4a) とくにオフポンプバイパス手術について: よりやさしく、よりしっかりと治す

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◾️オフポンプ冠動脈バイパス手術(略称OPCAB オプキャブ)とは

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冠動脈バイパス手術ポンプつまり体外循環(人工体外循環(人工心肺)稼働中 心肺、写真右)の器械を使わずに行う手術です。

比較のためにこれまでの体外循環を使うものはオンポンプバイパス手術と呼ばれることがあります。

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オフポンプバイパス手術は日本へは1990年代後半に導入され、

当初はMIDCAB(ミッドキャブ)手術という方法で、

左胸を小さく開けてその付近にある左内胸動脈を剥離し、その直下に見える冠動脈(左前下降枝)に縫いつけます。

この方法は創が小さく、ポンプも使わない、患者さんに優しい画期的なオペとして一世を風靡した感がありました。

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まもなく胸骨(胸の真ん中にある骨です)を縦に切って心臓に到達し、治療する、普通の心臓手術と同じアプローチ法を用いるオフポンプバイパス手術が増えて行きました。

この方法ではMIDCABと違って、必要なら何本でもバイパスを付けることができます。

MIDCABは心臓の前側に限定されるため通常1本、せいぜい2本程度しか付けられませんが、

オフポンプバイパス手術ならいざとなれば5本でも7本でも付けられます。

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◾️草創期のオフポンプバイパス手術は

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ただ当初は心臓の裏側の冠動脈(鈍縁枝や回旋枝末梢部や右冠動脈 の枝)にバイパスを付けるために、安全に心臓を脱転つまりひっくりオフポンプバイパス手術中 返す技術がやや未完成であったこと、

手術器械が現在のものより性能が悪かったことなどのため、

難しいオペと思われていました

(写真右は心臓を脱転してバイパスを縫いつけているところ)。

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私がCalafiore先生(当時イタリア、現在サウジアラビア)のところで習ったオフポンプバイパス手術を

1999年12月の日本冠疾患学会でビデオ講演させて頂いたときはまだ変わった方法という見方をされたように記憶しています。

その後心臓を脱転するためのさまざまな工夫や器具ができ、現在はオフポンプバイパス手術が冠動脈バイパス手術の定番となりました。

虚血性心疾患・手術事例1 オフポンプバイパス手術

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◾️日本での展開は

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日本では冠動脈バイパス手術の約3分の2がオフポンプバイパス手術で、これは米国等と比べて突出した高い値です。

技術的にはオフポンプバイパス手術のほうが通常のオンポンプバイパス手術より難しく、

しかも日本人の冠動脈も内胸動脈も欧米人よりは若干細いため、

日本人の冠動脈手術そのものがやや難しいです。

日本の心臓外科医が行った努力は大変なものだったと思います。

典型的なオフポンプバイパス手術

これにはオフポンプバイパス研究会(小坂真一先生、南淵明宏先生ら)が大きな貢献をしたと言われます。私も及ばすながらオフポンプのライブ手術を2001年の研究会で初めて行い、以後毎年の会長が引き継いで下さり、日本ではこれが標準!と言えるレベルまで浸透しました。

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◾️オフポンプバイパス手術が優れている点は

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それではオンポンプバイパスと比べてオフポンプバイパス手術はどういう点で優れているので良いものは良い!しかしその証明は容易ではないことも しょうか。

理論的にはポンプ(体外循環)がある程度リスクとなる患者さんたとえば上行大動脈ががちがちに硬化しているなどの状況ではオフポンプバイパス手術は有利です。

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この10数年、さまざまな研究がなされました。

発表された範囲では手術死亡率には大差がなく、

輸血量や入院期間あるいは術後の神経学的異常などがオフポンプバイパス手術で減らせることが示されました。

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その結果はオフポンプとオンポンプの両方を多数行った心臓外科医の印象とは少し違うと思います。

かつてオンポンプバイパス時代にはハイリスクであったケースにオフポンプバイパス手術を行うと実にスムースに経過するのです。

結局こうしたハイリスク例での臨床研究が不足しているのであろうというのが経験ある心臓外科医の意見です。

それを裏付けるかのようにオフポンプバイパス手術を始めてから、バイパス手術で患者さんが亡くなられることはほとんどゼロになりました。

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◾️オフポンプ先進国・日本では

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オフポンプバイパス手術では術者が経験豊かであれば手術の質でもオンポンプバイパスに抗血小板剤を切れるのがバイパス手術の利点の一つです 引けを取りません。

