右室二腔症に対するミックス手術

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右室二腔症はこどもの間に手術することが多いのですが、中には成人期に入って重症化し、手術を受けるかたも少なくありません。139763113

それらの方々でも20代ー40代が結構多くおられます。女性はもちろん、男性でもなるべく小さな創で、できれば早い仕事復帰・社会復帰を望まれます。当然のことですが。

そこで弁膜症でのミックス手術(小切開手術)の経験を活かし、安全優先の範囲内で、この右室二腔症にもミックス手術を行っています。(患者さんのお便り参照)(心臓手術・事例:右室二腔症へのミックス手術)

その患者さんの心臓の位置関係や胸骨の長さと形にもよりますが、無理なく可能であれば胸骨下部部分切開で皮膚もそれに応じた小さい創それも首からかなり下の低いところを切るようにしています。

Lower Hemisternotomy4心臓があまり低くないときは胸骨は通常どおり完全に正中切開する必要がありますが、その場合でも皮膚は小さく、世間一般の半分程度に切るように、工夫を重ねています。

胸骨下部部分切開でのメリットは、胸骨の安定性が良いため、術後早い時期から痛みが軽くなり痛み止めがあまりいらないことです。これまでの経験では術後3日目以後はあまり痛み止めを使わなかったという方が多いです。胸骨の安定が良いということは、治りも早く、痛みが少ないこととあいまって、仕事復帰は通常よりかなり早いです。

なお右胸を小さく切開するポートアクセス法はこの右室二腔症の手術には使えません。心臓のやや左側にアプローチする必要のため視野が合わないからです。

Isn127-sともあれ皮膚小切開のメリットはなんといっても、術後の創が小さくてきれいなことです。骨は通常どおり切りますから、術後の仕事復帰は通常どおりです。骨が完全に治りきるまでには2-3か月かかりますから、その間、肉体労働や上半身をねじるタイプの仕事やスポーツはがまんして戴いています。

可能なら胸骨下部部分切開をもちいますが、それが心臓の中を治す、一番大切なところで視野が悪いと予測されるときには胸骨は通常 の全切開(ただし皮膚は小さくきれいな切開)に切り替えるわけです。

171910892このようにして、ほとんどすべての患者さんにミックス手術の恩恵が行きわたるようにしています。こころの創も小さくなりますと喜んで頂くことがよくあります(患者さんの声(心臓手術体験記)お便り67をご参照ください)。

特定の、ごく一部の患者さんにだけ益するようなミックスであってはいけない、と考えるからです。

 

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  かかる費用は?
  
  危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  心臓手術と美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
  

患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん

お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん

お便り61: 同、デービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん

お便り62: 同、僧帽弁形成術と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

お便り67: ミックスで右室二腔症の手術を受けられた患者さん

お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)を同法で受けた患者さん

お便り71: 同手術で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん

お便り72: 二弁置換とメイズ手術を同法で受けた患者さん

お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動を同法手術で克服

お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん

 

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り68 ポートアクセス法の僧帽弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

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僧帽弁形成術は年々進化を続けています。

私たちも内外の仲間と常に切磋琢磨しながら、患者さんのお礼のことばを糧として、日々反省と勉強を続けています。おそらくこの仕事を続けるかぎり、その熱い毎日は止むことなく続くでしょう。

バーロー症候群はかつては弁形成がなかなか難しいilm23_df01001-sと言われました。現在でも慣れないチームには難問です。

私たちもかつてはバーロー症候群で形成があと一歩のところで仕上がらず、涙を呑んで弁置換したことがありました。もう20年近く前のことですが、あの悔しさは今も忘れることができません。

そうした経験をもとに、いつしかバーロー症候群といえども、とくに問題なく普通に形成できるようになりました。

現在はこれをポートアクセス法という、ミックス手術のなかでも一番創の小さい、難しい視野の手術で普通にこなせるまでになりました。

そうすることで、より多くの患者さんが、より少ない痛みや苦しみで、より短期間に仕事復帰し、しかも心の傷がより小さくなって明るく人生の再出発ができるようになったことを、大変うれしく思っています。

以下はそうしたバーロー症候群の僧帽弁閉鎖不全症に対してポートアクセス法での複雑な僧帽弁形成術を受け、元気に退院された患者さんからのお便りです。

お役に立てて、こんなにうれしいことはありません。

 

*******患者さんからのお便り(心臓手術の体験記)******

 

米田正始先生

謹啓 9月になりましたが、まだ暑い日が続いています。

先生はじめ名古屋ハートセンターの皆様にはご清祥のことと存じます。

8月18日に退院し、長野県に戻りました。

手術に際しましては大変お世話になりました。

皆様優しい方ばかりで良い環境で入院生活を送ることができました。感謝申し上げます。

 

今振り返りますと、ここ2年ほど風邪がなかなか治らないような感じで調子の悪い時が何回かありました。

6月1日から36.9度~37.1度くらいの微熱が続き、たまに頭が痛い。

重いものを持ったり、5分も歩くと疲れてしまう。

自分の判断では、肝炎かもしれないと思いました。

かかりつけ医のところで血液尿検査を行いましたが、問題はない。

1ヶ月続いたところで総合病院に紹介していただき、7月6日(金)に診ていただきました。

内科の先生が聴診器を胸にあてて雑音を発見、心エコー検査して、すぐに循環器内科へ回されました。

「弁に逆流がある」「僧帽弁閉鎖不全症」「手術しないと治りません」「すぐに入院してください」私は、体の状態は理解できましたが、仕事のこともありすぐ入院といわれ焦りました。

「仕事の段取りを整えなければいけないので一度職場へ行かなければなりません」

「それじゃ、今日もう一度来てください。必ず来てください」 ‥‥ 16時再び参りました。

「月曜日入院してください」経食道エコーとカテーテル検査で2泊入院ということでした。

すぐ入院ではなかったのか。一度帰宅したときにインターネットで調べて職場には、本日入院、手術後3ヶ月療養と告げてきました。

 

