大動脈基部拡張症 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 大動脈基部拡張症とは?

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大動脈基部拡張症(aortic root dilation / aneurysm) とは、心臓と大動脈の境目である「大動脈基部」が異常に広がる病気です。AoRootCrossSection

  • 進行すると 大動脈基部が破裂 したり

  • 大動脈弁が壊れて逆流(大動脈弁閉鎖不全症) を起こしたりする

とても危険な疾患です。

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主な症状

  • 運動時の 息切れ・動悸

  • 進行すると 胸痛・失神発作

  • 基部が破裂すれば ショック状態から命に関わる緊急事態 となります

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◆ 大動脈基部の構造と役割

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大動脈基部は心臓外科で「難所」といわれる部分です。深い場所にあり、周囲に重要な構造物が密集しています。

地下1階(基部の下部)

  • 心室中隔(心臓を左右に分ける壁)があり、とても脆弱

  • 近くには 刺激伝導系(心臓の電気信号の通り道) が走り、損傷すると心ブロック・ペースメーカー依存になる可能性があります

地上1階(大動脈弁輪)

  • 左室と大動脈の境目

  • 吊り橋のような構造で、大動脈弁がスムーズに開閉できる仕組みになっています

地上2~3階(バルサルバ洞~STジャンクション)

  • バルサルバ洞:弁がやわらかく閉じるための「ショックアブソーバー」

  • 冠動脈の入り口:心臓を養う血管の起点

  • STジャンクション:大動脈基部から通常の大動脈へ移行する境界

このように精密な構造があるため、拡張や変形が生じると 弁の逆流や血流障害 に直結します。

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◆ 大動脈基部拡張症の原因

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大動脈基部拡張症は、以下の患者さんに多く見られます。

  • マルファン症候群などの遺伝性結合組織疾患

  • 二尖弁(大動脈二尖弁) の方

  • 大動脈炎症候群

  • 感染性心内膜炎(IE)

特にマルファン症候群では若年でも発症するため、定期的な画像検査(心エコー・CT)が重要です。

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◆ 大動脈基部拡張症の治療法

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拡張が進行し、破裂のリスクが高い あるいは 大動脈弁の逆流が強い 場合は外科手術が必要となります。

主な手術方法

212450209
自然が一番です。手術もできるだけ自然な自己弁温存で。
  • デービッド手術(弁温存基部置換術)
     → 自分の大動脈弁を残して基部を人工血管に置換。拡張が軽ければフロリダスリーブ手術で同じ効果。

  • ヤコブ手術(リモデリング術)

  • ベントール手術
     → 弁尖が修復不能な時に、大動脈基部+大動脈弁+冠動脈をまとめて人工血管・人工弁に置換

  • ロス手術
     → 自分の肺動脈弁を大動脈弁に移植する特殊手術

基部だけでなく、大動脈弁や冠動脈の状態に応じて最適な術式を選びます。

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◆ 予防と定期健診の重要性

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大動脈基部拡張症は自然に治ることはありません

  • 直径が一定以上に拡大した場合(例:50mm以上)は手術が推奨

  • 進行速度が速い場合も注意が必要

  • 定期的なCT・心エコーによる経過観察 が生命予後に直結します

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◆ まとめ

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  • 大動脈基部拡張症は 大動脈の根元が膨らむ危険な病気

  • 放置すると 破裂や大動脈弁不全で命に関わるリスク

  • マルファン症候群・二尖弁の方は特に要注意

  • 治療は デービッド手術・ベントール手術などの外科治療が中心

  • 定期検診と早期治療 が長期予後のカギとなります

➡ 大動脈基部手術について詳しく読む → [こちらをご覧ください]

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患者さんの想い出はこちら:

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大動脈弁のリンク

◆ 弁置換術とは?

