第五回日本ローカーボ食研究会に参加して

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恒例の学術集会がこの3月1日に名古屋で開催されました。

早いものでいつしか5回目となり、内容の深さも当初よりさらに立派になったと思います

まず灰本クリニックの灰本元先182347277生(この研究会の理事長です)が三段階糖質制限法に対する海外の反応という、パイオニアならではのご苦労と今後の方向性がわかるお話でした。

穏やかなローカーボ食(CARD)は過激派からは生ぬるいと言われ、CARD否定派からは単に毛嫌いされるという板挟み状態にあると思います。

しかし従来のダイエット法の良い点をそのまま温存し、悪い点だけ補う、それも科学的根拠にもとづいておこなうという点で穏やかローカーボは優れものと私は考えています。

医学ジャーナルの査読の先生方もまだまだ旧式の、自分の考え以外は否定するひとも少なくありません。着実に仲間を増やしていくのが良いと思いました。なかでも患者さんが喜んで下さり、患者さんが仲間になる、これが強いと思います。

つまりローカーボダイエットを正しく実践する医師のところへ多数の患者さんが集まる傾向がはっきとすれば、あとは時間の問題になると思うのです。

医療の世界では審判は患者さんなのですから。


Ilm09_ad03002-s続いて私、米田正始が心臓外科手術でやせるべき時、太るべき時というタイトルでお話しました。

太り過ぎのため、肺活量が少なすぎたり血糖値その他の問題で心臓手術ができないという患者さんをときどき見かけます。

そうした患者さんたちを、ただ手術適応がない、と断るのではなく、科学的ダイエットで必要な減量を安全に行い、肺活量や内臓脂肪、血糖値その他を良い状態にしてからゆうゆうと安全な心臓手術を行う、これは患者目線の全人医療として正当なものではないかと思うのですが、大方のご意見は好意的でうれしく思いました。

最近進歩しているMICS手術でも太り過ぎの方は脂肪に押されてか、視野が狭いのですが、こうしたケースにもCARDはお役に立っているのです。

 

ついで私たちの知恵袋、名古屋大学名誉教授の加藤潔先生が果糖代謝とブドウ糖代謝の関係ー果物を理解するために、というタイトルでお話されました。

自然科学という言葉がぴったりとくる、論理的で明快で頭の中がすっきりと整理される、興味深いお話でした。

果物には果糖が含まれるタイプがあり、それを食べ過ぎると糖新生が起こり、血糖値や悪玉コレステロールLDL、中性脂肪TG、尿酸その他が増えてメタボの病気を創ってしまうのです。

また果物が熟するとブドウ糖が増えるタイプがあり、熟したときのおいしさの秘密がわかり、なるほどと感心しました。

果物は他の食べ物にはない特徴があり、うまく食べれば健康食品として活かせるという期待をもたせて下さったお話でした。

 

ランチョンセミナーは名古屋大学大学院予防医学の笹壁多恵さんのゆるやか糖質制限食のお話でした。ちょうど研修のためフィリピンに滞在中で、この研究会のために戻って来て頂きました。

フィリピンの食事が炭水化物中心であるのに驚きました。何でも太っているのがひとつのおしゃれ、ステータスのような空気があるそうです。しかし糖尿病が増加しているという事実を見るとこれから彼の地でもローカーボダイエットCARDを啓蒙しなければと思いました。

ランチョンセミナーの時間に糖質制限のスープ、カレー、パンなどがふるまわれました。なかなかの美味で感心しました。スポンサーの皆様に感謝!


午後は管理栄養士さんが中心の発表セッションでした。

Btn_ghc岐阜ハートセンターの大西歩実さんは同センター開設時からCARDを推進して来られた実力派の栄養士さんです。今回はローカーボによってさらに痩せて困った症例を発表されました。

小早川医院の飯塚智子さんはSU剤を減量し、CARDを指導した肥満糖尿病の一例を発表されました。

いずれも立派なお仕事です。あえて前向きにコメントさせて戴ければ、もう少しおだやかローカーボで、かつ体重などでもこれ以上はやらないという限界を設けてやって頂ければ理想的かと思いました。

高の原中央病院4bかんさいハートセンターでの大事な仲間でもある高の原中央病院の余吾淳子さんはエネルギー制限食に比べたローカーボ食の有用性という研究を発表されました。20名の患者さんで2倍の速さで無理なく減量できることを示されました。

