大動脈弁狭窄症の手術ガイドライン―危険な病気でも治せる病気ですから

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2014年にアメリカのACCとAHA学会のガイドラインが改訂されました。よりキメ細かく、進歩のあとがうかがえる内容です。

その概略を以下にお示しします。

2014AHA-ACC_GL AS

原文は英語ですが、一般の方々にわかりづらそうなところは日本語に訳しました。

今回の改訂での特徴は次のようなところです。

まず症状がなく A309_078bても、エコーのデータや運動負荷試験結果が重症である場合ではクラスIIaで手術適応になったこと。

またエコーでそれほど重症でなくても症状があれば手術適応になりやすいこと、エコーデータが重症ではなく症状もないケースでも他の心臓手術の適応があれば大動脈弁もやって良いことになったことなどがあげられます。

さらに手術適応がないケースでも油断なく定期検診することが勧められたのも、安全上、好ましいガイドラインと思います。

そして近年のTAVIの発展を考慮して、外科手術とTAVIの両者を併せて考えることを明記してあるのも進歩です。

なおここでクラスIとは手術すべき状態で、クラスIIaは手術が勧められる状態、クラスIIbは手術しても良いことがある、クラスIIIは手術のメリットが無いか、有害であるかもしれない状態です。

ご参考までに過去のガイドラインの記事を以下にお示しします。


******* 過去のガイドライン記事 *****

アメリカの主要学会であるACCとAHAのガイドライン(2008年)でも重症の大動脈弁狭窄症(AS)では、以下のときに手術が勧められています。

重症大動脈弁狭窄 (最高大動脈弁口血流速度 Vmax 4m/s以上、弁口面積 AVA<1.0cm2、平均圧較差>40mmHg)で

■自覚症状あるとき、あるいは


■自覚症状が不明でも運動負荷試験で症状が出るとき、


■自覚症状がなくても左室駆出率が50%未満のとき、あるいは


■重症弁石灰化や急速な進行があるとき

 

などには、大動脈弁置換術(AVR)が勧められます。

それ以外の状況でも慎重なフォロー(経過観察)が勧められています

 

■また重症大動脈弁狭窄症でCABGあるいは他の心臓手術が必要なときにもAVRが勧められます

日本のガイドラインはこちらをご参照ください(12ページ)。

共通点が多いですが、

体格が日本人のほうが欧米人より小さいためAVAなどの基準より小さ目で、妥当と思います。

以下に引用します。

表26 大動脈弁狭窄症に対するAVRの推奨

クラスⅠ
(著者註:有効性が証明済み)

1 症状を伴う高度AS

2 CABG を行う患者で高度ASを伴うもの

3 大血管または弁膜症にて手術を行う患者で高度AS
を伴うもの

4 高度ASで左室機能がEF で50%以下の症例


クラスⅡ a
(著者註:有効である可能性が高い)

1 CABG,上行大動脈や弁膜症の手術を行う患者で中

等度ASを伴うもの


クラスⅡb
(著者註:有効性がそれほど確立されていない)

1 高度ASで無症状であるが,運動負荷に対し症状出

現や血圧低下をきたす症例

2 高度ASで無症状,年齢・石灰化・冠動脈病変の進
行が予測される場合,手術が症状の発現を遅らせる
と判断される場合

3 軽度なASを持ったCABG症例に対しては,弁の石
灰化が中等度から重度で進行が早い場合

4 無症状でかつ弁口面積<0.6cm2,平均大動脈-左
室圧格差>60mmHg,大動脈弁通過血流速度>
5.0m/sec

クラスⅢ
(著者註:有用でなく有害)

1 上記のClassⅡa 及びⅡb に上げられている項目も

認めない無症状のASにおいて,突然死の予防目的
のAVR

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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大動脈弁閉鎖不全症の治療ガイドライン―症状が軽いのに状態悪化する場合も

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アメリカACCとAHA学会のガイドラインが2014年に改訂されました。

これまでよりさらに詳しく、臨床現場の実感に近いものになりました。

以下にそれをご紹介します。

2014AHA-ACC_GL AR

原本は英語ですが、一般の方々にわかりづらそうなところは日本語訳にしました。

今回の改訂の特徴は以下のようなところでしょうか。

まずARを高度なものと高度ではなくても進行性のものにわけてわかりやすく論じています。

高度なARで症状があれば手術になるのは当然としても、症状がなくても左室が障害されている場合やリスクが高くない場合には心臓手術が適応になり得ることも示されました。

ARが進行性なら他の心臓手術と一緒にAVRすることもクラスIIaとして認められました。以前のガイドラインでは左室拡張末期径75mmまで手術適応にならなかったのはちょっと待ちすぎと思っていましたが、今回は65mmで検討対象となり現実に即した形になって来ています。

心エコーのより詳細なデータが重症度の判定に使われるようになったのもエコーの貢献が認められたものとして評価できるでしょう。

ここでクラスIは手術が必要、クラスIIaは手術する意義がある、クラスIIbは手術を考慮しても良いことがある、クラスIIIは手術にメリットがない、あるいは有害なことがある、という意味です。

なおご参考までに過去のガイドライン解説を以下に記載します。


******過去のガイドライン記事 ******


重症の大動脈弁閉鎖不全症(AR)の治療ガイドライン抜粋(アメリカACCとAHA学会2006)

手術(弁置換)が勧められるのは:

■自覚症状があるとき


■自覚症状がなくても運動負荷テストで症状がでるとき


■自覚症状がなくても左室駆出率が50%未満になったとき


■症状がなく駆出率が50%以上でも左室が大きいとき(LVDd>75mm、LVDs>55mm)

 

などの場合です。それ以外の状態でも慎重なフォロー(経過観察)が勧められています。

大動脈弁閉鎖不全症も突然死などの緊急事態が起こることがあります。

 

なお日本のガイドライン(日本循環器学会)はこちら(12ページ)にあります。

共通点が多いですがよりきめ細かくなっています。以下にそのガイドラインを引用します

なお大動脈弁閉鎖不全症の手術は比較的シンプルなものが多いため、

手術するほうが安全で長生きできることが多いのです。

 


表28 大動脈弁閉鎖不全症に対する手術の推奨


クラスⅠ
(著者註:有効性が証明済み)

1 胸痛や心不全症状のある患者(但し,LVEF >25%)

2 冠動脈疾患,上行大動脈疾患または他の弁膜症の手
術が必要な患者

3 感染性心内膜炎,大動脈解離,外傷などによる急性
AR

4 無症状あるいは症状が軽微の患者で左室機能障害
(LVEF 25 ~49%)があり,高度の左室拡大を示す


クラスⅡa
(著者註:有効である可能性が高い)