時間をいただきましたので、土日インターネットで調べました。

闘病体験記がいくつもあり、写真を掲載しているものもありました。

スーパードクターを紹介するものもあり、低侵襲手術についても載っていました。

ポートアクセスのMICS手術は経験豊富な外科医が熟練したチームでおこなう。

どこの病院でもできるわけではない。

複数の病院がわかりました。

米田先生の「心臓血管外科WEB」「遠方の患者さんの場合は ‥‥ 自宅と病院の往復回数をできるだけ減らすよう、必要な検査等は集中的に行い ‥‥ 」とても姿勢が良い。患者思いの先生だと思いました。

「心臓血管外科WEB」に心カテーテル検査と経食道エコーは必要ないと書かれています。

私は検査を受けた方がよいのかメールで相談いたしました。

30分で返事が来ました。うける必要はないということでした。

米田先生の迅速な対応にビックリしました。

翌日、両方断っては申し訳ないと思い、経食道エコーだけは受けました。

担当の先生と話して、米田先生に手術をお願いしたいと考えていますと伝えました。

「じゃあ、紹介状書くから」と検査を受けないことを許してくれました。

帰宅後、名古屋ハートセンターへ電話し、米田先生の診察を予約しました。

担当の看護師さんに伝えてくださってあり、米田先生ってきめ細かいなあと感心しました。

夕方、手術日はいつか、職場復帰はいつ頃かメールでたずねました。

20分で返事が来てまたまたビックリしました。

 

7月18日名古屋ハートセンターで検査と米田先生の診察です。

手術日は8月7日と決まりました。

MICS手術でいける。

療養期間は8月いっぱい。9月から職場復帰。

CTも撮りました。

8月3日入院しました。

米田先生には、8月6日の手術が夜までかかり遅い時間にもかかわらず、私と家族に翌日の手術について1時間説明してくださいました。

私自身は、52歳でもう人生に悔いはないといつも悟ったような気持ちでいました。

加えて米田先生を信頼していましたので、手術に関して心配事はありませんでした。

「心臓血管外科WEB」で学習しているので、理解するというより確認するという感じです。

16日間入院し、僧帽弁形成術で治していただきました。

オペ室スタッフの皆様、北村先生、深谷先生、木村先生にもお世話になりました。

看護師さん、食事担当の皆様どうもありがとうございました。

清掃は行き届いていました。

担当の皆様ありがとうございました。

これで安心して残りの職業生活を続けられます。

1ヶ月後にはまた名古屋へ参ります。お世話になります。

 

 20日には元の総合病院へ行ってきました。

担当の先生は、胸を見て、「ほう、右胸を切ったんだ。珍しい手術だね。内視鏡見ながらやるのかね。珍しいね。」とおっしゃるので、「見ていないのでわかりませんが、たぶんそうです」と答えました。

 米田先生、お忙しいスケジュールと思います。無理をなさいませぬよう患者の一人としてお願い申し上げます。

また、名古屋ハートセンターがますます発展されますようお祈り申し上げます。      

 

敬白 

 平成24年9月1日
                                                   ****

 

*註:米田正始は現在、医誠会病院仁泉会病院で仕事しています

 

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元・京都大学医学部教授
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お便り67: ミックスで右室二腔症の手術を受けられた患者さん

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右室二腔症はこどものころに手術することが多い病気ですが、中には大人になってから徐々に病気が進行し、手術が必要になることもあります。

右室の中に筋肉が張り出して隔壁のようなものをつくり、そのために右室が無理をします。

Ilm23_cc03002-sあまり重症になりますと突然死することもありますし、不整脈や心不全で悩まされることもあります。

若い患者さんが多いだけに、創をできるだけ小さく目立たなくし、こころの傷も小さくなるようにミックス手術を心掛けています。

この手術ではなかなかミックス手術を行う病院がないためか、遠方からもよくお越しいただいています。

以下はその患者さんのご家族からのお便りです。ひとつは手術前、あとの2つは手術後です。

勉強し決意し、手術前の緊張とそれからの頑張り、健康を勝ち取られたあとのよろこびが伝わってきます。

私たちを選らんで戴いたことを光栄に思っています。

やはりお互いの心の絆は大切ですね。

 

***********手術前に頂いたメールです*************

名古屋ハートセンター 米田先生へ

娘が右室二腔症の手術で8月3日入院、6日手術でお世話になります群馬県
の***です。

猛暑の日が続き、先生におかれましてはつつがなくお過ごしでしょうか?

娘は、大学の前期試験が始まり、忙しい日々を過ごしているおかげで、

手術について若干、気持ち的に不安はあるのでしょうが、入院1週間前になっても

あまり落ち込むようなこともなくまた、娘の体調も特に問題はないので両親ともホッ
としております。

娘も私たち両親も先生の手術について全面的に信頼していることが娘にとって精神的
に落ち着かせているようです。

娘は、海外留学をしたいという夢に向かって、手術を受け健康な体に早くなりたいと
いう前向きな気持ちも支えになっているようです。

ただ、家では正常な血圧なのに、病院で検査や心臓カテーテルを受けるとき、娘は緊
張のせいか、血圧が急に上がってしまったりします。

手術のときもそのような状況にならないか少し心配しております。

私たち両親も名古屋での手術に向けて準備を進めているところです。

それでは、米田先生、スタッフの皆さん、どうか、どうか娘の手術をよろしくお願い
いたします。

  平成24年*月**日

群馬県**市  *****

 

********** 退院後いただいたメールです *********

 

名古屋ハートセンター 米田先生へ

  娘が8月6日に右室二腔症の手術でお世話になりました群馬県の***です。

  猛暑の日が続き、先生におかれましてはつつがなくお過ごしでしょうか?

