循環器救急での e-MATCH の一員として貢献します

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奈良の地域医療をまもる仕組みのひとつ 奈良県として、奈良県救急医療管制支援システム事業(略称 e-MATCH)があります。

高の原中央病院かんさいハートセンターはこれに参加し心筋梗塞、狭心症、大動脈解離など循環器疾患の救急医療の一翼を担っています。

奈良市では市立奈良病院さん、奈良県総合医療センター(旧、県立奈良病院)さんらとともに、地域医療に参加する3病院の一つになっています。

奈良市消防かんさいハートセンターは心臓血管外科部門がスタートしてから1年あまり、循環器内科部門が発進してから半年あまりのまだ若い施設ですが、他施設を応援・協力し地域医療にできる限りの貢献をしたく思います。

 

具体的には、たとえば心筋梗塞の患者さんが発生し救急車がかけつけた時、 iPad等を見れば対応できる病院が救急隊員には一目でわかるのです。そして救急車はその病院に直行し、到着と同時に患者さんは適切な治療が受けられるのです。たらい回しや時間の無駄が起こらないシステムです。

 

Ilm22_ba01055-sこの e-MATCHの設立は次の課題に対応する必要があったためです。

課題1.橿原市における妊婦搬送中流産や、生駒市における心肺停止患者の県外搬送等救急搬送時の搬送困難事例が頻繁に発生し、県民の信頼が揺らぎ、地域の救急医療に大きな問題を抱えている。

課題2.適切な搬送先を決める情報が不足し、関係各機関が個別に行う改善では対応しきれない部分がある


これに対する e-MATCH の目的・目標は次のとおりです。

「時間的要因で定量化できるマッチング不全*1」と「医療の質の観点から見たマッチング不全*2」の2つの課題を解決し、県民が安心安全に生活できる環境を整備する

*1 各医療機関の受け入れ状況等が把握できず、搬送先を決定するまでに時間を要し現場滞在時間が長くなっていることなどを指す

*2 患者の病態に対応可能な専門医等を擁する医療機関以外に搬送される場合などを指す

199696376 この事業は鳥の視点(Bird’s View)で救急医療を俯瞰し、
救急医療管制支援システムで「地域医療の現状」を把握し、PDSAによる救急医療の改善を図る とされています。

PDSAは plan-do-study-act の略称です。

 

この e-MATCHに対179336369して 現場の救急隊員からは、

「病院交渉に関し、救急隊端末でリアルタイムに医療情報を確認できることで、傷病者や家族への交渉経緯の説明が行え、また、医療機関によるこれまで以上の正確な応需情報の登録を行うことにより交渉回数の減少につながる」

「医療機関の情報がタイムリーに、そして正確に反映され、救急隊の観察能力向上と受入側病院の対応がe-MATCHというシステムを通じて同じ方向性を向いたとき傷病者のために活用されると考える。」

という声が寄せられています。 168769790

また医師からは次のような意見が得られています。

「本システムの導入後は、搬送基準に基づく、患者の状況等がリアルタイムに救急隊と共有され、医療機関向けの端末では、患者の基本伝達情報、搬送中の経過が把握可能となり、状況に応じた準備を実施した上で受け入れを効率よく実施することができるようになりました。これにより適正な照会割合の増加、医療機関における対応時の応需割合の増加、照会回数削減を示す成果が得られています」

かつて救急体制が弱かった時代の試練を乗り越えて造られたe-MATCHを積極的に応援いたします。かんさいハートセンターはまだ若い施設ですが、こうして奈良県の地域医療にお役に立てればこれほどうれしいことはありません。

よろしくお願い申し上げます。


平成27年1月1日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第五回 Heart Valve Conferenceを開催いたします

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「ケーススタディを通して弁膜症の治療戦略と手術手技を考える」というスタンスで熱いディスカッションが名物になったハートバルブカンファランス、第五回の当番世話人(会長)を仰せつかりました。

