お便り120: マレーシアから僧帽弁形成術のためお越し下さったエホバ証人の患者さん

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僧帽弁形成術は患者さんにとって弁置換術とくらべてメリット・利点があります。

このメリットはお若い患者さんの場合、とくに大きいものがあります。

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なかでもこの僧帽弁形成術をMICSつまり骨を切らない、傷跡が小さく見えにくIMG_1884い形で行うのは美容の向上や痛みの軽減に加えて心の傷まで小さくする利点があります。

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私たちのLSH(Less Satellite Hole)法はMICSの中でも創の数が最少で傷跡の面積が格段に小さく、海外からも引き合いがある方法です。世界一きれいとよく言われます。

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それらに加えて、意外に知られていないことですが、MICSの手術は無輸血が達成しやすい傾向があります。ただしうまくやればの話です。

というのは胸骨を切らないため骨髄からじわじわと出血し続けるという不確定要素がないからです。とくにLSHの場合、胸壁に開ける穴が最少のため、そこからの出血も少ないのです。そういう前向きの観点から、無輸血を達成するためのMICSとLSHを行うことがよくあります。

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以下の患者さんはエホバの証人の信者さんで、遠くマレーシアから私の外来へお越し下さいました。

まだ奈良の病院にいたころでした。

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私がその病院では重症やLSHなどの手術、あるいは絶対無輸血という過酷な条件のエホバの証人の信者さんなどの手術ができなくなり、これでは患者さんたちのご期待に沿えないと、大阪の病院へ異動した際に、一緒に移動して下さったばかりか、野崎徳洲会病院での私の心臓手術体制が整うまでの数か月間を我慢して待って下さったのでした。

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私にとっては恩人と言っても過言でないほど絆の強い患者さんたちのお一人でした。

その患者さんのご期待に沿う手術、つまり傷跡が見えにくいMICSでの僧帽弁形成術を絶対無輸血で行うことが安全に完遂できました。結果的には楽勝でしたが、注意に注意を重ねての慎重手術でした。

結果は何重にもうれしいことでした。

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以下はその患者さんが、心臓リハビリの病院を退院される日に、私の外来が長引いてご挨拶ができなかったことへのお詫びメールに対して送って下さったお返事です。

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**********患者さんからのお返事メール*********

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米田先生

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ご丁寧にメールをくださり、ありがとうございました。
こちらこそ、退院の日に何のご挨拶もしないまま帰ってしまい、申し訳ありませんでした。

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先生のおかげでこのような元気な身体で無事に退院の日を迎えることができ、感無量でした。
退院後も毎日リハビリを意識してできるだけ身体を動かしたり歩いたりと、元気に毎日を送っています。

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ところで、先生のホームページ上にメッセージを載せていただけるようで、大変光栄です。また後日改めて先日のメールへの追記の形でお便りを送らせていただいてよろしいでしょうか?少しお時間を頂けると助かります。

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退院して外の世界が随分と寒くなっているのに驚きました。先生もどうぞお大事になさってください。
またメールさせていただきます。

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それからしばらくして追記を頂きました。

マレーシアに戻られたら病気のことは忘れて仕事や遊びを楽しんでください。

また外来でお元気なお顔を見せてください。

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********患者さんからのお便り、その2**********

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米田先生

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先生に手術して頂いた日から約一ヶ月が経ちました。

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振り返ってみると、自分がほんの一ヶ月前に心臓の大手術に直面していたことが信じられないくらい元気で、友人たちにも びっくりされています。

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手術自体もMICS手術で、脇の下の部分をたった7センチほどの切開で手術していただきましたので、正面からはほとんど傷が見えず、また手術時より傷の色も目立たなくなってきています。

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心臓の手術なのだから傷跡が残るのは仕方ない、と覚悟していましたが、想像をはるかに超える小さな、そしてきれいな傷跡で本当にホッとしました。

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今後、今よりもさらに傷跡が小さくなるとのことで、半年後、一年後を楽しみにしています。

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さらに、MICS手術のおかげで骨を切らずに済んだので、術後すぐからほとんど運動制限がなくリハビリに専念できたことも早い回復につながったのでは、と思います。

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術後三日目には集中治療室の中で歩き回れるようになり、一週間ほどでエアロバイクをこいでのリハビリができるようになりました。

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そして一ヶ月経った今では遠くまで歩いたり、ショッピングセンターに買い物に出かけたり、階段を自由に上り下りできる位元気になりました。

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弁膜症と診断を受けた時や、手術が必要な時期にきているとお話があった時には、不安な気持ちや何とか手術を回避したい気持ちがありましたが、先生のじっくり時間をかけた丁寧なインフォームドコンセントを受け、徐々に不安は薄らいで、どちらかというと心臓が悪くなりすぎない段階で早めに治したい、という気持ちになっていきました。

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先生の的確な診断、そして手術のタイミングに関するアドバイスを信頼してお任せして大正解だったと思います。

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最後になりましたが、米田先生には、私の宗教上の信条を尊重した方法で手術や治療を施してくださったことに特に感謝しています。

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米田先生という素晴らしい外科医の先生に出会うことができ、また温かく親切な看護師や病院スタッフの方々に支えられて、本当に恵まれた環境の中で治療に専念することができました。

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これからもリハビリをがんばって、先生にきれいに治していただいた心臓を大切に使っていきたいと思います。

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定期検診の際には、より元気になった姿で先生にお会いできることを楽しみにしています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り119  心臓手術から10年が経ちました

