お便り34 感染性心内膜炎(IE)の患者さん

Pocket

感染性心内膜炎(略称IE)は怖い病気です。

ばい菌が心臓の中で増えて弁や筋肉、血管などを壊すだけでも重い病気ですが、

そのばい菌の塊が血液の流れに乗って脳へ行けば脳梗塞になりますし、

体のどの臓器へ流れてもその臓器に感染が起こります。

 

  9ilm17_da05017-s月下旬のある日、広島からメールが届きました。

感染性心内膜炎で脳梗塞を起こされた患者さんの御家族からでした。

内容から考えて、これは何とかできるし、

また何とかしなければならない、と判断し、

名古屋までお越し戴きました。

 

治療の方針として、お薬で感染がかなり落ち着きつつあるため、

まず完全に菌を消し、菌の心配がない状態にし、

そのうえで僧帽弁をしっかりと形成する、

脳梗塞はある程度時間が経っているため脳を守りながら手術をすれば経験上、十分行けるという方向で考えました。

 

手術は僧帽弁のほぼ右半分を形成する、

人工腱索も8本立てる、

比較的複雑なものになりました。

私たちはこうした手術は平素からこなしているため落ち着いて完遂でき、弁はきれいに治りました。

 

以下はご家族からのメール複数回を束ねたものです。

患者さんの状態が良くわかるすぐれたお便りですので、

この意味からもご参考になると考え、載せることにしました。

冗長に思われる部分は飛ばし読みして下さい。

 

******患者さんの御家族からのお便り******

(最初のお便り)

はじめまして。広島県在住の****と申します。母の病気の件で、いろいろ お便り34の実物写真 と調べている中で、こちらのホームページを見つけてメールをさせていただいてます。

発端は、9月8日の朝7時頃に、同じ町内に住んでいる母が自宅の階段で急に動けなくなり、近くの**病院に救急車で運ばれました。

病院に着いてからCT・MRIの検査をしたところ、左脳の血管で詰まりかけている部分が見つかりましたが、また脳梗塞は起こしていませんでした。念のため入院をすることになり、病室に入るまでの待ち時間の間に脳梗塞を起こしたようで、その日からすぐに点滴が始まりましたが、後遺症として言語の失効と右足のしびれなどが残りました。

入院2日目くらいから37度5分~38度8分の熱が続きましたが、座薬と解熱剤の処方と途中から抗生剤の点滴など行いました。(熱は12日くらい続きました)入院3日目からは、左の頭に突き上げるような痛みが(見た感じのイメージです)続き、食事も取れないような痛みだったので、ロキソニンを処方され、痛くなると飲んでました。主治医の先生は、肩を触って、肩こりからくる神経痛でしょう。とのこでした。

熱が下がった頃、頭痛もなくなり(9月19日ころ)点滴とワーファリンを併用して、薬の量を調整していたので、そろそろ退院できると思っていたら、9月21日の早朝、激しい腹痛でCTを撮って、内科の先生に診てもらったところ、脾梗塞の可能性が高いとのこと。救急車で運ばれた時に、不整脈もあったので、心臓のエコーの検査をしました。

心臓血管内科の先生に診ていただいたら、弁膜が完全に閉じてなく、血液の逆流があるとのこと。(入院のときにもエコーを撮っていましたが、その時は逆流はありませんでした)ばい菌がいる可能性があるので、カメラを飲んで検査を・・・とのことで診てもらうと、やはり弁にばい菌が付いて、弁に少し穴も開いているようだとのこと。

その病院には心臓の外科がないので、すぐに紹介をしてもらい、9月22日に**病院に転院。その日に、また一通りの検査をしてもらい、心臓血管外科の主治医の先生から説明を受けました。診断は、感染性心内膜炎、僧帽弁閉鎖不全約3度とのことでした。(持病に甲状腺機能亢進賞、糖尿病もあります)お話の内容では、血液検査のCRPが11.3、白血球が14800と高く、かなり厳しい状態で、すぐにばい菌を殺す抗生剤投与により、炎症をコントロールしていきます。場合によっては心臓の手術が必要になります。(感染が制御できない・大きなゆうぜいがある・心不全の進行の場合)そして、今の状態でもし手術になると、かなりリスクが高く、もし菌がなくなって、良い状態で手術をすればリスクは少なくなります。などの説明を受けました。

心臓ということで、家族である私たちもかなりのショックを受け、どうすればいいのかとても不安になりました。そして、9月27日の血液検査ではCRPが3.0、9月29日の血液検査では0.8と幸いにも菌の方は落ち着いてきているようなのですが、主治医の先生のお話だと、心臓の弁の手術はしなくてはいけないとのことで、人工弁に置き換える手術をタイミングを見てするようになりそうなのですが、人工の弁ともなるとやはり術後の経過なども心配で、何とか他に方法はないものかと考えておりました。

更に心配なのが、母が転院してからというもの、気持ちの落ち込みが激しく、言葉が話せない情けなさなどもあると思うのですが、毎日のように泣いて精神的にもまいってしまっています。長文になり申し訳ありません・・・

家族としては、心臓の手術ともなると、やはりかなりのリスクがあって、不安や心配も耐えません。本人にも安心して受けてもらうためにも、より良い環境での手術を望んでいます。こちらのホームページをみて、ここしかない!と思いメールをさせていただきました。宜しくお願いいたします。

*****(感染性心内膜炎、手術後のお便り)******

米田副院長先生

10月28日の心臓の手術は、母が大変お世話になりました。当日は、私と妹も子供を連れて名古屋へ行っておりましたので、術後の説明などで先生にもお会いできませんでした。

父から心臓弁の形成術と心房細動の手術まで無事に終えていただいたと連絡をもらい、とても安心して広島に帰ることができました。ありがとうございました。

術後に母の顔を見ていなかったので、11月2日にそちらに伺った際も、とても元気そうでリハビリにも励んでいる様子だったので、つくづく遠方でも米田先生に手術していただいて良かったね~と話をしたことでした。

(中略、事務的なご相談など)

父も広島に戻り、しばらくは母ひとりでお世話になります。退院の日程が決まりましたら、その前々日くらいには父が名古屋の方へ行くようにする予定でおります。
名古屋ハートセンターの先生方や看護師さんたちも、とても気持ちの良い方たちばかりで、安心してお任せしております。宜しくお願いいたします。

***(追伸、ここまでを振り返って礼状を下さいました)***

米田正始先生

母が脳梗塞で近くの病院に運ばれたのは、9月のはじめのことでした。検査の後、すぐに入院・治療となりましたが、失語症という言語障害が残ってしまいました。本人はもちろんのこと、家族としても大変つらい思いでしたが、なんとか前向きにリハビリにも励もうと思っていた矢先、入院から2週間が経ってそろそろ退院という頃でした。

お便り34の実物写真2 心臓の弁にバイ菌が付いて、弁を破壊してしまう感染性心内膜炎になっていると分かりました。すぐに血液の中のバイ菌をなくすための抗生剤の投与を開始して、できれば心臓の外科手術ができる病院に転院した方がいいとの話を聞かされ、とてもショックを受け途方にくれました。でも、一刻をあらそう状況でしたので、すぐに地元の心臓血管外科のある病院に転院し、点滴治療を開始しました。

転院してからすぐに、心エコー・血液などの検査をして、主治医の先生から聞かされた話は、私たち家族にとっては、本当につらいものでした。心臓の僧帽弁が菌によって破壊されていて、血液の中の菌の値も非常に高く、とても危険な状態だということ、まずは菌をなくさないといけないが、もし緊急手術ということになるととてもリスクが高いこと、心臓の弁は破壊されたものは元には戻らないから人工弁をいれるしか方法はないということ・・・本当にどうしていいか分からなくなり、もうどうしようもないのかと諦めかけていました。

そんな中、少しでも希望の持てる話はないか、いろんなことをネットで検索していて、「心臓 名医」で調べたら、米田先生のお名前を見つけたのです。リンクをたどっていくと、先生が管理されているホームページがあり、隅から隅まで必死で読みました。

