【第三十九号】 第三回日本ローカーボ食研究会

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 【第三十九号】
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           発行:心臓血管外科情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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相変わらず寒い毎日が続きますが、皆さま如何お過ごしでしょうか。

さて今回は申し訳ないのですが、医師、看護師、臨床工学士、管理栄養士さ

んなど、医療者の皆様へのお知らせです。

一般の皆様には今後もホームページでの情報発信の形でご案内申し上げます

のでお許し下さい。

第三回、NPO法人日本ローカーボ食研究会を開催いたします。

心臓外科医である私が科学的ダイエットの研究会の理事を務めさせていただ

いているのは不思議に思われることでしょう。

心臓手術のあと、経過の良い患者さんほど、ご飯がおいしいと次第にぽっち

ゃりと太られる傾向が見られます。

ぽっちゃりぐらいなら良いのですが、長い間には太り過ぎてメタボになって

いく方も少なくありません。

そうなるとせっかく心臓が良くなり心不全が取れて元気になったのに、あらた

な病気を抱えることになりかねず、喜んでばかりはおられないことになりま

す。

そうした経験から、科学的に、適切な体重と体格を生活のなかから確保する

ことが、心臓手術を受けてこれを乗り越え元気になられた患者さんたちへの

責務とさえ考えるようになりました。

なのでもっとも科学的なダイエットであるローカーボ食なのです。

とはいえ、しょせん心臓外科医ですので、内科の先生方のお知恵を借りなが

らやっており、ちからは心臓手術に注いでいます。餅は餅屋です。

この科学的ダイエットにご関心のおありの医療者の皆様、ぜひご参加くださ

い。学問的な話題からHow Toあるいはこれまでの常識を打ち破るようなもの

まで内容豊かです。

プログラムは次のとおりです。

http://low-carbo-diet.com/record/record_1

一般の皆様にはまた情報発信させていただきます。

それではよろしくお願い申し上げます。

敬具

平成25年1月20日

米田正始 拝

         記

日時:1月27日(日曜日)午後1時半から午後6時まで、

会場:安保ホール(名古屋市中村区名駅 3-15-9)

         JR名古屋駅桜通口から徒歩2分です

   そのHPと地図は  http://www.abohall.com/

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Copyright (c) 2009 心臓血管情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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冠動脈瘻(ろう)や冠動脈瘤に対するミックス手術 【2019年最新版】

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最終更新日 2019年1月6日

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◾️冠動脈瘻の手術

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冠動静脈瘻、または冠動脈瘻あるいは冠動脈瘤の手術にはいくつかの大切なポイントがあります。

そもそもこの病気ではつぎの2つの問題点があります。

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冠動脈ろうで血液が奪われるのは、心臓の筋肉にとっては泥棒にお金を取られるようなものです1.冠動脈の血液は心臓の筋肉つまり心筋へ流れて、心筋は酸素や栄養を受け取り、パワーがでて心臓としてポンプ機能を発揮します。

この心筋へ行くべき血液が静脈その他へ奪われるため、心筋が虚血つまり酸欠状態となります。

その結果として狭心症(胸が痛くなります)や心不全(息切れなどが起こります)となってしまいます。

患者さんの中には左室のパワーが著しく低下している方があります。

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Aneurysm rupture2.冠動脈から静脈その他へ血液が逃げるため、逃げた分だけ血流が増えて、冠動脈が太く大きくこぶのようになります。

いわゆる冠動脈瘤の形になります。

これがあまり進んでいくと、瘤が破裂して突然死などが起こることがあります。

大動脈などの瘤(右図)と同じです。

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6629578治療は冠動脈と静脈あるいは肺動脈などをつなぐ異常血管をすべて取り去るか閉塞させることです。これによって上記の1.と2.とも解決します。

軽ければお薬で行けることもあります。

上記の1.と2.が顕著になると手術が必要となります。

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◾️冠動脈瘻へのミックス手術

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冠動脈や異常血管の位置や状態によって手術法は異なります。