◆ ミックスによるもの

◆ ポートアクセス法によるもの

弁閉鎖不全症 

◆ とくに「二尖弁」 について

弁形成術 

◆ ミックス手術(MICS)によるもの

◆ 自己心膜をもちいたもの

◆ 自己心膜による大動脈弁形成術(再建術)

 

ステントレス弁 

大動脈基部 の手術

ベントール手術 

◆  ミニルート法(インクルージョン法)

◆  デービッド手術 

◆ ミックス法でのデービッド手術

大動脈弁輪拡大術(大動脈基部拡大術)

◆ マルファン症候群について: 弁も大動脈も守りましょう

◆  日本マルファン協会での講演と質疑応答 2010年8月

大動脈炎症候群 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心臓手術・事例:マルファン症候群、ベントール手術1年後に腹部大動脈瘤手術

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マルファン症候群の患者さんは結合組織と呼ばれる、内蔵をつなぐ組織が弱いため、平素から定期健診を受けることが大切です。

心臓血管関係では心臓の弁や大動脈全体を定期的に調べれば、いのちを突然落とすことはほぼ防げます。

手間をかけただけ、得られるものが多くなるのです。

下記の患者さんはマルファン症候群をおもちの65歳女性で、1年前に大動脈基部拡張と大動脈弁閉鎖不全症のためベントール手術を受けられました。同時に僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁形成術も受けられました。

大動脈弁がかなり壊れていたため、患者さんご自身の弁を温存するデービッド手術は行わず、確実に人工弁をつけた人工血管で治しました。

術後経過は順調でまもなく元気に退院されました。

それから1年6か月経って、腹部大動脈瘤が健診の度に大きくなり、直径55mmに達し、このままでは破裂の心配が出てきたため、これも手術することになりました。

手術では腎動脈分岐部のすぐ遠位部から両側の総腸骨動脈をYグラフト人工血管で取り換えました。

瘤の中枢側まで大動脈は解離(壁が内外に裂けること)していたため、これを修復補強しながら人工血管を取り付けました。

それから4年近く経ちますが、心臓と腹部大動脈およびその周辺部には問題なくお元気です。ただし胸部大動脈(下行大動脈)が拡張気味なので、丁寧な定期健診を欠かさないようにしています。

このようにマルファン症候群の患者さんは大動脈全体や弁、その他の臓器などを永年守る必要があり、病気離れや医者いらずというレベルの状態は難しいのですが、手間をかけた分だけ安全性や快適性が上がるともいえ、患者さん・ご家族と相談しながらフォローアップを続けています。

iPS細胞が実用化すればまた話が違ってくると思いますし、早くそうなるのを期待していますが、当面、地道な努力が患者さんを守るのです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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お便り84: 嚢状瘤に対して弓部大動脈全置換手術を

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弓部大動脈瘤とくに嚢状瘤つまり局所的にポコッとこぶになっているタイプはサイズが小さくても破裂する恐れがある病気です。

しかも症状がない場合が多く、いったん破裂すれば強い症状が出ますがその時にはすでに手術が間に合わずいのちを落とすことが多いというやっかいな病気です。

A335_009この患者さんは近くの先生の気転でCTを撮っていただき、未然に診断をつけて頂いたおかげで命拾いをしました。

普段はお元気な70代男性で、そうして弓部大動脈の嚢状瘤という診断をつけていただき、米田正始の外来へ来られました。

まもなく手術となりました。

人工血管で弓部大動脈をすべて取り換える手術(弓部大動脈全置換術)を行い、経過良好で術翌朝には集中治療室を退室され、手術後9日目に元気に退院されました。

以下はその患者さんからのお便りです。

お役に立てて本当にうれしいことです。

また私のチームの医師・看護師さんたちの名前をあげて感謝してくださり、こんなにうれしいことはありません。

また外来でお会いするのが楽しみです。

*********** 患者さんからのお便り **********

名古屋ハートセンター

米田正始 先生

このたび 1月16日に胸部大動脈瘤を手術していただいた****です。

 お陰さまで26日に退院し、日々少しづつリハビリに取り組んでおります。

 12月27日に妻ともども先生へ伺い、診察、検査の結果、早く手術したほうが良いと勧められて、迷ったのですが、先生の説明に納得して早期の手術を決断した次第です。

 手術を担当していただいた米田先生をはじめ、北村先生、深谷先生、木村先生、看護師の小中野先生、梅田先生、道木先生、病室のスタッフの方々に大変お世話になりましたこと、厚くお礼申し上げます。

 ハートセンターの取り組みは、宗田 理「いい病院」への挑戦という本が昨年春に出版されておりまして、事前に目を通しておりましたが、ご指摘通り素晴らしい取り組みをされている病院と納得しました。

