お便り110: ポートアクセスで心房中隔欠損症や心房細動などを完治された患者さん

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心房中隔欠損症(略称ASD)は先天性心疾患のなかでは一番多いもののひとつです。

多くはこどものころに検診などで発見され、こどものうちに手術を受けていただくのですが、検診でわかりにくいときなどにはそのままとなり、成人になってから心臓が大きくなったり心房細動などの不整脈がでたり三尖弁閉鎖不全症171107243を併発して心不全になってから病院に来られることも少なくありません。

以下の患者さんは岐阜県からかんさいハートセンターまでお越し下さいました。

長年の無理が影響してすでに慢性心房細動となり、心房中隔欠損症の血液の漏れのため右心室が巨大化し三尖弁の逆流も強くなっておられました。軽い運動でも息切れが出るほど心不全になっておられました。

手術ではミックス法・ポートアクセス法で骨も切らず、小さい創で上記の3つの病気をすべて一回で治しました。

お元気なお顔を外来で拝見するのが楽しみになっています。

157563164以下はその患者さんのブログからの引用です。ブログそのものも

さわさわ と・・・
 心臓手術をポートアクセスでしました 
   手術のこと・・日常の思いなど記します

というタイトルでさわやかで親しみやすいものです。心臓手術をご検討中の患者さんには参考になれば幸いです。❤こちらをご覧ください

なおここでは手術前日、当日、退院日、半年後、一年後の記事をUpさせて戴きました。それ以外はブログのほうをご覧ください。

***********患者さんのブログから**************

こんにちは!

このブログに来ていただきましてありがとうございます。
心臓手術のことだけではなく日常の事も織り交ぜて更新しています。

2014年1月 かんさいハートセンターで心房中隔欠損症、三尖弁形成、メイズ手術をしました。
その時私が感じたことを残しておきたいと思いブログを始めました。

心臓の手術はどうして怖いのでしょう?

特別な場所・・・
よくわからない事・・・

得体のしれないものは怖いです。
だったら「知ること」から始めましょう。
自分の事、心臓の事を知ることで、きっと恐怖は少なくなります。
手術や治療に前向きになれると思います。

心臓はほっておいてもよくなることはありません・・・

 

******* 手術前日の記事です ******

2014年07月**日(*)

手術日前日は麻酔科の先生やICUの看護師さん、

リハビリの担当者などが次々と来て説明を聞きました。

手術室やICUも見せていただきました。

(やっぱり明日手術なんだ・・・)

まだピンと来ていないのか、

特に不安もなく落ち着いていました。

夕方18時頃から先生のお話(インフォームド・コンセント)があるということで主人と娘が少し早めにやってきました。


手術に対する不安はありませんでした。

長年不安を抱えてきて、

やっと手術が受けられるのだから、安心していました。

それも米田先生の手術です。

心房をゴアテックスで塞ぎ、

三尖弁の形成をする。

僧房弁の状態が悪いようなら治すが、

問題なければそのまま。

心房細動はメイズ手術で治す。

これをポートアクセスで、

右の胸を少し切って行うということでした。


「右胸から心臓までの距離が遠いですが、見づらくありませんか?」
という私のばかげた質問に

「今ここで見ている20センチくらいの距離を見るのと変わりません」

と説明いただきました。

手術は15時頃に終わると言われ、

3時間前後かと思っていた私は、少しびっくりしました。

危険性なども説明いただきサインをして終わりました。


明日の手術の時間を確認して、主人と娘は帰っていきました。


******* 手術当日の記事です ******

2014年07月**日(*)
いつもと何も変わらない朝

起きると排便があったので
浣腸はしませんでした。(よかった!!)

7時頃にはシャワーを使いました。
ぜ~んぶきれいに洗って、
まな板の上のコイ?の心境でしょうか。
前日におへそのゴマもチェックされましたし・・

特に手術前に特別なことがあるわけではなかったので
落ち着いていられました。

他の病院では、剃毛をするという話を聞きましたが、
何も言われませんでした。
実際は麻酔が効いてから、

鼠蹊部近くを少しカットされていました。

家族も到着し後は時間が来るのを待つだけ。

午前9時半
みんなで歩いて6階の手術室へ。

そこで家族とはお別れ、
二度と会えなくなるというような思いは一切ありません。
身内のほうが、私よりも心配していたと思います。
ちらっと見た主人の姿が、心細げに見えたのでした。

扉を入ると、キャップ(白いふわふわのやつ)をかぶせられ

狭い手術台に自分で乗りました。
自分でもわからないのですが、わくわくするような気分もあり

少しも怖くはありませんでした。

すぐに麻酔が効いてあとは全く覚えていません。

手術は17時になっても終わらないと

娘が気をもんでいたというので、結構長引いたようでした。
その後主人は、先生から図を描いてもらい詳しい手術の説明があったということです。

ICUに運ばれた後で家族が面会したというのですが、
これも全く覚えていません。

のちにリハビリの泉さんに聞いた話ですが、

寝かされている私を見て主人が一言

「お前、サイボーグみたいだなぁ」と言ったそうです。

そういえば手術前に

「術後はたくさんの管が10本くらい体につながっているので、驚かないでください。」

と言われました。

私はまだ意識が戻っていませんから何も知らなかったことですが。

(写真を頼んでおけばよかった~)

 
気が付いたのはICU

誰かの呼ぶ声が聞こえてふわふわとぐるぐるとした感じで
それでも返事が出来ないのがもどかしかった。

一生懸命目を開けようとしていた気がします。

先生の腕が目に入りました。

やっと目が覚めた。

「終わったんだ!」

でも喉の奥がヘン

人工呼吸器?

何かが喉の奥にあたって吐きそう・・

すぐに外してもらえたのですが

今度は喉が渇いて仕方ありません。


看護師さんに頂いた水が「おっいっしい~!!」

お水ってこんなにおいしかったんだ!

その後も氷をいただき喉の渇きを潤しました。

 

******* 退院時の記事です *******


2014年07月**日(*) Bara

2日後

元の4人部屋に戻りました。

手術中に部屋の人数は私の他1人になっていました。

私より10歳ほど年上のその方は

手術は終わって人工透析が必要になり、

いまだ退院のめどが立たないようでした。

 

私はリハビリをがんばって早く回復するしかありません。
まだ足元がふらついていました。

少しふらつきながら点滴をぶら下げて、
両側から支えられて病室の廊下を歩きます。

 

廊下をどこまで歩いたかで

歩行距離を計算します。

この後毎日何メートル歩いたか記録するようになりました。

 

夜中に痰が絡むので「クッ!カッ!」と言って

うるさいんだろうな~(ごめんなさい^_^;)

ポータブルトイレの音もごめんなさい!

そのたびに心の中で謝っていました。

それが大部屋のつらいところですね~

反面、いろいろな話ができるのがいいところ。

気分も明るくいられます。

 

毎朝採血と体重測定があります。
血液検査によって薬の種類や量を決めていたようです。

体重は体に水が溜まっていないかむくみを知るためです。

前日より1キロ多く数字が出たことがあって

測り直したことがありました。

結局機械が狂っていただけでしたが・・

 

切ってあるのは右胸の下と右足の付け根。
回診に来た増山先生に胸は何センチ切ってあるかと尋ねると
「6センチ」との事
ちゃんと測って切ったと言われました。

 

足の付け根は人工心肺のために4~5センチ切ってありました。

その他に左首にやや大き目なドレンの穴、

右胸の上部脇の下あたりに穴が一つ、

右の鎖骨あたりに跡があります。

 

手術直後から創はほとんど痛みません。
手術後に痛かったのは、
手術の創ではなく右肩から背中にかけてでした。
ポートアクセスの際、

右手を挙げる体勢で手術するからだそうです。

しばらくの間、看護師さんに背中に湿布を張ってもらいました。

 

この頃には腰痛もずいぶんよくなっていました。

背中の痛みのほうが気になって仕方ありませんでした。

 