異常血管を閉塞させる、手短には潰すことで安定化が図れる場合は、体外循環を使わないオフポンプの形で、手術ができます。

Lower Hemisternotomy MedianSternotomy私たちの経験では、こうしたケースの多くはミックス手術で骨を部分的に切り、

皮膚切開も通常より小さい胸骨下部正中切開が多くの場合、使えます。

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右の図が通常の正中切開、左図が胸骨部分切開の創です。

皮膚の創だけでなく、骨も一部しか切りませんのでさまざまなメリットが生まれます。

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178560395これによって1.早い仕事復帰、社会復帰が図れ、2.痛みの軽減と創の治りの促進、3.ばい菌による感染症の予防などに役立ちます。

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◾️冠動脈瘻のため大きな冠動脈瘤になっている時は

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冠動脈や虚血つまり心筋の酸欠状態などによっては冠動脈を形成する aneurysmorapphyという術式になることもあります。瘤を切り開いて、中をきれいにしてからちょうど良いサイズまで瘤を小さくするのです。

こうした場合でも極力オフポンプバイパス手術の方法をもちいますが、それが危険な部位や状況では無理をせず、安全に体外循環(人工心肺)をもちいてゆうゆうと手術することもあります。

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◾️まとめ

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こうして高い成功率と低い合併症率を達成しつつ、痛みや苦痛の軽減や早い社会復帰、さらにミックスをうまく活用することで美しい美容効果を目指すわけです。

この病気は若い患者さんも多いため、こうした方針とくにミックスでの手術は一層喜ばれています。

冠動静脈ろうの患者さんには前向きに、安全を確保する治療法をご検討頂ければ幸いです。

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法
  

患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん

お便り62: 同、弁形成と冠動脈バイパスを受けた患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

 

 

 

 

 

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福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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原発性心臓悪性腫瘍【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月27日

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◼️原発性の心臓悪性腫瘍とは

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心臓から発生した悪性腫瘍(がんあるいは肉腫)です。
Ccbo024-s大変稀で2000人に一人の頻度という報告もあります。

悪性中皮腫、肉腫たとえば血管肉腫、悪性リンパ腫などが代表的です。

さまざまなタイプがあり、またその発生部位や患者さんの年齢体力などに応じたキメ細かい対応が必要です。

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多くの場合、薬や放射線が効きづらく、手術が治療の中心となります。

しかしその一方、悪性リンパ腫の一部など、薬や放射線が効くものもあり、しっかり調べることが大切です。

悪性腫瘍の原則は心臓原発の悪性腫瘍にも当てはまります。

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◼️完全切Ilm14_bf01002-s除できる場合は、

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しっかり切除して、手術後の心臓機能が維持できるよう、再建を行います。

そのため多くの場合、体外循環(人工心肺)をもちいて、徹底的に切除します。

この場合、私たちの方針は、

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①腫瘍が冠動脈を巻き込んでおれば、冠動脈ごと腫瘍を全摘除し、その末梢側の冠動脈にバイパスをつける、

②左室や右室などパワーをだす必要がある部位は切除に限度を設けてあとの心不全が悪化しすぎないようにする、

③洞結節は必要があれば腫瘍とともに切除し、その分、ペースメーカーを入れて洞結節の肩代わりをする、

などで、要は完全切除を安全に目指すようにしています。

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これらは患者さんが生き延びるために必須であるために行うのですが、こうした完全切除の場合、体への負担も大きくなり、高齢者や体力がすでに低下している場合は要注意です。患者さんの状態に合わせた最適治療法を考えるわけです。

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◼️完全切除Ilm02_ab04001-sできない場合

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あるいはすでに転移している場合は、全身状態を改善し、なるべく苦痛少なく、なるべく永く生きられるようなやさしい治療を行います。

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たとえば心嚢内(心臓の周囲のふくろ状の膜で囲まれた空間)に水や液体が貯まって心臓の働きを妨げている場合、心膜に穴を開けるだけの心膜開窓術が患者さんの体力回復と症状緩和に効くことがよくあります。

水は胸腔へ抜けて吸収されるか、適宜針や管(くだ)などを入れて抜くこともできます。

ただこの場合、腫瘍の本体は手つかずのため、そのあと腫瘍が発育してくる恐れがあります。可能ならこのときに薬や放射線が使えれば少しは有利に傾くことがあります。

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心臓の弁や大動脈・肺動脈などが腫瘍のため閉塞しつつある場合は根治性がなくても救命措置として、人工心肺をもちいて腫瘍を切除することがあります。

