正しく知る糖質制限食 ――医学書として通用する初めてのダイエット本

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これまで糖質制限食(別名ローカーボダイエット)の本は多数出版されて来ました。

 

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心臓手術のあと体調が良すぎて?メタボになる患者さんがおられるため、科学的ダイエットに関心を持つようになりました

いずれも持ち味があり、ひとりの読者として勉強させて戴き感謝しています。

5年ほど前に春日井の開業医、灰本元先生と親しくなってから私もこの糖質制限食に強い関心をもつようになり、勉強を始めました。

というのは心臓病の患者さんは心臓手術のあと、心不全が取れて元気になられ、食欲も出て次第に太り、メタボになる方が少なくないため、単に心臓手術しただけでは患者さんたちのお役に十分は立てていないのではないかと考えていたからです。

しかし勉強会・研究会を灰本先生をはじめとした内科医、その他医師、薬剤師、管理栄養士、看護師、研究者などの方々とやっているうちに、糖質制限食にも限界や弱点があることを次第に知るようになりました。

なかでもハーバード大学のチームが10万人の被験者を10年間フォローして成し遂げた空前絶後の臨床研究で、やりすぎの糖質制限食は寿命を縮めることを示された論文はショックでした。

さらにWHOなどの研究でも、BMIが23前後の、やや小太りの方の寿命がもっとも長いこと、つまり痩せすぎるとかえって短命になることや、糖尿病のコントロールもHbA1cで7.5が一番長生きと言う研究も同じ意味で衝撃的でした。

そこから学んだことは炭水化物は摂り過ぎてもダメだが、不足しても有害であるということです。

よくよく考えてみれば、炭水化物は糖質+ファイバー(繊維分)であり、からだにきわめて重要なファイバーの宝庫であることや、炭水化物イコール植物性であり、人間の体にとって基本的に重要で安全な側面をもつことから、炭水化物を悪とするのは不適切と考えるようになりました。

ある意味、糖質制限食の素晴らしさを学ぶ中から、炭水化物の大切さも知ってしまったと言えましょう。

こうした経緯の中から、世の中の糖質制限食をより科学的に、より安全なものにしそれを全国に発信することで、これまでの糖質制限食の先駆者のお仕事がより生きることになるだろうと教科書を創ることになりました。NPO法人日本ローカーボ食研究会の皆さんがちからを合わせて執筆完成したのが本書です。

Cover4-2内容はつぎのとおりです。

序章 糖質制限食(ローカーボ)の背景にあること

第1章 まず糖質制限食(ローカーボ)を理解しよう

第2章 糖尿病をコントロールするために


第3章 糖質制限食(ローカーボ)と肥満、脂質異常症


第4章 病状に応じて糖質制限食(ローカーボ)を使い分ける


第5章 糖質制限食(ローカーボ)の実施と表で覚える糖質量


第6章 糖質制限食(ローカーボ)の課題と展望


補遺 生命進化から見た糖質代謝の意義とポイント


巻末付録 食品別・献立別の糖質量/糖質を多く含む注意すべき食品


この本の末尾に引用科学文献が多数掲載されています。いかに科学データにもとづいてこの本が書かれたかを知って頂ければ幸いです。上記のハーバード大学での偉大な研究論文も含まれますし、灰本先生の日本発データの論文もあります。

科学的・医学的であること、これが本書の最大の特長なのです。

医師が執筆した第1-4章、第6章はメタボ関係の生活習慣病を治すという観点から書かれた力作ですが、管理栄養士が執筆した第5章はおかずという視点から親しみやすく、実用的な内容になっています。執筆された医師はみな経験豊富な臨床医で、しかも学術論文も十分に勉強されている熱心な方々ぞろいです。あえて申し上げればこの中では私が一番不勉強でしょうか!

巻末付録の糖質量のリストは意外なほど役にたちます。たとえばサーロインステーキがほとんど糖質を含まないこと、つまりうまく食べればほとんど太らないことや、同じ牛肉でも牛丼はサーロインステーキの100倍も糖質を含んでおり、太りたいひとにはぴったりの食べ物であることなどもわかります。

読者がご自身のお好きなメニューが太りやすいものかそうでないかを見極めるのに役立つことでしょう。

お酒の飲み方、どんなお酒がダイエットに良くどんな銘柄が悪いかというユニークな解説もあります。また生命進化という学問的な視点から考えた極めてアカデミックなコーナーもあります。

蛇足ですが私が執筆させて戴いたコラムは、糖質制限食を心臓手術に活用することで、これまで手術できないと言われていた患者さんでもできるようになった事例をいくつかご紹介しています。つまり医療のなかで、これまでになかった治療法としてダイエットをとらえているつもりです。

製薬会社の方々のなかにはこのダイエットによって薬の売り上げが減ることを心配しておられる方も多いようですが、正しいダイエットによって患者さんが健康を回復し長生きされれば、ご高齢者のことですから長期間の間には別の観点から薬が必要となることもあり、結局患者さんがハッピーに楽しく永く暮らせることが製薬会社にとってもメリットがあるのです。物事は長期的に見て頂きたく思います。

この書が日本の正しく健全な糖質制限食の発展に役立ち、ひいては心臓病を含めた生活習慣病の安全確実な克服に結びつくことを信じてこのご紹介文を閉じたく思います。

 

平成25年11月

高の原中央病院かんさいハートセンター

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り99: 虚血性心筋症術後7年、新たな心臓病を乗り切る

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虚血性心筋症は心筋梗塞のあとで、梗塞をまぬがれた心臓部分が次第に大きく弱くなる病気です。

時間とともに重症化し、長くは生きられない状態となります。

しばしば虚血性僧帽弁閉鎖不全症を合併し、いっそう寿命を短くしてしまいます。

私たちはこの20年以上、虚血性心筋症や虚IMG_5510b血性僧帽弁閉鎖不全症の手術に取り組んで参りました。年々その成果が上がるようになり、この数年間は死亡率もかなりゼロに近づきました。