それは術後のバイパスの開存率(つまりどれだけ機能しているか)でも劣っていないことが判明したからです。

そうなればカテーテル治療(PCIと略します)に匹敵する安全性と、

PCIより良好な長期安定性がオフポンプバイパス手術により得られることになります。

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しかもオフポンプバイパス手術の術後は最近のPCI(薬剤溶出性ステントDESを使います)と違って、

きつい薬剤(抗血小板剤たとえばプラビックスやパナルディン等)を永く使う必要がないため、

患者さんにとって長期安全性で有利です。

たとえばもしがんがどこかの臓器に発生してもその検査や手術も比較的安全に受けられます。

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◾️カテーテル治療(PCI)との協力へ

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オフポンプバイパス手術の後。バイパスグラフトがきれいに映っています。患者さんはお元気になりました しかしPCIは創がほとんどないという魅力があります。

またほとんどすべての患者さんはまず循環器内科の先生のところを受診されます。

それらのため、現時点ではPCIがバイパス手術より数の上で大きく勝っています。

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ヨーロッパで行われているSyntax研究(薬剤ステントを用いたPCIバイパス手術を比較)の3年間の成績が昨年秋に発表されました。

重症の冠動脈疾患ではバイパス手術はPCIより高い生存率を上げ、ヨーロッパのガイドラインでもバイパス手術をクラスIの適応つまり絶対推薦となったのです。

たった3年でこれだけの差がついたことは驚くべきことでした。、

そして2011年にSyntaxトライアル4年のデータが発表され、冠動脈バイパス手術を受けた患者さんはステントの患者さんより長生きできることがついに示されました

(写真左はオフポンプバイパス手術後のグラフトの姿、MDCT検査にて)。

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◾️まとめ

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もっとも識者の見方はどちらが絶対良いとか悪いとかではなく、

個々の患者さんに最も適した選択をする必要なら併用もする、という柔軟で患者目線の方針にあります。

 

ともあれオフポンプバイパス手術の進化により患者さんにとって、より安全で確実な治療法が増えたのは間違いないところで、

内科外科全体の総合循環器グループとして有用ツールとしてさらに育てたいものです。
心臓手術事例:数回のPCIのあと冠動脈バイパス手術を)(心臓手術事例:PCI後、急性心筋梗塞後のバイパス手術)

2012年1月18日には天皇陛下もこのオフポンプ冠動脈バイパスを受けて元気になられました。その利点が広く認識されたものと思います。

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◆患者さんの想い出:

Aさんは50代前半の男性です。当時米田がいた P1120179b名古屋へはるばる大阪から来て下さいました。

慢性血液透析のため血管が全身的に硬化し、すでに脳梗塞を患われていましたが、幸い頭脳は明晰でした。冠動脈はがちがちに硬化していました。

オフポンプ冠動脈バイパスを施行し、3本を左前下降枝、回旋枝、右冠動脈につなぎました。良好な流量を確認しました。透析の患者さんに絶大な威力を発揮する内胸動脈はもちろん左右とも活用しました。

かつては何でもカテーテル治療PCIというのが基本方針であった病院でも近年は慢性透析の方には冠動脈バイパス手術を選ぶ傾向が強まりました。ガイドラインの改訂と、やはり患者中心の医療が浸透したためと考えられています。

術後経過は順調でお元気に退院されました。それ以後、下肢の動脈も狭くなり、これはカテーテル治療PPIで軽快しました。

オフポンプバイパス手術から3年が経ち、バイパスのグラフトは健在で患者さんを守っています。米田正始が奈良にあるかんさいハートセンターを立ち上げてからはこちらの外来に通っておられます。これからも永く元気なお付き合いで行きましょう。


◆患者さんの想い出2:

Bさんは60歳の男性で P1120188b狭心症と発作性心房細動のため米田外来へ来られました。

冠動脈が中枢部で複雑にやられているためカテーテルPCIよりもオフポンプ冠動脈バイパス手術を行うことになりました。また比較的お若くこれからがあることも一因でした。

手術ではまず右内胸動脈を左前下降枝へつけ、さらに左内胸動脈を回旋枝につなぎました。良好な流量とパタンを確認しました。右冠動脈はかつてのステントがまだ使える状態のためバイパスはつけませんでした。

術前に不整脈発作とくに心房細動AFを繰り返しておられたため、簡略に直すことになりました。心臓がかなり張っていたため、安全確実に体外循環・心拍動下に冷凍凝固を行いました。