 今回、***病院の**先生に病魔を見つけてもらったおかげと思っており、感謝の念で一杯ですが、手術をしていただいた「名古屋ハートセンター」の皆さんにも感謝、感謝です。

本当にありがとうございました。皆様にもよろしくお伝えください。

まずはお礼まで

平成25年1月29日

****

 

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執筆:米田 正始
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事例:大動脈炎にデービッド手術を施行

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大動脈炎症候群(大動脈炎)は今も油断ならない病気です。

放置すると大動脈だけでなくあちこちの動脈がやられてその結果、眼が見えなくなったりします。大動脈のどこかの部分が瘤つまりこぶのように広がると破れる心配がでてきます。大動脈基部が壊れて広がると破裂の恐れもありますし、大動脈弁閉鎖不全症となって弁膜症を合併してしまいます。

若い女性が多いだけに、弁膜症となると長持ちする機械弁をと短絡すると将来の妊娠や出産に大きな困難を残しますし、生体弁では長持ちしません。

ライフスタイルを含めた長期的なプランにしたがって治療戦略を立てる必要があり、とくに予防と二次予防つまり治療のあとの再発防止も大切です。

術前3DCT患者さんは20代前半の女性で近くの大学病院にて大動脈炎症候群の診断でステロイドによる治療を受けておられました。

しかし病気が進み、大動脈基部は拡張し(左写真)、その結果、大動脈弁は寸足らずとなり大動脈弁閉鎖不全症を合併していました(右図)。

労作時の息切れが強くなり、ときどき胸痛を覚えるようになって私の外来へ来られました。

ステロイド剤が一日 術前AR10mgを割ったタイミングで、手術することになりました。

ステロイドが多量に入った状態では創が治りにくくなったり、酷い時には人工弁や人工血管がはずれることもあり得るからです。

そもそもこの患者さんの将来設計とくに妊娠出産のためには自己弁(弁尖)を温存するデービッド手術が必須で、極力これを行う方向で準備しました。

弁尖は大動脈炎にはやられないというデータがあるからです。

Bavaria先生とこの準備に当たっては、

大動脈基部再建手術の世界的権威であるペンシルベニア大学のバーバリア先生(Prof. Joseph Bavaria)の御意見もいただき、

私の意見(弁尖はこの病気にやられないから温存する)を支持していただき、

勇気百倍で手術に臨みました。

手術Ao拡張と癒着手術ではさすがに大動脈基部の拡張と炎症のため、

周囲組織と癒着し(右図)、壁はもろく弱くなっていましたが、

大動脈弁の弁尖はきれいで温存すべき所見でした(左下図)。

手術大動脈基部展開そこでまず大動脈弁の弁輪部と弁尖および左右冠動脈入口部を残して大動脈基部を切除し、

これをダクロン人工血管の中に入れ込み、縫着しました。

ついで3つの弁尖が正しいレイアウトになるように3交連部の三次元位置を調整してから大動脈弁輪部付近の大動脈壁を縫着し、

手術右冠動脈吻合中最後に左右冠動脈入口部を人工血管に縫合しました(右図)。

人工血管を上行大動脈の遠位部に連結して手術を終えました。

手術吻合完成術後経過は良好で、

術翌日には集中治療室を退室して一般病棟へ戻られました。

大動脈炎のコントロールがたいせつなため、

しば 術後3DCTし入念にステロイドを調整し、CRPも1.9まで低下改善したため、

術後約2週間で元気に退院されました。

術後ARなしその後は膠原病の専門の先生と、私たちの外来の両面からフォローし、

お元気にかつ大動脈炎症候群も軽快安定した形で暮らしておられます。

今後は健康生活を楽しむとともに、

二次予防つまり大動脈炎を再燃させないように外来でしっかり見守って行く予定です。

 

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お便り81: 大動脈二尖弁と上行大動脈、僧帽弁の患者さん

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大動脈二尖弁はそれ自体では必ずしも病気とは言えないのですが、大動脈弁の弁膜症を起こしやすいため、注意深いフォローアップが必要です。

同時に大動脈基部つまり大動脈の根っこの部分から上行大動脈にilm17_da05003-sかけて、大動脈の壁が弱く瘤になりやすいため、マルファン症候群のような結合組織疾患に準じたフォローアップが必要です。