さてこのお便りの患者さんは7年前、米田正始がまだ京大病院で仕事をしていたころに、虚血性心筋症のため手術させて戴いた方です。遠く長野県から来て下さいました。手術前、心臓とくに左室のパワーは正常の3分の1以下に落ち込んでいました。

当時はまだ珍しい手術であったセーブ手術と septal reshapingと呼ばれる心室中隔の形成術を含めた左室形成術、さらに僧帽弁形成術やメイズ手術そして冠動脈バイパス手術をセットで行いました。すべて心臓を動かしたまま行いました。

大きな手術でしたが患者さんはよく頑張って下さり、お元気に退院されました。この手術は学会などでも発表し評価を頂きました。

その後患者さんはお元気に暮らしておられましたが、あれから7年が経ち、大動脈弁が新たに壊れ大動脈弁閉鎖不全症となって心臓に負荷がかかって左室がまた拡張し、僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症を合併し、心不全になって来院されました。

心の絆のおかげでしょうか、名古屋で仕事をしていた私をたずねてきて下さいました。

すでに80歳近いご年齢で消耗されやせ細っておられる、2度目の手術、それも3つの弁がやられている、もともと大きな心筋梗塞のあとで心臓のパワーが落ちているうえに、最近のあらたな大動脈弁閉鎖不全症のためいちだんと心臓が弱っている、といった厳しい状況でした。

患者さんは死んでも良いから生きるチャンスを下さいと、私を信頼してきて下さったのです。

私はその信頼に是非応えたく、この7年間に培ったノウハウを結集した心臓手術を行いました。

体への負担を最小限にするため、大動脈弁手術の負担だけで大動脈弁と僧帽弁の両方を治しました。通常は僧帽弁形成術では左房を開けるのですが、左房はそのままに、大動脈弁経由で乳頭筋を手直しし(私たちが開発した新しい手術です)、そのまま大動脈弁を置換して短時間で、最小限の剥離で一気に直しました。あと心臓が拍動した状態で三尖弁を修復し、その間に心臓を回復させてうまく行きました。

7年前はICU(集中治療室)を出るまで7日もかかりましたが、今回は僅か1日で退室できました。

この7年間の努力の成果が功を奏し、まもなくお元気に退院して行かれました。いのちを預けてくれた患者さんの期待に沿えてこんなにうれしく思ったことはありません。

以下のお手紙はその患者さんと、ご家族の皆さんからのものです。

 

********* 患者さんからのお便り ********

前略 

暑かった夏も去り、ようやく住み良い季節となりました。早速御礼状を差し上げるべきところなのに、すっかり遅れてしまい申し訳ありませんでした。

この度は、先生には、二度にもわたり、命を救って頂きまして御礼の申し上げようもない程、心より感謝致しております。本当にありがとうございました。いつの日かお会いする日を楽しみです。

 名古屋ハートセンターに在職中に、運良く手術をして頂けたことを、家族も含め、ラッキーだったと喜んでおります。

九月二日、無事に退院でき、その後、長野**病院の心臓センターの**先生にかかり、一週間検査入院もし、リハビリに通ったりし、今のところ、お陰さまで、何とか日常生活を送っております。

先生に助けて頂いた命なので、今後は大事にして余生を送りたいと考えております。今後ともよろしくお願い致します。

先生のますますの御活躍を祈っております。御礼まで。

米田正始先生

****

********* ご家族からのお便り **********

前略

先生には、ますます心臓病で苦しんでおられる人達のため命を救う、尊い使命に頑張る日々をお過ごしの事と尊敬申しあげております。

先日は、奈良の病院へ勤務された先生からわざわざごていねいな便りを頂きまして、本当に恐縮致しております。ありがとうございました。早速に御礼状をと思いながら、今頃になってしまいましたことを、お詫び致します。

名古屋ハートセンター退院後、長野**病院に診察に行き、退院後はリハビリに通ったり、家から歩いて十五分位なので、二週間に一度の約束で診察に行くことになりました。

何とか認知症の方もあまり進むこともなくて、今のところ一安心致しております。

唯こちら信州は、朝夕の温度が低く、寒くなって、体温と血圧が低いので、これからの厳しい冬を迎えるので心配ですが・・・ 

十月一日に名古屋ハートセンターへ、術後に診察に行き、問題ないと言って頂きました。 米田先生にお目にかかって、御礼を一言申し上げたく楽しみにしておりましたが、退院の時もお会い出来なかったので、主人は大変残念がっておりました。
 

次回の診察日は、二月初め頃と言われましたが、本人は、元気な姿を先生に、御礼申し上げたいので、奈良まで行きたいと楽しみにしております。それをはげみに、元気で生きていたいと、リハビリも頑張っております。体重も二キロほど増え、食欲はあまりありませんが、あわてずに療養していくと申しております。私も頑張ります。

 
「先生にお逢い出来て良かった!!生きていてよかったなァ」そんな感謝の心で、今回が無駄にならないよう、この命を大切にして生活すると、私も主人も、心に決めております。

先日信州そばを持っていきましたが、逢えず残念、信濃で名づけた「信濃スイート」の、りんごの収穫が始まりましたので、一つだけ、近々送ります。ほんの御礼の心ばかりですので、受けて下さい。お願い致します。

ありがとうございました。乱筆にて失礼。

平成二十五年 十月 十三日 
**妻** 子供たち一同

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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第三回伊賀塾

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この11月3-4日に三重県伊賀市で開催された第三回伊賀塾に参加して参りました。

伊賀塾写真この会は医療や医学の在り方を医師や看護師など医療者、市民、研究者、行政、企業などの多彩な顔ぶれで徹底して論じ学ぶ場として昨年からスタートしたものと聞いています。

心臓外科の大先輩であり、これまで雑誌の編集や学会などでいつもお世話になった小柳仁先生(東京女子医大名誉教授)が塾長を務められる会です。

すでに第三回目を数えます。私はこれまで他の用事のため参加したくてもできなかったのですが、今回ようやくスケジュール合わせができて、初めて参加できました。

参加してみてまず思ったことは、これまで自分が参加して来た学会や研究会とは違う、より包括的、人間的、哲学的な流れがあり、大変勉強になるということです。医学医療にも人生経験にも役立つと言えましょう。

