第92回アメリカ胸部外科学会AATSにて――その2

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左が今回の会長・Craig Smith先生、右が来年の会長・畏友 Schaff先生です冠動脈関係では、バイパス手術CABGがPCI治療に対して成績が有意に良好であることがSyntaxトライアル4年目のデータでほぼ確立し、外科の盛り返しの雰囲気がありました。

まもなく5年目のデータがでればその差はさらに広がりそうで、CABGの復権は本物になるかも知れません。

同様のことがTAVI(またはTAVR)でもあり得て、その旗手がsutureless valveなのかもしれないと思いました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に代表される機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)の治療では僧帽弁クリップが外科治療(僧帽弁形成術)にそん色ないとするエベレストトライアル結果が報告され外科が少し失望しているように見えました。

私はこの考え方には賛同できません。

十分な効果がないとわかっている僧帽弁輪形成術(略称MAP、弁輪という弁の付け根を治す心臓手術です)とクリップを比較されるのは遺憾です。

すでにMAPよりはるかに弁逆流解決に有効な方法が外科からはいくつも発表されています。

その中でもっとも難しいと言われる後尖にも効きしかも左室機能を改善させる方法(Papillary Heads Opimization乳頭筋ヘッド最適化と呼んでいます)を発表している立場からコメントしようと思いましたが、時間の都合でできませんでした。

次の機会に皆とディスカッションしたく思いました。

弁膜症関係では学会直前のskill courseで大動脈弁のルート拡大デービッド手術、より低侵襲な再手術の方法などが講演されました。

僧帽弁関係でも通常の僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成や虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成、ロボット手術などが論じられました。

その他心房細動に対するメイズ手術IHSSに対する心室中隔心筋切除術なども講義がありました。

あまり新しいものはありませんでしたが、地道が進歩が感じられて良かったとおもいます。

大動脈関係ではステントグラフトEVARの講演がありましたが、大きな変化はなく、今回の学会全体としてそれほど多くの内容はありませんでした。

これはこのAATSの直前にニューヨークで恒例の Aortic Symposiumがあったことも関係していたのかもしれません。

いずれにせよ内科と外科がこれまでのような独立独歩ではなく、常に歩み寄り、常に相談して個々の患者さんにベストの治療をオーダーメイド的に創るというハートチームの発想が冠動脈だけでなく弁膜症、大動脈などすべての領域に広がった感があります。ilm20_ae04023-s

上記のTCT@AATSの最後の発表4題は有力施設で内科と外科がどのように協力しているか、どういう組織でどういう運営をしているかの報告がありました。

Cleveland Clinic クリーブランドクリニック、Vanderbilt バンダービルド大学、Columbia コロンビア大学、そしてPennsilvania ペンシルバニア大学からの報告でした。

連携もここまで来ましたという良いセッションだったと思います。

心不全の Heartmate領域では補助循環がさらに進化を遂げ、ますます小型化しDestination therapyが一層改善した感があり、まもなく心移植の成績に並ぶ気配さえ感じられました。

軸流ポンプや遠心ポンプを中心とした非拍動性の小型ポンプでさらに改良されそうな雰囲気でした。

2日の昼に国際交流の委員会が開かれ、AATSの重鎮の方々やアジアやヨーロッパの先生方とともに参加しました。

これからAATSはより国際学会としての性格を濃くする方向が示唆され、教育でも国際フェローが検討され、好ましいことと思いました。

IMG_5136b学術的なこと以外では、カリフォルニアらしく会員懇親会がワインの当て比べ会を兼ねたパーティで(右図)、

それも恐竜や水族館が併設された博物館で行われ、遊び心のある懇親会でした。

今回の会長であるCraig Smithと来年の会長Harzell Schaffから挨拶があり結構力が入っている様子でした。

個人的にはトロント、スタンフォード、メルボルンの恩師や仲間と歓談できたり、日本を含むアジアの先生方やヨーロッパの友人らと話できたのがうれしいことでした。

またかつて京大の研究室でお世話させて頂いた王 健先生がテキサスでの成果をもとに立派な発表をしてくれたり、かつての仲間の指導する研究がいくつか発表されたのも良かったです。

夜にはサンフランシスコの夜景の写真を撮りに歩きまわっていました。

20年前は治安が悪く夜は歩く気がしなかったのがウソのようでした。

もっとも危なそうなところは近づかないようにはしましたが。

心臓血管外科の立ち位置が変化しているときに、AATSのような世界の仲間が集まるレベルの高い学会で仲間と語らうことは大きな意義があると思います。

留守番しながら手術を楽しんでいる名古屋ハートセンターの若手諸君や関係の皆さんに感謝しつつ充実した時間を過ごせた5日間でした。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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第92回アメリカ胸部外科学会AATSにて――その1

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Natu_0022第92回AATSに参加して

AATSは本来は北米の胸部外科つまり心臓外科、血管外科、肺外科を代表する学会で100年近い歴史をもつものですが、同時にこの領域で世界の頂点に立つ学会と言われています。

そのため北米はもちろん、ヨーロッパ、アジア、南半球からも多数の参加がありました。

 

