第4回ハートバルブカンファランス

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恒例のハートバルブカンファランス(心臓弁膜症のユニークな研究会)が今年は大阪で行われました。当番世話人(会長)は大阪大学の中谷敏教授でした。

例年熱く楽しい、ときには厳しい議論に花が咲く研究会ですが、ことしは中谷先生のご尽力でいっそう盛り上がる内容となりました。参加者も年々増える中、記録となる300人に達しました。

IMG_0204bオープンしてまだ新しいグランフロント大阪のナレッジキャピタルが会場で、便利でした。

まず大動脈弁狭窄症(略称 AS)の治療の最先端が論じられました。

東京慈恵会医科大学の橋本和弘先生が外科のAVR(大動脈弁置換術)の観点から、大阪大学の倉谷徹先生が低侵襲治療の観点からTAVI(カテーテルで埋め込む人工弁)の現況を講演されました。

私は自分の発表を前にしてパソコンが壊れたためその修理に忙殺され、部分的にしか聴けませんでしたが、倉谷先生の「日本人の大動脈基部の構造は欧米人とはちがう」というのが大変印象的でした。例えばバルサルバ洞が狭く、冠動脈入口部の弁輪からの距離が短いとなると、TAVIの際に冠動脈入口部をふさいでしまう恐れが増え、それへの対策がよりしっかりと求められます。欧米のEBM(証拠にもとづく医学医療、またそのデータ)は極めて重要かつ有用ですが、こうした人種差を考慮してベストの医療をこの国で行うことは極めて意義あることと思いました。

それからTAVIではPPMつまり患者さんのサイズや必要度に対して弁が小さすぎるという現象はあまりないという議論も面白いと思いました。軽い狭窄を残しても治療前より明らかに良ければ、患者さんにとって益する治療法ということになれば、より多くの患者さんのお役に立てるでしょう。

大阪大学の前田孝一先生と慶応大学の林田健太郎先生のエキスパートコメントも有用でした。前田先生が報告されたポンプ(人工心肺)下のTAVIは低心機能の患者さんでは有用で、これから心臓外科が循環器内科とハートチームで治療に当たるときにいざというときの切り札のひとつになると感じました。心臓外科と内科が普通のAVR、短時間で植え込める sutureless弁でのAVR、そしてオンポンプTAVI、最後にTAVIというラインナップの中で患者さんに一番適したものを選ぶ、これは治療成績が上がると思います。

林田先生は世界の現況も解説されました。ドイツではすでにTAVIを12万例もやっており、大動脈弁手術の43%を占める、これから二尖弁にもTAVIを検討する、血液透析も視野に入れるなどをお話しされました。TAVIの後もII度の大動脈弁閉鎖不全症を残すと予後が悪化つまり長く生きられなくなるため注意が必要です。

その他、サピエン弁は僧帽弁のバルブインバルブに使えること、コアバルブ弁は小さいサイズの生体弁へのバルブインバルブに適していること、冠動脈狭窄に対するOPCABとTransAortic TAVIつまり上行大動脈ごしにTAVIを入れる手術などもお話しされました。大変参考になりました。

ドイツなどではTAVIの出現後も外科のAVRは減ることなく、TAVIだけが増えるという現象が続いており、つまりTAVIは心臓手術を受けられない患者さんを助けるのに役立っていることを示され、これは以前からヨーロッパの報告で知ってはいたものの、現在も同じであることがわかり、興味深く拝聴しました。

引き続いて高度の左室機能不全つまり心不全にともなう中等度の機能性僧帽弁閉鎖不全症の治療のセッションがありました。

まず大阪大学循環器内科の坂田泰史教授が内科の立場から講演をされました。運動負荷試験とくに運動負荷エコーの有用性を示され、さらに左室の直径(Dd)65mm以上か左室収縮末期容積係数LVESVIが150cc以上が予後不良との中間解析結果を報告されました。私も比較的近いラインをこれまで発表しており、納得できました。さらに右室のDdや右房圧が予後に影響することを示され、これはいっそう同感しました。左心不全は補助人工心臓まで行かずともさまざまな工夫ができますが、右心不全の治療は打てる手がやや少なく、大きなブレイクスルーが必要と常々感じていたため、心強い仲間を得た感がありました。心拍数が心臓の予備力を反映するかも知れないという御意見も検討の価値があると思いました。

私・米田正始はこれまで進めてきた乳頭筋最適化手術(略称PHO)による僧帽弁形成術の最近の成績をご披露いたしました。

これまでこうした心機能の悪い患者さんへの僧帽弁形成術はあまり寿命を延ばさないという報告が多かったのですが、私たちの新しい術式(PHOによる僧帽弁形成術)では5年経っても心不全で死亡するひとが10%と、従来より成績が良いため今後さらに検討して行きたい旨をお話ししました。

このハートバルブカンファランスは症例検討中心の会ですので、心に残る一例をご披露しました。昨年末の日本冠疾患学会でも発表した症例で恐縮ですが、これがこのPHO手術の意義がいちばん判りやすいためご披露しました。

なにしろ、80歳近いご高齢で7年前に左室形成術(バチスタ手術と同タイプの手術です)と僧帽弁形成術を行った重症例でしたが、術後お元気でしたが7年後に大動脈弁閉鎖不全症を発症して僧帽弁閉鎖不全症を合併するに至り、危険な状態になって私のところに戻ってこられたのです。通常なら2弁置換をするか、1弁置換+薬治療で不完全治療で苦労するとことですが、私たちの方法で1弁手術の負担で3弁とも治し、わずか1日で集中治療室を退室されたのは、この手術の良さを示すものと思います。

川副浩平先生や新田隆先生、夜久均先生はじめ多数の方々から貴重なご質問やコメントをいただき、感謝するとともに充実感をもてたひとときでした。

ランチョンセミナーは聖マリアンナ医科大学の鈴木健吾先生の弁膜症における運動負荷エコーの重要性で、大変役立つ、面白い内容でした。鈴木先生は運動負荷エコーはこれまでのドブタミン負荷エコーと比べて血圧や心拍数の増加だけでなく全身の筋肉ポンプからの静脈還流増加も加わりより本物の、生理的な負荷であることを強調されました。運動負荷の終了基準の大切さや、運動で誘発される機能性僧帽弁閉鎖不全症の予後が悪いこと、CPXの有用性、とくにMRの量が15%を超えるといけないこと、大動脈弁膜症などでも手術前にこうして心臓の予備能を知っておくと役立つこと、運動負荷をかける時のエコーの画質の維持、などなど大変ためになりました。

午後のセッションは弁膜症症例を若手中堅の先生ががんばって苦労して乗り切ったケースを発表され、それに対してベテランが辛口の評価をするという面白いものでした。

聖路加国際病院の阿部恒平先生、慶応義塾大学の岡本一真先生、大阪大学の西宏之先生がそれぞれ含蓄ある弁形成手術症例を提示され、みどり病院の岡田行功先生、榊原記念病院の高梨秀一郎先生、さらに会場のベテランからさまざまな意見が寄せられました。こうした冷や汗症例を提示された若手中堅の先生方に敬意を表するとともに、皆で良いものを創るという方向のワークショップ的なディスカッションの場を企画された中谷先生に世話人のひとりとして御礼申し上げます。

最後のセッションでは同様の苦労症例を内科の立場から提示されました。川崎医科大学の林田晃寛先生、東京大学の大門雅夫先生、小倉記念病院の有田武史先生のいずれの症例も示唆に富むものでした。

女性の透析症例では圧回復現象が起こりやすくASの評価に注意を要すること、心房細動のときには先行RR間隔で計測値を補正する必要があること、PPM(人工弁のサイズが患者の必要に合わないこと)は生存率だけでなくQOLつまり生活の質も考慮すべきこと、巨大左房のAFで弁形成より弁置換すべきかどうか、高度のTRをどうするか、などなど有用な情報が山盛りでした。

なお巨大左房では私たちがこの10年間ちからを入れて来た心房縮小メイズ手術で除細動率が上がり、かつ左房内の血流がスムースになり血栓ができにくくなるため、この手術を取り入れれば今後の治療戦略も変わることを提案したかったのですが、その機会がありませんでした。

高度のTRつまり三尖弁閉鎖不全症では患者さんはたとえ生きておられても下肢が腫れ、体も動かしづらく、見ていて気の毒な状態の方が多いため、もっと積極的に手術を進めるべきであるという意見が多くありました。

世の中では、たかが三尖弁のために大きな創で手術するのは気が引ける、それと三尖弁置換術の長期成績が悪いため三尖弁形成術がやりづらいケースでは何もしない、などの考えが今も多くあると思います。そこで僭越ながら以下を意見させて戴きました。まず現代はポートアクセス法などで小さい創で三尖弁を治せること、そしてもし三尖弁形成術弁が不適である場合、生体弁で三尖弁置換術をやっておけば、将来TAVIでValve in Valveができることをお話ししました。

