日本冠動脈外科学会にて

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遅くなりましたがこの7月29日と30日に大阪のホテル阪神にて冠動脈外科学会がありましたのでその印象を記します。今年の会長は近畿大学心臓血管外科の佐賀俊彦先生でした。
申し訳ないのですがこの記事は一般の皆さまにはちょっと専門的すぎると思います。熱心な医師がこのような努力をしているということを見て頂ければ幸いです。

まず薬剤溶出性ステント(DES)の出現以来、カテーテルによる冠動脈治療(PCI)がますます増えて心臓血管外科もそれへの対応・対策が迫られているという現状を踏まえて、意欲的なセッションが多数みられました。外科手術には患者さんに真に役立つ利点がいくつもあることを確信してのことであったと拝察されます。

私は一日目には名古屋ハートセンターで緊急手術(急性大動脈解離)のため結局参加できませんでしたが、虚血性心筋症に対する左室形成術を再検証するシンポジウムが組まれ、活発な意見交換がなされたようです。

Stich Trial(スティッチ・トライアル)という多施設研究が欧米で行われ昨年発表されましたが、左室形成術に経験豊富な外科医の眼にはあまりのレベルの低さにあきれるような内容でした。しかもその結論が左室形成術にメリットが見られないというものでしたので、大きな議論となり、アメリカ胸部外科学会等でもそれへの対策が進められています。
要するに、私たちが普通あまりやらないような軽症の心筋症に対して行われた左室形成術を検討されたため、当然とはいえ、左室形成術のメリットが見えにくかったわけです。この「欠陥」とも言えるトライアルのリーダーを招待してのセッションとは、会長の佐賀先生の熱い外科医魂に感心いたしました。

そもそも左室形成術をやらねばならない重症例をランダマイズつまりくじ引きで左室形成術をやるかどうかに二分すること自体が難しく、非人道的なことさえあるため、こうしたヘンな結論を出してしまったという意見が多く、一部の軽率な動きのために多くの医師や患者さんが迷惑を被るのは不幸と思いました。

今後、日本の全国データの中から重症例での左室形成術の効果や貢献が調べられ、より実際の臨床現場の実情が明らかになればと思います。

昼前に行われた恒例の理事長講演(瀬在幸安先生)には緊急手術のため参加できませんでした。長年、我が国の冠動脈外科をけん引して来られた理事長の年次報告で、来し方行く末Buxton先生。ちょっと昔の写真ですが。メルボルン大学オースチン病院で心臓外科教授をしておられました。退官後の現在も私立病院で活躍しておられますを示されたのではないかと思います。

一日目午後にはアジア太平洋シンポジウムとして、冠動脈の血行再建の現況が論じられまし  た。司会は私の恩師であるBrian F. Buxton先生と国立循環器病研究センターの小林順二郎先生でした。

Di Giammarco先生。イタリアの山間部の古都キエティで活躍中です。昔遊びに行ったことがあり当時から名人でしたそれと平行してKey Note Lectureとして畏友 Gabriele Di Giammarco先生と T. Bruce Ferguson先生の術中グラフト評価のお話がありました。Di Giammarco先生には元弟子を修練させて頂いたり講演に何度か来て頂いたりお世話になったことが多く、懐かしく想いました。

 2日目の朝に急性心筋梗塞の合併症のセッションで、聖マリアンナ大学の幕内晴朗先生とともに司会をさせて戴きました。急性心筋梗塞後の左室破裂心室中隔穿孔VSPへの外科手術の検討が主で、着実な進歩が見られ、活発なディスカッションができうれしく思いました。これまではむなしく見送った患者さんを自分たちの手で救命できるという、無上の喜びを若い先生方と共有できれば最高です。

午後には日本冠動脈外科学会と日本冠疾患学会との合同シンポジウムがもたれ、画期的なことと感嘆いたしました。三井記念病院心臓血管外科の大野貴之先生と高本眞一先生らがEBMにもとづいて正しい冠血行再建の治療法選択を論じられました。DESバイパス手術を比較したSyntaxトライアルの2年フォローのデータ等からバイパス手術が患者さんの生命予後をDESよりも改善することがあり、このEBMを踏まえた治療選択が現在はきちんと行われていないことへの不満がうかがわれました。

帝京大学循環器内科の上妻謙先生は左主幹部・多枝病変に対する治療戦略を話されました。ひとつの方法にこだわらない、良識とバランス感覚のある先生のお話でした。しかしSyntaxトライアルの結果の解釈は内科の視点からのもので自然なことですが、外科の視点も考慮頂ければと思いました。バイパス手術の方が脳血管障害が多いというのはよく言われることですが、真実は手術時の差はなく、術後数か月間に多量のくすり(抗血小板剤)を使うDESよりも脳梗塞がやや多いのは当然です。バイパス手術が劣るというわけではないのです。それを受けて、私たちは術後のくすりを調整し経過を見ています。

福島県立医大心臓血管外科の横山斉先生はquality controlが効いた場合のOPCABのメリットを示されました。また話題のROOBYトライアル(あの超一流誌、New England Journal of Medicineに掲載)に言及し、不慣れなレジデント(修練医)が難しいオフポンプバイパスを執刀している以上、オフポンプバイパスの成績をうんぬんするのは問題であると指摘されました。納得行く論議でした。

天理よろづ相談所病院の中川義久先生は上記の諸先生方に勝るとも劣らぬバランス感覚の良い先生で、冠動脈だけでなく患者さんそのひとを最もハッピーにするという視点で治療や教育を進めてこられた先生です。今回の講演でもその全人医療としての視点が光っていました。たとえば回旋枝起始部の冠動脈は血管のねじれ運動が強く、ステントには本質的に向かない。とくに動脈硬化のリスクが高い患者さんでこうしたところにガイドワイヤーが通るというだけの理由で何でもステントというのは、単に主幹部病変というだけで何でもバイパス手術というのと同じで、病態の本質をしっかりみるべきと主張されました。j-CypherトライアルでもSyntaxと同様、非保護左主幹部病変プラス3枝疾患の患者さんではバイパス手術が安全との根拠を示されました。多くの外科医はその患者全身を考える姿勢に感銘を受けたことと思われます。

2日目の午後後半は虚血性僧帽弁閉鎖不全症(虚血性MR)一色でした。産業医大循環器内科の尾辻豊先生が虚血性MRの機序と問題点を基調講演された。この中で乳頭筋不全は虚血性MRを悪くするという長年の考えを覆した私たちの研究を引用して下さったのは光栄なことでした。お互いの業績を認め引用する見識を皆がもつことで、日本の医学はさらに発展すると思いました。

それに続くシンポジウムでは大阪大学心臓血管外科の吉川泰司先生・坂口太一先生・澤芳樹先生らが乳頭筋接合術と弁輪形成術の治療成績を発表されました。
和歌山日赤病院心臓血管外科の青田正樹先生は私たちが京都大学で開発した腱索転位chordal translocation を応用した方法で優れた結果を発表されました。皆で創り上げた方法を引用して戴き、光栄に思いました。

東京医科歯科大学の長岡英気先生・荒井裕国先生らは腱索をさまざまな方向にけん引して、最適の方法を探る研究を発表されました。京都府立医科大学の夜久均先生らもいくつかの方向に腱索乳頭筋をけん引し、前方にひく私たちの方法の良さを示されました。こうした優れた仲間たちに私たちの仕事が応用されているのは大変光栄なことでした。
東京大学心臓血管外科の小野稔先生らは乳頭筋をやや古典的な後方つりあげする方法での結果を報告されました。