無症状あるいは症状が軽微の患者で

1 左室機能障害(LVEF 25 ~49%)があり,中等度の
左室拡大を示す

2 左室機能正常(LVEF≧50%)であるが,高度の左
室拡大を示す

3 左室機能正常(LVEF≧50%)であるが,定期的な
経過観察で進行的に,収縮機能の低下/中等度以上
の左室拡大/運動耐容能の低下を認める


クラスⅡb
(著者註:有効性がそれほど確立されていない)

1 左室機能正常(LVEF>50%)であるが,軽度以下

の左室拡大を示す

2 高度の左室機能障害(LVEF <25%)のある患者

クラスⅢ
(著者註:有用でなく有害)

1 全く無症状で,かつ左室機能も正常で左室拡大も有

意でない

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Valve-in-Valve (バルブ・イン・バルブ)手術について―患者さんに朗報

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TAVI(経カテーテル的大動脈弁植込術) Valve-in-valve-paperの今後の発展的応用のひとつとして

valve-in-valve(バルブ・イン・バルブ)が検討されています。

心臓手術の新たな展開の一例です。

 

右図はそのシュミレーションを示します。

生体弁の中にTAVIがきれいに収まり、新たな生体弁として機能する形ができています。

 

この方法は以前の心臓手術で植え込まれた生体弁が何年もたって壊れてきたとき、

再手術の代わりにTAVIで折りたたんだ生体弁を古い生体弁の中でポンと広げ、

取り付けるのです。

これに Ilm18_ba03023-sよって生体弁がよみがえり、結果的に生体弁寿命が大きく伸びることになります。

 

またTAVIで取り付けがうまく行かないときに、もう一個のTAVIを追加して植え込み、

正常の弁機能が発揮できるようにするという使い方もvalve-in-valveの一例です。

 

ヨーロッパの報告では24例の生体弁が壊れた患者さんでvalve-in-valve(バルブ・イン・バルブ)のTAVIが行われ、

そのうち大動脈弁が10例、僧帽弁が7例、肺動脈弁が6例、三尖弁が1例ありました。

僧帽弁の一例を除き全例で手術は成功し、手術死亡はありませんでした。

脳卒中が1例、術後30日以内の死亡が1例あったそうです。

この治療前は88%の患者さんがNYHA III度またはIV度であったのが、

術後は88%がNYHA I度または II度に改善したそうです。

 

Sapienという弁を用いたTAVIの検討では、

463例の経大動脈TAVIの0.6%が、575例の経心尖部TAVIの3.3%が

この valve-in-valveだったと言います。

 

このようにvalve-in-valve法は生体弁の手術を受けられた

(あるいはこれから受けられる)患者さんたちに大きな朗報となるかもしれません。

これによって再手術が回避でき、

Orti046-s結果的に生体弁の寿命が2倍とか3倍に伸びる結果になり得るからです。

 

こうした新たなテクノロジー、方法をうまく組み合わせ、

駆使して長期間の安全性や高いQOL生活の質の維持ができれば素晴らしい治療になるでしょう。

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自己心膜―便利で有用な手術材料、しかし注意点も【2025年最新版】

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Pericard

最終更新日 2025年1月5日

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◾️心膜とは

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心膜は心臓の周囲にある袋状の膜です(左図)。

普段は心臓を包み守っているのですが、

これが心臓手術に役立つため、

昔から心臓外科医に愛用されてきました。

患者さんご自身の心膜を自己心膜と呼び、

比較的しっかりした強度があり、かつご自身の組織ですので拒絶反応が起こらず、

炎症も起こりにくく、

そのまま使えば生きた組織なので感染にも比較的強いという特長もあるからです。

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◾️自己心膜の活用例

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たとえば心房中隔欠損症(略称ASD)の閉鎖には現在も自己心膜がしばしば使われます。

心膜周囲の組織をきれいにはがしてから使えば、

血栓もできにくく、フィットも良いため安全な手術材料として重宝されています。

 

心筋梗塞のために左室が壊れたときに、これを自己心膜のパッチで左室形成することもあります。

心筋こうそく後の心室中隔穿孔(心室中隔に穴が開きます)でも使うことがあります。

 .

Pericard4 弁膜症でも、たとえば感染性心内膜炎のそれも重症で

弁の付け根に膿が貯まり抗生物質も効かなくなる弁輪膿瘍でも

感染組織をすべて取り去ったあと、

自己心膜で再建することがあります

(右図はその一例です)。

生きた自己心膜は人工物よりは免疫抵抗力があるからで、実際役立つことが多いです。

大動脈弁輪拡張や大動脈基部再建でも使うことがあります。

 .

自己心膜だけでなくウシやブタの心膜も使いやすく有用で、

大動脈手術左室形成術などに活用することがありますが、

これらはグルタルアルデハイド処理してあるため抵抗力がなく、感染がらみの場合は弱くなります。

そのため感染性心内膜炎などの場合はグルタルアルデハイド処理していない自己心膜が有利です。

 .

図 マノージャン法 自己心膜は肺動脈や大動脈、あるいは僧帽弁大動脈弁の修復や拡大(右図)にも活用されることがあります。

大動脈は圧が高いため、自己心膜がしっかりしているケースではそのまま使用することもありますが、

心膜が薄いケースでは二重にして用いたり別のパッチで裏打ちすることもあります。

肺動脈や右室は圧が低いのですが、

先天性心疾患のなかには高圧の場合もあり、

そうしたときに何らかの補強がされることもあります。

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◾️弁形成術への活用

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僧帽弁の形成術では弁葉の補てんや拡張のために自己心膜を使うことがあります。

そのままでは時間とともに縮んだり石灰化しやすいため

グルタルアルデヒドで処理してから使うことも多いです。

長期成績が徐々に明らかになり、今後有望な方法として、

弁置換術に問題がある場合などに使うようにしています。

.

大動脈弁の形成術でも心膜を使うことがありますが、

従来の方法つまり弁を自己心膜で大きくする方法などは成人とくに高齢者では報告があまりなく、あっても良くない成績です。

今後の研究が待たれます。

 .

いずれの場合でも、弁の先端部に自己心膜を使うことは一般に少なく、

これはこうした使い方の長期の安定性が悪いという報告によるものです。

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◾️自己心膜で弁尖を置換すると?

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それでは弁全体を自己心膜で取り換えるのはどうでしょうか?

 

AVrepair peridard leaf extention 畏友・故Duranデュラン先生の報告(Duran C 他. Eur J Cardiothorac Surg 2005;28:200-5
)でも、

自己心膜大動脈弁手術にて10年で86%が再手術回避できており、

これは45歳で生体弁大動脈弁置換を受けた患者さんの成績(Banbury MK 他. Ann Thorac Surg 2001;72:753-7)と同じです。

つまり45歳より年上の患者さんでは生体弁はもっと長 Health_0152持ちするため、

45歳以上の患者さんでは自己心膜手術は患者さんには不利、

早めに再手術が必要となるわけです。

 .