多くの活発な発表と討論で勉強になったカンファランスは無事お開きとなりました。懇親会でもまだ話が尽きないという印象でした。中谷先生、川副先生、世話人の先生方、ご苦労様でした。

来年度の当番世話人は誰になるのかと思っていたところ、代表世話人の川副浩平先生から私にご指名があり、来年度の当番をさせていただくことになりました。

これまでの同様、あるいはそれ以上に皆さんが楽しめる、勉強できる、普通の学会とは少しちがう良さのある会にしたく存じます。皆さんよろしくお願い申し上げます。

平成26年3月10日

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第7回Mulu弁膜症シンポに参加して

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このアジアを代表する心臓弁膜症のシンポジウムに参加して参りました。弁膜症の患者さんたちや、心臓外科を学んでいる若い先生方の参考になればと印象記をお書きします。

IMG_0068bこの会は世界的に有名なロッキーマウンテン弁膜症シンポジウムのアジア版として10年以上まえに誕生しました。2年に一度、アジアのどこかで開催され、発展してきたものです。

私はひょんなご縁で第3回から講師として参加し、毎回成果をご披露して来ました。

欧米の友人たちとはまた違う、何か親戚のような親しみをアジアの友人たちに覚え、アジアの中で日本ができる貢献を考える場としても有難く、参加して来ました。

今回の第7回シンポはあの世界遺産・アンコールワットを擁するカンボジアで開催されました。以前からカンボジアを推薦して来た私にとっては一段とうれしい会になりました。私がアンコールワットの存在を知ったのは中学時代だったと思いますが、心に強く残るものがありました。栄華を極めたクメール王朝の文化、滅び行く美しいものに是非残って欲しいなどと思ったものです。あの激しかったベトナム戦争がカンボジアに飛び火し人命が失われることのつぎにこのアンコールワットの破壊を心配したものです。

ともあれシンポジウムではアジアや欧米の仲間とともに真面目に勉強にいそしみました。

始めにこのシンポのルーツであるロッキーマウンテンシンポの立役者、Carlos Duran先生の後継者であるMatt Maxwell先生が弁膜症のパイオニアの話をされました。

Duran先生や大御所Carpenter先生はもちろんその土台を創られた先生方を紹介し、偉大な先駆者に共通した点を挙げられました。とくに若い先生方の参考になれば幸いです。

1. Generous teacher & good students 優しい指導者かつ態度の良い学生であれ

2. Strict, skeptical scientists 厳密で懐疑的(何でも疑う)な科学者であれ

3. collaboration with engineers and technitians 技師や技術者と協力せよ

4. longitudital follow-up; clinical & structual 臨床と弁構造のフォローアップを

5. Impassioned & dedicated あふれる情熱と没頭を

これだけそろえば偉くならないほうが不思議です。幾多の困難を乗り越えて来られた先人たちの想いと努力を今一度思いだす機会になりました。

ついで人工弁や僧帽弁形成術用のリングの使い分けを数名の先生方が解説されました。インド・ムンバイ(旧ボンベイ)のPandy先生は僧帽弁形成術の今日的意義と、僧帽弁置換術では将来の再手術を念頭におかねばならないということを、ハノイのSon先生は機械弁の話をされましたが、それ以上に旧北ベトナムも発展していることを知りうれしく思いました。香港の友人Song先生は僧帽弁形成術リングの使い分けをきれいに整理され、参考になりました。

IMG_0043b夜の歓迎パーティでは州知事さんが参加され(写真右)、アジアでは相変わらず心臓外科が社会から大切にされていることを感じました。

弁膜症シンポジウムの2日目は僧帽弁形成術を論じました。

マレーシアIJNのChian先生はエコーの最近の成果と実際を解説され、よいまとめになりました。負荷エコーの有用性をとくに機能性MRなどで示されました。

畏友Calafiore先生(イタリア、現在はサウジアラビア)は僧帽弁形成術の新しい工夫を発表され、私も共感するところがありました。あとで一緒に共同研究しようということで前向きに検討することになりました。お互いいくつになっても新しい優れたものを追求できるというのは幸せなことと思いました。

オーストラリア・ブリスベンのFayers先生はARでの機能性MRや、それへの僧帽弁形成術の際に機能性MSが起こること、さらにMクリップなどの解説をされました。あとで私が同じ領域の現況をお話ししたときに、そんな方法があるとは知らなかった、やってみたいと言って下さり、うれしいことでした。

ベトナムの畏友Phan先生はCarpentier先生の弟子で、すでに世界一のリウマチ性僧帽弁膜症の弁形成の経験をお持ちです。今回はリウマチ性僧帽弁膜症のうちどういうケースがより難しいか、どういうケースが確実に形成できるか、をきれいに整理して話されました。

IMG_0058b不肖私はゴアテックスをもちいる僧帽弁形成術というテーマで、1.ポートアクセス法での複雑僧帽弁形成術でゴアテックス人工腱索を多数立てる方法をご披露し、さらに2.機能性MRで重症例を低い侵襲で救う工夫を発表しました。

シンポジウムの時も、そのあともいろんな方々から、そんな方法があったんですか、私もやってみたい、とか細かいテクニカルな点をご質問いただき、関心を持っていただきうれしく思いました。(右写真、左からGersak先生、私、Maxwell先生、Saw先生です)

オーストラリア・ブリスベンの大先輩Gardner先生は僧帽弁形成術の際におこり得るSAM (僧帽弁前尖が前方にめくれあがること)のメカニズムや対処法をお話しされました。

マレーシアのChian先生は話題のMクリップ(カテーテルでアルフィエリ型の僧帽弁形成術を行う)を報告されました。最近の一部の報告で機能性僧帽弁閉鎖不全症にこのMクリップが良いというのがありましたが、クアラルンプールのIJNという有力施設の経験ではテント化が11mmを超える症例や逸脱が強い症例にもこのクリップは不適ということでした。正直な発表でさすがと感心しました。

引き続いて三尖弁閉鎖不全症のセッションがありました。Calafiore先生は左室駆出率が40%を割る症例では右室拡張が起こりやすくそうなると三尖弁形成術の効果が落ちる、そうなるまでに手術するのが良いとのことで、重要なメッセージと思いました。

私などはそうしたタイミングを逃した患者さんの三尖弁手術をけっこう多数やっており、いざとなれば将来のTAVI(カテーテルで入れる生体弁です)を意識した三尖弁置換術を行うことがありますが、そのTAVIでのvalve-in-valveを三尖弁でうまくやれるということをCalafiore先生から直接聞き、うれしく思いました。今後多数の患者さんたちがこの恩恵を受けることでしょう。

神戸の岡田先生は日本弁膜症学会の重鎮で三尖弁形成術をまとめられました。心房細動、肺高血圧症、右室不全のケースでは小さ目のリングをというメッセージは役に立つと思いました。

IMG_0025b午後の心房細動のセッションでも活発な議論が交わされました。心房細動の期間の長さと左房サイズ(60mm以上)が重要であるということが大分認識されるようになり、かつ心房細動を治すことが患者さんの寿命を延ばすために大切であることが浸透するようになりました。10年近くまえから心房縮小メイズ手術でこの課題を克服して来た私たちとしてはより多くのひとたちにこの方法を知って頂けたらと思いました。

翌日は恒例の「遠足」で、参加者の親睦のため全員でアンコールワットに行ってきました。

ベトナム戦争のときのカンボジア内紛で人命とともにアンコールワットが破壊されることを懸念されたものですが、何とか無事に残っていて、よくぞ生き延びてくれたという気持ちになりました。もちろん世界遺産であり、アジア人の英知や文化を示すもので、皆さんこれからも機会をみつけて訪れて下さいとFacebookでお願いしてしまいました。

IMG_9468bというのはあちこちで破損がひどく、とくにこの地域の特徴でしょうか、木の根っこが建物の隙間に入り込み、そのまま木が成長して建物を根底から破壊するという現象が見られ、大掛かりな保存策が必要な状態と知ったからです(右写真)。

なおこの遠足のときに会場では若い先生らがウェットラボで手術練習をしておられました。これまで何回かその指導を楽しくやらせて戴きましたが、今回はアンコールワットに執着があり、ウェットラボはパスさせて戴きました。

シンポジウムの最終日も充実していました。

大動脈弁手術のセッションではサウジのAlShahid先生が手術の最適タイミングを論じられました。とくに大動脈弁置換術は現代の心臓手術の中では一番簡単な手術という位置づけにありますが、そのタイミングが遅れすぎた患者さんのリスクは高く、まだまだ内科も含めた検討や啓蒙活動が必要と感じました。やはり治せる病気でいのちを失ってはいけないと思いました。

同じくサウジアラビアのAl Halees先生は大動脈弁形成術の解説をされました。この大動脈弁形成術はまだ進歩しつつある領域で、その分未知のこともあり、力が入ったと思います。大動脈弁尖を心膜や特殊な材料で延長するcusp extension弁尖延長の成果を示されました。これと尾崎先生の弁尖置換の両方をやっている私としてはそれらの使い分け、どの場合にどちらが良いか、とくに長期的な安定はどうか、などに関心があり、議論させて戴きました。