これによって長期の安全性が確保しやすくなるのです。

下記の患者さんは大動脈二尖弁のため、お若い年齢でも大動脈弁閉鎖不全症と上行大動脈瘤を発症し、

さらにIEつまり感染性心内膜炎を合併したため僧帽弁閉鎖不全症も発生し、

このままでは心不全悪化や大動脈破裂などの懸念が強まるため来院されました。

この病気をきちんと治してくれる病院をもとめて、九州から来て下さいました。

詳しく調べますと、大動脈弁と僧帽弁の両方と、上行大動脈から弓部大動脈の一部までを治す必要があることがわかりました。

時間がゆるせば弁は両方とも形成か再建とし、上行大動脈は人工血管で置換したかったのですが、僧帽弁は前尖つまり主要パーツが全体に壊れているためその形成術も比較的複雑で、上行大動脈も弓部大動脈の一部まで治す必要があり、大動脈弁は破壊が高度であることもあって短時間で確実に生体弁で治しました。

とくに僧帽弁形成術では穴をパッチで治し、ゴアテックス人工腱索を8本立てて逸脱を修復しました。

以上をミックス手術で、小さい創で行いました。若い患者さんが創を気にせず楽しく暮らして欲しいからです。

術後経過は良好でまもなく元気に退院されました。九州から外来へ定期健診に来て下さいますが、元気いっぱいのお姿をみてうれしく思っています。

大動脈弁が将来壊れたら、TAVIという折りたたんだ生体弁をカテーテルでもとの弁の中に装着することで再手術が回避できるよう、極力大きな生体弁を植え込みました。

以下はその患者さんとそのお父さんからのメールです。とくに患者さんのお便りは他の患者さんたちのお役に立つようにという気持ちで書いて下さいました。

*******患者さんからのお便り*******

私は38歳の男です。

お便り81です生まれつき二尖弁と診断され、定期的に地元や他県の病院で診察を受けてきました。

 
将来的に手術も必要だと言われてましたが、自覚症状もなく、元気でしたし、運動も普通にしてきました。

歳をとるにつれ、大動脈弁の逆流もひどくなるし、大動脈も太くなってきてて、早めに手術したほうがいいと言われましたが、手術するのも怖くて、自分の病気にも向きあう事ができませんでした。

 
やはり手術するなら心臓専門の病院がいいと思い、パソコンから米田先生のホームページを見て、私の病気の事を米田先生にメールしたところ、返事をいただき、平成24年7月に診察をしました。

1日の検査で、治療方針を決めていただき、病気の症状など、丁寧に詳しく説明してもらって、その時はじめて米田先生に全てを任せようと決心する事ができました。

検査の結果は、大動脈弁閉鎖不全症、僧房弁閉鎖不全症、大動脈瘤です。大動脈瘤の太さは5センチでした。

手術は平成24年8月21日に決まり、大動脈弁置換術、僧房弁形成術、人工血管置換術をして、無事に手術は終わりました。

術後は、思っていたほど痛みもなく、2日目には歩いたり、食事も普通にできました。名古屋ハートセンターの看護師さんやドクターの方も親切な方ばかりで、入院中も不安なく過ごせました。

退院は8月31日で、入院から12日で退院する事ができました。

一度の手術で、三箇所を治す難しい手術みたいでしたが、現在の経過も順調です。

手術して約半年になりますが、仕事や運動などしたり、手術前よりあきらかに元気に過ごしています。

傷口も小さく綺麗なので、米田先生に手術していただいて本当に良かったと思います。心から感謝しています。

先生には新しい命をいただきました。

 

*******患者さんのお父さんからのメールです********

熊本・**市の****です。

ご無沙汰致しております。
次男の経過が良好なのも、先生ならびにスタッフ皆様の御蔭と感謝申し上げております。

病気発覚時に、開業医病院では処置できずに総合病院に転院した訳ですが、経過観察だけが続くだけで
ムンムンとした日々を過ごしていました。

私の二十五年前の経験から病院と先生は、自分の納得した上でお願いしたが良いと思っておりましたので、
ネットで全国の病院と先生を調べました。

こういう事を言えば言葉は悪いかも知れませんが、「医者と病院は、選ばなければ・・・・・」

米田先生のホームページを拝見しました時に、病の説明を細目に書き込みされている事に感銘致しました。
また、開業医の先生への項目に早めの紹介をと、書かれていたのに・・・・自分も同感致した次第です。

