お便り65: ポートアクセス法による僧帽弁形成術で元気になられた患者さん

Pocket

僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術はポートアクセスなどのミックス法の出現でますます進化をとげています。

患者さんは30代前半の男性です。兵庫県の遠方からお越し下さいました。

魚心あれば水心という心境で私の方も思わず力が入りました。ilm23_ee01001-s

以前から僧帽弁閉鎖不全症をかかりつけの先生に言われていたそうですが、良い治療法の出現をまっていたそうです。

弁は前尖と交連部つまり弁のヒンジの部分が壊れている、世間的にいえばやや複雑な形成でしたが、私たちにはよくあるタイプですので、いつもどおりポートアクセス法で僧帽弁形成術を行いました。

ゴアテックスの糸を4本つけて人工腱索とし、さらに交連部を微調整し、リングで仕上げて逆流はきれいに消えました。

小さい創で痛みもすくなく、外から創はほとんど見えないという、長年望んでおられた治療法で良い結果がえられ、よろこんで頂けました。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

******** 患者さんからのお便り *********


メールにて失礼いたします。

米田正始先生、このたびは本当にありがとうございました。

8月5日に退院させて頂きました****です。

退院日が日曜日でしたので、米田先生へお礼の挨拶もできず、大変失礼いたしました。

名古屋ハートセンターにて先生の手術を受けることができ、本当に良かったです。

2年前に心臓の病気が見つかってからというもの、常に、手術になったらどうしよう、手術がうまくいかなければどうしようと、

気が休まる日は無かったです、他の病院で手術が必要だといわれてからも、自分が納得できておらず、

このまま手術を受けていいのかと、悩んだり迷ったり、精神衛生上も非常に良くない日々を送っておりました、

心臓の手術はそうそうあることではないので、多少場所が遠くても自分で納得できる病院、先生を探そうと思い色々と調べ始め、

そんな時インターネットで米田先生のブログを拝見し、

米田先生は他の病院で弁形成術を行ったが調子が悪くなった患者さんの

再形成手術等もされているという情報を見つけ、名古屋ハートセンターを訪れました。

先生の診察を受け、やはり手術が必要となりましたが、先生は患者が不安にならないよう、丁寧に納得いくまで説明してくださり、

また、手術まで何度も何度も名古屋まで足を運ぶのだろうなと思っていたのですが、

遠方からの患者ということで、手術に必要な検査をまとめてやってくださったり、患者の負担を減らすように心がけてくださり、手術の日まで、たいした不安も無くすごせました。

本当にありがとうございました、感謝しても仕切れません。

今は自宅にて療養とリハビリの最中です、早く健康な体になれるようがんばっていきます。

先生は多忙な毎日だとは思いますが、なにとぞお体大切になさって下さい。

それでは失礼いたします。

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: ポートアクセス法の、やや複雑な僧帽弁形成術

Pocket

ポートアクセス法による僧帽弁形成術はまだまだ一部のエキスパートによる心臓手術で、どこでも安全に受けられる手術にまでは成熟していないと言われています。

しかしこのポートアクセス法に力を入れている施設の一部では、より複雑な僧帽弁形成術も安全にできるようになりつつあります。

私たちもこれまでの豊富な経験から、これは十分形成ができると判断した場合、それが比較的短時間にまとまるというめどが立てばポートアクセスでできるだけ行うようにしています。

こうした日々の努力によって、より多くの患者さんたちにポートアクセスやミックス手術の恩恵が行きわたるものと考えています。

術前胸部X線さて患者さんは67歳女性です。

労作時の動悸と呼吸困難感を主訴として来院されました。

検診で心雑音と心拡張を指摘されました。

近くの病院で高度の僧帽弁閉鎖不全症と診断され来院されました。

来院時、心尖部に4度の収縮期雑音あり、腋かへの放散が見られました。僧帽弁閉鎖不全症の所見です。胸部X線でも心拡大がありました(写真右上)。

術前心エコー当院での心エコーにて 高度の僧帽弁閉鎖不全症が確認され、駆出率も 54%とやや低下傾向が認められました(写真左)。

写真左上は左室長軸像で後尖の逸脱と瘤化が見られます。

写真左下はそのドップラー像で前向きに変位した逆流が見られます。

写真右下の4室像でも前向きの強い弁逆流が確認されます。

 
血液検査で ProBNP 1730と著明に亢進し、やや強い心不全が疑われました。

術前MDCT冠動脈、ABI には問題なく、

単純CTにて腹部大動脈、腸骨動脈に石灰化ありました(写真右)。

すでに症状のある高度の僧帽弁閉鎖不全症ですから、ガイドライン上、僧帽弁形成術の クラスI 適応として手術予定となりました。

患者さんとご相談のうえ、ポートアクセス法による僧帽弁形成術に決定しました。

手術1 三角切除x2手術では後尖のP1とP2と呼ばれるところに瘤化と逸脱、逆流による変化がみられました(写真左)。

P1とP2のそれぞれに、瘤化した部位を三角切除しました。

右上にそのシェーマを示します。

これは患者さんのご家族に術後、ご説明したときのメモの絵です。

その三角切除したP1とP2をそれぞれ縫合再建しました。手術2 後尖再建

かなり弁のかみ合わせは回復しましたが、その三角切除したP1とP2がまだ逸脱するため、

ゴアテック スの人工腱索をもちいて、P1とP2を左室側へ少し牽引しました。

それからリングをもちいて僧帽弁輪形成術つまりMAPを施行しました。

最後に生食を左室内へ注入して逆流試験を行いました。

手術5逆流試験OK逆流はほぼ消失しました(写真左)。

写真の左側は生食を左室へ注入したときのもので、前尖と後尖がしっかりとかみ合い、「もれ」つまり逆流はほとんどありません。

写真の右側は前尖を吸引管で押して弁を開くと多量の水が噴出し、しっかりと圧が左室にかかっていたことを示します。つまり逆流試験 術後心エコー合格です。

術後経過は良好で術翌朝には集中治療室を退室し、一般病棟へもどられました。

術後の心エコーをしめします(写真右)。

僧帽弁の逆流つまり僧帽弁閉鎖不全症はほぼ解消していました。

左上の長軸ドップラー、真ん中の3室像のドップラー、右上の短軸ドップラーのいずれも弁逆流はほとんど認めません。

術後胸部X線と創部写真術後1週間の胸部X線と、退院時の創部の状態をしめします。

創はあまり目立ちません、というよりちょっと見ただけではわかりにくいほどです。

痛みも少なく、迅速な回復にさらに役に立っているようです。

術後10日で退院され、お元気に外来に定期健診に来られています。

やや遠方からお越し頂いたのですが、それだけのメリットが提供でき、うれしいことです。やはり患者さんによろこんで戴けてこその医療ですね。

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

弁膜症のトップページへもどる

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: 視野出しがちょっと難しいポートアクセスの僧帽弁形成術

