2015年度のAATSアメリカ胸部外科学会にて

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今年もAATSに行って参りました。珍しく西海岸のシアトルで開催されました。

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心臓血管外科領域では世界の最高峰に位置する学会で、そこには世界の顔が集まり、最新の知見と豊富な経験をもとにした議論が交わされるため、参加しました。同時にこの会は正会員が世界で600名限定で、かつ毎年参加することが義務づけられていることも理由です。

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米国の学会といっても、実質世界学会で、ここにいればおのずと世界の情報が集まり、また旧交を温め、新たな仲間を造れるため重要な業務とさえいえる学会です。もともとヨーロッパからの参加も多かったのですが、近年はさらに増え、そしてアジアの仲間の数も増加の一途で、素晴らしいことと思います。

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その分科会ともいえるMitral Conclaveつまり僧帽弁の専門的シンポジウムが直前にニューヨークで開催されたため、多くの会員はニューヨークから一緒に移動していました。

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学会本会の前日に成人心臓血管外科、同先天性、そして胸部外科つまり肺縦隔の3つに分かれて恒例の卒後教育シンポジウムが開催されました。
私はもちろん成人心臓外科に参加しました。今年はDicision Makingにとくに重点を置いた構成でした。

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まず冠動脈ではCABGがどんなときにカテーテルでのPCIより優れているか、動脈グラフトは何本使うのが良いか、質の維持をどうするか、ハイブリッド治療やロボットその他の方法とどう使い分けるか、などの観点から欧米の有名どころが最近の知見を解説してくれました。

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確かに心臓外科の占めるウェイトは減った、しかしまだまだお役に立てる領域がたくさんある、患者さんの重症度が増すにつれてそれはむしろ増えることもある、その場合にうまくハイブリッドや低侵襲治療を駆使してリスクが上がらぬようにする、そうしたことをあらためて認識しました。

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引き続いて弁膜症のセッションとなりました。大動脈弁と大動脈をどうするか、これはとくに二尖弁の場合に重要です。院内でもいつも熱いディスカッションになるのですが、ここでも最近の知見をもとにしてより長期の安全を確保する方法が論じられました。

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生体弁と機械弁の使い分け、ARに対する弁形成がどこまで使えるか、弁サイズの問題いわゆるPPM(患者と人工弁のサイズミスマッチ)、外科的AVRとTAVIと薬の比較、そしてステントグラフトまでが論じられました。TAVIの発展が患者さんに益する治療に結びつくよう、ハートチーム全体でしっかりと取り組まねばならないと再認識しました。

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ランチョンセミIMG_1412ナーはLegend(伝説)セッションで、心臓外科の中で伝説の名人にその半生を語って頂くという企画でした。今年は我が恩師Tirone E. David先生が話をされました(写真右)。Adams先生の司会で、弟子を代表して畏友Michael Boger先生が想い出を語りました。あのころを想い出し、思わず熱くなってしまいました。若い先生方にこうした忘れ得ぬ経験を積んで頂きたいとも思いました。その前後にこれらの先生方ともゆっくり話ができて楽しいひと時でした。

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午後にはMVRと心房細動の治療(心房細動は放置しないように)、僧帽弁と三尖弁の同時手術、僧帽弁形成術のときにSAMを防ぐこと、僧帽弁形成術の長期成績、虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対して弁形成するか弁置換するか、カテーテルによるMクリップをどんな患者に対して行うか、心房細動に対する外科アブレーションでどの方法を使うべきか、機能性三尖弁閉鎖不全症をどんなときに治すべきか、などなど、現代的課題がつぎつぎと論じられました。

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虚血性MRに対する僧帽弁形成術や心房細動の手術などでは我々のほうが進んでいるところもあり、あとでディスカッションすることになりました。もう少し症例数があれば講演でより多くの方々のお役に立てるのですが、そこはまず日々の努力からということでしょうか。

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最後のセッションでは救急での対応、カテ室での事故があったときの迅速な対応、術後の高度な心不全、大動脈解離、心筋梗塞後の心室中隔穿孔VSP、外傷による大動脈破裂、などが論じられました。ここでも我々のVSP治療の成果その他で貢献したいところでしたが数が足りず、今後の努力と楽しみにということにしました。

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翌日からAATS本会が始まりました。テキサスのCoIMG_1421selli先生(写真右)の胸腹部大動脈瘤3000例の検討は圧巻でした。これぞ心臓血管外科、これこそAATSという、かつての感動を新たにしながら拝聴しました。毎回、毎年、そして10年ごとにデータを解析し改良を加えていると聞き、うれしくなりました。

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Adams先生らの僧帽弁手術の際の三尖弁形成術の有用性という発表には激しい討論があり、これまた長期の膨大なデータで科学的にものを論ずる欧米ならではの良さを感じました。要するに将来三尖弁閉鎖不全症が発症する患者さんをきちんと見極め、それらの方々に予防的三尖弁形成術を行えばと思っています。そうした方々にはより短時間でできる、簡便な方法で侵襲を増やさずにできる、これも今後有益になるのではと思います。

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優れた発表が続いたあとで、新メンバーの紹介がありました。この会のメンバーになるということは一流の、少なくとも一人前の心臓血管外科医として認められることであり、皆嬉しそうでした。その中にはアメリカの友人も数名おられ、あとでお祝いを述べ、楽しいひと時でした。畏友Chris Malaisrie もその一人でした。おめでとう。

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会長講演はボストンこども病院のDel Nido先生(写真右)のIMG_1422「科学技術の進歩と心臓胸部外科」というテーマでこつこつと謙虚に貢献を続けてこられた同先生ならではの内容だったと思います。講演前から聴衆が総立ちで拍手したところに同先生の人徳がうかがわれました。

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そのあともTAVIや僧帽弁形成術、僧帽弁膜症にともなう肺高血圧症、AFに対するCox-Maze手術、などの優秀演題が続き、参考になりました。

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夕方にはレセプションがありましたが、今回は総じて日本からの参加が少な目で、Mitral Conclaveがニューヨークであったことも手伝ってか、あまり長期間あちこち行けない状況があったのではと感じました。

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本会二日目は朝7時から、実験研究や先端技術・デバイス、そして手術ビデオのセッションがあり、全部に出たいのですが一つしか選べないため今回は手術ビデオにしました。

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工夫された面白い手術が多数供覧され大変参考になりました。これまでの手術にさらに改良を加えて完成度を上げた、そうしたタイプのものが多く、概念を変えるほどのものはありませんでしたが、良いセッションだったと思います。
かんさいハートセンターがスタートして1年半がたち、そろそろこうした会で発表できそうな、他施設でもお役に立てそうな手術が増えて来たため、来年は演題を出そうと思いました。