また、深呼吸をすると、胸が(肺が)痛い。
これは手術でしぼんだ肺が元通りになるまでは仕方ないそうです。
「早く肺を元に戻すために深呼吸をしてください。」と言われました。

5日後には自転車のマシンをこいで汗だくになり、
それから毎日負荷を掛けながら20分。

リハビリのマシンに心電図のモニターがついているのですが、

規則正しいリズムで、どんなに息がはずんでも乱れることがない。

・・・感激でした。


この頃にはシャワーも使えるようになっていました。

気持ちがいいと思えるのは幸せなことです。

 

術後米田先生が病室を訪ねてきて

「肋間神経ブロックをしてあるから痛みはないはずですが、

どうですか?心臓の下の方もしっかりメイズ手術しておきましたから」
と言って下さいました。

本当に痛みがないのです。

神経の麻痺は2~3か月で戻ってくるようです。

しびれているような感覚があるだけです。

この後ず~~っとぴりぴりとした感覚は半年ほど続きました。

 

暇なときはリハビリを兼ねて、院内を散歩していました。
この病院は院内にローソンがあり病衣のままで買い物に行けます。
文庫本も少しあり、2冊ほど買って読みました。
浅田次郎「鉄道員・ぽっぽや」良かったです。

ヨーグルトが食べたくなって買いに行きました。

コインランドリーの洗剤も買ってきました。

 

このころ退院したら
絶対に食べたかったもの「激辛のラーメン」!!

今から思うとあっという間でした。

いつも優しく接していただいた看護師さんたち

その仕事の大変さを改めて知り本当にありがたく思いました。


******* 術後半年のブログ記事です ********


2014年07月**日(*) Hana_1

 

地元の循環器の先生が米田先生のお知り合いということで、

逆に紹介をいただき最近は地元で薬をもらっています。

 5月に奈良に行ったときは、
旅行気分でひとり電車に乗りました。
あの1月の入院の時とは全く違った気持ちで奈良へ行くのが楽しみでした。

後は1年後に来て下さいと言われ、
帰り際「気を付けてお帰り下さい」
との先生のやさしい言葉に感激して帰ってきました。

 順調に回復しているようです。

 しっかりとメイズ手術をしていただいたせいか、
不整脈も起きていません。

 規則正しい脈拍に安心する毎日です。

 頭痛も以前と比べると随分減ってきました。

 毎日のウォーキングもなるべく欠かさないように、

 姿勢と呼吸を意識して速歩だったり、

 少し走ってみたりしながら行っています。


田舎なので、周りの景色の美しさに改めて感動しています。

 筋力がつくようなストレッチも時間があればするようにしました。

 ただ、私の性格からいって
なにごともほどほどに出来ないこともあり、

 それがストレスにならないようにしなくては

 ・・と思っています。


最近、地元の循環器の先生に言われたことは

 「せっかく米田先生に手術してもらったのだから・・」

 という言葉でした。

 少しの動悸にも「心房細動?」と不安になり

 体のことばかり心配していた私に

 そのとき先生がおっしゃったのです。


以前よりも確実によくなっているのに心配ばかりして、

 毎日を楽しめないようでは手術をした意味がないのではないか

 ・・というようなニュアンスでした。


何のために手術をしたのか。
これからの人生を楽しむためにしたのではなかったか。・・・

 体をいたわりながらも充実した楽しい毎日を送ることに意味があると思います。

 半年にしてあらためて気づきました。

「せっかく米田先生に手術してもらったのだから・・・」

 ・・ですね!

 
自分の体に起きていることが不安だったり
信じたくないと思うのは仕方のないことだと思います。

 
それでも自分で行動を起こすことが
少しでも良くなる方向に向かうとしたら、
いろいろな方法を試してみるべきだと思います。

 私は迷った末に米田先生にメールを送ったことですべてが始まりました。
こんなに穏やかな気持ちで心臓の手術を受けられるとは思ってもいませんでした。
そして今、本当にありがたく毎日が幸せです。

 皆様に感謝です。
この手術で、一旦は自分の心臓が止まってしまったにもかかわらず、こうして生きていける。

 そのために尽力される医療の立場の方々には
本当に頭の下がる思いです。

 今まで気にしなかった自分の心臓が、とても気になります。

 私は、この先もきっと心臓に関しては、

 興味を持たないではいられないでしょう。

 ただ、心配はしないで暮らしていきたいと思います。

 最善を尽くしていただいたのだから、
これから先は何か起きた時に考えればいいのではないかと。

 30年も待ち続けた手術がやっと終わったのです。

 
****** 術後1年弱の記事です *******


2014年10月**日(*) Hamanasu
昨年の今頃は悩んでいた。


手術が必要なのか

本当に手術をした方がいいのか
このままではいけないのか
どこに相談するか
どこの病院にするか

わからないことだらけで・・・

それでも、30年来の答えを出さなければいけないのだろうとは思っていた。

「手術」という選択

確かに苦しい胸をそのままにしておくのはよくないだろうという気持ちはあったが、

自分が心臓手術を受けるという実感がわかなかった。

思いっきり脅かされて「長嶋さんみたいになりますよ~!」

今でもその言葉はドキッとする。

ありがたいと言えばありがたい
その言葉で踏ん切りがついたのだから・・・

そして、たった一つ

「ハートセンター」の心臓血管外科医を頼りに
少しづつ気持ちを固めていく。

心房中隔欠損症はポートアクセスで手術出来る。

心房細動はメイズ手術で治る。

名古屋で手術を受けたかったという気持ち

新しい「かんさいハートセンター」への不安

 

「心臓」という場所を切り開くことへの「安心」を手に入れたいと思っていた。

祈るような気持ちで米田先生にメールを送ったのを覚えている。

先生の返事をいただいてからはすべてが早く回りだしたような気がする。
気持ちが固まった以上、自分がどこまで納得して手術に挑めるかだけだった。
ただひたすら、「安心」を手に入れたかった。

そして今

確実に一年前とは違う「私」がいる。

胸が楽になっただけではない。
大きく変わった気持ちも感じている。

今までの人生への反省もあり
感謝もあり
今後の希望も大きくなった。
いい人生だったと最後に思いたい。

手術に対する「安心」は手に入れたものの

今後に対する「安心」は誰も手に入れられないもの・だと知った。

 

**********************

その後、手術から1年あまりたって、以下の記事がUpされました。

振り返って総括する内容ですのでここに転載させて頂きます。さらに詳しくはこのブログを直接見られると良いでしょう。

 

********1年あまり経っての記事******

 


2015年01月08日(木)
Haibisu

 

ちょうど1年

 

新しく心臓が動き始めてから・・・

 

 

あっという間の1年でした。

 

 

体だけではなく、気持ちまで大きく私を変えてくれた心臓手術でした。

 

 

手術をして本当によかったと思っています。

 

 

現在の状態はずいぶん良くなっていると思います。
手術をしたことを忘れるくらいに・・・

 

走っても苦しいことはありませんし、体力に自信もついてきました。

 

時々感じる「ドキドキ」感はあります。
咳も相変わらず出ますが、
横になった時というわけではないので少しあきらめています。

 

 

 

 

現在の創の状態です。

 

わきに一つの丸い傷

 

斜めに乳房の下
・・・とてもきれいです。

 

・・・痛みもありません。
創自体の痛みはないのですが、胸がチクン、ズキン、ということはあります

 

 

 

私の受けたポートアクセスについてまとめてみました。

 


 

心臓手術の一つの方法としてポートアクセスがあります。

 

MICS(ミックス:minimally invasive cardiac surgery)手術です。
以前からおこなわれていた胸の真ん中で縦に大きく切開し胸骨を切る胸骨正中切開に対して、切開が小さく低侵襲(体への負担が低い)という利点があります。

 