この場合も長期間の予後には懸念があるため、さまざまな後治療を考えます。

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◼️腫瘍にはゆっくりタイプもある

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Ilm01_ab03005-s心臓原発悪性腫瘍には slow growing tumorというゆっくりと大きくなるタイプがあります。悪性といっても比較的穏やかなタイプです。

このタイプでは完全切除できずとも、年単位で生きることが可能です。

だからこそ、原発性心臓悪性腫瘍だからといって、あきらめたり自暴自棄になってはいけないのです。

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私のトロントの経験では「末期」と言われた状態から心膜開窓術のあと、3年半も元気に暮らした方がありますし、

名古屋でもあと1週間と言われて強い心不全状態で来院され、緊急手術で2年近く生存された患者さんがおられます(心臓手術事例)。

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◼️頑張りましょう

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このように米田正始が心臓腫瘍に経験が豊富なためか(トロント大学で多数経験したものを発表しました, 英語論文156参照)、原発性悪性腫瘍の患者さんが全国から来られる傾向があります。

心臓手術・事例:右房全置換にて完全切除できた心臓腫瘍)

この手術治療に際しては、平素の弁形成術や左室形成術、血管手術の経験が大変役立っています。腫瘍を切除するために弁や左室や血管の一部を切除することがよくあるからです。

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悪性腫瘍はさまざまな科の専門家のちからを集める集学的治療が威力を発揮する病気です。

地元や他科・他病院の先生方と協力して、できるだけお役に立てるように努力しています。

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事例:大動脈炎にデービッド手術を施行

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大動脈炎症候群(大動脈炎)は今も油断ならない病気です。

放置すると大動脈だけでなくあちこちの動脈がやられてその結果、眼が見えなくなったりします。大動脈のどこかの部分が瘤つまりこぶのように広がると破れる心配がでてきます。大動脈基部が壊れて広がると破裂の恐れもありますし、大動脈弁閉鎖不全症となって弁膜症を合併してしまいます。

若い女性が多いだけに、弁膜症となると長持ちする機械弁をと短絡すると将来の妊娠や出産に大きな困難を残しますし、生体弁では長持ちしません。

ライフスタイルを含めた長期的なプランにしたがって治療戦略を立てる必要があり、とくに予防と二次予防つまり治療のあとの再発防止も大切です。

術前3DCT患者さんは20代前半の女性で近くの大学病院にて大動脈炎症候群の診断でステロイドによる治療を受けておられました。

しかし病気が進み、大動脈基部は拡張し(左写真)、その結果、大動脈弁は寸足らずとなり大動脈弁閉鎖不全症を合併していました(右図)。

労作時の息切れが強くなり、ときどき胸痛を覚えるようになって私の外来へ来られました。

ステロイド剤が一日 術前AR10mgを割ったタイミングで、手術することになりました。

ステロイドが多量に入った状態では創が治りにくくなったり、酷い時には人工弁や人工血管がはずれることもあり得るからです。

そもそもこの患者さんの将来設計とくに妊娠出産のためには自己弁(弁尖)を温存するデービッド手術が必須で、極力これを行う方向で準備しました。

弁尖は大動脈炎にはやられないというデータがあるからです。

Bavaria先生とこの準備に当たっては、

大動脈基部再建手術の世界的権威であるペンシルベニア大学のバーバリア先生(Prof. Joseph Bavaria)の御意見もいただき、

私の意見(弁尖はこの病気にやられないから温存する)を支持していただき、

勇気百倍で手術に臨みました。

手術Ao拡張と癒着手術ではさすがに大動脈基部の拡張と炎症のため、

周囲組織と癒着し(右図)、壁はもろく弱くなっていましたが、

大動脈弁の弁尖はきれいで温存すべき所見でした(左下図)。

手術大動脈基部展開そこでまず大動脈弁の弁輪部と弁尖および左右冠動脈入口部を残して大動脈基部を切除し、

これをダクロン人工血管の中に入れ込み、縫着しました。

ついで3つの弁尖が正しいレイアウトになるように3交連部の三次元位置を調整してから大動脈弁輪部付近の大動脈壁を縫着し、

手術右冠動脈吻合中最後に左右冠動脈入口部を人工血管に縫合しました(右図)。

人工血管を上行大動脈の遠位部に連結して手術を終えました。

手術吻合完成術後経過は良好で、

術翌日には集中治療室を退室して一般病棟へ戻られました。

大動脈炎のコントロールがたいせつなため、

しば 術後3DCTし入念にステロイドを調整し、CRPも1.9まで低下改善したため、

術後約2週間で元気に退院されました。

術後ARなしその後は膠原病の専門の先生と、私たちの外来の両面からフォローし、

お元気にかつ大動脈炎症候群も軽快安定した形で暮らしておられます。

今後は健康生活を楽しむとともに、

二次予防つまり大動脈炎を再燃させないように外来でしっかり見守って行く予定です。

 