これまでのローカーボ研究ではカロリーを一定にして糖質の割合を変えるという科学的検討ができたものはなかったため、灰本先生はじめ大方の方々の高い評価を頂きました。

この研究をさっそく論文にして世にだそうということになりました。余吾さんの努力に敬意!です。

名古屋大学大学院の笹壁多恵さんは2型糖尿病患者の自己血糖測定をとおした連携について発表されました。食生活、食べ物はじつに多種多様です。患者さんから教えて戴くことがたくさんあります。それを実例で教えて頂きました。

たとえばプチシュークリームは痩せる目的には意外に良いとか、カレーライスはかなり不利とかですね。こうした情報をこれから共有し、豊かな食生活を築くことができれば良いですね。

最後に灰本クリニックの渡邉志帆さんがロールプレイングによる糖質制限食の管理栄養士教育の実際を発表されました。

なかなか見ごたえのある内容で、これからこうした実地シュミレーション教育が役立つと感心しました。

そのあと総合討論で皆さんからさまざまなご質問やご意見がでて、熱気につつまれた研究会になりました。

私は心臓外科医ですが、この会の活動や研究会を通じてじつに多くのことを学ぶことができ感謝しています。その成果は患者さんたちに直接還元できています。

来年もまた立派な研究会にしたいものです。

皆様、ありがとう、お疲れ様でした。


米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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京都きづ川病院

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京都きづ川病院は1980年に開設された京都南部の地域医療を担う病院です。

当時私はまだ大学生で、この病院を創られた故・中野進先生を慕って何度かお邪魔したことを覚えています。

開設当時から開業医の先生方との病診連携をモットーにした病院運営で話題になっていました。

中野進先生は医師だけでなく 医師の世界の新版学者文化人としても有名で、医師の社会におけるあり方を徹底調査し理想像を探った医師の世界という本は今も含蓄深いものがあります。勉強熱心な先生はお忙しいのに同志社大学で社会学を教えておられたこともありました。

文化活動の一端として著名人を招いての学術講演会も京都きづ川病院の開設当初から頻繁に開催され、一味違ったものがありました。

まだ留学中の1995年ごろだったと思いますが、そのきず川病院で講演させて戴いたこともあります。まだ駆け出しのころで「講演」では僭越ですと申し上げたところ、「ランチセミナー」ならどうだいと言われてそれでもまだ恐縮ですとお答えしました。それじゃ「ティタイムセミナー」でどうかと言われてそれでお願いしますと厚かましくお引き受けしたのを覚えています。講演のあと建設的なご意見を多数いただき、大勢で記念写真を撮って頂き感動したのを覚えています。

京都きづ川病院京都きづ川病院はその後ご子息で脳外科医の中野博美先生が継承され、発展し現在に至っています。中野博美先生は順天堂大学の名物教授・石井先生のもとで腕を磨かれたエキスパートです。

私が京大病院で勤務していたころは京都の救急体制の充実のためにいろいろとご指導いただいたのも懐かしい想い出です。

私が京大を去って名古屋ハートセンターを立ち上げてからは遠方ゆえしばらくご無沙汰しておりましたが、

2013年10月に高の原中央病院かんさいハートセンターを立ち上げてからまたご厚誼を頂くようになりました。

2015年1月からかんさいハートセンターが心臓血管外科専門医制度の関係で京都府立医大の関連施設になってからさらに親しみが増し、先日もそのご挨拶に行って参りました。

中野博美先生は周辺部の病院と協力して発展することをさまざまな観点から考えておられ、これぞ地域医療、素晴らしいと思いました。

これから京都府南部と奈良県北部の地域医療できづ川病院のお手伝いができ、より多くの患者さんの救命ができればうれしいことです。とくに心筋梗塞がらみの心不全や心室中隔穿孔、あるいは大動脈瘤や大動脈解離などでもお役に立てると思います。もちろん傷跡のちいさい弁形成術や弁膜症手術では他でできない心臓手術が提供できるでしょう。

京大病院時代には小回りが利かず足腰の弱い国立大学病院の特徴からあまり貢献できませんでしたが、これからは24時間走り回れる病院の利点を活かした病々連携ができるものと楽しみにしております。

患者さんたちにおかれましては、こうした病院間の連携や協力で、より便利でより高度な医療が受けられることを知っていただき、病気になっても諦めることなく、ご相談頂けましたら幸いです。人間、「生きてなんぼのもの」と思います。そしてさらに楽しく生きることを目指して戴ければと思います。皆で地域医療を発展させたいものです。

 

