご家族からのメールとご本人さまからの絵葉書きの内容です。

絵葉書ゆえ簡略なお手紙ですが、ご相談を受けた時の患者さんの状態やご心境を想い出し、ホントによく頑張ってくださいましたねと、熱いものが込み上げてきます。

********************

(ご家族からのメールです)

米田 正始先生、

いつもお世話になっております。
このたびは、母が貴センターにて大変お世話になり、誠にありがとうございました。
米田先生、北村先生、深谷先生をはじめ、ハートセンターの皆様のご尽力のお陰で、先日無事に退院することができました。
家族一同、心からの喜びを感じるとともに、先生方とスタッフの皆様への感謝の気持で一杯です。

何よりもありがたく感じておりますのは、昨年末にセカンドオピニオンをお伺いしました折、突然のお願いにも関わらず、迅速なお返事と的確なご意見をいただきましたこと、
また、今年の初めに、休暇中でいらっしゃったにもかかわらず、京都にてご面会いただき、丁寧なご説明をいただいたことでございます。

貴センターへの転院は、本人にとっても家族にとっても大きな決断でしたが、本当に良い決断であったと安堵するとともに、先生のご助言に改めて深い感謝の念を抱いています。

このたびの母の入院を通して、手術や入院に際してお医者様からの説明をきちんと受けることの大切さ、また、お医者様に対して信頼を抱くということの大切さについて、改めて考えさせられました。

今後とも、外来でお世話になるかと存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

改めまして、心よりお礼申し上げます。
時節柄、どうぞご自愛くださいませ。

またいつか、お目にかかれます日を楽しみに致しております。

草々

2009.2.

(絵葉書のメッセージ、ご家族から)

米田先生

母の手術に際しましては
先生のとても親身かつ迅速なご判断・ご対処を
本当にありがとうございました
心より御礼申し上げます。

(絵葉書のメッセージ、ご本人から)
本当にありがとうございました。
私は、ほとんど毎日泣いていたような気が致します。
そんな中、米田先生の笑顔とともに、ご説明や暖かいお言葉を聞くと、とても安心いたしました。
お陰さまにて回復させて戴き、
心から御礼申し上げます。

2009.3.

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お便り 6 大動脈弁置換術等の患者さん

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Il004_momiji患者さんは86歳男性で狭心症と弁膜症大動脈弁狭窄症)のため冠動脈バイパス手術 と 大動脈弁置換術 をハートセンターにて行いました。

 

大動脈弁置換術そのものは心臓手術の中でも一番シンプルな部類に入るのですが、

複数の手術を行うことに加えて、比較的ご高齢で、もともと心臓機能が落ち、腎臓も血管もお悪かったため工夫を要しました。

しかし患者さんとのチームワークも良く、順調に回復していただき、お元気に退院されました。

 

その直後、患者さんの奥様にも難しい病気が発見され、

米田がご相談をお受けし、その領域で信頼できる名医をご紹介し、奥様も軽快退院されました。

 

以下のお便りはその患者さんご夫婦の娘さんから頂いたメールです。

患者さんご本人だけでなく、その奥様の治療にもお役に立てたとすれば医者冥利につきることでうれしく思いました。

***************************

米田先生

先生、こんにちは!


5月も末に近づき、もうすっかり初夏の陽気になりました。


少し動くと家の中に居てさえ、薄っすらと汗が出るほどです。

(中略)

今回、母の手術ができて、腫瘍が切除できたことは、


父の心臓の手術を先生に執刀していただき、私が先生に


お会いしていたこと。また、先生がHPを持っていらして、


そのHPとハートセンターのHPの中に書かれている


先生のお考えを読ませていただいて、無謀ながらお願いできる


かも知れないと私が思ったからです。

 

現在87才の父でさえ、8時間半に渡る手術に耐え、翌々日から、


自分でトイレに行き、そして、今は週6日は夕食に中瓶1本半


のビールを楽しみ、週1回か2週に1回はサウナへ行く生活を


送っています。


そんなに元気になれたのは、本人の努力もありますが、先生に


手術していただいたお陰に外なりません。

 