中国武漢(ウーハン)心臓病院のLiang先生は心膜で大動脈弁再建を多数やっておられ、二尖弁や4尖弁の形成も努力しておられ、参考になりました。ここでも自己心膜よりウシ心膜が良いとの意見で、これから何が本当にベストかをしっかり検証したく思いました。

ひきつづいて行われたTAVIのセッションでは最近聞き飽きた感のある話もありましたが、オランダのAmrane先生は経上行大動脈のTAVIを報告されました。外科医が腕を振るえる治療のひとつで、うまくやれば患者さんにとって大きな光になるものと思いました。何しろ、動脈硬化の強い大腿動脈や弓部大動脈などを回避し、かつ心尖部のやや弱い組織も使わずにすむわけですから、これからが楽しみです。

それからMICSのセッションがありました。ポートアクセスで手術をやっている心臓外科医はこの熱心な参加者の中でも半分ぐらいで、まだ課題があることを窺わせました。

シンガポールのKofidis先生は視野を良くする工夫を含めた経験を紹介されました。スロベニアの畏友Gersak先生はより進んだポートアクセス手術を紹介され、私などはやってみたいと思いましたが、大方の印象はおたく過ぎて真似できないという感じでした。

しかし最近話題のsutureless valveつまりTAVIの良さを導入して、全部を糸で縫い付けるのではなく、大半は弁を広げて圧着固定する方法とポートアクセス法との組み合わせでの手術は今後の展開が期待できると思いました。

マレーシアの畏友Dillon先生はクアラルンプールでの多数の経験を紹介されました。以前に名古屋ハートセンターでポートアクセスを立ち上げたときに大いに参考にさせて頂いた方法で、じつはスタンフォードでハートポートを初めて成功したチームにYakub先生(マレーシアIJNのチーフ)がおられ、そこからの流れで、いわば昔からの同門みたいな親近感があり、楽しく聴くことができました。

Muluシンポジウムのオーラスの講演はCalafiore先生がされました。

Chr1006-s大変重要な講演でした。というのは最近話題のM Clipの研究発表が非常におかしい、という刺激的内容だったからです。世界のトップジャーナルのひとつであるNew England Journal of Medicineに掲載されたM clipの論文で、2単位以上の輸血が大きな合併症と位置付けられ、予後に影響する多量の遺残逆流を小さい合併症と位置付けられたこの研究はおかしいというわけで、一同なるほどと思いました。輸血はゼロが望ましく、私たちもできるだけゼロへの努力をしていますが、実際に2単位で肝炎になる確率は5万分の1もなく、患者さんへの迷惑はないといっても過言ではありません。それよりは僧帽弁閉鎖不全症を残すことのほうが大きな問題でしょう。

しかしそうした理不尽な論文が新しいデバイスを用いた研究ではちょくちょく見られるのです。これは企業の経済的圧力に屈したと言われてもしかたがないことです。

近年、そうしたことが看過できなくなったのでしょう、企業などから謝礼や寄付金を受けている研究者は、そのつどそれを公表することが義務付けられていますが、これをもっと強化する必要があると思いました。

それと結果やデータと、論文の結論に差があるという現象も大問題です。これは日本のPCIつまりカテーテルでの冠動脈ステント治療の研究でも指摘されたことですが、外科の冠動脈バイパス手術の患者さんのほうが長生きできている、そうした結果がでているのに、論文の結論にはそれが書いてない、ステントもまあまあ良いというお茶を濁した記載になっている論文があるのです。これからもっと正しい記載、正しい論文を皆でチェックし創り上げる必要があると感じました。

それやこれやで大いに学び、楽しんだ4日間でした。夜はGersak先生らと一緒に空港まで行き、再会を誓って(ちょっと大げさ)それぞれ帰途につきました。

この機会を戴いたSaw先生と支援し留守を守って下さった高の原中央病院の斉藤先生、増山先生、小澤先生ほかスタッフの諸君に感謝申し上げます。

 

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執筆:米田 正始
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第二回ハートバルブ(心臓弁膜症)カンファランスに参加して

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第二回 Heart Valve Conference (心臓弁膜症カンファランス、代表:川副浩平先生)がこの3月31日に東京で開催されました。(第一回の心臓弁膜症カンファランスのご報告はこちらです)

世話人の一人として参加させていただき、楽しく勉強できました。大変内容豊かな会でしたので少しご報告したく思います。

IMG_0652この会は心臓弁膜症の治療戦略と手術手技を考える研究会で、ケーススタディを通じてというのが特長の会です。

 

ケーススタディつまり個々の患者さんの治療経験を検討するというのは、学会とくに地方会や研究会などでも見られますが、

このハートバルブカンファランスが際立っているのは、一例いちれいに十分な時間をかけて深く掘り下げることができる点と、

そのために内科外科放射線科などを含めた心臓弁膜症のオーソリティの先生方が集まっておられ、

大変内容あるディスカッションができる点にあります。

 

今回はまず第一部として虚血性僧帽弁閉鎖不全症(虚血性MR)の術後の逆流再発が論じられました。

産業医大の尾辻豊先生と不肖私・米田正始の司会で進めさせていただきました。

前日の打ち合わせのときから、議論が盛り上がりすぎるのではという心配をしていたとおりのセッションとなりました。

 

江石清行先生と夜久均先生がそれぞれ難症例を提示されそれをもとに深く検討しました。

高梨秀一郎先生と尾辻豊先生がコメンテーターを務められました。

後尖のテザリングつまり弁尖が左室側に引っ張られる症例は心機能も悪く何かと不利な条件をもっているだけに、一層しっかりとした手術治療が必要です。

いずれもそうした一面をもった症例で、多くの意見が寄せらせ熱いセッションになりました。

 

そうしているうちに、弁輪形成用のリングのサイズ合わせも、まだしっかりとした基準がなく、おおむねのコンセンサスはあっても、細部で微妙に異なることが判明し、皆反省しながらの議論になりました。

 

私は乳頭筋を前方へ吊り上げると弁にも心臓にも良いということをこの10年間、提唱して来ましたので、その最新型である両乳頭筋ヘッドを最適化吊り上げして前尖はもちろん、後尖さらに左室もけっこう治せることをお示ししました。この術式はBileaflet Optimizationつまり両弁尖最適化と呼んでいましたが、オーソリティの先生方のご意見でPapillary Heads Optimization乳頭筋ヘッド最適化と名前を改めました。

外科医だけでなく内科の先生方からも有意義なご意見をいただき、これからの発展が楽しみな領域と思いました。

 

第二部はこれまた難しい感染性心内膜炎(IE)で感染性塞栓をともなうケースの検討でした。

大御所である川副先生みずからの力作といいますか、きれいな心臓手術を提示していただき、手術のタイミングから感染組織の処理、石灰化部分の取り方から感染に強い弁形成の方法まで話は尽きることなく盛り上がりました。

座長の芦原京美先生と大北裕先生も困るほどの議論白熱であったと思います。

 

1995年にこのIEの日本のデータを検討された江石先生のコメントと、中谷敏先生のレヴューも的確でした。

上村昭博先生のMRIの読み方の講演は外科医にとってはとくに参考になったと思います。

脳出血と脳梗塞をしっかりと区別して戦略を立てることの重要性をあらためてデータで示して頂きました。

 

第三部は不肖私・米田正始が面白い症例を提示させていただき、様々なご意見を頂くセッションとなりました。

大門雅夫先生と橋本和弘先生の安定感ある司会でした。

大動脈弁狭窄症(AS)は近年増加している疾患ですが、それへの弁置換(AVR)で、手術はきれいにできても、術直後僧帽弁前尖が左室流出路に引き込まれて起こるSAM(前尖の前方への異常運動、結果として僧帽弁閉鎖不全症が起こります)と呼ばれる現象がまれに起こります。いわゆるIHSSのかたちに突然なるわけです。

そのときどうするか、さまざまな良いご意見を戴きました。

それからそのSAMを生体弁越しに、異常心筋を切除することで治してしまうという、ちょっと珍しい方法をご紹介しました。かなりの注意が必要な方法ですが、こうした状況では患者さんを救命する特効薬と信じています。

 

きわめてまれな、しかし難しい状況だけに、実にさまざまなご意見が出て混乱するほどでした。

いわく、前もって異常心筋切除しておけば?、

患者さんが元気になったのは心筋切除のおかげではない?、

もっと別の方法で粘ったら?もっと素敵な切除方法はないの?などなど、

しかしいずれも検討の価値ある貴重なコメントでした。

泉知里先生はこうしたケースの文献的検討と、多少でも似た自験例の検討をして下さいました。

畏友大北先生は辛口のコメントだけ残して次の研究会へと去られ、食い逃げの料金は次回支払って頂こうと皆で盛り上がりました。

これだけの良いディスカッションを何かの本かビデオにして若い先生方の参考にして頂ければ良いね!と思ったのは私だけではなかったと思います。

 