私が20代で心臓手術を考えた時に気になるのは胸の傷でした。
当時の手術は(30年ほど前)胸の真ん中を大きく切る正中切開が当たり前でした。

 

その後、心房中隔欠損症ではアンプラッツァーというカテーテルでの治療が出来るようになりましたから、胸を切らないでも済むわけです。
但し、心臓の欠損(穴)の状態にもよるようですし
私には若干の金属アレルギーがあることも心配でした。

 

 


そこで、ロボット手術に関心を持ちました。
金沢大学の渡辺剛先生(現:ニューハート・ワタナベ国際病院)が行っていらっしゃる「ダヴィンチ手術」

 

創がないということは魅力でした。
(創はないが穴の痕がいくつか残るということです)

 

 


しかし一番問題なのはお金がかかる事です。
保険がきかないなんて・・・
実費ということですよね。「○百万」
とてもダヴィンチ手術には踏み切れませんでした。

 

 


それと、私の場合心房細動がありました。
心房中隔欠損症の手術だけなら割と簡単なもののようですが、
心房細動があるということであれば、
メイズ手術をやっていただきたいと思っていました。

 

 

それもポートアクセスで・・・
そこで、メイズ手術もお願いするのであれば米田先生かと思いました。

 

 


実際に検査をしたら三尖弁閉鎖不全もありました。
心房中隔欠損症で穴をふさぐだけでは済まされない状態です。
メイズ手術と三尖弁形成も同時に施術していただきました。

 

 


それらを含めての手術という点では、
ポートアクセスは条件を満たしていたと思います。
6センチの創と1個の穴が残りましたが、

 

結果的によかったと思っています。
今見ても大変きれいで目立ちません。

 

 


胸に傷が残ることで心臓の手術を躊躇している人がいるかもしれません。
そうであれば、ぜひポートアクセスがいいと思います。
「創は勲章」とは思うものの、小さいに越したことはありません。

 

 

痛みの面でも、術後の回復の面でも、
本当に心臓の手術をしたのかと思うこともあります。

 


ポートアクセスも、もしかしたらいろいろなやり方があるのかもしれませんが、私にしていただいたものは全く痛みがありません。

右肋骨の間(乳房の下)を6センチほど斜めに骨に沿って切ってあります。
その際に肋間神経ブロックがしてあるということで痛みがないようです。
これはほんとにうれしいことです。
術後の痛みは随分なストレスになると思うからです。

 

 


病気の状態によってはポートアクセスが出来ない場合もあるようですが、
心房中隔欠損症、僧房弁置換術、僧房弁形成術 大動脈弁置換術、大動脈弁形成術、三尖弁形成術、メイズ手術などで行われるようです。

 


ポートアクセスは視野が狭いこともあり技術がいるようです
この手術を多くこなしているベテランの医師を選んでください
たくさんの経験が手術の質を上げるものだと信じています。

 

 

 

利点
①傷が小さい
②痛みがない
③社会復帰が早い
④保険適用

 

①については傷が右胸乳房に沿って下部を斜めに6センチ
胸骨正中切開と比べて傷は目立たず、温泉などでも気になりません。
正面から見ても傷痕は見えません。
この手術は右胸から心臓へ直接アプローチします。
あくまでも開胸手術で、胸腔鏡手術ではありませんでした。
小さい切開で長めの特殊な器具を使っての手術になります。

 

 


②痛みは全く気になりません。「痛みなし」と言ってもいいくらいです。
通常の心臓手術は胸骨を切りますが、

 

ポートアクセスは骨を切りません。肋骨の間からの手術です。
肋間神経ブロックをしているので、術後創そのものの痛みはありません。

 

 ピリピリした神経の感覚が残ります。

 

 


③骨を切らないので術後の治りが早いです。
私の場合術後10日で退院

 

 退院後10日目には自動車を運転して会社へ行きました。

 

 


④保険が適用されるので3割負担で済みます。
なおかつ高額医療制度がありますので、私は450万ほどの手術が13万強で済みました。

 

注意点


①ポートアクセスはどの病院でもやっているというわけではない。
狭い視野からのアプローチになりますから技術が必要です。

②人工心肺を右下肢の付け根にある大腿動脈につなぎます。
そのため、大腿動脈や大動脈に動脈硬化がないひとに限定される。

 

 


**********おわりに***********

素晴らしい体験談ブログをありがとうございました。  150464174

心臓手術を受ける患者さんの中でも、強い痛み症状のない病気の患者さんは将来の健康といのちをかけて、病気を勉強し理解し、克服する決心をされ実行された方々です。

私も含めて、手術は誰でもいやなものです。(私、20歳のころ、お腹の手術を受けるはめになって落ち込みと八つ当たり状態だったのを想いだします) 

それに敢然と挑戦し健康を勝ち取られたことに、あらためて敬意を表したく思います。

またその大切な手術をお任せ頂いたことを光栄に思います。

また外来でお元気なお顔を拝見するのを楽しみにしております。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り109 巨大な心房中隔欠損症などのためMICS手術を

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心房中隔欠損症(略称ASD)はそう怖くない心臓病と思われている 142991182ふしがあります。

しかしその穴が大きく、多量の血液が漏れたり、心臓や肺が壊れてくると危険なことさえあるのです。

つぎの患者さんは50代の男性で働き盛りの中、心房中隔欠損症のため心不全が発生し苦しくなって遠方から米田正始の外来へ来られました。

穴は巨大で、もれる血液が多いことから右心房や右心室も巨大、そのため三尖弁も付け根が広がり強い逆流つまり三尖弁閉鎖不全症を合併していました。心房細動などの不整脈も併発していました。

患者さんが安全に確実にお元気になれるMICSの皮膚切開よう、そして早い時期に仕事復帰ができるよう、ミックス(ポートアクセス)で手術を行いました。

巨大な穴を患者さんの自己心膜で閉鎖し、三尖弁を形成し、右心房のメイズ手術を行いました。

術後経過は不整脈などのため少し時間を要しましたが、おおむね良好で日一日と回復され、お元気に退院されました。

外来でも体力がついてきておられることがわかり、喜んでいます。

以下はその患者さんからのお便りです。これから楽しく活発に仕事や楽しみに熱中してください。

***** 患者さんからのお便り*****

 前略 IMG_0626

朝夕はずいぶんと涼しくなりました。米田先生はじめハートセンターの皆様にお

かれましては、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。

この度は私の心臓手術に関しまして本当にお世話になりありがとうございました。

当初はあまり自覚症状も無く病気に対してただ漠然と考えているだけで月日が経
つばかりでした。

しかし、二年ぐらい前から動悸、息切れなどを感じるようになり、地元病院の先生からも手術の事を促がされるようになり、不安も募ってきて、病気に対して真剣に向き合っていかねばと思うようになりました。

一年前ぐらいから自分の病気がどのようなものであるか、又、それの治療方法、手術と調べるようになり、今年の春先から手術をお願いする病院、先生を捜し始めました。

っと決めかねていた時に、七月初め、米田先生並びにかんさいハートセンターの
事を知りました。目の前が明るくなり、進むべき道が現れたと思いました。そし
て、ここでお世話になり手術受けようと思いました。

とは言っても人生で初めての入院、手術。しかも心臓という事で不安が無かったとは言えませんでした。

も先生に初めてお出会いした時から、判りやすい説明と身近に感じる先生の人柄
で、何の不安も無く手術に望む事ができました。

術後も何らかの症状が出る度に、先生方の説明や看護師さん達の暖かい対応により無事退院を迎える事ができました。

一カ月余りの入院生活を、このような環境の中で、送らせてもらったこと、本当にありがたく思っております。

今退院を終え、長い間頑張ってきてくれた心臓にお礼をいいたい気持ちで一杯です。そして、今回の手術によって、治していただいた心臓とうまく付き合っていけたらと思っております。

これからも、このハートセンターが多くの患者さんを救ってくれる事と信じております。皆様の御健康と御活躍をお祈り申し上げます。

本当にありがとうございました。

草々  

 

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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ファロー四徴症 【2019年最新版】

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最終更新日 2019年1月6日

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◾️ファロー四徴症とは

TOF.