術後経過は良好でまもなくお元気に退院されました。

狭心症に心房細動が合併するのは近年は稀でなくなりました。こうしたケースではそのどちらも治すことが大切と思います。

Bさん、これから自然な生活を十分楽しんで下さい。


◆患者さんの想い出3:

Cさんは70代後半の男性で心筋梗塞を P1120192b患われ、四国から来られました。

地元の病院ではカテーテルPCIも冠動脈バイパス手術もできないと言われ、ハートセンターへ来院されたのでした。息子さんが頭脳明晰な方でネットや本で徹底的に調べられたのです。

データを拝見しますと、前下降枝が完全閉塞しており、カテーテルの動画を見ても血管が映ってこないという困った状況でした。右冠動脈も同様につよく壊れていました。地元の病院で治療できないと言われたのはなるほどと思いました。

しかしそのままではCさんは永く生きられません。何とかする必要があります。

上記のカテーテルやCT、心機能のデータを併せ考え、私の経験上、おそらくオフポンプバイパス手術ができる血管があるだろうという読みで心臓手術に臨みました。

案の定、良い血管(左前下降枝)が隠れているのをみつけました。そこへ内胸動脈をバイパスし、良好な流量とパタンを確認しました。

これでこの患者さんの予後はぐっと改善しますが、さらに右冠動脈にもバイパスを付ける部位があることがわかりました。その一点にバイパスを付けました。これも良い流量とパタンを得ました。これでオフポンプバイパス手術の威力はさらに増します。

術後経過は良好で、以前からの心不全は少しあるものの、これから薬などで次第に改善できそうな状況でした。退院前に、Cさんは「自分は経済的にあまり余裕がないのでおしゃれな御礼はできません。そこで自分の作品でよければどうぞ」と見事な御自筆の書を下さいました。以後私のオフィスに飾ってあります。

Cさん、お元気で。遠方ですが、私が大阪に異動し、少し近づきましたので時々でもお越し下さい。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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2010年1月14日 手術の待ち時間

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1月12日の中日新聞によれば、がんの手術の待ち時間が長くなり問題になっています。

以下、中日新聞WEBの記事から抜粋します:「ほぼ半数(の病院)が3つのがん(胃、肺、乳がん)のいずれかで、最近5年間に「延びたと感じている」ことが分かった。現在の手術待ち期間は最長で「3カ月」との回答もあった。病院側は拠点病院への患者集中や外科医、麻酔科医不足を主な理由に挙げている。」理由はともあれ、がんと診断されたのに、手術してもらえずに無為に待たされている患者さんがおられるわけです。

ベストの手術をベストのタイミングで さらに次のような記載がありました。 「がんの進行度にもよるが、医学界では一般的に1カ月未満が望ましいとされる手術待ち期間は、肺がんでは1カ月以上の回答が4割を占めた。岐阜県のある病院は「2~3カ月」と答えたほか、「2カ月」「1・5~2カ月」「1・5カ月」とした病院が、それぞれ1病院ずつあった。 1カ月以上の回答は、乳がんでは45%、胃がんでは37%を占め、どちらも最長は2カ月だった。」つまり手術を待たされている間にがんが増大したり運が悪ければ転移して取り返しがつかなくなる心配さえあるわけです。

この記事を読んで、かつて国立大学病院で勤務していたころの苦労を思い出しました。患者さんは心臓病が悪くなった段階で突然来られることがよくあります。そして同じ時期に何人も来られることがよくあります。そうした時に、手術は(心臓手術も)週何例などと人為的に決められている国立施設では対応が難しくなります。結局、待てる患者さんはうまく時間稼ぎをして何週間とか何カ月後に手術をし、急ぐ人はできるだけ早く、といっても医学的な観点から心臓手術のタイミングを決めるとは限らず、順番待ちタイミングになってしまいます。それでは良くないと考え、まだ待てる患者さんに直接相談しお願いして延期を快諾して戴き、それに代えて待てない患者さんの手術をさせてもらうとか、どうにもならない時は救急車で近くの病院へ転送してそこで手術させて戴くなどもよくやりました。

そこにいる誰もが、「これは良くない、おかしい」とは認識していましたが、次第に「どうにもならない」、「まあ仕方がない」、さらには「ベストタイミングでベスト手術をやりたいなら、そういう態勢のある病院で仕事すれば良い」、などという開き直り議論まで出る始末。国民の血税で支えられている病院という空気はそこでは希薄です。さらに残念だったのは病院のトップレベルの立派な先生からそうした意見が出たことです。