最後のセッションはビデオワークショップで僧帽弁形成術で逆流が残るとき、どうやって解決するかという、なかなか奥深いテーマでした。

大西佳彦先生が国循での面白い症例を多数レヴューされ、渡辺弘之先生も矯味深い症例を提示されました。

さらに阿部先生、橋本先生、内田先生、新田隆先生らが苦労して解決したケースを提示され大いに参考になりました。形成後の後尖自然クレフト部の「漏れ」や、低形成後尖をもつ僧帽弁の形成術、バタフライ形成術のあとの遺残逆流などですね。

自分的にはすでに解決済みと思っている問題でも、さらに改善の余地があると思えたものもあり、大変勉強になりました。

どこまで行っても勉強することばかりです。

まあ磨けば磨くほど、患者さんに喜ばれる確率が上がるためどんどんやろうという気持ちでした。

 

このセッションのトリとして加瀬川均先生が以前から提唱されている自己心膜パッチによるスムースな表面を造る方式を紹介されました。

以前から直接お聞きしていましたのでその進展をうれしく思いました。これもその発展形をやりましょうと後で相談しました。

 

一日中、心臓弁膜症をよくここまで勉強したと思えるほど充実した研究会でした。

次のテーマはいくらでもあると思えるほどの盛り上がりぶりでした。川副先生、関係の皆様、ありがとうございました。

 

平成24年3月31日 米田正始 拝

 

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心臓弁膜症の恐ろしさ――こうしていのちを落としかねないのです 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年1月11日

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◾️心臓弁膜症はホントに怖くないの??

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心臓弁膜症は昔の病気、そう怖くない病気という誤解がまだまだ多い、

そんな印象を最近ますます強く持つようになりました。

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しかし心臓弁膜症のため命を落とす患者さんが全国的に少なくない、

これはデータが物語るところです。

その種類によってはある種のがんよりも

予後が悪いというデータもいくつもあります。

では心臓弁膜症はどんな時に怖い、あるいは危険なのでしょうか?

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◾️例えば僧帽弁膜症で考えると、、、

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たとえば僧帽弁閉鎖不全症では、

弁が逆流するため次第に左心房(左房)や左心室(左室)に無理がかかります。

すると左房や左室が拡張つまり大きくなり、次第にパワーを落とします。

また左房が拡張するために心房細動などの不整脈が起こります。

Ilm09_ad06001-sそうなると左房の中で血液がよどみ、血栓ができます。

その血栓がもし血液の流れに乗っかって脳へ流れれば脳梗塞となり、

いのちにかかわる大事態となりかねません。

野球の長嶋さんやサッカーのオシムさんのように。

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僧帽弁閉鎖不全症そのものは軽症ならお薬で、

重症でも心臓手術で治せますし、

心房細動もお薬やカテーテル治療(アブレーション)や手術(メイズ手術)でかなり治せます。

たとえ治せないほど悪くなっていても、

ワーファリンなどの抗凝固療法で脳梗塞などを予防することはできます。

私たちの心房縮小メイズ手術で根治できることも多いです。

しかし病気を放置して心臓がうんと弱ったり、

すでに重い脳梗塞を合併してからではせっかくの治療も効果がなかなか発揮できません。

患者さんにとって不幸な事態です。

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同じ僧帽弁でも弁が狭くなる僧帽弁狭窄症ではどうでしょうか。

この病気も放置すると左房がいっそう強く拡張し、

心房細動と血液のよどみの両方のために血栓ができやすいのです。

その結果、脳梗塞などの大きな問題が起こります。

肺のうっ血のために重い肺炎などで命を落とすこともあります。

 .

◾️弁膜症の怖さ、大動脈弁狭窄症の場合は

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高齢者社会の中で近年増加している大動脈弁狭窄症ではどうでしょうか。

この病気の場合は重くなると突然死するという怖さがあります。

何しろ、心臓の出口の部分(大動脈弁)が閉ざされた状態になる病気で158すから、

心臓も動けませんし、

万一のときに心マッサージ(CPR)して下さる方がおられても、そのマッサージが効きません。

 .

しかしこの病気は比較的元気なうちに経験豊富なチームで手術すればほとんどの場合、元気になれるのです。また現代はカテーテルで植えこむ人工弁TAVI(タビ)も高齢者などを中心に使えます。

つまりこの病気で油断して命を落とすのは大変もったいないことなのです。

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この病気では運動時の息切れや、胸痛(胸の痛みや締め付け感)、

あるいは失神発作などが起こると1年以内に半数の方が亡くなることが知られています。

今なんともないから大丈夫、とは言えないのです。

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◾️弁膜症の怖さ、大動脈弁閉鎖不全症の場合は、、

.

同じ大動脈弁でも弁が逆流する大動脈弁閉鎖不全症でも同様です。

この病気では意外なほど症状が出ないケースが多く、

息切れや胸痛などが安静時にも出るようになると、

すでに心臓がうんと悪く大きく弱くなっていることさえあります。

.

その段階からでも私たちは心臓を立て直すように努力していますが、

心機能が悪すぎる、いゆわる拡張型心筋症の状態として

手術を拒否する病院も少なくありません。

これは私のところへ来られる患者さんたちが証言されているものです。私たちはこれらの方々を受け入れほとんどの場合、お元気になって頂いています。

実は運動時、たとえば階段を登るときに以前より苦しくなっているのにそれをがまんしすぎて、

とことん心筋を傷めてから病院へ行くというのは、

やはり安全上、患者さんにとって損なこと、危険なことなのです。

.

◾️弁膜症の怖さ、三尖弁の場合は?

.

僧帽弁や大動脈弁よりも目立たない弁と言われる三尖弁ではどうでしょうか。

うっ血肝b.

 

たとえば三尖弁が逆流する三尖弁閉鎖不全症では
軽いうちはお薬などで十分なのですが、

重くなるとそうとは言えません。

とくに肝臓がうっ血し、

いわゆるうっ血性肝硬変などのように肝臓が悪くなってくると命にかかわる事態です。

こうなると心臓手術を断る病院も多いです。

.

やはり早い時期から専門家と相談し、適切な治療を早めに行う、

なるべく予防することが患者さんにとって一番なのです。

.

◾️弁膜症の手遅れを防ぐための「ガイドライン」

.

Ilm09_ad09002-sそこで大切なことは、「まだ元気だから治療は要らない」とか

「動くと苦しいが、じっとしてれば何とかなる」

と言わないで、

経験豊かな弁膜症の専門家に相談することです。

.

それを支援するために、

日米ヨーロッパのトップの学会がそれぞれガイドラインを作っています。私も長年参加させて頂いていましたが、大勢の専門家の知恵を絞ってデータを集め、できる限り正確に公平に作られています。

 .

心臓がこれこれの状況になればオペが患者さんの安全にとって有利とか、

これこれならオペは不要、

お薬と定期健診で良い、などの位置づけがわかります。

 .

ガイドラインも知らない医師がまだまだ多く、

さらにはガイドラインを無視するような困った先生も散見されます。

やはり心臓弁膜症はその専門家に聴くことです。

.

IP08_F07◾️まとめ

 .

このようにさまざまな心臓弁膜症に共通して、

今じっとしてれば何ともないから大丈夫などと考えずに、

定期健診やこれを熟知した専門家と相談して

的確な方針を立てることで

心臓弁膜症は怖くない病気になるのです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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第一回ハートバルブカンファランスの御礼

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昨日2011年9月17日に東京で第一回ハートバルブカンファランス(Heart Valve Conferenceつまり弁膜症の研究会です)

(代表:川副浩平・聖路加国際病院心臓センター長)

が盛会裏に行われました。

ご参加くださった多くの先生方や協賛のメーカーの方々に幹事のひとりとして御礼申し上げます。

(本記事はやや専門的で一般の方にはわかりにくいかと思います。

私たち弁膜症専門家の熱い空気だけ知って頂ければ幸甚です)

 

HVC2011 このハートバルブカンファランスは

川副先生が発起人となり、

内科・外科の弁膜症の実力派の先生方が集まり、

これまでの学会では十分できない患者目線の実際的議論と考察の場をつくるため、

できたものです。

 

幹事は外科系では榊原記念病院の加瀬川均、

日本医大の新田隆、慈恵医大の橋本和弘の諸先生

不肖私、米田正始

そして内科系では産業医大の尾辻豊、大阪大学の中谷敏の先生方です。

内科・外科の熱い論客ぞろいで、内容豊かな、

ただちに患者さんに役立つ情報交換が期待されていました。

第一回のカンファランスの内容を顧みますとその目的は十分に達成できたように思います。

(写真はプログラムの表紙です)

 

実際の症例をもとに十分な議論を尽くすというポリシーから

4症例をめぐって丸一日にぎやかに勉強しました。

前日の世話人会と打ち合わせ会のときからすでに熱い議論が多く、

本番の研究会でも予想どおりの力のはいりようでした。

 