自己心膜で弁全体を取り換える手術として考えられる弱点として以下が挙げられます。

.

1.心膜の構造と弁葉・弁尖の構造は違い、

心膜は必ずしも高圧での頻繁な折れ曲がり(心拍数70として一日10万回、一年で3650万回)に強いとは限らないこと


2.縫い付けるために針孔が多数でき、そこがミシン目効果を生じて、

ちょうど切手をちぎるときのように、弁がちぎれやすくなる


3.カルシウム(石灰)が沈着しない処理は特許や企業秘密でまだ一般化していないためカルシウム対策が少ない

.

弁の先端部の一部だけ自己心膜で取り換える場合は力のかかり具合や折れ曲がりが少ないため必要な場合は使えると考えていますが、

弁の先端部全部を取り換えるのは何らの長期保証がなく、

しかも高齢者の場合は生体弁が16-20年も持つことが示されているため

ワーファリンなしの生活という意味でも生体弁のほうが有利と考えられるからです。

 .

一方、弁の根本の部分が感染性心内膜炎などで壊れたり穴が開いたときに自己心膜で補てんするのは

それほど折れまがらず比較的安定度が良い部位のためよく使われます。

 .

このように自己心膜はさまざまな活用法がありますが、

グルタルアルデハイド処理だけではその限界があることを知って使う必要があると考えます。

また心膜を取るためにあとでそこが欠損となり、

術後の癒着を増やすという副作用もあります。

癒着はもしもの再手術時にやや不利な状況をもたらすためゴアテックスシートなどを使用して予防に努めますが、

その効果には限界があります。

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◾️自己心膜での弁尖再建、最近の流れは

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Sick_0345歳以下の若い患者さんの場合は生体弁の耐久性が低下するため自己心膜手術の意義が出てくる可能性があります。

しかし自己心膜の耐久性も低下する恐れがあるため、まだこれからの研究課題です。

 .

私たちはこの方法を比較的若い患者さんに使い、良好な印象を得ていました。60歳前後までは生体弁の耐久性がやや弱いため、自己心膜をうまく使うようにシフトしつつあったのです。ただその後、自己心膜弁は長期的に感染性心内膜炎が起こりやすいというデータが出てきています。

逆流が起こらないように大きなサイズに設計されているため、乱流が起こり、このため感染性心内膜炎をおこしやすいのではないかという忠告を内科の先生から頂きました。

また生体弁のようなカルシウム処理もできないため、自己心膜が将来石灰化する恐れが否定できません。

まだまだ改良しなければならないのかも知れません。

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また生体弁の手術の後なら、カテーテル弁(TAVI)が安全に行いやすいため、

2度目の手術が安全に回避できるという利点があることもこれからの医療では念頭におく必要があります。自己心膜での弁尖再建(置換)では将来の TAVIが安全にできる保証はありません。大きな自己心膜弁尖が冠動脈入口部を塞ぐ恐れが大きいからです。

 

その後、私が現在手術をしている一宮西病院の澤崎先生が自己心膜での弁再建を改良され、それまでの方法よりも自然な血流が得られるためIE(感染性心内膜炎)も少ないというデータを得たため、この方法を愛用しています。またこの方法なら将来のTVI(バルブ・イン・バルブと呼びます)にも安全に対応できるため将来性があると思います。

 

総合的に患者さんの安全とQOL(生活の質)向上を考え、

オーダーメイド的にその方に一番適したものを提供する医療が今後主流になるでしょう。

同時に医学の鉄則は「患者さんに良いことはする、

しかし良いかどうか不明なことはしない」ですので、

慎重に検討を進めることが大切です。

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執筆:米田 正始
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ミックス手術とは―小さい傷跡で患者さんにやさしい【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月24日

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◾️ミックスつまり低侵襲心臓手術とは

ミックスとは minimally invasive cardiac surgery(MICS)の略称で、ポートアクセスでの手術がその代表格です。小さい傷跡で骨も切らずにできる心臓手術のことを指すことが多いです。

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心臓手術はその最中に心臓を止めるあるいは一部止める必要から、

他臓器のオペよりも危険性の高い、大掛かりなものつまり高侵襲が当然と、長い間認識されてきました。

 

心臓手術といえども低侵襲つまりやさしさが求められるようになりました しかしこの20年あまり、安全性の向上と、低侵襲化(患者さんの体への負担を減らすこと)の社会要請を受けて、

低侵襲心臓手術の開発も行われてきました。

一般に低侵襲化イコール傷(創)が小さい小切開という印象がありますが、

小切開のために、安全なオペが多少たりとも危険性あるものになるというのは絶対に困ります。

 

実際低侵襲手術の代表格ともいえる内視鏡・腹腔鏡手術で

普通なら起こらない悲劇が起こったこと

(ある医大病院泌尿器科や別の大学病院腹部外科)は記憶に新しいところです。

低侵襲手術にさいしては目的つまり何のために行うか、

ということと、方法つまり安全確保のためにどうすべきか、が大切と思います。

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◾️ミックス(低侵襲心臓手術)には大きく2つのタイプがあります

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体外循環(ポンプ)の実例です。これを使わない手術がオフポンプ手術です。1.体外循環を使わない、あるいは大動脈遮断をやらない(つまり心拍を止めない)方法。

たとえばオフポンプ冠動脈バイパスステントグラフトを使ったハイブリッド手術などですね。

体外循環そのものは偉大な発明だったのですが、自然の状態と比べるとさまざまな副作用、限界、問題点のあることが知られています。

これをより新しい技術で克服しようというわけです。

最近ではTAVI(別名TAVR、つまり折りたたんだ生体弁をカテーテル等で入れる方法です)などもこの体外循環を避ける努力と言えましょう。

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2.通常の心臓手術たとえば心臓弁膜症を小さい皮膚切開つまり小さい傷で行う、そしてなるべく胸骨も切らない方法

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◾️狭義のミックス手術について

上記2.の小切開手術を解説します

古典的右開胸 ミックス手術は昔からありました。

典型的なものは心房中隔欠損症ASDに対する右開胸によるASD閉鎖術でした。

これは小さな穴を閉じるだけのもので、短時間でできるため、

この特徴を活かして心臓を一時的心室細動状態として穴を閉じました。

もちろん体外循環に乗せて患者さんの全身を守りながらです。

さらに三尖弁単独のオペでも同様のアプローチをとることが多くありました。

とくに再手術などでこの意義は大きく、

時間がかかり出血が増えやすい剥離操作を最小限にできるという大きな利点があります。

弓部大動脈瘤に対する左開胸手術もそのひとつで、

上行大動脈などの操作が不要なケースなどで役に立っています。

これらは患者さんからの評判も上々です。

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胸骨部分切開によるMICS

◾️1回目のミックス・ブーム

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その後1980年代から胸骨を部分的に切断して行うタイプのミックス手術が流行しました。