いろんなページを見る度に、今まで暗くて不安な気持ちしか持っていなかったのが、すごく明るく希望に満ちた気持ちになりました。そこには、僧帽弁形成術という方法があることが書かれていました。

いろんなメディアでも活躍されていて、とてもそんな先生に手術はしてもらえないかもしれない。と思いましたが、そこに書かれている一言一言が信頼でき安心できる内容だったので、私はすぐに米田先生にメールを送り、母の状況を相談しました。先生からのお返事はすぐに届きました。患者やその家族を気遣っていただく言葉もあり、絶対にこの先生に母の手術をお願いしたいと思いました。母にも家族にも話をして、血液の菌が落ち着いて退院をして間もなく、名古屋に向かいました。先生とお会いして直接話を聞いて、母もとても安心したらしく、1週間後には手術となりました。

手術は僧帽弁形成術と心房細動の方まで治していただき、思った以上に回復も順調で、母もほんとに先生にお願いしてよかったと言っております。今まだ入院中で、広島に住んでおりますので、ちょっと顔を見に行くということはできないのですが、米田先生をはじめ北村先生、小山先生、深谷先生も看護師さんたちも、とても良くしていただいて、安心してお任せしております。

今回思ったことは、心臓手術という大変なことだからこそ、患者やその家族を安心させてくれる先生に出会えたことはとても重要なことだったということです。もちろん、リスクが0ということはありませんが、同じリスクがあるにしても、気持ちを大切にしてくれる先生方がおられたから、母もこの大変な手術を受けることができたのではないかと思ってます。母が退院の際は、また名古屋ハートセンターに伺うのを楽しみにしております。

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ

患者さんからのお便りのページにもどる

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

心臓腫瘍について―しっかり取って確実に再建すれば多くは治せる 【2022年最新版】

Pocket

最終更新日 2022年2月3日

心臓腫瘍という病気はあまり知られていないと思いますが、少数ながら存在し、患者さんにとってはその確実・的確な治療が大切です。
心臓腫瘍の多くは良性腫瘍ですが、ときに悪性のものもあります。
また良性であっても心臓という場所がら、その一部がちぎれて血流に乗って飛べば脳梗塞などを起こすものもあり油断できません。
ここでは大人の心臓腫瘍で主なものを挙げます。

心臓腫瘍のばあい、悪い細胞をただやっつけるだけでは患者さんが救えないこともあります。しかしそのままではさらに困るものです。的確な作戦と実行が大切です

1. 粘液腫(ねんえきしゅ)

心臓腫瘍で一番多く、3分の1を占めるものです。
とくに左房粘液腫が多いです。
これがちぎれて飛ぶと脳梗塞などの問題が起こるため、速やかにオペすることが必要です。
良性腫瘍ではありますが、不完全に切除すると何年か経って再発することがあり、あくまでも完全切除が手術の原則です。

もっと見る

1. 粘液腫は腫瘍?それとも?

かつては謎の病気でした

粘液腫は腫瘍について

ご参照ください

2. 粘液腫にたいするミックス手術

比較的お若い患者さんをはじめ、創も痛みも小さいためお役に立ちます

粘液腫にたいするミックス手術について

2. 弾性線維腫

弁に発生しやすく、ちぎれて飛ぶという心配があります

良性腫瘍ではありますが、もしちぎれて飛ぶと右心系なら(右図の紫色のところから肺へ肺塞栓に、左心系なら脳梗塞や腎梗塞その他の梗塞(右図の赤い色の大動脈から脳や腎臓へ)が起こり、危険です。
良性だからといって、油断は禁物なのです。


3. 脂肪腫

厚い脂肪組織のように見えることもあります
脂肪浸潤と呼ばれるものと見極めがつきにくいこともあります。

4. その他の良性腫瘍

横紋筋腫、線維腫、血管腫、房室結節中皮腫、奇形腫などなど

5. 転移性悪性腫瘍

他の臓器のがんが心臓まで転移したものです。
次項の原発性悪性腫瘍の30-40倍と多いです。
肺がんや乳がんの患者さんの10%で同様の転移が見られます。
悪性黒色腫では75%に心臓転移が認められます。
この場合は根治術は不可能ですので、たとえオペする場合でも対症療法としてのそれを考えることになります。

6. 原発性悪性腫瘍

心臓からがんあるいは肉腫(にくしゅ)が発生したものです。
悪性ゆえ治療に際してはさまざまな注意が必要です。
しかしそれでも生きる望みが絶たれたとは限りません。
頑張れる場合もあるのです。
なおこどもの心臓腫瘍では、良性腫瘍で一番多いのは横紋筋腫で40%を占め、ついで線維腫が挙げられます。こどもの粘液腫は悪性あるいは悪性になりやすいため注意が必要です。
それぞれの心臓腫瘍の詳細は別頁にゆずります。

もっと見る

心臓外科の観点からはできるだけ腫瘍をすべて切除し、再発を防ぐとともに、心機能が損なわれないように確実な再建を行うことが重要と考えます。
とくに悪性度が高く、まだどこにも転移していないという状況のときには完全切除をめざし、そこでできた大きな欠損を確実に再建することが予後を改善し患者さんの寿命を長くするのに役立ちます。
そこでは弁形成術左房形成術、大動脈・肺動脈などの血管形成術、さらに左室形成術などの経験が役に立ちます。
逆に心臓のさまざまな部分が再建できるからこそ、腫瘍を完全に切除できるわけです。

腫瘍がすでに周辺に波及するなどして完全切除できない場合は大きな手術はかえって患者さんの寿命を縮めることがあります。
なのでできるだけ苦痛を減らす、その中でできるだけ寿命を延ばす、人間らしい状態での寿命を延ばすことが大切です。

7. 心膜嚢腫(しんまくのうしゅ)

心臓の周りにある心膜という膜から発生する腫瘍で多くは良性です。
中に水がたまり心臓を圧迫したり、悪性との見極めがつきにくいときなどに手術します。
傷跡が見えにくいMICSで手術することが増え喜ばれています(心膜嚢腫のMICS)。

8. 患者さんの想い出

Aさんは60代男性で、北海道から連絡をして来られました。もとプロ野球チームのスカウトをしておられた元気な方です。
地元の立派な大学病院で心臓悪性腫瘍のためもう手術できない、手が打てないと言われたそうです。そのため2か月以上もそこでじっとしているだけの入院生活を送っておられました。たまりかねたご家族が私のところへ連絡を取って来られたのです。
データを送って頂き、拝見しますと右室に腫瘍が充満し、危険な状態です。このままでは突然死の恐れもあるほどでした。
腫瘍の広がり具合から根治術は難しい状態でしたが、このまま突然死するよりは、まず当面生きられる状態にすることが必要と判断しました。というのは心臓腫瘍の中にはゆっくりと増殖するタイプがあり、腫瘍が全部取れなくても当分はまずまずの状態で暮らせることが経験上、あったからです。
しかし動くこと自体が危険な状態で搬送も難しい状態でしたので、ハートセンターから医師を派遣し、飛行機+空港から救急車で随伴して病院まで来て頂きました。
まもなく心臓手術を行いました。腫瘍は取れる限り取り、取れないところも冷凍凝固などをもちいてできるだけ腫瘍細胞が死ぬか弱るようにしました。とりあえず突然死の恐れは消えました。
顕微鏡検査の結果が出て、悪性リンパ腫という、薬や放射線治療が効く可能性のあるタイプであることが判明しました。薬を使う化学療法や放射線療法は北海道の地元の病院がやって下さることになりました。
まもなく患者さんはお元気になられ退院して北海道へ戻られました。
これから化学療法などで腫瘍をうんと弱め小さくできると期待していましたが、そうするまでに患者さんはがんの全身転移のため地元で亡くなられました。
そうなるとあの何も手が打てずただじっとしていた2か月以上の時間が悔やまれます。すぐに心臓手術し、まもなく薬を使えば当分は元気に暮らせた可能性があったからです。
この教訓から心臓腫瘍の患者さんには、あきらめずに速やかにかつ広く情報を集め、セカンドオピニオンをもらって治療してくれる病院を探ることを一度は御検討頂ければと思うのです。
心臓腫瘍とくに悪性心臓腫瘍のように稀な病気ではその経験が豊富なチームでしかできない治療があるのです。

(後日談:数年前、この記事を読んだ別の心臓腫瘍患者さんの息子さん(奇遇にもプロ野球の選手でした)が連絡を取ってこられました。直ちに来院即入院いただき、2日ほどの間にPETや心カテーテルを含む検査を一気に行い、何と悪性リンパ腫であることが判明しました。すでに腫瘍が広がり手術よりも薬の方が良い形のため、直ちに優れた血液内科医に相談し、化学療法を実施、あれから4年が経ちますが患者さんはお元気で私の外来に通院中です。私は患者さんに一言言いました。あなたは立派な息子さんを持って幸せですね、と。)
心臓手術のお問い合わせはこちら患者さんの声はこちら
Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

僧帽弁形成術に使うリングについて―適材適所で 【2025年最新版】

Pocket

最終更新日 2025年1月6日

.