Pocket

ポートアクセスによる僧帽弁形成術はまだ一般の病院ではできない、先進技術です。

視野が狭く、ピンポイントで視野を作る必要があり、ピンポイントできないときには通常の正中切開に切り替えることになり、創が増えて通常より悪い仕上がりになるため難しいのです。

そこには経験が必要です。それもポートアクセス法の経験と、僧帽弁形成術そのものの経験の両方が必要です。

僧帽弁形成術じたいが、冠動脈バイパス手術などに比べて全国的に手術数が少なく、すべての心臓外科医が習得することが難しいと言われる領域ですが、その中でさらに習得しづらいのがこのポートアクセスでの僧帽弁形成術なのです。

このポートアクセス手術は難易度が高いため、何らかの医学的問題や障壁があれば、専門施設でさえ通常の大きな正中皮膚切開で手術を行うことが少なくありません。

しかしごく一部の選ばれた患者さんだけが恩恵を受けるようなポートアクセスでは、医療として不十分と考えます。

安全を確保し、技術的な課題はしっかりと解決し、より多くの患者さんのお役に立てればと私たちは考えています。

次の手術事例は、ポートアクセス法が使いづらいと言われているタイプの患者さんでした。しかし工夫と努力で安全を確保しながら患者さんのご要望にお答えすることができました。

 

患者さんは33歳女性です。

労作時の呼吸困難感を主訴として来院されました。

術前エコー短軸もとの病院で高度の僧帽弁閉鎖不全症が診断されており、手術の相談に来られたわけです。

明らかな症状をともなう高度の僧帽弁閉鎖不全症のため、日本循環器学会ガイドラインでクラスIの適応つまり、手術が強く勧められる、またその根拠がある状態でした。

この患者さんの場合は、それに加えて近い将来、妊娠出産を希望されての心臓手術のご相談でした。つまり手術で人工弁を入れる弁置換手術になってしまうと、機械弁つまり金属製の弁ではワーファリンという奇形を起こす薬が必須となるため妊娠が危険なものとなり、生体弁つまりブタやウシの材料で作った人工弁では妊娠中に劣化が早いという問題があるのです。

僧帽弁形成術だけがこの患者さんの希望を満たす方法であったわけです。

若い女性ですから、創も見えにくく、痛みも少ないポートアクセスは当然有力な選択肢として考えられました。

 心電図では正常リズムですが、しばしば頻脈発作や動悸が起こり、僧帽弁閉鎖不全症のための左房や左室の負担のため心房細動になり始めている可能性が考えられました。術前胸部X線

術前心エコーでは、僧帽弁前尖のA3と言われる、後交連部に近い部位が逸脱し、左房側に落ち込んでそこがかみ合わず逆流が発生していました。写真上は術前の左室短軸ドップラーを示します。交連部という、弁のヒンジの部分での逆流のため通常の角度からは見落としやすいタイプです。強い逆流が確認されました。

このA3の逸脱を人工腱索その他の方法で治せば、逆流は止 まると判断し、僧帽弁形成術を予定しました。
術前CT解析
しかし、診察および胸部X線で扁平胸みられました。つまり胸の前後径が小さい、要するに胸が薄いわけです。

こうしたケースではポートアクセス法はエキスパートでも通常よりは視野が確保しづらく、手術もやりづらいのです。

検討の結果、視野を出す工夫を重ねることで、手術が成り立つ可能性が大という判断で手術を決定しました。

人工腱索設置手術では確かに普通のポートアクセスの方法では僧帽弁が見えづらい状態でした。

そこで前もって準備していた道具で骨を軽く吊り上げ、スペースを確保して、さらに僧帽弁そのものを見やすく引出し、

それからゴアテックス人工腱索をもちいて僧帽弁前尖を正常の位置にもどしました。

写真右は術中写真です。その左上はゴアテックス人工腱索を後乳頭筋に刺入しているところです。

下中と右上は僧帽弁前尖に糸をかけているところです。合計4本の人工腱索がつきました。これで前尖の逸脱部分は逸脱なく正しく支持されます。

逆流試験とメイズ写真左は術中写真の続きです。

冷凍凝固によるメイズ手術の最中のものです。

術前に動悸発作がよく出ていたため、メイズ手術は術後の心房細動の予防に有益です。

生食注入による逆流試験でも僧帽弁の逆流はほぼゼロであることが示されました。

術後経過は順調で術翌朝には集中治療室を退室し、一般病棟へ戻られました。

その後、偶然脳静脈の合併症が発見され、ただちに連携している脳外科の先生と協力し対応、後遺症なく解決しました。チーム医療の時代ですが、地域のさまざまな病院と協力してのチーム医療も大変役立つことがあらためてわかりました。

患者さんは元気になられ定期検診にときどきこられます。

これから健康な楽しい人生を送って頂ければ幸いです。

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

弁膜症のトップページにもどる

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: 標準的なポートアクセス法の僧帽弁形成術

Pocket

ポートアクセス法はまだまだ普及するには至っていませんが、一部のエキスパートのいる病院では安全な標準手術の位置を確保しつつあります。

私たちも十分な準備のもと、2010年からポートアクセスを開始し、現在は日本でも一番積極的な施設のひとつになっています。

ここまでこのポートアクセス法での死亡例などはありませんし、これによる大きな問題もありません。

より高い安全性と手術としての質の高さをもとめて、内外の専門施設と協力して日々改良を加えています。

 

