アルフィエリ法とは【2025年最新版】

Pocket

最終更新日 2025年1月11日

.

◾️僧帽弁形成術で時に使われるアルフィエリ法とは

.

この方法はイタリアの同じ名前の先生(写真右、熱くても温厚な良い先生です)が90年代 に発表された僧帽弁形成術の方法です。

.alfieri_o_02

何しろ簡単 にできるため当時から多くの心臓外科医の注目を集めました。

.


僧帽弁の前尖と後尖を中央付近で糸で縫ってつなぐ、ただそれだけで弁の逆流が
止まるということでした。しかしその治療成績があまり良くないことがわかり、心臓外科ではやむをえないときの最後の手段と位置づけるひとが増えました。

.

私自身、弁形成で困ったときの緊急退避と位置付けていました。

.

◾️アルフィエリ法、最近の展開は、、

.

この数年間、このアルフィエリ法をカテーテルで行うMクリップが登場し、その根拠となったアルフィエリ法にも再度注目が集まっています。
IMG_8100b

.

ではこの方法の現実の結果はどうでしょうか。

.

まず僧帽弁の後尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症では、弁輪形成(略称MAP)とアルフィエリ法を併用すれば良い結果が比較的長持ちすることが報告されています

.

前尖と後尖が両方逸脱しているような複雑なケースでも、両方が同じ部位で逸脱している時に、弁輪形成とセットでやればまずまず良いという報告がみられます

.

拡張型心筋症のため機能性僧帽弁閉鎖不全症になっている患者さんではどうでしょうか。この場合も小さいリングで弁輪形成を併用するならば、アルフィエリ法の成績は悪くありません。

.

その一方、僧帽 Ilm18_be07018-s弁のいろんな部位が壊れているときや、リウマチ性の僧帽弁膜症ではアルフィエリは使えません。

.

この方法では弁口を2つに分割する結果になり、当初は僧帽弁狭窄症が懸念されましたが、上記の正しい適応を守ると狭窄症は起こらないことがわかりました。
運動負荷をかけるときにも良い結果がでました。

.

その反面、弁輪形成術(MAP)をやらなかった症例つまりアルフィエリ法単独の場合はまもなく弁の逆流が再発し、結果は悪いという報告があります。

.

弁輪形成しないと前尖と後尖が深くかみあうことができず、弁輪拡張と逆流増加の悪循環に陥るためと考えられています。

.

要するに僧帽弁輪形成をともなってこそのアルフィエリ法であり、単独では長期の安定は期待できないことが示されているわけです。

.

◾️するとMクリップは、、、

.

こうしたEBMデータをもとにして考えると、カテーテルによるMクリップは僧帽弁輪形成をともなわない、単独アルフィエリ法ですの Nurse_man_ideaで治療成績は良くないはずのものです。それを裏付けるように、ヨーロッパではMクリップのあとで逆流再発し、やむなく弁形成手術に至るというケースが増えています。Mクリップのために弁が壊れて、手術のときには弁置換になってしまうことも増えています。

.

ただし、心臓手術と比べて侵襲つまりからだへの負担がはるかに軽いというメリットは確かにあります。手術はできない状態だが、逆流を少しでも減らせればそれだけ患者さんは楽になる、といった状況でのメリットはきっとあると思います。

.

◾️アルフィエリ法、まとめ

.

どの治療法でもそうですが、その限界やマイナス面も熟知して、良い面を活かすことは大切とおもいます。

.

「切らずに治せるんだってー!」とMクリップに飛びつくのは危険ですし、しかし手術が危険でできない人にMクリップを使わないのも残念で 184701458す。

.


ということで、ハートチームで多角的にその患者さ
んにベストの方法を選ぶことが最高と思います。 

.

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

弁膜症のトップページへ

pen

患者さんからのお便りのページへ

.

.

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

日本心不全学会のシンポジウムにて

Pocket

秋は行楽のシーズンですが、医師や研究者にとっては学会のシーズンでもあります。

日本心不全学会は心不全の IMG_0600治療や研究にかかわるさまざまな職種の方々が参加される学会ですが、ご縁あってシンポジウムで発表させて頂きました。

今回の学会は国立循環器病研究センターの北風政史先生が会長で、テーマは「日本が創る心不全学の潮流 -実臨床と基礎医学の往還から―」というスケールの大きなテーマでした。

私が参加させていただいたのは心不全と弁膜症、ハートチームセッションというシンポジウムで、座長は吹田徳洲会病院の金香充範先生と鳥取大学循環器内科の山本一博先生でした。

まず国立循環器病研究センターの天木誠先生が機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する非薬物療法の適否の評価についてお話をされました。

Carpentier先生の分類の解説から始まって、機能性僧帽弁閉鎖不全症がいかに予後不良かということ、そのメカニズム、弁逆流の重症度評価(Vena Contracta、逆流率、逆流弁口)を国内外のガイドラインを参照して解説されました。総じてこの逆流はふつうの弁逆流より過小評価されやすいため、一見軽症でも間違いのないようにすべきであることも示されました。

薬以外の治療法、とくに心臓外科手術にも言及され、僧帽弁輪形成術いわゆるMAP単独よりアルフィエリ法(僧帽弁前尖と後尖を中央部でくっつける方法)を追加すると成績が良くなること、そこからMクリップ(アルフィエリと同様のことをカテーテルで行います)への期待がもてそうなこと、テザリングの意味、前尖だけでなく、後尖の角度つまりテザリングが重要であることまで解説されました。

優れたレビューで、時間がもっとあればなお良かったと思うほどでした。

仙台厚生病院の多田憲生先生は機能性僧帽弁閉鎖不全症に対するMクリップのお話をされました。最近話題のトピックスです。

この方法で僧帽弁の逆流はある程度減りますし、心臓手術ができないような重症患者さんに福音になるかもと思いました。

しかしお薬による内科治療と比べて短期長期とも差がでていないというのはこのMクリップがそれほど効かない恐れもあり、更なる研究が必要と感じました。

現在アメリカでは手術ができない器質性僧帽弁閉鎖不全症つまり弁そのものが壊れた、通常タイプの弁に保険が承認されています。

ダメ元だから誰にでもどんどんやって良いという治療ではないことを皆で認識すべきです。かつてPCI治療を「何度でもやればやるほど冠動脈は良くなる」と言われた高名な先生がおられたことを想いだすのは大勢の外科医のトラウマでしょうか。あの時も医療費ばかりがかかり、患者さんの生命予後は改善しませんでした。最近はそうした歴史への反省から、ハートチームでじっくり相談して正しく進めようという空気があるのは幸いです。