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永いお付き合いのある患者さんとは絆が強くなるものです。

とくに手術前の危険な状態や大きな手術を乗り切った患者さんのばあいは絆も格別なものがあります。

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下記の患者さんはちょうど10年前、私がまだ京大病院で勤務しIMG_0212ていたころ、連合弁膜症それも巨大な脳梗塞を患われたあとで、しかも過去に心臓手術を受けられたあとの再手術でした。

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リウマチ性僧帽弁狭窄症のため弁形成術を受けられ長年経ってすっかり壊れた僧帽弁を人工弁で置換し、大動脈弁も同様に置換し、心房細動に対してメイズ手術を行いました。脳の保護には万全を期しました。

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リスク(危険性)はあっても是非元気になりたいという患者さんの想いをくんで、当時のチーム諸君は皆よく頑張り、患者さんもすっかりお元気に退院して行かれました。あまりリスクの高い手術はやらないようにという当時の一部の先生方のご意見はありがたかったのですが、こうした患者さんを見るたびに努力は報われるという想いを新たにしてしまいます。

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その後患者さんの会などにもご出席くださり、旧交を温めていました。

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つい最近、手術から10周年ということでお便りを頂きました。

そうか、もう10年も経つんだなあという感慨とお元気で楽しく暮らしておられることで皆の努力が報われたという喜びを頂きました。

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以下はその患者さんからお便りです。

またお元気なお顔を拝見する機会があればうれしいです。

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******** 患者さんからのお便り ************

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弁置換十年後の感謝状

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拝啓

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「庭先やノスタルジック石蕗黄なり」
お礼状を出したくて高の原ハートセンターにお聞き致しましたら御退官されたとおっしゃいました。
米田先生長い間おつかれさまでした。

お便り119.

素敵な奥様と素晴らしい時間をお過ごしになっていらっしゃる時に申し訳ありませんが感謝を申し上げたくてペンをとりました。

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2005年12月12日二つの弁置換、心房細動予防の処置をしていただき十年が経ちました。
この十年間、最も充実し安心して過ごせてまいりました。人生悲喜こもごもですが、毎朝めざめさせていただいていることが一番の大きなよろこびで、しあわせです。

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この間に、死にそこないの私にも初孫を授けて下さいました。今までしたくてもできなかった事、海外留学ニュージーランド、そして国内海外旅行もできました。国内はかつて私が倒れた時、五時間も見守ってくれていた柴犬キャロットと犬の泊まれるペンションでの旅も致しました。心臓手術前、倒れて死にたい死にたいと思っていた頃、娘の海外ホームステイで海外の素晴らしさを知りました。おかげさまにて手術の後は主要七カ国プラス五カ国を訪れることができました。

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忘れられない悲しみは私が病に倒れた時、見守ってくれていた犬のキャロットが十七才で永遠の旅立ちをした事です。

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2008年頃から不整脈が出てしまいこれまで体を酷使して来たからと反省致しました。四十九年前の手術の後十七才で体育会の百メートル走で十四秒四、一位を取ったのが人生最後の百メートル走でしたが、その後も走る練習は好きでした。料理の勉強もしたくて昼間近所の外科にて仕事をして育英会の返金をしつつ、月二回夜間の料理専門学校も通いました。

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こうして酷使したため残念ながら倒れてしまったのです。でもありがたい事に弁置換していただいた後は熊野古道中辺路も楽しみ歩かせていただきました。
不整脈のほうは本年八月二十四日京大病院にてカテーテルアブレーションをしていただきました。

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今は早朝里山の散歩より一日が始まります。筆舌に尽くし切れない感謝でございます。
夢と希望を持ち十一年目を父の分まで生きさせていただきたいと思います。

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「山眠る父の命日はるかなり」 二十才時死亡

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米田先生くれぐれも御自愛なさり素敵な時間をおすごし下さいませ。

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大変お世話になり助けていただいた**先生、**先生の住所がわからなくてとても残念です。
お礼を申し上げたかったのですが。
お元気でいらっしゃったらいいなと祈っています。

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2015年 12月12日         米田先生

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第四回 重症心不全外科研究会にて――左室形成術をめぐって

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第68回日本胸部外科学会の際にこの重症心不全外科研究会が開催されました。今回は自治医大さいたま医療センターの山口敦司先生が当番幹事つまり会長でした。

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この研IMG_1854究会はこれまで多数の患者さんたちを救命して来た左室形成術がSTICHトライアルという欠陥研究のため誤った過小評価を受け、そのために患者さんが左室形成術の恩恵が受けられなくなるという悲劇が発生しているのを何とかしようという趣旨で立ち上がったものです。

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これまでオーバーラッピング手術などで業績を上げて来られた北海道大学の松居喜郎先生が代表幹事として、その事務局機能を同大学の若狭哲先生が担って下さっているものです。左室形成術の大御所であられる北村惣一郎先生や須磨久善先生にも顧問としてご参加いただいている、この領域のオールニッポンともいえる集まりです。

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今回は山口先生のご配慮でこれまで以上に内容豊富な研究会になりました。

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まず須磨先生のご司会で松居先生が重症心不全外科研究会のおかれている立ち位置と今後の課題というテーマで概説されました。左室形成術が患者さんの予後改善に役立つという根拠を示す努力を紹介されました。

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医療現場では左室形成術の威力は知る人ぞ知る、おおきなものがありますが、この心臓手術は重症例に行うことが多く、患者さんの中には移植以外の何をやってもダメというほどに心臓が弱っている方も多く、これらの方々では左室形成術は効果なしという結論になりがちですし、逆に軽症すぎる方の場合は左室形成術をやらなくてもまあまあ元気ということも多々あります。このあたりのしっかりとして見極めが大切で、こうした方向の議論がなされました。