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福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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第一回江東豊洲心血管カンファランスに行って参りました

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この会は新東京病院で活躍して来られた畏友・山口裕己先生が昨年、昭和大学江東豊洲病院に循環器センターを立ち上げられたのを機に開催されました。就任祝賀会もあわせておこなわれました。

山口先生は岡山大学の佐野俊二教授のもとで研修し、その後ニュージーランドにある有名なグリーンレーン病院でコンサルタントにまでなられ、腕をあげて帰国された仲間です。

祝賀会ということもあり、同先生がかつてお世話になられた恩師や友人の先生方も内外から参加され楽しい会になりました。

私はチーム山口の研究発表に対する指定発言という重責を頂いての参加でした。

昭和大学江東豊洲病院
カンファランスはまず研究発表から始まりました。

新東京病院のころから優れた手術をそれも多数こなしてこられたチームですので私も楽しみにしていました。

三尖弁閉鎖不全症で右室の拡張が高度なものや弁尖が不足する状態では三尖弁形成術はかなり難しいことがあります。そこでパッチをもちいて前尖を拡大しゆうゆうとしたかみ合わせで弁の逆流を止めるという手術を行って来られました。

私はつぎのようにコメントしました。これは三尖弁形成術の限界をさらに高める立派な方法であること、同時に弁膜症とはいえ右室拡張がその病態の本質であるため、右室機能を高めるための方法たとえば乳頭筋の位置移動なども併せ検討してくださいとお願いしました。なお個人的にはこうした拡大形成術と将来のTAVI、バルブインバルブを考慮した生体弁TVRを傷跡の目立たないMICSで行うことの二本立てが良いのではと考えています。


つぎに巨大左房縫縮術のあとの呼吸機能をCPXで検討された結果を示されました。

僧帽弁形成術や置換術、そしてメイズ手術と同時に行う手術で、良い経過ながら肺機能の向上というレベルには至っていないようでした。

私はこの努力は意義があり続けて下さいとコメントしました。さらに欧米の方法では出血リスクが高いため10年ほど前にJTCVSやEJCTSに発表した私たちの方法なら出血ゼロのためさらに安全にでき、除細動率もあがり、患者さんはお元気であることをお話しました。巨大左房の患者さんは5年もたてば大半が亡くなるというEBMがあり、この手術は極めて有意義で、さらに進められるようにお願いしました。


さらに大動脈弁輪縫縮術を応用した大動脈二尖弁形成術の経験を発表されました。

これも素晴らしい仕事で、VAジャンクション(心室と大動脈の接合部)の本格的な形成・縮小は理に適ったことですが、シェーファーズ先生らの簡便な方法とも比較して最適術式を探って下さいとお願いしました。これから大動脈弁形成術はさらに進化すると思います。

 

ランチョンセミナーは2つあり、まずオークランド市立病院のMilsom先生のグリーンレーン病院のお話がありました。

私も弟子がお世話になった素晴らしい病院で今からでも機会をみつけて訪問したく思いました。


もうひとつの話題はタイの畏友Taweesak先生が僧帽弁形成術が患者の人生を治すというタイトルでのご講演でした。

リウマチ性僧帽弁膜症への形成術ではすでに世界的権威のTaweesak先生ですが、通常の僧帽弁閉鎖不全症でも新しいコンセプトで弁形成をより進化させておられるのがわかりました。リウマチの弁膜症は現代の日本では少ないですが、それでもときどき患者さんが来られます。例数が多いタイの経験も加味してしっかりと形成したいものです。


それから山口先生らの僧帽弁形成術後の狭窄の報告がありました。

運動負荷エコーの進歩でこれまであまり見えなかった問題が見えるようになったのです。今後の僧帽弁形成術の展開に重要なテーマです。私たちはこれへの対応を始めており、やはり弁尖で不要なものは切除する、リングは大き目である程度やわらかいものを使う、などの工夫をしています。これは「respect rather than resect」行き過ぎへの警鐘と、かつてトロントで柔軟リングと硬性リングの差は運動負荷によって明らかになることをジャーナルで発表したことを踏まえてのことです。


機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する前尖や後尖へのパッチ拡大術を発表されました。この方法は弁逆流の制御には良いのですが、左室機能改善には直接役立たないため、乳頭筋吊り上げなどを検討して下さいと後でコメントしておきました。なるほどと思ったのは後尖へのパッチは前尖へのそれより長期成績が良いことで、後尖テザリングの制御が重要であることを裏付けるもので、この意味でも有用な研究と思いました。