◾️弁形成に使うリングは人工弁とは別物です

.

弁形成のリングと言えば、患者さんたちは「???」と目を丸くされることがあります。弁の形成なのに人工のものを入れるの?人工弁とどうちがうの?ワーファリンはどうするの?と質問は尽きません。

リングがついて弁の逆流が消えました
僧帽弁形成術のリングとは弁輪を補正あるいは補強する人工物です。ここで弁輪とは弁のひらひらする弁尖(べんせん)とか弁葉(べんよう)とか呼ばれる部分の根本のところ、硬い輪のようになっている組織です。

リングはこの弁輪を治すだけですので、生体弁のように寿命が来ることもなく機械弁のように血栓ができる懸念もないのです。

.

◾️弁形成のためのリング、少し時間が経つと、、

.

心臓手術から数週間たてばその表面には患者さんご自身の細胞が張ってつるんとした滑らかな形になります。

そのため術後1カ月あまりでワーファリンは不要となります(心房細動などの状況があれば話はべつです。ぎゃくに、だからこそメイズ手術等で心房細動を治すようにしているわけです)。

.

弁輪が良い形と大きさで安定すれば僧帽弁逆流が減り機能しやすくなります。また僧帽弁形成術で修復した弁の状態を維持しやすくなります。私は動物実験でリングをつけ、その上で弁の腱索を一部切断したことがありますが逆流は起こらずびくともしませんでした。実験チーム皆で「へえ―」と感心したことがあります。そういう効果があるわけです。

.

◾️僧帽弁形成術のためのリング、その変遷

.

Carpantier先生の初代リング 僧帽弁形成術の進歩に沿ってリングもまた進歩して来ました。当初は半月型の硬いものしかありませんでした。ただこれが現在なお通用する内容を持っているというのはまさに開発者Carpentierカーパンチエ先生の慧眼だったと感嘆します。

.

Duran先生の柔らかリング ついでDuranデュラン先生が開発された柔らかいタイプが世に出ました。これは状況によっては心臓のパワーアップに役立つもので、私は恩師デービッド先生のもとで実際の患者さんのデータで研究させていただき、この効果を証明することができ、お役に立ててうれしく思ったものです(英語論文11番)。

.

◾️弁形成のリング、さらなる展開

.

Cosgrove先生の柔らかい部分リング サドル状のリング1 その後リングはさまざまな展開を見せ、より簡便な後尖弁輪つまり僧帽弁の後ろ3分の2だけを修復するもの(Cosgroveコスグローブ先生が考案)や、

僧帽弁の自然なサドル形状(馬の鞍の形)をまねたタイプ、 サドル状のリング2

さらに虚血性僧帽弁閉鎖不全症(Adamsアダムス先生らが開発)や拡張型心筋症にともなう僧帽弁閉鎖不全 Adams先生らのリング 症などに役に立つもの(Bollingボーリング先生が開発)などさまざまなものが開発され、適材適所の使い方ができるようにまで発展しました。元祖Carpentier先生のリングも時代とともに研究成果を取り入れて進化して行きました。

.

それらはいずれも一理も二理もある考え方で造られていますが、実際の患者さんにおける利点についてはまだこれから検証して行くべきものも多く、今後の課題です。しかし印象としてはある程度は役立つのではないかと思っています。

僧帽弁形成術用の小さいリングひとつを取っても多くの先人たちの大変な努力の跡が感じられ、心に響くものがあるのです。

.

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

 弁膜症のページにもどる

.

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

第8回患者さんの会の御礼とご報告(心臓突然死の講演も)

Pocket

この11月7日(日曜日)に第8回患者さんの会を開いて戴きました。いつもの祇園ホテルの広間で和気あいあいとした時間が持てたことを感謝しています。

行楽日よりの晴天の一日、それも七五三の日にもかかわらず60名を超える方々にご参加いただき、なつかしいお顔を拝見しうれしく思いました。

今回は突然死とくに心臓突然死の原因と対策、とくに予防について、お話しました。

心臓突然死は毎年数万人とも言われる多数の方を襲う、こまった問題です。しかし名前は「突然」死でも、実際にはその前兆、まえぶれが結構あるものです。そこを見逃さず、早目にかかりつけ医や専門医などの相談して頂ければ、結果はずいぶん違ってくることをお話しました。

心臓突然死の中で一番多いのは狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患です。こ 冠動脈疾患は心臓突然死の原因ワースト1です。ご注意を
れは胸の痛みや不快感があることが多く、おかしいと思った段階ですぐにご相談頂ければ、比較的楽な検査で冠動脈のかなり詳細までわかります。冠動脈が狭くなっていることがわかれば、カテーテル治療バイパス手術などで治すことができます。重症の弁膜症でも起こることがあります。

つぎに多いのは不整脈です。これも突然危険な不整脈が来るよりも前ぶれがあることが多く、動悸息切れがあれば一度専門医にご相談されれば役に立つと思います。不整脈が単独で起こる場合もありますが、心筋症心筋梗塞後などの原因があって起こることも多く、その場合は原因を治療することで改善が期待できます。あるいは心電図を一度見れば対策が立てられることもあります。

突然死の原因として3番目に多いのはスポーツです。これはスポーツが悪いという意味ではなく、スポーツ中に隠れ不整脈がはっきりと出てくるという意味です。隠れ不整脈の原因としては冠動脈疾患心筋症弁膜症などがあります。

その次に多い原因としては心不全があります。心臓に余裕がないためちょっとしたきっかけで突然死するのは怖いことですが、心不全の患者さんではちょっとした運動で息切れなどがありますので注意しておれば未然に発見できます。

いずれにせよ早目に心臓専門医にご相談頂ければ対策可能であるため、おかしいと思う症状などがあればがまんせずにご相談されることを勧めます。

対策としてはそれぞれの原因疾患の予防や早期発見・早期治療がもっとも有効です。高血圧、高コレステロール血症などを含めたメタボの対策はとくに重要です。前回のダイエットのお話を想い出して頂ければ幸いです。

以上のようなお話をさせて戴きました。それから多数の御質問を戴き、関心の高さをうれしく思いました。なお心臓突然死につきましてはAll Aboutの拙筆のページ(原因・メカニズム予防・対策法)をご参照下さい。

全さんの手作りの美味しいケーキでお茶の時間となり、それからまた質疑応答の時間を持ちました。

心臓近くの大動脈瘤がわかりどうしたら良いかというご質問もありました。答えは、まずどういうタイプと大きさの瘤かを把握し、それに応じてお薬とか手術とかカテーテルによるステントグラフトなどの治療法からベストのものを選びます。勇気を出して、病気と向き合うことが大切で、それにより見通しを改善できるのです。

中には今通っている病院の対応にどうしても不満があるというケースもあり、えてしてこういうことも起こります。その場合は礼儀正しくデータをもらって、他病院での御意見を戴くというのも一法でしょう。

散歩のときに右足に痛みを感じるというお話がありました。これも下肢の血管を調べ、それで問題あれば血管を治療、血管に問題なければ整形外科で背骨を調べてもらえば解決するでしょう。