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事例: 三弁の連合弁膜症に対するミックス手術

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ミックス手術つまり低侵襲小切開手術はどちらかといえば若い元気な患者さんたちの、美容上の利点のために行われる印象があります。

もちろん安全性が確保される限り、そうした美容上のメリットも意義のあることと思います。

しかしそれにおとらず、痛みや苦痛を減らし、早く社会復帰・仕事復帰ができるミックス手術あるいは術後の運動・リハビリを促進して肺炎などの術後合併症を防ぐことで安全性を高めるのもミックス手術の利点と思います。

そのため私たちは合併症がおこりやすいと言われるご高齢の方にも安全性を確認しながらミックス手術を行っています。

患者さんは80歳男性で紀伊半島から来られました。私自身、時間があれば旅行したい素晴らしいところです。

10年前から大動脈弁閉鎖不全症僧帽弁閉鎖不全症のため近くの病院へ通院しておられました。

術前XPじっとしている限りはそれほど強い心不全症状はないのですが、

農業を営んでおられ、

最近仕事のあとの疲れがひどくなったため、困って私の外来へ来られました。

 

実際、心臓のホルモンであるProBNPは2464もあり、

これは重症心不全のレベルでした。

同時に慢性の腎機能障害(CKD)もおありです。

心不全に対する利尿剤なども次第に使いづらくなってきていました。

 

エコーでは中 術前AR等度を超える大動脈弁閉鎖不全症(右図)と、

中等度の僧帽弁閉鎖不全症、そして中等度の三尖弁閉鎖不全症(下図)があり、

左室拡張末期径LVDdも60mmを超え、左室駆出率も51%と低下傾向にあり、

ガイドラインでも手術の適応に入っていました。

術前TR80歳というご年齢を考え、

また早く農業に復帰して戴くためもあり、

そして肺炎などの合併症を防ぐためにミックス法で3弁の手術をすることになりました。

この患者さんの場合は、3弁すべてを治す大きな手術でしたので、右小開胸によるポートアクセス法ではなく、胸骨下部部分切開という胸骨の一部だけ切る方法をもちいました。

生体弁をもちいて僧帽弁置換術ついで大動脈弁置換術を行い、

心臓を動かしつつ三尖弁形成術を行いました。

 

術野の全体像ミックス法では視野が多少狭くなり、時間がかかることが多いのですが、

心臓を止める時間が長くならぬように工夫しました。

手術はスムースに終わり、

手術翌日には集中治療室を退室し、一般病棟へもどられました。

その 術後XP後も経過良好で、通院に時間がかかる遠方のため、十分元気がでてから退院して戴こうという方針にて、

術後3週間あまり入院してリハビリなどを行っていただき、元気に退院されました。

退院時のレントゲン写真でも心臓はすでに小さくなり肺もうっ血が取れてきれいになっておられました。

80歳というご年齢でこれだけの回復はご本人様やご家族の努力と姿勢の賜物ですが、

痛みが少ないミックス手術も一役買ったのであればうれしいことです。


創部右下の写真は術後1か月半の外来でのものです。

この患者さんの場合は美容よりも安全重視のため、皮膚切開は思い切りは小さくありませんが、それでも通常よりかなり小さく、夏に畑で半そでシャツを着ていただいても、創がそれほど目立たない程度になったものと思います。

 

外来でもお元気で、 

今は真冬ですが、春になれば農作業も順次楽しくこなして頂けるものと期待しています。

 

心臓手術とは単に生きるだけのために行うものでなく、

前向きに、元気に建設的に生きるためにも行うものと私は考えています。

こうした考えを共有して下さる患者さんが増え、

その分さらに安全性を追求し、ご希望にお応えしたくチーム全員で思っています。

 

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  ポートアクセス法にかかる費用は?
  