そしてその授業が崇廣堂という、江戸時代の藤堂藩の由緒ある藩校で行われたことも特筆すべきと思います。300年の歴史がある建物で、昔と変わらぬ情熱で勉強していること自体が新鮮と感じました。

一日目には、まずカルビー株式会社社長の松本晃先生がNPO法人・日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会の代表として「日本から外科医がいなくなる日」をテーマに講演されました。

IMG_1991bもと医療産業で豊かな経験をお持ちの松本先生ですので、深い洞察を感じるお話しでした。私、米田正始もご指名にて発言をさせて頂きました。外科をやりたいという若者はまだまだ多数いるが、日本独自の構造的問題のためにそれが阻まれていることをコメントしました。医療そのものの改革が必要と思うのですが、同時に外科の保険点数を上げるだけでも有効とお伝えしました。

大阪大学名誉教授の川島康生先生が締めのコメントをされました。新入の学生に対して、お金や楽しい生活を求める学生を大阪大学は求めてはいないことを毎年話するということで、わたしはこれぞ大学人とくに医学部魂の真髄と膝を叩きました。

ついで京都大学名誉教授の光山正雄先生が「医学研究と医療はこれからの医にどうかかわれるのか」という大きなテーマでお話しをされました。

光山先生はかつて京大にて大変お世話になった先生で、昔と変わらぬ聴く耳をもった深い洞察にもとづくお話しで感嘆しました。研究の重要性には疑いないと確信するのですが、臨床に直結しないケースもあり、それは研究も臨床もコラボレーションもそれぞれ積極的に進めながら良い形を追求すればよいと思っています。総花的ですが研究者の思いと臨床家の思いにはギャップがあり、そのギャップを埋める楽しい場を造りながら待つというのも着実で良いと思います。

畏友津久井宏行先生(東京女子医大心臓外科)が指定討論をされました。補助循環がここまで来たこと、それに研究が大きな貢献をなしたことなど、あらためて心に響く内容がありました。

ブレークのあと、聖路加看護大学学長の井部俊子先生が「看護師たちの慢性的な疲弊ー夜勤・交代制勤務の改革」についてお話しされました。

この問題は看護師さんだけでなく医療を守るための重要なもので、今後身体に無理のないシステムを早く構築すべきと痛感しました。たとえば準夜勤なら1か月間準夜勤すれば体調もなじみやすいと昔から提案して来たのですが、こうしたことがようやく真面目に議論されるようになったのは大慶です。 井部先生は論客ですが、独特のユーモア、ときにひとをドキッとさせるブラックユーモアが出て興味深く勉強させて戴きました。

国立病院機構大阪医療センターの渡津千代子先生が指定討論されました。私は若手医師の教育に比べてナースの教育は難しいことをコメントさせて戴きました。というのは、若手医師には頑張って実力をつければそれを発表する場もあり将来がいくらでも拓けるチャンスがある、いわば高校球児に「目指せ甲子園!」という明快な目標を示して楽しい汗を流せるのと同様の仕組みがいちおうある。しかしナースにはその甲子園というほどのものがない、何とかそうした楽しい仕組みができませんか、と投げかけました。市立奈良病院の看護部長さんがお答えくださり、専門ナース、認定ナースの制度ができつつあり、雰囲気が変わって来ましたとのことで、うれしいことです。私たちなりにそうした空気を盛り上げたく思いました。

最後に塾長の小柳仁先生が「グローバルスタンダードから40年遅れた日本の臓器移植ーここから何を学び、患者をどう守るのかー」というお話をされました。

小柳先生の移植へのご貢献は存じていましたが、これほど熱い情熱をもって取り組んでおられたことを知り、感嘆これ久しくしました。とくに患者さんへの愛情を素晴らしく思いました。さらに小柳先生は人と心の交流をもつための「言葉」、普通のコミュニケーションを超えるものを大切にしておられることを実感しました。さっそく戴いてこれから身に付けたく思いました。

指定討論は市立札幌病院救命救急センターの鹿野恒先生がされました。これほどこころのこもったケアを脳死の患者さんに対してできるのかと私は感動いたしました。さらに脳死云々だけでなく、脳死を防ぐ、つまり救命で立派な成績を出しておられるのには再度感心しました。

その夜のナイトセッションでは皆賑やかに飲んで食べて語り合えたこと、楽しいひと時でした。伊賀忍者と甲賀忍者はもともと親しい関係で、その後ライバル関係になったのは伊賀が徳川方に、甲賀は豊臣方についたからというお話しは忍者に興味のある私には面白いものでした。手裏剣はこれまで6連発ほどで投げるものと勘違いしていましたが、実際には毒を塗って一発必中で至近距離で投げるそうです。

その夜はサイエンスBarという面白そうなセッションがあったのですが、日本シリーズ第7戦の真っ最中のため、私は失礼してテレビの前におりました。

2日目も貴重なお話しが続きました。

IMG_1989b名古屋大学の杉浦伸一先生は「尊敬されるが、必ずしも好かれるとは限らない壁」という、痛いところを突いたお話しをされました。無意識の敵をできるだけ造らないというお考えにはうなづけるものがありました。また安定を求めるリーダーには、理解できないことを一緒にする勇気がないというのも、実例を思いだしなるほどと感心しました。こういう人たちがこの国の活力を下げているとあらためて思いました。ともあれいろいろ参考になるお話しで、尊敬されなくても良いから、好かれるようにしてみようと思いました。

ノンフィクション作家の後藤正治先生は奇蹟の画家をめぐってというテーマで石井一男さんのお話しをされました。情熱大陸で放映されたこの画家の絵を皆さんがどう感じておられるかを調べてその核心に迫られたものです。たしかに石井さんの絵を見ていると、なぜか心惹かれるものがあり、そこに温かさのような安心感のようなものを感じます。石井さんの生活態度は煩悩を離脱した、高い精神の世界と思いました。さっそくこの本を注文しました。