なおこれまでのデータから僧帽弁輪形成術をともなわないアルフィエリ法での成績が悪いため、Mクリップ(弁輪形成術はできません)も慎重に進めていただくのが安全と思いました。(参考記事はこちら

ついで葉山ハートセンターの星野丈二先生は非虚血性心筋症における機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術と弁置換術の適応についてお話されました。

かつての須磨久善先生や現在の磯村正先生の手術を拝見した私にはなじみある、興味深いお話でした。

左室形成術ができる場合は弁形成術を、左室形成術ができないケースでは弁置換術を行うという結論はなるほどと思うところと、もう一工夫したいという気持ちが混在して拝聴しました。

左室のなかに切り取るほど悪い部分がない場合でも、乳頭筋などを工夫して形を整えれば弁逆流は止まるからです。ただ同時に、左室がひどく壊れたケースでは、患者さんの体力にも心臓にも余裕がないため、理想とは思えない弁置換でも一発で決めるメリットがあるというのも理解できました。

このシンポのトリは私、米田正始が務めさせて頂きました。

10年前から改良を重ねて来た乳頭筋前方吊り上げ(PHO手術など)を含めた僧帽弁形成術の成績をお示ししました。弁だけでなく左室そのものをできるだけ改善するための手術ですので、通常の僧帽弁輪形成術いわゆるMAPより成績が良く、とくに後尖のテザリングが防げて長期予後を良くできることをお示ししました。これは乳頭筋接合術と比べても同様で、後尖は明らかに良くなります。後尖が良くなると逆流再発が減って予後が改善するわけです。

さまざまなご質問をいただき、うれしく思いました。内科の先生のなかにはこうした左室や乳頭筋から治す方法をご存知なかったケースもあり、このシンポに参加して頂けたことを感謝します。

ご質問の中に「この方法は先生のオリジナルですか」というものがあり、吊り上げそのものはアメリカのKron先生の開発で、私はその弱点を直し、より効果が上がる前方吊り上げを初めて開発したことをお答えしました。つまりKron先生の後方吊り上げでは後尖のテザリングは改善しないのですが、私の前方吊り上げで初めて前尖後尖とも良くなったわけです。他人の仕事をなかなか評価できない日本の学会でこうした議論をしていただいたことをうれしく思いました。

ともあれ弁だけでなく左室もなるべく守る方法で外科医は患者さんや内科の先生方に貢献できるのではないかと期待しています。

かつて冠動脈PCIの全盛期にはPCIができなくなればあとは看取りという風潮がありました。外科がまだまだ患者さんを良くできるのにそのままというケースが多数ありました。Mクリップという新たな方法で内科の先生方のなかにも僧帽弁や心エコーに興味を持つかたが増えていることを心強く思います。

この心不全学会に久しぶりに参加させて頂いて感じたのは、医師だけでなくコメディカルの方々の参加がずいぶん増えたことです。当然とはいえ、すばらしいことです。

さまざまなケア、心臓だけでなく呼吸管理、リハビリや栄養など、実際の治療現場で重要なトピックスが多数議論され、大変勉強になりました。来年からはもっと大勢のコメディカル仲間と一緒に参加したく思いました。

 

 ブログのトップページにもどる

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

HOCMフォーラムに参加して

Pocket

閉塞性肥大型心筋症、別名HOCMは今なお難病として課題が多数残っています。

私たちはこの病気に HOCMフォーラム2014
対して積極的に治療を行い良い成績をあげて来ました。

東京でこの研究会が開催されたため参加しました。榊原記念病院の高山守正先生が代表幹事で、今回は日本医大の高野仁司先生が当番でした。

テーマは「治療困難なHOCM症例に対する戦略の工夫」で、まさにタイムリーなものでした。ことしの日本循環器学会総会でこのテーマで私たちが発表したときにも多数のご質問をいただき、うれしく思ったものです。

始めに榊原記念病院の歌野原祐子先生がHCMのMRI診断、CT診断、病態に迫るというタイトルでお話されました。MRIがこれからさらに有用になること、中でもLGE(心筋の壊れたところが造影剤で光って見えること)所見が重要で、これが患者さんの予後を教えてくれること、さらに左室構築がわかることなどを示されました。

左室流出路狭窄があるとき、これを外科で心筋切除(モロー手術)すれば患者の生命予後が改善すること、さらにこのHOCMの病態の中に乳頭筋の異常がかなり含まれていること、そしてこれをより正確に行えるよう画像診断の組み合わせが役立つことなどを解説されました。

乳頭筋の異常は私たちも以前から取り組んできた課題で、悪い心筋をかなり切除でき、それによってさらに狭窄が解除されることを実感してきました。これがより正確なデザインと評価で完成度が上がるのではと楽しくなってきました。

日本医大の坪井一平先生は新しいHOCMガイドラインを解説されました。日進月歩のこの領域で、ガイドラインはとくに大切です。欧米が日本に先んじていることを感じました。

植え込み型除細動器ICDの適応基準や、心臓突然死のリスクファクター(年齢、左室壁厚、左房径、左室内圧較差、心臓突然死の家族歴)がさらに重要になったことを示されました。

榊原記念病院の矢川真弓子先生は同院でのICD経験やカテーテルによるアルコールアブレーション治療(PTSMA)の成績を検討されました。拡張機能はβ遮断剤では改善しないが、アブレーションでは改善しやすいというのはなるほどと思いました。心筋内カルシウムを調節することの重要性ですね。

 それから内科的、外科的症例の検討が数例ありました。どの症例も興味深く拝聴しました。

とくにPTSMAでうまく行かなかったケースが異常腱索のためであり、心臓手術で改善したというのはなるほどと思いました。高度あるいは広範囲の心室中隔肥厚があるHOCM症例の手術を積極的に手掛けている経験からDiscussionをさせて戴きました。心臓外科医が少数しか参加していなかったため、質問を頂いたり、多少でもお役に立てたとすれば光栄なことです。

Na₋Ca交換剤であるシベンゾリンの有用性と課題も聴けて良かったです。

特別講演として高山守正先生がゲストスピーカーの代演を見事にこなされました。欧米と日本の新たなガイドラインが望むHCMの臨床というホットなテーマでした。

心臓突然死と心不全の克服、心臓MRIで肥厚心筋の中で壊死が進むことへの対策、利尿剤への警告、ACEやARBが適しないこと、同じβ遮断剤でもカルベジロールはあまり良くないこと、などなど盛りだくさんの内容でした。