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そこからまた本セッションが始まりました。大動脈基部再建の方法4つを比較した、クリーブランドクリニックからの優れた発表に、熱いディスカッションがあったのが印象的でした。機械弁ベントール手術は確かに安定性に優れた方法で、しかしTAVIとくにValve in valveを念頭に生体弁ベントールが急増しており、その中で確実に弁を治せるならDavid手術は素晴らしい、そうしたことを再確認できました。さまざまな状況下でそれに応じたきめ細かい対応がこれから重要になっていくとも思いました。

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それやこれやで充実した数日間でしたが、あまり仕事に穴をあけるわけにも行かず、あと一日あまりを残して残念の帰国となりました。

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留守を守って下さった高の原中央病院と同かんさいハートセンターの皆様方に深謝申し上げます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第三回Mitral Conclaveに参加して

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伝統ある米国胸部外科学会(略称AATS)のサテライト学会ともいえるこのMitral Conclaveは僧帽弁の外科治療を突っ込んで研究する会として4年前に発足し、早3回目となりました。

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私は代表のDavid Adams先生(写真右)のお誘いで初回から参加させIMG_1415て頂き、その都度刺激や知識をいただき、あるいは仲間との意見交換の中で貴重な経験を積み、楽しい時間を過ごして来ました。ここまで毎回発表し、今回は3つの発表で思わずちからが入ってしまいました。といってもポスター3つ、ただし1つはFeatured Abstractという優秀演題となり、日本発の研究が評価されてうれしく思いました。

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毎回会場はNew York市内のホテルが使われ、おかげでNew Yorkになじみができました。タイムズスクエアの賑わいやエンパイアステートビル、そして9・11で崩壊したあとついに再建なった世界貿易センタービルなどが近くにあり、世界をリードするミュージカルやオペラ、コンサートなど、文化の中心であることを実感します。
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学会では僧帽弁の手術治療についてさまざまな観点から発表と討論がなされました。
Adams先生の熱心なご性格からでしょうか、この2日間で僧帽弁のすべてが学べるようにという意気込みが感じられる構成で、高名な権威筋といえどもひとり8分の圧縮した濃い内容のプレゼンがぎっしりと詰まっており、それらが一段落したところで総合討論して理解を深めるという形でした。

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たとえば一日目最初のセッションでは我が恩師Tirone David先生の僧帽弁のExposure(つまり弁を出すためのアプローチ法)、David Adams先生の病変の評価、Francis Wells先生の逸脱の治し方、恩師Craig Miller先生の弁輪の治し方、今回のAATS会長Pedro Del Nido先生のクレフトその他の先天性病変の治し方、Robert Dion先生のSAM対策法、Ottavio Alferi先生の二次的MRの治し方、Gilles Dreyfus先生の評価と形成の完成、そして総合討論とおなじみの先生方の系統的連続講義で実によく練られたプログラムと感心しました。

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僧帽弁形成術を日ごろから多数こなしている私たちにとっては内容もおなじみのものが多いのですが、随所に新しい流れを感じて参考になりました。

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朝から晩まで12時間近く、よくまあこれだけ僧帽弁の話題があるものだと感心しながら、それでもまだ勉強したりない、まだまだ序の口といった感覚があり、この会は当分続きそうだと予感しました。

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私自身は次の3つの発表を行い、これまでの努力を皆様に問うてみました。
まず機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する新術式である乳頭筋適正化術・PHO法の中期遠隔期成績。これはFeatured Abstractという優秀演題の一つに選ばれました。機能性僧帽弁閉鎖不全症の多くはこの方法で弁形成できる、長もちする、心臓外科医はもっと弁形成に取り組んで下さいという気持ちでお出ししました。

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今回のConclaveでも機能性僧帽弁閉鎖不全症は弁置換にしようとか、Mクリップという不完全な方法で逃げておこう、あるいはTMVRという低侵襲の弁置換でかわしておこうという空気が強く、もちろん手術できないほどの重症では良いと思いますが、手術で元気になれるものをなれなくしてしまう、そんなことのないようにと訴えたつもりです。

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もう一つの発表はHOCMつまり肥厚性閉塞性心筋症で僧帽弁閉鎖不全症を伴うものに対するモロー手術つまり異常心筋切除術の発展型をお示ししました。技術や道具の進歩で、従来は難しいとされた大動脈弁越しに心尖部まで自由に心筋切除ができることを示し、さらにMICSという小切開手術まで可能ならしめたことを発表しました。恩師David先生も賛同してくださり、うれしいことでした。もともとトロントで学んだ技術をMICSの方法などを加味して発展させただけに、思いいれのあるテーマだったのです。

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HOCMで発作を繰り返し、仕事や楽しみを奪われて失意の人生を送っておられる方々をこの方法でこれまで多数お助けしてきました。しかしまだまだ未治療で困っておられる患者さんは多いようです。ぜひそうした方々のお役に立ちたく思いました。

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今一題の発表はポートアクセス法でのMICS手術の展開についてです。僧帽弁形成術だけでなく、大動脈弁手術三尖弁形成術メイズ手術なども必要あらば併せて行い、MICSがより汎用性のある手術法になればと思います。まだまだ注意すべきこと、改良すべきこともありますが、かなり光が見えて来たように思います。

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こうした発表を見るひとは見て下さっており、ありがたく感じました。

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今回の会ではカテーテルで行う弁治療、いわゆるSHDインターベンションが着実に進歩しているという現実がより明らかになりました。Mクリップによる弁形成はまだまだ不十分な治療という弱点が否めませんし、TMVRつまり左小開胸にて心尖部からTAVIのようにして入れる、オフポンプでの弁置換もかなり盲点や弱点が多いと感じましたが、外科手術ができない場合などに有力な治療法になり、歓迎すべきことと思いました。

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またダビンチロボットによる僧帽弁形成術も通常医療として根付いていることも確認できました。日本では保険が効かず患者さんの負担が過重になることからまだ課題が多いですが、うまく使えば価値が出てくるものと思いました。

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大動脈弁関係でも熱い議論が多く交わされました。しかしカテーテルによるTAVRの話題になりがちで、外科医としてはちょっと退屈な場面もありました。治療の低侵襲化は時代の要請ですし、これから積極的にカテーテル治療を導入しながら、やはり外科手術しかないという治療を行える数少ないセンターのひとつになるのが正解ではないかと感じた次第です。