個人的には以下の疑問点があり、あまり施行しませんでした。それは

 

1.視野がやや悪いため、僧帽弁手術などでは両心房上方切開という方法(下図)を用いる必要があり

、そのために洞結節動脈を切断し、

長期的にペースメーカーになる危険性が高いこと、そして Cosgrove biatrial approach

 

2.部分的に切開した胸骨でも完全治癒までは月単位の時間がかかり、

社会復帰を著明に促進するほどではないように見えたこと、さらに

 

3.美容上一番問題になる首の下の皮膚切開は通常の胸骨正中切開のときの皮膚切開とそれほど変わらないため、

実際の美容効果も大きくないこと、などがそのころの理由です。

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MICS3

◾️2回めのミックス・ブーム

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その後、2000年代に入って欧米を中心に右開胸によるミックス手術MICSが徐々に洗練され、

右開胸でも安全に大動脈遮断や脱血管挿入ができる方法が進歩したため、

導入の価値があると考えるようになりました。

胸骨部分切開にも進化がありましたし。

 .

◾️現在のミックスへ

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とくに僧帽弁形成術三尖弁形成術などであまり複雑でない患者さんで、

大動脈などに問題がないケースが良い適応と考えています。

近年は開発と熟練によって大動脈弁形成術や大動脈弁置換術、さらに複雑僧帽弁形成術にも安全に用いられるようになりました。

ミックス手術の代表格ともいえるポートアクセス法での僧帽弁形成術の標準的手術事例をしめします。視野出しがちょっと難しい事例や、やや複雑な弁形成の事例もご参照ください。

  Median MICS 右開胸のミックス手術でもいくつかのレベルがあり、

肉眼で心臓や弁を見ながら修復する方法と、

胸腔鏡で見ながらオペする方法があります。

 

 また、複数の心臓手術たとえば僧帽弁+大動脈弁の手術や、

複雑なことを行うときにも、

安全性をそこなわない範囲でミックス手術(MICS)を活用しています(左図)。 Ilm08_ad05007-s

 

これにより患者さんの精神的苦痛や負担を減らしよろこばれています。

私たちは数種類のミックス手術のラインアップをもち、その患者さんに最適のものを選ぶようにしています。

もちろん患者さんの年齢や状態、治療内容によっては

あえてミックス手術をやらないほうが患者さんのためになるという場合は、

相談の上、前向きに従来の切開法をもちいるようにしています。

 .

◾️ミックス、今後の流れ

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いずれにせよ、ミックス手術(MICS)は安全確保しつつ、IMG_0826

患者さんの早い社会復帰や仕事復帰を図ることが主目的で、

美容効果はその結果であり、目的ではないと考えます。

実例を右の写真で示します。

(術後半年の写真です。わたしたちの方法(LSH法)では実生活の中で傷跡はほとんど見えません。とくに女性の場合は乳腺の下のしわに隠れるようにしていっそう見えにくくなります)

ダビンチなどのロボットをもちいる術式はさらに進化した段階です。

優れた術者やチームによるロボット手術はその良さが十分発揮でき、

新しい医療としての意義があります。

ただし欧米で見られるように術者によっては課題があります。

たとえばロボットと慣れの問題から術者によっては時間がかかる傾向にあること、

つまり心臓を止める時間が長くなり低侵襲とは言えない場合があり危険性を高める恐れがあること、

そして保険が下りるようになった今でも、様々な形で患者さんの自己負担が多いこと、などです。

これからこうした課題を克服することでロボット手術の発展が期待されています。

 

CIMG2167b(左の写真はミックス手術による僧帽弁形成術後、7か月の患者さんです。

社会復帰も早く、創はこの時点ですでにあまり見えません。

右の乳腺(写真に向かって左側)の横に小さく見える線が創部です。

その他の線は普通の誰にでも見られる皮膚のしわです。

つまり目に見える創はあまりないわけです)

 

以上の諸点を考え、私たちは現時点では患者さ187382804んの安全を確保できる範囲で、

社会復帰とくに仕事復帰や高い生活の質QOLを早く回復させること、

そしてその範囲内で美容上のメリットが生じるようにできる、

もちろん保険が効き患者さんの負担が少ない、

そういうミックス手術を心掛けています。

その方法も4種類を持ちその患者さんの状況にあわせてベストのものを選ぶようにしています。

 .

◾️ミックスの注意点

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現在私たちのチームで何らかのミックス手術が使える心臓病は以下の通りです:

僧帽弁形成術同弁置換術大動脈弁形成術、同弁置換術

デービット手術ベントール手術

メイズ手術三尖弁形成術、同弁置換術

ASD心房中隔欠損症VSD心室中隔欠損症三心房心HOCM (肥大型閉塞性心筋症)

粘液腫などの心臓腫瘍の一部、その他です。

 

Ilm17_ca05007-sミックス手術(MICS)では通常の心臓手術以上に、術者やチームの力量の差がはっきりと出ます。

豊かな経験をもつ熟練外科医なら少々視野が狭くても工夫できるからです。

逆に普通の胸骨正中切開でも弁形成で冷や汗を流すレベルの外科医ではミックス手術は危険です。

患者さんにおかれましてはこうしたことも考慮に入れて調べられることが勧められます。

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虚血性心疾患のページ

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⑧経カテーテル的大動脈弁置換(植込み)術(TAVI)とは―患者さんに福音?