術前胸部X線さてここでお示しする患者さんは61歳男性です。

5年前から僧帽弁閉鎖不全症を指摘されていましたが、

7か月まえに失神発作を起こされ、併せて不整脈を指摘されました。

心臓手術相談のため米田外来に来院されました。

前立腺がんを3か月まえに指摘され、ホルモン療法を受けておられました。

そこでもとの病院のがんの主治医の先生と相談し、ホルモン療法が一段落したところで心臓手術するというタイミングがベストという結論に達し、数か月後に手術予定となりました。

手術前の胸部X線(右上写真)では心臓とくに左房の軽い拡張がありました。

術前エコーとドップラー心エコーでは僧帽弁前尖の逸脱と強い逆流(僧帽弁閉鎖不全症)が確認されました(左写真)。

写真の左上の左室長軸像では前尖の逸脱(左房側に落ち込むこと)がみられます。

写真中下の長軸ドップラーでは後ろ向きの逆流ジェットが見られ前尖逸脱に合致します。また吸い込み血流からも逆流の強さがわかります。

写真右上の4室像ドップラーでは僧帽弁の逆流ジェットが後ろ側へ飛び、左房後壁で跳ね返って前方までもどってきている、強い逆流所見が見られます。

左房、左室も拡張していました。

症状がある、高度の僧帽弁閉鎖不全症のため、日本循環器学会のガイドラインでクラスI適応つまり手術を強くお勧めできる根拠がある状態でした。

術中写真冠動脈CTなど、他検査でとくに問題なく、CTでも肋骨や心臓の位置がポートアクセス法の手術に支障ないことを確認しました。

手術ではまず第4肋間を小さく開けて、右肺をていねいに横へよけて、心臓に達しました(写真右)。

手術写真では小さい穴から僧帽弁を形成する様子がうかがえます。

 

心膜を、横隔神経から距離をおいて切開し、上行大動脈や上大静脈まで操作ができる視野を確保しました。

大腿動脈と静脈、右内頚静脈にエコーのガイドで管を入れて体外循環を開始しました。

僧帽弁は前尖がバサッと逸脱つまり左房側へ落ち込む状態でした。

弁尖が壊れていればそれ自体にも形成を加えるのですが、それは不要な所見でした。

そこでゴアテックス人工腱索を4本立ててA2(前尖中央部)を本来の位置にまでもどし修復する僧帽弁形成術を施行しました。

手術写真の右下ではゴアテックス人工腱索が取り付けられつつあるところが見えます。

術中逆流テストできれいな弁のかみ合わせと逆流ゼロを確認し、左房を閉じて手術を終えました。

術後3日目の創部写真なお手術中に、肋間神経ブロックを行い、術後の創の痛みが少なくなるようにしました。

手術翌朝には集中治療室を退室され、一般病棟へ戻られました。

術後3日目の写真を左に示します。

創も小さく、痛みも小さいことがうかがえます。

安全のために術後しばらくドレーンと呼ばれる管(くだ)を残しておくのですが、それが抜けたあとはバンドエイドが貼ってあるのが見えます。

術後エコーとドップラー術後1週間の心エコー(写真右)では逆流や弁逸脱はきれいに取れ、心臓もすでにかなり小さくなって順調な経過です。

術後エコー写真で左上の左室長軸像では前尖と後尖が逸脱なくきれいにかみあっていることがわかります。

写真中下の長軸ドップラーでは僧帽弁の逆流がほぼゼロになっていることを示します。

写真右上の4室像ドップラーでも僧帽弁の逆流はほとんどありません。

このポートアクセス法では骨を切らすにすみ、かつ痛みの神経(肋間神経)をブロックするため、ほとんどの患者さんで術後の痛みも軽く、短期間ですみますし、仕事復帰や社会復帰も早いです。

クルマの運転や、荷物の持ち上げ、棚まで乗せるなどの作業も、通常の胸骨正中切開の患者さんより数段早いです。

もちろん創が小さいため美容上の効果も優れています。

女性の患者さんはもとより、男性の患者さんたちにも喜ばれています。

この患者さんの場合は、がん治療が一段落し、がんが実質消えた状態にもちこんでからの計画手術でした。

その場合でも、早く元気な生活に戻れるとがんの再発予防のために役立つ可能性があります。体力がすぐに戻ればがん免疫も早くもどりやすいからです。

患者さんの他の病気や仕事・生活、心の創まで考えた医療としてポートアクセス法は役立つと思います。

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

弁膜症のトップページへもどる

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

三笠宮さまが受けられた僧帽弁形成術とは?

Pocket

◾️報道によりますと、、

.

三笠宮さま(三笠宮崇仁親王)がこの7月11日に僧帽弁形成術という心臓手術を受けられ、96歳というご高齢にもかかわらず経過良好でがんばっておられます。

2012年7月13日の毎日新聞は次のように伝えています。

.

*********************

三笠宮さま<三笠宮さま>食事始める 呼吸数などの数値も安定

毎日新聞 7月13日(金)15時1分配信
<三笠宮さま>食事始める 呼吸数などの数値も安定

心臓の手術を11日に受け聖路加国際病院(東京都中央区)に入院中の三笠宮さま(96)が13日朝、食事を始めた。血圧、脈拍、呼吸数などの数値も安定しているという。

.

同病院関係者によると、専門医のチームが食事を再開する時期を検討。容体が安定していることから13日に開始した。三笠宮さまは手術後は感染症などの恐れがあるため集中治療室で手当てを受けているが、12日正午過ぎには人工呼吸器を外して会話ができるようになり、妃殿下の百合子さま(89)と言葉を交わした。【真鍋光之】

*********************

.


宮さまは天皇陛下の伯父にあたられ、国民からも親しまれている方です。

宮さまは腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症のため、心不全がお薬や点滴などではどうしても治せず、危険な状態になっておられました。

96歳というご年齢は確かにかなりのご高齢ですが、日頃お元気に歩いたり普通の生活が送れる方ならば、経験豊富なチームなら心臓手術はある程度は可能です。

.

◾️私たちの経験でも

.