内科のPTSMAと外科の心筋切除(モロー手術)の使い分けでは、若い患者さんには外科手術であとあと薬があまり要らないように配慮しておられるのも賛同できました。

それからComplex Caseへの診断治療というテーマで何例かの症例が検討されました。

大動脈弁置換術後にHOCMが悪化し、PTSMAで救命できたケースには私もコメントさせて頂きました。同様のケースがあり、これは生体弁ごしにモロー手術を行って無事に切り抜けたのですが、確かにこの病気は経験豊富なプロのチームでこそ安全にできることを実感しました。

それから榊原記念病院心臓外科の内藤和寛先生が外科症例の検討をされました。

手術適応は若く、心室中隔肥厚(30mm以上)、弁膜症とセットの場合、腱索乳頭筋の異常があるとき、内科のPTSMAが不成功のとき、など、理にかなったものと思いました。

最近増えている広範囲の心室中隔肥厚例に対して、経僧房弁アプローチと経左室心尖部アプローチを紹介されました。それぞれ興味深いところで私たちの経大動脈弁アプローチの改良型と対比してDiscussionさせて戴きました。

こうして心臓手術が磨かれていけばうれしいことです。

心臓の構造のため、PTSMAでは約3分の1に右脚ブロックが発生し、外科の心筋切除では左脚ブロックが発生しやすいことを考えると、前者のあとで後者の治療をするときには注意が必要であることもわかりました。

ファイアサイドセッションは東邦大学の佐地勉先生が小児・若年の多彩な心筋症のレビューをされました。さすがこの道のオーソリティで、幅広い遺伝子異常の研究と実用化から始まり、さまざまな心筋症から私たちがちからを入れている左室緻密化障害にいたるものまでカバーされ、勉強になりました。

教育セッションIIでは高知大学の北岡裕章先生がHCMの診断基準を、九州大学ハートセンターの有田武史先生が心エコーによる左室流出路の考察、そして市立宇和島病院の濱田希臣先生が非閉塞型肥大型心筋症の薬物療法を解説されました。

いずれも心臓外科医の私にとっては貴重な勉強の場となりました。

有田先生のお話のなかで乳頭筋の異常は上述のお話とあいまって大変面白く思いました。私個人の経験では前乳頭筋の異常がよく目につくと感じていましたが、有田先生が引用された報告も同様でした。これと榊原記念病院の先生方が示された後乳頭筋の異常と合わせてかなり高精度の治療ができるものと確信しました。

濱田先生のお話は熱いお人柄のおかげか大変迫力があり、有用なメッセージを頂きました。とくにシベンゾリンの有用性は納得いたしました。拡張機能を改善すればHCMの患者さんには大きな福音となるでしょう。

帰りの電車の都合で最後までは参加できませんでしたが、大変有益で楽しいHOCMフォーラムでした。高山先生、高野先生、関係の先生方、お疲れ様でした。

 

ブログのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

ファロー四徴症 【2019年最新版】

Pocket

最終更新日 2019年1月6日

.

◾️ファロー四徴症とは

TOF.

右図のように

1.心室中隔欠損症(略してVSD)、

2.肺動脈狭窄、

3.大動脈騎乗、

4.右室肥大の4つを特徴とする病気です。

これらはひとことで申し上げれば、漏斗部中隔が前方に変位した結果ということでひとまとめにできるようです。

.

◾️ファロー四徴症の症状と診断は

.

先天性心疾患のなかでチアノーゼつまりくちびるや手指が紫色になる低酸素血症が起こる病気で一番多いことで知られています。

こどものころにはこのチアノーゼや心雑音で見つかります。運動時にすわりこんだり、ばち状指などの所見も見られます。

ファロー四徴症は心エコーで診断がつきます。上記の特徴をひとつひとつ示せば診断に至ります。

.

◾️ファロー四徴症の治療は

.

診断がつけば、そのA309_093ままでは予後が悪いため手術を検討することになります。心カテーテル検査を行い、左室右室のサイズ、肺動脈がどれだけ発育しているか、他の心臓病はないか、側副血行路などを検討し、それによって根治手術ができるかどうかがわかります。

.

重症度におうじて、こどもの間に姑息手術で酸素を確保し肺を育て、心臓もバランス良く育てます。それから根治術で病気そのものを治してしまうこともあります。一気に根治術で治せるケースもあります。

根治手術では心室中隔欠損の閉鎖と,肺動脈狭窄の解除を行い、その成績は近年良好になっています。

.

その後も不整脈や肺動脈狭窄などの注意が必要ですが、おおむね手術後の経過は良好です。

.

◾️ファロー四徴症、長期的な注意点は

Kenkoushindan_monshin
こどもと大人という壁を越えて、ライフタイムでの健康管理がものを言います。

.

ただしVSDが再発したり、肺動脈狭窄が悪化したり、弁つきの人工血管を使用した患者さんではその成長にともなって弁も人工血管も小さ目になり、それらを修復する必要がでることもあります。

.

私たちのところへ来られる患者さんはこうした状況の方が多いようです。

こどもの病気、しかし体は大人、のため両方のノウハウを結集した手術や治療を行います。

再手術に慣れていることも役立っています。

必要におうじて、こども病院の先生にもお越しいただき、チームをつくって万全を期すようにしています。

199724069
人生の長い旅をハートチームで支援しよう

.

ファロー四徴症は治せる病気ですし、きちんとしたアフターケアによって長期の健康や安全が確保しやすい病気です。患者さんやご家族におかれましては、遠慮なくご相談いただければと思います。

 .

.

.

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

成人先天性心疾患のトップページにもどる

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

エリザベス・テイラーさん

Pocket

報道によれば2011年3月11日に女優エリザベス・テイラーさんが死去されたそうです。79歳でした。死因は心不全とのこと。

.

Elizabeth Taylor dies aged 79

Updated 24 Mar 2011, 4:14pmThu 24 Mar 2011, 4:14pm ABC news

Hollywood legend and violet-eyed beauty Elizabeth Taylor, famed as much for her glamorous but stormy love life as her five-decade Oscar-winning film career, has died aged 79.

Taylor, arguably the last great star of Hollywood’s golden era, died six weeks after being admitted to Cedars-Sinai hospital in Los Angeles with congestive heart failure, a condition she had struggled with for years.

.


彼女はその1年 LizTayler半前にMクリップによる僧帽弁形成術を受けていました。

.

超多忙でストレスも多く、健康管理もむずかしいテイラーさんだったようで、それまでもいくつもの病気と闘いながらの人生で、おそらく普通の心臓手術を受けるには体がついてこられない事情があったのか、あるいはすぐ仕事復帰するにはMクリップのような体への負担が少ない治療法が必要だったのかもしれません。

.