  ミックスは危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
  
僧帽弁

  ミックスによる弁形成

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  ポートアクセスによる弁形成術

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お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックスですみやかに社会復帰された患者さん

お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん

お便り54: ポートアクセス法で弁形成を受けた若者患者さん

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お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん

お便り62: 同、弁形成術と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん

お便り63: ポートアクセスの複雑僧帽弁形成術を受けられた患者さん

お便り65: 同法による弁形成で元気になられた患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

お便り68: ポートアクセス法の弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)をミックス法で受けた患者さん

お便り71: ミックス手術で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん

お便り72: 二弁置換とメイズ手術をミックス法で受けた患者さん

お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動をミックス法手術で克服

お便り74: ポートで弁形成とメイズ手術を受けた患者さん

お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん

 

 

 

 

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事例:右房全置換にて完全切除できた原発性心臓腫瘍

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心臓腫瘍の大半は粘液腫で、中年期以後はその多くが良性腫瘍です。

まれに心臓原発の悪性腫瘍が見られます。

悪性腫瘍の場合、極力完全切除することが長期間生きるために必要です。

そのためには心臓をしっかりと再建する技術が求められます。


下記の患者さんは3か月前、呼吸苦と前胸部圧痛のため近くの大学病院を受診されました。

そこで心臓腫瘍の診断を受けました。

心臓の周りに多量の水が貯まっていましたが、そこからは悪性腫瘍細胞は検出できませんでした。

MRIやCT検査で体の他の部位にとくにがんらしきものはありませんでした。

消化管や子宮・卵巣にも問題なく、PET-CTで心臓の悪性腫瘍の疑いとなりました。

術前CT3造影CTと心エコーで右房腫瘍が確認され、その範囲は上は上大静脈の洞房結節の一部を巻き込んでいるものの、下大静脈や右冠動脈までは進展していない、というものでした。

こうした結果を踏まえて、専門家の手術を受けたいと、米田正始の外来へ来られました。

 

最終的には実際に胸を開けて右房腫瘍を見てからの判断になると考えられましたが、根治性つまり完全切除できるなら腫瘍の全摘除と右房再建を、完全切除ができないときには腫瘍摘除か心膜開窓術というおよその方針を確認しました。

また心臓手術のあとで抗がん剤や放射線治療になる可能性を考え、できるだけ早く創が治り体力が回復するようにミックス法で手術することにしました。

術中所見さらに、もしもあまり永く生きられないという状況になったとしても、その間、できるだけ苦痛が少なく楽しく有意義に暮らせるようにとの気持ちもあってミックス法を選びました。

この患者さんの場合は右開胸のミックスつまりポートアクセス法は少々無理があると判断し、胸骨下部部分切開による方法を選びました。

こうして小さい創で心臓に達しました。

右房全体が腫瘍で充満する形でしたが、心膜との癒着は右側だけで、この部は心膜も切除して、万一そこにがん細胞がいても困らないようにしました。

2012年09月14日(Fri)13時01分23秒体外循環・心拍動下に右房をほぼ全摘除しました。

予想どおり洞房結節の一部までがんにやられていましたので、この結節の一部も切除しました。

下大静脈のところも無事に腫瘍全摘除できました。

右冠動脈にも問題なく、ただしその近くまで右房壁をほぼ全部取る形で腫瘍摘除しました。

右心耳のところだけ腫瘍がなく、この部は温存できました。これはあとで心臓ホルモン(利尿ホルモン)を出してくれるので、術後の心不全を予防できて幸いでした。

腫瘍を肉眼的には全摘除できましたが、念のため、冷凍凝固で見えない癌細胞がもし残っていてもこれを死滅させるようにしました。

それからウシ心膜をもちいて右房を再建というよりあらたに造りなおすようにしました。

入念な止血ののち手術を終えました。 右房再建完成

術後経過は良好で、手術翌日、一般病棟へもどられ、術後10日で元気に退院されました。創の痛みも少なそうでした。

切除標本の検査の結果は、血管肉腫という、ある種のがんでした。

前もって打ち合わせどおり、近くの大学病院のがん専門の先生に集学治療を行って頂いています。

これまでのところ、転移も再発もなく、経過良好です。

ぜひがんばって根治し、元気に永く暮らして頂きたく思っています。

 