私たちの経験でも90歳代のご高齢患者さんの心臓手術は何度か経験がありますが、ポイントを押さえてできるだけコンパクトに手術をまとめあげ、万事において慎重にかつてきぱきと、そして手術のあと積極的に普通の生活に戻す努力がひつようです。こうしたキメ細かい配慮によって90歳代の患者さんでもお元気に社会復帰できるのです。

もししばらく寝たきりになったら、そのまま寝たきり状態が固定したり、痴呆症になったりと、困った事態になりやすいため油断は禁物です。

聖路加病院の川副浩平先生はじめスタッフの先生方に敬意を表するものです。

.

以前に高円宮さまが心臓病のためスポーツの最中に突然死されたとき、私は2つの意味で残念と思いました。ひとつは高円宮さまの、罹患されたと伝えられる病気(HOCM)が心臓手術で治せるものであったこと、いまひとつは宮さまが医学学会によく出席され応援して下さったということへの感謝の気持ちからです。

この意味でご高齢とはいえ、勇断をされた三笠宮さまやご家族、また医療チームの皆様は立派と思います。

.

僧帽弁閉鎖不全症は簡単な病気ではありません。しかし僧帽弁後尖の腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症なら、心臓外科とくに僧帽弁形成術のエキスパートなら、そう困難なく、治せるものです。

宮さまの場合、一般的には弁形成がもっともやりやすい、また良く効くタイプです。もちろん皮膚と言わず、骨と言わず、心臓や大動脈をはじめ、すべての組織が弱く、相応の対策が必要だったものと拝察いたします。

すべてがぴたりと決まった一件と言えるかも知れません。

.

◾️患者さんたちに福音

.

天皇陛下冠動脈バイパス手術のときにもお書きしたことですが、宮様のようなご高名な方が僧帽弁形成術を受け、ご高齢にもかかわらず見事にそれを乗り切り、お元気になられれば、全国の僧帽弁閉鎖不全症はじめ心臓病の患者さんたちに大きな福音となることでしょう。

実際、僧帽弁形成術をうけなければならないのに、どうしても決心がつかず、心不全や肺うっ血のため肺炎になっていのちを落としたり、心房細動という不整脈を合併して心臓の中で血栓ができ、これが脳に流れて脳梗塞になったり、などのケースが今なお見られます。

.

また内科の先生の中には心不全で入院するほど悪くなるまで手術を勧めないという方もあります。こうした不幸を避けるため、日本循環器学会が多数の専門家を集めてガイドラインを作成し、適切なタイミングで、手術がもっとも患者さんに益するようにしていますが、このガイドラインさえ否定するような医師が今なおおられます。そうした方々は、患者さんが手術を受けないために亡くなられても、「病気だから仕方ないよ」「手術を拒否したのは患者さんだから」と言われるのです。これは医療者として問題です。医師・医療者は患者さんが必要な手術を受ける決心ができるようにご説明・指導する責任があるからです。

.

◾️患者さんにおかれましては

.

患者さんにおかれましては、本やネットなどで知識を得て、複数の専門家とくに内科と外科の両方から意見を聴き、ご自身やご家族でじっくりと検討することが勧められます。

三笠宮さまの心臓手術の一件は世の中に勇気を与えてくれたと思います。

宮さまのご全快をこころから祈るものです。

.

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

弁膜症のトップページへもどる

 .

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り63: ポートアクセスの複雑僧帽弁形成術を受けられた患者さん

Pocket

僧帽弁形成術は年々進化をとげ、かつては弁形成できなかった複雑な僧帽弁閉鎖不全症(つまり逆流)が弁形成できるようになり、近年はそれがポートアクセスによって小さい創で、骨を切ることもなく、安全に手術できるようになりました。

Hana_14ちなみにポートアクセスとはミックスという小さい創で行う心臓手術の代表的なもので図のように小さい創ごしに心臓にアプローチして治す方法です。

ポートアクセス法では狭い視野で確実な手術をすべく、日々さまざまな検討を行い、国内はもとより海外の仲間とも情報交換し、技を磨き続けることに支えられています。

こうした心臓手術は熟練した心臓外科医とそのチームによってこそ行えるもので、医師はもちろん看護師、ME、検査技師はじめハートチームが一丸となって精進しています。

以下のお手紙はそのポートアクセスによる複雑弁形成を受けられた患者さんからの礼状です。

少々遠方の岐阜県からお越し下さいました。

内容はほめ過ぎで、お恥ずかしいのですが、これほど喜んで頂けたことをうれしく思っています。

バーロー症候群という、僧帽弁形成術がやりにくい病気をお持ちでしたが、逆流も取れ順調に経過し、お元気にしておられます。

ポートアクセスの利点で、痛みも少なくすぐ活発な生活を回復されました。

創はさすがに小さく、女性のため乳腺に隠れて見えません。

だれでも心臓手術を受けるというのは勇気がいるものです。そこで私たちを信じて手術を決断して下さった勇気にあらためて敬意を表するものです。

 

*********** 患者さんからのお便り **************


庭のあじさいが、いっそう色濃さを増し、くちなしの白い花も、甘く香る今日この頃でございます。

安田嘉子さんお手紙その節、米田先生には、大変お世話になり、本当に、ありがとうございました。

手術から、もう三ヶ月が過ぎ、順調に回復し、改めて、厚くお礼申し上げます。

先生のような名医に、手術して頂けるなんて、最初は、とても無理なことと思っておりましたのに、こうして、お世話になれて、私は幸せ者でございます。

入院中、同室の方々も遠方から先生を、たよっていらしている方々ばかりで、改めて、先生のすばらしさ、偉大さを、実感致したことでございます。

特に、****さんとは、親しくお話しさせて頂き、先生の手術の腕ばかりでなく、人間性のすばらしさをお聞きし、その様な先生にお世話になれたことを、家族一同、大変よろこんだことでございます。

その後、主人の入院・手術等が続き、大変遅くなり、失礼してしまいましたが、本日、おはずかしいような物ですが、お礼の気持ちの一部をお送りさせて頂きましたので、ご笑納下さいませ。

本当に、本当にありがとうございました。

今後も、先生の益々のご活躍を。お祈り申し上げております。

かしこ

六月二十七日

****

 

患者さんからのお便りのページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り62: ミックスの僧帽弁形成術と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん

Pocket

患者さんは医師に向かってまだまだ意見を言えないものです。

そのため不本意な病院の不本意な状況で心臓手術を受けてから後悔しておられるケースも少なくありません。

Ilm10_df01001-s下記の患者さんは勇気を出してご自分が納得する病院でご自分の希望する医師に相談して健康を勝ち取られました。

もともと入院していた病院では僧帽弁形成術そのものができないかも知れない、しかもバーロー症候群に対する複雑弁形成で、心房細動のためメイズ手術もひつようですから余計に難しい。ましてミックスつまり小さい創できれいに治す手術などありえない、しかも冠動脈バイパス手術というおまけまでついた大きな手術など、という状態でした。

しかし一本のメールですぐ緊密な相談がはじまり、まもなく一回の外来で精密検査ののち方針決定しました。

大きな悩み・複雑な手術もまずは相談からです。あたって砕けろの精神で、一生にたぶん1度かそこらしかない大きな手術には十分聴き調べ考えて、ご自身で最終決定することが勧められます。

そこで遠慮は要りません。何でも聴いて真剣に考えることが一番です。

そのお手伝いをしっかりやるのが私たちの仕事です。

 

******** 患者さんからのお便り ********

前略

米田先生はじめ、名古屋ハートセンター心臓血管外科の先生方には大変お世話になりました。おけがさまで手術後は順調に回復しています。

 

お手紙封筒

頂いたお手紙はワープロ印刷でしたので、手書きの封筒宛名をお示しします

事の起こりは昨年の10月、不整脈で脳貧血状態になったことからでした。

 

救急車で***病院に運ばれ検査を受けた折、心臓の弁に異常があり、血液が逆流していると診断されました。

 

昔から不整脈があり、10年前にカテーテル治療を受けた経験がありましたが、その後の検査や健康診断でも弁や他の血管に異常があるとは診断されたことがなく、まさに寝耳に水でした。

その後3ヵ月間経過観察があり今年の1月に診察を受けると、弁の閉鎖不全が特殊な状態で、手術をする場合弁形成ではなく弁置換になるかもと診断されました。

あわててインターネットで色々調べた結果、米田先生のホームページにたどり着き、名古屋ハートセンターに連絡をとりました。

紹介状など何もない状態の全く飛び込みの電話だったのですが、すぐにコーディネーターの方が対応して下さり、米田先生の診察日に予約が取れました。

 

診察をしていただくと、すぐに血液検査、心エコー、心電図、レントゲン、CTの検査をしてもらい、その日のうちに結果と状態を説明していただきました。

先生の診断は「あなたの弁の状態はバーロー症候群と呼ばれる病気で弁形成は難しいですが大丈夫、できますよ。」と力強くおっしゃっていただけました。

その場で私と同じような症例の患者さんの術前と術後の心エコーを見せていただき、術式を丁寧に説明していただきました。

先生の言葉と、数々の症例や手術の回数などからここで先生にお任せしようと思い、手術日まで決めて自宅に帰りました。

 

3月2日に入院し、手術前のカテーテル検査で冠動脈が1本完全に詰まっていることが判明し、弁形成の手術に冠動脈バイパス手術が追加されました。

ちょうど天皇陛下のバイパス手術のニュースが流れていた時期でもあり、自分もそんな大変な手術をするのと少し不安になりましたが、逆に早く見つかって良かったと思いなおし、この際心臓の悪いところはすべて治してもらおうと腹を決め、手術の説明を聞きました。

入院後は手術日の5日まで毎日、米田先生はじめ北村先生、深谷先生、小山先生が回診以外にも病室に来て下さって色々話していただけたので患者にとっては心強く感じました。

病気の内容が心臓なので、命を預ける患者にとって、医師との信頼関係はとても大切だと思います。

その点先生方はこちらが納得いくまで、色々詳しく説明していただけたので安心してお任せすることができました。

 

3月5日の手術日は弁形成とバイパス手術に不整脈のメイズ手術もお願いしたので合計9時間も手術室にいました。

待っている家族には大変心配をかけましたが、術後すぐに米田先生が手術の状況と結果を詳しく説明していただけたのでみんな安心していました。

 

術後は順調で傷が痛むくらいで、心臓以外は全く元気だったので、10日後の15日に退院するまで看護師の方々に色々わがままを言って困らせてしまい申し訳ありませんでした。

退院後は心房細動で2度ほど点滴を打ってもらいに行きましたが、今は薬をもらって不整脈もだいぶ落ち着いてきました。

 

まだまだ傷の痛みはありますが3月末から職場に復帰し、普通に仕事をしています。

あまりに前と変わらないので、心臓の手術をしたことをまわりの人たちが忘れてしまっているようで、何の配慮もないのがちょっと残念です。

それだけ医学の進歩がすごいのと、手術が素晴らしかったのだと思っています。

 

正直なところ、手術前は、たまに不整脈があったり、動悸がするくらいで特別苦しい症状があるわけでは無かったので、****病院では症状が出て苦しくなるまで薬で抑える方法も提案されましたが、思い切って名古屋ハートセンターに電話して相談して良かったと思います。

米田先生はじめ、北村先生、深谷先生、小山先生、看護師のみなさんには本当にお世話になりました。

ありがとうございました。

 

最後になりましたが、先生方、看護師のみなさん、これからも体に気をつけて多くの患者さんのために頑張ってください。

名古屋ハートセンターがあるというだけで我々患者はとても心強く感じます。

これからも何かあったら、いや、無くても顔を出そうかと思います。

その時はよろしくお願いします。

草々

****

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

患者さんからのお便りのトップ ページにもどる

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り54: ポートアクセス法で僧帽弁形成術を受けた若者患者さん

Pocket

心臓病は今も昔もおおごとです。少なくとも患者さん目線からは。

弁膜症の場合も同様で心臓手術をすれば治りますといっても、会社や学校からしばらくは離れる必要がありますし、創が残るとあとあとつらいのではないかとか、そもそも手術の危険性はどうなのか、普通の生活に戻れるのか、長期的に大丈夫なのかなど、患者さんの悩みや不安は尽きません。