それぞれ考え方もあり、一概には言えませんが、ただ決心が


つかないだけならば、若い方なら特に、手術で治る可能性の


ある病であれば、長く辛い思いをして病院通いをしたり、体を


騙し騙しして生活しているより手術をして、健康に生きる方が


どれだけ良いか分からないと私も思います。

 

先生からのメール、大変嬉しく、重ねてお礼申し上げます。


(中略)

 

では、お元気でお過ごしください。

(2009年5月)Carnation_2

 

************以下はその患者さんの娘さんのブログからの引用です。お役に立ててうれしいかぎりです***********

 

母のシーズン
季節の花便りと私の母のことMarch 2009

2009年03月19日
エリカの花咲く道

母が行く散歩道は、この近くでも私の知らない所がたくさんあります。


横浜はUP、DOWNが多いので、すぐ近くでも急な坂道を登ったり、階段があったりで、私は余り行ったことがないのです。


この花は、家の裏手にあり、海の見える大変景色の良い道の途中に咲いています。

 

いつも、抗がん治療に入る前日に採血をして、治療ができる状態かどうかを診断してもらいますが、2/27(金)からの入院治療のために2/26日に採血をしたところ、白血球が少ないので翌日からの治療を見合すという連絡が入りました。そして、翌朝の体温が 37.5℃ 以上あったら来院くださいと言われていたので、体温を測ったところ 37.2℃ あり、念のために病院へ行き診察をしてもらうと、発熱性好中球減少症という診断でした。


これは手のしびれと同じ オキサリプラチン(5-FU) による”骨髄抑制”と呼ばれる副作用で、白血球の減少により抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなります。
そこで、その日の午後から入院をして3日間白血球を増加させる治療をすることになりました。

母が一生懸命前向きにがんと闘っているのに、それを阻むようなストレスがあり、名古屋でゆっくりした気分でいられない事を考えるにつけ、できればこちらで抗がん治療を受けられないものかと思案します。

FOLFOX にしろ FOLFIRI にしろ抗がん治療のお薬は大変高価で、治療のために母が三日間入院すると病院は、お薬代だけでも赤字になるそうです。
入院にかかる費用は、お薬代だけではなく勿論人件費など諸費用もかかりますので、赤字の額は相当なものでしょう。


そういう事情もあって、こちらで新しい病院を探しても受け入れてもらえるかどうかは、難しい問題です。

一方、母より7才年上の高齢の父が、心臓の大動脈を含む手術に成功したことを考え、大動脈の近くだから切除できない(これは実際には、違っていました**)と言われている母の腫瘍も取れるのではないかという思いが私の中で膨らんできました。

そこで、藁をもつかむ思いで、無謀とは知りつつ、母のことを心臓外科医である父の主治医の先生にご相談してみました。


大変お心の広い方で、父の手術の折に一度お会いしただけのほぼ見ず知らずの私の、それも専門外の相談に快く応じてくださり、名古屋にいらっしゃるお知り合いの大腸がんの権威であるお医者さまをご紹介くださいました。

**検査の結果、腫瘍の切除が不可と判断された理由は、腸が仙骨に癒着していて可動しないためだったようです。

追記:


お願いをしてリンクさせていただいた「心臓外科医の写真紀行記」は、
“ハートセンター” の米田正始先生のHPです。


父の心臓手術をご執刀いただき、母の先生をご紹介くださいました。
米田先生には、両親共々、心より感謝しています。


この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

http://blog.livedoor.jp/sachi1929/archives/cat_34454.html

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お便り 5 僧帽弁再置換術の患者さん

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Himawari_b患者さんは関西在住の70代男性です。

かつて他病院で2度の心臓手術を受けておられますが、

昔、僧帽弁に植え込まれた人工弁が血栓のため機能不全を起こして

心不全・溶血(血液が壊れて障害がおこります)・腎不全の状態となりました。

 