右図のように

1.心室中隔欠損症(略してVSD)、

2.肺動脈狭窄、

3.大動脈騎乗、

4.右室肥大の4つを特徴とする病気です。

これらはひとことで申し上げれば、漏斗部中隔が前方に変位した結果ということでひとまとめにできるようです。

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◾️ファロー四徴症の症状と診断は

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先天性心疾患のなかでチアノーゼつまりくちびるや手指が紫色になる低酸素血症が起こる病気で一番多いことで知られています。

こどものころにはこのチアノーゼや心雑音で見つかります。運動時にすわりこんだり、ばち状指などの所見も見られます。

ファロー四徴症は心エコーで診断がつきます。上記の特徴をひとつひとつ示せば診断に至ります。

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◾️ファロー四徴症の治療は

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診断がつけば、そのA309_093ままでは予後が悪いため手術を検討することになります。心カテーテル検査を行い、左室右室のサイズ、肺動脈がどれだけ発育しているか、他の心臓病はないか、側副血行路などを検討し、それによって根治手術ができるかどうかがわかります。

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重症度におうじて、こどもの間に姑息手術で酸素を確保し肺を育て、心臓もバランス良く育てます。それから根治術で病気そのものを治してしまうこともあります。一気に根治術で治せるケースもあります。

根治手術では心室中隔欠損の閉鎖と,肺動脈狭窄の解除を行い、その成績は近年良好になっています。

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その後も不整脈や肺動脈狭窄などの注意が必要ですが、おおむね手術後の経過は良好です。

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◾️ファロー四徴症、長期的な注意点は

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こどもと大人という壁を越えて、ライフタイムでの健康管理がものを言います。

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ただしVSDが再発したり、肺動脈狭窄が悪化したり、弁つきの人工血管を使用した患者さんではその成長にともなって弁も人工血管も小さ目になり、それらを修復する必要がでることもあります。

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私たちのところへ来られる患者さんはこうした状況の方が多いようです。

こどもの病気、しかし体は大人、のため両方のノウハウを結集した手術や治療を行います。

再手術に慣れていることも役立っています。

必要におうじて、こども病院の先生にもお越しいただき、チームをつくって万全を期すようにしています。

199724069
人生の長い旅をハートチームで支援しよう

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ファロー四徴症は治せる病気ですし、きちんとしたアフターケアによって長期の健康や安全が確保しやすい病気です。患者さんやご家族におかれましては、遠慮なくご相談いただければと思います。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り102: ポートアクセスで心房中隔欠損症ASDを

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心臓病のなかでも病脳期間つまり病気で悩む年月が長い病気では患者さんも手術がなかなか決心つかず、悩みつづけることがまれならずあります。生まれた時から病気をもつ先天性心疾患はその一例です。

下記 P1140323cの患者さんは心房中隔欠損症(略称ASD)のため長年の熟慮の末、私の外来へ来られました。はるばる岐阜県からお越し下さいました。

永い間待った甲斐があったねと言っていただけるよう、入魂の心臓手術をさせて戴きました。といってもいつもちからが入っており、手を抜いたことはありませんが、要するに喜んでいただけるよう、しっかり頑張りました。もちろん私だけでなくハートチーム、コメディカルや事務職の諸君を含めた拡大ハートチームの努力でした。

痛みが少なく普段の生活に早くもどれるようポートアクセス法というもっともMICSらしい方法で、心房中隔欠損症をパッチで閉鎖し、三尖弁閉鎖不全症を三尖弁形成術で手直しし、かつメイズ手術で心房細動を直しました。創は乳腺に隠れてほとんど見えないものになりました。副次創もほとんどないためお風呂に入っても心臓手術を受けたとは思われないレベルになりました。

心房中隔欠損症(ASD)は心臓手術のなかでもっとも簡単な手術と言われていますが、なぜか事故や訴訟が起こりやすい疾患とも言われています。やはりどんな病気に対してもちからのこもった入魂の手術が大切と思います。

お元気に、笑顔で退院していかれる患者さんのお姿をみて、理屈抜きでしあわせな気分になれました。私もまだ初心を忘れていないのかもしれません。

以下はその患者さんからのお便り(メール)です。またお会いしましょう。

*********患者さんからのお便り********

 

高の原中央病院 かんさいハートセンター

米田先生

 

今年1月8日に先生に手術をしていただきました岐阜県の**です。

半年が過ぎ、体調もずいぶんよくなっております。

遅くなりましたが先生をはじめ、

手術にかかわって下さった皆様に御礼が申しあげたくお便りしました。

 

手術から入院生活まで本当にお世話になりました。

心より感謝いたしております。

 

心房中隔欠損症で長年不安を抱えておりましたが、

やっと手術を受けることが出来ました。

先生にめぐりあえたこと、本当にうれしく思います。

 

心臓手術となるとやはりとても大ごとで、

なかなか踏ん切りがつかないものですが、

自分でも不思議なくらい安心して手術を迎えることが出来ました。

昨年10月、健康診断で心房細動を指摘され、やっと決断が出来ました。

 

以前から、もしも手術を受けるのなら、距離的にも近い

「名古屋ハートセンターにいらっしゃる先生」と決めていました。

それは1~2年前にTVで先生が取り上げられている番組を拝見したからです。

ネットで調べましたら、昨年10月には先生が奈良でハートセンターを

立ち上げるとのことで、すでに名古屋にいらっしゃらなかったのです。

先生のWEBを拝見しました。

素人の私にもわかりやすくいろいろな情報を知りました。

先生のお考えや、手術のことなどを読み、奈良で手術を受けると決めました。

 

自分で納得して、安心できる先生に手術をしていただくということは、

私の不安を取り除いてくれました。

周りの人には、「よく奈良まで行ったね」

「一人で遠いところは心配じゃなかった?」などと言われましたが、

私としては本当にやっと30年来の不安から解消される。

手術が受けられる。という安心感だけでした。

こんなに穏やかな気持ちで心臓の手術を受けられるなんて思ってもみませんでした。

それはたぶん、先生の手術や患者さんに対する思い、数多くの今までの症例、など

たくさんの情報を拝見させていただいたからです。

どんなに優秀な先生でも、立派な病院でも、

そこで患者さんと向き合う人としての姿が全くわからないのは不安です。

患者ではありますが、一人の人間として尊重されたいと思っています。

 

私に不安がなかったように、これから大きな決断をすることがある患者さんにも

先生のお気持ちが伝わりますようにと願っています。

そしてかんさいハートセンターがより一層充実することをお祈りいたします。

先生お体に気を付けてますますご活躍ください。

また来年には外来に参ります。

 

追伸  奈良が故郷のように感じられます。

 

7月19日

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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11b) 冠動脈瘤ーー重症では注意が必要 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年1月2日

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◾️冠動脈瘤とは?

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冠動脈瘤とは心臓に血液を送るたいせつな冠動脈の壁が壊れてこぶのように膨らむ病気です。Fotosearch_CAR05005

右図のうち赤い線は冠動脈を示します。ちなみに青い線は冠静脈です。(やや下のほうから見た図です)

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冠動脈瘤の成因として、先天性つまり生まれつきのタイプから後天性つまり生まれてから川崎病などの感染その他の原因で発症するタイプがあります。先天性心疾患である冠動脈瘻が原因で発生する冠動脈瘤もあります。

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◾️冠動脈瘤が悪化するとどうなるの?