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ともあれ内容ぎっしりの二日間で、多くの仲間や先輩たちと語り合えて実りある時間が過ごせました。その間、留守を守って頂いた高の原中央病院かんさいハートセンターの皆様に感謝申し上げます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第5回ハートバルブカンファランスの御礼

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早いものでこの弁膜症の研究会がスタートして5回目になりました。思えば第一会のときはたまたま同じ日にあの東日本大震災が起こり延期になったという忘れられない想い出がありました。

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今回は私が当番世話人、学会でいえば会長を仰せつかり、1年前から準備を進めて参りました。
この会の「公式」報告は雑誌「心エコー」に掲載されますので、そちらをご参照ください。
ここでは自分なりに感じたことなどをお書きします。

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HVC2015この研究会は前回から大阪で開催されていますが、今回も当番の私が奈良ということで大阪開催となりました。パンフレットの阿修羅像は川副先生がデザインして下さったもので、同先生の美的センスに感嘆いたしました。

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そこで気がついたのですが、阿修羅はもともと仏にお仕えしていたのが、あまりやんちゃが過ぎ戦いに明け暮れ、仏の逆鱗に触れて改心し仏教を守護する神になったという伝説(諸説あり)で、古い大学の体制に嫌気がさして逆らったのを批判され、象牙の塔を出て市中病院で患者さんのために日々汗を流すようになったのとどこか似ていて、これからは大人しくしようとふと思ってしまいました。

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ともあれ1年かけて代表世話人の川副浩平先生や前回当番の中谷敏先生らと何度もミーティングを持ち、今大切なことは何か、今議論するにふさわしいテーマは何か、今何が面白いか、といったことを念頭にテーマを決めて行きました。

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出来上がったプログラムを見て多くの世話人の先生方が面白そうで楽しみですという旨のご意見を下さり、安堵したものです。当日は満員御礼に近い状態となり立ち見の方もでるほどで、皆さんに感謝一杯の一日となりました。

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まずPreconferenceセッション「ハートチームはもっと楽しくなる」から、心臓病センター榊原病院の坂口太一先生と東京大学循環器内科の大門雅夫先生に、より良いハートチームへの努力経験をお話頂きました。いろいろ反省しながら拝聴していたのは私だけではないでしょう。

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カンファランスの内容は上述の雑誌をご参照頂くとして、まずその骨子を以下にまとめます。

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まずCase Study1「外科医今昔物語―その2 ”How would you operate?”」。若手をベテランが叱咤激励する恒例の企画です。3名の新進気鋭の心臓外科医、神戸市立医療センター中央市民病院・小山忠明先生、東京ベイ・浦安市川医療センター・田端実先生、済生会中津病院・中桐啓太郎先生に苦労症例を提示していただき、辛口のエキスパートコメントを京都府立医科大学・夜久均先生と東京慈恵会医科大学・橋本和弘先生から頂きました。もちろん座長の川副浩平先生と東京女子医大・芦原京美先生からもご質問とご指導を頂きました。

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Case Study2「大動脈弁をもっと知ろう」ではまず東邦大学医療センター大橋病院の鈴木真事先生に二尖弁関係のユニークでハイレベルのお話を、ついで心臓血管研究所の國原孝先生が弁形成術で足りないもの、不確かなものについてお話されました。座長の神戸大学・大北裕先生と高の原中央病院・太田剛弘先生にはエキスパートのご指導を頂きました。

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ランチョンセミナーは少しディベート風に1.桜橋渡辺病院・小山靖史先生の「エコーに負けないCT」と、2.東京ベイ浦安市川医療センター・渡辺弘之先生の「CTを飲み込むエコー」でした。大変勉強になりました。座長の心臓センター榊原病院・吉田清先生の絶妙な司会のもとでよく理解できました。

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午後のCase Study3は今日的話題の「HOCM+MR 治療の深淵」でした。この道の権威でもある榊原記念病院・高山守正先生が最近の内科的治療とくにカテーテルアブレーションでのSeptal Reduction心室中隔縮小術を供覧されました。それに続いて不肖私、米田正始が近年話題の「Mid-Ventricular Obstructionの手術」で左室の奥深い、これまで手術困難とされて来た深い部位の手術を実際の症例群を提示しながらご紹介しました。HOCMでもハートチームで優れた治療ができればと思います。

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なおHOCMはトロントでは多数の患者さんがおられました。成人先天性心疾患の有名な外来があったからです。そこで当時トロントこども病院のチーフ心臓外科医であったWilliams先生が毎週、当時私がいたトロント総合病院(TGH)へ手術をしに来られていたのです。ほとんど毎週HOCMがあり、私もちょくちょくその手術に入って勉強させて頂きました。本場の手術を直伝で教えて戴いたことが25年もたった今、ますます役に立っています。

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このHOCMの手術は視野が悪く、慣れないとおいそれとはできない、たとえできても不完全手術となり再発の原因となるため普及していません。これからこの手術をより発展させ、次世代に伝えていきたく思っています。

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この手術によって、これまで心不全や発作、二次的な不整脈などのため仕事もできずつらい毎日を送って来られた方々が元気に社会復帰しておられます。ぜひとも多くの患者さんたちにお元気になって頂きたく思い、発表させて頂きました。

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さらに川副先生が「SAM+MRの変り種」で、最後に大阪大学・中谷敏先生が「病態生理のまとめ」をされました。座長の榊原記念病院・高梨秀一郎先生と三重大学・土肥薫先生には多数の有益なコメントやご質問を頂き、内容の理解を深めていただき、感謝申し上げます。

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最後のセッションはディベートでCase Study4「曲がり角に来た弁膜症の治療」でした。

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まず「TAVIはもっと軽症でもよいのでは?」では九州大学・有田武史先生が解剖要件を満たせばもっと積極的にTAVIをやって良いというデータを示され、それに対して岩手医科大学・岡林均先生はTAVIの成績は改善しても医療費が大変高騰して将来成り立たなくなる懸念を示されました。

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ついで「MitraClipは本当に使えるの?」ではイタリアはシシリー島帰りの東海大学・大野洋平先生がその有用性と限界を示されました。一方、外科からは長崎大学の江石清行先生が多数の僧帽弁形成術症例を提示しつつ、これにどうクリップを使えるのですかという疑問を投げかけられました。
座長のみどり病院・岡田行功先生、天理よろづ相談所病院・泉知里先生、うまくかじ取りしていただき、実りある内容として頂けたこと、感謝申し上げます。

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最後に川副先生が代表幹事としてのご挨拶と、この研究会が5年の節目を右肩上がり状態で迎え、今後さらに続けて行くという世話人会決定を報告されました。