私は内科研修医のころ、自分の受け持ち患者さんにがんが見つかれば、外科の先生にお願いしてできれば来週中に手術をお願いしますと懇願を重ね、いつも苦笑しながら許して頂きました。身勝手でうるさい研修医と自認していましたが、研修医の自分が今この患者さんにできるベストのことはこれしかないと信じて懇願しまくっていたのです。その民間病院の理念のおかげもあったのでしょうが、それを認めてくれた当時の外科や麻酔科の先生方は今振り返れば立派だったと思います。

現代はもっと医療状況は悪いため、がんでも心臓病でもさまざまな工夫が必要であることは理解できます。しかし問題を問題と認識できない、あるいは認識していても知らん顔をするという向きが多すぎるように思います。自分が今仕事している病院では、創立者がこうした問題を打破するという強い信念をもって循環器(心臓血管)専門病院を創った経緯から、無用な手術待ちやたらい回しなどの問題がないのには救われた思いになります。しかし医療崩壊は公的病院のみならず経営努力を続ける民間病院にも影響を及ぼしています。問題を認識し、いつも皆で考えるという当然のことを再確認する必要があると思います。

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2010年1月6日 寒い日にご注意を

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寒い日が続きます。お正月明けですからあたりまえですが、この寒い季節にはハートセンターのような心臓専門病院は忙しくなります。つまり寒くなると心臓の調子が悪くなるのです。

たとえば狭心症の患者さんでは寒くなるとそれまで安定していた症状が急に悪化し、狭心症が何度も起こったり、運が悪いと心筋梗塞を起こして緊急入院・緊急治療になることもあります。それは寒くなることで全身の動脈が縮こまって血液の流れが悪くなり血圧が急に上がったりしやすくなって心臓への負担が急に増えるからです。また寒さのために心臓に血液を送る冠動脈そのものが縮こまり血液が流れにくくなることもあります。つまり急な寒さは心臓の大敵なのです。琵琶湖西岸の冬景色

同様に、心不全をお持ちの患者さんでも、寒くなると心臓への負担が急に増え、それまでお薬や養生で何とか安定していた心不全が一気に悪くなることがあります。心不全の原因となる弁膜症や心筋症その他の病気でも同じことが起こりやすいため注意が必要です。(写真は心臓外科医の写真紀行記より引用)

昔の人は偉かったと思うことがよくあります。まだ科学技術がそれほど発達せず、医学も医療も未熟であった時代でも、心臓の悪い患者さんをみて、この冬を無事に乗り切ってくれれば良いが、などと普段以上の注意をしたものです。実経験の中には科学が息づいているという一例ですね。

また寒くなると肺や気管支などの空気の通り道が寒さのために傷み、肺炎や気管支炎のもとになります。現代のエアコン社会では暖房のために湿度が下がり、お肌もカサカサ、肺や気管支の表面もカサカサとなって抵抗力は落ちてしまいます。そこへばい菌やウィルスがつけこむと肺炎や気管支炎になりやすくなります。まして心臓がもともと悪い方の場合は二重に肺もやられやすくなります。

そのため冬にはいつも以上の、ちょっとした気遣いが心臓や肺や体を守ります。たとえば急に寒いところに行かないように、トイレは少しあたたくしておくとか、寒いときはポータブルトイレを寝室に置くとか、やむなく外へ出るときは軽くウォームアップしてから出るとか、マスクなしで冷たい空気をいきなり吸わないとか、エアコンをつけるときは加湿器も使うなどですね。それらのケアに加えて、必要なときにはお薬を出してもらえば、効き目も上がるというものです。

そして心配なときは気軽に相談できるようなかかりつけの先生とか主治医をもっておくというのも有効です。私は自分が手術させて戴いた患者さんに、何か困ったことが起こればいつでも病院まで連絡して下さいとお伝えしています。そのおかげで寒い季節でも安全に回復されたことは何度もあります。近くの患者さんでしたら直接病院へ来ていただき、関西、首都圏や九州その他遠方の方はその地域の先生にこちらからもお願いして早期発見・早期治療できるようにしています。

寒い季節を楽しく安全安心で過ごしましょう!