この伊賀塾が開催された崇廣堂ではトイレが少なく、コーヒーブレイク時には隣の小学校のトイレまで行くという、なかなか昔風の状態があり、それがこの歴史的建造物の中で勉強しているという喜びをより強く持たせてくれるものがありました。夏には講堂に氷柱をおいて皆汗を流しながら勉強するというお話しもどこか新鮮で、そこから何を感じ取れるか少々興味があるところです。

伊賀市上野総合市民病院の三木誓雄先生は怒るということ、怒らないということというテーマでお話しをされました。叱るが怒らないというのはレベルの高い教育者の叱り方であるというお考えに賛同しきりでした。三木先生はこの上野総合病院の活性化・改革に取り組まれ、3年で成果が見えてきたようで、とくに現場・ナースが創る緩和ケア病棟というのはコメディカルがこれから医療現場で主人公となり得る意欲的な試みと感嘆いたしました。医師もコメディカルも患者を守る砦でありお互い病院の主人公の誇りをもって一緒に進める仕組みが理想的と思いました。三木先生は肝移植の実績の豊富なスペシャリストですが、これから地域の星になって頂ければと思いました。ご本人はそろそろ裏方に隠れて貢献したいとおっしゃっていましたが、まだ佳境はこれからです。

現場といえばこの10月にオープンした高の原中央病院かんさいハートセンターでもコメディカルの進歩成長が日々感じられ、楽しみが増えています。彼らにもっと主体的に活躍して頂こうと思いました。

こうした、平素何となく考えたり悩んだりしていることを、各界の実力派の方々から解説や問題提議をしていただけた伊賀塾は、マンネリ化していた私の頭に鮮烈な刺激になりました。これからこうした場にまた参加して今後の糧にしたく思いました。

こうした場をご紹介下さった小柳先生や企画をされた三木先生、伊賀市役所の皆さん、協力者の皆さんに厚く御礼申し上げます。来年もまたよろしくお願い申し上げます。

 

平成25年11月6日

 

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
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地域医療講演と、かんさいハートセンターが奈良新聞で報道されました

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奈良で病診連携の会にて講演を行いました。

奈良北部や京都南部エリアの開業医や病院関係の先生方、お忙しいなかを講演会にお越しいただき、深く感謝申し上げます。

地域医療を充実させるうえで、病診連携や病病連携がしっかりと行われていることは極めて重要です。

お互いが安心し信頼して自分の守備範囲以外の患者さんを紹介しあい、あるいは協力しあってベストの医療を行う、これが一番です。

とくに心臓手術、心臓大血管手術では専門的分野ですので、多方面での協力は必須です。まさに地域ぐるみのハートチームですね。

この講演を奈良新聞が取材して下さいました。

こうした交流や勉強会を通じて、高の原中央病院かんさいハートセンターが全国レベルでの貢献だけでなく、地域医療でもお役に立てれば望外の喜びです。

なお今回のような医師を対象とした講演だけでなく、一般の方々の啓蒙のための講演も予定されています。かんさいハートセンターのページなどをご参照ください。こうして心臓病の的確な治療だけでなく、その予防や二次予防(治療効果を長持ちさせることです)でもお役に立ちたいものです。

 

********奈良新聞 平成25年10月20日朝刊から******


IMG_1967b地域の診療所と、よりよい連携を図るため「登録医制度」を設けている奈良県右京1丁目の高の原中央病院(西村公男院長)は19日、奈良市三条本町のホテル日航奈良で、登録医らと親交を深める地域交流会「高の原会」を開催。同病院に今月オープンした「かんさいハートセンター心臓血管外科」の米田正始センター長の講演会と懇親会を催した。

 交流会は年1回の開催で今年で11回目。高の原中央病院から医師や事務職員ら約40人が参加し、登録している診療所や連携している病院から約30人の医師が参加した。

 心臓外科医の米田センター長は「心臓手術がお役にたつとき プライマリケアの立場から」と題して講演。さまざまな心臓手術を事例を示しながら解説し、「心臓血管外科は内科とともに着実に進歩をとげている」「手術は無理だろうと思う患者にも手術が有効な場合がある。無理だろうと見送ることなく(高の原中央病院に)相談してください」と登録医らに呼び掛けた。

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お便り98: ポートアクセス法僧帽弁形成術で早い仕事復帰を

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人間出会いはさまざまです。患者さんは50代男性で浜松からお越し下さいました。

A335_010仕事でお忙しく、あまりゆっくり療養もできない状況で、かつ手術後には病気を忘れて仕事に熱中できるような治療をもとめて私の外来へ来られました。

ポートアクセス法による僧帽弁形成術が創も小さく、骨も切らず、痛みも軽く、社会復帰が早いです。

そのためこの状況に一番ぴったりの手術ですが、この患者さんはバーロー症候群という、僧帽弁全体が病気になる、同じ僧帽弁形成術でも比較的高度な技術が求められる状態で、ポートアクセス法をやっている病院でも一般には通常の正中アプローチを使う傾向にある状態でした。

しかしバーロー症候群をポートアクセス法で僧帽弁形成術するという経験を着実に積んできましたので、この患者さんにも同じ方法で手術しました。

弁は3か所を直す、比較的複雑なものになりましたが、結果は良好、逆流なく、かつ全身に負担を与えない、短時間でまとめ上げることができました。

下記のお手紙は、この患者さんが中日新聞にお書きになられたエッセイです。

文中に名古屋の病院とあるのは、当時私が名古屋ハートセンターで勤務していたからです。現在は大阪府の医誠会病院と仁泉会病院で忙しく汗を流しています。

ともあれ患者さんの元気な社会復帰、仕事復帰のお手伝いをできたこと、大変うれしく思っています。これから楽しく、ばりばり仕事に打ち込んで下さい。お時間のあるときに、大阪京都観光を兼ねて外来へ定期健診にお越し下さい。