この2015年4月11日土曜日に、昨年と同様、グランフロント大阪ナレッジキャピタルにて開催させて頂きます。

詳細はこの会のHPをご参照ください。

今年もさまざまな企画を練り上げました。代表世話人の川副浩平先生、昨年当番の中谷敏先生に感謝申し上げます。

♡ハートチームをもっと実りある楽しい 113719291ものにするために何が求められるのか: ハートチームを大切にしてこられた外科医と内科医にお話頂きます

♡若手の心臓外科医がベテランの愛の鞭でしごかれ成長する外科医今昔物語:今、旬の若手外科医3名が恐ろしいベテランに襲われるなかで得られるものは、、、

♡大動脈弁を理解し形成術を極めるセッション: ちょっと聴けない、スペシャリストならではのハイレベルのお話と何だか味のある座長連とのかけひきは、、、

♡弁膜症におけるエコーとCTの華麗なる競争: この2つの検査法の進化が患者さんに益するものは計り知れません。あえて競争して頂きます

♡HOCMの治療の深淵: 難症例、稀有な症例を含めてここまで治せるというディスカッション、科学的な解析やまとめ付で、、、

♡弁膜症Great Debate:TAVIとMクリップ: いよいよやってくる外科医受難時代?あるいはハートチームとしての大躍進時代?こだわりなく良いものを目指しましょう

これらを幅広い視点から論客をお招きして症例本位つまり患者さん目線で議論します。

不肖私、米田正始はHOCMで最近欧米で話題の左室中部での狭窄を外科手術で治す手術を実例をもとにディスカッションし、皆様のご意見やご指導を頂戴したく思います。川副先生は視点をかえて皆さんをあっと驚かせてくださるかもしれません。

循環器内科、心臓外科はもちろん、広範な医師、 184701458そして弁膜症に関心をおもちの検査技師、ME、ナース諸賢、なかでもこれからステップアップを目指す熱い方々のご参加を希望します。

当日は午前10時からスタートしますが、午前9:30からプレカンファランスセッションもあります。16:30に終了のあと、懇親会もありますので、あとで論客に直接挑んでいただくことも許されます。

学会とは違う面白さ、世界を見据えた内容、そして領域・世代・男女の壁を取り払う楽しい議論、これらを患者目線で行います。4月11日土曜日、大阪。ふるってご参加ください。

 

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執筆:米田 正始
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【第五十七号】あけましておめでとうございます

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 いい心臓・いい人生 【第五十七号】あけましておめでとうございます
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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皆様、新年あけましておめでとうございます。