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冠動脈瘤はその中で血流がよどんで血栓ができると心筋梗塞となりますし、瘤があまり大きくなると破裂して大出血します。いずれの場合でもいのちにかかわることがあり、油断禁物です。

とくに瘤破裂などが起こりそうな場合は心臓手術の適応となります(手術事例 冠動脈瘤)

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◾️冠動脈瘤を早期発見するために

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かつて冠動脈瘤の精密検査といえばカテーテル検査というやや大がかりな検査が必要でしたが現在はCTスキャンでとくに痛みや苦痛なく、10分ほどの短時間でかなり詳細までわかります。A309_085

造影剤は必要ですが、それも静脈からの点滴のため苦痛が少なく、点滴や飲水などを工夫することで腎臓への負担も最小限に出来ます。

さまざまな工夫により放射線被曝も少量に抑えることができており、患者さんにとって朗報です。

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予防が第一で、ついで早期発見です。見つかればほとんどの場合打つ手があります。

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◾️冠動脈瘤の治療は?

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冠動脈瘤が破裂しそうな時や、瘤の中に血栓ができて心筋梗塞などが発生しそうな場合には外科手術が考慮されます。

瘤を切開し、中にある血栓を摘除し、瘤をきれいな動脈に形成することが治療です。狭窄などがあれば冠動脈バイパスを付けることもあります。瘤が小さく、破裂や血栓の心配が少ない場合、しかし増大傾向がある時には瘤を外から包み込み、これ以上の拡大や進行を防ぐこともあります。これは体外循環を使わないオフポンプで出来るため患者さんの体の負担が軽くて済みます。

冠動脈瘻が原因で冠動脈瘤ができている場合は、瘻を徹底して閉鎖するようにしています。それにより長期の安定性が得られやすいからです。

私たちはその患者さんの冠動脈瘤と全身の状態に合わせて上記の手術法を選択しています。そして15MHzの高速エコーで瘤の内側の状態を確認しながらベストな形成を行なっています。

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◾️冠動脈瘤と川崎病との関係について

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この病気は川崎病の後遺症として起こり得ること 巨大な冠動脈瘤が知られています。

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写真右は川崎病の既往のある50代男性の冠動脈瘤(赤い矢印)です。巨大な瘤の中に血栓が多量にでき、それが下流へ流れて重要な冠動脈を閉塞させ心機能が大変低下していました。

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瘤や合併する冠動脈狭窄のために手術が役立つことが多々あります。

川崎病に特有な血管の炎症やそれによる血管内膜の破壊が強いケースほどバイパス手術は役に立ちます(心臓手術事例)。

というのはバイパス手術でもちいる内胸動脈グラフトが血管を守るホルモンを出せるからです。

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カテーテル治療PCIで使うステントとくに薬剤溶出性ステントは血管内膜を傷めるため川崎病では一層不利な状態になります。

なので、かつてこどもの頃、川崎病で冠動脈に多少でも病気が発生したかたは、定期健診を受けられることをお勧めします。

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12) 大動脈 弁下狭窄症 IHSS へ進む

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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バルサルバ洞瘤へのミックス手術 【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️バルサルバ洞瘤へのこれまでの手術は

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バルサルバ洞瘤は比較的珍しい病気ですが、 バ洞破裂いったんこれが破裂すれば、患者さんは急性心不全やショック状態となり、いのちにかかわることさえあります。

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このバルサルバ洞が破れれば、多くの場合手術が必要です。右図にその破裂パタンを示します。しかしバルサルバ洞組織は弱いため、手術の後の再発、再破裂の報告が少なくありません。

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しかもこのバルサルバ洞瘤の手術はほとんどの病院で、胸骨正中切開で手術が行われています。つまり皮膚切開は通常どおり胸の真ん中で大きな切開、たとえば長さ20-25㎝にもなります。

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これまでは安全第一、内容第一ということで創は気にしないという風潮が強いでした。現在も同じです。

しかしバルサルバ洞の手術を受ける患者さんの多くは10代ー30(40)代の若者です。そうした若者にあまり大きな創で、心にまで傷をつけることを私は好みません。

私たちは安全性ときれいな創を両立させたいということから次の工夫を重ねて来ました。

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◾️そこで工夫を、まず安全性から

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%e8%ab%96%e6%96%87264figure%e3%81%8b%e3%82%892まず安全性では、世の中でときどき見られる、バルサルバ洞瘤を修復したところのすぐ隣が破れて病気が再発したという問題を大動脈基部再建の方法をもちいて解決しました。

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この新しい方法はすでにトップジャーナルにも掲載され、今後の展開が期待されています(英語論文264番をご参照ください)。右図にその方法の一部をお示しします。つまりバルサルバ洞の脆弱な組織を使わずに、しっかりした組織(例えば弁輪など)だけを活用して穴を遠巻きに閉じるのです。

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これまで全例、きれいに一発で修復することができています。中には他病院で手術を受けたがうまく行かず、私たちのところで治った患者さんも複数おられます。

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◾️ついで目立たない小さな傷跡の手術を

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IMG_0069bつぎにきれいな創について、この安全なバルサルバ洞の修復再建法をきれいな創でできるように工夫して来ました。そこでポートアクセス法やその他ミックス法を応用して正中で小さい皮膚切開で手術できるようにしました。

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この結果、若い患者さんはのびのびと夏服やTシャツを楽しめるようになりました。近い将来はポートアクセス法でも手術できるかも知れませんが、現在のところ、あまり無理はせず、確実に、かつきれいにというポリシーで上記のミックス手術を行っています。

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患者さんからは、バルサルバ洞瘤破裂という難しい手術をこんなにきれいな創で治してもらえてうれしいとよく言われます。

今後もこうした方針で手術法を改良していくつもりです。皆様のご意見を頂けましたら幸いです。

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執筆:米田 正始
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お便り97: 冠動脈瘤の患者さん

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冠動脈瘤は心臓に血液を送る冠動脈がこぶのように膨らむ病気です。これにはいろいろなタイプがあります。


Ilm17_da05008-sこどもの頃に患った川崎病(MCLS)の後遺症として大人になってから冠動脈瘤が大きくなったり心機能が低下したりすることもありますし、複数の瘤ができることもよくあります。また冠動脈ろうに合併することもあります。

冠動脈瘤そのものが大きく、破裂する懸念があればそれを修復する必要があります。瘤を切開して小さくするとか、瘤を潰すとか、外側にガードを付けるなどさまざまな方法があります。瘤の影響で血液の流れが低下しているときには冠動脈バイパス手術が必要なこともあります。個々の患者さんの状態に応じて適切な治療法を選ぶ必要があります。

私たちは再発しないよう、完治を狙った手術を行っています。将来瘤になりそうなところもなるべくガードをつけて予防するようにしています。必要なところには冠動脈バイパスをつけて安全を確保します。

以下の患者さんは70代男性で冠動脈瘤のため来院され、ハートセンターで手術を受けました。しっかりと治療させていただき、いつしか心の絆ができたことをうれしく思っています。

これからも永くお元気でいて頂けるよう、何かと応援したく思います。

 

********患者さんからのお便り******


私の心臓疾患治療体験談

私は米田先生のお陰で冠動脈バイパス3本、冠動脈瘤2個の心臓手術を受け、命拾いをしました。以下に私の体験談を披露し、同様の心臓病治療中の皆さんの参考に供したいと思います。

私の祖父が7月の暑い日中に畑に出て、49歳心臓発作で急死。父は82歳、心筋梗塞で急死しています。しかし私は若い時は自分自身の健康状態から、遺伝的因子など考えにも及びませんでした。

1964年〔40歳〕の頃  会社の健康診断で血液・レントゲン検査があり、血糖値が高く精密再検査

を要することになり、E会社勤務の帰途中のK市民病院(愛知県)を選び通院することにした。そこで運動前後の心電図等検査結果は心電図に本来プラスに出るべき波形が逆にマイナス方向の波形があり不整脈と診断された。

当時は仕事に紛れ、あまり自覚症状も無く治療薬も飲んだり飲まなかったりしていた。或るときは主治医から何の説明もなく心臓に放射線治療〔約1時間〕受けたが、此れが適切であったか今も理解できない。その後主治医から私の不真面目さからか他の病院に掛かるよう指示され、以後上飯田病院〔名古屋市内〕に通院することになった。