このままでは命が危ない状態でしたが、

地元の病院で手術は危険と言われてネットで調べてハートセンターへ来られました。

2009年2月に再手術(僧帽弁再置換術)を行い軽快退院されました。

 

僧帽弁再置換術は通常の弁置換手術と比べるといくつかの注意点があります。

しかしこれに慣れた心臓外科医にとってはそう難しいものではありません。

それよりも手術前に全身が衰弱しているという問題があり、しかも3度目の手術ということで単なる僧帽弁再置換術よりも要注意でした。

 

その患者さんの娘さんからのお礼のメールです。

******************************

米田先生御机下

父が大変お世話になり、無事に退院させて頂いたにもかかわらずお礼が遅れて申し訳ありませんでした。

退院後には徐々に体力も回復してきて、電話の度に「楽になった、先生のおかげで命拾いできた。」と喜びの声を聞くことができています。退院後の受診も無事に済み安心しております。

趣味の車の運転も12月頃より出来なくなってきていましたが、(術後の)受診後より少しずつ母親とドライブに出かけているようです。また8月には、初めての孫の結婚式にも元気な姿で出席することができそうです、

昨年の暮れの状況から考えると、先生のご助言のおかげで、あっという間に時間が経過し今があるのが奇跡のようです。

本当に有難うございました。出来るだけ長くフォローをお願いしたいと思っておりますので今後ともよろしくお願いいたします。 今後も先生のご健康とご活躍をお祈りしております。

 

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お便り 4 虚血性心筋症の患者さん

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Asagao_b3年半前に虚血性心筋症(心筋梗塞などのあと強い心不全が起こる状態です)に対して冠動脈バイパス手術 と 左室形成術(バチスタ手術と同じタイプの手術です)を受けて頂いた患者さんからのメールです。

当時米田は京大病院に勤務しておりましたので手術も京大病院で行いました。

虚血性心筋症は原因が虚血でも結果的には拡張型心筋症となり、心臓のパワー不足が問題となります。

手術前はずいぶん悪い状態でしたが、心臓の機能回復は著明で、

お元気になられた患者さんの姿を拝見しますと私たちも本当に勇気づけられたものです。

 

昨今は虚血性心筋症だけでなく状態が悪い患者さんや重症の患者さんの手術や治療を手控えることを安全管理と勘違いする病院が全国的に増えました。

しかしそれは患者さんのための安全管理とは言えないと思います。断られた患者さんは死んでいくしか道がないからです。

多数の重症の患者さんが大きな手術のあと、長年月元気に人間らしく暮らしておられることがこの治療の大切さを物語っています。

***************************

米田正始 先生

 

寒中お見舞い申し上げます。


私は2005年10月に京大病院で先生の執刀により、左室形成術僧帽弁三尖弁の弁輪形成術、冠動脈バイパス術を同時に受けさせていただき、一命を取り留めさせていただきました**と申します。

 

現在は、最初に入院した病院でフォローの診察を受けておりますが、お蔭様で順調に回復し(駆出率 55%、07年12月)、2ヶ月に一度の通院と利尿剤・ワーファリンの服用だけで、元気に過ごしております。

 

昨春からは勤務先で小さいですが研究所の所長に就任し、若い人に負けないよう研究開発に明け暮れています。

 

先生と京大病院との一件は少し遅れて知り、署名活動も終了間際にほんの少ししかお手伝いできませんでした。
(中略)。

 

ずいぶん遅きに失するの感はありますが、あらためて御礼をさせていただくとともに、 今後も私のような重症患者の救命にご尽力いただけますようお願い申し上げます。


私も先生と同じ年の生まれで、梗塞を起こしたのは50歳の秋でした。

長期の開発プロジェクトが山場になっていたのと、新しい研究開発担当役員との軋轢で、
何とか結果を出さなければと、休みもほとんど家に居ないような働き方をしていました。


あとから考えれば、この時にもう少し体をいたわるような動き方をしていれば、避けられていたのかもしれません。その年の春の定期健診では循環器関係は異常なしで、何の用心もしていなかった中での突然の降板宣告でしたから、入院した当初は言葉では表現のしようの無い精神状態でどうしようもありませんでした。