今年はコロンビア大学のCraig Smith会長(写真はこちら)のもと、サンフランシスコで開催されました。

心臓血管外科の世界の流れをつかむにはこの学会に出るのが最も手っ取り早いことと、欠席が続くとメンバー資格を失うため毎年参加しています。

昨年から学会の直前のセミナーとして、外科医あるいは外科研究を超えた、リーダーを養成するためのセッションが出来ており、ことしもそれがありましたが、学会直前まで手術予定が入っており、これには参加できませんでした。

学会の前々日午前中には外科のskillつまり技術のコース、午後にはロボット手術のskillつまりテクニックのコースがありそれぞれ参加しました。

4月30日から始まった学会本体もいつもの通り盛況でした。

 

CatheterValve全体としてまず感じたのはTAVIあるいはTAVRつまりカテーテル等で行う大動脈弁置換術や僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁クリップなどのカテーテル的な低侵襲治療の発表がさらに増えたことでした。

PCIの黎明期に循環器内科の先生方を日夜、冠動脈バイパス手術でバックアップあるいはレスキューしてその発展に貢献したのにPCIが進化してちからをつけると内科の先生方から捨てられてしまったという苦い反省からでしょうか、こうしたカテーテル治療にできるだけ外科も参画しようという空気がありました。

TAVIについて言えばPARTNERトライアルで、ハイリスクの患者さんではTAVIとAVRに1-2年の生存率に差がないという結果が出たため、TAVIの適応がさらにリスクの低い、普通の症例に広がるのではないかという外科側の危機感は大きなものがあると思います。

MitraClipそれもあってかTAVI(TAVR)や僧帽弁クリップの治療に外科医が参画することが増えた印象です。

それを裏付けるかのように企業展示にもそれらのデバイスやハイブリッド手術室などの展示が増えました。また外科の中ではもっとも低侵襲といわれるロボットの発表や展示も活発で、展示場のミニレクチャーには多数の参加者が見られました。

TAVI(TAVR)のひとつの発展型ともいえるSutureless Valveつまり開心術として大動脈遮断下に縫わずに植え込む生体弁の発表も複数あり、TAVIへの対抗策のひとつとして力が入っている感がありました。

確かにこの方法はこれまでの弁置換AVRよりかなり短時間でできる上に、石灰化した大動脈弁を切除するためTAVIよりも大きなサイズの生体弁が入り、かつTAVIの弱点である脳梗塞を予防しやすいという、AVRとTAVIの良いところを併せ持つような一面があり、今後の方向のひとつかも知れません。

例によって日本にはまだすぐには入らないようですが。

学会最終日の新しいテクノロジーのセッションもこうしたデバイス類の発表が主でした。

IMG_0724こうした低侵襲治療への大きな流れを象徴するもうひとつの例として、最終日に TCT@AATSというカテーテルインターベンションのセッションが組まれたことです。

TCTとはある意味、内科でもっとも外科医と競合している先生方の集まりで、いわば「商売仇」No.1.のような学会ですが、このTCTとジョイントセッションを組むのは外科がこれからより大きく低侵襲治療へとシフトする決意の表れと言えましょう。

正しい方向性と思いました。

今回、良識ある方々の間で使われた言葉、インターベンションと心臓外科の関係は「competitive」(競合的つまり邪魔しあう)ではなく「complimentary」(相補的つまり助け合う)だというのはまったくその通りと思いました。

こうでなければ患者さんは救われません!

このTCT@AATSに参加しましたが、インターベンション内科の先生方のお話しを拝聴していますと、確かにカテーテルでほとんど何でもできるという気持ちになります。

弁膜症に限って言えば、外科手術と比べて見るからに不正確で不十分ですが、放射線被ばくがかなり多そうな点を除けば低侵襲というところが光ります。

つまりダメもとという発想です。

たとえば僧帽弁クリップやTAVIで少々逆流を残しても構わない、治療前より良ければやった分だけ得したのだ、という考え方です。

実際、患者さんは逆流が減った分だけ元気になっておられるようですし、低侵襲ということはすごいことと感じました。

またTAVIで問題になっている脳梗塞(外科手術の2倍は起こります)についても、その塞栓をつかまえるネット状のデバイスが何種類もトライされており、いずれ脳梗塞でも改善を見る可能性がでて来ました。

ただあまり複雑になれば、あたかもPCIをPCPSのもとで行うような無駄と無理を感じるようになるかも知れません。

すでにコストがかかりすぎることが問題になっていますし。

この点は日本で保険適応がどういう形になるか、かなり紆余曲折があるものと予想されます。

PCIでさえ、韓国のようにその患者に使えるステント数を3つに限定するなどの措置が取られそうな雲行きですので。

ここで大切なことは、できるからやる、というのではなく、患者や社会にとって有益だからやる、という視点かと思います。

私個人の考えでは、医学的な正当性とくにEBMガイドラインの支持があればひとりの患者さんにステントを5つでも6つでも使うのは良いことと思います。

ただどんな患者にもどんどんステントを入れまくるといったことがもし行われると、いずれそれは厚労省の気づくところとなり、一気に制限をかけられて多数のステントが本当に必要な患者さんにも十分使えない、という事態を招くことを危惧するものです。