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Family02人口の高齢化にともなって大動脈弁狭窄症(略称AS)が増加しています。

この病気は70代から増え、80代に急増することが知られています。

弁の狭窄(狭くなること)が高度になれば心不全、胸痛、失神などが起こり、突然死したり1年以内に死亡するおそれの高い病気です。

大動脈弁狭窄症そのものは大動脈弁置換術(略称AVR)を行えば多くの場合、安全に、かつ元気に社会復帰できるため、

患者さんも医療者も治療のし甲斐のある病気です。

しかし高齢者なるがゆえに、さまざまな他病を抱えた患者さんも多く、

体力も低下しているため、心臓手術リスクが高いと言われて、

手術を受けずにそのまま死亡される患者さんが後を絶ちません。

TAVIの実物です
経カテーテル的大動脈弁植え込み術(Transcatheter aortic valve implantation、略してTAVI タビ)はそうした状況を打開するために開発されました。

現在までに、欧米を中心に普及が進んでおり、

日本でも昨年10月から保険診療ができるようになりました。

TAVIには大きくわけて3つの方法があります。

1.順行法、2.逆行法、3.経心尖部(心臓の先端部)法です。

ここでは主に2と3.についてご説明します。

1.順行法のTAVI:心房中隔に小穴をあけて、それ越しにカテーテルを進める方法ですが、

長いアプローチに少々無理があり、僧帽弁を逆流させたりするため一般的ではありません

2.逆行法のTAVI:足の付け根にある大腿動脈からカテーテルを入れます。

これまでに2つの弁(エドワーズ・サピエンEdwards SAPIEN弁とコアCoreValve弁)が発売されていて、

それぞれ研究が進められています。

サピエン弁のヨーロッパでの成績はこれまでのところ次のとおりです。

 
平均82歳の患者さん463名に対して、
弁植え込み自体は95%成功。しかし1.7%で失敗し緊急手術へ、0.6%で弁逆流などのため追加治療へ、1.6%で有意な弁逆流、0.7%で冠動脈入口を閉塞、9.9%で輸血が必要などの問題が見られました。

治療後30日で6.3%が死亡、2.4%が脳卒中、1.3%が腎不全と透析、6.7%がペースメーカー、17.9%で血管の損傷、1.9%で大動脈解離、1.1%でその他の合併症などが見られました。

いったん成功すると平均大動脈弁圧格差は術前の39±14 mmHgから術後は 9±3 mmHgへと改善しました。

コアバルブ弁でも平均81歳の患者さん646名で行われ、同様の成績でした。術後に軽度から中等度の弁逆流が少なからず見られています。

治療後30日で8%が死亡、9.3%がペースメーカー、0.6%で心筋梗塞、1.9%で脳卒中が見られました。症状に出ない脳障害がMRIで従来型の手術より多く見られたと言います。

3.経心尖部(心臓の先端部)法のTAVI TAVIの手術中。トロント総合病院にて。

全身麻酔下に小さく左胸を開けてそこから心臓の先端部に直接カテーテル弁を入れる方法です。

大動脈などの血管が動脈硬化などで悪いときに安全な方法です。

この方法でSAPIEN弁を575名の患者さんに使ったデータは次のとおりです。
平均年齢81歳で
弁植え込み自体は93%成功。しかし3.5%で失敗し緊急手術へ、2.3%で有意な弁逆流が見られました。

治療後30日で10.3%が死亡、7.3%がペースメーカー、0.7%で心筋梗塞、2.6%で脳卒中が見られました。腎不全をおこし透析になったかたが7.1%あったということです。

つぎにTAVIと内科治療つまりお薬などによる治療との比較では
 

LeonNEJM2010Oct358名のAS患者さんで、
術後の死亡や繰り返し入院の頻度は内科治療群72.6%に比べてTAVI群は42.5%とやや良好でした。TAVI群では75%の患者さんが術後無症状または軽症状だったのに対して内科治療では42%にとどまりました。

この結果から、これまで心臓手術ができずに、あるいはその決心がつかずに拒否しておられた患者さんにTAVIを行う意義は十分あると考えられるようになりました。

ACC(アメリカ心臓病学会)、AATS(アメリカ胸部外科学会)、SCAI(心血管造影インターベンション学会)、STS(アメリカ臨床外科医会)のガイドライン2012では、、

まず高リスク患者群で:

1.石灰化をともなう大動脈弁狭窄症で、

しかも弁尖が石灰化し収縮期に動かないもので、かつ平均圧格差が40mmHgまたは流速が4.0m/sを超えるもの

あるいは大動脈弁口面積が1.0cm2未満か0.5cm2/M2未満のもの

左室機能不全がある患者で弁尖の石灰化をともなう高度ASで弁尖が収縮期に動かないかドブタミン負荷エコーで流速が4.0m/sを超えるか平均圧格差が40mmHgを超えるか弁口面積が0.6cm2/M2未満のもの

患者がNYHA II度以上の心不全症状があるとき

インターベンションの循環器内科医1人と経験ある心臓胸部外科医2人が外科的AVRはできないか危険であると認めたとき。少なくとも心臓外科医一人が患者を評価したことが必須。心臓外科医のコンサルトノートがその決断の根拠を示し、STSスコアを印刷していることが必須。

なお以下の条件を満たさないことが必要です。つまり以下のものがあれば、TAVIはやるべきではないのです:

①二尖弁や一尖弁あるいは石灰化のない弁

②高度の大動脈弁閉鎖不全症 AR(3度を超える)

③エコー計測で大動脈弁輪径が18mm未満か、TAVIデバイスの最大サイズを超えるとき

④AMIの証拠が1か月以内にあるとき。CKやCK-MBなどの上昇ですね

⑤心肺機能低下で強心剤や人工呼吸、補助循環が30日以内に必要なとき

⑥緊急手術が必要なとき

⑦HCMまたはHOCMがあるとき

⑧左室駆出率が20%を切るときに

⑨高度な肺高血圧と右室機能不全

⑩必要な抗凝固療法ができないとき

⑪腎機能不全たとえばCrが3以上、あるいは透析が必要な状態

⑫心エコーにて心内に腫瘍や血栓やVegeがあるとき

⑬MRにて6か月以内に脳卒中やTIAの所見があるとき

⑭高度な認知症があるとき

⑮予測寿命が12か月を切るとき

⑯高度なMRがあるとき

⑰大動脈に病変があり経大腿動脈アプローチができないとき

⑱直径5㎝を超える胸部大動脈瘤または胸腹部大動脈瘤があるか、蛇行が激しいとき

⑲弓部大動脈にアテローマがあるとき、とくにそれが5mm厚を超えるときなど

⑳大動脈に狭窄部があるとき

21 大動脈が高度に蛇行しているか胸部大動脈の高度なUnfoldingがあるとき

このようにまだまだTAVIが使えないことは多くありますが、それでもこれまで手術できない、つまり死ぬのを待つしかないという患者さんをこれからはお助けすることができる可能性が高くなったとは言えましょう。


技術革新によって、ハイリスク患者さんだけでなく中等度のリスクの方にも使えるようになってきています。

カナダとドイツでの多施設前向き研究で、255名の中等度リスクの患者さんたちを検討した結果、術後30日死亡率はTAVIが7.8%、外科手術AVRが7.1%と差がありませんでした。術後1年の死亡率でもそれぞれ16.5%と16.9%と差は見られませんでした。ここでいう中等度のリスクとはSTSスコアで3-8%の範囲内という意味でした。

その他の研究でも同様の結果、つまりTAVIは外科手術AVRに匹敵するという結果が出始めています。

これらの結果はTAVIに将来性ありとは言えるかもしれませんが、やはり無作為振り分けでの研究結果が待たれます。現状では中等度リスクの患者さんにTAVIを行ってよいかどうか、不明なのです。