  さて、18日の退院に際しましては、予定より早めたため、先生方、看護師さんには
ご迷惑をおかけしました。

帰省ラッシュの名古屋駅で、さすがに娘は人混み酔いをしてしまいましたが、新幹線では落ち着き、無事に帰宅しました。

帰宅後の娘は、ホッとした様子で、荷物の片付け、犬と散歩、母と一緒に食料の買い物など、元気に過ごしています。

頓用で1日2回は服用していたロキソニンも 1日1回に減りました。

23日には****病院に受診しました。**先生から、「順調な経過で、問題ないで
しょう。何かあれば、いつでも受診を」といわれ、次の北村先生の受診日まで、間に
合うようにお薬をいただきました。

血液検査値のデータは下記のとおりでした。

(中略)

猛暑で、娘は胸帯が蒸れると申しております。特に寝るときに外したいと言っていま
す。

寝るときだけ胸帯を外して寝ても大丈夫でしょうか?

傷はかさぶたも少しずつとれ、きれいになってきています。

手術後の経過も順調で、傷も小さくすみ、娘も私たち親も名古屋ハートセンターで手
術を受け、本当によかったねと言っております。

本当にありがとうございました。

1ヶ月検診には、また、センターに伺いますのでよろしくお願いします。

まだまだ、暑い日が続く模様ですので米田先生、センターの皆様におかれましてもお
体に気をつけてお過ごしください。

     平成24年*月**日  群馬県 ****

 

************* その後のメールです ***********

 

名古屋ハートセンター 米田先生

早々にご返信いただきありがとうございます。
娘は今日、暑い中、ゼミのため電車で大学に行き、帰ってきました。

 
暑さのためか、少々、疲れたようですが、手術後3週間ですでにゼミに復帰できると
は思いませんでした。

あまり無理をしないように娘には言っておりますが、傷の痛みもないようですので、
無理はしない範囲で手術前の生活に戻りつつあります。

9月には多文化交流でインドネシアのお友達が2泊の予定で我が家に来る予定です。
今から娘とともに楽しみにしているところです。

先生からご依頼のありましたホームページについてはまったく問題ありませんので、掲載よろしくお願いします。

私たちも名古屋ハートセンターの米田先生のホームページを閲覧し、右室二腔症について詳しく知ることもできましたし、センターで患者さんのご意見が掲載されているノートを見て、名古屋ハートセンターで手術を受ける決心の一助となりました。

やはり、心臓の手術ですので手術前は親子とも不安はありましたが、術後は、親子と
も本当に手術を受けて良かったと思っております。

これから娘が、自分の好きなこと、やりたいことへ挑戦(たとえば登山、海外留学な
ど)するとき、心臓の心配をしなくてすむようになったことは、娘にとって人生への
幅が非常に広がり、親も娘の挑戦を柔軟に受け止められるようになると思います。

 
本当にありがとうございました。

それでは、9月**日に1ヶ月検診で名古屋ハートセンターに伺います。
よろしくお願いいたします。

 

註:米田正始は現在、医誠会病院(手術と外来)と仁泉会病院(外来)で仕事をしています。

 

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元・京都大学医学部教授
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お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

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バルサルバ洞破裂はときおり見られる病気です。

大動脈の一番つけねのところの膨らみをバルサルバ洞とよびますが、これがなんらかの理由でこぶのように広がり、ついには破れる病気です。

心室中隔欠損症(略称VSD)などの病気に合併することも多々あります。

Ilm23_cc01001-s以下の患者さんは遠方の北関東地方からお越し下さいました。

地元では手術ができないということで、ましてミックスの小さい創での手術はあり得ないと言われてのご来院でした。

通常、バルサルバ洞瘤破裂といえば、患者さんは倒れたりショック状態になっての緊急手術が多いと言う印象がありますが、この患者さんの場合は徐々に破れたためか、比較的穏やかに心不全が発生していました。

手術では心室中隔欠損症の大穴をパッチで閉じてバルサルバ洞も治し、これによって大動脈弁もゆがみが取れてその逆流も軽微になりました。

3つの病気が全部治り、人工弁による弁置換も回避でき、しかも小さい創で手術が完了したため大変喜んでいただきました。

遠方から来ていただくだけに地元ではできない良いものをと念じていましたので、うれしい限りです。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

********* 患者さんからのお便り **********

 

先生、この度は大変お世話になりました。
一昨日帰宅予定でしたが、
名古屋駅の人混みと猛烈な暑さに尻込みしてしまい
一旦ホテルに避難・・・
昨日友人にサロンカーで迎えに来てもらい、
フラットなシートで涼しく帰ってきた次第です。

おかげさまで手術後の痛みも、
つらかったのは翌日まで。
合併症なども全くなかったそうで、
大変な手術を受けたとは思えない回復ぶりです!

 傷跡も小さい上に全く目立たず、
その点もとても前向きになれる要因です。

退院前に実際のエコー画像を見せて頂きながらの
丁寧な説明をして頂き、
全く問題なく治っているとのお言葉、
本当に感謝しております。

週明け早々に****病院で、
継続観察と投薬をお願いしに行ってきます。

森の中を愛犬と散歩してリハビリにも
励みたいと思っております。

名古屋の暑さにはびっくりです。。
先生もお体に充分お気を付けください。
本当にありがとうございました。

定期健診でお会いできればと思っております。

         8月23日 


****2年後、フェイスブックに載ったご意見です

お元気で仕事に楽しみに活躍しておられる由、うれしいことです****


気が付けば8月9日。
二年前の今日心臓が生まれ変わった日です!