国立大学病院に勤務していたころにどうしてもできなかったことの一つが、患者さんが外来へ来られて、その日のうちに、数時間以内に検査を完了しその結果や画像を一緒に見ながら治療方針を立てることでした。ハートセンターでは仲間の努力のおかげでこれが実行できており、夢が一つ実現してうれしく思っています。

前回の患者さん会で講演いたしました新しいダイエット法で5kg以上痩せられた患者さんや大きな手術から10年近く経って、今なおお元気という声も多数あり、うれしく思いました。こうした患者さんの元気なお姿を、かつて苦労をともにした病院の仲達にお見せできないのが残念です。

あれこれと歓談するうちに時間が来てお開きになりました。いつもお世話して下さる松岡さん、中村さん、全さん、そして秘書の中村さん始め多数の方々に深く感謝申し上げます。

何か御心配な折には独りで悩まずにご連絡下さい。それではまた次回、多分来年春ごろにお目にかかりたく存じます。皆さま、ご自愛下さい。

2010年11月6日

米田正始 拝

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

【第二十三号】 患者さんの声とブログに新記事です

Pocket

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【第二十三号】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

あの猛暑が嘘のような秋らしい涼しく爽快な季節になりました。

今年は紅葉がきれいになるのではないかという話も聞かれます。

皆さん如何お過ごしでしょうか。

ウィーンフィル奏者による室内楽コンサートはおかげさまで盛会裡に終了しま

した。ありがとうございました。

さてHPにいくつか新しい記事をUpしましたのでご紹介いたします。

患者さんからのお便りが3つと、心臓外科医のブログ1つです。

お便りは大動脈弁閉鎖不全症に対して大動脈弁形成術を受け、元気になられた

若者と、関東の男性で主治医から心筋症・心不全で打つ手がないと言われて私

のところへ来られ、頻脈性心房細動を治すことで心臓の機能が改善したケース

、そして心内膜床欠損症にもとづく僧帽弁疾患とIHSSで手術を受け、ずいぶ

ん元気になられた女性の3つのお便りです。

ブログはネパールのカトマンズにアジア心臓弁膜症シンポジウムのため行って

きた雑感です。

参考になれば幸いです。

平成22年10月19日

米田正始 拝

追伸:第8回患者さんの会(11月7日午後1時から、祇園ホテル)の御案内を再

掲します

ご連絡は以下へお願いします

患者さんの会の連絡先 米田心臓外科オフィス 秘書 中村由佳
TEL:080-6105-8231(直通)
FAX:075-712-8835
Eメール:nakamura@heart-center.or.jp です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright (c) 2009 心臓血管情報WEB
http://www.masashikomeda.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り33 心内膜床欠損症(一次口欠損症)の患者さん

Pocket

患者さんは69歳女性で、

12年前に心内膜床欠損症の不完全型あるいは一次口欠損症という病気にもとづく心房中隔欠損症ASD

心室中隔欠損症VSDの閉鎖術および

三尖弁閉鎖不全症に対して三尖弁形成術を受けておられます。

 

今回はかつての病気とくに心内膜床欠損症がもととなって、僧帽弁閉鎖不全症MR

大動脈弁下狭窄症IHSS(左室の出口近くの圧較差112mmHg(大変狭いです))、

巨大左房のため、

強い心不全となり、高度の肺高血圧も合併し、このままでは危険な状態となって来院されました。

しかも肺そのものが大変悪くなっていました。

少し専門的ですが、肺の一秒率38%(極端に低いです)、

%肺活量40%(これも大変低いです)は医療崩壊の現代では麻酔科の先生が手術拒否されるレベルです。

いくら超重症とはいえ、結果が悪いと心ない、医療の大変さを知らない周囲から糾弾されるからです。

 

私たちはこうした患者さんをお助けするために平素から努力して来ましたので、

厳しい状況を打開し元気になられた患者さんやご家族の勇気と努力に敬意を表したく思います 者さん・ご家族と一体となって手術や治療を頑張ろう、そして社会復帰して戴こうという方針になりました。

 

この心内膜床欠損症(一次口欠損症)という病気では

左室の出口がせまくなるのが特徴ですので、

弁形成術では出口をさらにせまくする恐れがあり、

治療法は人工弁とくに背丈の低い機械弁が安全で、推奨されています。

 

それらを十分考えた上で、左室出口の狭い部分を切除して広げました。

僧帽弁に機械弁を入れ、巨大な左房を小さくしました。

二回目の手術のため止血もいっそう念を入れました。

 

手術で心内膜欠損症がらみの弁も左室内の狭いところもすべてきれいに治りましたが、

肺は弱いため時間をかけて徐々に人工呼吸を外し、徐々に日常生活を取り戻すようにしました。

 

外来でお見かけするときには別人のようにお元気になられ、

旅行を楽しむほど元気になられました。

かつて大変お世話になったからと、病棟の看護師さん達にもお礼に訪問して下さり、

皆も努力が報われてよろこんでくれました。

 

以下はその患者さんの御家族からのお手紙です。医者冥利につきるお手紙で光栄に思っています。(2010.10.記)

*********お便り*********

米田先生さま

先生、母を助けてくださりありがとうございました。
早いものでもうすぐ手術から5ヶ月が経とうとしています。

思い返せば、まさかまた手術をすることなるとは思ってもいませんでした。 お便り33の実物写真

12年前に心臓の手術をし、その当時とても大変だった母の姿をよく覚えています。

 

 
70歳という年齢や肺の機能も悪く、

又その他の面からもリスクの高い手術はできれば避け、

このままお薬で維持していきたいと私達は考えていました。

でも、とうとう心不全をおこしてしまいました。

「手術をしなければ長く生きられないでしょう」と先生からお話があった時、悩みました。

先生は丁寧に時間をかけて、私達家族がわかりやすいように何度も何度もお話をしてくださいました。

そうやってコミュニケーションを図りながら信頼関係を築き、

「この先生なら大事な母を任せられる」と決心がつきました。

手術後も心配な状態がしばらく続きました。

先生はじめ、チームの皆さまにはとても良くしていただきました。


只、なかなか元気にならない母を目の当たりにして、

私達家族も気持ちにゆとりが持てず何かと先生には失礼なことを申してしまったかもしれません。

 
「どんなことでも良いので話してください」といつも母や家族の気持ちをわかろうとしてくださいました。

先生のお陰でまた穏やかな家族3人と犬一匹の暮らしが始まっています。

入院前から楽しみにしていたクラシックコンサートにも行くことができました。

 
以前なら上がれなかった階段も今は普通に上がることができるようになりました。

 
また、家族で旅行に行きたいと思っています。

先生と出会っていなければ今の幸せはなかったでしょう。

不安でいっぱいだった数ヶ月前が嘘のようです。

いつも1階玄関に飾ってある先生の写真に「母をお願いします」と心の中でつぶやいてから帰りました。

手術の前日は家族で病院の回りを散歩しました。

「これが最後になったら嫌だな」と切なかったことを思い出します。

大変だったけれども、今となっては良い思い出です。

 

最近は母と当時のことを「あれ、覚えてる?」と話しますが、

「え、そんなことあったの?」と記憶にないこともしばしばです。

「こんな失礼なことも言ってたんだよ」と教えてあげると「先生たちに悪いことしちゃったわね~」と苦笑いしています。

 

今の楽しみは数ヶ月に一度の外来に家族揃って先生たちに会いに行くことです。

最後になりますが、本当に本当にありがとうございました。

心から感謝しています。

平成22年9月26日

患者さんからのお便り・メールへもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

アジア弁膜症シンポジウムにて

Pocket

10月6日から10日まで第6回アジア弁膜症シンポジウム、正式名称 Mulu Rafflesia心臓弁膜症シンポジウムに参加しました。(申し訳ないのですが、学会の報告はどうしても医療者向けになり、ちょっと専門的ですので一般の方は各論的なところは読み流してください)