私たちもこれまで発表してきた腱索前方つりあげをさらに改良した方法を近々発表予定で、また皆で賑やかに勉強できればと思いました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症は外科医が社会に対して貢献できる領域のひとつです。ますますの発展を期待したく思います。

今年の冠動脈外科学会も楽しく勉強になる集まりでした。会長の佐賀俊彦先生と近畿大学はじめ関係の皆さま、ありがとうございました。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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煎茶道方円流の研修会で講演いたしました

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この8月28日にホテルオークラ京都にて煎茶道方円流の夏季研修会があり、「お茶と健康」について講演させて戴きました。

かつて京都大学病院勤務時代に緑茶ポリフェノールの還元作用を活かし、心筋梗塞や心臓手術時の心臓虚血(酸欠のことです)を和らげる研究(英語論文142番)を行っていた経験から、お茶にうるさい(?)心臓外科医ということでこの機会をいただけたものと思います。

講演内容の概要は以下のとおりでした。

他の方の参考になればと、スライドからざっと転載させて戴きます

お茶と健康――心臓外科医の視点から

まずお茶と健康の歴史をお話しました

スライド1:

鎌倉幕府三代将軍・源実朝の二日酔いを お茶で治したという記事が「吾妻鏡」にあり、 源実朝
この時、臨済宗の開祖・栄西が将軍に併せて呈上したのが『喫茶養生記』の原本(1211年)
「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり。・・・」
「 種々の薬は各々一種の病の薬也、茶は万病の薬となる。」
茶は不老長寿の『仙薬』とさえ言われていました

スライド2:

喫茶養生訓の冒頭には、「一に肝の臓は酸味を好む。二に肺の臓は辛味を好む。三に心の臓は苦みを好む。四に脾の臓は甘味を好む。五に腎の臓は鹹味かんみ(塩辛い味)を好む。」とあり

ついで、辛・酸・甘・鹹の四味は日常の食事で食べるが、苦みは常にあるものではないから、心臓はいつも弱くて、病を起こしやすい。この苦みや渋みを含むお茶を喫すると心臓は強くなり病もなくなると説いた

スライド3:

その後、茶道という独特の文化を作り広まる
煎茶が日常茶飯の飲み物になったのは江戸前期、中国・明の福建省から隠元禅師が来朝して、インゲン豆のほかお茶の葉にお湯を直接注いで飲む方式を伝えてから

スライド4:

茶の主な成分 不溶性成分(70~80%)

食物繊維(30%~40%)……腸内の有害物質を排除する効果や血糖値を下げる
タンパク質(24%)……からだを作るのに必要な成分
β-カロチン(13~29mg)……体内で必要なビタミンAを変換する効果
ビタミンE(25%~70%)……糖尿病や、白内障を予防
クロロフィル(0.6~1.0%)……がん予防や、抗潰瘍、消毒をする効果があります。
ミネラル(不溶性)(2%~3%)

スライド5:

お茶には実にさまざまな有用成分が含まれています 茶の主な成分 水溶性成分(20~30%)

カテキン(10~18%)……抗菌・抗ウイルス効果や血糖値を正常化
複合タンニン(0.4%)……抗酸化、抗ガン、胃腸の保護作用
カフェイン(3~4%)……疲労回復、覚醒作用
フラボノール(0.6~0.7%)……血管壁を強化、口臭予防
複合多糖(0.6%)……血糖値を低下させる
ビタミンC (150~250mg%)……抗酸化作用や風邪を予防
ビタミンB2 (1.4mg%)……皮膚や粘膜の保護
テアニン(0.6~2%)……うまみ成分。血圧の降下を促進。(鎮静効果)
γ-アミノ酪酸(ギャバ)(0.1~0.2%)……血圧の降下や脳の代謝
サポニン(0.1%)……油を溶かし、コレステロールの採り過ぎを抑制。
香気成分(1~2mg%)……精神安定効果(アロマセラピー)
食物繊維(ペクチン)(3~6%)……善玉菌を増やし、活動を活発化
ミネラル(3~4%)……虫歯予防、抗酸化など

スライド6:

1.お茶は健康に良いと言いますが科学的根拠は?

心臓を守り、心筋梗塞のときにも被害を小さくします
緑茶カテキン・ポリフェノールの抗酸化作用が心筋(心臓の筋肉)を虚血(酸欠)から守るからです
京都大学にて心筋梗塞や虚血の動物実験で科学的に証明しました(英語論文142番)

スライド7-14:

京大で行った研究のデータの一部を発表しました。以前にアメリカ心臓協会で発表しご評価を頂いた発表です。

緑茶ポリフェが心機能改善 左上:緑茶をまえもって十分飲ませておいたネズミは心臓虚血のあとも十分収縮力を保っていました

右: 緑茶のラットは心臓の浮腫(水ぶくれ)も軽く、機能のみならず構造的にもよく守られていました

左下:緑茶を飲んだネズミは虚血のあとの酸化ストレスが少なく、良く守られるメカニズムの一端を示しました

緑茶ポリフェが心機能改善2

  緑茶ポリフェが心機能改善3

 

 

 

 
 

スライド15:

結語
前もって投与された緑茶ポリフェノールは心筋を虚血・再灌流障害から守った.
この方法は今後応用が可能か

スライド16:

動脈硬化には?
緑茶カテキンはビタミンEやビタミンCの10―20倍の抗酸化作用(強力!)で動脈硬化を予防します。
悪玉コレステロールLDLの酸化を防げばその害が減ります
しかも血管を拡張するギャバも含まれており高血圧にも有用です

スライド17: 抗酸化作用のあるお茶はアンチエイジングにも役立ちます

アンチエイジングにも!
エイジングつまり老化の基本は体内物質の酸化にあります。それを抑えればアンチエイジングになります
フリーラジカルや活性酸素なども抑えます
美容の基本は健康ですから

スライド18:

がんにはどうなのですか?
緑茶カテキンにはがん予防効果や、場合によっては腫瘍縮小効果さえあります
静岡県の茶産地では胃がんの死亡率が全国平均に比べて、極めて低い
油断は大敵ですが、お茶をのみ、健康生活を送り、がんの検診を受けるのが現状でベストでしょう

スライド19:

認知症対策
大自然の中で隠居生活するのは認知症になりやすい!
お茶そのものが良いのですが、加えて
都会で、皆で集まり、一緒に考えたり笑ったりが効果的な認知症対策になります。
人間は社会的生き物で独りでは体調が狂います。
心臓手術の後などもどんどん歩き、語りあうことで早くお元気になられます

これらのように、お茶が心臓はじめさまざまな臓器や全身の健康対策に役立つことを示しました。しかしお茶といえどもすべての病気を予防するだけの力はありません。そこで心臓血管関係の主な病気への注意点や対策をお話しました。

スライド24:

一口メモ 虚血性心疾患 虚血性心疾患は治せる病気です。油断しなければ安全を確保しやすいです
リスクファクターのある患者さんはご注意を
糖尿病、高血圧、高脂血症、家族歴、喫煙
その他 透析、肥満(メタボ)、ASO
痛みはいろいろ、痛くないことも
病気の有無を調べるなら苦痛なくCTで
おかしいと思えばご相談を

スライド33:

一口メモ 心筋梗塞後の機械的合併症
息切れや動悸にご用心
最近心筋こうそくや胸痛の既往があればより注意
とくに心筋こうそくのあと、心雑音や心不全症状が起これば早めにご相談を
心拡大や不整脈があればご注意を
悪くなるときは急に悪くなり死に至ることがあります。早めにご相談下さい

スライド34:

心筋こうそくになってからでも道はある
左室形成術
虚血性心筋症に: 心移植候補者にも恩恵を
VSP(心室中隔に穴!)に:一刻も早い治療が予後を改善
弁形成術 虚血性MRに:殆どの患者さんで形成可能

スライド35-42:
心筋梗塞後の虚血性僧帽弁閉鎖不全症虚血性心筋症に対する心臓手術事例 必要に応じて左室を形成し心機能をアップします。左室形成の成績は大きく改善しました。

瀕死の状態で来院され緊急手術しました。
りっぱに回復・社会復帰されました。5年後の現在もお元気です。

スライド45:

一口メモ 心臓弁膜症
心雑音やレ線・エコーで心拡大があればご相談を
長期心房細動AFも要注意
4次元エコーが威力を発揮します
息切れやだるさ・ふらつき・胸痛を我慢するよりご相談を!