胸骨を切り裂かれ、身体中を管に繋がれていたあの日。
今思い返しても、やっぱり我慢できない苦痛は無かったなぁ♪

お見苦しく痛々しい写真ですが、本人は大丈夫でしたー。

**今更のように感じます、良かったですね♪

** 50年間使ってきた心臓と
二年前からリセットされた心臓は別物に感じます♪

** 2周年おめでとうございます。**さんの決断と頑張りの賜物です。ちなみに骨は手術前より強くなっていてワイヤーのところなどはピストルで撃たれても耐えられるかも知れませんよ。

** 先生!感謝いたしております♪
以前と比べ、静かすぎて物足りないほどです(^^)
先生が約束してくださった通り

 

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お便り65: ポートアクセス法による僧帽弁形成術で元気になられた患者さん

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僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術はポートアクセスなどのミックス法の出現でますます進化をとげています。

患者さんは30代前半の男性です。兵庫県の遠方からお越し下さいました。

魚心あれば水心という心境で私の方も思わず力が入りました。ilm23_ee01001-s

以前から僧帽弁閉鎖不全症をかかりつけの先生に言われていたそうですが、良い治療法の出現をまっていたそうです。

弁は前尖と交連部つまり弁のヒンジの部分が壊れている、世間的にいえばやや複雑な形成でしたが、私たちにはよくあるタイプですので、いつもどおりポートアクセス法で僧帽弁形成術を行いました。

ゴアテックスの糸を4本つけて人工腱索とし、さらに交連部を微調整し、リングで仕上げて逆流はきれいに消えました。

小さい創で痛みもすくなく、外から創はほとんど見えないという、長年望んでおられた治療法で良い結果がえられ、よろこんで頂けました。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

******** 患者さんからのお便り *********


メールにて失礼いたします。

米田正始先生、このたびは本当にありがとうございました。

8月5日に退院させて頂きました****です。

退院日が日曜日でしたので、米田先生へお礼の挨拶もできず、大変失礼いたしました。

名古屋ハートセンターにて先生の手術を受けることができ、本当に良かったです。

2年前に心臓の病気が見つかってからというもの、常に、手術になったらどうしよう、手術がうまくいかなければどうしようと、

気が休まる日は無かったです、他の病院で手術が必要だといわれてからも、自分が納得できておらず、

このまま手術を受けていいのかと、悩んだり迷ったり、精神衛生上も非常に良くない日々を送っておりました、

心臓の手術はそうそうあることではないので、多少場所が遠くても自分で納得できる病院、先生を探そうと思い色々と調べ始め、

そんな時インターネットで米田先生のブログを拝見し、

米田先生は他の病院で弁形成術を行ったが調子が悪くなった患者さんの

再形成手術等もされているという情報を見つけ、名古屋ハートセンターを訪れました。

先生の診察を受け、やはり手術が必要となりましたが、先生は患者が不安にならないよう、丁寧に納得いくまで説明してくださり、

また、手術まで何度も何度も名古屋まで足を運ぶのだろうなと思っていたのですが、

遠方からの患者ということで、手術に必要な検査をまとめてやってくださったり、患者の負担を減らすように心がけてくださり、手術の日まで、たいした不安も無くすごせました。

本当にありがとうございました、感謝しても仕切れません。

今は自宅にて療養とリハビリの最中です、早く健康な体になれるようがんばっていきます。

先生は多忙な毎日だとは思いますが、なにとぞお体大切になさって下さい。

それでは失礼いたします。

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中国での心臓外科国際シンポジウムに行って参りました

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 8月のお盆休みにたまたまご招待を頂いたため、第一回国際心臓胸部外科シンポジウムのため中国の保定市(Baoding市)へ行って参りました。尖閣諸島問題で騒々しい中をまあ何とかなるだろうと参加しました。

 
保定市と言っても日本ではあまりなじ 2012-08-17 17.51.22みがないと思います。
北京から南西方向にクルマで2時間半のところにある町ですが、なんと人口は1000万人を超える大都会です。中国は何につけてもスケールが大きいと思いました。

これまで何度か心臓手術をするために訪問した天津は北京から南東にクルマで2時間あまりのところにあるため、この3つの大都市が正三角形をなしているという位置関係です。

保定市はかつては河北省の省都だったそうですが、現在は省都を天津に譲っているそうです。
ともあれ保定市でもこれから医療を国際化、先進化して村おこしの一助にしようということでこの第一回国際心臓胸部外科シンポジウムが企画されたようです。

 

日本からは私・米田正始と東京大学教授の許俊鋭先生が招待を受けて参加しました。
許先生とは長年のおつきあいというよりお世話になって来ましたので、久しぶりに楽しいひと時になりました。

北京空港で数十名の参加者が集合し、コオディネーターの丁さんのお世話でバスで保定市まで移動しました。参加者はヨーロッパ、アジア、アフリカなど多彩で、心臓胸部外科関係はもちろん、それに関連した循環器内科、移植、腎移植、内科、脳外科、基礎医学など多彩でした。

中国といえば、英語が通じるというのがこれまでの私の印象でしたが、たった2時間地方へ移動するとあまり通じない別世界であることを知りました。この国は巨大で、医療でも何でも国の隅々まで行き届かせるのは大変だろうとすぐ理解できました。

ホテルはまずまず近代的なものでしたが、周囲の街並みは現代と過去が混在したような、あるいは豊かさと貧困さが入り混じった形で、急速に発展する中国の地方都市の姿を象徴しているようでした。地方都市といっても人口1000万人以上の、東京なみの大都市ですからこの国のポテンシャルはすごいとも思いました。

2012-08-16 19.19.22中国の良き慣例で、到着当夜の歓迎パーティは豪華かつ楽しい中華料理で、大型テーブルが電動式に動いているのが面白く、20名以上が食卓をともにすると、デーブルを動かしておかねばなかなか食べ物が回ってこないためでしょうか。

同様の部屋がいくつもあって、20名単位で親交を深めるということのようでした。

内容は数えきれないほどの中華料理のバリエーションと、マオタイやワインその他の飲み物でしたが、美味なマオタイに比べて中国のワインはまだ発展途上という印象でした。タバコとライターが時々回ってくるのと、食事中でもタバコを吸うひとがいるあたりアジアのおっさん時代の名残を感じました。
中国式に何度も乾杯しながら楽しいひとときでした。