 

ここから特別講演で、まずメイヨクリニックのシャフ先生が症状のない大動脈弁狭窄症の予後や治療についてお話されました。症状がなくても長期生存率は低いため、患者も医師も十分理解したフォローが必要とあらためて感じました。日本では循環器の病院でも症状がなければ放置して良いと思っている先生がまだおられ、これからの啓蒙活動が必要です。と同時に外科はさらなる治療成績の改善も重要です。

 

順天堂大学の天野篤教授は冠動脈バイパスの過去・現在・今後についてお話されました。すでに世界のトップレベルに達した感のある日本の冠動脈バイパス手術の原動力のような先生のお話はためになり、夢のある内容でした。

私の橈骨動脈グラフトの研究成果にも触れていただき、ありがとうございました。これから日本のバイパスの良さつまり動脈グラフトとオフポンプを守りつつ、MICSなどで新たな展開をしたいものです。

 

トリは岡山大学の佐野俊二教授のお話、夢の扉をひらく、でした。

佐野先生とのお付き合いは長いのですが、一貫して進めてこられた先天性心疾患の外科治療が社会活動、国際協力、国家プロジェクトの一環というレベルにまで上がり、夢のあるお話でした。

そういえば昔、ベトナム・ホーチミン市のチョーライ病院に心臓血管外科を私たちが立ち上げたことを想いだし、こうした活動を国を動かすレベルで大掛かりにすることの意義をあらためて感じました。

 

カンファランスは多数の参加者を得て盛会裏に終了しました。

その合間をぬって、昭和大学江東豊洲病院内を見学させて頂きました。ウォーターフロントの見事な景色と新しく高機能な病院、広々として見事な手術室やICUなど感心することばかりでした。我が高の原中央病院かんさいハートセンターもこうしたものを参考にして地域の中で患者さんに喜ばれるセンターにしたく思いました。

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そのあと会場をホテルへ移して山口教授就任祝賀会が開かれました。

大勢の先生方のご参加で楽しい会になりました。こうした病院全体が支援するハートセンターで山口先生とそのチームが大きな展開をされることを確信し、また応援したく思いました。

 

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【第五十七号】あけましておめでとうございます

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 いい心臓・いい人生 【第五十七号】あけましておめでとうございます
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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皆様、新年あけましておめでとうございます。