スライド47-51:

複雑僧帽弁形成術の実際を見て戴きました。
がんばって形成術を成功させると、患者さんの以後の生活や寿命が大きく改善します

スライド52-54:

大動脈弁形成術の事例を供覧いたしました。
僧帽弁の形成術より難しいのですが、必要なひとに正しい形成を行えば、大きなインパクトがあります。このケースのように、ワーファリンなしの青春時代を提供できれば大変うれしいことです。

スライド55:

大動脈二尖弁
弁形成によってワーファリンなしの青春が確保できました
二尖弁は人口100人に1人、それ自体、病気ではありませんが、将来病気になる可能性があります
現在、定期健診することが弁膜症専門家の間では勧められています
大動脈にも弱点があることが解明

スライド56:  図 僧帽弁形成完成図

弁形成にこだわる理由
患者さんの人生を変えるインパクトがある
妊娠・出産
激しいスポーツや仕事
QOL
生命予後も変え得る

スライド57:

ハートセンターの 弁形成手術
米田正始の400例近い経験に加え、豊橋ハートセンターの経験を活かして高い形成率を挙げています
僧帽弁、三尖弁はもちろん、大動脈弁にも患者さんにメリットがある場合は行います
術後ワーファリンが無しで行ける利点は患者さんにとって大きいものです
新鋭4次元エコーが威力を発揮します

スライド58:

弁膜症手術-2 弁置換
機械弁:60歳以下で通常の生活を志向するとき
生体弁:60歳以上や、以下でも危険な仕事に従事するときなど。90歳でも可能

スライド63-66:

手術事例提示 (大動脈弁狭窄症
ある意味、最近増加した現代的事例です。85歳男性。高度の大動脈弁狭窄、高度の三尖弁閉鎖不全症心房細動心不全のため緊急入院。
糖尿病、心筋梗塞後、睡眠時無呼吸症候群、呼吸機能障害COPD、腎機能障害などもあり、病気のデパート状態でさまざまなくふうを要しましたが
手術ですっかりお元気になられました

スライド67:

治せる病気で治療を受けずに命を落とすのはもったいないです!!

まずはご相談を!

大動脈弁狭窄症
腹部大動脈瘤
狭心症
多くの僧帽弁疾患
胸部大動脈瘤の大半
その他たくさん

スライド79:

急性大動脈解離:(石原裕次郎さんや加藤茶さんなど)
強い胸痛で発生し大動脈が裂ける
発生2日で半分の患者さんが死亡する病気
しかし生きて手術室へ来て戴ければ95%以上救命する実績を持っています

スライド80:

一口メモ:大動脈疾患
(解離は)強い胸痛・腹痛腰痛があれば直ちにご相談ないし搬送を
手足(時に心臓)の虚血症状で来ることも
胸部瘤では直径6cm、腹部瘤では5cmが手術適応の目安
胸部はレ線(第1弓)、腹部は触診で。エコーも有用

スライド81:

患者さんたちに

心臓血管外科は内科とともに着実に進歩をとげております
弁膜症科、大動脈科としてもお役に立ちます
糖尿病慢性透析あるいは心不全やご高齢などでも、あきらめず、まずご相談戴くのが宜しいかと存じます
ホームページやAll Aboutもご参照を

スライド82:

まとめ again 心臓血管病の必須知識

狭心症・心筋梗塞:3分以上、胸が痛んだり締めつけたりすれば要注意
大動脈瘤大動脈解離: 強い胸痛や背中の激痛は直ちに相談、遠慮なく。声のかすれや胸のレントゲン異常も要注意
弁膜症:息切れやふらつき、動悸はありませんか
閉塞性動脈硬化症:歩くと下肢が痛む時に
これらの兆しがあればご相談下さい

このように、お茶と健康から始まり心臓血管の病気の治療までご質問を頂きながらお話しました。そのあとの懇談会も含めて、多数のご質問やご意見をいただきうれしく思っております。ちょっとしたアドバイスが大きな安全につながったケースもこれまで多くあり、皆さまのお役に立てば幸いです。

有意義な機会と楽しいひとときを下さった水口豊園家元はじめご関係の皆さま、猛暑のなかを勉強に来て下さった多数の方々、そしてお世話いただいた松岡さんに深謝申し上げます。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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火星探査衛星”はやぶさ”快挙の裏話を聴いて

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人工衛星「はやぶさ」が7年の旅を終えて、2010年6月13日、地球に大気圏再突入・帰還した 火星への旅は長いものだったに違いありません
ことはまだ記憶に新しいと思います。ともすれば技術立国ニッポンの将来の技術水準が懸念される昨今、感動をもって大方に受け容れられたものでした。昨日8月28日に、NHK「追跡AtoZ」でその秘密が紹介されました。

60億kmも離れた火星の衛星「イトカワ」に軟着陸し、しかも、7年かけて地球まで「イトカワ」の砂を持ち帰る計画自体がもともと驚きでした。

さすがに多くの困難や問題が待ち構えており、イトカワ着陸時のトラブル、それによる砂サンプル採取の失敗の恐れと燃料漏れ、それによる姿勢制御不能、電源停止による通信途絶と行方不明、予定より長期化したことによるイオンエンジンの故障、それによる地球帰還の困難化、、、予期せぬ問題と多数の二次的三次的トラブルが続いたのは、野心的プロジェクトゆえ理解はできました。

しかしそれに対してJAXAはやぶさチームリーダーの川口淳一郎氏をはじめとする技術者チームの組織的対応・マネジメントは素晴らしく、ありとあらゆる英知を出して問題解決を続けたことが良くわかりました。

雄大なスケールのプロジェクトで幾多の困難が待っていました たとえば通信断絶時に、動かぬ太陽電池がたまたま作動するようになる角度と時期を完全に計算し、1年間はやぶさ からの電波を探索し続ければ、発見できる確率は約60%と、具体的な数値・確率を示して、組織に希望と方向性を与えたことや、

イトカワの砂の採取ができていない可能性が高いとみられていたときに、イトカワの重力と真空の環境を作り出せる装置で実験し、接地後100秒あれば、イトカワの砂が採取できると検証したこと、はやぶさはついに地球へ帰ってきました(図はイメージです)

太陽風を利用した姿勢制御の回復や、壊れたイオン・エンジンの残存部分の組み換えによるエンジン復旧 などに代表されるアイデアの競い合い で危機を乗り越えたことなど、組織力と不屈の科学者・技術者魂の両方を見た思いがします。

  それらの多大な努力の末、ついに地球のそばまで戻ってきたはやぶさから地球の写真を撮り、まもなく消滅するはやぶさに地球を見せてやりたかったと述懐する川口氏にはやぶさへの想い、長年皆で積み上げて来た仕事への熱い想いを感じました。

