市立奈良病院の新病棟内覧会に行ってまいりました

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この7月19日に市立奈良病院の新病棟完成内覧会に行ってまいりました。

この病院はかつては国立奈良病院として奈良市の中心的医療拠点として活躍してこられた歴史をもっていますが、奈良市と地域医療振興協会によって平成15年に現在の市立奈良病院として面目を一新したものです。

新しい体制になってからはこれまで以上に救急医療に力を入れ、がん診療連携拠点病院、周産期医療や災害拠点病院としても高い評価を受けています。

個人的には循環器内科の堀井学先生らの熱い循環器診療にほれ込んでおり、関係の皆さんとの交流を楽しみに出席しました。昔、天理よろづ相談所病院でレジデントの1年先輩の西和田敬先生(平成記念病院副院長)と久しぶりにお会いでき、一緒に見学できました。

市立奈良病院の新病棟は紀寺町の東部、若草山が目の前に見える絶景の地にあり、病棟からも楽しめる構造になっていました。反対側からは生駒山なども遠景として望める癒しの配慮がなされていました。

病棟は全体として明るく広く、とくに廊下やナースステーションの余裕の設計には感嘆いたしました。手術室も一部屋ひと部屋が広く、ICU集中治療室も同様で仕事がしやすい構造になっていました。これからのがん治療で大きな役割を担う外来化学療法部門ではひろびろとしたフロアで患者さんが好みの姿勢で治療を受けられる配慮がされていて感心しました。

私ども高の原中央病院かんさいハートセンターではこうした立派な施設と協力して救急や重症の患者さんを含めた幅広い心臓病、血管病の患者さんの手術でお役に立ちたく思いました。また大きな総合病院でこそできるがんなどの集学的治療では逆に治療をお願いできるのが大変ありがたく思いました。

チーム医療というのは院内チームや医療者と患者さんご家族の協力だけでなく、地域の病院群とお互いの特長を活かした協力も含まれると思います。市立奈良病院のように立派な施設にふさわしいパートナーになれるよう、決意を新たにいたしました。

内覧会のあ IMG_0500bとは近くのホテルで懇親会が開かれました。奈良県知事代理や奈良市長、畏友・津山恭之・奈良副市長、斎藤能彦先生ら奈良医大の教授陣・京都府立医大の教授陣はじめ奈良エリアの主だった方々が出席される大きな会でした。この市立奈良病院が自治医大や京都府立医大・奈良県立医大のコラボレーションでできたことも理解でき立派なことと思いました。市立奈良病院院長の二階堂雄次先生の熱いお話が印象に残りました。

さらに昔天理病院時代にお世話になった先生方や東大寺学園の同窓の先生方とも話ができ懐かしいひとときでした。故郷のありがたさと、そこでお役に立てる立派な仕事をしなければという責任を感じた一日でした。

平成26年7月19日

米田正始

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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Edwards Heart Valve Front Line 2014

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この7月12日に東京で弁膜症のサミットともいえる研究会が開催されました。

演者として招待されたので行ってまいりました。

メーカー主催とはいえ、内容の充実した、興味深い会でした。出席者は原則部長クラス執刀者レベルで、高水準のディスカッションを目指したものでした。最近は若手向けのセッションが増え、好ましいことと思うのですが、たまにはこうした会も有意義かと拝察していました。

東京ベイ浦安市川医療センター循環器内科の渡辺弘之先生がディレクターを務められ、外科のアドバイザーは神戸大学の大北裕先生、榊原記念病院の高梨秀一郎先生、京都府立医科大学の夜久均先生という充実の顔ぶれでした。

渡辺先生の絶妙かつフレンドリーな司会で和やかに会は進んでいきました。ちょっと珍しいほどのエンターテイナー兼学術モデレーターでした。心エコーの講習会として有名な東京エコーラボが人気を博している理由がわかりました。

まず内科と外科で考える治療戦略というセッションで、岩手医大の岡林均先生と森野禎浩先生がそれぞれ興味深い症例を提示されました。

ついで大北裕先生と田中秀和先生の神戸大学チームから出血性脳梗塞をともなう感染性心内膜炎IEの症例を出されました。同じ脳出血でも危険なものと比較的穏やかなものがあり、皆さんこれまでも悩み苦しみ解決策をなんとか見出す努力をしてきた病態だけに議論が盛り上がりました。MRIによるT2スターは脳出血の検出や評価に有用となる可能性があり、ひとつの解決への方向が見えたのは幸いでした。

さらに羽生道弥先生と有田武史先生の小倉記念病院チーム(註:有田先生は現在九州大学)から低心機能にともなう低圧格差の大動脈弁狭窄症を提示されました。

私の経験ではこうしたケースは術後を乗り切ることができればあとの心機能は格段に改善するため、どのようにして乗り切れるようにするかに焦点を絞り、乗り切れないときに限り内科的に治療するというのが良いと思いました。二尖弁ではカテーテルバルン形成術は危険であるというのはなるほどと納得しました。

さてそこでミックス(MICS)のセッションです。

リスク回避のためのコツを新進気鋭・東京ベイ浦安市川医療センターの田端実先生と老舗慶応大学の岡本一真先生が解説されました。これまでの経験の蓄積を皆で共有できたことは素晴らしいと思いました。