寒い元旦になりましたが風邪など召されておられないでしょうか。

昨年は、というより昨年も大勢の方々に支えられたありがたい一年でした。

世の中ではさまざまなことがありました。

ソチで開催された冬季オリンピックでは多くの感動とともに、オリンピックとは

どうあるべきかなどを考えさせられた一コマもありました。浅田真央さんの演技

と採点法の変遷などには疑問をもたざるを得ませんでした。識者も指摘していた

ように、真にすぐれたフィギュアスケーターを選ぶ基準になっているのだろうか

と。

しかし結果以上に内容、そのひとにとって納得できるものであればそれもひとつ

の立派な成績と言えるのではないかとも思いました。

広島の集中豪雨や御嶽山噴火などを含めた自然災害にも心が痛む部分がありまし

た。普段からもっと対策を立てておけばこのようにならなかったのではないかと

。火山噴火に至ってはそんなことは滅多に起こらないからと予算を削減されたこ

とがかつてあり、科学技術立国の根幹を揺るがすような政策がなされないように

、皆で学び監視しなければと思いました。例のスーパーコンピューターは世界一

でなければダメなんですか、世界二ではどうなんですか、という議論は将来の国

民の生活の糧を考えない、近視眼的なものと思います。その人たちに火山研究の

予算が大きく削られたとなると皆、勉強し目覚めなければと思ってしまいます。

STAP細胞の一件では、当初これからより多くの患者さんたちが恩恵を受けられる

と喜んだのも束の間、データのねつ造が発覚し、その後には日本が世界に誇る研

究者を失うという顛末となり残念この上もない結果になりました。

こうした本来意欲的な研究をもっと正しく育てられないのかと思いました。

医療においては結果が何より大切です。もちろん良い結果を出すために内容や経

過は重要ですが、ただ当たって砕けろというわけに行かないのが医療です。

昨年も本当によく頑張って下さった、普通の常識では生きることも難しかったの

ではと思われたのに、笑顔で元気に退院して下さった心臓手術の患者さんが何人

もおられました。外来で御礼を述べていただくたびにこちらこそありがとうござ

いましたと言ってしまいます。

同時に困難な状況から立ち上がりかなり良いところまで詰めたのに結局他病のた

めに救えなかった患者さんには何か他にできることはなかったかという反省と検

討を何度も繰り返し、答えがでるまで悶々と考え続けます。

それらを含めて患者さんの救命に対して懸命に努力できることを感謝しています

。医者が患者を助けるのは当然と思われる方も多いでしょうが、日本の仕組みは

どこかずれていて、理想のタイミングで理想の医療ができない大病院が多数ある

のです。

そこで良い医療を存分にできる民間病院の特長を活かして努力することの意義が

あるのです。

年末に一年間を振り返り、うれしさと口惜しさが混じった気持ちで、新しい一年

をまた頑張ろうと思います。ちょっと大げさに言えば決意を新たにしています。

皆様にはご自愛のうえ、楽しく前向きにお過ごし頂ければと存じます。

体調がどこかおかしいと感じることがあれば早めにご相談下さい。

それではこの新たな一年、よろしくお願い申し上げます。

敬具

平成27年1月1日

米田正始 拝

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元・京都大学医学部教授
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ハートチームがガイドラインの中でより大切に

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ハートチームという言168769790葉が定着しつつあります。

これは循環器内科と心臓血管外科が協力して正しくそれぞれの方法を使い分けたり併用することで患者さんにとってベストの医療を行おうという趣旨で使われていることばです。

ハートチームという言葉はとくに冠動脈狭窄症の治療の中でのカテーテル治療PCIと冠動脈バイパス手術CABGの使い分けのところで使われています。

しかし2014年のAATS アメリカ胸部外科学会などでも問題になったように、まだこのハートチームを尊重・遵守しない先生方がとくに内科側に見られます。そうした実例やデータを発表しておられました。

どこの国でも、とくに日本では古いタイプの内科の先生の中に、患者は自分のもの、どの治療をしようが自分の自由、と仰る向きが今もおられると言われます。そうした考え方はむしろ若手の中には少ないのが救いですが、まだまだ啓蒙活動が必要なのでしょう。

2013年のESCヨーロッパ心臓病学会つまり内科系の権威ある学会ですが、ここで造られたガイドラインの一部を以下にお示しします。

2013ESCguideline heart team

図のフローチャートの原文は英語ですが、わかりにくいところは邦訳しました。

図のタイトル: 左主幹部病変のない安定狭心症でのカテーテル治療PCIとバイパス手術CABG。


ハートチームの重要性と役割を明示した、画期的なも
102972869のと評価されています。

これからの時代は 大昔のように心臓外科医が威張る時代でもありませんし、最近まであったインターベンションバブルの時代でもありません。

心臓外科医はもはや内科のご協力なしでは成り立たないのは自明ですし、カテーテルによるインターベンションも大手のメーカーが完全撤退するなど、もはや3-4年前までのバブルがはじけたことを示す事件が起こっています。

米国の大手メーカーは高度かつ科学的なマーケットリサーチを行い収益が上がらない領域からは手を引くのがうまいですので、これをもってバブルが終わったと説明された識者が複数おられます。

しかしこれから何をすべきかは簡単なことと思います。

要するに患者さんが得する方法を皆で毎日相談して決めていけば良いのです。 

人間素直になることが大切だと私の海外の友人は教えてくれました。159119567

かんさいハートセンターの私の外来にはまだ診断もついていない方から具体的に手術希望される方までさまざまな患者さんが来られます。

そのつど内科の先生方と相談し、患者さんを紹介する立場から、つまり患者さん目線でPCIとCABGを選ぶようにしています。

そうした正しい、自然で当然な仕事ができる仲間に感謝しています

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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奈良医大付属病院

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正式名称は奈良県立医科大学付属病院である。

実家の近くにあり、父がむ NMU
かし外科で研修を受けさせていただいたご縁もあるためこどもの頃から何かとお世話になっている大学病院である。

実家の米田医院には過去50年の間に多数の熱心な先生方に応援や代診に来ていただき、今なお感謝しているものである。内科系、外科系、放射線系等の歴代教授の先生方にもご指導頂き、いまも感謝している。奈良県の医師会関係の先生にもこの大学の同門の方が多く、個人的にも若いころに勉強その他で可愛がって頂いた想い出がある。25年も昔、トロントに留学していたころに父と県医師会の先生方多数がトロントを訪問され、そこへ合流し楽しく過ごさせて頂いたことを昨日のことのように覚えている。