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こうして第五回ハートバルブカンファランスは盛況の中に終了しました。蛇足ながら個人的にはかんさいハートセンターを認知していただいたのもありがたいことでした。皆様、来年もまたよろしくお願い申し上げます。

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米田正始 拝

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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第9回宮城 Cardio Tissue Labo Seminarで

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この回は東東北大学病院北大学心臓血管外科が中心となって若手心臓外科医の手術手技修練のために毎年開催されているものです。すでに9回目で実績のある恒例行事になっているようです。

写真右は東北大学病院です。

今回は教授の斉木佳克先生のご厚意にてご招待いただき、心室中隔穿孔 VSP の講義とウェットラボによる実習およびその指導を仰せつかりました。

10年ほど前に、当時の田林晄一教授のご厚意で講演させて戴いたちょっと懐かしい艮陵会館で講演させて頂きました。病院の目の前という至便のところにあります。

 

心室中隔穿孔は心筋梗塞のあとで心室中隔が破れて右室へ血液が流入し、そのままでは患者さんは一気に心不全になりまもなく死亡される恐ろしい病気です。

私は1980年代後半にトロント大学へ留学したときに真っ先に研究したテーマのひとつでした。

そのころ、多くの心臓外科医がこの病気に取り組んでいましたが、その多くは穿孔した穴を塞ごうとして失敗し、患者さんを失っていました。

心筋梗塞の直後で組織が大変弱く、せっかく穴を塞いでも組織がちぎれてまた穴が開いたのです。

そこであえて直接穴を閉じるのではなく、遠巻きに、心筋梗塞部をパッチで覆うようにすることで、心筋梗塞でやられていない、比較的状態の良い心筋にパッチを縫うことで安定した結果を出したのです。

1989年のアメリカ心臓協会で発表したときにも多くの賞図 VSP手術賛の言葉をいただき、指導してくれた恩師のデービッド先生に感謝したものです。

その後この術式は日本へも導入され、David-Komeda法 とかKomeda-David法 と呼んでいただけるのは光栄な限りです。

この方法で多数の患者さんを救命することができました。この術式は単に穴を塞ぐだけでなく、左室を守る、心不全を予防するという効果もあるからです。それもあってこれが世界の標準術式となっています。

しかしこの方法は3次元的な感覚が必要で、左室内操作に熟練したひとでないと難しいというきらいがあります。

またせっかくきれいにパッチを縫着しても、術後、心筋梗塞エリアがさらに広がれば、パッチを縫った部位も壊れてパッチが外れるという事態も経験しました。

そこでこの20数年、この術式に改良を加え磨き続けて来たのです。その成果をお話しました。

山形大学の貞弘光章教授もこの会にご参加くださり、貴重なコメントを下さいました。(貞弘先生、ありがとうございます。)

東北大学の若い先生方も多数参加しておられ、これからドンドン実力をつけて心室中隔穿孔 VSPのような重症例を救命して頂きたいので、講演では何例も実際の手術ビデオを供覧し、操作に慣れて戴けるように工夫しました。

また最近一部の先生方が使っておられる右室からの二重パッチ法のビデオも供覧し、こうした方法の特徴を知り、うまく駆使してベストの結果を出せるようにしました。2011年から二重パッチ法の拡大術式つまり左室前壁まで保護できる方法を発表していますのでそれも併せて見て頂きました。

それに続いて、ウェットラボが行われました。

ブタ心は内腔が狭いため、手術練習はやや難しいのですが、逆に良い練習の機会にもなり、前向きに進めました。

まず私が前壁中隔のVSPでのDavid-Komeda法のパッチ縫着をデモンストレーションしました。

初心者でもやりやすい、改良型の方法をお見せしました。

この方法で、昨年も長野県の比較的若い先生に初めてのVSP手術を遠隔支援し、見事に救命成功していただいた経験をお話したこともあってか、若手諸君は皆しっかりとブタ心での手術をこなしてくれました。

どなたもきれいにパッチが貼られ、かつそれを組み立てて心筋がちぎれないようにという私の依頼をしっかりと守ってくれました。

初対面でも昔から仲間であったような気持ちになれる、一体感ある雰囲気の中で和やかに勉強ができました。

それから後壁のVSPは乳頭筋や僧房弁、腱索などの構造物のため視野が狭く難しいため、とくにそこを重点的に供覧し、皆さんになるほどと言って頂けたのはうれしいことでした。

つまり左室側から僧帽弁輪を縫えば組織切れもおこらず、難しい手術がうまく行く、これをお示ししたのです。

デービッド先生と開発したこの術式は別名 Exclusion法 と呼びます。心筋梗塞部を除外(Exclusion)するためこう呼ぶのです。皆さんに自在にExclusionできるよう、改良に改良を重ねた最新版、おそらく究極のそれをご披露し、お褒めの言葉を頂きました。

勉強のあとは斉木先生、准教授の川本俊輔先生、病棟医長の熊谷紀一郎先生らとごちそうして頂き、楽しいひと時を過ごすことができました。

私なりに進めている民間病院と大学病院のコラボレーションに前向きのご意見を頂き、うれしく思いました。

楽しく充実感あふれる機会と時間をいただき、斉木先生と東北大学心臓外科の先生方に深謝申し上げます。

 

平成27年3月8日

米田正始 拝

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第五回日本ローカーボ食研究会に参加して

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恒例の学術集会がこの3月1日に名古屋で開催されました。

早いものでいつしか5回目となり、内容の深さも当初よりさらに立派になったと思います

まず灰本クリニックの灰本元先182347277生(この研究会の理事長です)が三段階糖質制限法に対する海外の反応という、パイオニアならではのご苦労と今後の方向性がわかるお話でした。

穏やかなローカーボ食(CARD)は過激派からは生ぬるいと言われ、CARD否定派からは単に毛嫌いされるという板挟み状態にあると思います。

しかし従来のダイエット法の良い点をそのまま温存し、悪い点だけ補う、それも科学的根拠にもとづいておこなうという点で穏やかローカーボは優れものと私は考えています。

医学ジャーナルの査読の先生方もまだまだ旧式の、自分の考え以外は否定するひとも少なくありません。着実に仲間を増やしていくのが良いと思いました。なかでも患者さんが喜んで下さり、患者さんが仲間になる、これが強いと思います。