どこか心を打つシーン。流星のように輝きながら消えて行くはやぶさです。やや右下に見える小さな光ははやぶさが最後の任務として切り離したカプセルです。 最後に、イトカワの砂が入ったカプセルを切り離して大気圏突入を図るはやぶさが美しい星のようになって消えていったシーンは実に感動的でした。かつてスペースシャトルコロンビアが分解して散って行った悲痛な画像を想い出した方もおられたのではないでしょうか。

実は大気圏突入はまだアメリカとロシアしか知らない領域で、日本がこれを一撃でやってのけたことは大きなインパクトがあり、NASAがはやぶさの突入シーンを撮影していたことがこれを物語っていたとのことでした。いわば、太陽系大航海時代に日本の技術ここにあり!と示したシーンでもあったわけです。

技術者魂は医者にも通じるところがあります。心臓がボロボロになった患者さんの心臓手術もはやぶさと同じ努力をすることがあります。先日も心筋梗塞後の心室中隔穿孔つまり大きな心筋梗塞で心室中隔がくさって破裂した80代の患者さんが来られ、それも手術がより難しいタイプの後壁中隔穿孔でした。

重い心臓病では医者が諦めてもダメですし、患者さんが諦めてもダメなのです この心室中隔穿孔の手術は私たちが1980年代から取り組み発表してきたもので、今なお多くの先生方のお知恵を頂きながら改良を加えているものです。とくに後壁の穿孔は昔救命できなかったつらい経験から執念をもって続けてきたライフワークでした。

さまざまな工夫を凝らし、穴も心臓も立て直し、患者さんも危篤状態から回復されました。こうした限界的ケースではあえて完全を狙うより、多少不完全でも着実に生きることを狙う、というより生きるためにそれを狙わざるを得ないと思います。治療を受ける患者さんも、治療をする私たちもどちらもぼろぼろのような感がありましたが、患者さんは見事に期待にこたえてくれました。

昨日のはやぶさの感動秘話を糧として、また明日から患者さんの救命にあたろうと思いました。

2010年8月28日 米田正始 拝

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エコー神戸2010にて

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この7月24日と25日に、エコー神戸に行って参りました。遅くなりましたがその印象記です。なお今回の記事はやや専門的ですので一般の方々にはこうした努力を専門家たちが日々行っているというのを知って戴く程度の流し読みでお願いいたします。

エコー神戸は日本心エコー図学会が主催する夏季講習会のことで、例年神戸・ポートアイランドのポートピアホテルで開催されるためこの愛称がついているものです。
すでに歴史があり今年で19回目となりました。
私は畏友・吉田清先生(川崎医大教授)のご厚意でこの会に以前から参加させて戴いており、すでに10回以上参加しているように思います。

大きな会場は満員御礼状態でした 内容は講習会として多くの心臓関係の先生方や直接エコーを撮ってくれる技師さんたちに役立つ内容ですが、同時に世界の最先端の内容を網羅しているという点でも優れた会と思います。エコー先端技術のお話でもまだ確立していないものはあまり詳しく述べられず、参加して下さった方々が聴いたぶんだけ得するという良心的配慮がなされていると思います。

私は心臓外科医ですので心臓外科手術の観点からなるべくお役立ち情報を提供するように努めています。また外科医のコメントが必要なときになるべく現場の実際をお伝えするようにしています。

今年のエコー神戸では経カテーテル的大動脈弁置換術(略称TAVI)時代つまり従来の外科手術ではなくカテーテル等を用いた大動脈弁置換術を踏まえて、大動脈弁狭窄症の心エコー図診断と手術適応というテーマでシンポジウムが組まれました。大変タイムリーな企画でした。
吉田清先生と私で司会をさせて頂きました。いくつか印象的だった内容をご紹介します。

まず吉田先生が2007年日本循環器学会ガイドラインを簡潔に解説されました。重症の大動脈弁狭窄症で症状がある場合はもちろん、症状がなくても左室駆出率が50%未満に低下したり弁の高度石灰化や急速な進行があれば手術適応になり得ることをお話されました。こうしたガイドラインを私たちは遵守して手術や治療を行いますが、循環器内科専門医の先生でもこのガイドラインをご存じない方があり、さらなる啓蒙活動が必要と思いました。

ついで大阪大学の山本一博先生が大動脈弁狭窄症のエコー評価について解説されました。カテーテルでの圧測定よりもドップラーの方が正確である理論的背景を説明され皆さん大変参考になったと思います。また圧の回復現象を説明され、この点でもカテーテル圧測定では誤差が生じることが判りました。同じ内科でも弁膜症はやはりそれに詳しいエコー専門家がベストと感じました。

ついで山口大学の村田和也先生が大動脈弁狭窄症診断の落とし穴を話されました。とくにParadoxical Low-Flow, Low Gradient ASつまり心拍出量が少ないため、ASの圧較差が小さくなり、実際よりも軽症と間違ってしまうことです。これは心臓外科医とくに心不全や低心機能例を手術している人たちにはおなじみのことですが(結構苦労して治すこともあります)、EBMデータとエコーデータを駆使してきれいに解説されました。

川崎医大循環器内科の大倉宏之先生も同様の視点から心エコーの有用性をさらに掘り下げて考察されました。Peak-to-peak 圧較差と瞬時最大圧較差の違いと、さらに圧回復現象をお話されました。圧回復現象は大動脈弁を超えたばかりの地点での血圧よりも上行大動脈での血圧が高くなる現象で、そのためにカテーテルは圧較差を実際より低く見積もってしまうとのことでした。思えばこれは生理学の基本つまり健常者では末梢へ行くほど血圧が上がることと一致する、自然なことですが、多くの方々はそこまで考えていなかったと思います。この圧回復現象を考慮した指標、ELCoを説明されました。
エコー研究の深さとともに、レオナルドダビンチが考察したバルサルバ洞の構造の妙にあらために感心しました。

左ミニ開胸して心尖部から入れるカテーテル弁の一例です 私(米田正始)はカテーテル弁の時代を目前にして、大動脈弁狭窄症ASへの外科治療は単に弁を換えているだけではないことをお話しました。
重症ASは突然死などが起こり易く、胸痛や心不全あるいは失神発作がでている患者さんはそのままでは1年以内に多くが死亡されますが、手術すればほとんどが長期生存されます。手術のメリットが大きな病気と言えるわけですが、超高齢や全身状態が悪いなどのケースではカテーテルで挿入する生体弁、いわゆるTAVIが役立ちます。欧米ではすでに多数行われており、日本でも臨床治験が始まります。
ただカテーテル弁はまだまだ合併症が多いため、従来型の手術ができないときに限られ、狭小弁輪や感染性心内膜炎の患者さんなどでは今後も従来型手術が活躍するでしょう。その中で心エコーの役割はますます大きく、治療方針決定の要であることをお話しました。

オハイオ大学のVannan先生は大動脈弁治療における3Dエコーの有用性を講演されました。大動脈弁は弁輪、弁尖、バルサルバ洞、そしてST junctionから上行大動脈までの多数の部分から成っており、3Dエコーはそれぞれの情報を与えてくれるため、手術方針の決定とくに弁形成や大動脈基部再建には極めて有用です。それらを美しいエコービデオで解説され大変参考になったと思います。

Vannan先生のおはなしを受けて、コロンビア大学のHomma先生は経皮的大動脈弁置換術(カテーテルによる弁置換)における心エコー図の役割についてお話されました。
そのあと症例検討会が行われ、講演された先生方が興味深い症例が提示されました。
中にはカテーテル弁置換で亡くなられたケースを正直に出された先生もおられ、立派でした。やや大きい左冠尖がカテーテル弁のため左冠動脈入口を閉塞したそうです。新しい治療法ではこうした不運なケースが世の中に必ず存在し、反省検討しそれへの対策を立てることで治療法が改善し確立して行くからです。