********患者さんのお便り(エッセイ) 中日新聞10月13日*******

心臓手術

きっかけは職場の健康診断だった。いつもなら儀式的に終わる聴診と脈診が、やけに時間がかかるなと思っていると、「心雑音と不整脈がある。再検査を受けて」と診断された。

 
IMG_1959b 間を置かず精密検査を受けたことが、大きな一歩になった。心臓エコーで、僧帽弁機能不全の疑いがあることが分かったのだ。

 僧帽弁は左心房と左心室の間にあり、血液が流れた後、ぴったりと閉じる。それが、何かの原因で弁に異常が起きて閉じきらなくなり、血液が逆流していた。息切れや胸が苦しいという自覚症状はなかったが、放っておくと、心不全や心筋梗塞のリスクが高まる。早期発見は、むしろラッキーだと考えた。

 名古屋に心臓外科の専門病院があり、さらに精密検査をしたのち、手術の決断をした。後から知ったが、この病院は、皮膚切開が少なくて済む先進技術で手術を行い、担当医はゴットハンドといわれる名医だった。

 二週間で退院し、一ヶ月で仕事に復帰できた。いろんな人との出会いと幸運が重なり、命を救われた思いだ。同僚や家族の支えにも深く感謝する。いまは体調をしっかり整えることで、恩返しとしたい。

 

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10年。

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いつの間にか長い時間が経ちましたが、まだ昨日の事のように覚えています。当時はまだ珍しかった、そして未知の部分が多かった左室形成術という手術を行った患者Mさんのことです。

本日日本胸部外科学会という心臓外科や肺・食道外科のトップ学会の分科会として仙台にて開催された重症心不全研究会で、ベストシナリオの症例ということで当番世話人の斎木東北大学教授のご厚意にてMさんの手術治療を紹介させて戴きました。

Mさんは10年前、私がまだ京都大学病院で勤務していたころに緊急入院して来られた患者さんです。以前の心筋梗塞のため心臓が年々悪化し、健康なときの4分の1のちからまで落ち、心不全のため近くの病院に入院退院を繰り返すまでになっておられました。しかもいのちにかかわる不整脈が出たり、左室の中に血栓の塊までできて、これがもし脳に流れれば即死する恐れさえある状態でした。

ただちに皆で治療方針を立て、準緊急手術で救命することになりました。たまたまそのころに朝日テレビの記者さんたちが私の取材に来ておられ、是非そうした患者救命の最前線を紹介したいと依頼されました。Mさんの手術は当時、というより10年経った今でも他より危険性が高い大手術で、それを報道陣の前で行うことは、何か不幸な結果がでれば私も引責辞任の事態さえ考えられる状況でした。

しかし患者さんがいのちを賭けた闘いに敢然と挑もうというときに、私もこの手術を確信もって行い、かつこの左室形成術という危険性はあっても患者さんにとって希望のひかりとなる手術を世の中に啓蒙する義務があると考え、手術も取材も予定どおり進めることになりました。

この取材を報道した番組の録画はこちらを をご参照ください。

手術は当時としては最先端の、セーブ手術という左室形成術だけでは不足するため、Septal Reshaping(心室中隔形成)という方法を併用し、同時に僧帽弁形成術、冠動脈バイパス手術、両室ペーシングなどをすべて心臓を動かしたまま行うというものでした。
よくそんな目茶ができるねと当時友人に言われたものですが、極度に弱った心臓のため、普通の心臓手術のように一度心臓を止めてしまうと二度ともとのパワーが出せなくなることを恐れたからです。

我がチームの興亡この一戦にありという気持ちで臨んだかと言われれば、むしろ逆で絶対勝てると確信して臨んでいました。これまで幾多の勉強や研究、議論を尽くして来たのはこうした患者さんを助けるためであり、これだけ準備して来たのだからきっとできると確信していました。

手術はうまく行き、患者さんはまもなく元気に退院して行かれました。

その後、私が大学病院で政治的に困難に局面したときも他の患者さんたちとともに署名などを集めて支援して下さいました。心臓外科医の苦労を知らず、ただ仕事をしたくない人たちの側について私を批判していた人たちが生涯知ることができない、熱い患者さんたちの心からの支援を何よりうれしく思ったものです。

その後、患者さんの会で定期的にお元気なお姿を見せていただき、いつもうれしく思ったものです。そのMさんの手術から10年が経ち、かかりつけの病院の先生(枚方市民病院の中島伯先生、ありがとうございます)が10年後のデータを送って下さいました。かつて正常の4分の1まで弱っていた心臓は何と正常レベルにまで復活していました。自分たちの努力がこういう眼に見える形で報われたこと、そして左室形成術という手術が条件を考えてしっかり行えば奇跡を起こすことも示されました。

重症心不全研究会は、左室形成術が患者さんに真に役立つことを科学的データをもって世界に発信し、まだまだ理解されていないこの術式を世界に役立ててもらおうという主旨で、松居喜郎北大教授や須磨久善先生はじめ日本の左室形成術のエキスパートが集まり造られた研究会です。私も及ばずながら手伝いさせて戴いております。

こうした素晴らしい仲間のまえで、忘れられない患者さんをご紹介できたのは望外の喜びでした。しかも私は翌日所用が奈良であり終電に間に合わせるために早退する必要から、我が弟子・増山慎二先生に発表して戴きました。立派な発表を最後まで聴くことができ、友人たちから温かいコメントも戴き、頑張ってくれた患者さんや当時のチームを想い出しながら帰途につきました。私は患者さんに生かされていると、ありがたく思った一日でした。

平成25年10月18日

米田正始 拝

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東大寺学園の50周年記念会に参加しました

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高校時代というのはもはや遠い昔の夢のようなひと時のように思っていました。

本日、私の母校、東大寺学園高校の50周年記念式典に参加して参りました。東大寺総合文化センター(金鐘ホール)という近代的かつ東大寺の雰囲気にマッチした施設が旧校舎エリアにあり、そこで式典は開催されました。

そして懐かしい方々や若い現役の学生諸君と接して、高校時代を良い意味でひきずっていることを感じました。体の軸のひとつになっていて、今なお自分を助けてくれている、と言えましょうか。