Ilm10_df01003-sそうした不安や期待に応えるのが弁形成手術でありミックス手術(ポートアクセス法などの創が小さい手術)なのです。

僧帽弁形成術を例にとれば、いったんきれいに決まれば、長期間の安定性が良く、ワーファリンなどの強いお薬を飲ますにすむことが多く、自然な普通の健康生活が送りやすくなります。

ポートアクセス法に代表されるミックス手術では、おなじ僧帽弁形成術でも、骨を切らずにすむため、より痛みも少なく、より早い社会復帰ができ、創も目立たないため心の傷もつきにくいというメリットがあります。

しかし僧帽弁形成術は一般的には必ずしも簡単な手術ではありませんし、ましてミックス手術でのそれとなると一段と難易度が上がります。

私たちはその安全で確実な手術に取り組んで来ました。それが患者さんのお役に立てることを大きな喜びと感じています。

以下はこの手術を受けられた20代若者のお母様からの感謝状です。

そのあとに続編のお手紙もあります。

お役に立てた喜びと、責任の重さに身が引き締まり、また光栄と思います。

 

****************************

 

米田 先生

****の母、*****です。
 

北村先生方々からの退院の許可が下りましたので、3月24日(土)に、退院いたしました。

患者さんのお母様からのメールです本来なら、米田先生に直接、お礼を申し上げてから退院させて頂こうと思っていましたが、

韓国へのご出張を伺っていましたので、メールで失礼させて頂きます。
 

入院中は、米田先生だけでなく、北村先生、深谷先生、小山先生にも、また、看護士の方々にも、優しく、丁寧に、心温まる対応をしていただき、本当に、ありがとうご
ざいました。

 

大学の検診で「心雑音あり」と言われ、その後「心臓弁膜症」と診断されてから、名
古屋ハートセンターで最初の先生の診察をして頂く迄の、とてもつらい、暗い毎日か
ら比べると、

親子ともに、「笑顔」で退院を迎える事ができ、あの日々がうそのような、平穏な明るい日を送り始めています。

MICSなので、今後、「ライブ」で、何も気にせずに、胸の大きく開いた服を着ること
もできるし、弁形成なので、今後、「ワーファリン」の煩わしい(?)注意もしなくてす
むので、心から感謝しています。

本当にありがとうございました。

今後も検診等でお世話になりますので、また、よろしくお願い申し上げます。

 

*******************************

Ilm2007_01_0800-s上記の心温まるメールを戴きましたので、お礼かたがたこのメールをHPに掲載させて下さいとお願いしました。するとそれなら他の迷える患者さんたちのためにと、掲載承諾だけでなく加筆して下さいました。

それがつぎのメールです。

実によく勉強し、考えられたことが判ります。これからの患者さんの進むべき道を示して頂いたような気がいたします。

またこれほど過分なお言葉と信頼をいただき、手術させて頂き、良い結果を出せたことをあらためて光栄に思います。

 ******************************

 

息子が循環器内科の先生に「弁膜症」と診断された時、息子には、全く自覚症状が有
りませんでした。

それどころか、1日、目一杯、学校、スポーツ、バイト、遊びと青春
を謳歌していました。

(また、家族も心臓に問題を抱えているとは、どうしても、信じ
られませんでした。)

内科の先生は、手術の可能性は5分5分と言われましたが、手術部分が「心臓」だけに、

親子ともに、絶対に、したく有りませんでした。

その手術判断は、外科の先生にしていただくようでした。

もし、手術しないといけないなら、途中で先生を変えるのも、色々と大変なので、

初から、お願いする先生の所に息子を連れて行きたいと思いました。

大きな総合病院では途中で、先生が変わる時もあるそうです。

よって、色々と調べてみました。わかった事は、

※「弁膜症」は逆流の度合いで
・経過のみ定期的にチェックする。
・内科で薬等で悪化しないようにする。
・外科で根本から、又は今より良い状態に手術する。
 

※ 手術のタイミングの判断は内科と外科の先生で分かれる事がある。
 

※ 手術の判断の医学的なガイドラインがある。

※ 手術の種類として自分の弁を修復する弁形成と、弁自体を取り替える弁置換手術がある。
※ 術後を考えると弁形成の方が良い。

※ 弁置換には機械弁と生体弁が有り、機械弁は生涯ワーファリンという薬がいる。

※ 弁形成のできる先生は、まだ日本にも少なく、その上、先生の手術の「うで」に大
きく術後が左右される。

※ 手術方法として骨を切らないMICSがあるが、できる先生はさらに限られる。しかし
術後の見た目もよく、社会復帰も早くできる。

※ 弁形成として手術をしても開胸後の状態で弁置換にかわる場合がある。

これらの事より外科の先生を捜す条件を出してみました。

(1) 弁形成をして下さる先生

(2) MICSをして下さる先生

(3) 医学的根拠に基ずいて、手術の有無を判断してくださる先生

(4) できればGoodやbetterではなくBestの先生

(5) 手術中、弁形成→弁置換の可能性が出てきた時に、医学的な切り替え判断ぎりぎ
り迄弁形成にこだわってくださる先生

(6) 手術が保険でできる事

(7) 自宅近くの病院

これらの条件を考えて捜していた時に、開業医の先生から、名古屋に良い先生がいらっしゃって、紹介状を書いた方から「感謝された」事と、

総合病院より、心臓専門の病院に行った方が検査やアフターケアーも含め、時間的な事等、色々と良い場合が多いと伺いました。

その名古屋の先生が米田先生で、弁形成、MICSもされ、手術のガイドラインを作られ
た先生方のお一人でした。

米田先生は「神の手」「スーパードクター」「世界的権威」
の形容詞がついておられる先生で、先生のHPの手術例から(5)の条件も頑張って下さっているのがわかります。

私たちが、探し当てたBESTの先生でした。

MICSも弁形成も保険適用です。

 

名古屋は関西からはちょっと遠いですが、診察時間や、診察と色々な検査が一度に済
むように配慮していただいたので、実際は「距離は遠いが、先生、病院と患者の距離
は近い病院」でした。

米田先生はどんな質問にも、やさしく、くわしく、丁寧に答えて下さいました。

先生が、かなり多くの患者さんから、色々質問された事がわかるお答えでした。

先生のお話は、本当にわかりやすく、いつの間にか、手術に対する不安はなくなりま
した。

名古屋ハートセンターに行く迄、「手術はしない」と言ってた息子が、先生の
最初の診察で、その場で「手術をしていただく」と決断し、一度もぶれることもあり
ませんでした。

