事例: PCI後、急性心筋梗塞後の冠動脈バイパス手術

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冠動脈バイパス手術(CABG)の良さがあらためて認識されつつあります。

このことは昨年改訂された日本循環器学会のガイドラインが物語るところです。

3枝病変や左主幹部病変で複雑な病変があるケースはCABGが第一選択と明記されたのです。

さらに若い先生方を中心に、ガイドラインを順守する向きが増えたことも一因です。

ただしそれまでも患者さんの状況や状態によってはカテーテル治療(PCI)ができる場合でも前向きにCABGを選択されることはよくありました。

患者さんは46歳男性です。

冠動脈3枝病変があり、カテーテル治療PCI後で、最近急性心筋梗塞AMIで来院されました。

来院前は近くの診療所で心室細動VFになり、AEDで蘇生ののち救急車で当院へ搬送されるという、ぎりぎりの状態でした。

来院当夜は緊急カテーテルで右冠動脈1番にステントを入れて救命できました。しかしそれ以外の冠動脈にも問題がありました。

もともとびまん性病変つまり冠動脈のあちこちが悪くなっている、しかも若い患者さんのため、長期的な安全を考えて、PCIではなくバイパス手術を行うことにいたしました。

 

胸骨正中切開ののち両側内胸動脈と左大伏在静脈SVGを採取しました。

図1心膜を切開し、まず右内胸動脈RITAを左前下降枝LADにオンレイパッチ吻合しました。

この患者さんのLADは数か所の狭窄がありましたので、

末梢側の狭窄を切開しこれを拡大する形でバイパスをつけ、広域を灌流するよう努めました(写真左)。

切開した狭窄症は内膜が肥厚・石灰化し針を通すのに工夫を要しました。

ドップラーにて良好なフローパタンを確認しました。

図2ついで心臓を脱転し、左内胸動脈LITAをまず中間枝IMに側側吻合しました(写真右)。

IMはLAO viewで比較的良い血管に見えたためバイパスをつけることにしましたが、

血管を開けてみますとやや細く、ドップラーでのフローも少ないパタンでした。

図3このLITAをさらに末梢の鈍縁枝OMに端側吻合しました(写真左)。

この吻合もプラークを切開し灌流域を広げるようにしました。

ドップラーで良好なフローパタンを確認しました。

回旋枝末梢枝は細く、かつ病変で策状になっていたためバイパスはつけませんでした。

 

ここでSVGを 図4上行大動脈にデバイスを用いて吻合し、心臓を頭側へ脱転し、このSVGを4PD枝に吻合し、操作を完了しました(写真右)。

良好なフローパタンを確認しました。

 

手術中、血圧・血行動態は安定していました。

経食エコーにて良好な心機能を確認しました。入念な止血ののち、無輸血にて手術を終えました。

術後経過は順調で、出血も少なく、血行動態も良好なため、術当日夕方、人工呼吸から離脱し、翌朝、一般病棟へ戻られました。

00021915_20090113_CT_501_5_5 00021915_20090113_CT_501_4_4術後のMDCTでバイパスはすべて開存し、良く流れている様子でした。

左図は両側内胸動脈グラフトが開存し、

右図は静脈グラフトが開存している状態を示します。

 

その後も経過良好のため術後10日目に元気に退院されました。

来院前はAEDで蘇生救命されるなど、じつに間一髪の危ない状況でしたが、すっかり良い形になられました。

これから永く楽しく過ごして頂ければと思います。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例:重い僧帽弁狭窄症などの患者さん

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僧帽弁狭窄症が進行すると心房細動、そして巨大左房になり、多量の血栓が左房の中にでき、脳梗塞などの大きな問題がおこります。また心不全や肺合併症のため命を落とす方が長期的に増えて行きます。

そこで僧帽弁だけでなく左房や心房細動三尖弁閉鎖不全症などをしっかりと併せ治すことが肝要です。

患者さんは75歳女性、僧帽弁狭窄症(高度)、肺高血圧症(高度)、三尖弁閉鎖不全症(中等度)、巨大左房、心房細動)のため米田正始の外来へ来られました。

心不全症状が強く心臓も大きくなっており、左房の中に血栓が多量にあるためもあり、手術することになりました。弁膜症の極めつけのような状態でした。

図1心臓手術では体外循環・大動脈遮断下に左房を右側切開しました。

左房は高度に拡張し、左心耳を中心に大きな暗赤色血栓(大型スプーンのサイズ)があり(写真右)、摘除しました(写真左)。

図2左心耳の中に白色血栓があり、上記の大きな新鮮血栓の起源は左心耳であることを示しました。

左房左室を洗浄し、血栓が残らないようにしました。

 