2年に一度、アジアのどこかの国で開かれるのですが、欧米からも有名な先生方が 今回はネパールで開催されました。素朴な良い国でした。 多数こられることと、ある程度の規模に抑えて交流を図ることをモットーにしているシンポジウムです。心臓外科領域では有名なロッキーマウンテン弁膜症シンポジウムのアジア版として、ロッキーマウンテンの指導者であるデュランCarlos Duran先生の御指導のもと10年あまり前に発足したものです。私は6年前から世話人としてお手伝いしています。

今回は心臓外科領域の最近の進歩や変化を反映したタイムリーなものになりました。高齢化社会で弁膜症は増える一方ですし、若者を襲うタイプの弁膜症も少なくありません。社会的ニーズの高まりもあってホットな領域になっています。

初日はまずウィーン大学の大御所であるウォルナー Ernst Wolner先生が大動脈弁手術の最先端を論じられました。医師にはおなじみのビルロード先生(胃切除術を開発された歴史的な外科医です)の後輩にあたる先生ですが、カテーテルをもちいた新しい治療(TAVI)を含めた最先端状況を展望・紹介されました。いつもの鋭い眼光は健在でした。

ついで人工弁の感染性心内膜炎(略称PVE)をどう治療するかという、いわば難病対策のセッションがあり、さまざまな工夫が論じられました。タイの畏友 Weerachai Nawarawong先生は危険因子として術後早期のPVE、心不全、ブドウ状球菌、複雑なPVEなどを挙げ注意を喚起しました。もともと心内膜炎で心臓手術を受けた患者さんは何年経ってもまた心内膜炎になりやすい傾向を指摘されました。いずれもうなづける内容でした。注意が必要です。

インドの内科医Al Shahid先生はPVEでも予防が大切であることを強調されました。PVEでは安易なオペも考えものですが、脳出血が起こってしまうと手遅れであることも示され、リスクをしっかりと踏まえた的確な治療が必要で、妥当なことと思われました。

レセプション夕食会では早速旧交を温め賑わいましたが、食事しながら創部感染の防止の講演もあり、羽目を外し切れない真面目な会となりました。ネパール料理はスパイスが効いて食べやすいと思いました。隣国インドの料理に近いですが、違うところもあり、それぞれのお国柄と思いました。

翌日午前中は Show & Tellというセッションでさまざまな手術の工夫や問題提議などがありました。

小切開手術に関する発表がいくつかあり、ハートポート型の体外循環をもちいた小切開手術や胸腔鏡ガイド下での手術の近況が報告されました。メルボルン仲間である Almeida先生はロボットをもちいた僧帽弁形成術の経験を紹介されました。ロボットには賛否両論があるのですが、それに適した患者さんを選び、あまり無理をせずに余裕のある手術をするならば安全性は高く、コストも短期的には割高ですが、入院期間や退院後の復帰の速さを考えるとコストダウン可能という考えを示されました。日本でロボットの事故があったばかりなので、参考になりました。

モンタナのMaxwellマックスウェル先生は2年前からの友人で、上記のデュラン先生の後継者でさまざまな取り組みをしておられますが、ロボットやハートポートのお話から、究極の低侵襲という意味ではTAVI(カテーテルによる大動脈弁置換術です)などのカテーテルを基本とした弁へと進むであろう方向性を示されました。といってもカテーテル弁の術後1年で30-40%というずいぶん高い死亡率が報告されているという欧米の新情報も議論され、大動脈弁置換術の領域でもまだまだ外科手術が患者さんを助ける時代は続くという印象もあわせ持ちました。

不肖、私・米田正始は機能性僧帽弁閉鎖不全症たとえば心筋梗塞のあとなどに起こる虚血性僧帽弁閉鎖不全症拡張型心筋症にともなう僧帽弁閉鎖不全症への新しい取り組みをお話しました。先人たちの優れた仕事の上に立脚し、EBM(証拠にもとづく医学医療)を考慮し、より安定した弁形成術への道のりをご紹介しました。新しい手術法はちかぢか発表予定であるため、規約により「さわり」だけお話しました。これまでの術式たとえば弁輪形成や乳頭筋接合術などでもそこそこ良いのですが、それらでは解決しきれない僧帽弁後尖のテント化(左室側へ引っ張られて弁が閉じない)を解決するための工夫とあって多数の御質問を戴きました。感謝。もし近いうちに皆さんのお役に立てればうれしいことです。

その他にもいくつかの工夫が発表されましたが、虚血性僧帽弁閉鎖不全症のために開発されたGeoformリングの使用経験やピオクタニン色素をもちいた僧帽弁のかみ合わせ深度の有用性、あるいは僧帽弁の後尖腱索の前尖への転位など、すでに知られたものが中心でしたが、完成度が高くなりつつあるという点で評価できると思われました。

再び私が複雑僧帽弁形成術の症例をいくつか提示し、これまでの弁逸脱だけでなく、弁のけん引や3次元的変化など、さまざまな状況に人工腱索は対応できることを示しました。ぜひ使ってみたいので詳しく教えてほしいという反応を戴き、光栄に思いました。

2日目の午後は大動脈弁僧帽弁手術での新たな選択肢が論じられました。中でもタイの畏友Taweesak Chotivatanapong先生の自己心膜をもちいた僧帽弁形成術はいつもどおりきれいな仕上がりでした。通常形成が難しいリウマチ性の僧帽弁膜症でも70%は形成可能というデータを示されました。できるだけ劣化や短縮を防ぐためにグルタルアルデヒドで処理して使い、ここまで6年の経験では上々の成績ということでした。
この方法は以前からあり、これまで必ずしも良好とは言えない成績が大動脈弁形成術僧帽弁形成術で報告されており、これまでとどう違うから良いのか、という議論をさらに煮詰めることで、より良いものができるのではないかと思いました。個人的には自己心膜をよく使うのですが、大動脈壁や弁の根本付近など、長期間に多少変化しても安全な部位で使うようにしています。短期的には良くても長期間それが持続するかどうか、そこが問題です。日本でも積極的に試みておられる先生が若干あり、これまでの歴史を打ち破れるか、その展開を期待しています。

午後の後半は弁膜症手術の際に同時に行う心房細動(AF)手術のセッションでした。
最初にマレーシアのDillon先生が全体像を展望されました。マーシャル靭帯を処理し、ラジオ波と冷凍凝固を併用した熱心な方法を紹介されました。それでも左房径が60mmを超えると除細動は難しく、心房壁切除により心房縮小をしていたが、出血の心配があるため、最近は縫縮しているとのことで、以前からそれを提唱している者として、仲間が増えてうれしく思いました。

ドイツのライプチヒ心臓センターや中国その他の施設からさまざまな工夫が発表されました。とくにライプチヒのHolzhey先生は慢性AFには心内膜からの冷凍凝固がベスト、発作性AFには双極ラジオ波が有効というデータを出されました。理にかなった内容と思いました。

韓国のChang先生は長年の研究の中から冷凍凝固がもっともすぐれた方法であることをデータをもって示されました。同先生の延世大学へは以前講演に呼んで頂いたこともあり、交流の中で同先生の心房細動治療がライフワークであることは存じていましたが、それが学生時代からの夢であったとは知りませんでした。明確な夢や目標を持つというのは素晴らしいことと思いました。

それらを受けて、私は高度に心房拡張した難症例でも心房縮小メイズ手術を行えば除細動は可能であることを示しました。5年以上前から発表しているのですが、こちらの経験数が増えるに従って説得力も増しているようで、今回はより多数の引き合いがありいくつかの国へ実地指導に行くことになってしまいました。
スロベニアのGersak先生は心膜内視鏡を開発し、孤立性AFにも外科手術が有効かつ低侵襲であることを示されました。カテーテルによるアブレーションつまり焼灼治療にまだまだ課題がある中で、今後の展開が楽しみな方法です。