 

AATSの報告、その2へ続く

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TAVRに関する治療ガイドラインや位置づけ・方向性

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TAVRでもちいる弁のひとつです本格的なTAVR(別名TAVI)のガイドラインはまだこれからですが、それに準ずるものとして、ヨーロッパのデータ(2008年)からつぎの状態の患者さんにはTAVRはやってはいけないと考えられる項目があります。

1.    大動脈弁輪径が18mm未満か25mmを超えるとき。バルン(風船)で押し広げるタイプのTAVRの場合です。

2.    大動脈弁に非対称性に高度の石灰化があり、TAVRによって冠動脈を圧迫する恐れがあるとき

 
3.    大動脈基部のSTJ径が45mmを超えるとき(自動展開式デバイスの場合)
 

4.    左室内血栓があるとき

5.    二尖弁(大丈夫とするデータもあります)

6.    経大腿動脈アプローチの場合: 腸骨動脈に高度石灰化があったり、曲がりくねるとき、直径が6-9mmより小さいとき、あるいは大動脈―大腿動脈バイパスの既往があるとき

7.    経心尖部アプローチの場合: パッチをもちいた左室形成術の既往があるとき、心膜の石灰化、高度の呼吸不全、左室心尖部にアクセスできないとき

このようにTAVRは将来性はあるものの、まだまだ多くの合併症、危険性、課題があり、自由に使って良いというものではありません。

それを踏まえて、日本でも施設基準が現在検討されており、正しい適応と正しい方法で、それも熟練したチームでこのTAVRが患者さんの役に立つ治療となるよう、努力が続けられています。

バルン(風船)で狭い弁を広げる治療法は一時的な改善が図れます
ここまでのEBMデータから、大動脈弁狭窄症 ASの治療全体を通じての現在の考え方はつぎのとおりです

現時点での治療の選択肢としては

①適度の運動や塩分制限その他の食事療法、生活指導

②お薬

③バルン(風船)カテーテルにより大動脈弁を広げる治療

④カテーテルによる大動脈弁植え込みTAVR

⑤外科手術によるAVR

現在まで、外科手術のときにもちいる代表的な生体弁です。長期のデータが確立しているのも利点ですなどがあります。これらを整理すると現時点ではつぎのようになります。

なお将来は⑥外科手術時におこなうTAVR(いわゆるSutureless valve、縫わない弁) が加わりさらに成績が上がるでしょう。

さらにTAVRも従来の大腿動脈経由や心尖部経由以外に、上行大動脈経由やその他の動脈経由などの方法が開発され、選択肢が広がりつつあります。

 

1.    外科手術による大動脈弁置換術AVRが症状のあるASの患者さんには中心的治療法です。これによって症状は改善し、長生きしやすくなります

2.    経皮的バルン大動脈弁形成術は治療時に10-20%の危険性があり、かつ血行動態や臨床的な改善も一時的ですし、長期の成績も薬による治療と大差ありません。

3.    そのため経皮的バルン大動脈弁形成術はAVRの代わりにはならず、おもに弁の石灰化がない若い患者などに使えます

4.    TAVRは症状の強いASで外科的AVRが危険すぎる患者さんに対して使えます

5.    強い症状があり、外科的AVRができないようなASの患者さんの中にはTAVRで従来治療(つまりお薬やバルンなどによる治療)より優れた成績が期待できます

6.    強い症状があるASの患者さんではTAVRと外科的AVRは同じ1年生存率が得られますが、TAVRのほうが大きな合併症が多く、外科的AVRでは出血や心房細動が多いという弱点があります

7.    そこでこうした患者さんの治療では内科外科などをあわせた心臓チームでの治療が勧められるわけです

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TAVR(経皮的大動脈弁植え込み術)のパートナートライアルとは?

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Ilm18_ad04017-sはじめに、

TAVRとはTranscatheter Aortic Valve Replacementの略称で、これまでTAVI (Transcatheter Aortic Valve Insertion)と基本的に同義語です。

アメリカ等の保険の事情で最近はこのTAVRという言葉が使われるようになっています。

 

さてTAVRは急速に進化を遂げ、当初は外科的な大動脈弁置換術AVRができない症例に限定して行われていましたが、

成績が年々改善したため次第に「普通の」ハイリスク例にも使われるようになってきています。

この2つの治療法の成績が出つつあります。

 
それがパートナー臨床研究(PARTNERトライアル)で、このコホートAからの解析が2011年にNEJMから発表されました。

それによれば699名の患者をTAVRとAVRに無作為に振り分けられました。

1.    まず術後30日死亡率がTAVR3.4%、AVR6.5%(p=0.07)、1年でも24.2%と26.8%と差がない

2.    脳梗 Ilm17_aa02001-s塞やTIAは術後30日でTAVR5.5%、AVR2.4%、1年で8.3%と4.3%で外科AVRの方が良い。

大きな脳梗塞でも同様の傾向が見られた。

3.    症状の改善は術後30日ではTAVRのほうが良いが1年では差はなかった

4.    血管の合併症ではTAVR11.0%、AVR3.2%と外科AVRが良かった

5.    出血ではTAVR9.3%、AVR19.5%、心房細動の発生でも8.6%と16.0%と、いずれもTAVRの方が良かった

総じて、ハイリスクの患者ではすでにカテーテルによるTAVRは外科AVRに匹敵する生存率を達成しているが、脳梗塞ではまだかなり劣っているということでしょう。

この結果を踏まえてTAVRでは脳梗塞を防ぐ網状のデバイスが開発され成績改善が期待されます。

こうしたデバイスはかつて外科でも開発されましたが、成績が安定せずすたれた経緯があり、一層の努力が求められるでしょう。

 