初めて、先生にメールで病気の問い合わせ致しました時も、ビックリするほど返信が早かったのを覚えています。
返信の内容で、不安が一掃したのも言うまでもありません。

九州・熊本から受診した時も、日帰り出来る様に手配頂いて、感謝申し上げます。
スタッフの皆様も暖かく親切でしたので、田舎者も安心して帰路についた次第です。
重ね重ね、今回の診察から手術までと、経過治療につきまして御礼申し上げます。

有り難う御座いました

 

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お便り76 下行大動脈瘤の患者さん

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下行大動脈瘤の治療にはステントグラフト、略称EVAR(エーバー)をもちいて、なるべく切らずに治すようにしています。

Ilm10_de02011-sその場合、足の付け根の動脈などから折りたたんだ人工血管を入れて、下行大動脈瘤まで進め、そこで瘤に内張りをつける形ですべて内側から直してしまいます。

そのため胸にはまったく創がつきません。

それによって痛みを減らし、より早い社会復帰や仕事復帰を図ることができます。

しかし、足の血管などが動脈硬化で壊れているなど、状況によってはその方法が使えないこともあります。

この患者さんは下行大動脈瘤の治療のため来院されました。

なるべくステントグラフトをと検討しましたが、血管が悪いため、外部の識者の先生にも検討していただき、通常の手術を行うほうが良いという判断となりました。

通常の手術では左胸を切って中へ入り、下行大動脈を人工血管で取り換えます。

その場合、ときおり脊髄神経がやられ、下半身がマヒになることが報告されています。

そこでさまざまな工夫を凝らし、脊髄保護にとくに力を入れて手術を行いました。

その結果、何も問題なく、順調に回復され、まもなくお元気に退院されました。

つぎのお手紙はその患者さんの奥様からのものです。

病院の御意見箱に入れて下さいました。

お役に立てて大変うれしく思います。

 

***********患者さんからのお便り************

 

他院で受診した時、医師から「あなたは手術しても車いすの生活になるよ」と言われ、主人と私はあまりのショックに目の前が真っ暗になりました。

そんな時、貴院を知り親切に対応して頂き藁をもすがる思いでやって参りました。

そして8/30、最善の方法で手術をしていただき、心配していたマヒもなく、今日退院を迎えることができました。

米田先生をはじめ、北村先生、深谷先生、木村先生、手術に携わったすべての皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。

そして明るく心が和むお世話をして下さった看護師さん、介護師さん、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。皆さま優秀な方達ばかりです。

名古屋ハートセンターに出会えて本当に良かったです。

 

御意見箱へのご回答: この度は退院、本当におめでとうございます。

そして、このような御意見が頂けて、ハートセンタースタッフにとって

これ以上嬉しいことはございません。お言葉を胸に、今後とも日々の業務に励んで参ります。

この度は、お褒めのお言葉、ありがとうございました。

米田、スタッフ一同

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事例: 腹部大動脈瘤に安全のため通常手術を行ったケース

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腹部大動脈瘤の治療では、ややご高齢で全身の体力もそれほどない患者さんではなるべくステントグラフト(EVAR)が低侵襲ゆえ望ましいものです。

もちろん瘤の形や状態がEVARに適していることが条件です。

もしEVARで無理をして瘤が治らず、そのまま破裂すると、外科手術で腹部大動脈瘤の成績がきわめて良好な今日、大きな悔いを残すことになってしまいます。

そこでEVARに無理があるとき、効果が不十分と思われるときには外科手術を前向きに考えることがあります。

 

術前CT患者さんは76歳女性で

6年前に狭心症に対してカテーテル治療PCIを受けておられます。

またCKD(慢性腎機能障害)があります。

 