まずmorning lectureとして中谷先生がとくに僧帽弁に力を入れて

 手術中経食エコーの方法から意義特徴までを講演されました。

座長の野村実先生(東京女子医大麻酔科)からしっかりとコメントを頂き、

神戸大学の大北裕先生と慶応大学の四津良平先生がコメントというよりミニレクチャーをされました。

大北先生は大動脈弁の解説を、

四津先生はポートアクセスミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術)の観点からも解説されました。

経食エコーを誰がやるべきかというのは簡単なようでなかなか難しい問題で、

これも議論の的のひとつとなりました。

 

それからこのカンファランスの真骨頂であるCase Studyに移りました。

合計4例を4時間以上もかけてじっくりと議論しました。

新田先生がプレゼンされた拡張型心筋症+軽中度の大動脈弁狭窄症ASの症例はそのASの心負担の度合いの評価が難しく、

カンや経験で患者さんを治療せざるを得ない領域のひとつで、

今後さらに経験と研究を重ねる必要を感じました。

まずCRT両室ペーシングをしてどこまで心筋症の影響が大きいかを治療診断してから大動脈弁をどうするか考えるのが良いか、

その間にさらに心筋症が悪化することや手術リスクを考えて最初からCRTと大動脈弁置換を行うか、微妙でした。

しかし四津先生、新田先生、東京女子医大の谷本京美先生や天理よろづ相談所病院の泉千里先生はじめオーソリティの皆さんのお考えを聴けたことは収穫でした。

 

加瀬川先生が発表されたバーローBarlow病僧帽弁閉鎖不全症MRでは形成の方法が多数あり、

どの場合にどうするのが一番良いか、考えさせられる症例でした。

長崎大学の江石清行先生が余剰な組織を適切に切除して弁を整える心臓手術を供覧し、

Barlow病では上手にやるならばこれが理にかなっているように思えました。

またBarlow病で組織に変性を起こしているのが実感できました。

聖路加国際病院の新沼広幸先生がBarlow病を概説されまとまりました。

個人的にはBarlow病の弁形成では弁組織が余っているためなるべく悪い組織はきれいに取り、

かつ将来の再発の原因となる病変は軽いものでも是正するようにしているため

大いに参考になりました。

 

川副先生は非定型的なIHSS(HOCM)の手術例を供覧され面白いディスカッションになりました。

私も力を入れている病気のひとつであるため、

いろいろコメントをつけてしまい、あとで失礼を反省したほどです。

しかし難しい心臓手術を最終的にきれいに良い状態でまとめられたのはさすがと思いました。

榊原記念病院の高山守正先生と順天堂大学の大門雅夫先生のミニレクチャーでよくまとまりました。

 

香川大学の堀井泰浩先生はサルコイドーシス心筋症に合併する僧帽弁閉鎖不全症の一例を提示されました。

産業医大の竹内先生と私が座長をさせて頂きました。

これも非定型的症例で、左室形成術と僧帽弁輪形成術で治されたのは立派でした。

同時に私自身も10年ほど前に同様の手術を行い、

いったん元気になられたものの、

また弁の後尖のテント化が何年か後に起こり弁置換で元気になられたという、苦い経験から辛口の討論をしてしまい、

あとで要求しすぎと反省してしまいました。

しかしこうした経験を皆でシェアする中でより優れた手術法を開発して行った経過から、

将来お役に立つ討論と位置付けて頂ければうれしいことです。

大阪医大の寺崎文生先生のサルコイド心のレビューは豊富な経験にうらづけられた優れたものでした。

 

症例の検討の間をぬって、お昼時に大動脈弁狭窄症の治療の新しい方向性について3つの観点から発表と討論がなされました。

池上総合病院の坂田芳人先生はPTAVつまりカテーテルによる大動脈弁形成を、

大阪大学の倉谷徹先生はTAVIつまりカテーテルで植え込む生体弁の話を、

そして榊原記念病院の高梨秀一郎先生は外科的大動脈置換術AVRの有用性を講演されました。

神戸大学の大北裕先生が座長で進んでいきましたが、同先生が所要のため神戸へもどるべく早退され、私が座長を引き継ぐ形で議論させていただきました。

侵襲ではPTAV、TAVI、AVRの順番で優れており、

治療の完成度の高さではAVR、TAVI、PTAVの順と考えられましたが、

今後のTAVIの展開によって治療戦略にも変化があるものと思いました。

また誰がTAVIを行うか、内科医か外科医かという議論のなかで、

やはりハートチームが内科外科麻酔科コメディカルをすべて含んだ形で行うのがベストというのが大方のご意見で、正当なものと感じました。

さらに、TAVIを行うハイブリッド手術室については、

手術室でカテ操作を行うほうがカテ室で手術操作を行うよりも安全性で勝ることをお示しし、

大方の賛同を戴きました。

 

それやこれやで丸一日、よくこれほど勉強ばかりやれるものだと感心するような充実したハートバルブカンファランスを無事終えて、

懇親会で楽しい時間を皆さん過ごされたようです。

私は他の公用のため懇親会は残念ながら失礼しましたが。

 

これまでにない新機軸の、内容ある研究会を立ち上げられた川副先生に感謝しつつ、

来年の研究会をさらに内容充実した盛会としたいと感じました。皆様ご苦労様でした。

 

2011年9月18日記

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心臓弁膜症とマルファン症候群について―よく起こるためご注意を

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心臓弁膜症というのは、弁の逆流とか、狭くなるとかで、

特にマルファン症候群などの結合組織の病気の場合は、大動脈弁、僧帽弁の逆流ですね。

 .


図 僧帽弁形成完成図 僧帽弁の再建について。

僧帽弁は、2枚(前尖・後尖)が閉じたり開いたりしています。

ピラピラ開いたりしているところを支える糸(腱索)がやられるのです。

糸が順番に切れていって逆流が強くなって来られるパターンは、形成がしやすいです。

糸ですので、人工の糸(ゴアテックスの人工腱索)に変えて形成すればいい のです。

 

ただ長さを決めたりするのがけっこう難しいので、慣れている外科医でないとあまりできません。

とくに多数の人工腱索を立てる時ですね。

 

個人的には 人工腱索は、20年前くらからやっていて、一番初めからやっていたグループの一人です。

トロント大学に昔行っていて、そこで人工腱索の手術を開発した経緯 があります。

おかげで20年以上の経験の蓄積があります。

人工腱索は、後で切れるということはまずないです。

 

僧帽弁(大動脈弁もそうですが)は、人工腱索などを用いて弁がバシッと合うと、長持ちします。

どちらかが落ち込んだり、はずれたりして、ひとりぼっちになると、どんどんダメになるんです。

人間と一緒で、支え合っているうちは長持ちする んですね。

前と後ろがバシッと支え合っていると普通でいけば何十年単位で長持ちします。

.

大動脈弁の弁膜症は、弁そのものよりも、弁の付け根の大動脈が広がって起こること 自己弁を温存できるデービッド手術 が多いです。

そこで大動脈弁を含めた大動脈の付け根(大動脈基部と呼びます)を全部置換するベントール手術や、

患者さん自身の弁を温存する基部再建(デービッド手術やヤクー手術)を行います。

.

自己弁形成(再建)と生体弁について

弁形成にこだわる理由としては、

弁形成ができれば、ワーファリンがいらないです。

若い人の場合はこの辺が大事です。

女性の場合は妊娠出産ができるようになります。

男性の場合は、仕事とかスポーツが非常にやりやすくなります。

要するに、生活の質がよくなるわけです。

.

妊娠出産のために弁形成術は必須なのですもちろん、機械弁もよくなっています。

機械弁に したら、とりあえずそれで病気は落ち着きます。

ワーファリンを使いながら、妊娠出産に努力している産科の施設も一部あるようですが、

まだ課題は多いと いうところです。

今も時々相談がありますが、

やっぱり機械弁を持って妊娠出産というのは、相当な覚悟と入念な準備をしないと。

楽にできる状況ではありませ ん。それもあって、やはり弁形成なのですね。

.

それでは、生体弁ではどうなのか。

生体弁も、もちろんひとつの良い方法です。

若い女性で、自分の弁を形成できないくらいボロボロになっている場合、生体弁にします。

その場合、どんな問題があるかというと、あんまり長持ちしないのです。

生体弁は、年齢に もよるのですが30代40代という若い人であれば10年か余りくらいに考えておくのが慎重で確実です。

若いということと、妊娠すると、お母さんの分だけでなく赤ちゃんが成長するカルシウムで、その分、弁の寿命が何年か割引になるのです。

 .

「それでも構わないからやってほしい。その変わり次の手術はしっかりやってほし い。」と、そこまで預けられたら、しっかりやります。

それもひとつの方法で、出産後ちょっと落ち着いたところに弁が壊れてきたら、そこで機械弁に替えるわけです。

大変ですけど。

 

初めの手術のリスクが1%以内であれば、2回目の手術のリスクはだいたい2%以内ですので、普通でいけば勝てるというくらいのラインは出せます。

しかしこれも外科チームの慣れ・熟練が大事です。

再手術というのは独特な問題や課題がありますので。

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弁形成は、若い人でも長持ちするんですね。そこは生体弁と違うところです。

.