外科AVRでは出血や合併症の減少を進める努力がなされています。

たとえば外科AVRでこれまでの人工弁を弁輪に縫い付ける作業を止めて、その視野でカテーテルによる弁置換を行えば、脳梗塞が少ない状況はそのまま維持しつつ、これまでより短時間で手術が終わるため合併症が減ります。

これをSutureless valveと呼び、欧米では臨床試験が進んでおり、成績の改善がみられています。

日本ではまだ時間がかかりそうです。いわゆる drug lagと言われる、行政がゆっくりなので認可が遅いのです。

外科 113の立場からさらに言えば、ヨーロッパのデータは死亡率も出血も脳梗塞もやや多いように思います。

大動脈遮断部位の適正化や縫合閉鎖部の徹底強化を行っている私たちから見ると外科の成績はさらに上がるものと感じています。

もちろんどういう患者さんを手術するかで結果は異なりますから、その慎重な検討は重要ですが。

 

ともあれTAVRとAVRのうまい活用・使い分けで今後は治療成績がさらに改善し、患者さんにとって朗報となるでしょう。

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お便り57: 上行大動脈置換術後の大動脈弁置換術の患者さん

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大動脈二尖弁大動脈弁膜症を発生しやすいだけでなく、上行大動脈瘤などを合併しやすいことでも知られています。

患者さんは関西在住の69歳の男性で数年前に京都で上行大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けておられます。

もとの術者にお聞きしますとその時点では大動脈二尖弁はそう悪くなく、そのままになっていました。

IMG_5500bこれは正しい判断だったと思います。

 

それから時間が経ち、大動脈弁が狭くなって(大動脈弁狭窄症)危険な状態となったため、名古屋ハートセンターの私の外来へ来られました。

再手術は私の得意種目のひとつであり、患者さんたちもそれをよく御存じのようで、全国から再手術の患者さんが名古屋まで来て下さいます。

 

ところがこの患者さんの場合は診察と検査で、以前の手術で植え込まれた人工血管が胸骨という骨にびったりと癒着し、一部は骨に食い込んでいることがわかりました。

Illust191こうしたケースでは骨をのこぎりで切る際に人工血管が破れやすいため、一般には極めてハイリスクと言われます。

「安全管理」と称してこうした患者さんを断る公的病院も少なくありません。

しかしこの患者さんは生きるために大動脈弁置換術が絶対必要なのです。

そこでさまざまな安全対策を立ててのぞみました。

 

結局、強い癒着の剥離には長い時間を要しましたが、手術はスムースに進み、病気で壊れた二尖弁はきれいな生体弁に取り換えられました。

さらにまだ比較的お若いご年齢を考慮し、将来はカテーテルで人工弁が入る(略称TAVIあるいはTAVR)ことができるような工夫も行いました。

同時に、もし将来何らかの心臓手術が必要となったときにも困らないように、今回は人工血管などをがっちりと守り、骨に癒着しないようにしました。

 

患者さんは術後経過順調でまもなく関西にもどられました。

まさにいのちを預けて下さる、死んでも悔いはないとまで言って下さる厚い信頼にお応えできてこんなにうれしいことはありません。

医療はやはり患者さんあってのものと改めて痛感いたしました。

 

**********患者さんからのお便り*********

 

米田先生
手術に携わっていただいた諸先生
看護師の皆様

 

お便り57大変ご無沙汰いたしております。私の大動脈弁置換手術に際しましては大変お世話様になりました。

お陰様で経過もよく順調に回復しています。

 

思えば、今年の2月上旬に京都の病院で定期検査を受け、

大動脈弁閉鎖不全症でこのままでいると心臓が送り出している血液が逆流し心不全等で突然倒れて死に至る恐れがあり、倒れた時の緊急手術もリスクが高いと聞き愕然としました。

それまでシニアー野球で投打走と又、ジムにも通い鍛えて身体的には何もなく安心していたのですが、それから一週間は悩みました。

 

しかし、同じ倒れて手遅れになるより手術をして元の生活へ戻れるのであれば早くやろうと決心しました。

その時、家内がテレビでスーパードクターの番組をよく見ていて、気にかかる病気の名医のお名前と病院を記録していましてその中で米田先生を知る事になりました。

弁置換術においては沢山の手術を手がけられいろんな修羅場を潜ってこられた先生とお聞きし、同じ手術を行うのであればGod Handと言われている米田先生にお願いしようとお探ししました。

 