以前から指摘されていた腹部大動脈瘤が直径5cmを 術前CT側面超え、

瘤の拡張速度も速いため、治療することになりました。

ただし狭心症が再発していたこと、そして冠動脈の状態がカテーテル治療PCIに不向きなことから、オフポンプバイパス手術を行いました。

3本のバイパスグラフトはすべて開存で、患者さんは元気になられました。

そこで腹部大動脈瘤の治療をということになりました。

できればステントグラフトEVARでと考えていましたが、

両側腸骨動脈の状態が悪く、蛇行と石灰化そして狭窄が見られます。

ステントグラフトを下肢の動脈から届けることができない所見でした。

術後CT側面 術後CT正面そこで開腹し、瘤の部分を人工血管で取り換えました。

術後経過は順調で、人工血管は良い状態で安定し、

患者さんはまもなくお元気に退院されました。

術後1年が経ちましたが経過はおおむね良好で安定しておられます。

開腹手術といえども、創はなるべく小さくして患者さんの苦痛が少なくなるようにしました。

こうした患者さん個々の状態を考えてベストの治療を選ぶことが大切と考えています。

 

メモ: 最近の医療界では、大動脈に限らず、どの治療でも、それが「やれるからやる」というレベルを脱却して「患者さんに良いからやる」というレベルが求められるようになりました。

さらに申し上げれば「患者さんにベストだからやる」と科学的データにもとづいて判断するのが正しいと言えましょう。

 

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腹部大動脈瘤の治療ガイドライン

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Ilm19_ca06026-s腹部大動脈瘤はある程度の大きさになると急に破れやすくなる病気です。

いったん破れてしまうと病院にたどり着くまでに死亡したり、到着しても全身状態が悪化して手術の成績は極めて不良です。

その一方、状態が良いうちにゆうゆうと手術すれば死亡率はほぼゼロまで良くなっています。

こうした状況を考えてガイドラインが作られています。手遅れにならぬように、しかしまだ不要な手術や治療を避けられるように。

 

日本循環器学会のガイドライン、非破裂腹部大動脈瘤手術適応から、抜粋要約します

 

図1bクラスI つまり手術を強く勧められるのは

男性で瘤の最大横径>5.5㎝

女性で瘤の最大横径>5㎝

 

クラスIIa つまり手術を勧められるのは

最大横径>5㎝ か瘤の拡張速度>5mm/6か月か

腹痛・腰痛。背部痛などの有症状あるいは

感染性動脈瘤

 

クラスIIb つまり手術はケースバイケース、よく検討してから、は

最大横径4-5cmで

手術危険度が少なく生命予後が見込める患者で、経過観察のできない患者

 

詳しくは日本循環器学会のホームページなどをご参照ください。

およそ5cmを超えれば注意し、専門家と相談することが安全でしょう。

 

メモ: 腹部大動脈瘤が上記のように大きくなり手術が必要な場合にも、現在は従来型の手術と、お腹を切らずに行えるステントグラフト(略称EVAR)があります。

さらに、手術の場合でも皮膚を小さく切り、苦痛が少なくてすむ方法が使えます。

そこで創よりもいのちを優先することが患者さんにとって、やりやすくなりました。

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事例:胸部大動脈瘤へのハイブリッドのステントグラフト

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胸部大動脈瘤の中には単純な一か所の瘤から、複数のあるいは広範囲の瘤もあり、その患者さんに応じたベストな治療法、手術法が大切です。

心臓血管手術のなかでもやや大きめのものになりますので、十分な考察と戦略が求められます。

近年のステントグラフト(略称EVAR、胸部の場合はTEVAR)はこうした治療にも役立つことが多くあります。

ステントグラフト単独で、あるいは心臓血管手術と併用(いわゆるハイブリッド治療)で、あるいは手術単独で、などの中からその患者さんにとってベストのものを選ぶ時代になりました。

 

患者さんは79歳男性で、高血圧症をはじめ、さまざまな生活習慣病をお持ちでした。

術前CT弓部大動脈瘤と下行大動脈瘤のため手術が必要という判断になりましたが、近くの病院の小さいチームでは不安と私の外来へ来られました。

たしかに弓部大動脈瘤が大きくなり、瘤が二段になって危険な所見でしたし、下行大動脈瘤も長くは無視できない状態でした。さらに腹部にも小さい大動脈瘤がありました。

かつてはこうした瘤は、患者さんの年齢や体力などを考慮して、必要なら一気に全部を人工血管で置き換えるなどして治したものですが、患者さんの体への負担は少なくありません。