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この中で松居先生らのグループのSWI(Stroke Work Index、心筋の性能を知る有用な指標です)が20以上なら予後が良いという指標は今後の有力な参考になり得るものと思いました。

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ついで山口先生の司会で若狭先生がこれまでの本研究会での公表エビデンスをまとめて紹介されました。

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SURVIVEという名前のレジストリ―で1500例以上のデータの蓄積のなかから検討されました。その77%が虚血性でした。左室形成術は768例あり、そのうち40%に僧帽弁手術がなされていました。

左室駆出率40%未満の1093例を検討されました。左室形成術はちょうどその半分にされていました。

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その結果、Group2というESVIが71-96の範囲の中等度の左室機能不全例にて左室形成術は有意に予後を改善していました。左室はそれより大きいつまりより重症のグループでは明らかな予後改善効果に至っていませんでしたが、私の見たところ、それらのグループは拡張機能障害がない範囲内でもっと積極的に左室を縮小すれば心機能も生存率もさらに改善したのではないかと思いました。これからこうした細部を煮詰める必要があるものと感じました。

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研究会の広範はビデオプレゼンテーションで、東京医科歯科大学の荒井裕国先生と京都府立医大の夜久均先生の座長で行われました。

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東京大学の小野稔先生は弓部大動脈瘤と虚血性心筋症の患者さんに対して左室形成術と僧帽弁形成術、CABGを行い、ついでデブランチTEVARで仕上げられたケースを報告されました。こうした複合疾患での一つの良い組み合わせ治療と思いました。

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国立循環器病研究センターの小林順二郎先生は機能性MRを合併したDCMの一例を報告されました。左室Dd65mmをバチスタ手術で積極的に45mmまで縮小し改善をみました。機能性僧帽弁閉鎖不全症を僧帽弁形成術で治すためにこうしたバチスタ手術は有用とあらためて感じました。ただここまで小さくすると拡張機能障害が出て困ることもあり、注意深く進める必要を感じました。

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東海大学の長泰則先生は虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する左室形成術を報告されました。中等度以上のMRには弁置換をしているとのことでした。左室形成術はDor手術を使っておられますが、ジオメトリー維持のため工夫をしておられました。術後の心室頻拍VTを防ぐために積極的に左室の内膜切除を行っておられるのが印象的でした。

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名古屋大学の六鹿先生は40代のデュシャン型筋ジスDCM患者さんに心拍動下MVRとTAPなどを施行し、一旦改善していたものの6年経って心不全が進行したというケースを報告されました。私は多少とも似たケースを経験していたため、次のようにお勧めしました。まずこのタイプの筋ジスは心筋も侵すため油断はできない、しかしゆっくりと進むためまだ左室形成術で当分元気になる時間があるかも知れない、そこでその専門家と心筋の予後を十分検討されること、そしてDd89 EF12なら拡張機能障害がなければ左室形成術でかなりの改善が見込まれるため、前向きに検討して頂きたい。

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松居先生はEF8.8% Mild MRの虚血性心筋症に対するオーバーラップ手術と乳頭筋接合と吊り上げの一例を報告されました。Dd78は64へ、EF15は22へ改善したようで、これからさらに薬で改善を図って頂きたく思いました。MRIでのViabilityの有用性や乳頭筋接合の詳細も論じられました。

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私、米田正始はある大学病院で心移植候補と判定された患者さんに、ご希望によって左室形成術とPHO式僧帽弁形成術によって社会復帰された一例を報告しました。現在術後1年が経ちますがお元気でNYHA I度つまり心不全症状なく、ご家族の介護などで活躍しておられます。

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こうした超重症でも外科手術とくに左室形成術やPHOなどによって元気に社会復帰できる方が多いことをもっと多くの方々に、とくに内科の先生に知って頂きたく報告しました。

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移植センターの先生に聞いたところ、最近の循環器内科の先生方の傾向として、こうした心不全でβブロッカーが効かなくなれば即LVAS補助循環にという短絡が多いとのことでした。LVASは長足の進歩を遂げていますが、まだまだQOLは低く、やはり左室形成術などの通常治療で元気になれれば患者さんへのメリットは大きなものがある、こうしたことも論じました。

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山口先生は虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する乳頭筋接合術の工夫を解説されました。カラーとMICSリトラクターをもちいると経僧帽弁的に乳頭筋が良く見え、手術がやりやすくなります。

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京都府立医大の山崎先生は広範囲の梗塞除外を行った左室形成術の一例を示されました。ELIET法と呼ばれる直線閉鎖にて心機能を改善されました。

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さまざまな症例から活発な議論ができました。最初のご講演と合せて熱い志の高い研究会でした。

なお幹事会でここまでの立派なデータの蓄積をうまく使って左室形成術の特徴を浮き彫りにするための努力工夫を論じました。私見ですが、中等度心不全で効果が出ている以上、中高度心不全や高度心不全では必ず効果のあるケースが存在するはずで、それらを検討することでより左室形成術の真価や限界が見えてくるものと思いました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第20回日本冠動脈外科学会総会にて

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この学会はむかしから親しみのある学会です。節目にあたる20回総会に行って参りました。
今回は京都府立医科大学の夜久均教授が会長で12年ぶりの京都での開催となりました。

 

夜久先生は12年前のことを昨日のように覚え20thJACASていて感慨深いのものがあると仰っていましたが、私も当時府立医大の先生方と楽しく内容のある交流の場を増やすよう先代の故・北村信夫先生と一緒に努力していたため、鮮やかに覚えていました。

それもあって印象に残る学会になりました。

 