先生のお陰で再チャレンジの機会を与えられ、「生かされている」自分を大事にしながら、
以前のようにがむしゃらにやるのではなく、若い人に成功体験を積ませながら、次の世代の人たちに何が残せるかを考えて仕事をしていきたいと思っています。

ながながと綴ってしまいました。申し訳ありません。
向寒の折、先生自身もご無理をなさらずにご自愛ください。

遅ればせながら御礼と近況報告まで。


********** そのあとまたメールを頂きました **********

米田先生


ご無沙汰しております。
(中略)

見た限りでは、私が心臓の大手術をしたようには見えないらしく、
事情を知らない人は、お構いなしに無理難題を押し付けてくれますので、
それはそれなりに困るのですが・・・。


今年の冬は昨年、一昨年に比べて随分楽に過ごせました。
毎年毎年、徐々に体力が戻っているのを実感します。

階段を駆け上がったりするのでなけれは、特別に不自由を感じることもありません。
実は、このメールも東京の主張先から発信しております。


現在の私がこのように第一線で居られるのも、ひとえに米田先生のお陰です。
誠にありがとうございました。

また、私のような人が不幸にしておられたら、是非、人生の再チャレンジができるように、
先生のご尽力をお願い申し上げます。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り 3 人工弁機能不全の患者さん

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Cosumosu_b2008年冬に人工弁機能不全のため緊急で救命手術(僧帽弁置換術 の 再々々手術)を受け、元気になって頂いた京都在住の70代男性の患者さんからのお便りです。

この患者さんのブログから許可を得て転載させていただきました。

人工弁機能不全は文字どおり人工弁が機能しにくくなる状態のことですが、とくに金属でできた機械弁の場合は危険な状態となることが多く、要注意です。

なおこの頃は名古屋ハートセンター建設中にて、米田は豊橋ハートセンターに勤務し、手術も豊橋で行いました。

末尾の部分は恐縮・汗顔ものですが患者さんのご厚意にてそのまま転載させていただきました。

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誕生日が5つ

誕生日が5つになった。 私の真性の誕生日は(その時のことを自分がしっかり覚えているわけではないが)8月3日午前2時と記録されている。 2つ目の誕生日は、1971年10月19日である。 この時の誕生は自分でもしっかり覚えている。 この日、神戸大学病院心臓外科教室の麻田栄教授の御執刀を得て、私の心臓の僧帽弁が人工弁に置換された。 当時、この種の手術は未だ実験段階にあり、私の場合、前後3ヶ月に亘る綿密な検査、手術、治療を経て、無事に退院でき、社会復帰することが出来た。

3つ目の誕生日は、1988年4月8日である。 4月8日はお釈迦さんの誕生日でもある。 私はその日、松江日赤病院で2回目の弁置換手術を受けたのであった。 2回目となると、さすがに、難産であったが、当時の松田部長の的確な処置により、甦ることが出来た。

4つ目の誕生日は2001年6月21日である。 当時、満70歳ともなって、松江から故郷の京都に還り、ホットした矢先であった。 当時、京大医学部付属病院の心臓外科教室には、米田正始教授が居られた。 教室の全スタッフ、看護師さんの緊密な連携のもと、私の心臓には、僧帽弁の他にも異常を来していた大動脈弁の人工弁への置換も行われた。 これを心エコーで観察すると、2つの人工弁が巧みに協調して動いてくれているのを見ることが出来る。

そして今回、5つ目の誕生日は、2008年2月13日である。 昨年末から、京大病院循環器内科で入退院を繰り返していたが、先生方や看護師さんの極めて正確、懇篤な処置にも拘わらず、内科的には、治療不能の段階に達していたのだった。