前京都大学病院に勤められていたと聴いていたのですが、代わられていて名古屋のハートセンターへ勤務されている事を聞き早速電話をして受診をお願しました。

当日はエコー検査、CT検査等を行い映像やデーターを基に米田先生から私の現在の心臓の状態と手術の方法やリスク等懇切丁寧に解りやすく説明して頂きました。

「手術は任して下さい。後はあなたのリハビリ次第で回復も早くなりますよ」と自信に満ちたお言葉を頂きお願いしようと決心しました。

 

又、私が4年前別な病院で大動脈瘤の手術を行いかなりの癒着もあり、米田先生が前の手術を行った先生をご存知で情報をとって頂きより安全な方法で手術を行うことにしました。

そして、2月27日に入院いたしました。

病院の前の学校のグランドに集う学生の元気な姿を見るにつけ「もう一度元気になってスポーツをやりたい。ガンバルぞ!」という気持になり勇気が湧いてきました。

 

そして3月2日手術の日を迎えました。当日は、意外と落ち着いて手術室へ行き2~3分の内に全身麻酔がかかり、家族の心配をよそに眠ってしましました。

 
翌朝に目を覚ましましたが、先生や看護師さんの優しいお顔が目に入り、再生さして頂いた実感がこみ上げてきました。

丁度、浦島太郎の感覚でした。

 

手術した翌朝の朝までが本当に短い時間に感じました。

それから3日にはベッドに座れる様になり、5日目から歩行が出来る様に成りました。

8日を過ぎると食事もすすみ、痛みは有るものの院内の階段を1F~5Fまで上り下りするまでになりました。

院内散歩が唯一の楽しみになりました。

そして3月14日に無事退院する事が出来ました。

米田先生のオペの技術は勿論の事、手術に携って頂いた諸先生方、看護師の方々のチームワークは最高と思われます。

それは手術後のケアについてもよく分かりました。

回診時に手術を担当された先生方が優しく丁寧に術後の状態を診て頂き私達の不安を取り除いていただきました。

 

又、ベテランの看護師さん・若い看護師さん方のテキパキとした対応や気配りや笑顔はどんなに私達患者の心を癒して頂いた事でしょう。

その他、美味しい食事を造って頂いた栄養士さん・調理師さん、お茶や食事の準備をして頂いた方々、部屋を清掃して頂いた方々、その他、たくさんのスタッフの皆様へ支えられ 無事に退院する事が出来ました。

 

現在は、胸に違和感は少し残っていますが痛みもとれて、毎日散歩に花見や自身の野球のチーム練習の球拾いをやりながらリハビリに務めています。

本当に有難う御座いました。米田先生他、手術に携って頂いた諸先生方、看護師の皆様、その他スタッフの皆様方のご健康とご活躍、そして名古屋ハートセンターのご発展を心よりお祈り申し上げます。

 

2012年4月19日

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お便り56: 心室中隔欠損症VSDと肺動脈弁狭窄症の手術を受けられた若者

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心室中隔欠損症(略称VSD)はこどものころに検診で診断され、穴の大きな方はこどもの時期に手術で治すのが一般的です。

しかしさまざまな理由で診断がつかなかったり、あるいは手術の決心がつかなかったりで大人になって手術を受ける患者さんも少なくありません。

この病気の場合は血液が左室から右室へ漏れるため、その量が多いケースでは次第に心臓の負担が蓄積して長期的にはさまざまな問題が起こります。

逆に穴が小さいときには自然に閉鎖して治るため、心臓手術が不要です。

Hana_9そこで心臓手術をすべきかどうかの判断や、患者さんがその判断に納得され、決心できる状況・環境が重要になるわけです。

まして患者さんがエホバの証人の信者さん場合、輸血は信仰上の理由からできませんので、リスクが上がり、手術の判断・決断はいっそう微妙となります。

つぎのお手紙はこうした状況の20代の患者さんが、長い間悩みに悩み、またご自身で勉強もされ、縁あって私の外来に来られてじっくり相談し、そののち手術で見事に健康を回復されたあとの礼状です。

この患者さんの場合は、穴が大きく、肺に流れる血液量が全身に流れる血液量のなんと5倍に達し、そのため肺動脈弁も狭くなって(肺動脈弁狭窄症)いましたのでどちらも直し、手術の効果は大きかったです。

「寒さに震えたものほど太陽の温かさがよくわかる」という諺がありますが、それを想い出させてくれるような、つらい日々から脱却された喜びが伝わってきます。

 

************患者さんからのお手紙*********

 

米田 正始先生

今年の4月4日に心室中隔欠損症の手術をして頂きました。****です。

 

先日11月22日に検査して頂き、とても良い結果だったこと、米田先生の方からわざわざ会いに来て下さったことはとても嬉しく、感謝しております。

「もう普通の健康体と同じ」と言って頂けた事は、今でも信じられないほど嬉しい言葉でした。

4月4日と11月22日は自分の人生の中でとても重要な日になりました。

せっかく健康になったのだから何か新しい事に挑戦してみたいと思いパソコン教室に通い始め、つい先日ワードの資格を取ることができました。

これからもっともっと色んなことに挑戦していきたい思います。

手術をして頂いてから本当に自分の世界が変わりました。

今年は本当に良い年だったと心から思えます。

毎年寒い時期は調子が悪く年末になれば仕事も忙しいため、気分も沈みがちですが、今年はとても穏やかで前向きな気持ちで過ごすことができそうです。

両親も健康になった自分を見てとても喜んでいます。

 
これらは米田先生や北村先生、深谷先生、小山先生、そして名古屋ハートセンターの皆様のおかげだと思っております。

心から感謝しております。

本当にありがとうございました。

 