ともあれ治療からたった1年半で心不全のためにお亡くなりになるというのは、僧帽弁形成術ではめったにないことで、ご年齢も当時77歳と比較的お若く、ひとりの心臓外科医としては残念に思います。

.

Mクリップのような不完全治療ではなく、きちんとした手術を受けておけば、この世紀の大女優は死なずにすんだのではないかと思うのです。

.

以下はテイラーさんがMクリップによる治療を受けられたときの報道のコピーです。当時は治療成功を皆で喜び合う状況でした。

.

Elizabeth Taylor Prepares For Heart Valve Surgery Via MitraClip
October 6th, 2009

.

News wires just came alive with a fascinating story about Elizabeth Taylor’s anticipated heart valve surgery.

 

Although details are still coming out, it appears that Elizabeth Taylor suffers from mitral regurgitation – commonly referred to as a leaky heart valve or mitral insufficiency. Also of significant interest… It appears that the MitraClip, a new minimally invasive technology, will be used to repair Elizabeth Taylor’s diseased heart valve.

 

Here are the details from The Press Association:

 

Dame Elizabeth Taylor is to undergo surgery to repair a leaky heart valve, the veteran actress has announced via Twitter. The 77-year-old called on supporters to pray for her as she explained in a series of messages the procedure to be carried out at an undisclosed hospital.

 

“I’ll let you know when it is all over. Love you, Elizabeth,” the last of three messages on the subject read.

 

The Oscar-winner’s last high-profile appearance was made last month at the funeral of long-time friend Michael Jackson. But it was a rare public outing for the actress who has suffered from a number of ailments in recent years and is now seen in a wheelchair.

 

She was taken to hospital last May for what her publicist described at the time as a routine check-up. After being released from the Los Angeles clinic, she announced via Twitter that she was “home from the hospital and feeling great”.

 

Dame Elizabeth again used Twiter, the micro-messaging site, to give details of her new date with the doctors. She tweeted: “Dear friends, I would like to let you know before it gets in the papers that I am going into the hospital to have a procedure on my heart.”

 

Here is a great video that explains the Mitraclip, the non-invasive device, I believe, will be used during Taylor’s operation.

 

Elizabeth Taylor’s final post explained the surgery: “It’s very new and involves repairing my leaky valve using a clip device [play video above], without open heart surgery, so that my heart will function better. Any prayers you happen to have lying around I would dearly appreciate. I’ll let you know when it’s all over. Love you, Elizabeth.”

 

My thoughts and prayers are with Elizabeth Taylor!

.

現代の心臓病の治療は内科と外科とが一緒に 172496525相談し検討を重ねてベストの方法を選んだり組み合わせたりして初めて患者さんのお役に立つ、今はそういう時代です。つまりハートチームですね。

.

僧帽弁閉鎖不全症の患者さんにおかれましては内科と外科の両方の意見を聴き、ご自身でもよく考えて治療法を選ばれるのが安全ためお勧めできることです。

.

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

.

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

日本胸部外科学会2014にて

Pocket

ことしも恒例の胸部外科学会に行ってまいりました。心臓血管外科の関係では国内最高峰に位置づけられる伝統ある学会です。会長 IMG_0586bは九州大学の富永隆治先生で、テーマは「Noblesse Oblige」(高い立場に立つひとほど、責任が重い)でした。

高の原中央病院かんさいハートセンターとしては初めての参加で、シンポジウムその他の発表もあり、かつ懐かしい内外の旧友らとの再会などもあって、心臓手術をしばらく止めて行ってきました。

前日夜の全員懇親会ではジョンスホプキンス大学の Duke Cameron先生とひさしぶりに話ができ、最近たまっていた疑問が相談できて何よりでした。大動脈基部手術を重症例に行うときにちょっとしたヒントを頂けるのはありがたいことです。

一日目のミックスの妥当性というパネルディスカッションでは当科の松濱君が初めてのパネル・シンポ類での発表ということで何度も予行演習や質疑の練習を直前にやりました。

国立循環器病研究センターの藤田知之先生、名古屋第一日赤の前川厚生先生、大阪大学の西宏之先生、東京都立多摩総合医療センターの大塚俊哉先生、慶応大学の岡本一真先生といった当代の売れっ子ともいえる立派な先生方のなかでまあまあの仕事ぶりでした。

MICSの一回目のブームが去っていちど廃れた印象がありましたが、今回の二回目のブームはどうでしょうか。私たちは前回のブームの際にはまだ安全上の懸念があり、通常の心臓手術をもっと磨いてからという気持ちで流行には乗りませんでした。

私たちは今回もべつに流行がどうこうということはなく、ただそれこそ目をつぶってでもできる弁形成弁置換が増えたという中で、手術の質や安全性を確保しながらより苦痛がすくなく、早く仕事復帰ができるという目的が達成できるという読みのなかからやり始めました。4年あまり前のことです。

内外のさまざまな先生方やMEさんらとの交流の中、いつのまにか私たちのMICSは進歩をとげて僧帽弁形成術とくに複雑弁形成や僧帽弁置換術、さらに大動脈弁置換そして大動脈弁形成術あるいはそれら二弁三弁手術までルーチンにこなす稀有なチームになりました。そうした中で各施設の貴重な経験と報告は目新しいものはそれほどなくても細部が参考になりました。

私たちはミックスでのメイズ手術を発表しました。まだそれほど多くの施設で行われていないようで、高い除細動率と心房縮小メイズ手術までできる完成度はあとで多数の先生方からお褒めいただき光栄なことでした。

同時に私たちのように弁膜症手術と同時に行うのではなく、心房細動だけのために、内視鏡をもちいて手術する大塚先生らの経験談はあらためて参考になりました。これからこうした方法も使えるようにしたく思いました。

それから2日目に当科の増山先生がLSH法のポートアクセスによる弁膜症手術について、小澤先生が成人先天性心疾患のニッチ領域について発表しました。

LSH法は大変創がきれいとよく言われますが、さらに磨いて安全性、仕上がりともよりレベルアップしたいものです。成人先天性では欲張ってさまざまな疾患の経験を発表したため、所定時間内にプレゼンするのは結構大変でした。修正大血管転位症と三尖弁閉鎖不全症、HOCM、左室緻密化障害、大動脈二尖弁、冠動脈ろう、その他について内容あるディスカッションができました。ニッチとは言えないほど重要なテーマですねと座長の先生にコメントいただきました。