●質問:生体弁に置換後、生体弁の交換時期にはどのような症状が現れてくるのでしょうか?


お答え:生体弁が年月を経て壊れてくると、弁が逆流したり狭くなり、その症状が現れます。

生体弁が入っている位置つまり大動脈弁か僧帽弁かで症状も多少違います。

よ くあるのは息切れ、とくに体を動かすときの息切れや動悸、足のむくみなどです。

 

大動脈弁に入った生体弁が壊れれば胸痛やふらつきなどもあります。

一般にそ うした症状は次第にでてきて突然死することは少なく、

おかしいと思えば病院へ行く時間がある場合は多いようです。

.

●質問:大動脈弁の自己弁温存(形成)の場合、個人差があると思うのですが、

何年か過ぎたら安心できるということはあるのですか?

お答え:逆流がほぼ完璧にとれていれば、長持ちしやすいです。

それでも、手術の段階で薄くなっていて穴が空きそうであれば、普通よりはより一段、より慎重なフォロー をしておいたほうがいいです。

それで、私たちは、形成はできるけれど“10年持つか”ということをいつも考えて、10年持たないのであればそれは生体弁の 方が上と考えています。

.

生体弁は40代以上であれば10年は確実に持つ。うまくいけば15年持つ。

それだったらむしろ自己弁にこだわらず、生体弁にしよう ということもあります。

これはケースバイケースです。

発表されているデータも違うのです。

それぞれ正確に発表しているから違うのです。

.

厳しい基準でやっているところは、形成(再建)できる率は落ちます。

そのかわり、再建できた人は長持ちするというわけです。

そこは、内容をよく吟味して考える必要があります。

 

.

僧帽弁の場合は、まず形成できたらずっとそれでいけますので良いのですが、大動脈の場合は“形成できる=すばらしい・ベスト”ではなくて、“長持ちするも のがベスト”なのです。

必ずしも再建にこだわるということではないのです。

5年しか持たない形成だったら、それは生体弁のほうがいいわけです。

実質をよく 検討する必要がありますね。

 

(2017年5月註)その後大動脈弁形成術は長足の進歩を遂げました。講演会の頃と比べて弁形成それも長持ちする事例がずいぶん増えました。さらにこれは長持ちしやすいかどうかの見極めも、感覚や経験だけでなく、弁のジオメトリーで客観的に判断しやすくなりました。ドイツのシェーファーズ先生やベルギーのクーリー先生の業績に負うところが大きいです。

 

ただし循環器内科の先生方にはかつて大動脈弁形成術を高名な先生に依頼したらどれもうまく行かなかったということで、現在も大動脈弁形成術に否定的な方もおられます。10年前のデータではなく現在のデータで検討することが大切です。時代は変わったのです。

 

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機械弁について

StJudeValve機械弁は音が人工血管内で反響して聞こえやすいです。

高性能で音が静かな弁もあります。 

機械弁の良いところ。

ある程度の年齢になって、妊娠出産の希望はないとか激しいスポーツをすることもないなどであれば、

きちんとワーファリンをコントロールできる人であれば、

機械弁は逆に良い選択肢になる場合もあります。

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機械弁の場合、将来自宅でINR(血液検査の方法、これでワーファリンの効き具合がわかります)が調べられるようになると大きいと思います。

健康な方で鼻血が止まらないということで調べたらINR(血液検査の名前でワー ファリンの効き具合がわかります)が上がっていたとか、

夏風邪でお腹が下って食べられなかったためビタミンKがほとんど入っていない。

そうするといつもと同じ量を飲んでいてもワーファリンが日ごろの数倍効いている。

野菜もワーファリンもコンスタントに食べる。

それが崩れるときにINRを調べればよい。

.

糖尿病の患者さんが、家で血糖値を計るみたいに、家でワーファリンの効き具合をみるということは、外国ではできるんです。

日本ではなぜかこういう認可がなかな か下りない。

いわゆるドラッグラグならぬ、デバイスラグですね。

.

家でワーファリンのチェックができるようになる ワーファリン3332001F1024
と、非常に安全性は高くなると思います。

.

野菜をたくさん食べる日もあれば、食べない日もありますよね。

食欲自体もある日とない日があります。

野菜をあんまり食べない日は、ワーファリンの効き具合が ガーンと上がるのです。

逆に、いっぱい食べた日は下がります。

下がった時に、脱水とかが加わって血栓ができるということは起こり得るのです。

.

では、どうし たらいいか。そういう時に、自分でちょっと血液を調べて、

「あぁ、ワーファリンが効きすぎてINRがのびている」とわかれば、

すぐにかかりつけ医や専門病院に電話して、

「いつもは3錠だけど、今日は1錠にしておきましょう」などという細かいアドバイスをもらうことができるようになります。

今はそういう時どうするかというと、お手数ですけど、病院に来ていただいてINRを調べます。

血液検査を受ければ、即座に手を打てるので、安全性は格段に高まりま す。

機械弁をお持ちの方によく言っていることなのですが、

そういうちょっとした手間を惜しまなかったら、安全性はうんと上がります。

.

●質問:ワーファリンのいらない人工弁について。

ベントール手術を受ける際、医師よりOn X弁を使いますという説明があり、

もしかすると将来ワーファリンがいらなくなるかもしれませんという説明でしたが?

.

お答え:OnX 弁というものは私たちも時々使っています。

ヨーロッパではワーファリンなしで使えるというデータがあるのですが、

しかし最新の研究データでは、ワーファリ ンなしで脳梗塞を起こしたという例が若干出たので、ワーファリンを止めるというのは良くないというのが現時点での認識です。

ただ数十例以上ワーファリンな しでうまくいっているということがあるので、30代で不整脈が全くなくて、これこれという条件を満たす人なら大丈夫・・・

今後そうした可能性はあると思い ます。

.

もしOnX弁でワーファリンが半分に減らせたら、これはすごい大きなことです。

仮にワーファリンなしで行けなくても、ワーファリンを減らせるだけで も立派なことです。

OnX弁はまだまだこれからのものです。

究極の弁というわけではありませんが、OX弁はよい選択肢のひとつかも知れません。

.

 

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日本マルファン協会での講演と質疑応答 2010年8月 にもどる

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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【第二十三号】 患者さんの声とブログに新記事です

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【第二十三号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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あの猛暑が嘘のような秋らしい涼しく爽快な季節になりました。

今年は紅葉がきれいになるのではないかという話も聞かれます。

皆さん如何お過ごしでしょうか。

ウィーンフィル奏者による室内楽コンサートはおかげさまで盛会裡に終了しま

した。ありがとうございました。

さてHPにいくつか新しい記事をUpしましたのでご紹介いたします。

患者さんからのお便りが3つと、心臓外科医のブログ1つです。

お便りは大動脈弁閉鎖不全症に対して大動脈弁形成術を受け、元気になられた

若者と、関東の男性で主治医から心筋症・心不全で打つ手がないと言われて私

のところへ来られ、頻脈性心房細動を治すことで心臓の機能が改善したケース

、そして心内膜床欠損症にもとづく僧帽弁疾患とIHSSで手術を受け、ずいぶ

ん元気になられた女性の3つのお便りです。

ブログはネパールのカトマンズにアジア心臓弁膜症シンポジウムのため行って

きた雑感です。

参考になれば幸いです。

平成22年10月19日

米田正始 拝

追伸:第8回患者さんの会(11月7日午後1時から、祇園ホテル)の御案内を再

掲します

ご連絡は以下へお願いします

患者さんの会の連絡先 米田心臓外科オフィス 秘書 中村由佳
TEL:080-6105-8231(直通)
FAX:075-712-8835
Eメール:nakamura@heart-center.or.jp です。

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アジア弁膜症シンポジウムにて

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10月6日から10日まで第6回アジア弁膜症シンポジウム、正式名称 Mulu Rafflesia心臓弁膜症シンポジウムに参加しました。(申し訳ないのですが、学会の報告はどうしても医療者向けになり、ちょっと専門的ですので一般の方は各論的なところは読み流してください)

2年に一度、アジアのどこかの国で開かれるのですが、欧米からも有名な先生方が 今回はネパールで開催されました。素朴な良い国でした。 多数こられることと、ある程度の規模に抑えて交流を図ることをモットーにしているシンポジウムです。心臓外科領域では有名なロッキーマウンテン弁膜症シンポジウムのアジア版として、ロッキーマウンテンの指導者であるデュランCarlos Duran先生の御指導のもと10年あまり前に発足したものです。私は6年前から世話人としてお手伝いしています。

今回は心臓外科領域の最近の進歩や変化を反映したタイムリーなものになりました。高齢化社会で弁膜症は増える一方ですし、若者を襲うタイプの弁膜症も少なくありません。社会的ニーズの高まりもあってホットな領域になっています。