とくに79歳の比較的ご高齢の患者さんではその負担は無視できません。

そこでまず弓部大動脈全置換術を前からのアプローチで行いました。

術後CTこれはすでに確立した安全な方法、選択的脳灌流という方法をもちいて、脳を守っている間に下行大動脈に人工血管をつなぎ、全身の血流再開ののち、上行大動脈を人工血管でつなぎ、最後に弓部大動脈3分枝を上記の人工血管と連結すれば完成です。

これによって25℃程度の中等度の低体温で手術ができ、止血にもあまり時間がかからず、体への負担も小さくすみました。

もう少し体温を上げれば、さらにスピードアップが図れるのですが、選択的脳灌流の最中の脊髄保護を確実にするために、私たちはあまり温度を上げ過ぎないようにしています。

そのおかげか、手術で脊髄などがやられたことはありません。

術後経過は順調で、術後2週間を待たずに元気に退院されました。

EVAR後術後3か月経って安定したところで、こんどはステントグラフトで下行大動脈から2つめの瘤、さらに上記の手術でつけた人工血管までをすべて内張りをつけるように治しました。

こうすることで創を一か所にとどめ、出血や苦痛もより少ない状態で手術が完成しました。

手術からまる2年がたち、お元気に暮らしておられます。

腹部にも大動脈瘤ができており、現在直径44mmのため経過観察しています。

将来必要が生じればそれもなるべくステントグラフトEVARで治したく思っています。

 

高齢化社会を迎えて、広範囲の胸部大動脈瘤も増える傾向にあります。

ステントグラフトのうまい活用で、こうした患者さんの心臓血管手術成功率を上げ、さらに体の負担を減らすことでより早い社会復帰を促すように工夫しています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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胸部大動脈瘤の治療ガイドライン

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胸部大動脈瘤はその部位によって心臓や脳、脊髄、腹部内蔵、などの重要臓器と関連するため、心臓血管手術の中でも昔から大きな手術として扱われて来ました。

近年は専門チームでの手術成績が格段に良くなり、病気の性質上、破れてしまうと手遅れになることが多いためもあって、やや早めに手術する方向にあります。

それだけに確実に、安全に治す必要があるとともに、今後破れる恐れの高い状態をより正確に把握し判断する努力も大切です。

日本循環器学会の胸部大動脈瘤における治療の適応ガイドラインはこうした意味でもお役に立つでしょう。以下、ガイドラインからの抜粋、要約です。

 

クラスI つまり強くお勧めできる治療法は

最大短径6cm以上に対する心臓血管手術

 

クラスIIa つまりお勧めできる治療法は

最大短径5-6cmで、痛みのある胸部・胸腹部大動脈瘤に対する心臓血管手術

最大短径5cm未満、症状なし、COPDなし、マルファン症候群を除く、の胸部あるいは胸腹部大動脈瘤に対する内科治療つまり点滴やお薬による治療

 

このように基本的に最大短径6cm以上か、それ以下でも症状があるときに手術となるわけです。

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なおこのガイドラインには、マルファン症候群やのう状瘤を除く、と明記されています。

写真右は嚢状瘤の一例です。

マルファン症候群やのう状瘤つまりポコッと局所的に膨らむ瘤では6cmより小さい瘤でも破裂することが知られています。

そこでもう少し小さい段階でも心臓血管手術を行うことがあるわけです。

実際、直径5cmあまりの上行大動脈瘤をもつマルファン症候群の患者さんを定期健診していたところ、ある日突然A型解離を発生され、緊急手術でお助けした経験が昔、10年以上前にありました。

直径5cm程度でも解離が起こる恐れがあるため、もし強い胸痛発作がおこればすぐ病院へ来て下さいと平素から打ち合わせをしていたのが役立ちました。

その場合、当時の大学病院では緊急対応しづらいことも考え、近くの民間施設においでと伝えておいたのが功を奏し、ただちにその病院で合流し、緊急手術、軽快退院されました。

やはり備えあれば憂いなしですね。

 

またステントグラフト(EVAR)をもちいた治療も進化を続けています。

胸部大動脈瘤のなかでも下行大動脈瘤ではEVARは活躍の方向にあり、それ以外の弓部大動脈瘤などでもこれまでの手術が危険すぎるときなどに、弓部血管バイパス術と併用してEVARを行うこともあります。

今後が期待される領域でしょう。

 

これからもガイドラインをきちんと守って早め早めに対策を立てるのが良いでしょう。

 

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