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事例: バルサルバ洞瘤の再破裂を修復

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図7バルサルバ洞2バルサルバ洞(右図の「バ洞」のところです)は大動脈のいちばん根っこの部分、大動脈基部にあるふくろ状の構造物で、これが弱くなり膨らんで瘤(りゅう、こぶのこと)になりますと隣接する右房や右室に破れることがあります。

いわゆるバルサルバ洞破裂というものです。

とつぜん血液が多量に右房か右室へ流れ込むため、すぐに肺がうっ血し苦しくなります。酷い時には倒れてしまいます。いのちの危険があることもあります。

治療法は手術でこのやぶれたバルサルバ洞を修復することです。

心室中隔欠損症を伴っている場合はこれを閉じてバルサルバ洞を守るようにします。


さて患者さんは20代の男性で大阪から来られました。

術前エコーその2か月まえにこのバルサルバ洞の破裂に対して現地の病院にて緊急手術を受けられました。

術後まもなくバルサルバ洞が再破裂し、このままではどうにもならなくなって私の外来に来られました。

エコーで見ますと、バルサルバ洞が再破裂しており、しかも右房と右室の両方に血液が噴射されていました(写真右)。

このままでは心不全が進行し、いのちにもかかわってくるため、再手術することになりました。

瘤の再破裂前回の手術から2か月ほどしか経っていないため、癒着が高度で、ひとつ間違うと大出血する状況でした。

そこで丁寧に癒着を剥離し、心臓の全貌が見えました。

ここで体外循環を回し、心臓を止めてから右房と大動脈を開けて中を見ました。

前回の手術ではバルサルバ洞瘤が破れたところを大動脈側からと右房側からの両方で糸で閉じてありました(写真左)。

しかし残念ながら、瘤のところを縫われていたため、その組織が大変弱く、せっかく縫ったところがちぎれて穴が開いていました。

これでは血液がまた漏れて、瘤破裂の再発です。

バルサルバ洞形成パッチ縫着中瘤でない、しっかりとした組織を縫ってバルサルバ洞を守りつつ穴をふさぐことが大切です。

そこで私たちがいつも大動脈基部で行っているデービッド手術の要領で、大動脈弁輪に糸をかけ、そこへウシ心膜を縫着してバルサルバ洞を内側からガードし、あわせて血液の漏れを消すようにしました(写真右)。

同様に右房側からも前回の瘤を閉じたところを、もう少し遠巻きにして、三尖弁輪などのしっかりした組織を活用でして、右房側のバルサルバの破裂口をしっかりとふさぎました。

術後エコー再手術は出血しやすいためしっかりと止血し手術を終えました。

術後経過は順調で、手術翌日には集中治療室ICUを退室され、一般病棟へ戻られました。

術後エコーでバルサルバ洞の穴はきれいに取れ、正常の血流にもどっていました。

 

やや遠方からお越しのため、通常よりじっくり入院期間をおきましたが、13日目に元気に退院されました。

その後も外来でお元気なお顔をみせて下さいます。

手術後1年の心エコー検査でもバルサルバ洞はきれいで、血液の漏れもゼロで正常、心臓の大きさや形、パワーも正常でよろこんで頂けました。

これから自信をもって普通の生活を、スポーツなども含めて楽しんで頂ければと思います。

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事例:肝硬変を合併する三尖弁閉鎖不全症にミックス法三尖弁形成術

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三尖弁閉鎖不全症(略称TR)は高度かつ長期間になると肝臓のうっ血から肝硬変を引き起こします。

こうなると心不全だけでなく肝不全となり命を落としてしまいます。

三尖弁閉鎖不全症だけだからと内科の先生が放置した結果、気が付いたときにはすでにDICという全身が危険な状態で出血のため手術もできなくなっていたという不幸なケースを聞いたこともあります。

油断してはならない病気なのです。


術前SevereTR患者さんは大阪から来られた80歳近い男性で、10年前に近くの大学病院で高度の三尖弁閉鎖不全症と心房細動と診断され、薬などで治療されていました。