この時、前教授 米田先生は豊橋のハートセンターにスーパーバイザーとして在勤されておられた。 娘を通じて、連絡を取ったところ、直ちに手術すべきであるから、緊急に来院しなさいとのアドバイスを受けることが出来た。 2月12日早朝、、京大から直接、豊橋ハートセンターへと酸素吸入を続けながら走り、転院したのであった。 この時の、京大循環器内科の先生、看護師さんの皆さん方の懇篤な御配慮には、厚い感謝の念でイッパイである。

息子の車は早朝の名神を走り、正午には、豊橋ハートセンターに着いた。 必要な検査のみを受け、米田先生からは家族全員に対して、実に明確な説明を受け、質疑応答が繰り返され、そして、私も家族も充分に納得し、安心して、翌、2月13日、4回目の心臓手術を受けたのであった。

米田先生の御執刀とセンター全スタッフの強力なサポートのお蔭で、この日が私の5つ目の誕生日となったのであった。  手術直後から、いずれも初めての豊橋にあって、吾が妻、娘、息子夫婦らが、とりわけ妻は私と同年齢でありながら、豊橋に連泊し、私と同じ病院食を食べて、「減塩食」と言うものを研究しながら、私に付き添い、介護してくれたのであった。

入院してから、18日目、4年に一度の2月29日(大安)、再び家族全員で京都の自宅に帰還することが出来たのであった。 聞けば、スタッフの先生方の間でも、開胸心臓手術、3回というのはあるが、4回目というのはさすがに少ないと言うことであった。

ちなみに 神の手 とも言われる 米田先生のホームページは下記にあるので、参考になさって下さい。

http://www.masashikomeda.com/

なおまた、私の娘の立場からのドキュメンタリーが、下記に記載されていますので、興味のある方はご参照下さい。

http://megumu.tea-nifty.com/megumu/2008/03/index.html

 

2008-03-06

神の手

神の手と呼ばれるお医者さんに父の命を助けていただいた。

 1年前まで神の手と呼ばれるお医者さんは京都にいたのだが、今は、京都にいない。週の半分が愛知県豊橋、残りの半分は神奈川、日曜日にだけ京都に戻って来る。

 父の心臓の3回目の手術のときに主治医だったそのお医者さんは、病院内の院内抗争(つまりは「白い巨塔」)のため、心臓血管外科を追い出されてしまっていたのです。地位保全の裁判まで起こしたのだが、京都に留まることはできなかった。

 命の期限を切られた父に、残った病院の心臓血管外科(現在機能停止中)の医者は「私にはようしません」と匙を投げ、あとは内科の問題だと、循環器 内科に丸投げした。ただ、男気のある循環器内科の若いお医者さんは、一生懸命手を尽くしてくれた上に、複雑な事情にも関わらず、「セカンドオピニオンを」 という私たち家族の申し出に誠意をもって応えて下さり、すぐに父のデータをその先生のもとに送って下さった。

 なんせ時間がない…。外科は、チームが必要。京都でも手術ができるよう準備は整えているようだが、急な手術&リスクの高い手術なので、チームを組むにも人も時間も場所も足りない。

 ということで、急遽、愛知県豊橋市の豊橋ハートセンターへの転院を決意した。

 金曜日にデータを送ってもらって、土曜日にその医者の自宅に到着。唯一そのお医者さんが京都に帰ってくるのが日曜日で、日曜日にデータを確認。夕 方に電話をし、万全の体制でやってもらいたいので、ともかく豊橋に行きます!と決断した。お医者さんが受け入れを決めて下さり、正式に転院が決まったのが 月曜日、翌火曜日(12日)に、京都から豊橋まで車で転院。

 豊橋に行きます!って言ったものの、それからが大変。第一豊橋ってどこ…って地図を探す始末。昨日見舞で京都にきて帰ったばかりの弟(名古屋在住)をすぐに戻ってこーいと呼び出し、ホテルを押さえてもらう。

 父はかなり弱っている。だが、救急車を出してもらえなかったため、弟の車に酸素ボンベと車いすを積んでの移動となった。

 そのさなか、ばたばたしているところを物陰から見ていた人がいた…
 見舞客と、医者との対応でばたばたしてベッドが空になった30分ほどの間に、なんと財布と預金通帳を盗まれた。健康保険証などはおいてあったので、プロの仕業。直前に来てくれた見舞金も全て盗られた。警察が来て、被害届を出すことになった。弱っているところに事情聴取、おまわりさんもあまりのことに「元気出して下さい」といたわってくれた。