1974年〔50歳〕の頃  上飯田病院に変てってからも仕事に追われ、通院が不規則であった。

   私は毎朝仏壇の前で読経中、或る時に胸の動悸や息苦しさがあり声を出す事が出来ない事があった。また当時の私は各地への営業出張が多く、ある時には電気技術者対象の講演で聴講者の前での講話続行が苦しく、時には緊張すると息苦しさが激しかった

1984年〔60歳〕の頃  60歳でE社を定年退職し、同年Y社に再就職したが、ここでも地方出張が多く通院はほとんど出来なかった。

まもなく上飯田病院から中度の心疾患者として名城病院〔名古屋市内〕を紹介され、以来同循環器内科部長のI主治医に掛かることになった。当時私の体重は80kg、胴囲98cmと肥満の頂点にあり、これ等は心臓病に悪影響したと思われる。

ここで初めての麻酔のもと腕からの心臓カテーテル検査で血管の一部に狭窄部があることが確認された。しかしこの時手術は見送られ、引続き投薬のみが続行された。

1990年〔65歳〕の頃  その後Y社を退職し、自宅近くのS社に再々就職した。この頃から運動不足を自覚し、毎早朝の時間を利用し、矢田川河川敷の千代田橋から三階橋まで往復約5キロメータを2時間かけてのウオーキングしたことがある。

その後もウオーキング距離は2キロと短くなったが毎朝6時30分のNHKラジオ体操にも参加するなどの健康つくりに専念した。お陰で体調はよく心疾患はすっかり忘れるまでになった。

2000年〔70歳〕の頃  毎朝のウオーキングに左足が痛く次第に歩くテンポも遅く歩行距離も更に短くなり、また手足の痺れ、息苦しさがあった。また或る時には風呂上りに悪寒を催す等体力の変調が見られた。                               

2008年[75]の頃   平成20年10月26日朝5時ごろから矢田川河川敷ウオーキングで、天神橋まで来たとき激しい息苦しさに襲われ苦しい中にも我が家に戻り、ベットに付くが苦しさは収まらず救急車の酸素吸入状態で名城病院に搬送された。

原因は不整脈と診察され入院翌日に電気ショックをうけ1週間後に退院した。

2009年1月16日   名城病院で初めてのカテーテル検査から10数年も経過し、ここにきて再度116日カテーテル検査があった。

この検査結果報告に初めて妻や子供達も参集するよう指示があり、この場で初めて冠動脈瘤、血管膨張部・狭窄部等があり、このままでは冠動脈瘤がいつ破裂するかわからず早期の心臓手術が必要とされた。

病気治療の無知な私達は10数年間経過するまでカテーテル検査を怠り、今に至り早急に「心臓手術をしなければ命がない。」とアドバイスされた。

ここまで病状が悪化したことに対し不害さを思い知らされ病院を変える事にした。

一般的に大病院は多くの患者が通院しており、主治医にもよるが1人の診察に時間が掛けられず適格な病状診断が出来ない場合も多いかと思われる。私も循環器内科薬冶療のみに頼ったことが反省させられる。早速[名医のいる病院]等の雑誌やインターネットで名医探索をした。

2009年3月13日   インターネットその他で我が子たちが心臓手術の名医を調査してくれた果、

開業後の知名度もなかったが名古屋ハートセンター米田先生と決め、3月13日同病院に入院し再検査した。

主治医は副医院長米田正始先生にお願いするとし、316日〔月〕米田先生執刀のもと補佐に深谷・北村先生が付き午前10時~午後17時ごろまでの極めて長時間で難易度の高い心臓手術が行われた。

米田先生の術前後の説明その他資料等から総合すると手術は先ず喉から呼吸気管、下部には排尿管を通し、そして胸部切開手術が開始された。

私の破裂寸前の冠動脈瘤は心臓の表と裏側に位置している。このため表側のバイパス血管手術後、予め用意された手術視野の悪い心臓裏側にある冠動脈瘤の手術には心臓の位置を変えなければならない。これには人工心肺装置を使う方法もあるが、弊害もあるので今回は新しく開発された手術法の拍動する心臓の動きを部分的に抑える器具をもちいてのオプキャブ (OPCAB)法が採用された。この手術には胸骨は或る程度大きな切開となるものの手術の安全確実な方法とのことであった。

まだまだ難易度の高い手術もあるが、私の手術はバイパス3本、血管外部からの狭圧補助管2箇所を一部は自分の足の血管を採用して今回の難手術は成功した。

そして入院20日後の4月1日〔水〕無事に退院することが出来た。 しかし術後と言ど脳梗塞、心不全不整脈、心筋梗塞、肺炎等に依然として注意が必要との事であった。

     今回私は優れた心臓外科手術の名医米田先生にも恵まれ、また医療費は高齢者医料補助による患者負担費10分1として計算すると約130~150万円掛かったことになるが、補助のお陰で大きな手術ながら低額費で済んだ。

私は死の一歩手前で助かつたが、これも献身的な皆さんのお陰と深く感謝する共に大変ご心配をお掛けし申し訳なく茲に心からお礼を申し上げる次第である。        

2009723日 退院後は自宅近くの北病院浅海先生に米田先生の指示で事後治療をお願いする事になった。その約5ケ月後早朝散歩の3歳年上の友人からの勧めで私も2カ月後北病院で肺炎予防ワクチン注射をお願いし此れが災いしたか ?

やがて胸苦しさを覚え、私は名古屋ハートセンターに駆け込みレントゲン検査を受けた結果、胸水が溜っているとの診断で再入院。米田先生の術後は「肺炎余病等の注意」が現実となり同先生のご指導のもと緊急処置で胸水1200ccを抜き取った。

7月31日に退院し、名城病院気管支内科に転医したが、胸水病原菌を調査したいと云うものの胸水抜き取りは躊躇され、排尿剤の服用のみで苦しい思いが続いた。

一方友人は寒くもないのに毎日マスクを掛け、異常を訴えていたが、その1年後に肺炎で病死した。私には病名、外科的処置等は判らないが、私も緊急処置がなかったら同じ運命の危険性もあったかと思う。

 

今回私の心臓疾患等の経緯から、術後約5年経過。お陰さまで今日の健康回復に感謝し毎日を過ごしている。

今日其々の地域には大学病院等の大病院もあり、手術事例、件数等も記載した書籍もあるが、意外と主治医の経験不足もあると聞く。今毎週BS日テレ放映中の[韓国ドラ・ホジュン官邸医官への道]は主演ホンジュンは旅の行く先々で貧乏急患が担ぎ込まれ、他の医師は断る中で危険な急所に針を正確に打ち適切なアドバイスで処置する民への芳心が米田先生とダブリ鑑賞している。

経歴、人柄もまた重要な信頼要素でもあり、この種の情報は米田先生のホームページネット等を参考とすれば理解できる。

この種の情報は人から人に伝わり、また寝たきり防止のためにも同病者の体験談等も参考にすべきだと思う。

米田先生は京大心臓手術専門医から米国大学等にも留学し、心臓手術を研鑽され、今日なお専門医の第一人者として若い医師の指導育成にも力を注いでいる。

今回の「かんさいハートセンター」の開設は地域住民の健康と活性化に大いに役立つものと期待される。

 

      人の病気は加齢と共に進化し、また抵抗力も弱まり判断力も鈍くなるが、薬治対応等だけでは健康回復が遅れ、多病を併発しやすい場合がある。

いずれにしても自我流対応の遅れが致命傷となる。油断せず時には信頼できる主治医の病院に代えたり、手術等の早期治療を図ることが最も大切であると学んだ。

 

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執筆:米田 正始
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お便り95: 絶体絶命の中から生還された修正大血管転位症の患者さん