4か月前から急に息切れが強くなり、手術が必要だが危険だと言われて私の外来へ来られました。

術前SeverePH度の三尖弁閉鎖不全症(TR)があり、その背景に左室の強い拡張機能障害つまり左室壁が硬くなって、血液を入れ込むべき拡張期に血液を取り込みにくくなる、吸い込みにくくなる状態がありました。そのために血圧と同じほどの、高度の肺高血圧症もありました。

心臓のホルモンであるProBNPは3170と極めて高くなり、重い心不全の所見でした。

心臓と肝臓さらに調べますとチャイルド分類Aの肝硬変を合併していました。コリンエステラーゼChEは148と低下し、内蔵うっ血のため血小板は9.3万、ヘマトクリットも25.5とかなり少なくなっていました。CTで肝臓は縮小気味でした。さらに悪いことにクレアチニンCr 1.45と腎臓も弱っている、いわゆるCKD状態でした。

そこで私たちの方法をもちいて、まず入院していただき、たっぷり時間と手間をかけて心臓や肝臓のうっ血を軽減するようにしました。

努力の結果、6週間後には肝臓も少し落ち着き、水分が取れて体重も軽くなり、上記の肺高血圧も血圧の半分ぐらいまで改善し、全身状態も改善したため、このベストタTAP後イミングで手術しました。

患者さんのからだへの負担を最小限とするため、ポートアクセス法という右胸に小さい創をひとつつけるだけの、患者さんにやさしい手術法でアプローチし、三尖弁形成術を行いました。

三尖弁だけの手術で、かつ安全性を高めるため、心臓を止めずに動かしたまま三尖弁形成術を行いました。

術後経過は順調で、翌朝には集中治療室ICUを出ることができました。心配された肝機能もまずまずよく持ちこたえ、総ビリルビンも4弱で治まり、あとは正常化して行きました。自然のペースメー 術後TR軽快カーが弱く、術後は心房細動は取れて正常リズムにはなりましたが、徐脈(脈拍が遅いこと)のため、術後2週間でペースメーカーを入れて改善安定しました。

遠方でかつ重症であることを考慮し、術後3週間入院治療を行い、それから元気に退院されました。

比較的ご高齢で肝臓も腎臓も弱っている状態でも心臓手術に耐えられることを示して下さったと思います。外来でお会いするのが楽しみです。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例:チャイルドB型肝硬変でも二弁手術の再手術を乗り切った患者さん

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図は健康な肝臓ですが、肝硬変になるとこれがしぼんで表面でこぼこになります。

肝硬変の患者さんとくに病気が進んだ肝硬変はいろいろな注意が必要な重い病気です。

 

そのため肝硬変の患者さんが心臓病になり、心臓手術が必要になると、手術を断るケースが多数あります。危険すぎるからです。

しかし手術しないと肝臓がさらに悪くなる、まもなく命を落とすという状況ではどうすれば良いのでしょうか。

私たちはこの問題に長年向き合い、努力して治療成績を改善して来ました。

 

患者さんは手術当時60歳男性で九州から来て下さいました。

10歳のときにリウマチ熱を患われています。これが弁膜症の原因になりました。

30代後半に地元の大学病院で連合弁膜症の診断で機械弁 術前心エコーによる僧帽弁置換術と大動脈弁置換術および三尖弁形成術を受けられました。

それから20年間、経過良好でお元気にしておられましたが、2年前から労作時の息切れが強くなりました。

大動脈弁(機械弁)はパンヌスと呼ばれる自己組織の張出しで平均圧較差が39mmHgとかなり狭くなり、動きが妨げられていました。ポンプである左室のサイズは拡張末期径44mmは正常で、駆出率76%も正常、つまり正常のちからが保たれていました。しかし強烈な三尖弁閉鎖不全症を合併しており、肝臓を含めた全身がうっ血し、内蔵の傷害が起こっている状況でした。

心臓と肝臓しかも不運なことに、昔の心臓手術のときに輸血を受けられ、当時のことですのでC型肝炎になってしまわれたのが、次第に進行していました。現代なら輸血でC型肝炎になるのは万にひとつ、千にひとつのまれなことなのですが、当時は少なからずあったのです。