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お便り55: 冠動静脈ろうのエホバの証人の患者さん

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冠動静脈ろうはときに見られる冠動脈の異常です。

冠動脈から冠静脈を経由して右房や肺動脈その他の比較的圧Ilm09_ad07002-sが低いところへ血液が漏れるため、大切な心筋へは十分に血液が届かず、狭心症が発生します。

胸が痛くなったり、からだを動かすと息切れがするなどですね。

この冠動静脈ろうへ冠動脈の狭窄(狭くなること)が合併すれば、その部位によっては血液の漏れがさらに増えて危険なこともあります。

またそうした「漏れる」状態が続くと、そこでの血流量が増えすぎて冠動脈がこぶのように膨らみ(冠動脈瘤と呼びます)それが破裂すれば即死するなどの問題も起こります。

次のお手紙は、このかん動静脈ろうの手術を受けられた患者さんからのものです。

エホバの証人という宗教の信者さんでしたので、輸血はできないため、さまざまな工夫をこらして手術・治療を行い、うまく行きました。

 

冠動静脈をまず高速エコーとドップラーで正確に同定し、これを入口、出口を含む数か所で閉鎖しました。

どこにも異常血流が残っていないことを確認しました。

止血を徹底的に行ったのはいうまでもありません。

 

輸血を拒否する患者さんを治療しない病院が多いなかで、信仰の自由を守りつつ、医療安全とくに心臓手術の安全を確保する努力を私たちは続けています。

皆様のご意見やご指導を頂けましたら幸いです。

 

***********患者さんからのお手紙*******

 

Ilm10_de02014-s米田 正始先生へ

この度は、先生の技術を活かして父の手術を行って下さったことに心より御礼申し上げます。

とりわけ私達エホバの証人の信条に多大なる理解を示し手術をして下さったことに深く感謝しております。

私どもの信条ゆえに多くのお願いを致しましたが、先生が寛大に、辛抱強く聞き入れて下さり、大変嬉しく又心強く思いました。

先生のご理解と素晴らしい技術がなければ元気に回復した父の姿はなかったと思います。

これからもご多忙な毎日を送られると思いますが、お身体には十分お気をつけ下さい。
 

先生の益々のご活躍を心より願っております。

引き続きお世話になりますが、何とぞよろしくお願いいたします。

心からの感謝とともに  *****(実娘)

 

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お便り54: ポートアクセス法で僧帽弁形成術を受けた若者患者さん

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心臓病は今も昔もおおごとです。少なくとも患者さん目線からは。

弁膜症の場合も同様で心臓手術をすれば治りますといっても、会社や学校からしばらくは離れる必要がありますし、創が残るとあとあとつらいのではないかとか、そもそも手術の危険性はどうなのか、普通の生活に戻れるのか、長期的に大丈夫なのかなど、患者さんの悩みや不安は尽きません。

Ilm10_df01003-sそうした不安や期待に応えるのが弁形成手術でありミックス手術(ポートアクセス法などの創が小さい手術)なのです。

僧帽弁形成術を例にとれば、いったんきれいに決まれば、長期間の安定性が良く、ワーファリンなどの強いお薬を飲ますにすむことが多く、自然な普通の健康生活が送りやすくなります。

ポートアクセス法に代表されるミックス手術では、おなじ僧帽弁形成術でも、骨を切らずにすむため、より痛みも少なく、より早い社会復帰ができ、創も目立たないため心の傷もつきにくいというメリットがあります。

しかし僧帽弁形成術は一般的には必ずしも簡単な手術ではありませんし、ましてミックス手術でのそれとなると一段と難易度が上がります。

私たちはその安全で確実な手術に取り組んで来ました。それが患者さんのお役に立てることを大きな喜びと感じています。

以下はこの手術を受けられた20代若者のお母様からの感謝状です。

そのあとに続編のお手紙もあります。

お役に立てた喜びと、責任の重さに身が引き締まり、また光栄と思います。

 

****************************

 

米田 先生

****の母、*****です。
 

北村先生方々からの退院の許可が下りましたので、3月24日(土)に、退院いたしました。

患者さんのお母様からのメールです本来なら、米田先生に直接、お礼を申し上げてから退院させて頂こうと思っていましたが、

韓国へのご出張を伺っていましたので、メールで失礼させて頂きます。
 

入院中は、米田先生だけでなく、北村先生、深谷先生、小山先生にも、また、看護士の方々にも、優しく、丁寧に、心温まる対応をしていただき、本当に、ありがとうご
ざいました。

 