つまりローカーボダイエットを正しく実践する医師のところへ多数の患者さんが集まる傾向がはっきとすれば、あとは時間の問題になると思うのです。

医療の世界では審判は患者さんなのですから。


Ilm09_ad03002-s続いて私、米田正始が心臓外科手術でやせるべき時、太るべき時というタイトルでお話しました。

太り過ぎのため、肺活量が少なすぎたり血糖値その他の問題で心臓手術ができないという患者さんをときどき見かけます。

そうした患者さんたちを、ただ手術適応がない、と断るのではなく、科学的ダイエットで必要な減量を安全に行い、肺活量や内臓脂肪、血糖値その他を良い状態にしてからゆうゆうと安全な心臓手術を行う、これは患者目線の全人医療として正当なものではないかと思うのですが、大方のご意見は好意的でうれしく思いました。

最近進歩しているMICS手術でも太り過ぎの方は脂肪に押されてか、視野が狭いのですが、こうしたケースにもCARDはお役に立っているのです。

 

ついで私たちの知恵袋、名古屋大学名誉教授の加藤潔先生が果糖代謝とブドウ糖代謝の関係ー果物を理解するために、というタイトルでお話されました。

自然科学という言葉がぴったりとくる、論理的で明快で頭の中がすっきりと整理される、興味深いお話でした。

果物には果糖が含まれるタイプがあり、それを食べ過ぎると糖新生が起こり、血糖値や悪玉コレステロールLDL、中性脂肪TG、尿酸その他が増えてメタボの病気を創ってしまうのです。

また果物が熟するとブドウ糖が増えるタイプがあり、熟したときのおいしさの秘密がわかり、なるほどと感心しました。

果物は他の食べ物にはない特徴があり、うまく食べれば健康食品として活かせるという期待をもたせて下さったお話でした。

 

ランチョンセミナーは名古屋大学大学院予防医学の笹壁多恵さんのゆるやか糖質制限食のお話でした。ちょうど研修のためフィリピンに滞在中で、この研究会のために戻って来て頂きました。

フィリピンの食事が炭水化物中心であるのに驚きました。何でも太っているのがひとつのおしゃれ、ステータスのような空気があるそうです。しかし糖尿病が増加しているという事実を見るとこれから彼の地でもローカーボダイエットCARDを啓蒙しなければと思いました。

ランチョンセミナーの時間に糖質制限のスープ、カレー、パンなどがふるまわれました。なかなかの美味で感心しました。スポンサーの皆様に感謝!


午後は管理栄養士さんが中心の発表セッションでした。

Btn_ghc岐阜ハートセンターの大西歩実さんは同センター開設時からCARDを推進して来られた実力派の栄養士さんです。今回はローカーボによってさらに痩せて困った症例を発表されました。

小早川医院の飯塚智子さんはSU剤を減量し、CARDを指導した肥満糖尿病の一例を発表されました。

いずれも立派なお仕事です。あえて前向きにコメントさせて戴ければ、もう少しおだやかローカーボで、かつ体重などでもこれ以上はやらないという限界を設けてやって頂ければ理想的かと思いました。

高の原中央病院4bかんさいハートセンターでの大事な仲間でもある高の原中央病院の余吾淳子さんはエネルギー制限食に比べたローカーボ食の有用性という研究を発表されました。20名の患者さんで2倍の速さで無理なく減量できることを示されました。

これまでのローカーボ研究ではカロリーを一定にして糖質の割合を変えるという科学的検討ができたものはなかったため、灰本先生はじめ大方の方々の高い評価を頂きました。

この研究をさっそく論文にして世にだそうということになりました。余吾さんの努力に敬意!です。

名古屋大学大学院の笹壁多恵さんは2型糖尿病患者の自己血糖測定をとおした連携について発表されました。食生活、食べ物はじつに多種多様です。患者さんから教えて戴くことがたくさんあります。それを実例で教えて頂きました。

たとえばプチシュークリームは痩せる目的には意外に良いとか、カレーライスはかなり不利とかですね。こうした情報をこれから共有し、豊かな食生活を築くことができれば良いですね。

最後に灰本クリニックの渡邉志帆さんがロールプレイングによる糖質制限食の管理栄養士教育の実際を発表されました。

なかなか見ごたえのある内容で、これからこうした実地シュミレーション教育が役立つと感心しました。

そのあと総合討論で皆さんからさまざまなご質問やご意見がでて、熱気につつまれた研究会になりました。

私は心臓外科医ですが、この会の活動や研究会を通じてじつに多くのことを学ぶことができ感謝しています。その成果は患者さんたちに直接還元できています。

来年もまた立派な研究会にしたいものです。

皆様、ありがとう、お疲れ様でした。


米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第一回江東豊洲心血管カンファランスに行って参りました

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この会は新東京病院で活躍して来られた畏友・山口裕己先生が昨年、昭和大学江東豊洲病院に循環器センターを立ち上げられたのを機に開催されました。就任祝賀会もあわせておこなわれました。

山口先生は岡山大学の佐野俊二教授のもとで研修し、その後ニュージーランドにある有名なグリーンレーン病院でコンサルタントにまでなられ、腕をあげて帰国された仲間です。

祝賀会ということもあり、同先生がかつてお世話になられた恩師や友人の先生方も内外から参加され楽しい会になりました。

私はチーム山口の研究発表に対する指定発言という重責を頂いての参加でした。

昭和大学江東豊洲病院
カンファランスはまず研究発表から始まりました。

新東京病院のころから優れた手術をそれも多数こなしてこられたチームですので私も楽しみにしていました。

三尖弁閉鎖不全症で右室の拡張が高度なものや弁尖が不足する状態では三尖弁形成術はかなり難しいことがあります。そこでパッチをもちいて前尖を拡大しゆうゆうとしたかみ合わせで弁の逆流を止めるという手術を行って来られました。

私はつぎのようにコメントしました。これは三尖弁形成術の限界をさらに高める立派な方法であること、同時に弁膜症とはいえ右室拡張がその病態の本質であるため、右室機能を高めるための方法たとえば乳頭筋の位置移動なども併せ検討してくださいとお願いしました。なお個人的にはこうした拡大形成術と将来のTAVI、バルブインバルブを考慮した生体弁TVRを傷跡の目立たないMICSで行うことの二本立てが良いのではと考えています。


つぎに巨大左房縫縮術のあとの呼吸機能をCPXで検討された結果を示されました。

僧帽弁形成術や置換術、そしてメイズ手術と同時に行う手術で、良い経過ながら肺機能の向上というレベルには至っていないようでした。

私はこの努力は意義があり続けて下さいとコメントしました。さらに欧米の方法では出血リスクが高いため10年ほど前にJTCVSやEJCTSに発表した私たちの方法なら出血ゼロのためさらに安全にでき、除細動率もあがり、患者さんはお元気であることをお話しました。巨大左房の患者さんは5年もたてば大半が亡くなるというEBMがあり、この手術は極めて有意義で、さらに進められるようにお願いしました。