Northwestern大学の畏友・Pat 223893McCarthy先生は僧帽弁形成術での新たな試みなどをお話されました。よりきれいでながもちし、かつ短時間でできる工夫を拝見しました。かつて、約16年ほど昔に、クリーブランドクリニックにて同先生を訪問し、学んだことが今も役立っていることをお礼とともにお伝えしました。

学会の内容はいつもどおり多岐にわたり、かつ最新のホットな話題が満載で、どのセッションを聴こうか、選択に苦労するほどでした。

心臓リハビリテーション学会とのジョイントシンポも参考になりました。

 

2年前の天皇陛下への冠動脈バイパ 天皇陛下ス術の話題が今回、正式にとりあげられました。執刀医の天野篤先生(順天堂大学)と主治医代表の小野稔先生(東京大学)そして富永会長のトーク(司会は横浜市立大学の益田宗孝先生)が企画されたのです。

複合チームでちからを合わせて頑張ったこと、カテーテルによるPCIか外科によるバイパス手術かの選択に2日もかけて皆で徹底議論されたこと、陛下が元気かつ安全に海外でも国内でも行けるように、そしてきついお薬を飲まずにすむように、また内科そして全体の主治医であった永井先生が定年退官直前であったため、ここで陛下の完全に病気を治して後任の先生方にご迷惑をかけぬような配慮もあって、バイパス手術が選択されたようです。決断したひとも、それを受け容れ協力したひとも立派だったと拝察します。

実際、陛下は手術からわずか1か月後には東北大震災1周年の鎮魂の集まりに参加され、術後3か月でイギリスのエリザベス女王即位60周年の記念式典に出席されるなど、すばらしい成果を上げたバイパス手術でした。

天野先生、小野先生とお話する機会がありましたが晴々した良い顔をしておられ私もハッピーな気持ちになれました。この手術によって冠動脈バイパス術が国民的理解がえられ、患者さんに恩恵が届きやすくなったことは特筆すべき快挙と思いました。


2日目の富永会長の Tominaga講演も心に残るものでした。非拍動流の補助循環の良さを信じて長いあいだ苦労された富永先生の仕事の正当性が今、証明された、うれしい限りです。パイオニアの苦労というのはいつの時代にもあるようです。富永先生お得意の剣道が心臓外科の成績向上に役立つことも理解できました。

 

今回の日本胸部外科学会の中で重症心不全研究会もサテライトとして行われました。世話人会ではデータベースの確立へむけ、これからの研究テーマを検討することができ、いよいよオール日本で心不全の外科治療の研究ができそうで大慶でした。

研究会では国立循環器病研究センターの小林順二郎先生の当番世話人で、同内科の安斉俊久先生が心筋梗塞のあとの炎症反応が左室瘤や左室破裂などの原因となるリモデリングへとつながることをお話され大変勉強になりました。

それに引き続くワークショップでは虚血性僧帽弁閉鎖不全症左室形成術HOCMへの外科治療などが論じられました。それぞれこれまでちからを入れて来た領域ですのでディスカッションに加わらせて頂きました。

かんさいハートセンターは弁膜症や心不全に強い内科チームと、柔軟性に富む病院やセンター、そして熱い外科を含めたハートチームがあるため、これまでより強力に心臓手術や治療を進め、患者さんのお役に立てるとあらためて思いました。

最終日にテキ Michael-J.-Mack-MD
サスのマイケルマック先生が特別講演をされました。2020年の弁膜症治療というSFっぽいタイトルでした。私は他セッションの都合で講演の後半しか聴けませんでしたが、心を打つには十分でした。

40年前の医療を想いだしてみなさい。白血病、弁膜症、股関節、その他さまざまな病気がどれだけ治せたか。ひるがえって現代はどうか。それぞれ治る病気になりつつある。弁膜症でも過去に発表され、多くの患者を助け一時代をつくった術式の多くがすでに過去のものになっている。新しい治療をつねに開発しなければならない。楽をするということで大きな対価を払っていることに気づかねばならない。努力して自分が自分の将来を切り開かねば、誰かが切り開いた道をむりに進まされるようになってしまう。マック先生はこれから弁膜症治療の中で起こるであろう変化予測をしたうえで、一番確実なのは変化自体が必ず起こることだということで話を閉められました。パイオニア精神にあふれるアメリカ人マック先生だから説得力が一段と増すようなお話でした。

講演のあとで久しぶりのご挨拶をしたら、ドクターコメダ、最近どうしてる?とのことでしたので、変化に順応してミックス手術にはまってます、と答えました。満面の笑みを返して下さいました。

オーラスに畏友、トロント時代からの25年 Rao来の友であるVivek Rao先生が臨床研究の話をされました。現代の若手のなかで、これだけのリサーチマインドのあるひとがどれだけいるかなあと他先生らと愚痴ってしまいました。優れた臨床研究をすることで臨床とくに執刀するチャンスが増える(少なくとも欧米では)のだということを会場の若い先生方に知って頂きたかったのですが、ちょうど時間となってしまいました。このブログの場でそれを若い先生方に知って頂ければ幸いです。

あっという間に過ぎた3日間でした。富永先生、九州大学心臓血管外科の先生方、お疲れ様でした。学会の大成功、おめでとうございます。

平成26年10月3日

米田正始

 

ブログのトップページにもどる 

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

畏友、太田剛弘先生が東京スポーツ・大阪スポーツに掲載されました

Pocket

ハートチームのかなめ、中心は IMG_0280やはり循環器内科です。内科が活発になってはじめてハートチーム全体がレベルアップし、楽しくなります。

この4月から畏友・太田剛弘先生が高の原中央病院かんさいハートセンターに副センター長・循環器内科部長として着任され、同先生を慕う熱心な先生方を加えて5名のチームが誕生しました。

これまでひとりで内科を支えて下さった村岡先生には何度お礼を申し上げても足りない思いです。

 

こうして同じ方向性、同じ喜びを共有するハートチームが発足し、成果が上がりつつあります。それを東京スポーツ紙が取材してくださいました。

以下は9月18日に掲載された内容です。


*****************

奈良県奈良市 高の原中央病院 かんさいハ IMG_0575bートセンター 太田剛弘副センター長

名医の診察室

狭心症、心筋梗塞の患者ばかりを治療するハートセンターが多い。そんな中、「弁膜症も心筋症も、とにかく心臓全体を診断・治療するハートセンターを目指しています」と熱く語り、心臓血管外科と手を取り合って患者を救う名医がいる。(医療ジャーナリスト・松井宏夫)

その名医とは、高の原中央病院(奈良県奈良市)かんさいハートセンター循環器内科の太田剛弘副センター長(67=弘前大・医卒)。“病気、病状の説明が分かりやすい”と患者の人気が高い。