 僧帽弁は肥厚・硬化・ 図3石灰化が著明で(ようするにガチガチに硬く変化していました)、

弁口は中央部にわずかに残る程度となっていました(写真右)。

こうした弁は近年は弁形成するようにしていますが、この頃はまだ弁置換を主体にしていました。それと患者さんのご年齢から生体弁でも20年近く持ち、しかも短時間で確実に完了する意義は大きいため弁置換を行うことにしました。

図4

弁を切除しつつ左室内を観察しますと、弁下組織が短縮し弁葉にまで引き上げられる形になっていました。

左室を守るため基部腱索の一部を残してそれ以外の弁葉・ 図5腱索と乳頭筋先端部を切除しました(写真右、弁から切り離された乳頭筋はすでに正常の位置に戻っています)。

左室破裂予防と術後左室機能改善のため、

ゴアテックス人工腱索を前後乳頭筋先端に1対ずつ立て、

これをそれぞれ僧帽弁輪の10時と6時の方向に吊り上げました

(写真上、後乳頭筋の人工腱索が見えています)。

図6

ここで弁操作を一旦止め、巨大左房を左心耳も併せて私どもの心房縮小メイズ法で縫縮し、

続いて縫縮ラインを冷凍凝固にてアブレーションしました(写真上左)。

その 図7上でMosaicブタ生体弁25mmを縫着しました(写真上右、2つ前の写真と比べますとかなり小さくなりました)。

弁機能が良好であることを確認ののち、左房をさらに縫縮しつつ閉鎖しました。

 

図8心拍動下に右房をメイズ切開しました。

三尖弁そのものは健常ながら弁輪の拡張が見られたため、MC3リング28mmにて三尖弁輪形成術TAPを施行しました(写真左)。

冷凍凝 図9固法で右房メイズ手術をおこない、

さらに心房細動の予防のため峡部をも冷凍凝固し(写真右)、右房を縫縮閉鎖しました。

ANP(心臓ホルモン、大切な利尿作用などがあります)分泌能を残すため右心耳は温存しました。

離脱はカテコラミンなしで容易でした。

写真下左は術後の右房、下右は術前の右房です。

図10 図11

同じ視野でも、術前は拡張した右房しか見えていなかったのですが、

術後は右房が小さく、右室がよく見えるほどになっています。

経食エコーにて僧帽弁(生体弁)・三尖弁や左室・右室の機能が良好であることを確認しました。術前は血圧の80%前後あった重症肺高血圧は手術終了段階で約40%程度にまで改善していました。

こうした高度MS、巨大左房の症例では一般にはメイズ手術の適応にさえならないことが多いのですが、心房縮小メイズ手術にて無事除細動でき、sequential pacingに乗りました。心房の収縮も明瞭にありました。

術前肝うっ血のためか出血傾向が見られましたので、より入念な止血を行ったのち手術を終えました。リズムは心房ペーシングで良い形になりました。

術後経過はしばらく出血傾向が見られたほかは問題なく、手術翌日に抜管しました。

その後の経過も良好で手術後10日で元気に退院されました。

あれから4年が経ちますが、外来でお元気なお顔を見せて下さいます。手術後2年の時点で脈が遅くなってきたため、ペースメーカーを入れておられますが、心房細動はよく取れており、DDDタイプの自然なペースメーカーで安定しておられます。

心臓もすっかり小さくきれいな形を取戻し、しっかりと治すことの意義を感じます。

 

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原因 

弁狭窄症

リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症

弁形成術

◆ ミックスによるもの

◆ ポートアクセス手術のMICS中での位置づけ

◆ リング

◆ 弁狭窄症に対する僧帽弁交連切開術


虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術

④ 弁置換術

◆ ミックス手術(ポートアクセス法)によるもの  


⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

心房細動

メイズ手術

心房縮小メイズ手術

ミックスによるもの:

心房縮小メ イズ手術 

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執筆:米田 正始
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【第四十三号】 大気汚染物質 PM2.5 につきまして

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 【第四十三号】
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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春らしくなってきましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。