3日目は交流の日ということで皆観光ツアーに出かけました。私は他の写真仲間と一緒に飛行機でエベレストやヒマラヤ山脈を観るツアーに早朝からでかけました。エベレスト山はやはり特別なものを感じる雄大さがあり、朝5時起きして行ったかいがありました。
午後9時過ぎには他の皆さんに合流し、一日カトマンズやその周辺の観光を楽しみました。BhaktapurとDurbar広場をゆっくり観光しましたが、ネパールはまだまだ経済的に恵まれず、庶民の暮らしも大変と思いました。ただそれが不幸であるかどうかは別問題ですが。またアジアの最近の傾向に違わず、交通渋滞が多く、結構大変でした。夜は街灯が少ないため真夜中のような雰囲気になりますが、それでも多数の人たちが街に出て暗闇の中をショッピングしている風景には力強ささえ感じました。

4日目はまたぞろしっかり勉強で私が司会を務める中、このシンポジウムの締めくくりセッションとして三尖弁手術を論じました。いかにして弁形成を貫徹するか、またやむなく弁置換になる場合どうするのが良いかなどを論じました。その中には私たちが近年力を入れて来た永久ペースメーカーケーブルによる三尖弁閉鎖不全症も含まれ、議論は盛り上がりました。せっかく開発した良い方法を皆さんに使って頂けるよう、なまくらせずに早く論文を出したく思いました。

その後でウェットラボがあり、今回は三尖弁の意外に知られない解剖や特徴、さまざまな弁輪形成法をブタの心臓で練習して戴きました。上記のMaxwell先生やAlmeida先生、フィリピンの大御所らにまじって私もいろいろお世話させて戴きましたが、聴く耳のある外科医が多く、教えがいのあるセッションでした。
締めくくりのパネルディスカッションではシンガポールのLeng先生の基調講演を受けて、今後心臓外科医あるいは心臓血管外科医はどういう姿を目指すべきか、またそのための教育・研修制度はどうあるべきかを熱く議論されました。冠動脈や大動脈、あるいは大動脈弁の比較的シンプルな構造の病気は今後はカテーテル類をもちいた低侵襲治療がさらに増えて行くのは確実です。大変良いことで、医学の歴史は外科が治療をまず開拓し、それを徐々に簡単な薬などの内科治療へと進化させていく、その繰り返しで発展して来ましたが、心臓血管病も同じです。
同時に狭心症や心筋梗塞に対する永い治療の果てに左室そのものがどうにもならなくなって左室形成や僧帽弁形成を行って患者さんがさらに永く元気に生きられる治療をしたり、補助循環で社会復帰を応援するなどの新たな役割が心臓外科医には増えているとも言えるでしょう。あるいは心臓外科経験のある医師がERやICU等で活躍しているケースも多数あり、それらも途のひとつかも知れません。

患者さんに良いものが残り、それが栄える、それで良いのではないかと思います。しかし同時にこれまでの歴史は良いものが生き残るとは限らない、さらに、生き残っているものがベストとは限らないという教訓も教えています。たとえばビデオテープにおけるVHSとベータの闘いはその一例と位置づけられています。やはり良いものは良いということを、社会に啓蒙することは必須かと思います。
さまざまな勉強やそのお手伝いができて楽しいシンポジウムでした。最後の打ち上げのパーティは悪乗りの連続でしたが、また友人・仲間が増えて次の楽しみへとつながるシンポジウムになりました。最後にお世話になった代表世話人のSaw先生に御礼申し上げます。

 

ブログのトップページへもどる

Heart_dRR

心臓手術のご相談はこちら

患者さんからのお便りはこちら

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り32: 心房細動の患者さん

Pocket

心房細動は世間一般に思われているよりも怖い病気です。

野球の長嶋さんやサッカーのオシムさんの例に見るまでもなく、

突然脳梗塞を起こしてその方の仕事や人生を壊したり、

かつての総理大臣小渕さんの時のように命を奪うことさえあります。

 

Ilm18_be07018-s
心房細動はときに脈を速くし、その状態が続くと心臓の筋肉が弱くなります。

普通は薬やカテーテル治療である程度以上治すなり調整できるのですが、

ときにアレルギーなどのためにそれらができないこともあります。

 

私のツイッター友達で、心筋症・心不全で打つ手なし、今後は自宅静養しかありません、

と主治医の先生に言われて、

希望のないつらい毎日を送っておられた方がおられました。

 

心境をふと漏らされたのがきっかけとなり、状態をお聞きするうちに、

これは治せるかも!と考えるようになりました。

いわゆる頻脈(脈拍が速すぎる状態)性心房細動による心筋症・心不全です。

 

これまでに何人か、頻脈性心房細動を手術で治すことで心機能が劇的に改善したケースを経験していますが、

これまでは弁膜症手術や心臓腫瘍など、客観的に手術が必要・妥当といえる状態でした。

この方の場合は心房細動のみ(孤立性心房細動 Lone AFと呼びます)の治療のため、手術には慎重にならざるを得なかったわけです。

 

その方の主治医の先生ともご相談し、検討を進めた結果、

このつらいこう着状態を Ilm10_df01002-s 打破し、

まだ50代でお若い患者さんのこれからの人生を切り開くのは手術しかない、

と考えるようになりました。

薬やカテーテル治療を何とかさらにトライする道はないか、

検討を重ねた結果の結論でした。

 

人間誰でも手術は嫌ですが、

患者さんはそれを押して、充実した人生を取り戻すために手術を希望されたのです。

茨城県という遠方から名古屋の私の外来まで足を運び、

その後も私がいろいろと検討し時間をかけていると、「先生はここまで覚悟を決めている私を治して下さらないのですか!」とお叱りを頂戴するほどでした。

 

手術のときは、長期間の心房細動とすでに心臓の力が相当弱っていたために、

心房細動自体もかなり治りにくい心配がありました。

そこでこれまで重症例・難治例で培った強化型メイズ手術(心房縮小メイズ手術)ノウハウを十分に駆使した手術を行いました。

巷ではやりの簡易型メイズ手術ではなく、

オリジナルのCox先生の完全メイズ手術をさらに強化した方法をつかいました。

治りにくい状態の心房細動とはいえ、

引き受けたからには何としても治さねばならないという緊張感の中での手術でした。

 

結果は上々で、手術によって心房細動はきれいに取れ、正常リズムが戻りました。

心機能も手術前は健康人の3分の1近くまで落ちていましたが、

術後1週間ほどですでに健康人レベルにまで回復しておられました。

 

医者を一番動かすもの、それは患者さんからの信頼であり、

また患者さんとの人間関係、お互いに好きになる・友達になるという、自然で基本的なことと思います。

 

以下はその患者さんからのお便りです。「ひきこもり生活」というお言葉に、当時のつらかった状態がよくわかる気がします。

(2010.10.記)

 

******* お便り *******

 

米田先生、北村先生、深谷先生、小山先生

入院中は大変お世話になりました。

おかげさまで退院直後にもかかわらず お便り32の実物写真

どのぐらい動けるかと市内をうろうろと散策することができましたし(心拍数80)、

また昼食にでもと名古屋名物のきしめんを探していたところ、「なだ万」を見つけ、「秋だ!!」と・・・とびこみうまい昼食をとることが出来ました。

これもひとえに米田先生をはじめとする先生方、スタッフの皆様のおかげです。

ありがとうございました。

退院一日目ですが、すごくすっきりと朝を迎えることができ名古屋とは違い寒い朝でしたが

楽に起きることができ、ついこの間までのひきこもり生活から早く体力もつけ良くな
り病気から卒業をするようがんばりたいと思います。

今後とも宜しく御願い致します。

 

******* ツイッターでのつぶやき集 *******

今日の心境 株価は最悪、パソコンが固まりさらに最悪、売り損ねた。ただし悪
いことの後にはいい事があの名医のスーパードクターである米田先生がフォロワ
ーさんになってくれた、もしかすると診察してもらえるかもしれない。ワクワク
と不安が交差する???
6月7日

いよいよすばらしいお医者さんが見つかり今月名古屋の病院へ検査にいきます。
予約入れたし後は二週間待つだけ、期待でワクワクでも結果しだいでは期待が大
きいだけにガッカリとなる。うーんむずかしい!
6月9日