つい先日、心臓弁膜症の患者がかたくなに入院も手術も拒否し続けた。
「心臓には部屋が4つあり、その扉が血液の流れを一定にしてくれています。その扉の1つ僧帽弁が壊れ、うまく閉じなくなっています。壊れた扉は薬では治せません。扉を正常な形に矯正する手術は確実な手術。これは米田正始センター長の得意な手術です。きちっと治すともっと元気になりますよ。このように時間をかけて話すと患者さんに理解していただけ、入院手術となりました。じっくり患者さんと話をするのは内科医の原点です」

これほど患者に時間を割くのは太田副センター長の体験から来る。太田副センター長は早大の理工学部を卒業して就職。その後、急性肝炎が慢性化して入退院を繰り返した。入院中に医師は1日数分程度しか顔を出さず、病気の詳しい説明もなかった。その時に、医学を学ぶべきでは、と思った。

退院して会社に戻ると自分の居場所はなく、当時の二期校の受け付けが間に合う医大を受験し、合格。同期の人とは約8年の開きがあった。

卒業後は循環器内科医として歩み、1992年、米国・デューク大学に留学。心臓超音波検査(心エコー)での診断に精通した教授の下で臨床に励む日々を過ごした。

帰国しようとしたとき、教授に強く引き留められた。「“工学部で3Dエコーを開発している。我々も参加し作り上げる。君も一緒にやってほしい”―。私はその後3年、結局5年の留学を終えて帰国しました。その時に開発した装置は一瞬にして3D画像ができるので『リアルタイム3Dエコー』と呼ばれました」

内科と外科との垣根なし

太田副センター長は診断を確実なもとにするこの3Dエコー開発者の1人である。帰国後は大阪の府中病院の循環器内科部長として活躍後、4月からこのハートセンターで米田センター長と二人三脚で歩み始めた。

「3Dエコーを使って診断すると、たとえば心臓弁膜症の場合、その弁のどこをどのように形成すると良いのか、そこまで分かって外科にお願いできます。丸投げではありません。もちろん外科としっかり話し合います。その合同カンファランスを毎日時間をかけて行っています」

センターの合同カンファランスは内科外科の垣根はない。患者の主治医が患者の状態を解説し、どのように対応するのが良いかをディスカッションする。心エコー画像も全員でチェックする。

「患者さんに最も良い治療をみんなで考えます。手術をみんなで考えます。手術を行うと決まっても、私どもの外科の米田センター長は患者さんに最善の方法を提案されます。患者さんを第一と考えて話し合っています」

もちろん、患者の疾患は千差万別。
「ハートセンターを受診する患者さんの疾患は10人のうち6人が狭心症・心筋梗塞、10人に1人が弁膜症、心筋症は10人に“0・数人”かもしれません。私たちはつらい思いをしている人は100人に1人かもしれなくとも救えるようにする、との思いで前進します」
患者の強い味方、真のハートセンターが確実に前進している。

心臓弁膜症の推定患者数は200万人

心臓病と聞くと狭心症、心筋梗塞を思い描く人は多いが、「心臓弁膜症」も患者は意外と多い。推定患者数200万人、手術を必要とする患者は年間約1.7万人。

心臓には僧帽弁、大動脈弁、三尖(さんせん)弁、肺動脈弁の4つの弁があり、弁に問題が生じると、「息が切れる」「動悸がする」「呼吸が苦しい」「夜寝ると苦しい」「体がむくむ」など様々な症状を引き起こす。

これは心臓の弁の異常によって血液循環がスムーズにいかないからである。なかでも全身に影響を及ぼしやすいのは僧帽弁と大動脈弁。手術もこの2つの弁で約97%をも占めている。

弁膜症の原因疾患は「狭窄症」と「閉鎖不全症」。基本的には4つの弁でそれぞれ起きるが、やはり多いのは僧帽弁と大動脈弁で、僧帽弁では僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁では大動脈弁狭窄症が圧倒的に多くなっている。

治療では内科治療は「薬物療法」「カテーテル治療」、外科治療は「弁置換術」「弁形成術」が行われている。

ここにカテーテル治療としてTAVI(経カテーテル式大動脈弁置換)が2013年10月から保険適用され新たに加わった。ただし、TAVIは施設認定を受けている施設でのみ行うことができる。

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

東京スポーツ・大阪スポーツに掲載されました

Pocket

2014年9月11日、サラリーマンの方々や庶民に人気のある新聞である東京スポーツ、大阪スポーツに米田正始が紹介されました。その翌日の太田剛弘先生(かんさいハートセンター副センター長)とともにハートチームが評価されての掲載でした。

毎朝、循環器内科と心臓外科の全医師がミーテ IMG_0574bィングをもち、患者さんを軸にして、内科外科の垣根のない治療を進める、いわゆるハートチームですね、こうした当然のことが行えない病院が多いと言われています。そのような中で、信念をもって皆でハートチームを実践しています。

患者さんたちの熱いご期待に沿えるよう、全力をあげて取り組んで参ります。

以下は同新聞からの引用です。

 

名医の診察室

心筋梗塞はもちろん、心臓弁膜症、心筋症など、それも重症患者が最後にするハートセンターがある。最先端の、体に優しい手術から日本では数人しかできない心筋症に対する左室形成術等、様々な術式で患者を救っている名医とは―。(医療ジャーナリスト・松井宏夫)

重症患者の最期の砦
大学病院でも手に負えない
心臓救う神の手

日本で数人の技

奈良生まれ、奈良県育ちの名医が、ついに奈良に戻って新しいハートセンターを立ち上げた。トロント大学、スタンフォード大学、メルボルン大学主任外科医として海外で11年の武者修行をし、京都大学心臓血管外科教授、名古屋ハートセンター、豊橋ハートセンター副院長を歴任。そんな高の原中央病院かんさいハートセンター(奈良県奈良市)米田正始センター長(特任院長/59=京大・医卒)が作るハートセンターとはどのような施設なのか―。

「私は患者さん本位の医療を追及してきて、その原点となるハートセンターを作り上げるべく努力しています。故郷の奈良でハートセンターを立ち上げる機会を得て準備し、2013年10月にスタートしました。

今年4月には心エコーや弁膜症・冠動脈のプロを中心とする循環器内科が発足し、心の通ったハートチームが本格始動。今はハートセンターの手術室・カテ室は各1つですが、近い将来にはそれぞれ2つになり、さらにパワーアップします。多くの合併症に悩む患者さんに対し、総合病院のハートセンターの良さがあります」