楽しい季節ではありますが、花粉症の季節でもあり、かつ黄砂も気になります。

そうした中で「PM2.5」などというやっかいな大気汚染物質が話題になっています。

中国から飛来しているようですが、その本家中国では肺その他の病人さんが増えて困った事態になっているようです。

その大きな原因が石炭による発電ということがわかり、なるほど、それで石油の埋蔵量が豊富な尖閣にも手を出しているのかと、少し世の中が見えたような気がいたします。

それはともかく、最近のヨーロッパの権威ある心臓学会で、PM2.5は心臓病の患者さんの寿命を縮めるという報告がなされました。

この研究では主に心筋梗塞を患われた患者さんを対象として調べられたようですが、心臓病全体についても同様の懸念がでています。

こうなると放ってはおけない事態ですので、丁度依頼されたこともあって、オールアバウト(知識の百科事典のようなページです)にPM2.5の解説をいたしました。

http://allabout.co.jp/gm/gc/413020/

をごらんください。

皆様の健康管理にお役立て頂ければ幸いです。

ちょっとした工夫と注意でかなり改善できると思います。

とくにお年寄りや小さいこどもさんにはそうした知識が役立つでしょう。

いたずらに恐れることなく、しかし油断もすることなく、しっかりと体や健康をまもりましょう!

敬具

平成25年3月21日

米田正始 拝

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事例:複雑な僧帽弁形成術 その2

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僧帽弁形成術にはさまざまな難易度のものがあります。術前に普通程度と予測されていたケースが手術してみたら、けっこう難題であったこともあります。

医師とくに外科医の昔からある諺に「オペを安全確実にしたければ一段上のものが自信をもってできる、そういう状況で手術しなさい」というのがあります。たとえば虫垂炎の手術を確実にしたければ、腸切除の技術を十分に身に付けてからにしなさいというわけです。

これを僧帽弁形成術でいえば、普通の後尖の一部切除でできるケースを安全確実にやりたければ、その一段うえのゴアテックス人工腱索が自信をもってできるようにしてからやれ、となります。

そうしたことをあらためて実感させてくれたケースでした。

 

患者さんは34歳男性です。

僧帽弁閉鎖不全症三尖弁閉鎖不全症、そして発作性心房細動をお持ちでした。


当初はかかりつけの先生から弁膜症ということで近くの病院へ紹介されましたが、患者さん自身、医療関係者で本やネットで勉強しハートセンターへ来院されました。

図1
 手術のとき、僧帽弁は後尖の中央部(P2)と右側(P3)がくっつきかつ瘤化し、完全に逸脱していました(右図)。

その腱索は1本が断裂し、他は伸展していました。

図2前尖も中央部(A2)と右側(A3)、

そして交連部部分(PC)が逸脱していました。

前尖は肥厚していました。

後尖の逸脱部 図3分を四角切除すると後尖の6割を切除しなくてはならず、それでは成り立たないため、

まずP2+3の中央部の瘤化部分を三角切除しました(右図)。

P2+3の残る部分を再建しました。

図4 こで、逆流試験で調べてみると前尖の逸脱がより鮮明になりました。

また再建P2+3も逸脱していたため、ゴアテックス人工腱索をこれらに付けることにしました。

 

人工腱索をまずPCに2本、さらにA3に4本つけ、さらにA2の後交連側に2本つけました。

つまり前尖とPCと併せて8本の人工腱索を付けたのです。左上図はその操作中の様子です。

流試験にて逆流の消失を確認しました。図5

逆流試験はOKでも、後尖の逸脱は残存していましたので後尖にもゴアテックス人工腱索をつけることにしました(右図)。

再建後のP2+3にゴアテックスCV5を5mm間隔で4本つけました。

逆流試験で逆流だけでなく逸脱も無いことを確認しました。

図6ここで僧帽弁輪形成術MAPのリングサイズを検討しました。

弁の肥厚があり、かみ合わせを良くするためやや小さめの28mmのリングを選択しました。

リング縫着後、逆流試験で逆流がないことを確認しました。左図です。

弁尖のかみ合わせを測定するため青いインクをもちいたインクテストを行うため、弁尖は青い色になっています。

そして左房メイズを冷凍凝固法にて行いました。

左房を閉鎖し大動脈遮断を解除しました。

図8三尖弁は弁輪拡張著明であったため、硬性リング30mmで三尖弁輪形成を行いました。

逆流試験にて逆流がないことを確認しました(左図の中下部分)。

それから右房メイズ施行しました(右下図)。

 