大学の検診で「心雑音あり」と言われ、その後「心臓弁膜症」と診断されてから、名
古屋ハートセンターで最初の先生の診察をして頂く迄の、とてもつらい、暗い毎日か
ら比べると、

親子ともに、「笑顔」で退院を迎える事ができ、あの日々がうそのような、平穏な明るい日を送り始めています。

MICSなので、今後、「ライブ」で、何も気にせずに、胸の大きく開いた服を着ること
もできるし、弁形成なので、今後、「ワーファリン」の煩わしい(?)注意もしなくてす
むので、心から感謝しています。

本当にありがとうございました。

今後も検診等でお世話になりますので、また、よろしくお願い申し上げます。

 

*******************************

Ilm2007_01_0800-s上記の心温まるメールを戴きましたので、お礼かたがたこのメールをHPに掲載させて下さいとお願いしました。するとそれなら他の迷える患者さんたちのためにと、掲載承諾だけでなく加筆して下さいました。

それがつぎのメールです。

実によく勉強し、考えられたことが判ります。これからの患者さんの進むべき道を示して頂いたような気がいたします。

またこれほど過分なお言葉と信頼をいただき、手術させて頂き、良い結果を出せたことをあらためて光栄に思います。

 ******************************

 

息子が循環器内科の先生に「弁膜症」と診断された時、息子には、全く自覚症状が有
りませんでした。

それどころか、1日、目一杯、学校、スポーツ、バイト、遊びと青春
を謳歌していました。

(また、家族も心臓に問題を抱えているとは、どうしても、信じ
られませんでした。)

内科の先生は、手術の可能性は5分5分と言われましたが、手術部分が「心臓」だけに、

親子ともに、絶対に、したく有りませんでした。

その手術判断は、外科の先生にしていただくようでした。

もし、手術しないといけないなら、途中で先生を変えるのも、色々と大変なので、

初から、お願いする先生の所に息子を連れて行きたいと思いました。

大きな総合病院では途中で、先生が変わる時もあるそうです。

よって、色々と調べてみました。わかった事は、

※「弁膜症」は逆流の度合いで
・経過のみ定期的にチェックする。
・内科で薬等で悪化しないようにする。
・外科で根本から、又は今より良い状態に手術する。
 

※ 手術のタイミングの判断は内科と外科の先生で分かれる事がある。
 

※ 手術の判断の医学的なガイドラインがある。

※ 手術の種類として自分の弁を修復する弁形成と、弁自体を取り替える弁置換手術がある。
※ 術後を考えると弁形成の方が良い。

※ 弁置換には機械弁と生体弁が有り、機械弁は生涯ワーファリンという薬がいる。

※ 弁形成のできる先生は、まだ日本にも少なく、その上、先生の手術の「うで」に大
きく術後が左右される。

※ 手術方法として骨を切らないMICSがあるが、できる先生はさらに限られる。しかし
術後の見た目もよく、社会復帰も早くできる。

※ 弁形成として手術をしても開胸後の状態で弁置換にかわる場合がある。

これらの事より外科の先生を捜す条件を出してみました。

(1) 弁形成をして下さる先生

(2) MICSをして下さる先生

(3) 医学的根拠に基ずいて、手術の有無を判断してくださる先生

(4) できればGoodやbetterではなくBestの先生

(5) 手術中、弁形成→弁置換の可能性が出てきた時に、医学的な切り替え判断ぎりぎ
り迄弁形成にこだわってくださる先生

(6) 手術が保険でできる事

(7) 自宅近くの病院

これらの条件を考えて捜していた時に、開業医の先生から、名古屋に良い先生がいらっしゃって、紹介状を書いた方から「感謝された」事と、

総合病院より、心臓専門の病院に行った方が検査やアフターケアーも含め、時間的な事等、色々と良い場合が多いと伺いました。

その名古屋の先生が米田先生で、弁形成、MICSもされ、手術のガイドラインを作られ
た先生方のお一人でした。

米田先生は「神の手」「スーパードクター」「世界的権威」
の形容詞がついておられる先生で、先生のHPの手術例から(5)の条件も頑張って下さっているのがわかります。

私たちが、探し当てたBESTの先生でした。

MICSも弁形成も保険適用です。

 

名古屋は関西からはちょっと遠いですが、診察時間や、診察と色々な検査が一度に済
むように配慮していただいたので、実際は「距離は遠いが、先生、病院と患者の距離
は近い病院」でした。

米田先生はどんな質問にも、やさしく、くわしく、丁寧に答えて下さいました。

先生が、かなり多くの患者さんから、色々質問された事がわかるお答えでした。

先生のお話は、本当にわかりやすく、いつの間にか、手術に対する不安はなくなりま
した。

名古屋ハートセンターに行く迄、「手術はしない」と言ってた息子が、先生の
最初の診察で、その場で「手術をしていただく」と決断し、一度もぶれることもあり
ませんでした。

入院中は、他の先生方にも優しく接していただきましたし、また、看護士さん同士の
連携の良さには驚かされました。

退院後にわかった事は、私たちの知らない間に、名古屋ハートセンターに行く迄にか
かわった開業医の先生、地元の循環器内科の先生に、米田先生が、何度となく電話、
FAX等を入れて下さっていた事です。