まず学会前日の理事会にてこの学会の立役者である瀬在幸安理事長が引退表明をされ、時代の流れを感じさせる、物悲しい始まりとなりました。日本の冠動脈外科の黎明期から頂上期までを牽引してこられただけに特別な存在であったからです。
意外に知られていないことですが、瀬在先生は学会長を市中病院の実力派からも選出するという、日本の学会では稀有なことを何度も行われ、その先進性をも教えて戴いたように思います。

 

 

さて学会は初日から内容のあるディスカッションが続き、充実していました。IMG_1637

左室形成術の世界のリーダーとも言えるMenicante先生(写真中、左は堀井先生です)、台湾のMICSの天才Kuan-Ming Chu先生、MICS CABGのトップとも言えるBob Kiaii先生、CABGエコーのリーダー畏友 Rune Haarberstad先生、つい最近アジア心臓血管胸部外科学会を開催された香港の Song Wanなどの先生が講演され、私はその全部は聴けませんでしたが皆さん大変勉強になったと思います。個人的にはかつてお世話になった先生揃いで内緒の論議も含めて楽しい二日間でした。

 

なかでもKiaii先生はダビンチというロボットをもちいてバイパス手術を長年にわたり積み重ねて来られました。久しぶりにゆっくり語ることができ参考になりました。日本ではロボットは患者さんに多額の負担を強いるため、ロボットを使わずにMICSバイパス手術をやっていることをお話したら少し複雑な表情でした。

 

日本は世界に遅れをとっている一方、国民皆保険で誰もが他国よりも安価な医療を受けられる、この兼ね合いが難しいことをお話しました。しかしカナダでは医療は全額国家負担のはずですので(少なくとも私がいたころはそうでした)工夫の余地があるかも知れないと思いました。

 

まずオフポンプバイパス手術いわゆるOPCABを検証するシンポジウムがありました。オンポンプバイパスと比較しての研究はこれまで多数なされ、なかなからちがあきません。おそらく重症例でしか差が出ないからでしょうが、重症例を無作為割り付けすることは倫理的にできないのです。と言ってしまうと重症例ではOPCABが有利ということになり、多くの心臓外科医は賛同すると思います。そこにこの研究の難しさがあるのです。

 

日本のデータベースでの研究から、手術の予想リスクが高い患者さんではOPCABでは実死亡率は増えないがオンポンプでは増えるというデータが示されていました。なるほどと思いました。これをどのようにして世界に納得していただくか、ですね。

 

昼前に瀬在幸安理事長の恒例の、しかし最後の理事長講演がありました。20年にわたりこうした地道なデータ集積と解析、発表を続けてこられたことに皆強い敬意を抱かれたことと思います。同先生には来年からも参加して教えてくださいとお願いしてしまいました。

 

会長要望演題として心室中隔穿孔VSPのセッションが複数あり、私自身の発表もあっため参加しました。25年以上前にトロントから発表した心筋梗塞除外術いわゆるDavid-Komeda法と呼んで頂いている方法ですが、成績向上のために皆さん改良を重ねて来られた成果を拝見しました。

 

流れは複数パッチを使うなどして結局大き目のパッチで縫合部を守りながらというところにあるようですが、なるべく早期に手術というこれまでの大方の方針が術前管理の進歩に支えられて数日間待つという施設もあり、やはり弱い心筋をもっとうまく扱えるよう術式の改善が必要とあらためて思いました。

 

右室から2枚のパッチでサンドイッチ式に閉鎖する方法は以前より減った感がありますが、私は適材適所で左室の状態を見てうまく活用すれば良いと思っています。実際、北里大学では前壁VSPに径左室のExclusion法、手術がやや複雑になる後壁VSPには径右室の2枚パッチという形で使い分けをしておられ、参考になったと思います。

 

私はこれまで発表して来たExclusion法の完成型(になるかも知れない方法)を供覧しました。縫合線に余分な張力がかからず、超急性期でも心筋が裂けない、運針そのものも2次元的で簡略な方法で、これなら若い先生らにも比較的短時間でマスターしていただけるのではないかと期待しています。もう1-2例経験したところではやくまとめて出したく思っています。

 

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する手術方針というワークショップがあり、東京医科歯科大学の荒井裕国先生と私、米田正始で座長をやらせて頂きました。

 

まず私が乳頭筋最適化による僧帽弁形成術、PHO法と呼んでいる手術の中期遠隔期の成績を発表しました。もっとも生理的、そして慣れれば簡便な術式として使って下さる先生が増えて感謝しています。弁を治すだけでなく、左室をできるだけ回復改善させる効果があり、カテーテルによるMクリップ時代にもお役に立ち続けることができるようにしたいものです。

 

北海道大学の新宮先生はLVSWIが20以上あるケースでは予後が良いことを示されました。こうした生理学的研究は極めて重要かつ有用と思いますが、現代の研究予算は分子生物学・遺伝子医学や再生医学関連でないとなかなか獲得できないため努力が必要です。工夫してぜひ研究を完成させて頂きたく思いました。

 

東京医科歯科大学の水野先生は乳頭筋吊り上げによってMRの再発が減り生存率も上がる傾向を示されました。MVRでは逆流はゼロになるのですが必ずしも成績が良くない、その点をこれからさらにDiscussionしたく思いました。

 

京都大学の西尾先生と国立循環器病研究センターの島原先生はそれぞれの視点から僧帽弁形成術と左室形成術を併用するメリットを論じられました。今後こうしたデータを早く全国規模で集積し、左室形成術がより多くの患者さんを救えるようにしたいとあらためて思いました。

 