IMG_1924b祝賀会の前半はさすが東大寺らしい物故者への法要、読経と学園関係の方々やご来賓の祝辞、そして学生諸君による室内楽コンサートでした。

学園関係の方々が口をそろえて大仏のような大きな人物を育てるという教育方針は昔も今も変わらない自由闊達な校風が健在であることを実感させてくれるもので、誇らしいことでした。

悪く言えば無茶苦茶な破天荒な一面もあったように記憶しますが、皆、前を見て努力して進んでいたように思います。

祝辞を述べられたご来賓は錚々たる顔ぶれで、荒井正吾・奈良県知事、仲川げん・奈良市長、津山恭之・奈良市副市長、山下力・奈良県会議長はじめこの高校が50年の間に社会から評価されるに至ったことを実感させてくれるものでした。また畏友・堀井巌さん(今年から参議院議員)も出席され、パワーを感じる祝賀会となりました。副市長の津山さんは私の1年先輩で、当時は野球のスターでありかつ親切にして戴いたこともあり、うれしい再会でした。

室内楽コンサートでは新旧の校歌が演奏され、中でもなじみのある新校歌で最後の一節、「東大寺東大寺学園われら」のところで思わずくちずさんだ方々が多かったのではないかと感じました。

セレモニーのあとは懇親会で、現校長の矢和多忠一先生、クラスメートの水野君、松岡君、田中君はじめかつてお世話になった中川先生、大地先生、渋谷先生や京大でも大先輩でいろいろご教示戴いた高井先生らとも懇談でき、気持ちはまさに青春のど真ん中と言ったところでした。高の原中央病院副理事長の斉藤正幸先生のおかげで、新しい知り合いができ、感謝感謝でした。

無骨でも自由なものの考え方、人生観、これは私の人生のなかで学んだ京都大学の内容・本質重視の気風やアメリカのパイオニア精神とも合致するところも多く、こんな素晴らしい教育をしていただけたことを、あらためて感謝した次第です。しかし当時は不勉強で恩師たちを嘆かせていたのはまずかったとまたまた反省してしまいました。

あるご来賓が東大寺学園の校歌を見て、世界に羽ばたく人材を育てている、これが現実になっているのはすごいと賛辞を送られました。別のご来賓が、学生時代に校門前の焼き芋屋のおじさんから、高いところ、遠いところを見て進むだけでなく、自分の足元をしっかり見据えることも忘れないようにと言われたお話しが含蓄深く心に残りました。それは奈良のこと、油断するとすぐ鹿のフンが靴に付くという落ちがついた、心憎いアドバイスでした。

ただ一つだけ、人知れず寂しく思ったことがあります。あの校舎と、グラウンドのない狭い校庭をもう一度見たかったのですが、それらはすでになく、上記の近代的な博物館になっていたことです。あの校舎と校庭は、努力と工夫でどんなところからでも立ち上がれる自立精神の象徴と自分なりに思っていたからです。それらはノスタルジアとして心の中に活かしておけば良いのでしょう。

郷里で心臓外科のライフワークを完成させるべく、高の原中央病院に「かんさいハートセンター」を立ち上げたこのときに、こうした原点回帰のようなひとときを頂けたこと、関係の皆様に厚く御礼申し上げます。

このちからを明日から心臓手術の患者さんのために役立てる所存です。

平成25年10月12日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り97: 冠動脈瘤の患者さん

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冠動脈瘤は心臓に血液を送る冠動脈がこぶのように膨らむ病気です。これにはいろいろなタイプがあります。


Ilm17_da05008-sこどもの頃に患った川崎病(MCLS)の後遺症として大人になってから冠動脈瘤が大きくなったり心機能が低下したりすることもありますし、複数の瘤ができることもよくあります。また冠動脈ろうに合併することもあります。

冠動脈瘤そのものが大きく、破裂する懸念があればそれを修復する必要があります。瘤を切開して小さくするとか、瘤を潰すとか、外側にガードを付けるなどさまざまな方法があります。瘤の影響で血液の流れが低下しているときには冠動脈バイパス手術が必要なこともあります。個々の患者さんの状態に応じて適切な治療法を選ぶ必要があります。

私たちは再発しないよう、完治を狙った手術を行っています。将来瘤になりそうなところもなるべくガードをつけて予防するようにしています。必要なところには冠動脈バイパスをつけて安全を確保します。

以下の患者さんは70代男性で冠動脈瘤のため来院され、ハートセンターで手術を受けました。しっかりと治療させていただき、いつしか心の絆ができたことをうれしく思っています。

これからも永くお元気でいて頂けるよう、何かと応援したく思います。

 

********患者さんからのお便り******


私の心臓疾患治療体験談

私は米田先生のお陰で冠動脈バイパス3本、冠動脈瘤2個の心臓手術を受け、命拾いをしました。以下に私の体験談を披露し、同様の心臓病治療中の皆さんの参考に供したいと思います。

私の祖父が7月の暑い日中に畑に出て、49歳心臓発作で急死。父は82歳、心筋梗塞で急死しています。しかし私は若い時は自分自身の健康状態から、遺伝的因子など考えにも及びませんでした。

1964年〔40歳〕の頃  会社の健康診断で血液・レントゲン検査があり、血糖値が高く精密再検査

を要することになり、E会社勤務の帰途中のK市民病院(愛知県)を選び通院することにした。そこで運動前後の心電図等検査結果は心電図に本来プラスに出るべき波形が逆にマイナス方向の波形があり不整脈と診断された。

当時は仕事に紛れ、あまり自覚症状も無く治療薬も飲んだり飲まなかったりしていた。或るときは主治医から何の説明もなく心臓に放射線治療〔約1時間〕受けたが、此れが適切であったか今も理解できない。その後主治医から私の不真面目さからか他の病院に掛かるよう指示され、以後上飯田病院〔名古屋市内〕に通院することになった。