自然の状態で経食エコーを調べますと、僧帽弁の形図7は概ね良いのですが、前尖の収縮期前方変位(SAM)が発生しそのため中程度の逆流が起こっていました。

こうした場合、ベータブロッカーなどのお薬を使えば改善しますが、若い患者さんで将来永く薬なしで行ける方が良いですし、追加形成する時間は十分あるため、さらに形成を加えることにしました。

もとのリングをはずし、2サイズ大きくしてやり直しました。逆流試験では多少の逆流が見られましたが、体外循環の後は良くなると確信したため、そのまま左房を閉じました。

その結果、経食エコーにてSAMはほぼ消失改善、僧帽弁閉鎖不全症もゼロになりました。

比較的複雑な僧帽弁形成術になりましたが、無事きれいな形で仕上がりました。

術後経過は順調で、手術翌朝には集中治療室を元気に退室され、術後10日目に元気に退院となりました。

このレベルの複雑僧帽弁形成術となると、ちょっと形成やっているという病院ではお手上げ状態となり、人工弁をもちいた弁置換になることが多いです。

僧帽弁形成術に豊富な経験をもつチームを選ばれた患者さんの努力の賜物と思います。

またこうした方に選ばれたことを私たちは大変光栄に思います。

やはりこうした心のつながり、絆をもって手術に臨むのは素晴らしいことです。

手術後まる3年が経過し、僧帽弁閉鎖不全症もほぼゼロで安定し、外来でお元気なお顔を拝見してはうれしく思っています。

 

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原因 

閉鎖不全症 

逸脱症

リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症

弁形成術

◆ ミックスによるもの

◆ ポートアクセス手術のMICS中での位置づけ

◆ 形成用のリング

◆ バーロー症候群

◆ 三笠宮さまが受けられた僧帽弁形成術

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するそれ

④ 弁置換術

◆ ミックス手術(ポートアクセス法)によるもの  


⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

心房細動

メイズ手術

心房縮小メイズ手術

ミックスによるもの:

心房縮小メ イズ手術 

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事例: 僧帽弁閉鎖不全症と巨大左房

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僧帽弁閉鎖不全症は時間が経つと左房が大きくなり、酷い場合には巨大左房となります。