翌日から病院(保定市第二病院)の大講堂でシンポジウムは始まりました。

二日間の予定で、心臓外科、呼吸器外科、移植とそれらに関連した領域のトピックスが論じられました。

図1

驚いたのは発表も討論もすべて中国語で行われ、許先生や私の発表はもちろん英語でなされたのですが、中国語の通訳がついてのものでした。

英語に堪能な中国人の本国で、それも人口1000万の大都市でもここは僻地じゃというのはこの国を統治することの大変さをうかがわせるものでした。

許先生と、こんな巨大な国をたかだか100万か200万の軍隊で支配しようとした旧日本軍はこの国を知らなさすぎたですねと、あらためて日本の世界知らずを実感した次第です。

さらに面白かったのは、香港の先生が中国語で発表されても、それが大半の聴衆に理解されず、やむなく英語発表に切り替えられ、それを台湾の先生がボランティアで通訳されたことでした。

この国は巨大だと再度痛感しました。ちなみに許先生や私の発表を通訳して下さったのも台湾の先生でした。

許先生はライフワークでもある補助循環・人工心臓・心移植を中心としたお話しで、この領域の目覚ましい進歩を改めて実感させてくれるものでした。

補助循環はこの数年間、日本発の小型デバイスを含めた、より優しい小さいデバイスの進歩で治療成績が格段に改善していることを確認できました。

もはや心移植の成績にさえ比肩できるレベルに来ているというのは、心不全患者を預かるものとして感謝に絶えないことでした。

私はより多くの患者さんに役立つミックス手術というテーマでお話ししました。

ミックス手術とは小切開低侵襲手術(Minimally Invasive Cardiac Surger, MICS)の略称ですが、まだ簡単な手術にしか使われていない、それもエキスパートがいる病院に限定されているという問題があります。

エキスパートややるべき手術というのは今後もそうあるべきと思うのですが、簡単な手術にしか使えないというのは世の中への貢献という意味では劣ると考え、それへの対策をお話ししました。

 

つまり、その患者さんの病気や重症度に応じて、さまざまな段階のMICSを使い分け駆使することでより多くの患者さんにお役に立とうというわけです。

ミックスが行われるのは通常、心房中隔欠損症ASDや僧帽弁形成術の簡単なタイプなどが主ですが、私たちの工夫によって、複雑弁形成でも、大動脈弁形成でも、2弁でも3弁でも、比較的高齢者でもミックス手術ができることをお示ししました。

2012-08-17 19.47.261日目のシンポジウムが終わったあと、ディナーパーティが開かれました。中国のもてなしの素晴らしさを見る思いのパーティで、力の入った出し物のあと、何度も乾杯しながら見事なご馳走を山ほど頂きました。

山ほどというのは文字通りの表現で、テーブルに乗り切らないほどの料理が出てきて、それらを互い違いに上へ上へと積んで行くのです。

 

なるほど、こうすれば普通の数倍の料理が並び、かつそのどれも選べることができます。

中国式の実用主義の一端を見せて頂いた思いです。

しかしお皿の下側はきれいなんでしょうねと確認したく思ったひともあったようで2012-08-17 20.33.05す。

冒頭にお書きしました尖閣諸島の問題は、シンポジウム中にはまったくその空気もありませんでしたが、ホテルでテレビを見ますとその報道をしていました。

 

中国政府やメディアによれば、尖閣諸島は5世紀の昔から中国人がよく訪れ魚を取ったりなじみのある島で、位置からいっても当然中国領でしょという報道でした。

英語放送で見ましたので比較的正確に聞き取れたと思います。

これは国民感情に訴えやすい論法ですが、国際法上は誤りです。

それを知っているはずの政府がこうした報道をするのは問題と思いました。

 

しかし同時に中国は今後絶対に仲良くすべき大切な国です。それは韓国を含めたすべてのアジア諸国も同じです。

どうすれば仲良くできるか、幅広く意見を集めて具体的かつ積極的に実行していくことが長期的には一番重要と思いました。

私はこれまで中国に何度も心臓手術や講演でお邪魔させていただいていますが、今回はちょっとユニークな、これまでにない経験をさせて頂いたように思います。

地方都市のためでしょうか。

上海、北京、大連などそれぞれ複数回お邪魔しても見られなかったものが見られて面白い経験となりました。

シンポジウムはもう一日あったのですが、許先生も私も、それぞれ日本で学会の公用があり、朝4時半にクルマで北京へ向かいました。

わずか3日間の旅でしたが、楽しく有意義なひとときでした。

お世話になったYao Lu先生や中国の先生方、秘書のRachelさんはじめ多数の皆様、そして許先生に感謝申し上げます。

平成24年8月18日 米田正始 拝

 

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福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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拡張型心筋症にたいする心尖部温存式バチスタ手術

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Developing Academic Surgeonという研究会で日本発の手術法のひとつとして発表されたポスターです

バチスタ手術はアメリカでは健康保険が効かなくなったため廃れてしまいました。しかし私たちの研究や、須磨先生やヨーロッパの臨床研究から、症例を選び、かつ正しくやれば患者に十分益することが心不全外科の関係者の間では知られています。

そうした中で心尖部を温存することで術後心機能を改善し、手術の安全性を高めることを証明できたことは意義あるものと考えています。

実際ヨーロッパの友人たちは、この研究で証明されたことは自分たちの臨床での印象と同じだ、勇気づけられたと言ってくれました。

今後、啓蒙活動や新たな多施設研究などによってこのバチスタ手術の普及度が決まるものと思います。

 

①心尖部温存式バチスタ

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スタートに出遅れた君へ―――学士入学から輝く心臓外科医へ

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以前から私のところへは全国から若い学生諸君や修練医の先生らが遊びに来て下さいますが、心臓外科に関心があるひとは現代では貴重な資質を持っていることを感じます。

Ilm12_ab01041-sそれは心臓外科医が忙しいのを知って(日本では給料は同年代で皆同じ)、なおやりがいをもとめて志望しておられるからです。イージーな生き方が主流になりつつある医学生というより若者のなかで、甲子園球児やオリンピックに半生を捧げるひとたちと同じ質のすばらしいものを感じます。