1974年〔50歳〕の頃  上飯田病院に変てってからも仕事に追われ、通院が不規則であった。

   私は毎朝仏壇の前で読経中、或る時に胸の動悸や息苦しさがあり声を出す事が出来ない事があった。また当時の私は各地への営業出張が多く、ある時には電気技術者対象の講演で聴講者の前での講話続行が苦しく、時には緊張すると息苦しさが激しかった

1984年〔60歳〕の頃  60歳でE社を定年退職し、同年Y社に再就職したが、ここでも地方出張が多く通院はほとんど出来なかった。

まもなく上飯田病院から中度の心疾患者として名城病院〔名古屋市内〕を紹介され、以来同循環器内科部長のI主治医に掛かることになった。当時私の体重は80kg、胴囲98cmと肥満の頂点にあり、これ等は心臓病に悪影響したと思われる。

ここで初めての麻酔のもと腕からの心臓カテーテル検査で血管の一部に狭窄部があることが確認された。しかしこの時手術は見送られ、引続き投薬のみが続行された。

1990年〔65歳〕の頃  その後Y社を退職し、自宅近くのS社に再々就職した。この頃から運動不足を自覚し、毎早朝の時間を利用し、矢田川河川敷の千代田橋から三階橋まで往復約5キロメータを2時間かけてのウオーキングしたことがある。

その後もウオーキング距離は2キロと短くなったが毎朝6時30分のNHKラジオ体操にも参加するなどの健康つくりに専念した。お陰で体調はよく心疾患はすっかり忘れるまでになった。

2000年〔70歳〕の頃  毎朝のウオーキングに左足が痛く次第に歩くテンポも遅く歩行距離も更に短くなり、また手足の痺れ、息苦しさがあった。また或る時には風呂上りに悪寒を催す等体力の変調が見られた。                               

2008年[75]の頃   平成20年10月26日朝5時ごろから矢田川河川敷ウオーキングで、天神橋まで来たとき激しい息苦しさに襲われ苦しい中にも我が家に戻り、ベットに付くが苦しさは収まらず救急車の酸素吸入状態で名城病院に搬送された。

原因は不整脈と診察され入院翌日に電気ショックをうけ1週間後に退院した。

2009年1月16日   名城病院で初めてのカテーテル検査から10数年も経過し、ここにきて再度116日カテーテル検査があった。

この検査結果報告に初めて妻や子供達も参集するよう指示があり、この場で初めて冠動脈瘤、血管膨張部・狭窄部等があり、このままでは冠動脈瘤がいつ破裂するかわからず早期の心臓手術が必要とされた。

病気治療の無知な私達は10数年間経過するまでカテーテル検査を怠り、今に至り早急に「心臓手術をしなければ命がない。」とアドバイスされた。

ここまで病状が悪化したことに対し不害さを思い知らされ病院を変える事にした。

一般的に大病院は多くの患者が通院しており、主治医にもよるが1人の診察に時間が掛けられず適格な病状診断が出来ない場合も多いかと思われる。私も循環器内科薬冶療のみに頼ったことが反省させられる。早速[名医のいる病院]等の雑誌やインターネットで名医探索をした。

2009年3月13日   インターネットその他で我が子たちが心臓手術の名医を調査してくれた果、

開業後の知名度もなかったが名古屋ハートセンター米田先生と決め、3月13日同病院に入院し再検査した。

主治医は副医院長米田正始先生にお願いするとし、316日〔月〕米田先生執刀のもと補佐に深谷・北村先生が付き午前10時~午後17時ごろまでの極めて長時間で難易度の高い心臓手術が行われた。

米田先生の術前後の説明その他資料等から総合すると手術は先ず喉から呼吸気管、下部には排尿管を通し、そして胸部切開手術が開始された。

私の破裂寸前の冠動脈瘤は心臓の表と裏側に位置している。このため表側のバイパス血管手術後、予め用意された手術視野の悪い心臓裏側にある冠動脈瘤の手術には心臓の位置を変えなければならない。これには人工心肺装置を使う方法もあるが、弊害もあるので今回は新しく開発された手術法の拍動する心臓の動きを部分的に抑える器具をもちいてのオプキャブ (OPCAB)法が採用された。この手術には胸骨は或る程度大きな切開となるものの手術の安全確実な方法とのことであった。

まだまだ難易度の高い手術もあるが、私の手術はバイパス3本、血管外部からの狭圧補助管2箇所を一部は自分の足の血管を採用して今回の難手術は成功した。

そして入院20日後の4月1日〔水〕無事に退院することが出来た。 しかし術後と言ど脳梗塞、心不全不整脈、心筋梗塞、肺炎等に依然として注意が必要との事であった。

     今回私は優れた心臓外科手術の名医米田先生にも恵まれ、また医療費は高齢者医料補助による患者負担費10分1として計算すると約130~150万円掛かったことになるが、補助のお陰で大きな手術ながら低額費で済んだ。

私は死の一歩手前で助かつたが、これも献身的な皆さんのお陰と深く感謝する共に大変ご心配をお掛けし申し訳なく茲に心からお礼を申し上げる次第である。        

2009723日 退院後は自宅近くの北病院浅海先生に米田先生の指示で事後治療をお願いする事になった。その約5ケ月後早朝散歩の3歳年上の友人からの勧めで私も2カ月後北病院で肺炎予防ワクチン注射をお願いし此れが災いしたか ?