心から感謝しています。

本当に、名古屋ハートセンターに行って良かったと思っていますし、
米田先生には、息子の「明るい未来」を頂いたと確信しています。

色々ありがとうございました。

そして、今後もよろしくお願いします。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り53: 修正大血管転位症と三尖弁閉鎖不全症の患者さん

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修正大血管転位症は医学が進歩した現在も油断ならない病気です。

右心室という小さいポンプが左心室という大きなポンプの役割を果たさねばならない病気で、そのために長期的には無理が生じてしまうからです。

医学教科書では、心室中隔欠損症や肺動脈弁狭窄症などを合併しなければ予後は良いとされていますが、修正大血管転位症で60歳以上まで生存するひとは少ないのです。

 

しかしその死亡原因をみると、解決策がある程度以上は見えてくるのです。

たとえば心不全、三尖弁閉鎖不全症(通常の心臓でいう僧帽弁閉鎖不全症に相当します)、房室ブロック、不整脈などなどがあります。

逆に、それらを一つひとつ入念に治療あるいは予防して行けば、予後はもっと良くなるはずです。

Phm26_0027-s

そこで、私たちは拡張型心筋症の手術や治療の経験を活かし、かつ先天性心疾患の治療経験を活かして、この修正大血管転位症の患者さんの治療にあたっています。

元気に長生きする記録を更新しましょうと頑張っています。

 

下記はその修正大血管転位症に三尖弁閉鎖不全症を併発し、最近三尖弁の手術を受けられた患者さんのご主人さまからのお手紙です。

まだ30代というお若いご年齢から、将来を見据えた心臓手術だけでなく、その後の薬の使い方で、さらに予後を良くしましょうと患者さんや地元の先生方と相談して、チームワークで治療をしています。

 

********患者さんのご家族からのお便り*******

 

名古屋ハートセンター 心臓血管外科 御中 米田先生様

このたび、3月1日手術で大変お世話になりました、*****の夫です。

丹後もやっと桜が満開になり春らしくなってきました。

 
術後の経過も、順調で末っ子の入学式に無事出席できました。
患者さんのご主人様からの礼状メールです

手術前、入学式には出たいとの希望が叶いましたのも、
名古屋ハートーセンター・先生方看護師スタッフの皆々様のおかげで感謝申し上げます。

 

****病院・**先生様の連携にも
ご尽力いただき安心して暮らしております。

ネットで名古屋ハートーセンターのHPを見つけて
手術室の笑顔の集合写真を見たときに
この病院ならなんとかしてくれると直感しました。
 

1月11日のメールにすぐにご返信いただいてから
1月19日検査入院・3月1日手術とレスポンスの速さに
名古屋ハートーセンターでよかったと感謝感謝です。

米田先生、ありがとうございます。

今後とも、妻の経過診察よろしくお願い申し上げます。

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執筆:米田 正始
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米田正始の心臓手術② 腱索転位術(Translocation)

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臨床に用いた時期 2003年―2009年
 

実施した施設 京大病院、名古屋ハートセンター
 

考案の目的と概略

虚血性僧帽弁閉鎖不全症で弁尖のテザリングが高度なケースでは僧帽弁輪形成術が通用しない。

Translocation1そこで乳頭筋吊り上げがKronらによって考案されたが、

生理的には乳頭筋先端から二次腱索を介して僧帽弁輪前中央部へ力がかかるため、

この方向に人工腱索を立て、左室を保護改善してから、自然の二次腱索を切断した。

これによって従来の二次腱索を切断する 術式よりも術後心機能が改善し患者の心不全が軽減した。

Translocation3 この術式は後に両弁尖形成法(Papillary Heads Optimization)へと発展していった。

上図は権威あるJTCVS誌の表紙に掲載されたときのものである。

左図は臨床でのデータを報告したものである。

 

内容の説明

Translocation2左図のように、

人工腱索を各乳頭筋ヘッドから僧帽弁輪の前中央部へ吊り上げ、

併せて二次腱索を切断する。

その後、積極的な吊り上げによって二次腱索の切断は不要となった。

 

Translocation4れによって左室機能は保護あるいは改善され、僧帽弁前尖のテント化は軽快―解消する。

上左図は動物心で左室Viewを示す。

左図は臨床例の成績を示す。

 

 

Translocation5Translocation6左図は乳頭筋先端にゴアテックス糸CV5を刺入しているところ、

右図はそのCV5を僧帽弁輪の前中央部から左房側へ刺出するところ。

このあと適切な張力のもと、プレジェット付で結紮する。

 
  この術式によってMRやテザリング高のみならず、左室収縮機能も改善した。

糸による左室形成術という位置づけで、機能性MRは心室の病気でその治療は心室を治すことが本質的と考える中で、この術式は妥当なものと考えられた。

 

発表論文(臨床の第一報)

Masuyama S, Marui A, Shimamoto T, Komeda M. Chordal translocation: secondary chordal cutting in conjunction with artificial chordae for preserving valvular-ventricular interaction in the treatment of functional mitral regurgitation.J Heart Valve Dis. 2009 Mar;18(2):142-6.

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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