寒い元旦になりましたが風邪など召されておられないでしょうか。

昨年は、というより昨年も大勢の方々に支えられたありがたい一年でした。

世の中ではさまざまなことがありました。

ソチで開催された冬季オリンピックでは多くの感動とともに、オリンピックとは

どうあるべきかなどを考えさせられた一コマもありました。浅田真央さんの演技

と採点法の変遷などには疑問をもたざるを得ませんでした。識者も指摘していた

ように、真にすぐれたフィギュアスケーターを選ぶ基準になっているのだろうか

と。

しかし結果以上に内容、そのひとにとって納得できるものであればそれもひとつ

の立派な成績と言えるのではないかとも思いました。

広島の集中豪雨や御嶽山噴火などを含めた自然災害にも心が痛む部分がありまし

た。普段からもっと対策を立てておけばこのようにならなかったのではないかと

。火山噴火に至ってはそんなことは滅多に起こらないからと予算を削減されたこ

とがかつてあり、科学技術立国の根幹を揺るがすような政策がなされないように

、皆で学び監視しなければと思いました。例のスーパーコンピューターは世界一

でなければダメなんですか、世界二ではどうなんですか、という議論は将来の国

民の生活の糧を考えない、近視眼的なものと思います。その人たちに火山研究の

予算が大きく削られたとなると皆、勉強し目覚めなければと思ってしまいます。

STAP細胞の一件では、当初これからより多くの患者さんたちが恩恵を受けられる

と喜んだのも束の間、データのねつ造が発覚し、その後には日本が世界に誇る研

究者を失うという顛末となり残念この上もない結果になりました。

こうした本来意欲的な研究をもっと正しく育てられないのかと思いました。

医療においては結果が何より大切です。もちろん良い結果を出すために内容や経

過は重要ですが、ただ当たって砕けろというわけに行かないのが医療です。

昨年も本当によく頑張って下さった、普通の常識では生きることも難しかったの

ではと思われたのに、笑顔で元気に退院して下さった心臓手術の患者さんが何人

もおられました。外来で御礼を述べていただくたびにこちらこそありがとうござ

いましたと言ってしまいます。

同時に困難な状況から立ち上がりかなり良いところまで詰めたのに結局他病のた

めに救えなかった患者さんには何か他にできることはなかったかという反省と検

討を何度も繰り返し、答えがでるまで悶々と考え続けます。

それらを含めて患者さんの救命に対して懸命に努力できることを感謝しています

。医者が患者を助けるのは当然と思われる方も多いでしょうが、日本の仕組みは

どこかずれていて、理想のタイミングで理想の医療ができない大病院が多数ある

のです。

そこで良い医療を存分にできる民間病院の特長を活かして努力することの意義が

あるのです。

年末に一年間を振り返り、うれしさと口惜しさが混じった気持ちで、新しい一年

をまた頑張ろうと思います。ちょっと大げさに言えば決意を新たにしています。

皆様にはご自愛のうえ、楽しく前向きにお過ごし頂ければと存じます。

体調がどこかおかしいと感じることがあれば早めにご相談下さい。

それではこの新たな一年、よろしくお願い申し上げます。

敬具

平成27年1月1日

米田正始 拝

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ハートチームがガイドラインの中でより大切に

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ハートチームという言168769790葉が定着しつつあります。

これは循環器内科と心臓血管外科が協力して正しくそれぞれの方法を使い分けたり併用することで患者さんにとってベストの医療を行おうという趣旨で使われていることばです。

ハートチームという言葉はとくに冠動脈狭窄症の治療の中でのカテーテル治療PCIと冠動脈バイパス手術CABGの使い分けのところで使われています。

しかし2014年のAATS アメリカ胸部外科学会などでも問題になったように、まだこのハートチームを尊重・遵守しない先生方がとくに内科側に見られます。そうした実例やデータを発表しておられました。

どこの国でも、とくに日本では古いタイプの内科の先生の中に、患者は自分のもの、どの治療をしようが自分の自由、と仰る向きが今もおられると言われます。そうした考え方はむしろ若手の中には少ないのが救いですが、まだまだ啓蒙活動が必要なのでしょう。

2013年のESCヨーロッパ心臓病学会つまり内科系の権威ある学会ですが、ここで造られたガイドラインの一部を以下にお示しします。

2013ESCguideline heart team

図のフローチャートの原文は英語ですが、わかりにくいところは邦訳しました。

図のタイトル: 左主幹部病変のない安定狭心症でのカテーテル治療PCIとバイパス手術CABG。


ハートチームの重要性と役割を明示した、画期的なも
102972869のと評価されています。

これからの時代は 大昔のように心臓外科医が威張る時代でもありませんし、最近まであったインターベンションバブルの時代でもありません。

心臓外科医はもはや内科のご協力なしでは成り立たないのは自明ですし、カテーテルによるインターベンションも大手のメーカーが完全撤退するなど、もはや3-4年前までのバブルがはじけたことを示す事件が起こっています。

米国の大手メーカーは高度かつ科学的なマーケットリサーチを行い収益が上がらない領域からは手を引くのがうまいですので、これをもってバブルが終わったと説明された識者が複数おられます。

しかしこれから何をすべきかは簡単なことと思います。

要するに患者さんが得する方法を皆で毎日相談して決めていけば良いのです。 

人間素直になることが大切だと私の海外の友人は教えてくれました。159119567

かんさいハートセンターの私の外来にはまだ診断もついていない方から具体的に手術希望される方までさまざまな患者さんが来られます。

そのつど内科の先生方と相談し、患者さんを紹介する立場から、つまり患者さん目線でPCIとCABGを選ぶようにしています。

そうした正しい、自然で当然な仕事ができる仲間に感謝しています

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奈良医大付属病院

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正式名称は奈良県立医科大学付属病院である。

実家の近くにあり、父がむ NMU
かし外科で研修を受けさせていただいたご縁もあるためこどもの頃から何かとお世話になっている大学病院である。

実家の米田医院には過去50年の間に多数の熱心な先生方に応援や代診に来ていただき、今なお感謝しているものである。内科系、外科系、放射線系等の歴代教授の先生方にもご指導頂き、いまも感謝している。奈良県の医師会関係の先生にもこの大学の同門の方が多く、個人的にも若いころに勉強その他で可愛がって頂いた想い出がある。25年も昔、トロントに留学していたころに父と県医師会の先生方多数がトロントを訪問され、そこへ合流し楽しく過ごさせて頂いたことを昨日のことのように覚えている。