やがて胸苦しさを覚え、私は名古屋ハートセンターに駆け込みレントゲン検査を受けた結果、胸水が溜っているとの診断で再入院。米田先生の術後は「肺炎余病等の注意」が現実となり同先生のご指導のもと緊急処置で胸水1200ccを抜き取った。

7月31日に退院し、名城病院気管支内科に転医したが、胸水病原菌を調査したいと云うものの胸水抜き取りは躊躇され、排尿剤の服用のみで苦しい思いが続いた。

一方友人は寒くもないのに毎日マスクを掛け、異常を訴えていたが、その1年後に肺炎で病死した。私には病名、外科的処置等は判らないが、私も緊急処置がなかったら同じ運命の危険性もあったかと思う。

 

今回私の心臓疾患等の経緯から、術後約5年経過。お陰さまで今日の健康回復に感謝し毎日を過ごしている。

今日其々の地域には大学病院等の大病院もあり、手術事例、件数等も記載した書籍もあるが、意外と主治医の経験不足もあると聞く。今毎週BS日テレ放映中の[韓国ドラ・ホジュン官邸医官への道]は主演ホンジュンは旅の行く先々で貧乏急患が担ぎ込まれ、他の医師は断る中で危険な急所に針を正確に打ち適切なアドバイスで処置する民への芳心が米田先生とダブリ鑑賞している。

経歴、人柄もまた重要な信頼要素でもあり、この種の情報は米田先生のホームページネット等を参考とすれば理解できる。

この種の情報は人から人に伝わり、また寝たきり防止のためにも同病者の体験談等も参考にすべきだと思う。

米田先生は京大心臓手術専門医から米国大学等にも留学し、心臓手術を研鑽され、今日なお専門医の第一人者として若い医師の指導育成にも力を注いでいる。

今回の「かんさいハートセンター」の開設は地域住民の健康と活性化に大いに役立つものと期待される。

 

      人の病気は加齢と共に進化し、また抵抗力も弱まり判断力も鈍くなるが、薬治対応等だけでは健康回復が遅れ、多病を併発しやすい場合がある。

いずれにしても自我流対応の遅れが致命傷となる。油断せず時には信頼できる主治医の病院に代えたり、手術等の早期治療を図ることが最も大切であると学んだ。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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【第五十一号】内覧会や講演などのご案内

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 【第五十一号】
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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台風や大雨が心配なシーズンですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私のほうは相変わらず忙しく走り回っています。

名古屋ハートセンターでの手術が最後の駆け込みで混んでいるのと、

高の原中央病院かんさいハートセンターの立ち上げ準備でなんだか落ち着きま

せん。

まあ忙しいのはありがたいことと思っています。

さてこれからいくつか講演などの予定があり、そのなかには一般の方向けのも

のもあるため、ここでご案内いたします。

1.かんさいハートセンターの内覧会。 今年10月1日に、まず心臓血管外

科からスタートする高の原中央病院かんさいハートセンターを講演とともに
院内をご案内いたします。

平成25年9月28日土曜日と29日日曜日、14時ー17時、

高の原中央病院7階講義室です。

以下をご参照ください

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2013/09/khcnairan.html

ただしこれは受け容れの都合により医療関係者の方に限定させて戴きます。

患者さんたちにおかれましては、内覧会ではなく本物の外来のほうへどうぞお

越し下さい。

すでに火曜日と金曜日に米田外来を一部開始しています。高の原中央病院の代

表電話 0742-71-1030 からコオディネーターの勇元(いさみも

と)につないでもらい、ご相談ください。

2.高の原中央病院健康フォーラムでの講演のお知らせ。

平成25年9月18日水曜日 14:00-15:00 
奈良市北部会館 市民文化ホール3階多目的室1で。

詳細は以下をご覧ください。無料です。

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2013/09/TCHforumCVSdiet.html

心臓手術と科学的ダイエットというテーマでお話しします。

3.NHK文化センター名古屋教室での講演

平成25年12月8日、13:00-15:00

名古屋市東区東桜1-13-3 NHK放送センタービル7階
NHK文化センター名古屋教室 にて

こちらの講演も上記と同様、心臓病と科学的ダイエット というテーマです。

詳細はこちらをご覧ください。こちらは会員1890円、一般2100円
です。十分元が取れるよう、頑張ります。

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2013/09/lecturenhkcvsdiet.html

私は心臓外科医で心臓手術が専門ですが、患者さんが真に健康になるためには

、単に手術だけとかお薬だけでは不十分なのです。

そこで科学的ダイエットを含めた正しい食生活や運動などが必要になるのです

巷にダイエット法は山ほどありますが、その多くは欠点があり、まもなく消え

て行きます。無理があったり、中には有害なもの、たとえばがんが起こりやす

くなるなどもあります。やはり正しくやることが大切です。

有名人の心臓手術、心

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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講演 NHK文化センター 名古屋教室 心臓病と科学的ダイエット

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心臓病は生活習慣病と密接に関連しています。たとえばメタボ、糖尿病、脂質異常症、高血圧症あるいは喫煙などですね。そのため心臓手術も生活習慣病と切っても切れない縁があります。

Ccbo022-s私が本職の心臓手術にくわえて科学的ダイエットに力を入れているのはそのためです。

本音のところは、昔から油断するとすぐ太る体質で、もっと良いダイエット法はないものか、いつも探していたからです。しかしそのダイエットが患者さんに大いに役立つことを知ってから、がぜん張り切って取り組むようになったのです。

ご縁あってNHK文化センターで講演させて戴くことになりました。

その説明パンフレットを引用します。ちょっとお恥ずかしい大げさな書き方ですが、これはパンフのキャッチフレーズということでお許しください:

 

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スーパーDr.登場!

12月8日 心臓病と科学的ダイエット

名古屋ハートセンター副院長(現、かんさいハートセンター特任院長)

米田正始

 

心臓外科の名医、米田先生の講演会。有名人の手術を例にとりながら、予防・治療・手術など、ためになるお話しを致します。また予防のための正しいダイエット指導もございます。

13:00~15:00

会員 1890円、一般 2100円

お申込み、お問い合せは Tel 052-952-7330 または NHKカルチャー名古屋 でご検索下さい

場所: 名古屋市東区東桜1-13-3 NHK放送センタービル7階
NHK文化センター名古屋教室 にて

**************************

 

それでは心臓病、心臓手術、あるいは健康生活にご関心のある皆様のご参加をお待ちしております。


ご報告

002b満員御礼でした。

かつて米田正始の手術を受けて下さった患者さんたちも多数お越しになり、同窓会のような楽しい会になりました。

なおNPO法人日本ローカーボ食研究会から話題の教科書を販売しましたが、完売しました。厚く御礼申し上げます。

また来年お会いしましょう!

 

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