心臓手術を他病院で受けることは?―現代は患者さんが決めます【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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◾️よく戴くご質問

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心臓手術を他病院で受けることはできるのでしょうか
というご質問を頂くことはよくあります。多くの場合は

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心臓の手術は一生に一度あるかどうかのおおごとです。納得できる病院や医師を選ぶのは患者さんの権利です1.現在かかっている病院の循環器内科には満足しているが、

そこでの心臓血管外科があまり実績や例数がない

心臓手術で有名な先生もいない、

常勤の外科医がほとんどいない

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2.そこでの心臓血管外科も全般的には悪くはないが、

自分が受ける予定の手術の経験や実績が少ない

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3.その病院の医師や看護師らの対応や態度、あるいは説明が納得できない。
不親切であるなど。

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などが挙げられます。
いずれの場合も、現在の病院の心臓外科で手術を受けたくないが、

他病院で手術を受けると現在の循環器内科や外科の担当先生との人間関係にひびが入ることを恐れるわけです。ご自分でも調べ勉強されるのを勧めます。ネットの使い方はこどもさんやお孫さんに聞かれるのも一法です

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◾️昔と今の違いは

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昔は患者さんがあまり病院・医療情報を持っていなかったため、良いオペを求めて他院へ出向くこと自体が珍しかったのですが、

ネットやメディア情報が豊かな現代は患者さんがもつ情報も格段に充実しました。

活気bn1-24dそうするとよりよい心臓手術をもとめて患者さんが他院へ行くことは現代は権利の一つとして認められる方向にあります。

実際患者さんのお気持ちを尊重する内科医が大学病院も含めてずいぶん増えました。

古風な先生の中には学閥にこだわって自分の関係の病院での手術しか認めないような方もまだあるようですが、

こうした考えは医局がマンパワーを失うにつれ、急速に衰退しています。

心臓手術は他院で受けたいという患者さんは、

まず内科の担当先生に丁セカンドオピニオンをもらうため受け持ち医に依頼状、診療情報提供書を書いてもらうと良いでしょう寧に正直に考えと気持ちを伝えるのが良いでしょう。

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◾️担当医に言いづらいときは

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どうしても言いづらいときはセカンドオピニオンの依頼状を書いてもらうのも一つの方法かも知れません。

セカンドオピニオンは別の病院で意見を聞くという行為ですから、少しやわらいだ雰囲気で頼めるのです。

あるいは希望の心臓外科医に率直に相談するのも選択肢の一つです。

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外科の観点からは、

そうした患者さんを、心臓手術の後で、もとの循環器内科の先生に気持ち良く受け容れてもらえるよう、配慮するのが当然と心得ています。

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◾️一つお願いが

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患者さんやご家族の中には、ギリギリまで我慢して、もう体がどうにもならなくなってから相談して来られるケースが今も少なくありません。

例えば拡張型心筋症で心不全が酷くなり、ICU(集中治療室)へ入ってからメールなどを送ってこられる事があります。ここまで悪くなると転院も大変ですし、手術を乗り越える全身の体力がすでに失われていることも多く、私たちもお役に立てません。

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一つの目安として、まだ歩けるうちにご相談をお願いしています。

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◆参考ページ

心臓手術とはどういうもの?

そのこれからの方向

心臓外科の名医とは

さあ心臓手術と言われたら?!

安全に必要な症例数は?

病院の立派さと心臓外科の立派さは別?

対象となる病気は?

医師の選び方

私のお勧めは?

術後の社会復帰について 

美容について

必要な検査

術前のオリエンテーション

米田正始が考案したオペは

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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難病の心臓手術について―難病だからダメというわけではありません

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◾️難病への心臓手術

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難病の患者さんへの心臓血管手術はどのくらいできるのでしょうか?難病イコール治せない病気とは限りません。医学は日々進歩しています

医学が発展進化した現代でも難病はまだまだあり、多数の患者さんが苦しんでおられます。

医学医療の各分野でさまざまな取り組みがあり、私たちも専門家の観点から微力ながら努力して来ました。

心臓血管外科に関連した難病も少なからずあります。

厚生労働省の臨床調査研究分野対象130疾患の中でもいろいろな疾患に治療経験があります。

その一部を挙げます。

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◾️サルコイドーシス。。。

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この病気にやられるとサルコイド心として拡張型心筋症僧帽弁閉鎖不全症をおこします。
複雑な形態を示すことが多いですが、左室形成術僧帽弁形成術である程度以上、治せます。

心臓手術のあとの丁寧なフォローつまりアフターケアも大切です。→→もっと見る

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◾️Budd-Chiari症候群(バッドキアリー症候群)。。。