 

総じて TAVIは、、、

10-20%と高いリスクがあり、長期成績が悪いことからまだ限界が多いと言われています。

本来、従来型手術つまり大動脈弁置換術が危険でできない患者さんのためのものです。

さらに多くの経験の蓄積が必要と言われています。(2011.1.記)

 

参考: TAVIの今後の応用として→ valve in valve があります。

メモ1: TAVI (新名称TAVR)の新しいデータがPARTNERトライアル(臨床研究)から発表されました。ご参照ください。

メモ2: 従来の大動脈弁置換術ができないほど全身や動脈の状態が悪い方、超高齢者の方などにTAVIは威力を発揮しています。私ども医誠会病院心臓血管外科は、再立ち上げからまだ時間がそれほど経っていないため、認可待ちの状態です。

そこでTAVIが必要な患者さんには、1.比較的近くの病院へご紹介するか、2.多少距離が離れても経験豊富な施設へご紹介するなどしてベストの医療を行っています。こうした新しい治療法はまだ不明な点が多々あります。なので経験豊富なチームが患者さんにとって良いのです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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①d 僧帽弁狭窄症とは―放置すると危険なことも。弁形成への道が、、

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◾️僧帽弁狭窄症とは

その名のとおり、僧帽弁が開きにくくなり、狭くなる病気です。多くはリウマチによるものです。

 

図 僧帽弁の位置

弁が狭いために血液が弁ごしに流れにくくなり、左房の圧が上がります。

そこからさまざまな問題が起こり、症状が発生します。

 

◾️僧帽弁狭窄症の症状は

まず、肺からきれいになった血液が心臓に戻れなくなり、

肺がうっ血します。

そのために運動時に息切れが起こり、

悪化すれば安静時にまで息苦しくなったり肺に水が溜まります。

 

また高い左心房圧のため左心房が拡張し、次第にその構造が壊れます。

そして心房細動という不規則な不整脈が発生します。

心房細動のため左房の内側での血液の流れがよどみ、

血栓ができ、そのため脳梗塞などの重い病気が二次的に発生します。

心房の拡張による血液のよどみが血栓をさらにできやすくします。

脳梗塞が大きかったりやられた部位が運悪ければ命を落とすことも 僧帽弁狭窄症では左心房圧が高くなり左心房が拡張します。(AllAboutより引用) あります。

 

肺うっ血のため風邪をひきやすくなり、

またこじらせて気管支炎や肺炎を合併しやすくなります。

そのために命を落とす方も少なくありません。

 

高い左心房圧は肺うっ血を介して高い肺動脈圧を引き起こします。

これを肺高血圧症と呼びます。

重くなれば右心不全、両心不全をおこし、さらには肝不全などの原因にもなります。

三尖弁閉鎖不全症の原因は肺高血圧または心室中隔を介しての左室直接作用であることが知られています。

.

◾️僧帽弁狭窄症の治療は

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僧帽弁狭窄症はいったん重症化あるいは二次的問題が合併すれば予後が悪なる病気です。

 

僧帽弁狭窄症の治療は軽症には内科的、保存的治療つまり減塩や適度の運動、お薬などですが、

いったん狭窄が高度となり症状が悪化したりさまざまな二次的問題が発生すれば手術治療が適応となります。

 

MVR 弁が肥厚硬化しているケースが多いため、

一般には人工弁を用いた僧帽弁置換術MVRが選択枝となります。

その場合、弁を切除するときに乳頭筋を温存すれば、術後の左室破裂や心不全が回避しやすくなり、

しかも術後の心室のパワーアップが図れるため、勧められる方法です。

 

なおたまたま弁葉が柔らかく保たれており、前尖と後尖が交連部で癒合しているだけであれば、

僧帽弁交連切OMC開術という、ある種の僧帽弁形成術が施行されます。

 

さらに近年は20代ー40代の若い患者さんを中心に、弁形成術を希望されることが増えたため、

私たちのチームでは弁葉を患者さん自身のやわらかい組織で置き換えて弁形成を行うケースが増えました。

手術手技の難易度は高いですが術後のQOLつまり生活の質も高く、

社会ニーズにも応えることになり、

今後の展開が期待される手術です。

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◾️不整脈(心房細動)に対しては

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また心房細動に対してはなるべくメイズ手術を併用して除細動に努めています。

僧帽弁狭窄症の患者さんとくに病脳期間が長い場合心房細動をおこしやすいことが知られています。

私たちはメイズ手術の生みの親であるセントルイス大学のコックスCox先生のデータをもとに、

完全メイズ手術を行うことで除細動率を高めて来ました。

さらに左房サイズが除細動率に大変重要であるというEBM(証拠にもとづく医学)情報をもとにして、

2000年代に入ってまもなく、心房を小さくする心房縮小メイズを考案し、

除細動率をさらに高めました。(事例:重い僧帽弁狭窄症などの患者さん

 

これらの努力のおかげもあって、僧帽弁狭窄症に対する治療成績は改善の方向にあります。

さらに僧帽弁狭窄症でも僧帽弁形成術ができるよう、工夫を進めています。

自己心膜や人工腱索(糸)を使用して形成を完遂するのはその一つです。

同じ原因をもつリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成のノウハウが役に立っています。

今後の展開が期待される領域です。

.

◾️今後の展開

 .

このように僧帽弁狭窄症の患者さんの予後は、QOL(生活の質)とともに、今後さらに改善するものと期待されます。

 .

患者さんには、上記の二次的合併症がおこるまでに弁膜症に詳しい専門医の診察を受けて頂くようお願いしたく思います。

とくに脳梗塞が起こるまでに治療を開始することは大切です。

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メモ1: 僧帽弁狭窄症の治療指針ガイドライン。

ガイドラインをもとにして治療計画を立てることが患者さんにもっとも有利な結果を導きやすいのです。

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②b 三尖弁形成術について―弁形成率を100%へ?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️はじめに

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三尖弁形成術は一見目立たない手術ですが、患者さんに大きな貢献をもたらすものです。

うっ血のため全身に大きな負担をもたらす三尖弁閉鎖不全症(三尖弁が逆流する病気です)がお薬や安静などではコントロールできなくなったとき、

三尖弁形成術を行えば多くの場合、改善が図れるからです。

とくに肝臓をうっ血から守るという意義は大きいです。

内外の学会でも三尖弁形成術の重要性が認識される方向にあり、

実際これをテーマとしてよく議論が交わされるようになりました。

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◾️三尖弁形成術の基本術式

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三尖弁形成術の基本は弁の付け根である弁輪を

適正なサイズと形に形成する三尖弁形成術(略してTAP)です。

 