奈良医大は研究・教育のみならず、奈良県とそのエリアの医療を守る拠点であり、高の原中央病院も多数の科がその関連施設となっている。当院の指導層の多くがこの大学のご出身で、そのご縁もあって多くの優れた先生方を各分野にわたってお送りいただき、感謝している。

心臓血管外科は30年ほど前に北村惣一郎先生が初代教授として開設されたもので当時は第三外科と呼ばれていた。内胸動脈が冠動脈バイパス手術に役立つかどうか、体格の小さい日本人ではまだ不明な時代であり、これを臨床的、科学的に解明し今日の冠動脈外科の発展の礎を築かれたという大きな功績が光る。川崎病のこどもの冠動脈にこの内胸動脈のバイパスを行い世間を感嘆させたことも記憶にあたらしい。修正大血管転位の心室中隔欠損症を大動脈弁ごしに修復するというのも当時新鮮な感動をもって勉強させて頂いた。北村先生はその数年以上前に米国にて左室形成術でも業績を残され、現在でも盛んに研究されている分野の魁であった。実際私も関与させて戴いている重症心不全研究会の顧問にもなって頂いている。

こうしたさまざまな協力関係、人間関係のある奈良医大の付属病院であり、かんさいハートセンターも循環器内科の外来への応援をしていただいているし、臨床面でも虚血性僧帽弁閉鎖不全症の患者さんの肝臓癌の治療をやって頂いたり、心臓病+肝硬変+腎不全の三重苦の患者さんをご紹介いただいたり、肺の合併病変をもつ患者さんをその関連施設にて治療して頂いたり、大変お世話になっている。

私たちは民間の専門センターとしての特徴をわきまえ、大学に貢献できる道を考えつつ、進んでいきたく考えている。

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市立ひらかた病院で講演させて頂きました

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師走の慌ただしい時節ですが市立ひらかた病院Sin-nanseiにて講演の機会を頂きました。循環器内科部長の中島伯先生とは長年のお付き合いで市立ひらかた病院にも愛着があるのですが、最近新病棟がオープンしたということでいっそう楽しみにしていました。

玄関を入る と近代的でひろびろとした待合や廊下、ホスピタルアートを取り入れた構造に感心しました。中島先生に案内していただき、きれいでゆとりのある外来や検査室、居心地がよくくつろげる緩和病棟、広々としたホールなどを拝見しました。

さらに建物全体が免震構造でダンパーの上に乗っており、強い地震の際には50cmも移動することで地震エネルギーを吸収するという優れものでした。地震が来ても病院内にいれば安心、とは心憎い気配りです。

とくに講堂は単に平素の勉強会、講演会やイベントだけでなく、災害緊急時に多数の市民を仮収容できるよう平坦なフロアで造られていることに感心しました。これからの市民病院のあるべき姿を研究された成果と思います。

講演会では「心臓血管外科がお役に立つとき」というタイトルで代表的な心臓病の予防から治療までをお話いたしました。

狭心症でカテーテルによるPCI冠動脈バイパス手術の正しい使い分けや協力、それを円滑にしてくれるハートチーム

 

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MICSによる弁膜症手術後の
創です

弁膜症では早期の診断を症状や胸部X線、心電図からきっかけをつかむこと、手術ではなるべく弁形成を行い患者さんのQOLつまり生活の質を高めること、それをなるべくMICSつまり創の小さい痛みの少ない方法で行うことの意義をお話しました。

なかでもマルファン症候群の患者さんでの難しい僧帽弁形成術や大動脈基部再建いわゆるデービッド手術が安全に行えることをお示ししました。あとの懇親会でマルファン症候群の患者さんご家族との感動秘話で皆さんにお褒め頂きました。

近年増加傾向にある大動脈弁狭窄症の怖さと手術の意義、すっかり元気になることもお話し、最近多い病気のデパートのような患者さんにも役立つことを見て頂きました。

大動脈瘤も進歩が著しく、腹部大動脈瘤のかなりの部分はステントグラフトで切らずに治療でき、胸部でも弓部全置換術大動脈解離へのヘミアーチつまり近位弓部置換術が安全に行えることを解説しました。

最後にASOつまり閉塞性動脈硬化症に対する血管新生療法をご紹介しました。まもなく多くの患者さんたちの下肢を切断から救えるでしょう。

講演会のあと、10名ほどの仲間で懇親会を開いていただきました。皆熱いひとたちで楽しいひとときを過ごしました。このような立派なチームを育てられた中島先生はすごいとあらためて感嘆いたしました。