Menicante先生は虚血性僧帽弁閉鎖不全症が心室の病気であるという観点から、左室形成術に重点を置いてお話をされました。左室形成については大変貴重な情報を頂けたと思いますが、僧帽弁形成術については我々ほどやっておられないため少し議論はかみ合いませんでした。日本はまだまだ心移植が少ないため僧帽弁形成術などの非移植医療ではすでに世界の最先端を行っているのではという印象を持ちました。

しかし全体として情報と示唆に富む、良いセッションだったと思います。荒井先生と共に納得いたしました。

 

 

引き続いて左室形成術の適応と術式という、虚血性僧帽弁閉鎖不全症と関連した重要テーマのワークショップがありました。北海道大学の松居喜郎先生と香川大学の堀井泰浩先生の座長で進められました。

 

東海大学の長先生は長年努力して来られたDor手術の101例での成績を検討されました。重症例を多数含むなかで10年生存率71%は立派でした。左室縮小の度合いは43%でおそらくこのあたりが最適かと感じました。もちろん対象によりますが。術前の僧帽弁閉鎖不全症の存在が長期生存に影響しなかったというのは左室形成術の威力ではないでしょうか。

 

京都府立医大の大平先生はELITE法という内側から直線閉鎖する左室形成術を検討されました。側壁などの形成には優れた方法と思います。

 

私は一方向性Dor手術と仮称するオリジナルな手術を発表しました。Dor手術の簡便さとSAVE手術のジオメトリー特性をもつ方法で、重症例ほどメリットが大きくなるものと思います。ただ世間一般とくに内科では左室形成そのものが冷え切っているため、まだまだ啓蒙活動が必要です。

 

Menicante先生は例のSTICHトライアルのあと症例数は少し減ったがいまは回復していることを示されました。左室形成術は長期生存率を高めるメリットがあること、左室拡張が著明なときには左室の形を整えることが大切と話されました。さすがは1000数百例を執刀した大御所と思いました。

 

虚血性心筋症のセッションでも興味深い発表が続きました。

 

済生会宇都宮病院の古泉先生は低左室機能症例に対するオンポンプ心拍動CABGはあまり良くないことを示されました。

 

私はこれは是非ご参考にと、スタンフォードで研究した内容をお話しました。つまり左室をUnloadしすぎると心内膜下虚血となり運が悪いと心機能を悪化させるのです。世間一般には左室はUnloadすればするほど良いという考えが多いですが、そうとは限らないことを動物実験で証明しジャーナルから発表したことをお話しました。

 

宮崎市郡医師会病院の古川貢之先生は術前左室拡張不全のLVR治療成績に与える影響について発表されました。そこで心尖部のConisity Indexが大きいと拡張機能不全が強くなり治療成績が悪化することを示されました。さすが強力なエコーチームと外科医との研究と感心しました。これまで感覚的に知っていたつもりのことを、客観的に数字で示していただき立派と感心しました。丸いSphericalな左室は拡張機能が悪い、ということで外科的に左室形成でうまく治せば、収縮機能のみならず拡張機能もある程度改善できればすごいと思いました。

 

私の施設からは小澤先生の代理として私が発表しました。ある大学病院で心移植適応と判定された患者さんが、左室形成を求めて私の病院へ来られ、一方向性Dor手術で見事に元気になられたことを報告しました。このようなケースがあることを内科の先生方にもっと知って頂き、ハートチームで心不全を治せればと思います。

 

2日目のお昼には夜久先生の会長講演を拝聴しました。OPCAB、虚血性心筋症に対する左室形成術、虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する乳頭筋吊り上げ術、若手に対するチャレンジャーズライブなど、同じ時代に一緒に苦労し楽しんだという想いで敬意をもって拝聴しました。患者さんを多数救えば一流、新しい術式を 開発して歴史に名を残せば超一流というお話は、若手にモチベーションを与えてくれたものと思います。

 

2日目午後のMICS CABGのワークショップでは最近の進歩が発表されました。

 

大和成和病院の菊池先生は両側内胸動脈をもちいたMICS OPCABを示されました。すでに50例の経験を積まれ、ロボットを使わなくても質の高いMICS OPCABができることが示されたのは素晴らしいと思います。

 

町田市民病院の宮城先生も同様に両側ITAをもちいたMICS OPCABを発表されました。

 

今回のもうひとつの目玉企画として Korea-Japan Coronary Artery Surgery Summitがありましたが、韓国でMERSがまだ終息せず先生方の出国許可が下りないということで中止になりました。代えて日本側代表での座談会になりました。私は他用でこれは参加できませんでしたが、こうした企画を立てただけでも意義があったものと思います。

 

その他OPCABコンテストでも、朴社長の熱いご支援のもと、内容ある練習とコンテストがされたようで、日本の心臓外科発展への良いインパクトが期待されます。

 

盛りだくさんの内容で皆さん十分に楽しめた第20回学術集会になったと思います。夜久先生、教室の皆様、お疲れ様でした。

 

平成27年7月30日

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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2015年度のAATSアメリカ胸部外科学会にて

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今年もAATSに行って参りました。珍しく西海岸のシアトルで開催されました。

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心臓血管外科領域では世界の最高峰に位置する学会で、そこには世界の顔が集まり、最新の知見と豊富な経験をもとにした議論が交わされるため、参加しました。同時にこの会は正会員が世界で600名限定で、かつ毎年参加することが義務づけられていることも理由です。

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米国の学会といっても、実質世界学会で、ここにいればおのずと世界の情報が集まり、また旧交を温め、新たな仲間を造れるため重要な業務とさえいえる学会です。もともとヨーロッパからの参加も多かったのですが、近年はさらに増え、そしてアジアの仲間の数も増加の一途で、素晴らしいことと思います。