私は高度のASに生体弁で大動脈弁置換術を施行したところ、術前から軽くあったIHSS(心室中隔の肥厚)が顕著になり僧帽弁逆流が発生したため、ただちに生体弁越しに異常心筋切除を行い、逆流も消失し元気に退院されたケースをご紹介しました。こんな恐ろしいことが起こるのか、しかし経験豊かなチームは良いねというコメントを戴きました。

エコー神戸では1日目の午後に主な症状からアプローチする心エコーの方法にたいする解説がありました。たとえば呼吸困難や胸痛、失神などです。

午後の後半には心不全エコーのセッションがありました。
兵庫医大循環器内科の増山理先生は収縮不全と拡張不全についてお話されました。
収縮不全は治療法がいくつもあり、心臓外科の観点からも僧帽弁や左室などを治すことで改善する心不全が少なくなく、患者さんにも元気になりましたと喜んで頂けることが多いためそう悪くはありません。
しかし拡張不全はまだまだ問題課題が多く、外科的にも手が出せないケースが多い、未開の領域と思います。ご講演でもこの20年以上の間、目立った進歩がなく今後さらなる努力が必要であることを強調しておられ、同感でした。個人的にはHGFを用いた再生医療で心筋の線維化を軽減することが有用というデータを持っており、臨床応用への努力をしていますが、日本では時間がかかります。

Yonsei大学のHa先生は収縮性心膜炎の権威ですが、その診断をとくにエコーなかでも組織ドップラーエコーによる診断を詳述されました。一見目立たない病気ですが、正確に診断しないと予後も悪く症状も強いため、この領域のエコーが進歩し確立すれば患者さんへの恩恵は大きいと思いました。

島根大学循環器内科の田辺一明先生は心房細動例での心機能評価法をお話されました。一拍ごとに状態が変化する心房細動例では多数の拍動の平均値でアプローチするか、先行R-R間隔が正常のときの心機能を調べるなどが一般的と思いますが、とくに左室拡張機能を評価するときの盲点を解説されました。

Vannan先生ついで大阪大学の中谷敏先生が心室再同期療法CRTにおける心エコーの役割やコツをお話されました。
心不全の治療に力を入れて来た経験から、CRTの効果はけっこう良い場合があり、CRTのおかげで術後強心剤の点滴から離脱でき、元気に退院されたなどの経験があり関心をもって拝聴しました。A-V delayつまり心房と心室のペーシングのタイミングの調整が重要であることを改めて認識できました。最近はそれに適したソフトが使えるようになりありがたいことです。またA-V delayについで、心拍数の調整も重要であることをお話されました。

エコー神戸は2日目も有意義なセッションが続きました。午前中の弁膜症と先天性心疾患のセッションは、成人先天性心疾患の手術に力を入れてきた経験からも興味深く拝聴しました。
午後の虚血性心疾患への負荷心エコー図も有用なセッションと思いましたが所用のため参加できず残念でした。

総じてエコー神戸は今年も賑やかで有意義な講習会でした。懇親会も例年どおり賑やかでした。外科の集まりとはまた違う、どこかアットホームな雰囲気と、低侵襲検査法のためか(?)、何となく穏やかなやさしい空気がこの会の特長と感じました。来年もまた新たな成果と楽しいひとときがもたれることを祈ります。会長の吉田清先生、お疲れ様でした。写真を提供して下さった川崎医大の斎藤顕先生、ありがとうございました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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2010年8月10日 ハートの日

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ハートの日2010ポスター 今年も恒例のハートの日 in Nagoya、つまりハートの日の名古屋バージョンが名古屋国際会議場で8月10日(本日)開催されました。

雨の中を600名以上の方々がホールを埋めるほどご参加下さり、厚く御礼申し上げます。

ことしは昨年に引き続き、いくつかの講演と西川流NOSS踊りの実演と指導が行われ、大いに盛り上りました。

  まず愛知県内科医会会長の太田宏先生のご司会にて、名古屋ハートセンターの外山淳治院長の百寿者に学ぶ「健やかに老いるとは」という講演がありました。外山院長は知る人ぞ知る、スポーツマン・健康オタクで医学的観点から長寿の秘訣を解説されました。圧巻だったのは最後の部分、妻に先立たれた夫は早死にする、しかし夫に先立たれた妻は長生きする、というデータでした。男性のちっぽけさと言いますか女性の偉大さを思い知らされるショッキングな講演でした。同時に女性は長生きするが、認知症も多く、動かない状態の方が多いというのも、うーんと唸らせるお話でした。それほど女性の生命力は強いとも考えられ、これをさらに活発な生活へと結びつける工夫が大切とも感じました。

余談ながら外山先生はハートの日の直前に、石垣島へ行かれダイビングしてマンタの写真をを撮ったり、鳥海山に登ってあわやの悪天候の中を立派に帰還されたりと相変わらずの自然派の面目躍如たるところを講演の中でも一部披露されました。多数のご参加を戴きました

続いて中日病院の池田信男院長先生のご司会にて、西川流第三代家元の西川右近先生のNOSS踊りをめぐっての興味深いお話がありました。日本伝統舞踊が現代にも立派に通用するという以上に西洋医学を上回るような特長を持つことが判り、心臓や血管の治療にますます応用が効きそうだと確信しました。つま先が下がるドロップフットは近年、高齢者の転倒の原因になりやすく、私たちも指導に限界を感じることがあるのですが、NOSS踊りをしっかりやればかなり改善しやすい、と判りました。また体の平衡感覚などの養成にも役立つことがわかり伝統は伊達じゃないと感心しました。

DSC_0429 中京大学体育学部長の湯浅景元先生はそれらを科学的に解明するお話をされ、大変明快で判り易い内容でした。湯浅先生は日本の宝、フィギュアスケートの浅田真央選手や安藤美姫選手らを育て、またハンマー投げの室伏広治選手を指導されるなど、日本スポーツ界の発展に多大な貢献をして来られました。その湯浅先生がNOSS踊りを解析されたのは説得力のあることでした。さらに湯浅先生と西川先生の軽快なトークでは早いテンポで踊りの特長を引き出す面白い企画でした。西川先生があぐらの体位からすっと力を入れることなく立ちあがるお姿に、名古屋おどりの真髄の一部を見た思いがしました。

それからNOSS踊りの実演と講習が講演会場と練習フロアの両方で行われ、多数の方々が参加され関心の強さをうかがわせました。大変盛り上がり、うれしい限りでした。

DSC_0519 休憩をはさんで、名古屋第二赤十字病院の平山治雄先生のご司会で松原徹夫副院長の循環器内科のお話がありました。平山先生は最近の循環器科の傾向をお話されましたが、さすが、全身医療にふさわしい、患者さんの真の健康を目指したご姿勢にあらためて感嘆しました。
とくに何でもカテーテルという現代の風潮に警鐘を鳴らし、

1.カテーテル治療では患者さんの生存率を改善できないし、
2.生活の質も改善できない、さらに
3.運動能力さえも改善していない、

したがって症状があまりない患者さんへの予防的カテーテル治療はもはや反省期に入っている、というのはまさにEBM(証拠にもとづく医学)データにもとづいたお話でした。カテーテル命の先生方には手厳しい話でしたが、こうした慎重かつ良心的なお話を依頼すること自体がハートセンターや鈴木孝彦先生の懐の大きさと感心しました。