そうなると心房細動は必発ですし、血栓ができやすく、脳梗塞の危険性が高まります。

原因である僧帽弁閉鎖不全症をそうなるまでに治すことが一番患者さんの安全に役立ち、実際ガイドラインでもそれが推奨されています。

以下の患者さんはそうした状態に僧帽弁形成術心房縮小メイズ手術などを行い、お元気になられたケースです。

患者さんは68歳女性です。

僧帽弁閉鎖不全症MR、三尖弁閉鎖不全症TR、巨大左房と慢性心房細動AF、慢性肝炎・血小板減少症を患っておられ、結構重症の弁膜症です。

通常の医学常識ではこうしたケースの心房細動は手術でも治せないことになっています。

図1手術では 、まず僧帽弁は前尖の左側A1、前尖の中ほどA2が逸脱していました(写真右)。

図2その原因としてA1腱索の太い1本が断裂し(写真左)、

その他の腱索も伸展していました。

まず僧帽弁輪形成術の糸をかけて視野を確保しました。

図3ついでゴアテックス人工腱索を前乳頭筋先端に4本かけ、これを前尖のA1部にほぼ均等につけました。

さらに同人工腱索2本をA2部にかけ、これは後乳頭筋先端にかけました。

右図はその操作中の様子です。

図4ここでいったん方向を変え、まずリングをつけて僧帽弁輪形成術を行いました。

左図はそのリングが入ったところです。

左房の拡張が顕著です。

左図でリング(白い色のバンド状のもの)の下側がお鏡餅のようにたるんでいるのが、拡張左房の壁なのです図5

そこで拡張している左房を縫縮縮小しました。

右図がその様子です。上図のお鏡餅のようなものがぺしゃんこになり、左房が小さくなたことがわかります。

この縫縮ラインを冷凍 図6凝固いたしました(左図)。

左房を小さくでき、さらにカテーテルでは焼きづらいところまでしっかり焼ける(といっても温度は60℃程度で麻酔もあって痛みはありませんが)、

これが手術の良いところです。

なお左心耳は内側から閉鎖しました。

その 図7上でリングを僧帽弁輪に縫着した糸を結紮ししっかりと固定しました。

逆流テストにて僧帽弁の逸脱や逆流がないことを確認しました。

右図です。僧帽弁がしっかりと張って、しかも水の漏れがないのが見えます。

図8さらに心拍動下に右房をメイズ切開(房室間溝にほぼ垂直)し、右房メイズを施行しました。

三尖弁は強く拡張(写真左)していたため、

リング28mmで三尖弁輪形成を行いました(写真右、その中央の紐状のものがリ 図9ングです)。

右房を縮小縫合閉鎖しました。

 体外循環からの離脱は心房ペーシング下にカテコラミンなしで容易にできました。

経食エコーにて良好な僧帽弁および三尖弁機能と、良好な心機能を確認しました。

心房の運動性もかなり回復していました。止血には平素より時間をかけ、そののち手術を終えました。

術後経過はおおむね順調でした。もともと出血傾向があったため止血に努力しました。

手術翌日に集中治療室を無事退室し、運動療法を進めつつ、不整脈の治療と安定に時間をかけ、1か月後に元気に退院されました。

あれから4年が経ちますが、外来でお元気なお顔を見せて頂けるのが何よりです。

僧帽弁、三尖弁とも良好ですが、

リズムも正常リズムで、よろこんで頂けました。何しろ通常のメイズ手術では治せないタイプの心房細動だったのですから。

重症ほど弁形成の意義は大きく、弁形成するならこうした強化型メイズ手術の意義が大きくなります。

心房縮小メイズ手術は一部の欧米施設では活用されていますが、日本ではまだまだこれからで、さらに磨いて啓蒙もしたく思います。

 

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原 因 

閉鎖不全症 

逸脱症

リウマチ性

弁形成術

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心房細動

メイズ手術

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事例: 急性大動脈解離で緊急手術

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急性大動脈解離は大動脈の壁が内外に裂けておこる病気です。

このなかでスタンフォード分類A型とよばれる上行大動脈が解離するタイプは緊急で手術しなければ発症2日間で患者さんの約半数が亡くなるという大変な病気です。

慣れたチームなら緊急手術することで 95%以上の確率で治すことができ、的確な治療がいかに大切かがわかる病気です。

以下の事例は57歳女性で、急性大動脈解離(スタンフォードA型)に大動脈弁閉鎖不全症を合併し、危険な状態になっていたため近くの病院から緊急搬送されました。

心膜切開後の所見手術にて心膜を切開したところ、心のう内には血液はありませんでした(左図)。

上行大動脈が解離して太くなり、かつ表面が赤黒くなり破れる寸前の状態であることがわかります。

手術開始直前の血圧低下はおそらく解離した上行大動脈がSVCを圧迫していたためと推察しました。

解離は弓部大動脈から大動脈基部近くまで見られました。

Ao切開体外循環を開始しました。体温が21℃まで低下したところで循環停止としました。

上行大動脈を横切開しました(右図)。

エントリーらしいものを切開部付近に認めた以外は末梢側・中枢側とも内膜は大丈夫でした。

 

GRF糊注入上行大動脈遠位部を近位弓部大動脈まで切除し、

外膜と内膜をGRF糊(のり)で固めたあと(写真左)、

ダクロンヘマシールド人工血管24mmを吻合しました(写真下右)。  遠位部吻合チェック

エア抜きののち、22分で循環停止を完了し、通常の体外循環に復しました。

 

吻合部の止血確認・補強ののち、大動脈基部を剥離・トリミングしました。

AVP大動脈基部は無冠尖NCCと右冠尖RCCを中心に解離していたため、GRF糊を用いて解離部を固定し、さらに各交連部をすべて吊り上げ固定して解離やARの進展を防ぐようにしました(写真左)。

その 中枢側吻合上で上記のダクロン人工血管を縫合しました(写真下右)。

 63分で大動脈遮断を解除し、105分で体外循環を容易にカテコラミンなしで離脱しました。

 

十分な止 完成図血ののち手術を明け方に終えました(写真左)。

術後経過は順調で、手術翌日には集中治療室を元気に退室され、10日後には退院されました。

手術から4年経つ現在も、ときどき定期健診のため外来へ来られます。

お元気なお顔を拝見するたびに、急性解離は患者さんが生きているうちに熟練チームでしっかり治すことが大切と実感します。


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事例: 重い肺高血圧症を合併した心房中隔欠損症 (ASD)の高齢患者さん

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患者さんは70代後半の女性で九州南部から来られました。

心房中隔欠損症(ASD)が悪化し末期状態で、高度の肺高血圧症(血圧の70%)と三尖弁閉鎖不全症や慢性心房細動を合併し、右心不全のため肝臓も弱り血小板も減っていました。肺も弱く、肺活量は本来の半分以下の量にまで減っていました。