なかでもすごいと感嘆するのは学士入学や、何らかの理由で20歳を大きく超えてから医学部に入り、そして心臓外科を目指しているひとたちです。

私自身、いろいろあって大学に行くまえに2年も浪人し、どんくさい生き方を自認しているため一層気持ちがわかります。

心臓外科は他科とくらべて一人前になるのに時間がかかります。早い話が、初期研修のあと、腹部一般外科をある程度こなすことが必須で、これだけでも他科より時間がかかるのです。手術もより高度で精密さと迅速さの両方を求められるため、教えるにも学ぶにもやや時間がかかります。そうした状況であえて一見不利と思える心臓外科をすでに20歳を超えてから志望する姿勢に、強い意思、熱い情熱、硬い決意を感じずにはおれません。ちなみに北米では学士入学が正規のルートですから、国際的にも正しい姿勢と言えるでしょう。

Ilm18_ad03023-s過ぎ去った時間は二度ともどりません。しかし時間より速く進むことで、結果的に取り戻すことは可能です。しかし世の中、皆、それなりに一生懸命頑張っているなかで、自分だけが特段のスピードで進歩するためには、相応の努力が必要です。

私などは自分のどんくささをよく把握していたため、「自分のような者が一流になるためには、人と同じ姿勢ではダメだ。人が楽しんだり遊んだりしているときに、黙々と仕事や勉強する以外に道はない。自分には楽しみも遊びも要らない、全部放棄しても構わない」とまで思っていました。

現実には周囲の皆様のおかげで、けっこう楽しく遊びもしながらここまで来れましたが、あの楽しみを放棄する決意は自分には役立ったと思います。自分より能力に勝る人たちにも十分ついて行けるという変な自信が得られたからです。また仕事や勉強三昧のときにその生活を苦痛と思わなくなったからです。

さて学士入学組に代表される、スタート出遅れグループの医学生や医師が心臓外科で大きく展開するにはどうすれば良いか、私の考えを述べてみます。

 

1.まず無駄を省くこと Lpsd2102c-sは必要。

といっても無駄と思えることが人生で、仕事の上でさえ役立つことはままあります。

何でも経験というのも一理あります。

それらを踏まえたうえでものを考えましょう

 

2.学生時代には医学のみならず英語を徹底して鍛える。

TOEFLで高得点が取れるように鍛える。なかでも聴く力と話す力は日本人の共通弱点 Sst019-sですから力を入れる。

私は学生時代の初めごろ、下手の横好きでバレーボールをやっていたのですが、臨床留学の重要性をあるとき悟り、自分の英語力では全然足りないことを知ってから、涙を呑んでバレー部を辞め、ESSで徹底的に鍛えて頂きました。

それが後日どれほど役立ったか筆舌に尽くせません。

もう少し能力があればバレーとESSを両立させられたものと思いますが、自分にはそれは無理と知ったうえでの決断でした。


この決断が役立ったとい Jab110-sう一例を挙げます。

カナダで英語の試験に通るために通常2年の準備期間が必要と言われます。

私が留学したときからこの英語試験が突然、必須になりました。

しかし私は学生時代の鍛錬のおかげでTOEFLもTSE(話す試験、現在はTOEFLに含まれる)も1か月の準備期間で一撃合格し、そこで失った時間はほとんどありませんでした。

バレーボールを放棄してまで取り組んだESSのおかげで浪人分のロスは取り返したわけです。

 

3.学位つまり医学博士は持つに越したことはない。とくにその論理の進め方、ものの考え方、統計ソフトやエクセル・パワーポイントの使い方、論文の書き方、どれも大切です。

しかし一般にはその学位を得 Ilm09_af10021-sるために、大学院へ進学し、4年間が必要。

学士入学のひとにはこれは致命的に近いほどの打撃になるでしょう。

4年で済めばまだしも、そのあとに大学などでさらに何年か雑用係りをさせられればもはや昇天です。

 

そこで修練時代や留学時代にしっかり学会発表し、そこで得た知識や考え方で論文を海外のジャーナルに載せる、少なくとも1本、できれば数本。

オリジナルな何かが欲しい。これによって論文博士という学位が得られます。

今後論文博士という制度は無くなるという噂もあり、時代に即した対応が必要ですが、近年できた社会人大学院制度では第一線病院で臨床をやりながら学位が取れるため、これなども使えます。

ただ授業に出るために多大な時間を取られたり、授業料がかさんだり、苦痛は多いため、論文博士が勧められます。

ちなみに私はこの論文博士で学位を取りました。

ここで4年間以上の時間を稼いだことはその後の展開に大きく役立ちました。ただこうした作業にはしかるべき指導者が必須です。蛇足ながら私の施設では私が指導しますから医学博士号はそう大変ではありません。何事も工夫です。

 

1134.(腹部一般)外科研修は施設の格差が大きい。用心されたし。

ある有名大学の外科教授が、外科専門医を取るには5年かかると言われました。

学士入学の君が外科研修に5年も失えば、もはやタイムアップ、時間切れでしょう。

そうすると心臓外科など辞めて外科へ入局したまえ、となるわけで、思う壺状態ですね。

私の知る範囲で、症例数が多く、良心的な教育をしてくれる病院なら、外科専門医になるために必要な症例数は9か月で得られます。

5年と9か月、この差は大きいですね。学士入学の方には心臓外科医としての生死を分けるほどの差がでます。

 

5.後期修練あるいは専門研修はひとりあたりの症例数が多いところが良い。

全体の症例数がまずまず多くても、それ以 Ilm09_ag04005-s上に心臓外科医の数が多ければ、研修内容は主に第二助手と術前・術後管理で終わります。

手術手技としては主に見学か簡単な操作に終始するでしょう。

ちなみに私の病院では年間250例以上の開心術を私を含めて4名の心臓外科医でこなしています。

雑用が比較的少なくペイがやや良い民間病院の特徴を活かしています。

 