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その分科会ともいえるMitral Conclaveつまり僧帽弁の専門的シンポジウムが直前にニューヨークで開催されたため、多くの会員はニューヨークから一緒に移動していました。

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学会本会の前日に成人心臓血管外科、同先天性、そして胸部外科つまり肺縦隔の3つに分かれて恒例の卒後教育シンポジウムが開催されました。
私はもちろん成人心臓外科に参加しました。今年はDicision Makingにとくに重点を置いた構成でした。

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まず冠動脈ではCABGがどんなときにカテーテルでのPCIより優れているか、動脈グラフトは何本使うのが良いか、質の維持をどうするか、ハイブリッド治療やロボットその他の方法とどう使い分けるか、などの観点から欧米の有名どころが最近の知見を解説してくれました。

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確かに心臓外科の占めるウェイトは減った、しかしまだまだお役に立てる領域がたくさんある、患者さんの重症度が増すにつれてそれはむしろ増えることもある、その場合にうまくハイブリッドや低侵襲治療を駆使してリスクが上がらぬようにする、そうしたことをあらためて認識しました。

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引き続いて弁膜症のセッションとなりました。大動脈弁と大動脈をどうするか、これはとくに二尖弁の場合に重要です。院内でもいつも熱いディスカッションになるのですが、ここでも最近の知見をもとにしてより長期の安全を確保する方法が論じられました。

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生体弁と機械弁の使い分け、ARに対する弁形成がどこまで使えるか、弁サイズの問題いわゆるPPM(患者と人工弁のサイズミスマッチ)、外科的AVRとTAVIと薬の比較、そしてステントグラフトまでが論じられました。TAVIの発展が患者さんに益する治療に結びつくよう、ハートチーム全体でしっかりと取り組まねばならないと再認識しました。

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ランチョンセミIMG_1412ナーはLegend(伝説)セッションで、心臓外科の中で伝説の名人にその半生を語って頂くという企画でした。今年は我が恩師Tirone E. David先生が話をされました(写真右)。Adams先生の司会で、弟子を代表して畏友Michael Boger先生が想い出を語りました。あのころを想い出し、思わず熱くなってしまいました。若い先生方にこうした忘れ得ぬ経験を積んで頂きたいとも思いました。その前後にこれらの先生方ともゆっくり話ができて楽しいひと時でした。

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午後にはMVRと心房細動の治療(心房細動は放置しないように)、僧帽弁と三尖弁の同時手術、僧帽弁形成術のときにSAMを防ぐこと、僧帽弁形成術の長期成績、虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対して弁形成するか弁置換するか、カテーテルによるMクリップをどんな患者に対して行うか、心房細動に対する外科アブレーションでどの方法を使うべきか、機能性三尖弁閉鎖不全症をどんなときに治すべきか、などなど、現代的課題がつぎつぎと論じられました。

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虚血性MRに対する僧帽弁形成術や心房細動の手術などでは我々のほうが進んでいるところもあり、あとでディスカッションすることになりました。もう少し症例数があれば講演でより多くの方々のお役に立てるのですが、そこはまず日々の努力からということでしょうか。

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最後のセッションでは救急での対応、カテ室での事故があったときの迅速な対応、術後の高度な心不全、大動脈解離、心筋梗塞後の心室中隔穿孔VSP、外傷による大動脈破裂、などが論じられました。ここでも我々のVSP治療の成果その他で貢献したいところでしたが数が足りず、今後の努力と楽しみにということにしました。

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翌日からAATS本会が始まりました。テキサスのCoIMG_1421selli先生(写真右)の胸腹部大動脈瘤3000例の検討は圧巻でした。これぞ心臓血管外科、これこそAATSという、かつての感動を新たにしながら拝聴しました。毎回、毎年、そして10年ごとにデータを解析し改良を加えていると聞き、うれしくなりました。

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Adams先生らの僧帽弁手術の際の三尖弁形成術の有用性という発表には激しい討論があり、これまた長期の膨大なデータで科学的にものを論ずる欧米ならではの良さを感じました。要するに将来三尖弁閉鎖不全症が発症する患者さんをきちんと見極め、それらの方々に予防的三尖弁形成術を行えばと思っています。そうした方々にはより短時間でできる、簡便な方法で侵襲を増やさずにできる、これも今後有益になるのではと思います。

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優れた発表が続いたあとで、新メンバーの紹介がありました。この会のメンバーになるということは一流の、少なくとも一人前の心臓血管外科医として認められることであり、皆嬉しそうでした。その中にはアメリカの友人も数名おられ、あとでお祝いを述べ、楽しいひと時でした。畏友Chris Malaisrie もその一人でした。おめでとう。

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会長講演はボストンこども病院のDel Nido先生(写真右)のIMG_1422「科学技術の進歩と心臓胸部外科」というテーマでこつこつと謙虚に貢献を続けてこられた同先生ならではの内容だったと思います。講演前から聴衆が総立ちで拍手したところに同先生の人徳がうかがわれました。

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そのあともTAVIや僧帽弁形成術、僧帽弁膜症にともなう肺高血圧症、AFに対するCox-Maze手術、などの優秀演題が続き、参考になりました。

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夕方にはレセプションがありましたが、今回は総じて日本からの参加が少な目で、Mitral Conclaveがニューヨークであったことも手伝ってか、あまり長期間あちこち行けない状況があったのではと感じました。

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本会二日目は朝7時から、実験研究や先端技術・デバイス、そして手術ビデオのセッションがあり、全部に出たいのですが一つしか選べないため今回は手術ビデオにしました。