松原先生はカテーテル治療PCIのエキスパートですが、平山先生のお話を受けて冠動脈疾患の予防にまで言及され、幅広くかつ良心的な治療内容を披露されました。しかしCTO(慢性完全閉塞)を突破する技術はいつ見ても見事でした。

最後に服部病院特別院長・藤田大学名誉教授の丸田守人先生のご司会で私、米田正始副院長が心臓血管外科の現況をお話いたしました。丸田先生はアメリカ仕込みの本格派外科医で、私の患者さんのご家族で切除不可能と言われたがんを完全切除し、治して下さったこともある先生です。藤田大学を退官されてからもそのメスさばきは健在です。司会して戴き光栄でした。

私のお話はおよそ次のようでした。冠動脈バイパス手術はNOS手術とも言え、バイパスに使う内胸動脈グラフトはNOS一酸化窒素合成酵素を持ち自ら一酸化窒素を造れるため、動脈硬化になりにくく、若い血管であり、そのためにバイパス手術後は長年にわたって心臓は安定し、強いお薬も必要ないことをお話しました。

また高齢者弁膜症たとえば大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術や、若年者の僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術の発展ぶりを見て戴きました。10年以上もつ大動脈弁形成術もご紹介しました。さらに心筋梗塞でだめになった左室を修復する左室形成術の実際のビデオを見て戴き、決して短絡的に諦めていけないことをご説明しました。

最後に急性大動脈解離心房細動でもそのほとんどが解決できることを示し、患者さんには早目のご相談をお願いしました。診察の結果、大きな病気はないということになってもそれは決して恥ではないことを強調しました。

DSC_0483 以前名古屋ハートセンターにて手術させて頂いた患者さんから花束を頂いたり、久しぶりの再会を喜んで頂いたり、個人的にもジーンとくることの多い楽しいハートの日になりました。

会が終わったあと、打ち上げの懇親会がありました。皆で賑やかに飲み食べし、労をねぎらいました。

来年はもっと大きな会場を確保し、今年のように満員御礼で多数の参加希望者をお断りすることのないように全力を上げる所存です。今回、参加できなかった皆さまには心からお詫びするとともに、来年それを挽回致しますので、今後も是非よろしくお願い申し上げます。

最後に、お盆休みの中を協力して下さった名古屋ハートセンターの医師、看護師さん、MEさん、放射線技師さん、栄養士さん、事務職の皆さまたちを始め、支援して下さったメーカーの皆さまに心から御礼申し上げます。

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ワールドカップ2010での雑感

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ワールドカップ2010が佳境に入り、ベスト4が出そろい山場を迎えています。

と言っても私(たち)には岡田ジャパンが善戦健闘し去って行ったときから力が抜けてワールド 岡田Japanは数々の感動を残して去りました カップも何となく終わったような気持ちになってしまっています。国際的視野をと言いながらこれも人情なのかも知れません。

岡田ジャパンは多くの見せ場を造り、私たちを感動させてくれました。皆さん感謝と満足を抱いていることと思います。

ただ前向きに考えると、評論家は守りの充実に比べて攻撃力の弱さを指摘しています。たしかにサッカーの素人である私が見ても、あれっと思うようなシーンが時々あったように思います。うまい形で相手ゴール近くに攻め入るところであっけなく相手方にボールを取られたり、ここだというところで陣形ができていなかったり。そこは歴史ある競合相手でサッカー命の人たちとの試合であるため致し方ないのでしょうか。

小さいころから本格的にサッカーをやるようにというご意見も もっと根底的な観点から、その道に詳しい人たちの議論では、サッカーボールが体の一部になるほどにはなじんでいない、まだまだサッカーとの接点が少ないという意見もあります。こどもたちが自由にサッカーを楽しむような広場や空き地が日本には少ないという指摘も耳にします。

そんな議論を聴いていて、ふと外科医の教育、とくに心臓外科医の教育はと考えました。

日本の心臓外科修練体制はまだまだ国際水準には立ち遅れています。個々の若手外科医は優秀で熱心です。若手のためのチャレンジャーズライブの審判をやっていても国際レベルと比較して決して見劣りません。しかし腕を磨く場が少ない。

かつてアジアは欧米豪と比べてまだまだだなあーと仲間内で語っていたようですが、最近の 今やアジア諸国は外科医教育でも先進国レベルに達しつつあります。 情勢は日本以外のアジアは急速に欧米に比肩する立派な制度を確立しつつあります。若手が十分な経験を安全に積み、一人前になって行く、その教育プログラムに身をおいて精進しておればおのずと立派に育つ、そういう制度ができつつあります。

それを支えているのが施設集約で、アジアの大学病院や基幹病院・専門病院では年間1000例前後が珍しくありませんし、大学病院では心臓センターのような形で独立して柔軟に動けるようになっています。自分の眼でみて、韓国でも中国でも台湾でもマレーシアでもシンガポールでもタイでもそうでした。一体日本より遅れている国がどこにあろうかという実感を持ちました。10年近く前にベトナムのホーチミン市(旧サイゴン市)の依頼を受けて私たちが心臓外科を立ち上げたチョーライ病院も今や年間1000例の立派な施設に成長しています。

それに比べて日本ではどうでしょうか。近年は日本心臓血管外科学会や日本胸部外科学会でも前向きに検討され、施設集約という言葉が半ば合言葉のような位置を得てようやくコンセンサスができたという感がありますが、一人当たりの手術数では海外に比べてあまりに少なく、それはとくに大学病院において顕著です。本来は大学病院こそ腕を磨ける環境というのが世界の常識なのですが日本では正反対になっているのが残念です。

といって大学病院で頑張っている先生方に非があるのではなく、大学病院の仕組みに問題がある、まさに構造的問題です。とりあえず市中病院とくに構造的問題が少ない私たち民間病院が頑張るしかないと開き直っています。とくに大学と協力し、偏狭な学閥を脱却して全国レベルで有意な人材をそだてる、そういう空気と歴史を創っていくことが大切と思います。

サッカーの将来性ある人材を見ていて心臓外科の有為な若手をつい想い、駄文をものしてしまいました。ご容赦下さい。

米田正始 拝

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心血管再生先端治療フォーラム

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心臓外科医の日記 第10回心血管再生先端治療フォーラム

 

大学を去ってからは張り切って臨床専門の毎日を送る私ですが、世話人ということでこの再生フォーラムには引き続き参加させて戴いております。難病を何とかして治したいという気持ちからタイで再生医療を何とか続けたり、アメリカの再生医療ベンチャー会社と協力しているということからも大変参考になっています。

 

今回の日記は先端医療関係とはいえ、やや専門的になりました。一般の読者諸賢には内容よりもさまざまな努力と進歩がなされていることを感じ取って頂ければ幸いです。

 

今回は名古屋大学循環器内科教授の室原豊明先生の当番で例年どおり東京で開催されま 再生医療はさまざまな困難を乗り越えつつ進化をつづけています。図はイメージです。 した。世話人の京都府立医大循環器内科の松原弘明先生や慶応大学循環器内科の福田恵一先生、大阪大学の森下竜一先生、先端医療センターの浅原孝之先生、東北大学循環器内科の下川宏明先生らをはじめとするそうそうたるメンバーを始め、いつもながら多数の熱心な先生方が参加されました。

 

今年はとくにユニークな研究の発表があり、また招請講演のエモリー大学レファーDavid Lefer教授の新展開の研究のお話もあり、大変有意義でした。

 