初日はまずウィーン大学の大御所であるウォルナー Ernst Wolner先生が大動脈弁手術の最先端を論じられました。医師にはおなじみのビルロード先生(胃切除術を開発された歴史的な外科医です)の後輩にあたる先生ですが、カテーテルをもちいた新しい治療(TAVI)を含めた最先端状況を展望・紹介されました。いつもの鋭い眼光は健在でした。

ついで人工弁の感染性心内膜炎(略称PVE)をどう治療するかという、いわば難病対策のセッションがあり、さまざまな工夫が論じられました。タイの畏友 Weerachai Nawarawong先生は危険因子として術後早期のPVE、心不全、ブドウ状球菌、複雑なPVEなどを挙げ注意を喚起しました。もともと心内膜炎で心臓手術を受けた患者さんは何年経ってもまた心内膜炎になりやすい傾向を指摘されました。いずれもうなづける内容でした。注意が必要です。

インドの内科医Al Shahid先生はPVEでも予防が大切であることを強調されました。PVEでは安易なオペも考えものですが、脳出血が起こってしまうと手遅れであることも示され、リスクをしっかりと踏まえた的確な治療が必要で、妥当なことと思われました。

レセプション夕食会では早速旧交を温め賑わいましたが、食事しながら創部感染の防止の講演もあり、羽目を外し切れない真面目な会となりました。ネパール料理はスパイスが効いて食べやすいと思いました。隣国インドの料理に近いですが、違うところもあり、それぞれのお国柄と思いました。

翌日午前中は Show & Tellというセッションでさまざまな手術の工夫や問題提議などがありました。

小切開手術に関する発表がいくつかあり、ハートポート型の体外循環をもちいた小切開手術や胸腔鏡ガイド下での手術の近況が報告されました。メルボルン仲間である Almeida先生はロボットをもちいた僧帽弁形成術の経験を紹介されました。ロボットには賛否両論があるのですが、それに適した患者さんを選び、あまり無理をせずに余裕のある手術をするならば安全性は高く、コストも短期的には割高ですが、入院期間や退院後の復帰の速さを考えるとコストダウン可能という考えを示されました。日本でロボットの事故があったばかりなので、参考になりました。

モンタナのMaxwellマックスウェル先生は2年前からの友人で、上記のデュラン先生の後継者でさまざまな取り組みをしておられますが、ロボットやハートポートのお話から、究極の低侵襲という意味ではTAVI(カテーテルによる大動脈弁置換術です)などのカテーテルを基本とした弁へと進むであろう方向性を示されました。といってもカテーテル弁の術後1年で30-40%というずいぶん高い死亡率が報告されているという欧米の新情報も議論され、大動脈弁置換術の領域でもまだまだ外科手術が患者さんを助ける時代は続くという印象もあわせ持ちました。

不肖、私・米田正始は機能性僧帽弁閉鎖不全症たとえば心筋梗塞のあとなどに起こる虚血性僧帽弁閉鎖不全症拡張型心筋症にともなう僧帽弁閉鎖不全症への新しい取り組みをお話しました。先人たちの優れた仕事の上に立脚し、EBM(証拠にもとづく医学医療)を考慮し、より安定した弁形成術への道のりをご紹介しました。新しい手術法はちかぢか発表予定であるため、規約により「さわり」だけお話しました。これまでの術式たとえば弁輪形成や乳頭筋接合術などでもそこそこ良いのですが、それらでは解決しきれない僧帽弁後尖のテント化(左室側へ引っ張られて弁が閉じない)を解決するための工夫とあって多数の御質問を戴きました。感謝。もし近いうちに皆さんのお役に立てればうれしいことです。

その他にもいくつかの工夫が発表されましたが、虚血性僧帽弁閉鎖不全症のために開発されたGeoformリングの使用経験やピオクタニン色素をもちいた僧帽弁のかみ合わせ深度の有用性、あるいは僧帽弁の後尖腱索の前尖への転位など、すでに知られたものが中心でしたが、完成度が高くなりつつあるという点で評価できると思われました。

再び私が複雑僧帽弁形成術の症例をいくつか提示し、これまでの弁逸脱だけでなく、弁のけん引や3次元的変化など、さまざまな状況に人工腱索は対応できることを示しました。ぜひ使ってみたいので詳しく教えてほしいという反応を戴き、光栄に思いました。

2日目の午後は大動脈弁僧帽弁手術での新たな選択肢が論じられました。中でもタイの畏友Taweesak Chotivatanapong先生の自己心膜をもちいた僧帽弁形成術はいつもどおりきれいな仕上がりでした。通常形成が難しいリウマチ性の僧帽弁膜症でも70%は形成可能というデータを示されました。できるだけ劣化や短縮を防ぐためにグルタルアルデヒドで処理して使い、ここまで6年の経験では上々の成績ということでした。
この方法は以前からあり、これまで必ずしも良好とは言えない成績が大動脈弁形成術僧帽弁形成術で報告されており、これまでとどう違うから良いのか、という議論をさらに煮詰めることで、より良いものができるのではないかと思いました。個人的には自己心膜をよく使うのですが、大動脈壁や弁の根本付近など、長期間に多少変化しても安全な部位で使うようにしています。短期的には良くても長期間それが持続するかどうか、そこが問題です。日本でも積極的に試みておられる先生が若干あり、これまでの歴史を打ち破れるか、その展開を期待しています。

午後の後半は弁膜症手術の際に同時に行う心房細動(AF)手術のセッションでした。
最初にマレーシアのDillon先生が全体像を展望されました。マーシャル靭帯を処理し、ラジオ波と冷凍凝固を併用した熱心な方法を紹介されました。それでも左房径が60mmを超えると除細動は難しく、心房壁切除により心房縮小をしていたが、出血の心配があるため、最近は縫縮しているとのことで、以前からそれを提唱している者として、仲間が増えてうれしく思いました。

ドイツのライプチヒ心臓センターや中国その他の施設からさまざまな工夫が発表されました。とくにライプチヒのHolzhey先生は慢性AFには心内膜からの冷凍凝固がベスト、発作性AFには双極ラジオ波が有効というデータを出されました。理にかなった内容と思いました。

韓国のChang先生は長年の研究の中から冷凍凝固がもっともすぐれた方法であることをデータをもって示されました。同先生の延世大学へは以前講演に呼んで頂いたこともあり、交流の中で同先生の心房細動治療がライフワークであることは存じていましたが、それが学生時代からの夢であったとは知りませんでした。明確な夢や目標を持つというのは素晴らしいことと思いました。

それらを受けて、私は高度に心房拡張した難症例でも心房縮小メイズ手術を行えば除細動は可能であることを示しました。5年以上前から発表しているのですが、こちらの経験数が増えるに従って説得力も増しているようで、今回はより多数の引き合いがありいくつかの国へ実地指導に行くことになってしまいました。
スロベニアのGersak先生は心膜内視鏡を開発し、孤立性AFにも外科手術が有効かつ低侵襲であることを示されました。カテーテルによるアブレーションつまり焼灼治療にまだまだ課題がある中で、今後の展開が楽しみな方法です。

3日目は交流の日ということで皆観光ツアーに出かけました。私は他の写真仲間と一緒に飛行機でエベレストやヒマラヤ山脈を観るツアーに早朝からでかけました。エベレスト山はやはり特別なものを感じる雄大さがあり、朝5時起きして行ったかいがありました。
午後9時過ぎには他の皆さんに合流し、一日カトマンズやその周辺の観光を楽しみました。BhaktapurとDurbar広場をゆっくり観光しましたが、ネパールはまだまだ経済的に恵まれず、庶民の暮らしも大変と思いました。ただそれが不幸であるかどうかは別問題ですが。またアジアの最近の傾向に違わず、交通渋滞が多く、結構大変でした。夜は街灯が少ないため真夜中のような雰囲気になりますが、それでも多数の人たちが街に出て暗闇の中をショッピングしている風景には力強ささえ感じました。

4日目はまたぞろしっかり勉強で私が司会を務める中、このシンポジウムの締めくくりセッションとして三尖弁手術を論じました。いかにして弁形成を貫徹するか、またやむなく弁置換になる場合どうするのが良いかなどを論じました。その中には私たちが近年力を入れて来た永久ペースメーカーケーブルによる三尖弁閉鎖不全症も含まれ、議論は盛り上がりました。せっかく開発した良い方法を皆さんに使って頂けるよう、なまくらせずに早く論文を出したく思いました。