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下大静脈から心臓(右房) への血流が流れるようにすることで治せます。
ただし心臓手術までに肝臓が肝硬変となり機能しなくなっているとリスクが高くなります。場合によってはカテーテル治療もあわせて方針を立てるという柔軟な姿勢で臨んでいます。

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◾️ベーチェット病。。。

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ベーテェット病そのものは心臓手術では治せませんが、僧帽弁閉鎖不全症大動脈瘤を発症すればそれは手術で治せます。

組織が弱いため、相応の対策や工夫を行います。

内科の先生と協力したアフターケアも大切です。

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◾️全身性エリテマトーデス (SLE) 。。。

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この病気そのものを心臓手術で治すことはできませんが、二次的に起こる弁膜症などを人工弁などで治すことは可能です。

手術手技の工夫も大切ですが、その後のきちんとしたアフターケアも大切です。これには膠原病内科や内科の先生方と協力して長期の安全を図るようにしています。

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◾️高安病(大動脈炎症候群)。。。

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弁膜症大動脈瘤あるいは狭心症を発症すれば心臓手心臓や血管がやられる難病では心臓血管の定期健診を受けましょう術の適応となります。

組織が病気で壊れるため、縫いつけた人工弁や人工血管あるいはバイパスグラフトが不安定にならないうような工夫を行います。
大動脈弁が壊れればデービッド手術ベントール手術が役に立ちます
術後のステロイドなどのお薬による治療も術前同様、大切で、病気が進まないように、内科とくに膠原病内科の先生方とチームをつくって長期体制をつくっています。→→もっと見る

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◾️バージャー病。。。

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この病気は痛みが大変強いため、患者さんと向き合って治療に当たるものにとってはつらい残酷な業病でした。
bFGFによる血管新生・再生医療を開発し、これによってかなり治る病気になりました。(現在、中断しており準備中です)→→もっと見る

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◾️肥大型心筋症 HCM、HOCM、IHSS。。。

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肥大が左心室の出口を狭めるタイプ(HOCMまたはIHSS)では心臓手術は良く効きます。
経験がものを言う術式です。私たちはトロントのウィリアムズ先生直伝の方法で安定した成績を持っています。この手術で実績のある病院は少ないためご相談ください。→→もっと見る

左室の壁全体が分厚くなるHCMの中で、心尖部肥大型という、左室心尖部(先端部分)が筋肉で埋まるタイプも、心臓手術で治せるようになりました。この手術の実績がある病院はわずかですのでお問い合わせ下さい。→→もっと見る

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◾️拡張型心筋症DCM。。。

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難病の代表格の一つと言われています。あまり悪くなると人工心臓や心移植が必要となることがあるため、できるだけ先手を打って心臓を守る、できれば予防するという姿勢で臨んでいます。しかしいったん病気が進んで、左室がつよく拡張すれば心臓手術はむしろ効果的で成績も安定しています。
病気で壊れた左室部位によってバチスタ手術セーブ手術オーバーラップ手術ドール手術などを使い分けます。2012年から開始した心尖部凍結型の左室形成術は患者さんの体への負担が少なく、成績のさらなる改善が得られつつあります。→もっと見る

私たちのHGFをもちいた再生医療でも動物実験段階ではすでに治療効果を出しており、今後の実用化が期待されています。

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◾️拘束型心筋症。。。

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お薬も外科手術も容易ではない病気です。
左室形成術には適しませんが、弁膜症冠動脈病変が合併すればそれを治すことで比較的安全に左室を改善することはできます。

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◾️原発性肺高血圧症。。。

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現時点ではお薬などの内科治療が中心ですが、再生医療で動物では安全にかなりの改善が得られており、今後実用化を目指したく考えています。

難病をうまく克服し、あるいはコントロールし、元気に暮らせるようにしましょう

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◾️難病への対策まとめ

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難病でもそれに付随する病気は治せることも多々ありますし、完全治癒は難しくても、現状を守ることはできることもあります。

難病という言葉自体が良くない言葉と思います。治らないような印象を与えるからです。

難病と言われた患者さんにおかれましては、決して絶望されず、まず現実をしっかりと把握し、

専門家に相談し、病気と向き合い、時には病気と闘い、時には病気と仲良く共存し、

という粘り強い柔軟戦略が良い結果を生みやすいと思います。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心臓手術前にカテーテル検査は必要ですか?―エコーが凌駕する項目も多い?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月4日

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◾️心臓手術に心カテーテル検査は必要?