心臓外科臨床医としていくつか印象に残ったものをご紹介します。

大阪にある田附興風会北野病院循環器科の宮本昌一先生、野原隆司先生らのグループは加速ベッドというある種の振動ベッド療法をヘパリン使用と併用して心臓の血管新生治療を行い、心筋虚血や心機能の改善を報告されました。野原先生らは以前からヘパリン運動療法などを用いた血管新生治療の実績が豊富で、それをさらに進められたわけです。この加速ベッドは数年前にアメリカで少し話題になった方法ですが、それをヘパリン使用によってさらに効果的なものにされたようです。ヘパリンによってHGFという血管新生たんぱくが増えますし。私たちが以前から試みているbFGF徐放による動脈新生治療と併用してみたく思いました。

 

佐賀大学の中山功一先生、森田茂樹先生、野出孝一先生らのグループは移植細胞を三次元的に組み立てる方法を開発されました。これまでは細胞を増やすことはできても、臓器を念頭に置いた3次元的組み立ては困難でした。東京女子医大の岡野先生らの心筋細胞シートなどのユニークな試みもある程度の厚さで壁に当たっていた感がありました。それを佐賀の先生方は生け花の剣山のような型をもちいて細胞を3次元的に組み立てることに成功されたのは大変立派と感嘆しました。心筋細胞は相互に接着する力があるため心室壁の3次元構造を再現することも可能で楽しみです。

 

慶応大学循環器内科の下地先生、福田恵一先生らのグループはES細胞やhiPS細胞(一世を風靡したヒトiPS細胞です)から心筋細胞を誘導するのにG-CSFが有用であることを示されました。福田先生は心筋細胞誘導の世界的権威ですが、これまでのノウハウを活かしてhiPS細胞をも使えるものにされたことは以前の研究会でもお聞きしていましたが、あらためてその力量に感嘆しました。あのhiPS細胞が一歩ずつ臨床応用に近づいていることは素晴らしいことです。

 

岐阜大学循環器内科の川村一太先生・湊口信也先生らのグループはマウス下肢虚血モデルで計画的瀉血(血液を抜くこと)が血管新生に役立つことを示されました。瀉血によって血中のエリスロポエチンが増えることでその血管新生作用が発揮されるというわけです。うまくやれば簡単に効果的血管新生ができる可能性があり、ユニークな発想に感心しました。普通は瀉血といえば貧血を連想し、貧血は虚血を悪化させるのが通常ですので、慧眼と思いました。

 

久留米大学循環器内科の小岩屋宏先生・今泉勉先生らのグループは血管内皮前駆細胞EPSに磁性体粒子を取りこませ、かつ虚血部に人工磁場を造ることで、EPSが虚血部に集まるように工夫した血管新生療法を発表されました。こうした局所集中型治療は効率が良く安全性が高いため私たちもbFGFの徐放などで試みて来ましたが、EPS細胞でも実現されたのは素晴らしいと感心しました。

 

東北大学循環器科の松本泰治先生・下川宏明先生らのグループは大動脈弁狭窄症で壊れた大動脈弁が、左室側ではなく大動脈側の内膜剥離や障害が多く、そこでは血管内皮前駆細胞EPCが少なくTRF2の発現も低下していることが示されました。過去にアメリカや日本で大動脈弁を削ったり肥厚部分を切除する試みが行われ、良い結果が出なかったことがなるほどとうなづける内容でした。将来の弁膜症治療の土台になる研究と思われました。

 

他のご発表もいずれも興味深く将来性のあるものと思いましたが、ここでは臨床医として応用できそうなものの一部を記載致しました。

 

一般演題の発表につづいて、エモリー大学のレファー教授の講演がありました。硫化水素H2Sの臨床応用についてのお話でした。

 

この20年ほどの間に解明開発されたガスで心臓血管病の治療に使えるものとして一酸化窒素NOや一酸化炭素COが有名ですが、H2Sはそれに続く画期的なものといえそうです。抗酸化作用、抗炎症作用、アポトーシス防止作用、血管新生作用、ミトコンドリア機能保護作用、心筋保護作用などのさまざまなメリットが示されました。それらの結果、心筋梗塞後に梗塞範囲を減少させたり、心不全時に心機能を保護するなどの改善に結びついたようです。

 

オフポンプ冠動脈バイパスで有名なパスカスJohn Puskas先生らと同じチームで、これからの展開が楽しみです。ちなみに日本の温泉でH2Sが成分の一つになっているところがあるから一度招待しましょうかと持ちかけたところ、受けました。あの臭気ある硫化水素が意外に体に良いとは、昔の人たちの知恵には感心してしまいます。

 

フォーラムの締めとして兵庫県立尼崎病院院長の藤原久義先生が挨拶をされました。かつてこの病院の心臓血管外科をより活発にすべく努力した際にサポートして下さった先生なので大変懐かしく思いました。

 

再生医療は多くの発見や発明に支えられ、着実に進化を遂げて来ましたが、まだまだ未解決の問題も多く、簡単な領域ではありません。しかしこうした立派な仕事を拝見し、これからの展開が期待できると思いました。私自身もせっかくここまでやってきた再生医療をタイや日本でさらに進める努力を続けようと教えられたような気がします。お世話になりましたファイザー製薬の皆さま方に感謝申し上げます。

 

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古巣トロントで充電

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先週1週間、トロントのトロント総合病院(Toronto General Hospital)で充電して来ました。

かつて、20年近く前に6年間修業させて頂いた病院で、当時のレジデント仲間や指導していた学生が成長して教授や准教授になっており、恩師David先生らも一度遊びにおいでと言ってくれるので共同研究と私自身の生涯研修ということでお邪魔しました。

オンタリオ州会議事堂から見たトロント総合病院です。見えている建物のほとんどが病院です。 病院自体がずいぶん拡張や改修され大規模になっていたため最初は道に迷うこともありましたが、それなりに迷路の攻略法を覚え、そこそこ自由に動けるようになりました。

私が修行していたころお世話になった医師、技師、看護師さんたちが多数残っておられたのはうれしい驚きでした。医師は同業ですから学会等でちょくちょく顔を合わす機会があるのですが、看護師さんたちの多くとは本当に20年ぶりでした。しかしそのほとんどの方たちが私の名前を覚えていてくれて、感動してしまいました。あれから20年!と皆時間の経つ速さに驚いていました。あの頃みな若く可愛い看護師さんたちだったのですが、今はみな指導者的な立場となりりっぱなプロで、しかししばらく話しているうちに20年前の雰囲気にもどるのが不思議でした。

病院の職員が長続きするというのは素晴らしいことと思いました。これは待遇や条件もさることながら、世界のトップレベルの医療を提供するチームの一員であるという誇りが大きいと感じました。人間を動かす最後の切り札は誇りや喜びであると浅学ながら信じるものです。

北米の病院は国立大学病院といえども時代の動きに俊敏で、その進歩の速さは日本の民間病院以上です。あらためて感心しました。

たとえばカテーテルベースの生体弁手術(たとえばTAVI・経カテーテル的大動脈弁植込術)のめどが立つと、カテーテルや高性能CTまで装備し ハイブリッド手術室。つまり心臓手術とカテーテル操作の両方ができる部屋です。 た巨大な手術室を造り、すでに実績をあげていましたし、再生医療も大きなセンターができ、多数の研究者や技師さんらを擁して活発に臨床治験を推進するといった具合です。

1週間の滞在中に15例ほどの心臓手術を見学できました。洗練された僧帽弁形成術や、大動脈基部手術弓部大動脈手術小切開手術冠動脈バイパス手術、そして新しいカテーテルによる弁置換手術(TAVI)などでした。その間、雑談を含めたディスカッションというよりおしゃべりの連続で、いくら昔からの友達だらけとは言え、ちょっとはしゃぎすぎたと反省しています。しかしおかげでさまざまな手術や治療の良い点や弱点、欧米の最近の傾向などを具体的に学び確認できました。また日本でのさまざまな努力をお話し、それは使える!とけっこう受けました。このように遠慮なくものが言えて初めて切磋琢磨できるようです。