地元の大病院では心臓手術は危険すぎる、お薬で様子を見るしかないとのことでした。

それはすなわち、打つ手なし、ただ死を待つのみ、という意味でした。

患者さんのご子息は内科の先生で、お母様をなんとか助けようと調べ、私のところへご連絡を取ってこられました。

私の外来には九州・沖縄からもちょくちょく患者さんが来て下さいますが、それほど信頼して戴いたことを光栄に思いますし、来て良かったと言って頂けるよう、襟を正して頑張るきもちがこみあげてきます。

この患者さんの場合も何とか元気に九州へ戻って頂こうと努力しました。

まず調べた結果、肺高血圧症は重症でしたが左―右シャントが多量にあり、条件によって肺動脈圧も改善することがわかり、手術が成り立つことが判明しました。

さらに手術によって体力とくに心臓や肝臓や肺のちからは落ちていましたが、それぞれまだ回復の余地を残していること、とくに心臓のパワーアップが手術で図れればあとはうまく上昇気流に乗れると確信しました。肺については手術のあとじっくりと運動療法をやるしかないと開き直っていました。

そこで手術を行いました。

  上妻 左房メイズM弁輪周囲まず左房を開けて左心耳縫縮とメイズ手術を行いました。

左図はそのときの情景です。

心房細動対策を確実にするため左心耳を閉鎖しました。

あの天皇陛下の手術のときに左心耳を閉鎖されたのと同じコンセプトで、血栓ができたり脳梗塞になるのはぜひとも防ぎたいという方針でした。

ついで心房中隔欠損症( 上妻 ASDパッチ閉鎖ASD)をゴアテックスパッチで閉鎖しました。

右図の白いものがそのパッチです。

さらに三尖弁形成術をリングをもちいて行い、逆流がほぼゼロになるのを確認しました。

左下図はそのリングに糸をかけているところです。

上妻 TAP中後に右房のメイズ手術を行い、操作を完了しました。

右下図のように、キモになるところをしっかりと冷凍凝固して、悪い電気信号が通らないようにしました。

術後経過はまずまずで術翌日には集中治療室をでることができました。 上妻 右房メイズ Isthmus

しかし肺が悪く、すぐひしゃげて無気肺と呼ばれる状態になり、呼吸リハビリにじっくりと時間をかけ、お元気に退院されました。

あれから4年近くがたちますが、お元気に暮らしておられ、うれしいことです。

 

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事例: 僧帽弁閉鎖不全症などで心不全となった高齢の患者さん

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成人先天性心疾患つまり生まれつきの心臓病をもった成人の患者さんの場合は、もとの心臓病と、加齢にともなって発生あるいは二次的に合併した病気の両方を考えて治療に臨むことが大切です。

患者さんは80歳代半ばの女性。

つよい息切れで安静にしていても苦しくなりかかりつけ医を受診されました。

高度の心不全と心雑音もあるため私の外来へ紹介されました。遠方の長野県からお越し下さいました。

心エコーにて心室中隔欠損症(略称VSD)と僧帽弁閉鎖不全症00033274_20090408_US_1_8_8bが高度にあることがわかり(左図にて両方が見えています)、

Pro-BNPという心臓のホルモン上昇傾向で、なにより起坐呼吸という高度の心不全症状が取れないため手術することになりました。

ちなみにエコーでの左室拡張末期径は51mmと小柄な体格を考えると左室もかなり大きくなっておられました。

かなりリスクつまり危険性が高い状態で、手術しないのもひとつの手であるという意見さえ聞かれました。

しかし私の信念として、このまま座して死を待つ患者さんなら、手術で助かる可能性がある以上は見捨ててはいけないと考え、手術を決断しました。

図2 VSDパッチ閉鎖心臓手術ではまず肺動脈を切り開き、右室の中を調べますと直径4mmの心室中隔欠損症VSDを認めました。

これをゴアテックスのパッチで閉じました(写真右の白いものがパッチです)。

その際に心房中隔欠損症ASDの小さいものも見つかったため、これを閉鎖しました。

さらに左房を開き、僧帽弁を調べました。

図4 僧帽弁観察僧帽弁はバーロー病(Barlow病)という、弁全体がもこもこと変性したタイプで、一般に弁形成は難しいといわれるタイプでした(写真左)。

私たちはバーロー病の弁形成にはちからを入れており、ほとんどの患者さんで僧帽弁形成術を成功させていますが、この患者さんは80代半ばとご高齢で、手術前の状態が悪い ことから、ごく短時間で決めるほうが患者さんにとって安全上有利という方針から、迷うことなく生体弁僧帽弁置換術を行いました(写真右)。