米田正始 拝

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むくみがある―心不全にご注意を【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月12日

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むくみはさまざまな病気が原因で起こります。心不全や心臓病がらみの場合は急ぐことが多いです(つまり危険なことがあるわけです)。
あと肝臓(肝硬変その他肝機能不全)や腎臓(腎不全やネフローゼ症候群その他)などが悪い場合も要注意です。悩む時間があれば早目に医師にご相談下さい。

全身がむくむ→まず内科か内分泌内科、腎臓内科などへ

下肢が主にむくむ、息苦しさがある→循環器内科か内科へ、必要なら心臓血管外科に

お腹がむくむ→まず消化器内科か内科へ

目の周りがむくむ→腎臓内科か内科へ

脇の下や太ももの付け根がとくにむくむ→内科へ

下肢がむくむ、妊娠や生理不順とともに→まず産婦人科へ

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Q7. 私は80歳近い後期高齢者だし、もう生きる意味があるんでしょうか?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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こうしたご質問を田舎の患者さんから戴くことがあります。とくに最近「後期高齢者」医療や保険が論じられるため、心臓手術を受けるべきかどうしましょうか、というご質問も増えました。

 

その答えは個々の患者さんの人生観や哲学によってさまざまでしょう。しかし私は「しっかりと生きて」戴きたいと個人的に希望します。

 

たとえばもう寝たきりで、家族もなく、友人もみな他界され、楽しみもない、という状況の方 でしたら、患者さんがそっと皆の待つ天国へ行きたいと希望されれば手術などせずに、苦痛のみ和らげ、その範囲内で一日でも長く快適に生きられる道を探し、またそのお手伝いをするのも良いとfamily02思います。

 

しかしただ年齢がやや高齢というだけで、心臓さえ治せばまた楽しく過ごせる患者さんを手術せず死なせるというのは私は反対です。というのは病気によっては心臓手術によってすっかり元気になり、その後、他の病気がそれほど重くない状況なら数年以上(あるいは10数年以上)、人間らしく過ごせる可能性が高いからです。たとえば狭心症・冠動脈疾患大動脈弁狭窄症胸部大動脈瘤腹部大動脈瘤や症状の強い弁膜症その他ですね。

 

こうした議論は心臓血管外科が高齢者でもかなり救命できるようになった20年以上前から話題になることが増えました。そのとき私の恩師 Tirone E. David デービット先生は次のように言われました。

長年社会貢献をしてくれた人たちに社会は報わねばなりません

 「世の中には、老人はもう役に立たないという理由で老人の医療とくに心臓手術を無駄と言う人もいる。しかしその患者さんが数十年にわたって仕事をし、社会貢献をなし、税金を払って来たという事実をどう考えるのか。」

 

これはその患者さんの現役時代の収入の多少にかかわらず尊い社会貢献という意味であり、女性とくに主婦業の方の場合は一見無収入でも旦那さんやご家族を介しての社会貢献という意味ではやはり尊いものがあるという意味です。

 

年老いて役に立たなくなったからもilm08_cf05008-sう不要だなどという社会は、身体障害者やハンディキャップを負った人たちを排除する社会と同じで、中国の古典・孔子の言うケダモノ社会です。そういう社会になってほしくはありません。

 

もちろん日本の医療を支えるのは日本の経済であり、その日本経済はこれから徐々に低落することが識者から指摘されている現在、医療もまたそれに対応して無駄遣いのない、効果的なものを追求する必要があります。しかしだからと言って、恩人とも言える老人を捨てて良いということにはなりません。

 

日本はいろんな意味で遅れた未発達国家ですが、国民皆保険とくにご老人に対する手厚い支援は世界に誇るべきものです。近年それが崩されつつあることを懸念します。

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ベトナムや中国、タイ、その他の国々で心臓手術させていただくとき、日本の保険制度のありがたさを実感します。アジア諸国では医療費をねん出するために、患者さんがご家族を売るなどもまだあると聞きます。日本で後期高齢者の患者さんを守ることは人間的な社会を守ることでもあるのです。(ご参考:三笠宮さま(96歳)の僧帽弁形成術

 

 ちょっと余談ですが、ベトナムのホーチミン市の病院で弁膜症心房細動の手術をしたときに、関係者から同じ手術でもなぜ先生の手術(強化したメイズ手術)はシンガポールの先生の手術より安価なのですか?と聞かれたことがあります。

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それは高価な使い捨て器機を使わずに、術式で工夫して確実に治すからですと答えました。これからの時代にはこうした考え方は大切と思っています。

 