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工夫された面白い手術が多数供覧され大変参考になりました。これまでの手術にさらに改良を加えて完成度を上げた、そうしたタイプのものが多く、概念を変えるほどのものはありませんでしたが、良いセッションだったと思います。
かんさいハートセンターがスタートして1年半がたち、そろそろこうした会で発表できそうな、他施設でもお役に立てそうな手術が増えて来たため、来年は演題を出そうと思いました。

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そこからまた本セッションが始まりました。大動脈基部再建の方法4つを比較した、クリーブランドクリニックからの優れた発表に、熱いディスカッションがあったのが印象的でした。機械弁ベントール手術は確かに安定性に優れた方法で、しかしTAVIとくにValve in valveを念頭に生体弁ベントールが急増しており、その中で確実に弁を治せるならDavid手術は素晴らしい、そうしたことを再確認できました。さまざまな状況下でそれに応じたきめ細かい対応がこれから重要になっていくとも思いました。

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それやこれやで充実した数日間でしたが、あまり仕事に穴をあけるわけにも行かず、あと一日あまりを残して残念の帰国となりました。

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留守を守って下さった高の原中央病院と同かんさいハートセンターの皆様方に深謝申し上げます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第11回患者さんの会のお知らせです

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心地よい時候となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて第11回の患者さんの会を開催させていただくことになりました。サーバー・システムの不調のため新しい記事がUpできず申し訳なく思っております。

また、昨年後半に開催したかったのですが、かんさいハートセンター新設のためなかなか時間が取れず、失礼いたしました。

今回も前回と同じキャンパスプラザを予定しております。

今回は日ごろの心臓手術のあとの検診でのデータとくに血液検査のデータの読み方をお話したく思います。少し知識がつくと、外来でも地域や職場などの検診のときにもわかりやすく便利になるでしょう。

その他なんでも語り合いたいものです。ふるってご参加を。

----記----

第11回患者さんの会

日時:平成26年6月1日日曜日 午後1時30分から午後3時30分まで

場所: キャンパスプラザ京都

内容:近況報告(米田正始および何人かの患者さん。我と思わんかたどうぞ)

講演:「血液検査、データの読み方」 米田正始

せっかく受けた血液検査です。その結果を健康増進に活かしたいものです。そのための知識を伝授いたします。

質疑応答なんでも相談: 心臓手術やそれにまつわる悩み・疑問をどうぞ

(込み入ったご相談の場合はとりあえず簡略お話しし、後日また時間をもうけるなど致します)

連絡事項、新たな世話人さまなどのご相談、

高の原中央病院かんさいハートセンター心臓外科開設から半年がたち、かんさいハートの患者さんの会を立ち上げることを考えております。これまでの患者さんの会と合流してにぎやかにやるか、あるいは小ぶりでも直接話ができる会を続けるか、当日、皆様のご意見をいただきたく考えております。

お申込み: 準備の都合上、お早めにお申し込みください

参加費: おひとり1500円(含:会場費、飲食代、通信費、その他)

申し込み先: 高の原中央病院かんさいハートセンター 患者さんの会事務局(福崎、勇元)

〒631-0805 奈良市右京1-3-3 

電話0742-71-1030(代表)  FAX  0742-71-7005

メール: murao@takanohara-ch.or.jp 

 

*********** 会場のご案内 ***********

キャンパスプラザ京都
https://www.shinzougekashujutsu.com/.a/6a0128758a0c0f970c01676434ebfd970b-pi
〒600-8216 京都市下京区西洞院通塩小路下る
キャンパスプラザ京都
(ビックカメラ前、JR京都駅ビル駐車場西側)
TEL.(075)353-9111
FAX.(075)353-9121

 

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心臓外科はほんとうに若手医師に人気がないのだろうか

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近年、あちこちの心臓外科(心臓血管外科)医局で新入局者が少ない、人気がないという声を聞く。


Cpyo013-sなかにはそれほど人も減らず困ってもいない医局もあるようだが、大学によっては事態は深刻である。

何年かに1人しか入局がないといった話さえ耳にする。

しかし心臓外科を目指す若手がそれほど減ったのだろうか。

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たしかに現代の若者はあまり厳しいことは好きでない。昔のように患者を助けるために1か月病院に泊まり込んで治療したなどはもはやノスタルジアでしかないのかも知れない。

ひところ人気があった眼科や耳鼻科でさえ、最近はきつい、つらいと人気低下の傾向にあると聞く。若者気質がさらに高じていきつくところまで行ったのであろうか。

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私見ではあるが、心臓外科領域の若手を見ていると、以前より数は多少減ったかもしれないが、現在もある一定数、熱く高い志をもった若手が存在すると思うのである。というのは、医局を預かった経験や若手と接したところでは、忙しい施設で、日夜手術に入り、術前術後の管理をし、患者のために活躍する若手がその施設を辞めたいといった話をあまり聞いたことがない。若手が辞めたいというのは多くの場合、ヒマな施設なかでも執刀など手を動かす機会が少ない施設の場合である。

つまり心臓外科に来るほどの若手は、それが忙しいことぐらいは熟知した上のことであり、辞めたいというケースは修練内容の貧相さに失望しているだけと思うのである。

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病院この観点からは大学病院は大いに苦しく不利である。コメディカルや事務が雑用をやってくれないためおのずと若手医師にしわ寄せがくる。そのため雑用係りとしての若手医師を増やさざるを得ず、結果として1人当たりの症例数や経験数が減るのである。

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たとえばある国立大学病院では年間200例をこなすために医師が総数で15名も必要である。すなわち医師一人当たりの例数は13例にすぎない。その一方、民間市中病院である私の施設では年間300例以上の開心術を行う。医師は私を含めて4名である。そのため医師一人当たりの例数は75例に達する。実に5-6倍の開きである。