さらに大動脈弁輪縫縮術を応用した大動脈二尖弁形成術の経験を発表されました。

これも素晴らしい仕事で、VAジャンクション(心室と大動脈の接合部)の本格的な形成・縮小は理に適ったことですが、シェーファーズ先生らの簡便な方法とも比較して最適術式を探って下さいとお願いしました。これから大動脈弁形成術はさらに進化すると思います。

 

ランチョンセミナーは2つあり、まずオークランド市立病院のMilsom先生のグリーンレーン病院のお話がありました。

私も弟子がお世話になった素晴らしい病院で今からでも機会をみつけて訪問したく思いました。


もうひとつの話題はタイの畏友Taweesak先生が僧帽弁形成術が患者の人生を治すというタイトルでのご講演でした。

リウマチ性僧帽弁膜症への形成術ではすでに世界的権威のTaweesak先生ですが、通常の僧帽弁閉鎖不全症でも新しいコンセプトで弁形成をより進化させておられるのがわかりました。リウマチの弁膜症は現代の日本では少ないですが、それでもときどき患者さんが来られます。例数が多いタイの経験も加味してしっかりと形成したいものです。


それから山口先生らの僧帽弁形成術後の狭窄の報告がありました。

運動負荷エコーの進歩でこれまであまり見えなかった問題が見えるようになったのです。今後の僧帽弁形成術の展開に重要なテーマです。私たちはこれへの対応を始めており、やはり弁尖で不要なものは切除する、リングは大き目である程度やわらかいものを使う、などの工夫をしています。これは「respect rather than resect」行き過ぎへの警鐘と、かつてトロントで柔軟リングと硬性リングの差は運動負荷によって明らかになることをジャーナルで発表したことを踏まえてのことです。


機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する前尖や後尖へのパッチ拡大術を発表されました。この方法は弁逆流の制御には良いのですが、左室機能改善には直接役立たないため、乳頭筋吊り上げなどを検討して下さいと後でコメントしておきました。なるほどと思ったのは後尖へのパッチは前尖へのそれより長期成績が良いことで、後尖テザリングの制御が重要であることを裏付けるもので、この意味でも有用な研究と思いました。

 

ここから特別講演で、まずメイヨクリニックのシャフ先生が症状のない大動脈弁狭窄症の予後や治療についてお話されました。症状がなくても長期生存率は低いため、患者も医師も十分理解したフォローが必要とあらためて感じました。日本では循環器の病院でも症状がなければ放置して良いと思っている先生がまだおられ、これからの啓蒙活動が必要です。と同時に外科はさらなる治療成績の改善も重要です。

 

順天堂大学の天野篤教授は冠動脈バイパスの過去・現在・今後についてお話されました。すでに世界のトップレベルに達した感のある日本の冠動脈バイパス手術の原動力のような先生のお話はためになり、夢のある内容でした。

私の橈骨動脈グラフトの研究成果にも触れていただき、ありがとうございました。これから日本のバイパスの良さつまり動脈グラフトとオフポンプを守りつつ、MICSなどで新たな展開をしたいものです。

 

トリは岡山大学の佐野俊二教授のお話、夢の扉をひらく、でした。

佐野先生とのお付き合いは長いのですが、一貫して進めてこられた先天性心疾患の外科治療が社会活動、国際協力、国家プロジェクトの一環というレベルにまで上がり、夢のあるお話でした。

そういえば昔、ベトナム・ホーチミン市のチョーライ病院に心臓血管外科を私たちが立ち上げたことを想いだし、こうした活動を国を動かすレベルで大掛かりにすることの意義をあらためて感じました。

 

カンファランスは多数の参加者を得て盛会裏に終了しました。

その合間をぬって、昭和大学江東豊洲病院内を見学させて頂きました。ウォーターフロントの見事な景色と新しく高機能な病院、広々として見事な手術室やICUなど感心することばかりでした。我が高の原中央病院かんさいハートセンターもこうしたものを参考にして地域の中で患者さんに喜ばれるセンターにしたく思いました。

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そのあと会場をホテルへ移して山口教授就任祝賀会が開かれました。

大勢の先生方のご参加で楽しい会になりました。こうした病院全体が支援するハートセンターで山口先生とそのチームが大きな展開をされることを確信し、また応援したく思いました。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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市立ひらかた病院で講演させて頂きました

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師走の慌ただしい時節ですが市立ひらかた病院Sin-nanseiにて講演の機会を頂きました。循環器内科部長の中島伯先生とは長年のお付き合いで市立ひらかた病院にも愛着があるのですが、最近新病棟がオープンしたということでいっそう楽しみにしていました。

玄関を入る と近代的でひろびろとした待合や廊下、ホスピタルアートを取り入れた構造に感心しました。中島先生に案内していただき、きれいでゆとりのある外来や検査室、居心地がよくくつろげる緩和病棟、広々としたホールなどを拝見しました。

さらに建物全体が免震構造でダンパーの上に乗っており、強い地震の際には50cmも移動することで地震エネルギーを吸収するという優れものでした。地震が来ても病院内にいれば安心、とは心憎い気配りです。

とくに講堂は単に平素の勉強会、講演会やイベントだけでなく、災害緊急時に多数の市民を仮収容できるよう平坦なフロアで造られていることに感心しました。これからの市民病院のあるべき姿を研究された成果と思います。

講演会では「心臓血管外科がお役に立つとき」というタイトルで代表的な心臓病の予防から治療までをお話いたしました。

狭心症でカテーテルによるPCI冠動脈バイパス手術の正しい使い分けや協力、それを円滑にしてくれるハートチーム

 

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MICSによる弁膜症手術後の
創です

弁膜症では早期の診断を症状や胸部X線、心電図からきっかけをつかむこと、手術ではなるべく弁形成を行い患者さんのQOLつまり生活の質を高めること、それをなるべくMICSつまり創の小さい痛みの少ない方法で行うことの意義をお話しました。

なかでもマルファン症候群の患者さんでの難しい僧帽弁形成術や大動脈基部再建いわゆるデービッド手術が安全に行えることをお示ししました。あとの懇親会でマルファン症候群の患者さんご家族との感動秘話で皆さんにお褒め頂きました。

近年増加傾向にある大動脈弁狭窄症の怖さと手術の意義、すっかり元気になることもお話し、最近多い病気のデパートのような患者さんにも役立つことを見て頂きました。

大動脈瘤も進歩が著しく、腹部大動脈瘤のかなりの部分はステントグラフトで切らずに治療でき、胸部でも弓部全置換術大動脈解離へのヘミアーチつまり近位弓部置換術が安全に行えることを解説しました。