地域医療への新たな取り組みを教えて頂いた充実した楽しい機会になりました。中島先生、市立ひらかた病院の皆様、ありがとうございました。また遊びに参上させて下さい。

平成26年12月19日

米田正始 拝

 

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【第五十六号】おかげさまで1年が経ちました

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 いい心臓・いい人生 【第五十六号】おかげさまで1年が経ちました
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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拝啓

冬のおとずれを感じさせるこの頃です。

皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか。

11月16日の名古屋NHKでの講演ではありがとうございました。懐かしい名古

屋時代の患者さんも多数ご参加いただき、こころが熱くなりました。

皆様に御礼申し上げます。

さて前回もお知らせしましたが、かんさいハートセンター心臓血管外科がスター

トして1年が経過いたしました。

当初はパートナーである循環器内科の準備がととのわず、心臓外科だけの発進で

したが、今年の4月から太田剛弘部長のもとあらたな循内チームがスタートし、

活気あるセンターになりました。

一般のハートセンターが得意とする冠動脈だけでなく、優れた心エコーを活かし

弁膜症や心筋症・心不全でもお役に立てれば幸いです。

さらにこれまで大活躍してくれていたICUが正式認可され一段と熱が入る状態で

す。

救急受け入れ態勢が強化され、奈良県の循環器救急の一翼を担えるようになりま

した。

これもすべてご支援くださった皆様のおかげと感謝しております。

これから心臓外科、循環器内科ともさらに増員、質的向上、さらに手術室やカテ

ーテル室の充実と増加などを順次整備して参ります。

またステントグラフトやTAVIなどでも順次施設認可を獲得してさらにお役に立て

るハートセンターを造っていく所存です。

患者さん各位におかれましては困ったときにはいつでもご相談下さい。

医療関係者の皆様には心臓病はもとより、心臓病疑いの患者さんでもご心配があ

るときにはいつでもご連絡下さい。かかりつけの先生方には検査室代わりに活用

頂ければと思います。

予約の有無や来院される時間帯などにもよりますが、心臓関係はなるべくその日

のうちに結論がでるように努力しております。

ご予約時には高の原中央病院 0742-71-1030(代表)へお電話いただき、コーデ

ィネーター(植田(旧姓いさみもと)または岡本)をお呼びください。スケジュ

ール合わせをいたします。

これから厳しい季節になっていきます。

皆様方にはご自愛のほど、よろしくお願い申し上げます

敬具

平成26年11月23日

米田正始 拝

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           http://www.masashikomeda.com
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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かんさいハートセンター、開設から1年が経ちました

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皆様いかがお過ごしでしょうか  高の原中央病院3b

おかげ様で私たち高の原中央病院かんさいハートセンター心臓外科は開設から1周年を迎えました

この間に心臓手術130例あまりを含めた160例を行うことができました

いくつもの大学病院や大規模センターから来られた重症患者さ184701458んも多く、苦労の連続でしたがチームも育ちだいぶ安定して参りました
皆様のご支援とご指導に厚く御礼申し上げます

太田剛弘先生をリーダーとする循環器内科はまだ半年ですので開設途上です。日々診療態勢の充実に努力中です。カテーテル、エコーやCT、リハビリ、腎臓などを含めた全人医療ができるチームです。みなさまのご指導やご鞭撻をお願い申し上げます

ICUはこの9月から正式認可になりました。スタッ Ilm22_ba01054-sフも日々勉強し磨きをかけどのような患者さんにもお役に立てるよう努力しております。

これまで病院としての態勢が整わず、緊急患者さんも十分には受け入れられない状況でお恥ずかしい限りでしたがようやく受け容れ態勢ができました。
奈良県の救急ネットワークであるEマッチにもようやく対応できるようになりました

奈良市やその周辺の医療機関の皆様におかれましては心臓血管・循環器の処置が必要になるかもしれない不安定患者さんがおられましたらいつでもご連絡ください

188617211緊急のことですので、疑いの段階でのご紹介も歓迎いたします。
精査ののち循環器疾患ではないということになれば、状態に応じてお返しするか、しかるべき科へご紹介するなどいたします。

私たちは心臓血管の専門診療を行っておりますが、地域医療、救急医療はそれ以上に大切と考えております。
ぜひ先生方の外科患者さんのお役に立てればと存じます

奈良市あるいはその周辺部の患 Ilm09_ad07001-s者さん各位におかれましては、胸の痛みや息苦しさ、失神やふらつき、強い背中の痛みなどがあれば直ちにご連絡ください。なかでも普段から心臓が悪いと言われている方々は早めの行動がいのちを守ります。