名古屋行きのチケットを指定券ともに購入しました。後二週間です。駅の階段が
退院後初めて登ったんだけどきつかったですこんな体で治るのかな?
6月10日

@mikio_sugiyama 情報ありがとうございます。今回は元京都大学教授の米田先生
です。今は名古屋にいらっしゃるみたいですので検査など予約をいれました。今
週はアメリカということで来週になりましたが患者側の立場にたって予約を受け
ていただけます。
6月14日

名古屋からついさきほど帰ってきました。バンザイ バンザーイ 天にも上る気
持ちです。天は私を見放してはいなかった。心臓が手術でなおるとのことです、
米田先生ありがとうございます。薬を試してみてから腹を決めます。ツィツター
最高!!
6月27日

@kurusukotomi まだ日取り決まらないけど、手術することにした。
7月5日

余命二年といわれてはやくも一年半です。早いね? このことは今朝妻から聞き
ました。退院するときに主治医にいわれたと・・・その前はもっと短かかったの
で、危ないといわれて家族が呼ばれたりしていたので私はさほど死を意識してい
ないのです。手術でなおるといわれたし、後は米田先生しだい。
7月6日

@kurusukotomi  ありがとう、手術は最悪は死のみこれ以上はなーい。まだ医者
から連絡なし明日でも電話する予定。寿命だからね生も死もね。おやすみ
7月6日

@kurusukotomi  はーい こんばんわ ようやく連絡とれたけど今の主治医に依
頼書もらってからなので手術は九月以降になると思うしさらに依頼書もらえない
ともっとおそくなるかもね。めんどうだね!! 爆発しそう。おやすみ
7月9日

@rumirumi1008 ありがとう感謝いたします。先日名古屋まで行き循環器血管外科
の先生に診察を受けましたところ手術でなおるとの力強い言葉をいただきました
ので循環器内科の先生とは天と地の差です。秋には手術するつもりです。
7月13日

八月二日か 後六日だ。依頼状をもらえることができると手術が早くなりもらえ
ないと遅くなる。さてとどうなることやら、日赤の大口医師しだい。徐々に緊張
が高まるがあさってに下の娘と孫が帰ってくる、リラックスして交渉したい。
7月27日

あーあ 健康になるという夢がだめになるかも手術が・・・・・・
8月3日

神は孫にはみかたしたみたいだ、日差しが夏モードに。神よ私にもみかたして。
8月5日

米田先生ありがとうございます。 とりあえず私にも神さまはほほえんだ。
8月5日

医者より帰還、さてと名古屋に郵送でもしますか。手術は依頼状の内容しだいだ

そうですが六月にお会いしたとき手術を勧めたのは先生ですよね。
8月6日

いやだねー 頭の中は手術のことばかりだ、早く切って治してくれーと叫びたい
。わぁー
8月6日

なんだか最近は疲れますね。何もしない、できないからそして待っているからか
な。
9月5日

@CVsurgeonKomeda おはようございます。三週間たちましたが、私はどうしたら
いいんでしょうか?
9月5日

今日はもしかすると記念すべき日になるかも、ようやく待ちに待っていた医師か
らの連絡がありました。別に手術日が決まったわけではないのですが、ようやく
と私の考えなどに理解を示していただきました。先生ありがとう、神様がいるの
ならありがとう、みんなありがとう。
9月8日

手術日が決まりました、他の患者さんの都合により空いた日があり早く手術をう
けることが可能になりました。ばんざーいバンザーイ 運が向いてきたのかな。
9月9日

今週中に入院予定、手術は来週予定です。いままでみなさんありがとう。ツイッ
ターの目的達成です。すばらしい医師がフォロワーについていただきましたので
来月にはまたツイッターに復帰かな?
9月12日

昨日退院しました。みなさーん生きていますよ。またまた宜しくでーす。
10月2日

退院したばかりでやることがいっぱいです。私が手術で救われたのはなんとツィ
ツターのおかげなんですよ、フォロワーさんの一人です。ツィツターを始めたの
もアレルギーがあり造影剤がつかえないためカテーテルができず、何か方法はな
いかと・・・でした。それが運よく先生にまでたどりつきました。
10月3日

私はフォロワーさんが2000名こえたころに健康を手にすることができました
。よく10000名越えている方々が世界が変わると話していますよね、除いて
見たくなりました。
10月4日

@sl_lama ありがとうございます。二年間の引きこもり生活から解放されます。
10月4日

体への不甲斐なさからかなり苛立つのがひどかったんだけど、治まってきたみた
いだね。げんきんなもんだ!!
10月5日

心臓の手術は胸骨正中切開という方法なので三日間は動けないらしいことをネッ
トにて調べておりましたがその三日目に個室にもどりました。麻酔がきれてから
直ぐに水飲ませてもらいましたし二日目の重症個室にも車椅子から降りて歩いて
いきました。九日目には退院しました。
10月5日

@yubeshikun ありがとうございます。ひきこもり生活から飛び立てます。
10月5日

秋晴れ いいね 骨がつながっていれば遊びに最高
10月7日

土曜日朝より心拍数が160にて体調不良、日曜日に名古屋にいって来ました。土
曜日に予約いれておきましたので直ぐに診察処置と早い早い、点滴にて心拍数が
おさまらないので電気ショツクAEDついに戻りました。その日に家へ帰ってこれ
ました。深谷先生ありがとうございます。
10月11日

散歩行こうかなと思うが今日は家内に止められています。迷っているうちに寒そ
うなので中止。
10月12日

夜中にトイレばかりで体がだるい。早く良くなれ我体!!
10月15日

熱ぽいのでおやすみ
10月15日

なんかね体調がよくないと色々見えてくる。
10月17日

昨日は熱が一日さがらずさらにめまいがしていたので寝ていました。今日は今の
ところめまいも熱もなし。家内がいうように元気になるのはいつのことやら? 猪
木のように元気があれば・・・早くなおりたい。
10月18日

今日は寒い ブルブルブル。散歩は無理かな? 昨日は調子よく歩けたのに今風
邪ひいたら胸骨の針金切れてしまう。やめようかな?
10月20日

名古屋からちょつと足を延ばせば伊勢神宮に行けるのに・・・・ざんねん。早く
胸骨つながってくれー!! 名古屋は来週です。名古屋の方々、手羽先は山ちゃん
と風来坊どっちがおいしいの?
10月21日

心臓への負荷、来週名古屋にいくので一週間で30㌔ほど歩いてみる予定。
10月22日

いゃー外は寒いね、本日一回目の散歩終了。心拍数最大102 午後二回目の散歩
を予定。
10月22日

昨日も熱が出た、10月に入ってから毎週。とほほほ
10月24日

今日の散歩は寒かった、午後の散歩は特に! ただ足取りはいずれも軽やかに歩
けたので良い方向にはいっている・・・後は土、日の熱が上がらなければ? 金
曜日が名古屋行きなのでさてどうなるか? 楽しみと不安が交差する。
10月27日

今日は名古屋で検査、朝早く5時から起きて、木枯らしふくなか6時すぎの新幹
線で行ってきました。帰りに娘と孫に合流し帰りは7時ごろでした。結果はよか
ったけど疲れたー体力不足でさらに貧血気味だからかな? おゆすみ
10月29日

胸の傷って天気予報できないみたいだ。いままでの傷跡は三年ぐらい天気予報で
きたけど・・・それでかな、ほとんど痛くない。ワーファリンもリブバンドも来
月飲まない、使用せずとなる。
10月30日

いい天気だ、さぁーリハビリ、リハビリ。
11月3日

今日は足首が一週間前よりかゆくなったので皮膚科まで、帰りは暖かったのでリ
ハビリに歩いて家まで(4.5㌔)一時間ほどかかりました、まだまだ牛の歩みで
す。
11月6日

今日の散歩は19分で2㌔そして消費カロリーは136カロリーでした。
11月7日

今日もいい天気ですね、孫が今日帰りますが胸骨切開のため孫を抱きかかえるこ
とができません。寂しいですね、家内は思い切り孫を抱きしめられることができ
るのですから・・・後一ヵ月半で抱きしめられるのですが孫は春まで家に来ない
のですから半年後になりそうです。
11月8日