1人当たりの症例数が多いところでは自分しかいないという状況が生まれやすく、それはそのまま執刀や半執刀などのチャンスにつながります。

毎日手術に入って何かができる、これは効きます。

 

6.40歳までに一応独り立ちできる、つまり標準的手術は部下と二人で自信をもってや れる、状態になることが必須です。

これをもとに考えれば上記の戦略は納得できると思 Gum11_sy01045-sいます。

 

たとえば30歳からスタートして、初期研修2年、腹部外科9か月で後期研修に入りまもなく33歳。

そこから一人当たりの例数が多い施設で心臓外科医として多忙な毎日を送れば4年間で標準手術が一応できるレベルには達します。

その時点で37歳。

まえもって準備しておいて海外臨床留学で3年間、数百例を見て、数百例を執刀すれば、より自信や安定感がでるでしょう。

40歳のデッドラインに間に合いました(40歳という年齢にこだわるわけではありません。要は次のステップがやりやすくなるという意味です)。

 

7.そこから先の就職先選びが大切です。これは上記の留学までに下交渉をやっておくのが有利です。

Ilm2007_02_0190-s一流施設へ就職できれば結構なことですが、そこには多数の上司がいるでしょう。チャンスはなかなか来ません。

一流施設でなくとも、手術ができる施設で、そこで自らとチームを育てるほうが速いこともあります。

とくに民間施設では成績が上がれば長期的にはいくらでも手術できることが多いので展開が期待できます。

 

現代の心臓外科市場は極度の人手不足、正確には若手不足のため若い間は売り手市場です。

これを活かさない手はありません。民間のアウトサイダーから教授や大手有名病院のチーフになるというケースが近年増えました。

また苦労に苦労をかさねて一流施設の長になるというのも人生ですが、その近隣の二流施設に就職し、これを育て上げて一流にしてしまうというのも人生です。

いったん実力がついたひとには後者の方が楽なことも多いです。

 

Ilm18_ba04006-s8.どの世界でもそうですが、愛嬌があるというのは大切です。同じ努力するなら笑顔でやりましょう。

とくに学士入学などで年齢が少し高い場合、周囲の仲間は年下です。

彼らに対してもいつも笑顔で接することは極めて重要です。

 

中には人生の先輩を先輩とも思わぬ不遜の輩もいるでしょう。

しかし腕を上げ、立派になればいつかはわかってくれるはずです。

たとえわかってもらえなくても、他人の弱みにつけこんで偉そうにするタイプの人は、いずれ破たんしますので、気にしないことです。

 

以上、学士入学の君が心臓外科医として成り立つ道についての私見を述べました。

 

さまざまなバリエーションがあるでしょうし、そもそも大学や大学院は本来は素晴らしいものです。

時間が確保できればそうしたところで活躍するという道も検討すると良いでしょう。

実際、海外で腕を挙げて、乞われて大学にもどり、そこで腕を振るってさらに大きな展開を遂げた先生は近年めずらしくありません。

大学ももはや、実力を無視できなくなっているのです。良い傾向です。

 

ただ私は大学病院や一部公的病院で若い医師が労働組合の圧力のために雑用係りになっている現状を残念に思うのです。

学士入学の方々の場合は、持ち時間が少ないためその雑用が致命傷になりかねないので打開策を示したわけです。

 

Isn479-sれらを参考に自らも学び考えて、自らが心臓外科医として大成する戦略を練って下さい。必要時には相談に乗りますので遠慮なくご連絡下さい。

 

最後にものをいうのは「夢」や「感動」あるいはそれにもとづく「決意」でしょうか。これも私見ですが。

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自己心膜による大動脈弁形成術(大動脈弁再建術)の位置づけ【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月27日

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◾️大動脈弁閉鎖不全症への手術、選択肢は

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大動脈弁閉鎖不全症(略称AR)の外科手術には大きな展開があり、どれが一番良いか、わかりづらいという声をお聞きすることが増えました。

そこで治療方針を整理してみます。

年齢によって方針がかなり異なります。そこで年齢別に記載します。

まず手術法として次のようなものがあります

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A弁形成と再建シェーマ21.大動脈弁形成術: 文字通り患者さんご自身の弁を修復して正常に作動するようにします。成り立つ場合はこれがベストで基本と言えましょう。

2.自己心膜による大動脈弁再建術(または大動脈弁形成術): 心臓を包むような形である自己心膜を採取し、薬剤で安定化してから大動脈弁の弁尖(ひらひら部分)を切り取り、大動脈弁輪に縫い付けます

3.生体弁による大動脈弁置換(AVR):ウシ心膜で組み立てた生体弁を大動脈弁の付け根に縫着します

Artificial valves3b. ステントレス生体弁によるAVR: 3.の応用ですが、より自然に近い生体弁を同様に取り付けます

4.機械弁によるAVR: パイロライトカーボンなどの金属で造られた人工弁を大動脈の付け根に縫い付けます

5.折りたたんだ生体弁をカテーテルで心臓までもって行き、取り付けるTAVI(タビ、またはTAVR): これは主にオペができないような重症の患者さんや、2回目以後の手術を回避するために使います。

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◾️大動脈基部拡張を伴う場合は

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David & Bentallなお同じARでも大動脈の基部全体が大きくなっている大動脈基部拡張症を合併しているときにはできるだけデービッド手術という自己弁を温存する、一種の弁形成を積極的に行っています。これが標準手術と考えています。

自己弁が壊れすぎて使えないときには人工弁を付けた人工血管で大動脈基部を全部とりかえるベントール手術を行います。

これらの方法をその患者さんの年齢、ライフスタイル、体の状態などを勘案してベストなものを選びます。

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それでは年代別に私たちの方針をご紹介します。もちろん患者さんとの相談が大切で、ケースバイケースで柔軟性を持って臨んでいます。

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Ilm03_bc02023-s◾️10代:

ARでは極力弁形成を行います。まだ弁がそれほど短縮・肥厚などの変化を来していないことが多く、弁形成術が成立しやすいこと、またこの年齢では生体弁は数年しか持たないことなどが理由です。機械弁はワーファリンが一生必要で、かつ青春時代の生活の合わない面も多いため、あまり勧めていません。とくに女子の場合はワーファリンを飲むと妊娠出産が危険になるため全力あげて弁形成をしています。

大動脈基部拡張があればもちろんデービッド手術を選びます。
将来もし弁が疲労し壊れれば、再手術か上記のTAVIを考慮します。

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Clco123-s◾️20-30代:

10代に準じた対応です。大動脈弁の変化変形が進むことがやや増え、弁形成が成り立ちにくいときには2.の自己心膜による大動脈弁形成(再建)を考えます。患者さんの仕事や生活状況によっては機械弁を選ぶこともあります。ただ近年の弁形成の進歩はエキスパートの手術なら弁形成成功率はうんと高くなりました。

大動脈基部拡張があればデービッド手術を、自己弁がかなり壊れているときには生体弁または機械弁によるベントール手術を患者さんと相談ののち選びます。

この年代でも女子には極力弁形成や自己心膜弁再建を考えます。生体弁はせいぜい10年しか持たないことが多いからです。

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◾️40-50代:

弁形成に適するケースがやや少なくなり、弁形成が不向きな場合は自己心膜による大動脈弁形成術または再建を考慮します。患者さんのご希望によっては機械弁を使うこともあります。ただし近年の弁形成技術の進歩(有効弁尖高などの活用)により、この年代でも弁形成ができることが増えました。

大動脈基部拡張があれば20-30代と同様です。

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Health_0084◾️60代:

軽い病変なら弁形成が可能となりました。弁形成に難がある時には自己心膜による大動脈弁形成術または再建術や、生体弁によるAVRを考えます。この年代では生体弁は10数年持つ可能性がありますので。

大動脈基部拡張があれば40-50代と同様です。

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◾️70代ー90代:

主に生体弁によるAVRを考慮します。より短時間で、確実に手術が仕上がりやすいことと、このご年齢では生体弁が20年近く持つからです。

大動脈基部拡張があれば生体弁をもちいたベントール手術を勧めます。再手術その他で通常のベントール手術がやや不利な場合はステントレス弁を入れ子のように大動脈基部に入れ込むミニルート法を選ぶこともあります。患者さんの体への負担が減ります。

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こうした様々な方法をその患者さんの状態やご希望にに合わせて駆使することで、オーダーメイド医療に近い、その方にベストの治療法が使えるものと考えます。

なお大動脈弁狭窄症の場合もARに準じる一面はありますが、弁の破壊が進んでいる場合が多く、弁形成よりも自己心膜による弁形成(再建)や人工弁の比率が上がります。

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◾️そしてミックスが

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ミックス手術のさまざま。これ以外にも有用な方法があります。

それから小さい創で、痛みを軽減し、より早い社会復帰をはかるためミックス手術(低侵襲小切開手術)を行っています。その場合上記の手術法との組み合わせが大切です。

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たとえば弁形成ではより良い視野が必要なため、やや軽いミックスで行うことが多く、弁置換ではポートアクセス法など、積極的なミックスと組み合わせやすくなります。

安全性を優先し、その患者さんの状態に応じて組み合わせを考えるようにしています。

やはり心臓手術にかぎらず、医療はすべてしっかりした相談から始まるのです。

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病院実習について―――学生諸君へ

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熱意ある学生諸君

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立派な医師を目指して勉強や修練に励んでおられることと思いますisya01

私の仕事場である医誠会病院では学生実習を随時受け付けています

対象はおもに4年生ー6年生の高学年ですが、熱意と体力自慢の方なら1年生ー3年生も可能です。

熱心でやる気があることが応募条件です。現在の知識は問いません。

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実習内容はつぎのとおりです。その方の医学知識や経験量などに応じて内容は調整します。

1.心臓手術の見学: 安全確保ができる場合、手洗いして手術に入って頂くこともあります。急性大動脈解離に対する弓部全置換術やハイブリッド治療のためのデブランチ手術、腹部大動脈やその他血管の手術、ポートアクセスMICSによる僧帽弁形成術、自然弁や自己心膜などによる大動脈弁形成術、弁置換術、オフポンプバイパス手術、心不全への手術、成人先天性心疾患手術などが学べます。

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2.術前術中術後管理の勉強。術前は病棟で、術中はもちろん手術室で、術後は集中治療室で、いずれも当科のドクターについて勉強して頂きます

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3.心臓外科医になるための進路相談。これは初期研修、後期研修、海外臨床留学なども含みます。実力をつけるために何をすべきか、英語の勉強は、外国のライセンスや医師国家試験は、日本での研修でどう準備すべきか、などですね。

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4.また手術の練習の方法や道具類、心構えなども大切です。

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Sengoku02臓手術はスポーツや音楽に共通したところが多くあります。高度な技術は一日ではつきませんが、だからといってチャンスをただ待っていても、そのチャンスで腕を発揮できないとそこで進歩は止まってしまいます。平素から一剣を磨く姿勢が必要ですし、それはできることです。

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こうしたことを病院実習で学んでいただきます。

期間はその方の事情にあわせて、1日ー1週間の範囲内です。

ご希望があればその他の病院もご紹介します

Il002_earth私は京都大学在任中に200名近い学生実習を全国から受け容れ、さらに150名の諸君の海外臨床実習をお世話させて頂きました。彼らは多くを学んでくれたようで、その後の活躍や展開を楽しみをもって見ています。

こうした「野外実習」をきっかけにひとりでも多くの優れたドクターが世の中に出てくれれば望外のよろこびです。夢をもった熱い学生諸君にお会いできるのを楽しみにしています。

お問い合わせは zeek-m@bf7.so-net.ne.jpまでどうぞ

 

医誠会病院心臓血管外科 スーパーバイザー 米田正始

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