最後にASOつまり閉塞性動脈硬化症に対する血管新生療法をご紹介しました。まもなく多くの患者さんたちの下肢を切断から救えるでしょう。

講演会のあと、10名ほどの仲間で懇親会を開いていただきました。皆熱いひとたちで楽しいひとときを過ごしました。このような立派なチームを育てられた中島先生はすごいとあらためて感嘆いたしました。

地域医療への新たな取り組みを教えて頂いた充実した楽しい機会になりました。中島先生、市立ひらかた病院の皆様、ありがとうございました。また遊びに参上させて下さい。

平成26年12月19日

米田正始 拝

 

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かんさいハートセンター、開設から1年が経ちました

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皆様いかがお過ごしでしょうか  高の原中央病院3b

おかげ様で私たち高の原中央病院かんさいハートセンター心臓外科は開設から1周年を迎えました

この間に心臓手術130例あまりを含めた160例を行うことができました

いくつもの大学病院や大規模センターから来られた重症患者さ184701458んも多く、苦労の連続でしたがチームも育ちだいぶ安定して参りました
皆様のご支援とご指導に厚く御礼申し上げます

太田剛弘先生をリーダーとする循環器内科はまだ半年ですので開設途上です。日々診療態勢の充実に努力中です。カテーテル、エコーやCT、リハビリ、腎臓などを含めた全人医療ができるチームです。みなさまのご指導やご鞭撻をお願い申し上げます

ICUはこの9月から正式認可になりました。スタッ Ilm22_ba01054-sフも日々勉強し磨きをかけどのような患者さんにもお役に立てるよう努力しております。

これまで病院としての態勢が整わず、緊急患者さんも十分には受け入れられない状況でお恥ずかしい限りでしたがようやく受け容れ態勢ができました。
奈良県の救急ネットワークであるEマッチにもようやく対応できるようになりました

奈良市やその周辺の医療機関の皆様におかれましては心臓血管・循環器の処置が必要になるかもしれない不安定患者さんがおられましたらいつでもご連絡ください

188617211緊急のことですので、疑いの段階でのご紹介も歓迎いたします。
精査ののち循環器疾患ではないということになれば、状態に応じてお返しするか、しかるべき科へご紹介するなどいたします。

私たちは心臓血管の専門診療を行っておりますが、地域医療、救急医療はそれ以上に大切と考えております。
ぜひ先生方の外科患者さんのお役に立てればと存じます

奈良市あるいはその周辺部の患 Ilm09_ad07001-s者さん各位におかれましては、胸の痛みや息苦しさ、失神やふらつき、強い背中の痛みなどがあれば直ちにご連絡ください。なかでも普段から心臓が悪いと言われている方々は早めの行動がいのちを守ります。

わずかに早く治療ができたためにあとはスイスイと元気になられた患者さんや、タイミングを逃して体がぼろぼろになってから来られて治療のあとも苦労した方なども過去に見られます。

医療は患者さんと医療者が協力し、予防や早期診断、良いタイミングで治療ができたときに最高の結果を出すことができます。ぜひ平素からかかりつけ医の先生や私たち専門医とともに健康を守りましょう。

平成26年11月23日

米田正始 拝

 

**********************************

註:平成27年6月をもって米田正始は高の原中央病院を退職いたしました。開設時からいた心臓外科スタッフもすでに全員異動いたしました。

奈良の地にどんな心臓病にでも対処できる、ちからのあるハートセンターを立ち上げ、他で断られた患者さんを救命するなど一定の実績を上げることはできましたが、病院の事情によりあまり大きな手術やリスクの高い重症の治療ができなくなったためです。

現在は大阪府内の二つの病院(医誠会病院(外来・手術)、仁泉会病院(外来)で本来の断らない心臓外科医療ができるようになりました。

心臓病で何かお困りの際にはご相談ください。お役に立てれば幸いです。

 

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チャレンジャーズライブの予選選考会にて

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今年も恒例のチャレンジャーズライブ予選会が東京と大阪でありました。

この会は10年あまり前から、京都府立医大の夜久均先生をはじめとする心臓外科医仲間が集まって、若手を全国規模で鍛えよう育てようという趣旨で発足しました。

毎年多数の参加者があり、すでにこのチャレンジャーズライブ出身者が立派な施設長にまでなっているというケースもあります。

私は大阪での予選会に審査員として参加しました。

Isya01当日は夜久先生、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生、名古屋第二日赤の田嶋一喜先生、岸和田徳洲会病院の東上震一先生、心臓センター榊原病院の坂口太一先生らといっしょに楽しく指導させて頂きました。

卒後10年以内の心臓外科修練中の若手が午前中は審査員との懇談・指導下に冠動脈バイパス手術の練習を積み、午後は剥離と吻合コンテストで大阪地区代表2名が選ばれます。

今回から畏友 Ikonomidis J(トロント大学以来の親友)とこれまた旧友 Fann J(スタンフォード大学病院で同じ時期に学びました)が出した心臓外科トレーニングの論文での基準を取り入れて審査することになりました。といってもこれまでの和製基準が良くできていたため、内容的には大きな変化はありませんが。

以前とくらべて年々その技術レベルが上がっている感があり、参加者は年齢制限のため変化しますので日本の若手そのもののレベルが上がっていると思います。

多くのひとたちは上手に吻合していましたし、中にはスピードもなかなか立派なレベルに達しているひともありました。

前向きな立場から今後の改良点をいくつか挙げてみます。

1.冠動脈の剥離操作は縦方向に少し皮をはいでから横方向の剥離に入るように。でないと繰り返し操作がつづき時間がかかりすぎる。

2.冠動脈の横を裏側近くまで剥離するひとがあり、それは吻合時に冠動脈をコントロールしづらくなる

3.吻合口のサイズを適正に

4.針の角度が悪く、血管壁に垂直に針が刺さらない

5.最初グラフトを吻合部から離れたところに置きすぎて苦労している

6.吻合中、吻合部エッジが内側向かないように、糸が外にあるときに引っ張る

7.トウを早く回りすぎる。ひとつ間違うと吻合部狭窄になる。

8.トウをはじめ、展開が不十分。

9.手の震えのコントロール

10.安全にワンアクションで縫えるところをツーアクションにしている。時間がかかり成績も落ちる心配あり。

11.吻合の歩みにばらつきがあり、トウの部分がやや雑になっている

12.内膜が内腔に少々突出気味のケースがあった

13.実戦志向の技術だけでなく、ウェットラボ志向の技術を感じたケースがある

 