おはよう 風もなく暖かくなり今日はリハビリ日和。午後は医者、ようやくワー
ファリンとお別れとなる長かったキレのよい薬ありがとう。
11月10日

バイバイ ワーファリン 納豆食べましたよ。やはりうまい!
11月11日

毎日4~6キロ歩いている、体の調子はいいが順調すぎて不安。
11月12日

あーぁ鼻風邪ひいてしまった、くしゃみすると傷がずきんと痛い。今日は一日リ
ハビリを休み体の調子を整えるもまだ今市だ(現日光市)。くしゃん ズキン 寝
るか、おやすみ
11月13日

午後の散歩は雨が降る前に4㌔歩けるかだな、早めに出発しよう。体を動かせる
ってすばらしい。このペースでいけば来春はトレッキングに山にいけそう、高尾
山にいってみたい。
11月15日

散歩コースを退院後設定し歩いていますが10月初めにに20分かかっていたと
ころがついに16分と短縮しました。何せ今はこれしかすることがない私ですか
ら時間と勝負しています。4キロコースは今のところ40分でのんびりと歩いて
います。一日に6キロ前後、これが今の私の全。
11月16日

からっとした天気、気分が最高でリハビリ日和。
11月18日

今朝ほどから家内に散歩つれていってもらえなかったマリンが鳴いているので、
胸骨がまだついていない私がやむを得ず二ヶ月ぶりに散歩です。犬の散歩はまだ
一ヶ月先の許可後になります。
11月26日

今日は日赤で検査しましたところ、すこぶる順調で血液検査も25項目ぐらいで
2箇所だけちょっと引っかかったのみ。このままこのままとのこと明日からまた
6キロあんよアンヨします。
12月8日

いい天気だリハビリ日和、歩け歩け。後一週間ほどで骨がつく、長い三ヶ月だっ
た。しかし循環器内科の医師はゴルフはさらに三ヵ月後とのことでここまできたら
焦らず、ガマンガマン。
12月18日

検査結果はOKでしたが、良性の不整脈がちらりとそれで以前飲んでいた薬を一日
一回だけ飲むようにとの指示でさっそく薬局にとりにいきました。歩き過ぎたの
かな?ちよっと気がかりですが退院時に半年か長くって一、二年がそろそろ二年
になりますしね、本来ならそろそろ仏さんになっていたころです。
12月24日

今年始めての温泉、まほろばの湯へ10時ころから一時間ほどはいってきました
。帰りに那須神社の金丸八幡宮により初詣。人がいっばいで参拝時に並んで待つ
状態でこの神社では初めてのことです。皆今年に期待しているんですね、政府に
しっかりしてもらいましょう!
1月1日

雨上がりの朝で空気がきれい、そしてまたまた今日も晴れ。昨日はまほろばの湯
につかり夜は雨でぐっすりと就寝、一歩づつ普段の生活を取り戻し中。
2月7日

米田先生 お久しぶりです。体の方はすこぶる調子が良いです今日も6キロほど
歩いてきましたが心拍数も安定(80前後)していました。これもひとえに先生お
蔭です、ありがとうございます。HPの件ですが皆さんの励みになるのであれば掲
載していただいてかまいません。今後とも宜しくお願致します。
19分前 2月8日

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ

患者さんからのお便りのページにもどる

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り31 大動脈弁形成術の患者さん

Pocket

若い患者さんでも弁膜症は少なからずあります。

大動脈弁の内容が2枚(通常は3枚)になる状態を二尖弁と呼びます。

それ自体は病気とは限らないのですが、

弁が壊れやすく、手術が必要になることがよくあります。

 

Ilm10_de02004-s この二尖弁という状態は生まれたときからのものですので、

10代や20代という若い時期に手術が必要になることもあります。 

その場合、人工弁による弁置換が世間一般では多いのですが、

この若さでは生体弁はあまり長持ちせず、機械弁が多いです。

しかしそのために何十年もワーファリン(血栓予防薬)を飲み続ける必要があり、

男性患者さんでは格闘技のような激しいスポーツや多忙な仕事に支障がでたり、

女性患者さんでは妊娠出産が難しくなります。

そこで弁形成術の意義が大きくなります。

 

しかし大動脈弁形成術は難しく、

それをこなしている病院は少ないのが現状です。

 

またそのため内科・循環器内科の先生でさえ、弁置換のみを考えてご説明されるケースが多いようです。

そのために弁形成の時期を逸することがあるのは残念です。

 

以下はハートセンターにて大動脈弁形成術を受けられた20歳代の患者さんの奥様からのお手紙です。

大動脈弁形成術は無理という誤解・雑音に迷ったあと、勇気を出して、私の外来に来られました。


お役にたてて本当にうれしく思いました。

**********患者さんの奥様からのお便り*******

先日大動脈弁の手術でお世話になった、**の妻の**です。

米田先生には本当にお世話になりありがとうございました。

 

お便り31実物 結婚して2年になりますが結婚直前に大動脈弁閉鎖不全症重度と診断されて、

いつか手術をしなければならないと聞いたときには不安がいっぱいで気が遠くなる思いでした。

それからいろんな病院で検査をしてきましたがさまざまな見解があり、

いつ手術をすべきなのか一向に判りませんでした。

そんな時にインターネットでハートセンターを知り一度診てもらおうと思ったのです。


米田先生に診てもらい夫婦一緒に今後の話をして頂いた時の米田先生のすごく自信に溢れている「形成術で手術しましょう!!大丈夫です!!」の言葉がずっと抱えていた不安を吹き飛ばすかのようにすっごく安心感がありました。

結果的にも手術は大成功をして、米田先生にお願いして本当によかったなと思いました。

入院生活はとてもきれいな病院でほかの先生がたもすごく親身に接して頂きましたし看護師のかたもすっごく明るく元気な方たちばかりで快適な入院生活がおくれたと聞いています。

私も毎日仕事帰りにお見舞いに行く際に遅い時間の面会にも嫌な顔をひとつせずいろいろ教えてくださったりで看護師さんとお話しするのも楽しかったです。

 

形成術がもしかしたら駄目だったかもしれないところを形成術でしていただいたこと、

本当に米田先生にお願いしてよかったと思います。感謝しております。

 

また、通院の際は米田先生は忙しいと思いますのでなかなかお目にかかる機会は少ないと思いますが遠くでちょっとでも気にかけてくださいね☆

(米田註:私は自分が手術した患者さんの悩みや質問には必ずお答えするようにしています。ご心配あればメール、手紙、外来、お電話、その他の方法でいつでもどうぞ。)


患者さんからのお便り・メールへもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

【第二十二号】 日記ブログに新記事

Pocket

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【第二十二号】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

急に秋らしくなりましたが、皆さん風邪などひいておられないでしょうか

最近ブログに2つの記事をUpいたしました

ひとつはかつて京大病院で行っていた再生医療の臨床試験が再開になったこと

への雑感と、いまひとつは最近新聞を賑わせたロボット手術の事故についてで

す。

再生医療のほうはすでに何名かの患者さんにお役に立っていたものが3年前に

私が京大を去ってからは中断になっていたものです。その良さがようやく本格

的に認められ、京大探索医療センターの目玉プロジェクトになりました。

ロボット手術は10年あまり前に導入めざしてさまざまな検討や練習を行ってい

たのですが、結局美容上のメリット以外は少なく、しかも手術内容が割引にな

るという判断で様子を見ていました。

これらに対しての雑感を述べました。心臓だけでなく体のどこかにご病気をお

持ちの方、周囲にそうした方をお持ちの方には参考になるかも知れません。

平成22年9月26日

米田正始 拝

追伸:第8回患者さんの会(11月7日午後1時から、祇園ホテル)の御案内を再

掲します

ご連絡は以下へお願いします

患者さんの会の連絡先 米田心臓外科オフィス 秘書 中村由佳
TEL:080-6105-8231(直通)
FAX:075-712-8835
Eメール:nakamura@heart-center.or.jp です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright (c) 2009 心臓血管情報WEB
http://www.masashikomeda.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。