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修正大血管転位症は長期的にはまだまだ重く厳しい病気です。


A335_020それは全身に血液を送る大型ポンプの役割をもつ左心室と肺に血液を送る小型ポンプである右心室が入れ替わっているために、小さいポンプで全身の血液循環を担わねばならず、長い間には無理が重なり、拡張型心筋症のような心不全になるからです。

私たちはこうした患者さんを長期的に支援する取り組みをして参りました。修正大血管転位症の小型ポンプをできるだけ守り、チューンナップして、できるだけ補助循環(VASやVAD)や心移植を避けられるように、かりに避けられない場合でもその時期を遅らせ、自然に楽しく暮らせるときを永くするように努力しています。

患者さんは10代半ばの少年で、肺動脈閉鎖と心室中隔欠損症も合併しており、小さいころ手術でそれらを治していちおう元気になられ、10歳代に2回の手術でさらに修復され、健康を維持しておられました。

ところが2年前から三尖弁閉鎖不全症(健康な心臓では僧帽弁閉鎖不全症に相当)を合併し、そのために心不全や重い肺高血圧が進行し、5分も歩けないほどの状態になって米田正始の外来に来られました。

先天性心疾患で高名な先生のところや、東京の高名な先生のところへも相談に行ったそうですが、いずれも手術は無理とのことで、最後の望みをかけて私の外来に来られたのです。

これまで何人もの修正大血管転位症の患者さんをお助けして来ましたので、そのノウハウを結集して何とか元気になっていただこうと、心臓手術をお引き受けしました。

この患者さんの主治医は関西の有名大学病院小児科の先生で、その先生の想いと私の想いがぴったり一致したこともあり、何としてもこの難局を突破しようということになりました。

4回目の手術で、心不全が強く、肺高血圧が極度に悪化という条件で、なかなか苦労しましたが、さまざまな工夫を凝らして手術(三尖弁置換術、通常の心臓でいう僧帽弁置換術)は無事に完了しました。

じぶんで言うのも何ですが、京大病院を辞めて6年間、心臓手術を磨いて来たつもりですが、この間、無駄飯を食べていなかったと実感できる内容でした。ミックス手術や心臓再手術の経験も活きました。

しかし手術のあともしばらくは肺高血圧クリーゼと呼ばれる、いのちにかかわる発作が起こりやすい状態のため、2日かけて心臓と肺の補助をそれぞれ行い、時間を稼いで安全を守り、それから徐々に運動を始め、体力をつけて頂きました。

患者さんは大変頑張り屋さんで、心臓リハビリを積極的にこなしてくれて、体力を次第につけて行ってくれました。

一時、脚の創にばい菌が入ったための治療を行うことで入院は長引きましたが、術後1か月で入院時とはずいぶん違う元気な状態で退院されました。

外来でお母さんの笑顔とともに患者さんの元気な顔を拝見し、よく頑張ってくれた!と賞賛したい気持ちがこみ上げてきました。これからも長い道のりですが、それだけ楽しみも増えるわけで、しっかりサポートしたく思いました。

下記はこの患者さんと、そのお母様からのお便りです。本当によく頑張った!とほめてあげたく思います。

 

***** 患者さんからのお便り *****


米田先生、深谷先生、北村先生、木村先生へ

今回は手術して頂きありがとうございました。

四度目の手術でリスクも高く、色々な病院にも断られ、最後の最後にこの病院に訪れました。

最初は診察室に入った時、また断られるんじゃないかと思っていましたが、すぐに手術の話になり、手術自体も「やる」と言って下さいました。


あの時は本当に嬉しかったです。先生方に人工弁の弁置換術の手術をして頂きました。


さらに、剥離がデメリットにならないように左脇からの切開で行って頂きました。

しかも、僕のためにわざわざ、小児心臓の先生まで呼んで頂きました。工夫を重ね、少しでもリスクのないように手術をしてくれた先生方には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

本当にありがとうございました。先生方に救って頂いたこの心臓を大事に使っていきたいと思います。

手術してくれてありがとうございました。

****

 

 

***** 患者さんのお母様からのお便り *****


この度の手術入院では大変お世話になりました。ありがとうございます。

米田先生初め医師の皆様、看護師の皆様、手厚い治療と看護に心から感謝致します。

幾度と重なる手術でなかなか回復の見込みもなく、絶望的になっていた頃、米田先生の事を子供から聞きました。

その時に僕の心臓は米田先生にしか治す事が出来ないと言われ今回の手術に挑みました。

一時はどうなるかと不安でしたが、日増しに元気になって行く姿を見て名古屋に来て良かった、先生方皆様に感謝の心持でいっぱいです。


先生本当に救って頂きありがとうございました。7月10日退院致します。

帰ったら一番心配していた亡き夫に元気にして頂いた事を報告します。

皆様 本当にありがとうございました。

平成25年7月10日

****

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執筆:米田 正始
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お便り89: 先天性僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症のエホバ信者さん

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僧帽弁閉鎖不全症なかでも先天性僧帽弁閉鎖不全症にはさまざまなタイプがあります。

他の心疾患を合併したり、病気ではなくても構造が通常とはちがうこともあります。

患者さんは40代女性で心房中隔欠損症(ASD)と先天性僧帽弁閉鎖不全症のため来院されました。


こどもの時から内蔵逆位つまりお腹の内A335_001蔵が左右反対に位置していると言われていました。

半年前から息切れや疲れなど心不全症状が強くなり、近くの総合病院では修正大血管転位症とまで言われて不安になり、米田正始の外来へ来られました。

幸いその病気はありませんでしたが、下大静脈(IVC)が欠損しており、手術にも工夫が必要な状態でした。

しかもエホバの証人の敬虔な信者さんで、絶対無輸血をご希望のため、血液を一滴も無駄にできない条件下での心臓手術でした。

いつものように先天性心疾患の専門家も含めたハートチームで検討し手術に臨みました。

手術は安全とお若い患者さんであることも考慮し、MICS法(ミックス)で小さい創で行いました。

いつもと違うばしょに脱血管を入れて人工心肺を回し、安全確保ののち心臓を止めて、中にはいりました。

心房中隔欠損症を一時的に広げて、そこから僧帽弁形成術を行いました。

心房中隔欠損症はSinus Venosusタイプというやや複雑なタイプでこれをパッチで修復しました。Sinus Venosusタイプでは上大静脈(SVC)のルート確保も大事ですが、これも問題なくクリアーしました。

手術は無輸血でゆうゆうと完了しました。

術後経過良好で、小さい不整脈はあったものの落ち着いたため術後8日目に元気に退院されました。

以下はその患者さんのご家族からの礼状です。

 

*********患者さんからのお便り**********

 

米田正始先生

拝啓


木村由紀さまメール新緑の鮮やかな緑が目に眩しく感じられる季節になっておりますが、米田先生のますますの御活躍を心よりお喜び申し上げます。

先月4月8日に米田先生に妻の手術していただきました、****と申します。
先月末に退院致しましたが、米田先生に直接感謝やお礼の言葉をお伝えできずにおりましたので、失礼ながらまずはメールをと思いお送りしております。

昨年末に妻の心臓の疾患が見つかりましたが、私たち夫婦にとってはまさに「寝耳に水」の状態で、一時は目の前が真っ暗になったことを思い出します。
 

妻が幼少期に検査を受けていたことは知っておりましたが、その後検診でひっかかったことや活動の制限なども無かったため、すっかり安心しておりました。
 

昨年の夏ごろから体調が悪くなっておりましたが、まさか心臓だとは思わず、しかも手術が必要なほどだとは夢にも考えませんでした。


ちょうどその時期、私たちはエホバの証人の聖書教育活動を増し加えるために、生活拠点などを変える予定で動き出しておりました。

 