奈良医大は研究・教育のみならず、奈良県とそのエリアの医療を守る拠点であり、高の原中央病院も多数の科がその関連施設となっている。当院の指導層の多くがこの大学のご出身で、そのご縁もあって多くの優れた先生方を各分野にわたってお送りいただき、感謝している。

心臓血管外科は30年ほど前に北村惣一郎先生が初代教授として開設されたもので当時は第三外科と呼ばれていた。内胸動脈が冠動脈バイパス手術に役立つかどうか、体格の小さい日本人ではまだ不明な時代であり、これを臨床的、科学的に解明し今日の冠動脈外科の発展の礎を築かれたという大きな功績が光る。川崎病のこどもの冠動脈にこの内胸動脈のバイパスを行い世間を感嘆させたことも記憶にあたらしい。修正大血管転位の心室中隔欠損症を大動脈弁ごしに修復するというのも当時新鮮な感動をもって勉強させて頂いた。北村先生はその数年以上前に米国にて左室形成術でも業績を残され、現在でも盛んに研究されている分野の魁であった。実際私も関与させて戴いている重症心不全研究会の顧問にもなって頂いている。

こうしたさまざまな協力関係、人間関係のある奈良医大の付属病院であり、かんさいハートセンターも循環器内科の外来への応援をしていただいているし、臨床面でも虚血性僧帽弁閉鎖不全症の患者さんの肝臓癌の治療をやって頂いたり、心臓病+肝硬変+腎不全の三重苦の患者さんをご紹介いただいたり、肺の合併病変をもつ患者さんをその関連施設にて治療して頂いたり、大変お世話になっている。

私たちは民間の専門センターとしての特徴をわきまえ、大学に貢献できる道を考えつつ、進んでいきたく考えている。

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お便り111: 珍しい心臓腫瘍からMICSで完全復帰

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心臓腫瘍にもさまざまなタイプがあります。

いちばん多いのは粘液腫(ねんえきしゅ、英語でミキソーマ myxoma) 165395249で、その多くは心房中隔という左右心房の間仕切りの左側に発生するタイプです。

私のトロント大学での100例以上の検討(当時世界のベスト3の数と言われました)ではその他の部位にできる粘液腫は悪性の恐れがあり要注意という結果でした。


完全に切除することが大切なのですが、それが普通の方法では難しいこともあります。

場合によっては僧帽弁大動脈基部の一部まで切除して再建、もちろん患者さんご自身の弁を温存して、という弁膜症手術の中でも難易度の高い技術と経験を要するものもあります。

お便り43の患者さんもそのタイプでした。

 

下記の患者さんは心房中隔の表面ではなく中に腫瘍があるという珍しいタイプで、しかも大動脈基部に迫るという危険な形のものでした。

関東在住で現地の大学病院で診断を受けられました。そこの放射線科と内科の先生方も、このタイプは特殊で大動脈弁に腫瘍が及んでいる恐れがあり、心臓手術の際にはくれぐれもご注意をというありがたいコメントも頂いておりました。

その患者さんがかんさいハートセンターまでお越し下さいました。

精密検査ののち、確かに大動脈基部を含めた大きな手術になるかも知れないという見立てで、もともとはポートアクセスによるMICS手術(右胸を小さく切るだけです)を考えていましたが、もしもの場合を考え、正中からアプローチすることにしました。

ただしMICSご希望のため、小さい創で、40歳代の若いご年齢から夏服が楽しめるように配慮しつつ、安全重視の布陣で臨みました。

 

結果的には心房中隔の中でうずら卵状の腫瘍がコロッときれいにとれて、周囲への浸潤つまりしみこむような広がりもなく、良性腫瘍の形でしたので大動脈基部は触らずに完全切除できました。

術後経過も順調で、手術前に不整脈発作がよく出ていたのも次第に影をひそめ、お元気に退院されました。

 

手術のあとで顕微鏡検査の結果が送られてきました。神経鞘腫という世にも珍しい、おそらくこの部位では世界にこれまで1-2例報告あるかないかのタイプでした。

患者さんと娘さんたちの前向きの姿勢が良い結果をもたらしたと言えましょう。

これから元気な健康生活をお楽しみください。

 