いささか話が大きくなり、かつ余談になってしまいましたが、後期高齢者だから治療を受けないというお考えよりは、皆で人間らしい社会を造ろうという方向で、ご自分もしっかり元気になるように治療を受けるというように考えられるのがよろしいかと思います。

 

なおご高齢の患者さんにつきまして、より医学的観点からのご説明は、この質問集の次のセクション「医学的なこと」のQ4に記載いたしました。また世の中では平均寿命と平均余命が混乱して使われていることがあります。平均余命のページもご参考になるでしょう。

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お便り22 オフポンプ冠動脈バイパス手術の患者さん

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狭心症・虚血性心疾患の治療には

食事や適度な運動療法、お薬から始まってカテーテル治療(PCI)さらに冠動脈バイパス手術とくにオフポンプ冠動脈バイパス手術であります。

冠動脈の重要部分が狭くなり胸の痛みが強く、あるいは痛みはそれほどではなくても心筋梗塞になりそうなときや命の危険があるときなどにはそうした強力な治療を考えます。

 

日本では手軽なことが受けてPCIが断然多いのですが、

オフポンプ冠動脈バイパス手術にも長所があり、うまく使い分けようというのが識者のご意見です。

 

前者は創も小さく回復も早いのですが、

この数年間多用されるようになった薬剤溶出性ステントは強力なお薬、抗血小板剤という血栓予防のお薬を使わないと心筋梗塞で突然死するケースがまれにあることが判り、

当初は3カ月間だけとか1年間だけという意見もありましたが、

最近は延々と使うケースが多くなりました。

その場合、がんの手術には支障があり得ますし、

たとえば大腸ファイバーでポリープ(がんの前の状態です)をせっかく見つけても普通のようにファイバーで軽く切除できないケースが多く、学会でも問題になり始めています。

もし34b出血すれば止めることが難しいからです。

前立腺がんや乳がんその他でも同様です。

つまり薬剤ステントは手軽で便利ですが新たな病気を抱え込むという一面があります。

必ずしも優しくない治療法という一面があるのです。

 

オフポンプ冠動脈バイパス手術は創は大きいですが、

あまり強力な抗血小板剤を飲まなくても良いですし、

必要なら全然飲まずとも行けますので、スポーツを楽しみたい方や山登りその他怪我をする可能性のある趣味や仕事の患者さんに適した方法です。

最近の欧米の大規模臨床試験(Syntax トライアル)でもしっかり治せる治療法として認識されました。

このSyntaxトライアルの4年後のデータでは、冠動脈バイパス手術を受けた患者さんはステントの患者さんより長生きできることが示されました。

また重症糖尿病慢性腎不全・血液透析などの方にも同様に役立ちます。

この特長はとくに人工の心臓を使わなくて済むオフポンプ冠動脈バイパス手術で際立ちます。

 

将来的には眼科や耳鼻科のように内科外科が融合した総合循環器科の中で個々の患者さんに最も適したものを選んだり組み合わせたり(ハイブリッド治療と呼び欧米では増えています)することが患者中心医療に役立つと思います。

近年、欧米で提唱されているハートチームですね。

こうすることで初めて的確な使い分けができるのです。

 

下記の患者さんは循環器内科の世界的権威である先生から、この人にはオフポンプ冠動脈バイパス手術が適切だよとご紹介頂いた患者さんです。

登山をはじめ、さまざまなスポーツを楽しむ、活発な方です。

手術のあと、安心して仕事やスポーツを楽しんでおられる姿をみて、大変うれしく思います。

 

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米田先生


私は2009年7月6日に名古屋ハートセンターで米田先生にバイパス手術をして頂きました。
一言感謝の言葉を伝えたくメールしました。
12月27日現在までの経過をお伝えします。


3年前にT病院でバイパス手術しか治療方法は無いと告げられてから、何箇所かの病院の診察を受けました。


T病院で「発作が出たら即、死です」と説明されていましたので不安と恐怖ばかりでした。
頭から離れない不安の生活を続け最後に決断できたのは名古屋ハートセンターでした。
お任せしようと決心してからは迷いは全くなくなりました。

7月3日入院
6日手術
21日退院


退院後で一番不安な時期は9月上旬から中旬の間でした。


寝返りするとき、日常生活の動作の中でいたるところに痛みが現れて、経過が良くないのかと心配が続きました。


その度に「手術後2ヶ月間は痛みがありますから」と米田先生に言われたことを思い出し焦る気持ちを抑えていました。


私独自のリハビリですが入院中は大部屋に移動した翌日から二階のフロアーを開院前後に一日一万歩から二万歩を目標に歩きました。


(我が家は二階が生活ベースなので退院する前に階段を練習したかったのですが病院の階段は段差が大きくてリハビリには無理でした。)