ですので、今からという時に病気が見つかり、目標を見失ったようで、特に妻の落胆ぶりは本当に大変なものでした。

しかも無輸血での手術が必要になりますので、どんな病院で治療を受けることができるのか、という不安も同時に押し寄せておりました。

しかし米田先生のホームページを拝見し、メールをさし上げたところ、すぐに返信を頂いて診察の予定を整えていただきました。

そして診察で先生のお話をお聞きした時点で、すでに治ったかのような安心感を抱くことができました。

私たちの宗教信条をご理解していただき、「神様が応援してくださるように頑張ります」とおっしゃって頂いた時には、先生にお願いして本当に良かったと心から感じました。
そして手術も無事に成功に導いていただきました。

術後の先生からのご説明では、妻の心臓の血管の状態が非常にまれな配置になっていたようで、様々なご苦労をお掛けした中で素晴らしい手術を施していただいたことに重ねて感謝致します。

術後、一時期体調が安定せず、様々な面で皆様にご苦労を致しました。
北村先生、深谷先生、木村先生の治療や、看護師の方々の献身的で温かく優しい看護にも心より感謝しております。

なんとなくバタバタした状態での退院になってしまいましたので、きちんとお礼ができず本当に申し訳ございません。

妻は体調の回復に合わせて、改めて皆様への感謝をお伝えしたいと申しておりますので、甚だ失礼ではございますが今しばらくお待ちいただければ幸いでございます。

ただ今回不正脈が取れないまま退院になってしまいましたので、どのくらい動いていいものかまだ不安も残っております。
入院中は心電図で先生方や看護師の皆様に見守って頂いていたので安心だったのですが、今は目安になるものがありませんので、何となく不安感が取れずにおります。
また術後血圧が急激に下がったりして調子を崩した時期がありましたので、そのトラウマのようなものが少し残り、「またあんな風になったら」、という怖れも残っております。

不整脈に関しては、以前の米田先生の診察の際に、「時間があったらメイズ手術もできるかもしれない」とお聞きしておりました。
インフォームド・コンセントは、米田先生が緊急手術のため木村先生に行なっていただきましたが、その際にお聞きしたところ、「この程度の不正脈ならメイズ手術は必要ないと思います。」とおっしゃっていただきました。
退院前には木村先生からは、もし収まらない場合は「カテーテルアブレーション」という治療が今後必要になるかもしれないともお聞きしました。

入院中電気ショックも2度も行なって頂きましたが不整脈が収まりませんでしたので、今後自然と不整脈が収まる可能性はあるものなのでしょうか?
もしかしますと、今後メイズ手術を受ける必要はありますでしょうか?
また現時点で、どの程度動いてもいいのでしょうか?

妻も入院中は先生たちがいらっしゃるので何も聞かなくてもお任せしておけば大丈夫とばかり安心しきっていておりましたが、いざ退院してみますともっと先生方に教えていただく必要があったと反省しております。

1ヶ月後の検診が予定されておりますが、その時までよくわからずにいて、運動過多あるいは運動不足になってはいけないとも感じております。
このようなメールでご相談して本当に申し訳ありませんが、もし宜しければ教えていただければ本当に嬉しく思います。

せっかく米田先生の素晴らしい手術で健康な心臓にしていただきましたので、当初考えていた計画をまた再開できれば、とも願っております。

そのような目標を再び頭に思い浮かべることができるようにしてくださった米田先生に本当に感謝しております。

今後の米田先生の引き続きのご活躍を心よりお祈りしております。

敬具

平成25年5月5日

 

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そう心配するような状態ではなかったのですが、患者さんがかなり神経質になっておられるようなので早速お返事をお書きしました。

すでにかなり落ち着いており、まもなく薬も切って行けるでしょうとお伝えしました。

それから次のお返事を頂きました。やはりコミュニケーションは大切ですね。

 

**********患者さんからのお便り続編***********

 

米田正始先生

早過ぎるご返信に驚くと共に、本当に恐縮しております。
先生のお言葉を頂いて、不安が全く無くなりました。

妻も心配が一気に吹き飛び、今朝から意欲的に動き始めております。

深夜3時ごろにご返信を頂いているようですが、先生を寝不足にさせてしまったのではないでしょうか。

入院中にしっかりお聞きしなかったこちらの不手際で、米田先生にお手数をおかけして本当に申し訳ございません。

これほどまでに患者を気遣ってくださる先生のような方に巡り合うことができて、私たち夫婦は本当に幸せ者です。

妻からの感謝は、また改めてお伝えさせていただきます。

本当にありがとうございました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例:大動脈弁狭窄症とHOCMのご高齢女性

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高齢化社会を迎えて大動脈弁狭窄症は増加の一途にあります。今や最も多い弁膜症のひとつです。

その中に弁のすぐ下の筋肉、心室中隔の筋肉が異常に張り出してもうひとつの狭窄を造るタイプ、HOCMまたはIHSSの合併例がときどきあります。

左室がより駆出しづらく、より心不全になりがちです。

患者さんは81歳女性です。

最近労作時の息切れがひどくなり、近くの病院で大動脈弁狭窄症の診断を受けられました。

息切れが強く、20m以上は歩けないとのことです。脊椎の変形が強く、いわゆる猫背です。(右図)00029421_20090311_CR_2_1_1

最初お会いしたときにはホントにこの体で心臓手術ができるのかしらと思ったほどでした。

精査の血管、大動脈弁狭窄症ASは圧格差が 130mmHgもあり、平均圧較差も74mmHg、弁口面積0.56㎝2、最高流速5.64m/sと、突然死してもそうおかしくない重篤な状態でした。

しかも閉塞性肥大型心筋症HOCM、上行大動脈石灰化、が併せて見られました。

脊椎の変形が著明でしたので、まえもって仰臥位が安全に成り立つことを確認しておきました。

図1胸骨正中切開、心膜切開で心臓にアプローチしました。上行大動脈の遠位部がもっとも硬化が少ないためここを遮断部位といたしました。
体外循環・大動脈遮断下に上行大動脈を横切開しました。

大動脈弁は3尖で左冠尖のみがかろうじて可動性があり、他は岩石のように固定していました(写真左)。

写真 図2右は切除弁尖です。石灰化も著明で弁尖から弁輪を超えて大動脈壁にまで進展していました。

また無冠尖と右冠尖のバルサルバ洞にも幅広い石灰化がありました。

まず弁を切除し、石灰化を摘除しました。

図3人工弁のサイザーを入れようとしましたが上記の上行大動脈石灰化のため入らず、石灰部を摘除するため上行大動脈の内膜切除を上記の2か所とも行い(写真左、セッシで把持した板状のものが石灰です)、ようやくサイザーが上行大動脈を通過しました。
 

図6ウシ心膜弁19mmがぴったりで入りました(写真右)。

市販の生体弁で最小サイズですが、この患者さんの体格からは十分なサイズであることを確認しました。

人工弁の縫着に先立って、左室流出路を検索しますと、異常心筋が突出していました。

図5術後左室が小さくなる状態が発生する時に左室流出路の狭窄が顕著になることを回避するため、大動脈越しに心筋片を必要最小限切除しました(写真左)。

体外循環離脱はカテコラミン無しで容易に行えました(写真右 図7)。

経食エコーにて大動脈弁(人工弁)と左室の機能良好、そして僧帽弁閉鎖不全が軽微であることを確認しました。

左室流出路も十分な広さが確認できました。入念な止血ののち手術を終えました。

術後経過は順調で、血行動態良好で出血も少なく、神経学的異常もなく、背中の皮膚も健常で、術翌朝抜管しました。

術後経過良好で、手術後10日で元気に退院されました。

その後2年が経過し、お元気に暮らしておられます。毎日喫茶店へ行くのが楽しみとのことです。

最近すこし物忘れが見られるようになり、認知症対策をかかりつけの先生と進めています。

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僧帽弁膜症のリンク

原因 

◆  HOCM(IHSS)にともなう僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁形成術

◆ リング

④ 僧帽弁置換術

⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
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