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このためかどうか、民間市中病院の私のところへは研修希望がちょくちょく来られる。数年に一人しか入局しない一部の医局と対照的である。

そうした中で、現代の若手医師は怠惰というよりも高い質と量を求めている、昔よりDemandingであるだけではないかと思うのである。

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ただ医局にいれば将来のポストがある程度約束されるなどの長期的メリットがあるという考えがむかしからある。それも一つの特長と思われる。しかし近年台頭しているのは、そのような遠い将来の、それもただポストだけが確保されていても内容が伴うかどうか不明な状況には頼りたくないという考え方である。

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これらを考えると心臓外科にもっと若手が参Ilm09_aj06012-s入してくれるようにするには何が必要か、おのずと見えてくると思われる。そして彼らの要求に応えることが、医学教育はもとより、医療の改革にもつながるのではないかと思うこのごろである。

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誤解のないように付記しておきたいのだが、これらは大学や医局を否定しているのではなく、大学病院と市中病院とくに自由度の高い私的病院がタイアップすればそれぞれの強みを発揮しやすくなることも強調したいのである。タイアップすることで経験量も増え、学会発表もやりやすくなり、収入も確保しやすくなる、このことは豪州などでは常識になっている。

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さまざまな工夫を凝らして修練がもっと面白くなれば心臓外科という領域はまだ若手を惹きつける魅力を十分に備えているように思うのは私だけであろうか。

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心臓血管外科の卒後研修のページにもどる

修練医募集、実力や業績をつけたい方へ.

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執筆:米田 正始
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腹部大動脈瘤はどれくらい破裂しやすいの?【2020年最新版】

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図1b最終更新日 2020年2月22日

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◼️どんな腹部大動脈瘤が破れやすいの?

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腹部大動脈瘤の破裂しやすさは、

その瘤の形やサイズ、その他によって違います。

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早期に発見し、破れるまでに治療を完成することが、

命と生活を守ることにつながるのです。

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腹部大動脈瘤が小さい間、

たとえば直径4cm以下ではほとんど破裂することはありません。

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◼️瘤サイズと破れやすさの関係は

Cock01.

直径4.0cm未満 → 破れる確率は0.5%未満

直径4.0-4.9cm → 毎年0.5-5%

直径5.0-5.9cm → 毎年3-15%

直径6.0-6.9cm → 毎年10-20%

直径7.0-7.9cm → 毎年20-40%

直径が8cm以上   → 毎年30-50%

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◼️サイズと同じぐらい大切なこと

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サイズと同じぐらい大切なのは、瘤が大きくなる速度です。

腹部大動脈瘤は平均でも毎年3-4mmは大きくなるという方向がされています。

瘤が大きくなると加速度的に破裂しやすくなるのです。

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急速に大きくなる瘤たとえば6か月で5mm以上大きくなる場合は

破れる恐れが強いです。

なかにはサイズが長らく変わらず、

ある時突然大きくなるというやっかいなタイプもあります。

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◼️腹部大動脈瘤、破裂の盲点は

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なお直径5cmを超える大きな腹部大動脈瘤では

女性の方が男性より破裂しやすいのです。

その度合いは女性18%、男性12%です。

こうしたことを考え、腹部大動脈瘤が破裂するまでに外科手術ステントグラフトEVAR)で治しましょう。

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◼️腹部大動脈瘤の治療は安全か?

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その危険性は熟練チームならきわめて低く、

そのまま放置する場合よりはるかに安全です。

何しろ腹部大動脈瘤が破裂したら即死に近い状況となりかねませんので。

活気bn1-24d.

それぞれの治療法にはそれぞれの特長があり、

個々の患者さんの年齢や瘤の形、サイズ、性質その他を考えて選ぶことが大切です。

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とくに患者さんにやさしいステントグラフト(EVAR)ではその利点弱点を熟知して活用することが望ましいのです。

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HOCM(肥大型閉塞性心筋症)の手術のガイドライン―守られていますか?

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HOCM(別名IHSS)単IHSSの模式図です。心室中隔の一部が出っ張っています独のガイドラインはないのですが、これを含めた肥大型心筋症のガイドラインは以下のものがあります。

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2006年度合同研究班報告)
肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)によりますと、

肥大型心筋症(別名HCM)の外科治療の適応はつぎのとおりです。

 
■Class Ⅰ手技,治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致している

1.NYHA Ⅲ度以上の症状を有し,薬剤抵抗性で,安
静時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認めるHOCM

2.意識消失発作から回復し,安静時ないし薬物負荷時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認め,薬物抵抗性のもの

■Class ⅡクラスⅡ:手技,治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致していない

1.心症状は軽度ないし認めないが,薬剤抵抗性の,安静時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認めるHOCM

■Class Ⅲ クラスⅢ:手技,治療が有効,有用でなく,時に有害であるとのエビデンスがあるか,あるいはそのような否定的見解が広く一致している

1.無症状ないし薬物療法にてコントロール可能なもの

2.症状はあるが運動あるいは薬物負荷試験にても左
室流出路圧較差のない肥大型心筋症

このガイドラインから、

薬が効かず、失神発作や心不全などの強い症状があるHOCM(IHSS)では

心臓手術を検討するのが安全上勧められると言えましょう。

実際、ガイドラインを無視した治療で大きな合併症を引き起こしたケースの報告があります。

私たちの経験ではMICS(ミックス手術)に準じた比較的小さい創で、モロー手術によってHOCMはほぼ確実に治せますし、ペースメーカーが必要となったケースは経験していません。

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