ちょっと遠方ですが、お役に立つ外来を心がけていますので、また健診のため関西までお越しください。

 

******** 最初に頂いたお問い合わせメールです *******

初め PL111Aまして。

私の母は四年前に子宮けいがんで子宮全摘しています。

それで抗がん剤などの治療は受けていなくて再発もなく、

でも3ヶ月毎に受けてるCT検査で心臓に腫瘍がある事がわかりました。

再発ではなく原発みたいででも心臓腫瘍も珍しいが

もっと珍しいタイプみたいで粘液を疑っていたんですが

粘液なら左心房にちょこんと出来るみたいだけど、左右真ん中にあり

明後日カテーテル受けるですがリスク高いと言われていて…

カテーテル受けないと手術は出来ないのでしょうか?

よろしくお願いします

********* 術直後に頂いたメールです *********

こんにちは。**です。 PL111B

昨日は手術どうもありがとうございました…。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
米田先生に母をみてもらえて本当に本当に良かったです。米田先生に出会えて良かったです。

昨日のICUでの母との対面は、手術終わったんだなってゆう気持ちと当たり前だけど子宮癌手術よりも昨日受けた心臓の手術のほうが何倍も大変?
な手術で前の手術よりも沢山沢山器材がついていて怖くなってしまいましたが…

私も口唇口蓋裂とゆう病気で全身麻酔の手術沢山受けてるから術後の辛さもよくわかります…。
私の場合は病室戻る時には人工呼吸器も取れているから、実際呼吸器つけてる母をみて怖くて…でも無事に手術終わったって事で安心と恐怖?で涙出てきました…。

今日午前中、母に会ったら会話も出来たし、リハビリで座ってたし本当に良かったです。

米田先生…

母はずっと傷跡の事も気にしていて地元病院だったら沢山切っていたと思うのに
先生に執刀して頂いたお陰で傷跡も母は気にしないでいけると思います。

言葉では上手く言えないけど本当に本当にありがとうございます。

 

********* 退院のころ頂いたメールです *********

 こんにちは。**です。 PL111C

約1ヶ月間母の入院、手術、色々本当にどうもありがとうございました。

米田先生に執刀していただいて本当に嬉しく思います。

米田先生をはじめ、グループの先生、母と関わっていただいた全ての人に感謝します。
本当にありがとうございます。

退院の日、米田先生にお礼の言葉を直接言えなくて残念ですが、米田先生に出会えて本当に良かったです。

ありがとうございます。

外来の日、母と一緒に行きますのでまた先生に会えるのを楽しみにしています。

ありがとうございました。

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市立ひらかた病院で講演させて頂きました

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師走の慌ただしい時節ですが市立ひらかた病院Sin-nanseiにて講演の機会を頂きました。循環器内科部長の中島伯先生とは長年のお付き合いで市立ひらかた病院にも愛着があるのですが、最近新病棟がオープンしたということでいっそう楽しみにしていました。

玄関を入る と近代的でひろびろとした待合や廊下、ホスピタルアートを取り入れた構造に感心しました。中島先生に案内していただき、きれいでゆとりのある外来や検査室、居心地がよくくつろげる緩和病棟、広々としたホールなどを拝見しました。

さらに建物全体が免震構造でダンパーの上に乗っており、強い地震の際には50cmも移動することで地震エネルギーを吸収するという優れものでした。地震が来ても病院内にいれば安心、とは心憎い気配りです。

とくに講堂は単に平素の勉強会、講演会やイベントだけでなく、災害緊急時に多数の市民を仮収容できるよう平坦なフロアで造られていることに感心しました。これからの市民病院のあるべき姿を研究された成果と思います。

講演会では「心臓血管外科がお役に立つとき」というタイトルで代表的な心臓病の予防から治療までをお話いたしました。

狭心症でカテーテルによるPCI冠動脈バイパス手術の正しい使い分けや協力、それを円滑にしてくれるハートチーム

 

IMG_0628b

MICSによる弁膜症手術後の
創です

弁膜症では早期の診断を症状や胸部X線、心電図からきっかけをつかむこと、手術ではなるべく弁形成を行い患者さんのQOLつまり生活の質を高めること、それをなるべくMICSつまり創の小さい痛みの少ない方法で行うことの意義をお話しました。