その病院でチャイルド分類Bの肝硬変の診断を受けました。つまりかなり重症で、心臓手術に耐えるちからがないかも知れないレベルというわけです。

実際総ビリルビン値は3.4と高めで肝臓のちからを示すコリンエステラーゼは141、同じくコレステロールは154と低く、肝臓がかなりやられている所見でした。

CT写真で長年の弁膜症のため巨大化した心臓と、しぼんで小さくなってしまった肝臓が見られました。肝硬変が進行したときの姿です。

地元の大学病院で心臓手術は危険すぎると言われたのは当然のことでした。しかしこのままではそう永くは生きられない、もし生き残ろうとするなら、何としても弁膜症を治すしかないという抜き差しならぬ状態でした。

私たちはこうした患者さんを京大病院時代から全力をあげて手術治療して来ました。

何とかご期待に沿えるよう、これまでの経験、ノウハウを駆使して治療を開始しました。

 

まず何週間もかけて、適正な減塩食、くすり、点滴、ストレス軽減などでじっくりと肝臓のうっ血を減らし、少しでも肝臓のちからを回復させるようにしました。

その結果体重は3kgは減り、つまり水がそれだけ抜けましたが、それ以上は改善できませんでした。

ビリルビン(黄疸の原因色素です)も2.6前後までは下がりました。

しかし肝硬変のため血小板や白血球という、手術を乗り切るために必要なものが正常よりはるかに少なく、血小板4万、白血球は1600と危険なレベルでした。

 

このままでは死を待つという状況でしたので、せめて患者さんが歩く体力のあるうちにということで手術に踏み切りました。

人工弁摘除後 機械弁を入れているところ手術では再手術のため癒着はしていましたが、

丁寧に剥離し、心臓が見えてきました。

パンヌスが弁の周囲に造成していました。

パンヌスを取り去り、大動脈弁を新しい高性能機械弁で取り換え(大動脈弁置換術)、

三尖弁はすっかり弁が縮 ひどく壊れた三尖弁 三尖弁に生体弁が入りつつあるところまって使えない状況でしたので生体弁で取り換え(三尖弁置換術)しました。

手術がスムースに完了したため、手術の翌日には人工呼吸を外れ、話ができる状態になりました。

2日目には強心剤も不要になり、3日目にはICU(集中治療室)を無事に出て一般病棟へもどりました。

 

毎日歩き、食事も増え、思ったより楽でしたと笑顔が見られました。

しかし大変なのはこれからと皆、用心をしていました。

 

実際、手術から3日目ごろから次第に熱がでるようになり、検査や治療にもかかわらず1週間で高度の発熱をみるようになりました。

創もきれいでとくに悪いところはなく、おそらく術後よくある小さい無気肺が肺炎を起こしたものと考えられました。

それらへの治療を進めつつ、しかしビリルビンが急に上昇して9に達したためICUに戻っていただき、透析やビリルビン吸着などの集中治療を肺炎治療などとともに行いました。

一時は危険な状況のときもありましたが、術後経過2週間半で何とか落ち着き、一般病棟へ戻られました。

その後は毎日運動や食事を進め、術後4週間で元気に退院されました。

退院の日には腕をとって、私も思わず泣いてしまいました。

あれから2年以上が経ち、九州から飛行機で外来へ定期健診に来られます。お元気なお顔を見るたびに苦しかったときを想い出します。

いのちがけの戦いに勝った人だけがわかる、生きることの素晴らしさを共に感じています。

頑張ってくれたチームの諸君と、誰よりも患者さんに感謝申し上げます。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第三十八号】 あけましておめでとうございます

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【第三十八号】
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           発行:心臓血管外科情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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皆さま、新年あけましておめでとうございます

昨年は何かとお世話になりましたが、今年もよろしくお願い申し上げます。

この元旦にホームページ(心臓血管外科情報WEB)の心臓外科医の日記のと

ころに新年のご挨拶をUpいたしました

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2013/01/newyear2013.html

御笑覧頂けましたら幸いです。

年が明けてから寒さが一段と厳しく、血圧が上がったり体調を崩したりして

おられる方がおられないか、心配しております。

急な温度変化は心臓病の患者さんには負担になることがあります。

極端に寒いときには外で無理をされないよう、またやむなく外へ出る場合も

、体を動かし、できるだけウォームアップされるようお願いします。

楽しい一年になることを祈ります。

敬具

平成25年1月4日

米田正始 拝

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