 死にかけている病人からお金を取るなんて、絶対に許せない。
 が、父は一言、「厄払いや」…

 そのドロボウが悪い厄を全部持って行ってくれたお陰で、それからはトントン拍子。

 火曜日は、朝から晴れてました。
 次の日は京都は大雪だったので、もし一日遅かったら、雪で関ヶ原を超えられず、酸素ボンベも尽きて、雪の中救急車も走れないし、どうなっていたことか…
 そのまま緊急入院で豊橋入り。もう道中の長かったこと…。数日間、毎日動悸がしてこっちの心臓までおかしくなりそう…。

 翌水曜日に緊急手術。4回目の心臓の手術。リスク30%と言われた。つまり、生存率70%。普通なら50%以下のところだが、その先生のお陰で20%稼げた。

 外科のお医者さんは、創意工夫に溢れたアーティストだと確信した。あらゆる状況を考え、どうしたら良いか、いろいろ工夫をして下さった。父の心臓 には、人工弁が2つ入っている。今度が4度目の手術。弁置換手術を3回受けているのだが、そのうちの僧帽弁周囲の逆流がひどく、赤血球を壊すために溶血し ていたのだ。つまり、最初は小さな孔から始まるダム決壊と同じ、氷の上で一箇所ヒビが入ると、パリパリぎしぎしと次第に裂け目が酷くなって、最後バリっと 崩れ落ちるのと同じこと…。父の心臓、最初は小さな孔(血液が壊れるぐらいなので、ほんの小さな孔)だったのが、なんと4箇所の裂け目に発展していたらし い。

 最近のカテーテルもすごいね…。手首からできるんだって…。私の仕事は、カテーテルやら内視鏡の翻訳の仕事。だが、実物を見たことはない(たけしの「本当は怖い家庭の医学」で実際に動かすところを、ほぉって見る程度)

 さて、午後4時から始まった手術…終わったのは、夜中の2時半だった。
 先生方は当日2度目の手術。つまり、その日はぶっ通しで手術ということ。外科医はつくづく体力がないとやっていられない。

 家族待機室で待っていたが、待ちくたびれて看護婦さんが呼びに来たときは、完全に寝ぼけまなこでした(^^;

 豊橋ハートセンターは、全国でも10の指に入る心臓専門の病院。とても気持ちのよい対応だし、なんというか全てがテキパキ、対応も早い。

 2日後にはなんとICUから重症患者の個室に移り、その後大部屋…なんと二週間余りで退院の運びになった。以前に京大病院に入院していたときは、肺炎を起こしたこともあり、ICUも長く、入院も手術後1ヶ月だった…

 心臓は身体の大元なので、悪くなるのも急激だが、良くなるのも早い。後半は、父は暇をもてあましておりました…

 そして昨日、四年に一度の2月29日の大安、快晴、無事に父は退院しました…。

 ということで、大変な大変な日々でした。 豊橋にも一時滞在しておりました。京都との往復も大変でした、といってもまぁ新幹線のこだまで1時間半だけど。

 あまりの急展開に、予定は全てキャンセル。仕事はキャンセルするわけにいかなかったので、暇を見つけてやってましたが、今回、初めてマクドナルドから、無線LANで接続できました……。ニフティのコネクトforモバイルが、手動で設定しなくてもいけたので便利でした。
 インドのボランティアの方は、みんな渡印直前だったので、こんな状況にも関わらずごめんねごめんねといいながら容赦ないメールに私は襲われました…(^^;

 今回の収穫は、父母ともに携帯メールができるようになったこと…

 娘いわく「暇は人間を進歩させる」んだそうだ。

 

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2008.03.03 in ほのぼの日記 | Permalink | Comments (1)

 

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執筆:米田 正始
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