しかし総じて皆 177139202さんうまく、日々の練習努力のあとがうかがえる方も少なからずおられました。

若手医師の多くが楽な科を選ぶ今日、厳しくてもやりがいのある心臓血管外科を選択された諸君は、その志からすでに立派と思います。こうしたひとたちが大きく成長展開するよう、支援をするのが私たち指導者の責務であることをあらためて感じた一日でした。

皆さんこれからさらに成長して行ってください。今日は皆さんのエネルギーを頂きました。ありがとう。

 

平成26年11月2日

米田正始 拝

 

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日本心不全学会のシンポジウムにて

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秋は行楽のシーズンですが、医師や研究者にとっては学会のシーズンでもあります。

日本心不全学会は心不全の IMG_0600治療や研究にかかわるさまざまな職種の方々が参加される学会ですが、ご縁あってシンポジウムで発表させて頂きました。

今回の学会は国立循環器病研究センターの北風政史先生が会長で、テーマは「日本が創る心不全学の潮流 -実臨床と基礎医学の往還から―」というスケールの大きなテーマでした。

私が参加させていただいたのは心不全と弁膜症、ハートチームセッションというシンポジウムで、座長は吹田徳洲会病院の金香充範先生と鳥取大学循環器内科の山本一博先生でした。

まず国立循環器病研究センターの天木誠先生が機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する非薬物療法の適否の評価についてお話をされました。

Carpentier先生の分類の解説から始まって、機能性僧帽弁閉鎖不全症がいかに予後不良かということ、そのメカニズム、弁逆流の重症度評価(Vena Contracta、逆流率、逆流弁口)を国内外のガイドラインを参照して解説されました。総じてこの逆流はふつうの弁逆流より過小評価されやすいため、一見軽症でも間違いのないようにすべきであることも示されました。

薬以外の治療法、とくに心臓外科手術にも言及され、僧帽弁輪形成術いわゆるMAP単独よりアルフィエリ法(僧帽弁前尖と後尖を中央部でくっつける方法)を追加すると成績が良くなること、そこからMクリップ(アルフィエリと同様のことをカテーテルで行います)への期待がもてそうなこと、テザリングの意味、前尖だけでなく、後尖の角度つまりテザリングが重要であることまで解説されました。

優れたレビューで、時間がもっとあればなお良かったと思うほどでした。

仙台厚生病院の多田憲生先生は機能性僧帽弁閉鎖不全症に対するMクリップのお話をされました。最近話題のトピックスです。

この方法で僧帽弁の逆流はある程度減りますし、心臓手術ができないような重症患者さんに福音になるかもと思いました。

しかしお薬による内科治療と比べて短期長期とも差がでていないというのはこのMクリップがそれほど効かない恐れもあり、更なる研究が必要と感じました。

現在アメリカでは手術ができない器質性僧帽弁閉鎖不全症つまり弁そのものが壊れた、通常タイプの弁に保険が承認されています。

ダメ元だから誰にでもどんどんやって良いという治療ではないことを皆で認識すべきです。かつてPCI治療を「何度でもやればやるほど冠動脈は良くなる」と言われた高名な先生がおられたことを想いだすのは大勢の外科医のトラウマでしょうか。あの時も医療費ばかりがかかり、患者さんの生命予後は改善しませんでした。最近はそうした歴史への反省から、ハートチームでじっくり相談して正しく進めようという空気があるのは幸いです。

なおこれまでのデータから僧帽弁輪形成術をともなわないアルフィエリ法での成績が悪いため、Mクリップ(弁輪形成術はできません)も慎重に進めていただくのが安全と思いました。(参考記事はこちら

ついで葉山ハートセンターの星野丈二先生は非虚血性心筋症における機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術と弁置換術の適応についてお話されました。

かつての須磨久善先生や現在の磯村正先生の手術を拝見した私にはなじみある、興味深いお話でした。

左室形成術ができる場合は弁形成術を、左室形成術ができないケースでは弁置換術を行うという結論はなるほどと思うところと、もう一工夫したいという気持ちが混在して拝聴しました。

左室のなかに切り取るほど悪い部分がない場合でも、乳頭筋などを工夫して形を整えれば弁逆流は止まるからです。ただ同時に、左室がひどく壊れたケースでは、患者さんの体力にも心臓にも余裕がないため、理想とは思えない弁置換でも一発で決めるメリットがあるというのも理解できました。

このシンポのトリは私、米田正始が務めさせて頂きました。

10年前から改良を重ねて来た乳頭筋前方吊り上げ(PHO手術など)を含めた僧帽弁形成術の成績をお示ししました。弁だけでなく左室そのものをできるだけ改善するための手術ですので、通常の僧帽弁輪形成術いわゆるMAPより成績が良く、とくに後尖のテザリングが防げて長期予後を良くできることをお示ししました。これは乳頭筋接合術と比べても同様で、後尖は明らかに良くなります。後尖が良くなると逆流再発が減って予後が改善するわけです。

さまざまなご質問をいただき、うれしく思いました。内科の先生のなかにはこうした左室や乳頭筋から治す方法をご存知なかったケースもあり、このシンポに参加して頂けたことを感謝します。

ご質問の中に「この方法は先生のオリジナルですか」というものがあり、吊り上げそのものはアメリカのKron先生の開発で、私はその弱点を直し、より効果が上がる前方吊り上げを初めて開発したことをお答えしました。つまりKron先生の後方吊り上げでは後尖のテザリングは改善しないのですが、私の前方吊り上げで初めて前尖後尖とも良くなったわけです。他人の仕事をなかなか評価できない日本の学会でこうした議論をしていただいたことをうれしく思いました。

ともあれ弁だけでなく左室もなるべく守る方法で外科医は患者さんや内科の先生方に貢献できるのではないかと期待しています。

かつて冠動脈PCIの全盛期にはPCIができなくなればあとは看取りという風潮がありました。外科がまだまだ患者さんを良くできるのにそのままというケースが多数ありました。Mクリップという新たな方法で内科の先生方のなかにも僧帽弁や心エコーに興味を持つかたが増えていることを心強く思います。

この心不全学会に久しぶりに参加させて頂いて感じたのは、医師だけでなくコメディカルの方々の参加がずいぶん増えたことです。当然とはいえ、すばらしいことです。

さまざまなケア、心臓だけでなく呼吸管理、リハビリや栄養など、実際の治療現場で重要なトピックスが多数議論され、大変勉強になりました。来年からはもっと大勢のコメディカル仲間と一緒に参加したく思いました。

 

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