入院中は、他の先生方にも優しく接していただきましたし、また、看護士さん同士の
連携の良さには驚かされました。

退院後にわかった事は、私たちの知らない間に、名古屋ハートセンターに行く迄にか
かわった開業医の先生、地元の循環器内科の先生に、米田先生が、何度となく電話、
FAX等を入れて下さっていた事です。

心から感謝しています。

本当に、名古屋ハートセンターに行って良かったと思っていますし、
米田先生には、息子の「明るい未来」を頂いたと確信しています。

色々ありがとうございました。

そして、今後もよろしくお願いします。

患者さんからのお便りのページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

ポートアクセスによる僧帽弁形成術【2020年最新版】

Pocket

最終更新日2020年2月27日

.

ポートアクセスによる僧帽弁形成術は

患者さんに優しい心臓手術として好評をいただいていますが、

ミックス手術(MICS)のなかでどういう位置づけにあるのでしょうか。

 

MedianSternotomy◆従来の胸骨正中切IMG_0168b開による僧帽弁形成術

.

もっとも心臓全体が見やすく安心感はあります。

 

しかしこと僧帽弁そのものはまずまず程度の視野しかなく、

それは前方から見下ろす角度となるからです。

体外循環では上行大動脈から送血するため安全性も高いです。

長い歴史と多くのノウハウの蓄積がある、

標準的なアプローチ法と言えましょう。

 .

◆胸骨Hemisternotomy正中部分切開では:

.

かつてアメリカのクリーブランドクリニック(Cosgrove先生ら)などで多数行われた方法です。

創の長さが従来の胸骨正中切開より半分以下となり、

胸骨も半分あまりしか切らないため、

術後の安定度も良く、低侵襲という印象はあります。

 .

ただし視野を確保するために、両心房上方アプローチにすることが多く、

この場合、洞房結節動脈を切断するため、

長期的には洞結節不全となりペースメーカーが必要となるケースも少なくありません。

そのため真の低侵襲といえるかどうか疑問が残り、

私たちは僧帽弁手術には現在使用していません。

 .

◆正中皮MiniSkinI膚部分切開では:

.IMG_0187b2

我が恩師・トロント大学のDavid先生が好んで使用しておられる方法で、

胸骨は慎重に通常どおり切開しますが、

皮膚切開を通常の半分以下に抑えます。

そのメリットは主に美容上のそれに限られますが、

必要に応じて、いつでも通常のフル切開に切り替えられるという利点はあります。

そのため重症例や複雑手術例には有効な方法です。

 

◆ポートアクセス法による僧帽弁形成術、その1:

.

右開胸それも皮膚切開が長さ6㎝程度のちいさいものとなり、

胸骨をまったく切らないため、術後の治りも早く、IMG_0163MVPb

痛みも軽くかつ短期間ですみます。PostAccess1

僧帽弁もほぼ真正面から見えるため、

うまく術野を調整できるチームなら質的にもメリットが生じます。

ただし小さい皮膚切開の場合、大腿動脈から送血する必要があり、

術前の大動脈の正確な把握が必要です。

逆にそれによってこれまで無事故で実績を積んでいます。

ポートアクセスによる僧帽弁形成術の標準的な手術事例をしめします。

ちょっと視野出しが難しいポートアクセスの僧帽弁形成術の事例はこちらです。

ポートアクセス法で行うやや複雑な僧帽弁形成術の事例はこちらへどうぞ。

.

PostAccess2◆ポートアクセスその2:

.

その1と同様の方法ですが、

大動脈や大腿動脈に動脈硬化などの所見があるときには

送血管を術野ごしに上行大動脈に入れることもあります。

大動脈遮断かん子も術野から入れることがあります。

そうした場合は皮膚切開がやや大きくなりがちで、

ミックス手術としての良さが多少とも割引になることもあります。

.

PostAccess3◆ポートアクセスその3:

.

その1をさらに進化させた内容です。

皮膚切開は5cm以下とし、

内視鏡(胸腔鏡)を入れて、それを見ながら手術を進めます。

内視鏡の位置や使い方がより重要性をもちます。

肉眼よりも解像力が落ちる内視鏡を、

どのように使いこなすかが大切です。

 .

◆ポートアクセスその4:

.

さらにそれを進化させ、ダビンチロボットをもちいて、

内視鏡を見ながら手術を進めます。

皮膚切開はさらに少し小さくなる可能性はありますが、

ロボットのアームなどを入れる穴を皮膚にあらたに数個も開ける、傷跡の面積がかえって大きくなるという問題点もあります。

よりすぐれたロボットや部品の開発が待たれます。
Ilm14_aa02046-s

 .

◾️まとめ

.

このように僧帽弁形成術におけるポートアクセス

ミックス手術の中でユニークな位置づけにあります。

こうした特徴を十分見極めてベストの選択を行うことが患者さんの安全や利点につながることでしょう。

.

171910892わたしたちはこうしたミックス手術の歴史を踏まえて、

安全性を重視し、早い社会復帰を確保し、かつある程度以上複雑な僧帽弁形成術も比較的迅速にこなし、

周囲の創の数をうんと減らし美しい仕上がりを得て、その範囲内でできるだけ患者さんの経済的負担を軽くし、

という諸条件を満たす方法を研究推進しています。

現時点でそれにもっとも合致すると考えているのはLSH法によるポートアクセス手術です。保険診療内での治療のため追加の自己負担はありません。もちろん今後のテクノロジーの進歩によって、さらに改良を続けていくつもりです。

.

メモ: ポートアクセス法では肋間 C0300081神経のエリアを切るため、かえって痛みが強いのではないかと心配される方が医師の中にもおられます。

私たちは肋間神経ブロックを手術中に行うため、術後当分の間は創の部位での感覚がなくなるか鈍感になるため、患者さんの痛みは大きく減るのです。

 

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

.

 

参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  とくにポートアクセス手術とは
   
  その位置づけ
  
  前向きに安全な場合
  
  美しいLSH法とは
  
  かかる費用は?
  