わずかに早く治療ができたためにあとはスイスイと元気になられた患者さんや、タイミングを逃して体がぼろぼろになってから来られて治療のあとも苦労した方なども過去に見られます。

医療は患者さんと医療者が協力し、予防や早期診断、良いタイミングで治療ができたときに最高の結果を出すことができます。ぜひ平素からかかりつけ医の先生や私たち専門医とともに健康を守りましょう。

平成26年11月23日

米田正始 拝

 

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註:平成27年6月をもって米田正始は高の原中央病院を退職いたしました。開設時からいた心臓外科スタッフもすでに全員異動いたしました。

奈良の地にどんな心臓病にでも対処できる、ちからのあるハートセンターを立ち上げ、他で断られた患者さんを救命するなど一定の実績を上げることはできましたが、病院の事情によりあまり大きな手術やリスクの高い重症の治療ができなくなったためです。

現在は大阪府内の二つの病院(医誠会病院(外来・手術)、仁泉会病院(外来)で本来の断らない心臓外科医療ができるようになりました。

心臓病で何かお困りの際にはご相談ください。お役に立てれば幸いです。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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チャレンジャーズライブの予選選考会にて

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今年も恒例のチャレンジャーズライブ予選会が東京と大阪でありました。

この会は10年あまり前から、京都府立医大の夜久均先生をはじめとする心臓外科医仲間が集まって、若手を全国規模で鍛えよう育てようという趣旨で発足しました。

毎年多数の参加者があり、すでにこのチャレンジャーズライブ出身者が立派な施設長にまでなっているというケースもあります。

私は大阪での予選会に審査員として参加しました。

Isya01当日は夜久先生、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生、名古屋第二日赤の田嶋一喜先生、岸和田徳洲会病院の東上震一先生、心臓センター榊原病院の坂口太一先生らといっしょに楽しく指導させて頂きました。

卒後10年以内の心臓外科修練中の若手が午前中は審査員との懇談・指導下に冠動脈バイパス手術の練習を積み、午後は剥離と吻合コンテストで大阪地区代表2名が選ばれます。

今回から畏友 Ikonomidis J(トロント大学以来の親友)とこれまた旧友 Fann J(スタンフォード大学病院で同じ時期に学びました)が出した心臓外科トレーニングの論文での基準を取り入れて審査することになりました。といってもこれまでの和製基準が良くできていたため、内容的には大きな変化はありませんが。

以前とくらべて年々その技術レベルが上がっている感があり、参加者は年齢制限のため変化しますので日本の若手そのもののレベルが上がっていると思います。

多くのひとたちは上手に吻合していましたし、中にはスピードもなかなか立派なレベルに達しているひともありました。

前向きな立場から今後の改良点をいくつか挙げてみます。

1.冠動脈の剥離操作は縦方向に少し皮をはいでから横方向の剥離に入るように。でないと繰り返し操作がつづき時間がかかりすぎる。

2.冠動脈の横を裏側近くまで剥離するひとがあり、それは吻合時に冠動脈をコントロールしづらくなる

3.吻合口のサイズを適正に

4.針の角度が悪く、血管壁に垂直に針が刺さらない

5.最初グラフトを吻合部から離れたところに置きすぎて苦労している

6.吻合中、吻合部エッジが内側向かないように、糸が外にあるときに引っ張る

7.トウを早く回りすぎる。ひとつ間違うと吻合部狭窄になる。

8.トウをはじめ、展開が不十分。

9.手の震えのコントロール

10.安全にワンアクションで縫えるところをツーアクションにしている。時間がかかり成績も落ちる心配あり。

11.吻合の歩みにばらつきがあり、トウの部分がやや雑になっている

12.内膜が内腔に少々突出気味のケースがあった

13.実戦志向の技術だけでなく、ウェットラボ志向の技術を感じたケースがある

 

しかし総じて皆 177139202さんうまく、日々の練習努力のあとがうかがえる方も少なからずおられました。

若手医師の多くが楽な科を選ぶ今日、厳しくてもやりがいのある心臓血管外科を選択された諸君は、その志からすでに立派と思います。こうしたひとたちが大きく成長展開するよう、支援をするのが私たち指導者の責務であることをあらためて感じた一日でした。

皆さんこれからさらに成長して行ってください。今日は皆さんのエネルギーを頂きました。ありがとう。

 

平成26年11月2日

米田正始 拝

 

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