その後でウェットラボがあり、今回は三尖弁の意外に知られない解剖や特徴、さまざまな弁輪形成法をブタの心臓で練習して戴きました。上記のMaxwell先生やAlmeida先生、フィリピンの大御所らにまじって私もいろいろお世話させて戴きましたが、聴く耳のある外科医が多く、教えがいのあるセッションでした。
締めくくりのパネルディスカッションではシンガポールのLeng先生の基調講演を受けて、今後心臓外科医あるいは心臓血管外科医はどういう姿を目指すべきか、またそのための教育・研修制度はどうあるべきかを熱く議論されました。冠動脈や大動脈、あるいは大動脈弁の比較的シンプルな構造の病気は今後はカテーテル類をもちいた低侵襲治療がさらに増えて行くのは確実です。大変良いことで、医学の歴史は外科が治療をまず開拓し、それを徐々に簡単な薬などの内科治療へと進化させていく、その繰り返しで発展して来ましたが、心臓血管病も同じです。
同時に狭心症や心筋梗塞に対する永い治療の果てに左室そのものがどうにもならなくなって左室形成や僧帽弁形成を行って患者さんがさらに永く元気に生きられる治療をしたり、補助循環で社会復帰を応援するなどの新たな役割が心臓外科医には増えているとも言えるでしょう。あるいは心臓外科経験のある医師がERやICU等で活躍しているケースも多数あり、それらも途のひとつかも知れません。

患者さんに良いものが残り、それが栄える、それで良いのではないかと思います。しかし同時にこれまでの歴史は良いものが生き残るとは限らない、さらに、生き残っているものがベストとは限らないという教訓も教えています。たとえばビデオテープにおけるVHSとベータの闘いはその一例と位置づけられています。やはり良いものは良いということを、社会に啓蒙することは必須かと思います。
さまざまな勉強やそのお手伝いができて楽しいシンポジウムでした。最後の打ち上げのパーティは悪乗りの連続でしたが、また友人・仲間が増えて次の楽しみへとつながるシンポジウムになりました。最後にお世話になった代表世話人のSaw先生に御礼申し上げます。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
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2009年12月5日 「心臓弁膜症サミット」 

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マレーシアはクアラルンプールで開催されたバルブサミット(心臓弁膜症サミット)に行って参りました。

 

僧帽弁の話しと、大動脈弁の話しをさせて頂きました。

僧帽弁ではこれまで力を入れて来た心筋梗塞後の虚血性僧帽弁閉鎖不全症の新しい手術治療を、

大動脈弁では大動脈基部拡張に対する基部再建手術(私の恩師の名前をとってデービッド手術といいます)に相当するものをより短時間で確実に行う方法を講演しました。

体力のない高齢者の患者さんや他に重い病気をもっていて余裕がない患者さんを安全に救命するための方法です。

 

ライブ手術も数件あり、パリのペリエ先生やタイのタウィーサック先生らを始めとした先生らの手術を皆で温かく厳しくDiscussionしました。

僧帽弁形成術がおおく、小切開手術(MICSポートアクセス法)もありました。

15年以上前からある方法ですが、少しずつ工夫し完成度を上げているのが判ります。

エプシュタイン病の大人の三尖弁形成術もありましたが、右心室を治していないのがちょっと不満でした。

カテーテルを用いての弁膜症手術(TAVI)もありました。

まだまだ未発達のところもありますが将来の有望治療法です。日本ではいつのことになるのでしょうか。ツインタワーは壮大です。その下は豪華なショッピングモールや市民公園になっています

 

心臓外科全般についてアジア諸国の発展ぶりは経済発展と同様、めざましく、アジアの先生方が誇りをもって頑張っていることをあらためて感じました。

心臓弁膜症についても同じで、これまでは日本の心臓外科医が指導する場面が多かったのですが、これからの時代は教えて頂くようになるのかも知れません。

(写真は有名なクアラルンプールのツウィンタワーです)

 

平等な国際交流という意味ではそれも良いのかも知れません。

ただそれが日本独特な構造的弱点のために他のアジア諸国よりも力を落としたためと考えると、次の時代に向けて何とかしなければならないと思います。

日本独特の構造的弱点というのは、要するに心臓外科医が他のアジア諸国の心臓外科医ほど手術ができない構造のことです。

日本でも民間病院では外科医一人あたりの手術数はある程度は増やせるため何とかなりますが、国全体として改善が必要です。

学会も様々な努力をしているのですが、なかなか進みません。

 

サミットには欧米の有名な心臓外科医も多数来ておられ、昔から良く知っている先生もあり楽しいひとときが持てました。

 

クアラルンプールはアジアの文化、イスラム文化、そして旧英国領ということでイギリスの影響もあり、なかなかユニークな街です。

せっかくの機会なので、ちょっと学会場を抜け出して写真を撮りに行ったりもしました。

そのうちにこのWEBのギャラリーに迷作として披露したく思います。

 

街中のショッピングモールは東京やニューヨーク、パリなどを思わせるような立派なものでしたが、聞けばイスラムのよしみで中東からリッチなお客さんが多数来られるため高価な商品もよく売れるとのことでした。

庶民での不況はないのかいと尋ねたところ、イスラム銀行が支援するので、他の国ほど不況の波を受けないとのことで、

ホントかなと思いながらも、イスラム教が多くの民衆を惹きつけて来たことの理由の一部を見た思いがしました。

 

米田正始

 

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①b 弁膜症の動向について―時代とともに変遷が?注意点も変化?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月24日

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◾️心臓弁膜症、最近は、、

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弁膜症が増えています。

30年以上前はリウマチ性弁膜症が主体でその原因である溶連菌感染や炎症が抗生物質その他でかなり解決されたため、

リウマチ性弁膜症は次第に減少して行きました。

 .

ところが高齢化社会を迎え、加齢性または変性と呼ばれるタイプが増え、弁膜症全体の数をむしろ増やすようになりました。

さらに食生活が欧米化して動脈硬化が増え、同じメカニズムで硬化性のタイプも増えました。

EBM(証拠に基づく医学)データでは80歳代になりますと硬化による大動脈弁狭窄症が急増することが示されています。

 .

著者(米田正始)が医学生のころは弁膜症は過去の病気と教えられたのですが、

時代とともに国民の生活や社会背景が変わり、いまやこの病気は先進国での現代病となりました。

 .

◾️弁膜症のそれぞれについて

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弁膜症の個々の病気につきましてはこのWEBの解説ページをご覧ください。

 .

3つの弁大動脈弁狭窄症のように重くなると突然死する病気や、

大動脈弁閉鎖不全症のように症状が出るころにはしばしば左心室がうんと大きく悪くなっているなどがあり、

定期健診や症状(息切れ胸痛、ふらつき、めまい、動悸)などがあれば専門医受診を勧めます。

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心エコーなどの痛みなく安全な検査で弁膜症の大半の状況はわかりますので検査は受け甲斐があります。

 .

僧帽弁閉鎖不全症では息切れや動悸がでれば注意が必要です。

ときに血栓が脳に流れていって脳梗塞になる方がおられます。

エキスパート心臓外科医ならほとんどの患者さんで弁形成術つまり弁の修復で良くなり、オペのあと、ワーファリンが無しで行けるという大きなメリットがあります。

リウマチ性の僧帽弁膜症は弁形成が難しいと言われますが近年は熟練の術者ならかなり形成ができるようになっています。

 ワーファリンとは血栓予防のお薬で出血を起こすことがあるの と毎月病院に通って検査を受ける手間がかかります。

 .

三尖弁閉鎖不全症は通常は弁輪形成術で治りますが、ペースメーカーケーブルによる三尖弁閉鎖不全症はペースメーカーのケーブルは三尖弁を通過する必要があり、ときに弁を壊すことがあります弁輪形成だけでは治しづらく、私たちが開発した術式で良くなります。

治すタイミングが遅くなりすぎると肝うっ血から うっ血性肝硬変へと進展悪化し命を落とします。

またあまり肝臓が弱ってからは心臓手術(三尖弁手術)の危険性が高くなってしまいます。

肝臓がその負担に耐えられないからです。

三尖弁膜症では足や顔のむくみやお腹の張り、全身の疲れ倦怠感などにもご注意ください。

おかしいと思えば一度外来に来て頂ければ安心できます。

 .

◾️弁膜症は治せる病気ですが、、

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このように弁膜症は治せる病気です。

しかしタイミングを逸すると命にかかわる手ごわい病気でもあります。

とくに肝臓その他の臓器がやられてしまうとリスクが上がります。

普通の大動脈弁置換(人工弁に変えます)や僧帽弁形成術(弁を修理します)ならオペで命を落とすリスクは1%程度ですが、全身の状態が悪くなるとリスクは高まってしまいす。

弁膜症の患者さんやそのかかりつけ医の先生方には早めに専門医にご相談頂ければより安心して頂けます。

軽症でしたら状態に応じて1年ごとのフォローとか、半年ごととか、「無罪放免」などの方針が立ちます。

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メモ: 弁膜症の治療では日米のガイドラインが役立ちます。

これによって不必要な心臓手術を避け、またタイミングを逃すこともありません。

私たちはEBM(証拠にもどづく医学医療)とガイドラインに立脚し、ガイドラインがない病気にはこれまでの文献と自らの経験を加味して考えるようにしています。

また複雑な病気の場合は適宜内外の専門家のご意見をいただくようにしています。

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