第二の故郷のようなところですので、病院関係や友人関係などで毎日何らかのパーティを開いていただき、感謝の塊になっていました。皆さまありがとうございます。また日系の永住の友人たちにも同様にして戴き、本当にうれしく思いました。お礼にひとつでも何かお役に立てるよう、健康相談を行いました。最近私が力を入れている科学的ダイエット法(低炭水化物・高脂肪食)が結構受けました。また私のこのホームページの写真ギャラリーを見て下さっている方がありがたいコメントを多数下さいました。

カナダの医療は原則無料つまりすべて税金でまかなわれています。貧富の差なく誰でも医療を受けられるという点では今や日本を超えて世界一の制度と思いますが、それを支える国や病院の努力は大変なものです。こまかい薬や物品の一つ一つにまで規制があり、倹約また倹約です。私が修行中だった20年近く前からこの傾向はあり、たとえばがんの放射線治療を6週間から4週間に削られたり、心臓手術後の予防的抗生物質を術後3日間を1日半に抑えられたり、なかなか大変でしたが、それはいっそう厳しくなっています。

何事も社会全体の英知と協力を通して皆で立派なものを創り支えるという姿勢が大切なのだとあらためて思います。

タイムトンネルのような、夢のようなトロントでの1週間でした。自分がどこから来て、どういう努力をし、どこへ行きたいか、あらためて判ったような気がします。トロントの皆さん、そしてこの出張を支えて下さった名古屋の皆さん、私が帰国するまで待ってくれていた患者さんたち、ありがとうございました。

平成22年6月22日

米田正始 拝

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ツイッターのお勧め

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最近、巷でツイッターなるものが流行しつつあり、皆さんの中にもすでにそれをやって楽しんでいる方もおられるかも知れませんし、関心をお持ちの方もあるかも知れません。

ツイッターとは「つぶやく」という意味で、ネット上で短く発言するのです。

 

それをフォロー(聞いてくれる、読んでくれる)する人たちがいてくれて、お互いコミュニケーショ ツイッターではいつも皆が集まっていろいろ雑談している雰囲気になります ンが出来上がります。さまざまな人たちの意見が、さまざまなテーマで聞けて、学ぶことが多く、ニュースなどは迅速で話題豊富にもなります。


医療や医学の問題を真面目に論じることもあり、役立ちますし、そこからさらに調べ物をすればかなりの情報となります。話が心臓外科手術にも及ぶことがあります。


皆が自由に発言できるという意味ではネットの掲示板に似ていますが、その方をフォローする方にしか見えないため、掲示板よりは仲間内での発言となります。また多くは実名かそれに近い自己紹介をしているため、発言もそれだけ責任のある真面目なものが多く、根拠ない誹謗中傷は稀で、社会悪も生まれにくい構造になっています。

ツイッターの発言は、140文字以内で書き込むのですが、それだけに手軽に、思ったことや感じたことを言えるのです。140字は読むのにちょうど便利で、慣れれば結構多くの情報が入ります。

最初はフォローしてくれる人がゼロから始まりますので、誰も見てくれないということからつまらなく思えるかも知れません。お伝え頂ければ私もフォローさせて戴きますので、そこから徐々に増えて行き、面白くなるでしょう。

 

やってみようと思われる方は以下のようにしてみて下さい。

1.まず私のHP、心臓外科手術情報WEB(旧、心臓血管外科情報WEB)のトップページ右段中ほどにある「Twitter」をクリックして下さい。それでTwitterのページに入れます

2.そこで登録をして下さい。画面の指示に沿えばできます。
それから上段の「友達検索」をクリックして下さい。そこでたとえば「米田正始」と入力すればツイッターの私のページへ行けます。

3.そこではこれまで私がつぶやいた事や、他の方々のつぶやきで面白いものを別の方々に披露するリツイートした内容が並んでいます。私なりに皆さまにお役に立つものをと考えて出しています。

4.そこで「フォローする」というボタンを押せば、それ以後は私のつぶやきが画面に自動的に出るようになります。見つけ次第、なるべく早く、私からもフォローします。これをりフォローと言います。それでお互いのつぶやきが見えるようになりますし、ダイレクトメッセージのところをクリックすれば直接言葉のやりとりもできます。

今後は仕事の合間を使ってホームページHP、メルマガ、ツイッターなどを有機的に組み合わせ、情報や交流の幅を広げたく思っております。

TwitterはこれまでのHPやブログ、メルマガ、掲示板の良さを取り入れ、弱点を補った新しいITツールです。共に楽しみませんか。

米田正始 拝

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フィンランドの議論ルール

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「はてなブックマークニュース」に次のような興味深い記事が載っていました。抜粋を示しますと、

フィンランドは教育先進国で、学習到達度調査(PISA)において、毎回上位にランクインし「学力世界一」と言われる国です。そのフィンランドの小学生が考えた「ルール」が、今話題になっているそうです。

『図解 フィンランド・メソッド入門』という本があります。この中でフィンランドの小学5年生が フィンランド式 議論のルール 作ったとされる10個の「議論のルール」が紹介されているそうです。

 

1. 他人の発言をさえぎらない

2. 話すときは、だらだらとしゃべらない  

3. 話すときに、怒ったり泣いたりしない

4. わからないことがあったら、すぐに質問する  

5. 話を聞くときは、話している人の目を見る

6. 話を聞くときは、他のことをしない

7. 最後まで、きちんと話を聞く

8. 議論が台無しになるようなことを言わない

9. どのような意見であっても、間違いと決めつけない

10. 議論が終わったら、議論の内容の話はしない

 


これらのルールに背くと、「ルール違反しているよ」と注意されるそうです。

このルールを拝見し、私は反省することしきりでした。周囲の人たちにも是非参考にして頂きたく、このブログにも掲載しました。

良い議論をしたいものです 私の乏しい経験の中では、大学教授とくに功なり名を遂げた名誉教授レベルの先生方は、含蓄ある話をして下さる方が多い半面、7.ができない方が散見されるように思います。こうした方々はある意味、優秀すぎて凡人の話は結論まで予知できていて、ゆっくり聴くのが苦痛なのでしょうか。

実力派で腕に覚えのあるインテリは1.の問題が見られることがあります。賢い女性で2.のお付き合いをさせられ苦しかった覚えがあります。例外だとよいのですが。

5.はシャイな日本人ではありがちではないでしょうか。恋愛ドラマでも大事な話をお互い反対方向を見ながら真剣に論じているシーンは欧米人には奇異に感じるのではと思ったことがあります。

熱血漢で自力で何でも切り拓いて来た創業者タイプの方では9.逸脱のパタンが時にあったように思います。議論内容があまりに乏しく欲求不満が貯まりがちな官公庁タイプの会議ではついつい8.のパタンが頭をよぎったものです。

私などは頭の切り替えが遅く、いつまでも考え込んで10.のパタンに陥ったことがちょくちょくあったことを猛反省しています。心臓手術のときは十分な考察だけでなく頭の切り替えととっさの的確な判断が大切ですから、議論でも同様にすべきと思いました。

小学校の時からこうした議論の正しい方法を学び磨けば、その後の人生の中でずいぶんお互いの理解が深まり楽しく仕事や遊びができるのではないかと思いました。皆さんは如何でしょうか。

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元・京都大学医学部教授
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