週に3例の心臓手術が4月からは週に4例。すでに奈良県内での心臓手術は近大奈良病院、天理よろづ相談所病院に次いで3番手。ただ、数だけではない。多くの大学病院で断られた患者が祈る思いで受診する難しいケースも多い。

「心臓移植しかない、と大学病院でいわれた50代の心筋症の患者さんが“心臓移植はいつになるか分からない”といってバチスタ手術を希望して受診されました」
これは拡張した左心室の心筋の一部を切除して縫い合わせる手術。左心室を小さくすることで収縮力をアップされようというもの。日本でこの手術ができるのはわずか4~5人。

手術痕の小さいMICS法を開発

「心筋の手術にはバチスタ手術、ドール手術、SAVE(セーブ)手術などがあり、状態により適した手術を行うのが大事で、その患者さんにはドール手術変法を行いました。患者さんはあっという間に元気になられ、大学病院の主治医からも大変感謝されました」
また、心臓弁膜症の手術ではより手術痕の見えない手術を求めて、全国から受信うる患者が後を絶たない。

それは「MICS(低侵襲心臓手術=ミックス)」と呼ばれる手術。米田センター長が改良開発した。「胸の右側を5センチ程度皮膚切開し、そこから手術を行う器具のポートを挿入して行います。傷はその他にわき下に1センチの刺し傷が1か所のみです」

さらに、この9月末から閉塞性動脈硬化症(ASO)に対して新生血管療法の一つ、米田センター長が京大教授時代に開発した「bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)治療」の臨床試験が行われるという。京大時代には7人行い、皮膚潰瘍も治療して歩いて自宅に帰ることができるようになった患者もいた。それほど成果があった。

「bFGFは体内にもある物質で、すでに床ずれの治療薬として使われています。それを特別なタンパクで処理をいて脚の付け根から血管の閉塞部まで50か所くらいに筋肉注射をするだけです。それで新生血管ができ、脚が救われるのです。これは最初の数日は入院ですが、あとは通院が可能。自由診療ですが地域貢献を考え、低額に抑えたいと思っております」

新しいハートセンターの羽ばたきは地域、そして全国に聞こえている。

MICSでの僧帽弁形成術

心臓の弁が正常に機能しなくなる心臓弁膜症。僧帽弁の治療で最も進化した形が
MICSでの僧帽弁形成術。

手術後、血栓予防薬のワーファリンを必要といないので、患者の負担は軽い。さらに長期間効果が安定しやすく、傷が小さいため社会復帰が早く、心にも傷がつきにくい。

なお、大動脈弁でも同様に大動脈弁形成をMICSで行うのが理想に近い治療となる。弁が形成できないほど壊れている場合は大動脈弁置換する。

将来はTAVI(タビ=カテーテルで入れる生体弁)を用いることで再手術を回避しやすくなる。

閉塞性動脈硬化症(ASO)

動脈硬化は全身の血管に起こる。心臓の血管でそれが進行すると狭心症、心筋梗塞、脳の動脈で進行すると脳梗塞。

しかし、それだけではない。下肢の血管の動脈硬化で血流が悪くなるのを閉塞性動脈硬化症という。

症状は「しびれ、冷感」「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」「安静時疼痛」、そして、「潰瘍、壊疽」。潰瘍、壊疽まで進行すると足を切断することになってしまう。

 

**********************************

註:平成27年6月をもって米田正始は高の原中央病院を退職いたしました。開設時からいた心臓外科スタッフもすでに全員異動いたしました。

奈良の地にどんな心臓病にでも対処できる、ちからのあるハートセンターを立ち上げ、他で断られた患者さんを救命するなど一定の実績を上げることはできましたが、病院の事情によりあまり大きな手術やリスクの高い重症の治療ができなくなったためです。

現在は大阪府内の二つの病院(医誠会病院(外来・手術)、仁泉会病院(外来)で本来の断らない心臓外科医療ができるようになりました。

心臓病で何かお困りの際にはご相談ください。お役に立てれば幸いです。

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

【第五十四号】残暑お見舞い申し上げます

Pocket

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 第54号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

お盆ごろの台風がまるで日本上空を旋回しているかのような変な天気が繰り返す

この頃ですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

メルマガをしばらくお休みして失礼いたしました。

かんさいハートセンターを立ち上げて10か月が経ち、毎日忙しくしています。

生まれつき要領が悪いためもあるのでしょうが、患者さんと向き合う時間を多く

取れてうれしく思うと同時に時間が足りず不便しています。

この4月からかんさいハートセンターの循環器内科が発足し、ようやく本格スタ

ートを切ったという印象です。

やはり内科の先生らがいないと真に盛り上がりません。ようこそお越し下さいま

したという感謝の念で一杯です。

新しいハートセンターの循環器内科では従来の心臓カテーテル、PCIはもちろん

、心エコーのスペシャリストである太田剛弘先生はじめその薫陶を受けた若い先

生方も参加下さり、狭心症・心筋梗塞などの冠疾患だけでなく弁膜症・心筋症・

心不全にも高いレベルの治療ができるようになりました。

さらにCKDと言われる慢性腎機能障害の患者さんにも専門的観点からの治療がで

きるようになり、患者さんをより全人的に治療できるようになりました。

こうして理想の医療に一歩ずつ近づいているのは楽しい限りです。

平素の診療の中で心臓血管はもちろんのこと、腎臓も大事にして参りましたが、

これまで以上に力が入るようになりました。視点がひとつ増えたようです。

そういえば名古屋時代に大いにお世話になった日本ローカーボ研究会の先生方と

も交流がつづき、こちらの患者さんにも大変役立っています。

つい先週もインシュリン依存性糖尿病の患者さんが抗インシュリン抗体のため血

糖値が不安定となり、心臓手術の準備中でしたので、安定を図ろうと、ローカー

ボ食(糖質制限食)を導入し、無事インシュリンを離脱できました。

私は心臓外科医ですから心臓手術を日々考えるのは当然としても、薬や食事・運

動まで治療手段として活用するようになり、これまで治せなかったものが治せる

ようになるというシーンが見られるようになりました。その成果は研究会でも披

露しましたが、いずれ大きな場でもと考えております。

メルマガをお休みしている間にいろいろな進歩がありましたが、それはまた患者

さんの会などでご紹介したく思います。

最後にひとつ老婆心ながらメッセージを。この夏も多数の患者さんが脱水で腎臓

や全身を弱らせ、あわやの手前で何とか元気に回復していただいたというケース

を経験しました。

日本の気候が亜熱帯のそれになってしまった今、これまでよりしっかりした暑さ

対策を皆様にはお願いしたく思います。

私のホームページの患者さんのコーナーにも以前お書きしましたが、喉の渇きを

あてにせず、尿の量や濃さをみて脱水かどうかを判断していただければと思いま

す。脱水になった患者さんのほとんどは喉が乾かなかったから、、、と言われます。

尿をみれば安全安心に近づくでしょう。

それでは皆様、またお会いできる時を楽しみにしております。ご自愛専一にお願

いいたします。

敬具

平成26年8月31日

米田正始 拝

━━━━

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り108: ポートアクセスで僧帽弁と大動脈弁の同時手術を