DeVega法による三尖弁輪形成術 これは

かつてはDeVega(ドゥベガ)法という、1対2本の糸で弁輪を縮小形成することから広がりました。

大変シンプルで短時間にでき、

しかも当時の知識からは理にかなった方法で三尖弁中隔尖はそのままにし、

前尖と後尖を糸で縮めるというものでした。

現在でも重症患者さんで時間の余裕がないときや、

弁輪拡張が軽いときなどに使える良い方法です。ポートアクセス法に代表されるミックス手術(創が小さく社会復帰が早いです)でも重宝することがあります。

 

しかしこのドゥベガ法は重症の三尖弁閉鎖不全症では長年月の長期成績で後述のリング法より劣り、

その原因は糸を支える組織が次第に切れて縫縮効果が薄れること、

そして中隔尖を守れないことなどが考えられました。

そこで私たちはもしドゥベガ法を使う場合にはリングと同じ部位に糸をかけ、これまでより長期安定性の良い、いわばドゥベガ変法をもちいています。

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◾️そしてリングによる三尖弁形成術

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その後パリのカーパンチエCarpentier先生が自ら開発されたCarpentierリングを用いた三尖弁形成術を発表され、

その優れた長期安定度から次第にこのリングTAPが標準手術として定着していきました。

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さらにモンタナの故・デュランDuran先生が開発されたDuranリングを用いたTAPも使えるよ リングによる三尖弁輪形成術 うになりました。

このリングは柔軟なため、大動脈基部に三尖弁輪がやや圧迫されその形が平均的でない場合などに有用と考えています。

クリーブランドのコスグルーブCosgrove先生が開発されたCosgroveリングはDuranリングと異なり全周性でないため、

やや簡便に使えるという利点があります。

 .

◾️現代の三尖弁形成術用のリング

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現在は上記のリングに加えてMC3リングという三尖弁輪形成用リングが普及しています。

このリングは大動脈基部の自然のふくらみを考慮してすこしらせん状にねじれた形をし、

弁輪にきれいにフィットし、

また自然の弁構造を再現するという利点があります。

ただし大動脈基部が拡張ぎみ(しかし手直しするほどではない)のケースではMC3リングがフィットしないことがあります。

こうした点をケースバイケースで考慮してその患者さんに最適の三尖弁形成術を行うようにしています。

 .

◾️より高度な三尖弁形成術

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三尖弁輪形成術TAPだけでは解決しない三尖弁閉鎖不全症が時にみられます。

一般にはこうしたケースで三尖弁置換術、つまり人工弁で置換することが行われます。

しかし三尖弁置換術とくに機械弁の長期成績は必ずしも芳しくありません。

それは機械弁では血栓が僧帽弁よりできやすく、生体弁でも弁の劣化が起こりやすいからです。

 

GoreTexCTそこで私たちはこうしたケースでゴアテックス人工腱索をもちいたり、自己心膜を用いて三尖弁をより精密に形成するようにしています。

これは僧帽弁の複雑形成術で培った技術で可能となりました(右図)。

たとえば腱索が長年の逆流や感染のために短くなったり切れたりしている場合、通常は形成できないのですが、人工腱索の技術ではそう難しくありません。

ペースメーカーのケーブルによる三尖弁閉鎖不全症で、

ケーブルのため腱索が巻き込まれてぐちゃぐちゃになっているケースでも

これまで形成が成功しているのはこのおかげです。


こうした工夫で対処できないケース、たとえば弁逆流のため弁尖が縮んだり厚くなったりしているときには、心膜パッチなどをもちいて弁を増幅するようにしています。これにより弁尖同士が助け合って正しく閉鎖できるようになります。

あるいは右室拡張で「浮き上がった」三尖弁前乳頭筋などを糸で心室中隔へ固定するなどの操作を加えることもあります。

 .

MICS3
同じ三尖弁形成術でもミックスなら右図右半のように目立たない小さい傷跡で手術できます

またMICS(ミックス、ポートアクセス法)と呼ばれる小切開低侵襲な方法による三尖弁形成術も実用化しつつあります。

右図の左側は標準的な正中切開の創を、右側はポートアクセス法での創を示します。

私たちの経験では三尖弁形成術単独でも、あるいは僧帽弁手術メイズ手術との組み合わせでも、

安全にオペができ、社会復帰や美容効果も大きいものがあります。

 .

◾️三尖弁形成術の今後

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こうした工夫や新しい材料を駆使してさらに三尖弁形成術は進化していくものと考えます。

MICS法は一段と発展するでしょう。

さらに今後は大動脈弁に対するTAVIのような、

カテーテルをもちいて折りたたんだ生体弁を植え込むタイプの治療も加わり、

治療成績はさらに上がり、より多くの患者さんが恩恵を受けられるでしょう。

 

そうしたこともあり、オペできない、とくに肝臓がうっ血肝硬変になってオペ不可能と言われた方でも中にはそれができるケースが多々あります

(患者さんのお便りやペースメーカー三尖弁閉鎖不全症などをご参照ください)。

まずは経験豊かな医師と相談し、ともに考えることが大切です。

.

一つお願い: 患者さんやご家族の中には状態がうんと悪くなってから連絡して来られるというケースがよくあります。お気持ちはわかるのですが、すでに寝たきりとか集中治療室に入ってからでは、手術に耐えられる体力がなく、どうにもならないこともあるのです。できればまだ何とか歩けるうち、これが有利なタイミングです。

 

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⑥c デービッド手術(David手術)―さらに磨きをかけて高いQOL生活の質へ 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月15日

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◆ デービッド手術とは?(自己弁温存・大動脈基部再建

大動脈基部が拡張すると大動脈弁閉鎖不全症が発生します。あるいは大動脈壁が破れたり裂けたりすることもあります。(AllAboutから).

**デービッド手術(David手術/Reimplantation)**は、
大動脈基部拡張症で広がった根元(バルサルバ洞や弁輪)を人工血管で再建し、ご自身の大動脈弁(自己弁)を温存する根治手術です。

私の恩師・デービッド先生が開発されました。

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  • 大動脈基部が拡張すると

  • 弁尖が大きく壊れていない場合、人工弁を使わずに自己弁を守れるのが最大の特徴です。

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◆ 手術の流れとポイント(わかりやすく)

David-op.

  1. 拡張した大動脈基部を切除

  2. 自己の大動脈弁(弁尖)を人工血管内へ“移植”するように固定(再植)

  3. 左右の冠動脈の入口(ボタン)を人工血管へ縫合

  4. 人工血管と上行大動脈を吻合して再建完了 (事例1を参照してください)

  • 人工血管のサイズ設定縫い付け位置が逆流防止のカギ。(参考記事はこちら

  • 今後は3つのバルサルバ洞付き人工血管を用い、生理的な流れと耐久性を追求する方向が予想されます。

 .