もう少し若い患者さんなら弁形成がながもちし有利図5 MVR完成ですが、80代半ばなら生体弁は20年は持つと予想されるため、耐久性でも十分、それなら早く確実に手術を完成できる弁置換が患者さんのためになるというわけです。

その甲斐あって、手術当日には人工呼吸を離脱し、手術翌日には集中治療室を無事に退室されました。

体力がひどく落ちておられたため、十分な運動を行い、術後1か月で元気に退院されました。

いまも定期健診に外来へ来られ、お元気なお顔を拝見しています。

高齢者でしかも複数の心臓病があり、状態も悪くて「もうダメ」と言われても経験豊富なエキスパートに相談すれば道が拓けるかも知れないことを皆さんに知って頂ければ幸いです。


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僧帽弁膜症のリンク

原因 

閉鎖不全症 

逸脱症

狭窄症

リウマチ性

◆  HOCM(IHSS)にともなうもの

◆  機能性僧帽弁閉鎖不全症

弁形成術

◆ ミックスによるもの

◆ ポートアクセス手術のMICS中での位置づけ

◆ リング

◆ バーロー症候群

◆ 三笠宮さまが受けられたもの

◆ 交連切開術


虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術

腱索転位術(トランスロケーション法)

両弁尖形成法(Bileaflet Optimization)

乳頭筋最適化手術(Papillary Head Optimization PHO)

 

④ 僧帽弁置換術

◆ ミックス手術(ポートアクセス法)によるもの  


⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

心房細動

メイズ手術

心房縮小メイズ手術

ミックスによるもの:

心房縮小メ イズ手術 

 

先天性心疾患 (成人期)

1) 先天性心疾患について

2b) 僧帽弁疾患

  ■ ミックス手術(MICS、低侵襲小切開手術、ポートアクセス)による僧帽弁形成術僧帽弁置換術

5) 心室中隔欠損症(VSD)

心室中隔欠損症に対するミックス手術(MICS手術)

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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SYNTAXトライアル、5年の結果がでました

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SYNTAXトライアル(研究)5年のデータがでました。ライプチヒのモーアMohr先生らがとりまとめて権威あるランセットLancet誌から発表されました。

このSYNTAX研究では欧米の85施設で冠動脈の3枝病変か左主幹部LMT病変の患者さんを無作為にカテーテル治療(PCI)か冠動脈バイパス手術(CABG)に割り振り、その治療成績を年余にわたって比較検討したものです。

PCIでは第一世代のパクリタキセル徐放ステントを使用されています。

今回はその5年後の成績です。多くの循環器内科医や心臓外科医の注目のなかでの発表でした。

下のグラフで、赤い線がPCI後、青い線がCABG後の結果です。


図1

1800名という大勢の患者さんを割り振り、897名がCABG、903名がPCI治療を受けましたた。

5年間で大きな心脳血管系事故(MACCE)発生はCABG後では26.9%でしたがPCI後では37.3%と多かったです(p<0.0001)(上のグラフをご参照ください)。

心筋梗塞になるのはCABG後は3.8%に留まりましたがPCI後は9.7%にもなりました(p<0.0001)。(これらも上のグラフを。)

血行再建繰り返しはCABG後は13.7%でしたがPCI後は25.9%と多かったです(p<0.0001) 。

がんその他、あらゆる原因を含めた死亡はCABG後が11.4%、PCI後は13.9%で有意差はありませんでした。

脳卒中も3.7%対2.4%で同様に差はありませんでした。

 


図2

 

上のグラフでは両群に差がない項目は灰色で暗くしてあります。

 

冠動脈病変が軽い例(SYNTAXスコアが低い)でMACCEはCABG後28.6%に対してPCI後は32.1%と同レベルでした(P=0.43)。

LMT病変のあるCABG後では31%、PCI後は36.9%と差はありませんでした(P=0.12)。
 

しかし

冠動脈病変が中ぐらいある例(SYNTAXスコアがやや高い)では、MACCEがCABG後25.8%なのにPCI後は36%にもなり(P=0.008 )、

冠動脈病変が進んでしまったSYNTAX高スコアの患者さんにいたってはCABG後26.8%に対してPCI後44%とうんと高くなってしまいました(p<0.0001)。