なかでもマルファン症候群の患者さんでの難しい僧帽弁形成術や大動脈基部再建いわゆるデービッド手術が安全に行えることをお示ししました。あとの懇親会でマルファン症候群の患者さんご家族との感動秘話で皆さんにお褒め頂きました。

近年増加傾向にある大動脈弁狭窄症の怖さと手術の意義、すっかり元気になることもお話し、最近多い病気のデパートのような患者さんにも役立つことを見て頂きました。

大動脈瘤も進歩が著しく、腹部大動脈瘤のかなりの部分はステントグラフトで切らずに治療でき、胸部でも弓部全置換術大動脈解離へのヘミアーチつまり近位弓部置換術が安全に行えることを解説しました。

最後にASOつまり閉塞性動脈硬化症に対する血管新生療法をご紹介しました。まもなく多くの患者さんたちの下肢を切断から救えるでしょう。

講演会のあと、10名ほどの仲間で懇親会を開いていただきました。皆熱いひとたちで楽しいひとときを過ごしました。このような立派なチームを育てられた中島先生はすごいとあらためて感嘆いたしました。

地域医療への新たな取り組みを教えて頂いた充実した楽しい機会になりました。中島先生、市立ひらかた病院の皆様、ありがとうございました。また遊びに参上させて下さい。

平成26年12月19日

米田正始 拝

 

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二尖大動脈弁のガイドライン

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米国ACC学会とAHA学会の合同でつくられた2014年度版ガイドラインが発表されました。

二尖弁での治療適応について、簡略にまとめられています。

以下にそのガイドライン概要と、日本語訳を示します。

 

2014AHA-ACC_GL BicuspidAV

クラスI 1.二尖弁患者でバルサルバ 図 ルート解剖洞か上行大動脈の径が5.5㎝を超えるときバルサルバ洞の形成か上行大動脈の置換が適応となる

クラスIIa 1.二尖弁患者でバルサルバ洞か上行大動脈の径が5㎝を超えて解離の危険性がある場合、つまり大動脈解離の家族歴があるか大動脈径が年間0.5㎝以上のスピードで拡大するときもバルサルバ洞の修復か上行大動脈の置換は理に適っている

2.ASかARのため二尖大動脈弁の手術を受ける患者が上行大動脈径4.5cm以上あれば上行置換をするのが理に適っている。

 

ここでクラスI とは手術が必須であるという意味で、

クラスIIa は手術が勧められるという意味です。

Ilm19_cb02025-s

以前から二尖弁の患者さんの大動脈基部から近位弓部大動脈にかけてはマルファン症候群の患者さんたちと同様、結合組織が弱く一歩早めに治しておくのが安全と安心に直結すると考えられてきました。

この新しいガイドラインでもそれがしっかりと盛り込まれ、今後二尖弁の患者さんたちの手術タイミングが適正なものになり、手遅れでいのちを落とすなどの悲劇が起こらなくなることが期待されます。

 

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執筆:米田 正始
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【第五十六号】おかげさまで1年が経ちました

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 いい心臓・いい人生 【第五十六号】おかげさまで1年が経ちました
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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拝啓