◆ どんな人に向いている?(適応の目安)

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  • 大動脈基部拡張症+大動脈弁閉鎖不全症で、弁尖の破壊が少ない方 (事例2

  • マルファン症候群など結合組織疾患(事例)、大動脈二尖弁(BAV)、慢性解離(事例)、炎症性大動脈疾患(大動脈炎など)(事例・大動脈炎にデービッド手術)で弁尖が保たれている

  • 妊娠を希望する方、スポーツや仕事を続けたい若年~中年の方(抗凝固薬(ワーファリン)を避けられる可能性があるためQOL面で有利)

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手術タイミング(径の目安)

  • 多くの施設:50mm前後で検討(従来55mm→近年は早め推奨)

  • 結合組織疾患(マルファンなど):45mm程度から早期手術を検討
    ※個別の体格、増大速度、家族歴なども加味します。

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◆ デービッド手術のメリット(自己弁温存の価値)

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  • 人工弁を使わない

    • 機械弁のワーファリン生涯内服を回避

    • 生体弁の耐久性低下・再置換の懸念を回避

  • 心臓の自然な動きを守りやすく、長期安定が期待できる

  • 若年者のQOL(妊娠・出産、スポーツ、仕事)で利点が大きい

→→もっと見る

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◆ リスク・限界と、よくある疑問

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  • 初回AVR(大動脈弁置換術)より手技が複雑:熟練チームでの実施が必要

  • 高圧系の再建で出血リスクがやや高い

  • 弁尖損傷が高度な場合は追加の弁形成が必要/人工弁置換へ切り替えの可能性も

  • MICS(低侵襲):症例により小切開・部分胸骨切開の工夫が可能(完全MICSは適応を吟味)

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FAQ
Q. ベントール(ベンタール)手術との違いは?David & Bentall
A. ベンタールは基部+人工弁で置換、デービッドは基部再建+自己弁温存。弁尖が保たれるならデービッドで抗凝固回避が期待できます。


Q. 長持ちしますか?
A. 適切な症例選択と正確な幾何学再建で長期安定の報告が多数あります。早めの時期に受けるほど有利です。

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◆ 当院の工夫(安全性と自然さの両立)

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  • 針孔出血の少ない人工血管バルサルバ洞付きグラフトで流れを自然に

  • 弁輪・ST接合部の幾何学最適化(Brussels height・各種フォーミュラの活用)

  • 弁尖補強(自己心膜の最小限パッチ等)や併用弁形成再発リスクを低減

  • 肝機能・出血管理まで含めた周術期プロトコル(無輸血希望にも個別対応)

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◆ ベストな時期に、ベストの術式を

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  • **自己弁が保たれている「今」**が、**将来の自由(QOL)**を左右します。

  • 待ちすぎて弁尖が壊れる前に――自己弁温存の選択肢を検討しましょう。

  • 画像所見・体格・併存疾患・生活設計(妊娠、競技、仕事)を踏まえ、ハートチームで最適解をご提案します。

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◆ まとめ

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  • デービッド手術は、自己弁温存で大動脈基部を再建する根治術

  • 抗凝固回避・自然な心機能・長期安定が期待でき、若年~中年でQOL向上に直結

  • 適応とタイミングが重要(結合組織疾患は早めの判断)

  • 熟練チームで安全性と耐久性を両立し、必要に応じて追加弁形成小切開も併用

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「人工弁以外の道はない」と言われた方も、一度はご相談ください。
生活の目標(仕事・スポーツ・妊娠)に沿って、自己弁を守る治療を一緒に検討します。

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執筆:米田 正始
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元・京都大学医学部教授
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お便り35 エホバ証人の大動脈弁狭窄症の患者さん

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Ilm10_de02005-s 大動脈弁狭窄症(弁が狭くなり心臓に無理がかかります)は重症になれば突然死の恐れがでる病気ですが、

いったん手術つまり大動脈弁置換術を乗り切れば予後の良い病気でもあります。

近年は心臓外科の技術進歩やノウハウの蓄積で経験豊かなチームなら手術死亡率は1%前後まで下がって来ています。

 

しかしエホバの証人の患者さんの場合は輸血を拒否されますので、手術死亡率が跳ね上がります。

だからと言って輸血拒否は宗教上の信念にもとづくものであるため、可能な限り尊重すべきものと私たちは考えています。

 

以下は最近大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術を受けられたエホバの患者さんからのお便りです。

 

当科へ初めて来られたときはかなりの貧血があり、このままでは無輸血手術できない可能性があるため、しばし時間をかけてさまざまな対策を立てて貧血を治しました。

その上で大動脈弁狭窄症への手術を行い、ゆうゆうと乗り切って元気に退院されました。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

*****************************

米田正始先生
お元気でいらっしゃいますか? お便り35実物

きっと精力的に、かつ暖かくスケジュールをこなしていらっしゃる事とおもいます。

 
お便りするのが遅くなり本当に申し訳ありません。
受診、入院、手術と9月6日から始まって11月5日まで名古屋ハートセンターでは本当にお世話になりました。

米田先生はまさかと思ってお送りした私のメールにも、すぐにお返事を下さり大きな手術にも心を整えてくださいました。

 

今までの自分の介護経験のなかで患者側は「病気と闘うという事は医療スタッフとの闘いでもある」という実感を私は少なからず持っていましたが、 

米田先生にお会いして、その重苦しさは一変し自分自身とても暖かなものを感じ安堵感を覚えました。

しっかりしたご説明、先生の自信、熱意にふれ本当に救われた思いでした。

 

貧血症でありながら無輸血でお願いしたいという私の希望も最大限尊重して下さり本当に嬉しかったです。

入院中は傷の痛みを除けば本当に楽しかったです。

北村先生、深谷先生、小山先生もとても細やかに気を使って下さって明るい気持ちにさせて下さいました。 

体の患部だけでなく人として接して下さってる様子に多くの方が元気を頂いてるようでした。

 

看護師の方達や他のスタッフの方々も良い病院にしようという気持ちが伝わってきました。
本当に有難うございました。
退院してからは2日程不整脈が出ましたが、近くの医院で薬を貰い今はすっかり落ち着いています。

先生がこの点でも患者が困らないように配慮してくださっていた事、本当に有難うございました。
新しくなった心臓を本当に大切に扱って(?)良い人生をこれから歩んで生きたいなと思っております。

先生のwebヘ゜ーシ゛勝手に私の応援歌のように思いいつも楽しみにしています。

米田先生、どうかいつまでもお元気でいてくださいね。次は12月3日が受診日です。
心からの感謝を込めて。

 

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