退院後は翌日から近くの天白川沿いを毎朝夕、2時間くらい歩きました。


そして初めての通院8月4日の翌日からスポーツジムに通いはじめました。
(ゆっくり、のんびり2時間くらい)


まだ胸を広げる動作は出来ないのでストレッチや下半身の運動から。エアロバイクでビックリ、手術前の負荷95が60でギブアップ。


それでも週に5日は通い続け(現在は負荷も90)生活の行動範囲も広くなっていきました。
(乗り物に乗り、人ごみに出る練習でこの期間は今までになく映画をたくさん観ました)

 

初めてのハイキング、軽い登山開始は9月26日、岐阜城のある金華山です。

(瞑想の小路を往復)自信を得た私は家族に元気になった姿を見せに上京。たくさんの人が喜んでお祝いをしてくれました。


その後は温泉旅行で元気になれた喜びを感じました。

 

11月には夫の釣りのお供で伊豆大島まで行き三原山を登山したり大島のなかを4日間歩き回ってきました。


その後、曽爾高原ハイキング、鳩吹山を5時間かけて縦走を何度か繰り返し、そして目標だった鈴鹿の鎌ヶ岳を歩いてきました。


回復した実感を掴み嬉しくてなりません。

 

そして12月8日に初スキー、12、13日は御岳で滑り、本格的なスキーも北海道で4日間雪の降り続く中で滑ってきました。


去年までの発作が出たらと思う不安は全くなく、スキーは上達しなくても、マイナス7~8度の寒さの中にいる自分が考えられないくらいでした。もう何でもOKです。


この元気な姿を回りに見せられることがとても幸せです。


心配をかけた人への感謝の気持ちを伝えられたらと思っています。

 

米田先生から紹介して頂いた平光先生は海外スキーも「折角元気になったのだから楽しんできてください」と言ってくれました。


「天にも昇る」そんな気持ちで有頂天になり、早速仲間のオーストリアスキーに参加申込をしました。
来年の1月30日から9日間楽しんできます。

 

入院中に見舞ってくれた友達には「二度とスキーなんかしたくない」と言っていた時から半年も過ぎないうちに「手術したのは去年だったみたい」と勘違いするほどになりました。

 

これ程の元気、幸せ、大切な命を贈ってくださった先生に心から感謝いたします。

米田先生の「祇園ホテル」講演(註:米田正始の患者さんの会のことです)にも参加したいと思っています。

 

私は今回の手術が最高な先生、スタッフ、まわりの人たちの温かい中で行われて今、とても幸せに毎日を送っています。


そしてチョッピリ勇気と頑張った自分を褒めてあげたいと思っています。

 

皆さん本当にありがとうございました。

まとまらないメールです年内に感謝の気持ちを伝えたくてお便りしました。

 

2009年12月27日  ****

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動悸がする―不整脈があるかも、さらにその背景の病気は?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月11日

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動悸そのものは心臓の症状ですが、その原因として心臓病やホルモンや婦人科の病気その動悸にご注意を 他いろいろあり得ます。大変苦しいときは要注意です。以下はいざという時にすぐ使えるようにかなり簡略に書きました。どこへ行けば良いか判りにくいときは内科か救急を受診して下さい

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動悸がする(胸がどきどきする、胸がどきんとする、胸がドーンと来る、胸が躍る感じがするなど)→いずれも不整脈の症状でまず循環器内科へ
動悸と胸痛があれば→まず循環器内科へ

動悸に発熱が加われば→まず内科または循環器内科へ

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動悸に頭痛や肩こりめまいが加われば→内科や婦人科へ、ついで循環器内科へ

動悸に加えて目が飛び出しておれば→まず内科か内分泌内科へ

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動悸だけでなく息切れや足のむくみがあれば→循環器内科へ、ついで心臓外科

動悸に加えて顔色が白く悪ければ→まず内科へ

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なお All About に動悸を起こす病気の一覧を載せましたので、こちらもごらん下さい

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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息苦しい―危険な兆候、息ができなくなるとどうなるの?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月11日

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息苦しさが強いときは命の危険が迫っていることもあります。すぐに下記の科などを受診されあまり息苦しいときは無理せずにご相談を。健康あっての仕事、健康あっての楽しみです るのが安全です。以下はいざという時にすぐ使えるようにかなり簡略に書きました。どこへ行けば良いか判りにくいときは内科か救急を受診して下さい