図3冠動脈3枝病変の患者さんで比較検討したところ、CABGはPCIと比較して、MACCEも低く、死亡率や心筋梗塞でも大きく優れていました。

かつて脳卒中の予防ではPCIが有利と言われましたが、すでに差はないというレベルまでCABGは改善しています。

 

 

そこで結論は、、、


中または高度の病変がある(SYNTAXスコア中または高)ではCABGを今後も標準治療とすべきです。

低い病変(SYNTAXスコア低)やLMT病変(SYNTAXスコア中または低)ではPCIを行っても良い。

複雑な多肢病変がある患者さんにはすべて、心臓外科とインターベンション内科医の相談と最適治療への合意が必要です。

これまでの「PCIやれる限りやってよい」は否定されたわけです。患者さんの長生きや幸せにはならないからです。

このSYNTAXトライアルの結果は1年目からCABGが有利な傾向がありましたが、時間が経つにつれてその傾向が顕著になりました。Illust1447

ディスカッションのなかで、PCIのステントはさらに新しく良いものが出ているから、今後PCIの結果はもっと良くなるとの意見もありましたが、ここまでの内容からは第二世代、第三世代の新型ステントも結果に大差なく、このSYNTAX5年の結果と同様のものになるでしょうとの見解がありました。

また日本とくに有力施設では体外循環を使わないオフポンプバイパス術が浸透しているため、CABGは一層有利になるでしょう。

時代は進んでいます。医学医療もそれに即応して、患者さんにベストなものを常に追求しなければならないのです。

患者さんにおかれましては、これから受ける狭心症治療の内容を内科と外科の両方から聴くという慎重な姿勢が安全安心のために望まれるでしょう。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り85: ポートアクセスで僧帽弁置換術を

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Ilm17_da05018-s創がちいさいミックス手術とくにポートアクセス法は若い患者さんや仕事に早く復帰したい働き盛りの方々に喜ばれています。同時に比較的ご高齢のかたには痛みや苦痛を減らし、合併症を減らすというメリットがあります。

下記の患者さんは関西からこのポートアクセス法での僧帽弁手術を希望してご来院されました。

2階まで昇っても息切れと動悸がし、胸が苦しくなるという症状がでていました。

ちかくの病院で検査を受け僧帽弁閉鎖不全症の重症と診断されたのでした。

手術で僧帽弁を実際にみたところ、リウマチ性の変化があり、弁尖が短縮肥厚している箇所がいくつかあり、逸脱していた弁尖を切除しても逆流が残るという所見でした。

お若い患者さんでは生体弁が長持ちしないため、心膜パッチなども適宜使って弁形成するところですが、比較的ご高齢で体力も弱めで、生体弁も長持ちするため、

無理なく元気になれるよう生体弁で僧帽弁置換術を行いました。

術後経過は良好で、遠方のためややゆっくりと入院していただき、術後2週間で元気に退院されました。

以下はその患者さんからのお便りです。

*******患者さんからのお便り*******

 

名古屋ハートセンタースタッフ御一同さま

この度、無事に退院できました事、

お便り85
心よりお礼申し上げます。

手術には執刀して頂きました米田先生はじめ、北村先生、深谷先生、木村先生、麻酔科の先生、その他スタッフの皆様方には長時間にわたり、大変お世話になりました。

本当にありがとうございました。

手術日の朝、先生方が、お部屋にお越し下さり「頑張りましょう!!」と、優しい笑顔でのお言葉に不安な気持ちも払拭いたしました。

こんな素晴らしい先生方に手術をして頂きました事、私の一生の自慢にして行きます。

手術後も、先生の心温まる回診に心がいやされ、ホッとしたものです。

又、手術室等、色々な説明をして下さった看護師様が、夜勤明けにもかかわらず、4階からわざわざ来て下さり、

「大丈夫、大丈夫やからね!!」と私の手を両手で握って下さいました。

その優しい手の感触は、今も忘れられません。

涙が出そうでした。

看護師皆様も、ニコニコと接して下さり、こちらが色々とお世話になっていますのに。

「ありがとうございます!」と頭が下がります。

毎日毎日、手厚い看護に感謝で一杯でした。

そして子供にも、こちらの病院を選んでくれた事に感謝です。

一か月後の受診時には、ずっと元気になって先生にお目にかかれる様頑張ります。

 どうぞ、スタッフご一同様、

くれぐれもお身体を大切になさって下さいませ。

まだまだ一杯お礼を申し上げたい事多々ございますが、

これで失礼致します。

平成25年1月28日

****

 

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