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心臓血管の手術の前に心カテーテル検査(右図)は必要ですか?と、よく聞かれます心カテーテル検査は有用ですが、心臓手術の前後には不要なことも多くなりました 

お答は:ケースバイケースですが、病気によっては不必要な場合も多いです。

その理由は次の通りです。

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◾️冠動脈疾患の場合

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狭心症・冠動脈疾患バイパス手術(左図)を受けられる患者さんでは、

冠動脈をすみずみまで正確に把握しておくことが治療上きわめて重要かつ有用です。

なので心カテーテル検査の中の冠動脈造影にて十分な情報が得られますので、術前にこの検査を行うわけです。

 

オフポンプバイパス手術の出来上がり図この場合の心カテーテルは「診断カテーテル」と呼び、

細いくだが使えるため、手の動脈から入れる場合が多く、その場合は検査直後から歩くことができ、苦痛も少なくてすみます。

私たちの施設では熟練した循環器内科医がカテーテルを行いますので、安全性も高く比較的快適といえましょう。MDCTで楽に冠動脈が見られるようになりました。患者さんに大変喜ばれています

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◾️弁膜症や心筋症などでは?

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弁膜症心筋症あるいは胸部大動脈疾患の患者さんの場合は異なります。

冠動脈に病気 がないかどうか未然にチェックしておくだけであれば、

現在は MDCT (右図)という、高性能CT検査で、苦痛少なく直径1mm弱の血管まできれいに調べることができますので、術前の心カテーテル検査は不要になります。

 

もしMDCT検査で冠動脈に病気が見つかれば、安全のためにバイパス手術などを術中に併用することがあり、カテーテルにて冠動脈造影を行うことが多いです。

病気があり、それを治す分だけより元気になるわけですし、

患者さんもこうした場合の心カテーテル検査には納得・満足されることが多いです。

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◾️お若い患者さんの場合は?

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心カテーテルには意外なメリットがありますまた若い患者さんなどで、放射線被爆量を少しでも減らすために、患者さんと相談の上、前向きな意味で心カテーテル検査をおこなうことがあります。

 

熟練した循環器内科医の先生方がされればMDCTより少ない被爆量で、しかも短時間で検査は完了しますし、上記の細いくだを腕から入れれば検査後も楽です。

 きちんと調べて良い治療を!

心機能や心不全の状態は、現在の高精度の心エコーと、MDCTの左室造影、そして必要に応じてMRI検査などの画像診断技術によって細部までわかります。

弁の逆流も、造影剤を使わない、より自然な状態で、苦痛なく、必要なら時間を追って繰り返し検査も安全にできますので、こうした画像診断を活用しています。

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◾️心不全がらみでは?

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SANYO DIGITAL CAMERA最近増えた心不全やそれによる弁逆流では、心エコー等によりそのメカニズムの詳細に迫る情報が得られることが多く、この意味からは心カテーテル検査をすでに凌駕しているとも言えましょう。

とくに心エコーは機動力にも優れ、エコロジーの視点でも優れた方法ですので、

手術室から入院中、外来、さらに遠方から来られた患者さんではその地域でも使えるため重宝しています。

欧米や日本のトップ学会が作成しているガイドラインも、心エコーのデータを基本にして造られているほどです。

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しかし術前に強い心不全肺高血圧症、あるいは右心系疾患がある患者さんの場合は、安全のため右心カテーテル検査を行うことがあります。こうした患者さんでは心エコーではわからないことがカテーテルでわかることが多いです。

これは静脈から入れるため、検査後の止血も短時間で済み、患者さんも比較的楽です。

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◾️心臓手術後の心カテーテルは?

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心臓手術のあとはカテーテル検査不要のことが多いです術後は、通常は心カテーテル検査は不要と考えています。例外として冠動脈バイパス術後にバイパスや細かい枝の状態を確認するために検査することはときおりあります。

その他、稀な病気などを中心に何かとくに確認しようとか、念のためにポイントを絞って調べるなどのケースはまれにありますが、

すべて患者さんの納得を頂いてから行っています。

 

ということで、冠動脈疾患以外の多くの場合、術前には心カテーテル検査は不要と考えています。

ただ内科の先生方がケースバイケースで患者さんのために有用と判断され、心カテーテル検査を前もってやって下さった場合は、

その情報も積極的に活用し、努力の無駄がないように配慮しています。

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◾️総じて、、

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私たちの基本姿勢として、どれが良いとかどれが劣るという偏狭な議論ではなく、

それぞれの検査法の特長を活かし、

こだわりなくケースバイケースでその患者さんの治療に役立つ検査は行い、

やらなくても良い検査はいざという時のために温存して使わない、

というスタンスで臨んでいます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
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