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息苦しい、熱がある→まず呼吸器内科か内科へ

息苦しいし胸が痛い→まず循環器内科か内科へ

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息切れがする、動くとえらい→まず循環器内科か内科、ついで呼吸器内科、心臓血管外科

胸が重い→まず循環器内科か内科へ

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胸が苦しい→息苦しいときに準じます

息苦しいし胸がゼーゼーするか咳や痰が多い→まず呼吸器内科か内科、ついで循環器内科へ

息苦しいし、呼吸が速い→まず内科か精神科へ

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胸が痛い: 心臓の悲鳴か、大動脈の悲鳴か、あるいは?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月11日

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胸が痛いとき、とくに強い痛みや5分以上続くときは大きな危険な病気かも知れません。すぐ胸痛は危険なサイン。無理せず遠慮せず! に下記の科などを受診されるのが安全です。以下はいざという時にすぐ使えるようにかなり簡略に書きました。どこへ行けば良いか判りにくいときは内科か救急を受診して下さい。

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胸が痛い、ずきずき痛い、左胸が痛いとき→まず循環器内科、ついで内科か呼吸器内科へ

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ナイフで刺すほど胸や背中が痛い→まず循環器内科か心臓血管外科へ

(同時に)胸が苦しい、→まず循環器内科、ついで内科か呼吸器内科か心臓外科へ

(同時に)熱が出る→まず循環器内科か呼吸器内科へ

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咳をすると胸が痛い、息を吸うと胸が痛い→まず呼吸器内科か内科へ

乳が痛い→まず乳腺科か外科へ

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胸の浅いところが痛い→まず皮膚科か整形外科へ、ついで内科へ

体を動かすと痛みが強くなる→整形外科へ

お腹へ痛みが移る→消化器内科か外科へ

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なお  All About の健康のページに胸痛を伴う病気の一覧をお出ししましたので、ご参照下さい。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第七号】 新年おめでとうございます

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【第七号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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明けましておめでとうございます

旧年中はこのブログを読んで戴きありがとうございました。今年もよろしくお願い申し上げます。

昨年は世の中も医療の世界もさまざまなことがありました。政権交代があり、医療についてもとくに医療崩壊について熱い議論がさ れるようになっています。新年早々ですので、なるべく肩の凝る話はしたくないのですが、医療の世界とくに公的病院での税金の無駄遣いに光が当てられるとともに、患者さんや社会を守るための予算を削減されないように皆で努力する必要があります。

福祉や医療のための予算を毎年2200億円ずつ削減されて来たのが昨年、ようやく止めになりました。しかしその打撃から立ち直るにはまだまだ時間がかかりそうで、その間、患者さんを守る必要があります。

医療は、とくに心臓関係は365日24時間体制でなければなりません。ただし現在の医療費・医療体制では完全シフト制を敷くだけの人手は雇えず、職員の献身的ボランティア精神で何とかうまくこなしているのが現状です。たとえばハートセンターでは緊急手術となれば待機メンバーが直ちに病院へ来てくれて当直医と合流し、いつでも必要な手術ができます。

逆にそうした工夫ができない病院では診療拒否とかたらいまわしなどが起こっています。救急車でのたらいまわしなどの目に見える医療崩壊はまだ議論になりやすいのですが、重症患者さんなどをリスクが高いからと手術・治療や検査さえ拒否するような形での医療崩壊は社会から見えにくく、根深い問題です。名古屋で仕事を始めて1年余り、そうした公的病院内での医療崩壊を多数見て来ました。

この不況の時代で明るいニュースはあまりないのですが、これまで私たちが主張してもなかなか議論にもなりにくかった上記の話が「話しになる」状態になっているのは幸いです。

またこれまで医療費亡国論つまり医療費に予算を投入すると日本経済はダメになるという誤解があり、そのために医療費を削って道路工事などに多額のお金を投入するというのが日本の姿でした。しかしそれは誤りであると科学的に証明がされました。

これからの時代は患者さんや市民の皆さんが声を出して問題を解決することも大切かと思います。結局堅苦しいお話になりました。申し訳ありません。

皆さん、今年も真摯にかつ明るく楽しく前向きに進みましょう。

(註:この記事は私のホームページにある心臓外科医の日記ブログから一部抜粋、転載いたしました。日記ブログの方もご覧下さい)

平成22年1月1日 

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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