Pocket

弁膜症の手術・治療は他の心臓手術と同様、日々進化を遂げています。

心臓外科医である私自身がその速さに驚いているほどです。

僧帽弁置換術を上 IMG_0330 (2)回る治療としての僧帽弁形成術

大動脈弁形成術が不適当な場合にそれを上回る大動脈弁置換術プラス将来のTAVI(折りたたんだ生体弁をカテーテルでもとの弁の中に入れることで再手術を回避)、

そしてそれらを小さい創で骨も切らずに行うミックス(MICS)なかでもポートアクセス手術

10年前にできなかったことがすでに自分の中で実現していることに驚きと喜びを感じます。

国内外の仲間たちと切磋琢磨して日々勉強し検討し確認していることのおかげです。

下記の患者さんはそうした新しい弁膜症の手術を受けられた方々のお一人です。60歳前後の患者さんで関東からお越し下さいました。

少ない痛み、早い回復と仕事復帰、社会復帰、きれいな創でこころに傷をつけない、こうしたことを実現でき、かつワーファリン(血栓を予防するお薬です)の不要な手術、しかも将来の再手術が回避しやすい、長期プランを考慮した手術ができ、患者さんとともに喜べることを心臓外科医冥利と感謝しています。

以下はその患者さんからのメッセージです。

また外来で再会できるのを楽しみにしております。

 

****** 患者さんからのメッセージ******

心臓弁膜症で手術が必要と言われた方々へ

私の場合は、地元の病院で人間ドックを受けた際に、
最後の問診の時に聴診器を当てられ、「心雑音があるので、
内科で精密検査を受けてください」と言われたのが、
最初でした。

その後、半年の経過観察の後で、症状の進行が見られ
担当医の先生から、「僧帽弁の逆流が激しいので、
このまま放置しておくよりも、今の段階で手術をした方が
心不全などのリスクも解消し、術後の経過も良いですよ」
と言われました。

自覚症状も言われてみれば少し息が切れるかな、程度であったため、
「なんでそんな。しかも心臓の手術?」と愕然としたことを覚えています。
その後、「これも神様がくれた試練」と思い直し、心臓弁膜症の手術とは何か
の情報をできる限り集めました。

その結果、一般的な正中切開に加えて、MICSというダメージの少ない方法があり、
中でもロボットやポートアクセスという方法があることを知りました。

私の場合、できる限り早く社会復帰したいし、家族とのハイキングや
スポーツも楽しみたいとの願望があったため、余程の困難な手術でない限り
MICSでやっていただけるところを探しました。

最初は、自宅近くの病院に狙いを定め、受診したところ、心エコーにて
大動脈弁の方の逆流のジェットも激しいことが指摘され、その場合、
僧帽弁に加えて大動脈弁の方も手当てしなければならないくなるので、
正中切開となる可能性がありますと言われました。

その時は、「仕方がないか」と諦めかけましたが、色々と調べた中で
最も参考になった米田先生のホームページに戻り、
メールでご相談したところ、すぐに
「外来の予約を入れてください。遠方なので一日で必要な検査が済むようにしましよ
う」
との返事をいただきました。

実はドキドキしながら返事を待っていたのですが、大変丁寧で分かりやすい返事を、
しかも米田先生ご本人からいただけたことに感激し、やっと探し求めていた先生に
巡り会えたと思いました。

外来受診の日を迎え、色々な術前検査をした結果、やはり僧帽弁に加えて
大動脈弁の方も手当てが必要で、こちらは弁置換となる可能性があるとの説明を受け
ました。

一か月後には入院し、いよいよ手術となりました。

前日には、家族も含めて、米田先生からインフォームド・コンセントの説明として、
僧帽弁形成術と大動脈弁置換術をポートアクセスで行うことや、
手術に伴う合併症等のリスクについて、詳細な説明をしていただきました。

さて、もうこうなったら「俎板の鯉」です。
自分がこれだと思った方法と、先生と、病院なので、後はすべてお任せです。

ですので、手術前夜はぐっすり眠れ、普段通りに起きてトイレに行き、そうこうして
いるうちに
点滴が始まり、家族に見守られながら手術室に入りました。

手術室の印象は、最新の機器や設備、モニター群や照明、
緊張感とやさしさが感じられるスタッフやドクターの先生方です。
深い眠りだったようで、手術中のことは一切覚えていないですが、
目が覚めたらICUでした。

手術後に、米田先生から家族に対して手術が成功したことの説明があったようです。

手術から二日後には、ICUから一般病棟に移りましたが、ICUに居る時からリハビリが
始まり、
喉の管や頸の点滴も取れ、次々と身軽になっていきました。

手術の時は肺を萎ませていた影響で、最初は少し息苦しさを感じましたが、
日毎に回復するのが分かりました。

一般病棟に移ってからも、赤褐色の痰を出したり、寝返りを打った時に右胸に痛みを
感じたり
しましたが、痛み止めや睡眠導入薬を使うことで、乗り切りました。

手術後3日目にはドレインと尿管が取れ、5日目にはすべての管が取れました。

6日目のリハビリから自転車漕ぎが始まり、病院一階のローソンまでアイスを買いに
行きました。

自分でもこんなに順調でいいのかと思えるほどの回復でしたが、
日毎に気力も充実し、同室の方や看護師の方と冗談を言えるまでになりました。

自宅が遠方とのことで、少し余裕を見て、手術後13日目となる日に退院しました。

高の原中央病院の印象は、病院らしい病院で、清潔さや衛生管理も行き届いており、
スタッフの方々もプロ意識や患者目線でのホスピタリティーに溢れています。

中でもかんさいハートセンターのスタッフの方々はとても活気がありました。
また、私には病院食も大変おいしく感じられ、快適な入院生活を過ごすことができま
した。

この手記を書いている今日は、手術後25日目ですが、昨日は仕事で外出までこなせ
るまでになりました。

この手記が、これから心臓手術を受けられようとされている方々にエールを送ること
ができれば幸いです。

 

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。