  ハートポートとは

  危険なの
  
  その術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 心臓手術:ポートアクセス法による弁形成術
  

  
僧帽弁

  ミックスによる弁形成

  同、弁置換

  同、メイズ手術

患者さんやご家族からのお便り

お便り54: ポートアクセス法で弁形成術を受けた若者患者さん

お便り59: 被災地支援へ!同法の弁形成を受けられた患者さん

お便り63: ポートアクセスの複雑僧帽弁形成術を受けられた患者さん

お便り65: 同法による弁形成で元気になられた患者さん

お便り68: 同、弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

お便り74: 同、弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

 

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

Pocket

セカンドオピニオンは患者さんの権利です。これを嫌がる医師には何らかの問題がある恐れさえあるのです
現代の医療は情報開示や患者さんの人権尊重が当然のことと受け容れられています。

それでも医師の中には患者さんが他病院でセカンドオピニオンをもらいたいとか

他病院へ移動したいと希望を出すと

怒ったり不愉快な態度をとったりしてなかば妨害しそうになるというケースがまだ散見されます。

それはその医師がご自分のやっている医療を他人に見られたくない、

他人に見せられない内容だからと言われてもしかたありません。

 

Ilm23_hf03006-s
以下の患者さんは

僧帽弁閉鎖不全症三尖弁閉鎖不全症心房細動それも脳梗塞既往に対する手術をもとめて長野県から来院されました。

やはり経験豊かなエキスパートが手術すべき状況で、

弁形成をちょっとかじっただけの外科医がやるべき状態ではありませんでした。

ご相談の結果、ご希望をいただき私どもで手術治療させて頂きました。

 

僧帽弁形成術三尖弁形成術メイズ手術

いつもどおり慣れた手順で、

正中ミックス手術(MICS手術)という創が小さくなる方法で手術させていただき、

お元気に退院されました。

僧帽弁閉鎖不全症の直接原因として、弁の複数個所が壊れていたため、

それぞれ修復しきれいに作動するようになりました。

 

以下はその患者さんのご家族からのお便りです。

これからは患者さんが勉強して医師を選ぶ、そういう時代です。

このことは僧帽弁形成術大動脈弁形成術などの、

経験を要する心臓手術の場合、とくに大切です。

医師はそのご期待に沿うべく、全力を尽くす、これがこれからの医療かと思います。

 

****************************

米田正始先生様

PtLetter46米田先生・・・この度は母の命を救って下さいまして本当にありがとうございました。何とお礼を申し上げましたらよろしいのでしょうか・・・本当に本当にありがとうございました。

**の病院で手術をする・・・という話になってから、「本当にここで手術をうけても大丈夫なのだろうか・・・?」とずっと不安な気持ちで毎日を過ごしていました。

カテーテルの検査をして、その結果を聞く時に、担当の先生が、「最初に言っておくけど、道路を歩いていても運悪く車にひかれて亡くなる人っているよね・・・それと一緒で、手術をしても運が悪ければ亡くなるって事があるっていう事を分かっておいてね。」と言われました。そして外科の担当の先生の診察の時には、「手術をして、脳卒中を起こしてしまう事があるので、そうなった時の家族でのサポート体制をよく話し合っておいて下さい。」とも言われました。

そんなにリスクの高い心臓手術なら、しない方がいいのではないか・・・でもこのまま心臓病を放置したら、母はどんどん苦しくなっていくし、どうすればいいのだろう・・・と、毎日一人で悩んでいました。

私には6才上の兄がいるのですが、兄は脳卒中が起きるのを心配してか、母の心臓手術にはもともと大反対でした。母に手術をするようすすめた私に、「母にもしもの事があったら全ての責任をとれ!!」とまで私に言いました。

ある日、隣のお家の奥さんと話す機会がありまして、お互いの両親の話になりました。そして、母の心臓の手術を**病院でうけるのがものすごく心配だ・・・という事を話しましたら、「インターネットで“日本の名医”って入れて検索してみて!!絶対に日本のどこかにお母さんの心臓を治して下さる先生がいるはずだから・・・」と言われました。

八方塞りで、もうどうしていいか分からなかった私に隣の奥さんが、米田先生と出逢えるきっかけをつくってくれたのです。 私はすぐに家へかけこみ、パソコンを開きました。そして「日本の名医」で検索をしてみました。その中で、「心臓血管外科情報WEB」(註、現在の名称は心臓外科手術情報WEBです)というサイトに目がとまりました。読み始めますと、それは米田先生が心臓病について、とても詳しく説明して下さっているページでした。

病院で簡単に説明されるだけで、私自身が母の心臓の病気について、ほとんどよく理解していなかった事が分かりました。それから毎晩、米田先生のページを読んで、母の心臓の病気について学びました。

そして、母の病気は米田先生だったら絶対に治して頂ける!!と強く確信頂しまして、名古屋ハートセンターにお電話させて頂きました。すぐに予約を入れて頂きまして、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

9月12日、初めて米田先生に診察をして頂いて、長野に帰る電車の中で母は、「よかった・・・米田先生に診て頂けて本当によかった・・・よかった・・・」と何回も安心した様子で話していました。母が通院していた歯科医院の先生にも「名古屋ハートセンターで手術をして頂く事になった」と話したところ、先生が「それはよかったですね、最高の先生の元で手術をするのが一番ですよ!!」と言われたと話していました。

兄達も、米田先生の手術の説明の後で、「すごくいい先生だね、米田先生ならおばあちゃん絶対大丈夫だね!!」と、その時初めて手術に賛成してくれました。
そして、手術のあとに、「あんなに素晴らしい先生を、この広い世界から見つけてくれてありがとう・・・」と兄からメールが届きました。
米田先生・・・本当に本当にありがとうございました。

母は、手術から目覚めた後私に、「本当によかった・・・米田先生のおかげで本当によかった・・・これで山へまた山菜とりに出かけられるね・・・!!」と嬉しそうに話してくれました。

米田先生に救って頂いた母の命を大切に、これから末長く親孝行をしたいと思います。
本当にありがとうございました。

*****の娘
****

Heart_dRR

お問い合わせはこちらまでどうぞ

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。