冬のおとずれを感じさせるこの頃です。

皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか。

11月16日の名古屋NHKでの講演ではありがとうございました。懐かしい名古

屋時代の患者さんも多数ご参加いただき、こころが熱くなりました。

皆様に御礼申し上げます。

さて前回もお知らせしましたが、かんさいハートセンター心臓血管外科がスター

トして1年が経過いたしました。

当初はパートナーである循環器内科の準備がととのわず、心臓外科だけの発進で

したが、今年の4月から太田剛弘部長のもとあらたな循内チームがスタートし、

活気あるセンターになりました。

一般のハートセンターが得意とする冠動脈だけでなく、優れた心エコーを活かし

弁膜症や心筋症・心不全でもお役に立てれば幸いです。

さらにこれまで大活躍してくれていたICUが正式認可され一段と熱が入る状態で

す。

救急受け入れ態勢が強化され、奈良県の循環器救急の一翼を担えるようになりま

した。

これもすべてご支援くださった皆様のおかげと感謝しております。

これから心臓外科、循環器内科ともさらに増員、質的向上、さらに手術室やカテ

ーテル室の充実と増加などを順次整備して参ります。

またステントグラフトやTAVIなどでも順次施設認可を獲得してさらにお役に立て

るハートセンターを造っていく所存です。

患者さん各位におかれましては困ったときにはいつでもご相談下さい。

医療関係者の皆様には心臓病はもとより、心臓病疑いの患者さんでもご心配があ

るときにはいつでもご連絡下さい。かかりつけの先生方には検査室代わりに活用

頂ければと思います。

予約の有無や来院される時間帯などにもよりますが、心臓関係はなるべくその日

のうちに結論がでるように努力しております。

ご予約時には高の原中央病院 0742-71-1030(代表)へお電話いただき、コーデ

ィネーター(植田(旧姓いさみもと)または岡本)をお呼びください。スケジュ

ール合わせをいたします。

これから厳しい季節になっていきます。

皆様方にはご自愛のほど、よろしくお願い申し上げます

敬具

平成26年11月23日

米田正始 拝

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Copyright (c) 2009 心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
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かんさいハートセンター、開設から1年が経ちました

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皆様いかがお過ごしでしょうか  高の原中央病院3b

おかげ様で私たち高の原中央病院かんさいハートセンター心臓外科は開設から1周年を迎えました

この間に心臓手術130例あまりを含めた160例を行うことができました

いくつもの大学病院や大規模センターから来られた重症患者さ184701458んも多く、苦労の連続でしたがチームも育ちだいぶ安定して参りました
皆様のご支援とご指導に厚く御礼申し上げます

太田剛弘先生をリーダーとする循環器内科はまだ半年ですので開設途上です。日々診療態勢の充実に努力中です。カテーテル、エコーやCT、リハビリ、腎臓などを含めた全人医療ができるチームです。みなさまのご指導やご鞭撻をお願い申し上げます

ICUはこの9月から正式認可になりました。スタッ Ilm22_ba01054-sフも日々勉強し磨きをかけどのような患者さんにもお役に立てるよう努力しております。

これまで病院としての態勢が整わず、緊急患者さんも十分には受け入れられない状況でお恥ずかしい限りでしたがようやく受け容れ態勢ができました。
奈良県の救急ネットワークであるEマッチにもようやく対応できるようになりました

奈良市やその周辺の医療機関の皆様におかれましては心臓血管・循環器の処置が必要になるかもしれない不安定患者さんがおられましたらいつでもご連絡ください

188617211緊急のことですので、疑いの段階でのご紹介も歓迎いたします。
精査ののち循環器疾患ではないということになれば、状態に応じてお返しするか、しかるべき科へご紹介するなどいたします。

私たちは心臓血管の専門診療を行っておりますが、地域医療、救急医療はそれ以上に大切と考えております。
ぜひ先生方の外科患者さんのお役に立てればと存じます

奈良市あるいはその周辺部の患 Ilm09_ad07001-s者さん各位におかれましては、胸の痛みや息苦しさ、失神やふらつき、強い背中の痛みなどがあれば直ちにご連絡ください。なかでも普段から心臓が悪いと言われている方々は早めの行動がいのちを守ります。

わずかに早く治療ができたためにあとはスイスイと元気になられた患者さんや、タイミングを逃して体がぼろぼろになってから来られて治療のあとも苦労した方なども過去に見られます。

医療は患者さんと医療者が協力し、予防や早期診断、良いタイミングで治療ができたときに最高の結果を出すことができます。ぜひ平素からかかりつけ医の先生や私たち専門医とともに健康を守りましょう。

平成26年11月23日

米田正始 拝

 

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註:平成27年6月をもって米田正始は高の原中央病院を退職いたしました。開設時からいた心臓外科スタッフもすでに全員異動いたしました。

奈良の地にどんな心臓病にでも対処できる、ちからのあるハートセンターを立ち上げ、他で断られた患者さんを救命するなど一定の実績を上げることはできましたが、病院の事情によりあまり大きな手術やリスクの高い重症の治療ができなくなったためです。

現在は大阪府内の二つの病院(医誠会病院(外来・手術)、仁泉会病院(外来)で本来の断らない心臓外科医療ができるようになりました。

心臓病で何かお困りの際にはご相談ください。お役に立てれば幸いです。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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