ここでミックスとは低侵襲手術なのか、小切開手術なのかという本質的議論が併せてなされました。皆さん真面目で妥協のない姿勢での議論をされ、感心したのは私だけではないと思います。ただこの領域はまだ一般化できない、一部の先進施設で行う手術という印象が強く、すべては今後の展開次第というところでしょうか。

ついで安全なMICSのための工夫ということで光晴会病院の末永悦郎先生が胸骨部分切開での大動脈弁置換術、そして心臓病センター榊原病院の都津川敏範先生がポートアクセスでのそれを話されました。

そして話はコスメティックなミックスの追及へと進みました。

まず私、米田正始がLSH(Less Satelite Hole)法つまりミックス手術にありがちな副次創を最小限に抑えてきれいな創と少ない出血を達成するオリジナルな方法を解説しました。あとで多くの人たちからきれいな創を褒めて頂きましたが、それを僧帽弁だけでなく大動脈弁なかでも弁形成にまで使えることは驚きであったようです。ここまで国内外の友人たちのお力を借りて、手術を磨いてきた甲斐があったとうれしく、また感謝でいっぱいでした。このLSHに賛同してくれるひとは手術が難しいだろうという先入観からか少なかったのですが、最近シンガポールのグループもSIMICS(単一切開創のMICS)などで本格的に取り組むようになり、他にも同様の動きがでてようやく皆さんの認識が得られたようです。

私は副次創を少なくすることで質の高いミックスを目指していますが、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生は内視鏡を活用してメインの創を小さくする方法を発表されました。内視鏡を使うと副次創が増えるため私はやや後ろ向きだったのですが、若手の教育なども加味して考えると今後の方向として、こうした努力も大切と感じました。ともあれこうした高いレベルのMICSにはなかなかついて行けないという空気が感じられ、誰もができる完成度の高い心臓手術と言えるまでにはまだまだ努力が必要と思いました。

次のセッションは複雑症例に対する手術でした。

東京医科歯科大学の荒井裕国先生は昨日までの冠動脈外科学会の会長の大任を立派に果たされた翌日のことで、お疲れかと思いましたが頑張って興味深い症例を提示されました。冠動脈バイパス術後の虚血性僧帽弁閉鎖不全症と大動脈弁狭窄症のケースでした。乳頭筋を前方に吊り上げる方法できれいに治されました。私、米田正始といたしましては、この前方吊り上げ(PHO法など)をこの10年間提唱して来ただけに、仲間が増えたことをうれしく光栄に思いました。荒井先生ありがとう。

葉山ハートセンターの磯村正先生は重症の拡張型心筋症にともなう機能性僧帽弁閉鎖不全症の一例を提示されました。重症なるがゆえに、できるだけ簡略に手術をまとめあげ、見事に救命されたこと、敬意を表したく思いました。なおこうしたケースのために私が開発した大動脈弁越しに両側乳頭筋を吊り上げる方法なら、同じ短時間でもっと心機能が良くなるというデータをもっており、今度同様の患者さんがおられたら是非活用していただければと思いました。

ディスカッションの中で大北先生が、これまでの多くのEBMデータや科学的データをもっと踏まえて手術することを勧められました。まったくその通りで、ぜひ私が提唱する前方吊り上げ(PHO)をと願わずにはおれませんでした。

札幌ハートセンターの道井洋史先生はHOCM(閉塞性肥大型心筋症)の一例を示されました。後尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症を合併していた症例で、普通の僧帽弁形成術ではSAMつまり収縮期の前尖の前方移動が起こってあらたな僧帽弁閉鎖不全症が発生しやすい症例で、道井先生はうまく解決されたと思いました。

ただこれまでこうしたHOCMや僧帽弁形成術を多数こなして来た経験からは、後尖の高さをさらに下げるとSAMは極めて起こりにくいとも思いましたが、こうした治療は高度にケースバイケースなので何にでも対応できる経験と実力が大切と思いました。

この疾患で最近言われている異常筋束についてはなかなか術前診断まではできておらず、今後エコーやCTなどでの一層の研究が待たれます。

宮崎県立宮崎病院の金城玉洋先生は高齢者の大動脈基部拡張大動脈弁閉鎖不全症の一例を示されました。高齢者なるがゆえに、どこまで治すのが最適か、熱いディスカッションがされました。

最後に倉敷中央病院の小宮達彦先生がやや複雑なデービッド手術の一例を提示されました。デービッド手術での大動脈弁形成術は近年進歩がみられますが、弁の付け根を小さくすれば弁は当然余ることになり、余れば下垂するのは理の当然のため、何らかの対策が必要です。そこで弁の縫縮で下垂を治すことがまず考えられますが、やりすぎると弁の他部位や基部とのアンバランスが生じます。これを難症例で示されました。大動脈基部のジオメトリーがかなり実用化して来た印象があり、これからさらにデータ蓄積して僧帽弁レベルになればと思いました。

最後まで熱いディスカッションが続いた充実の一日でした。

この会は渡辺先生のお人柄もあり、ワークショップのように皆で見える成果を造っていくということで、各セッションごとに1センテンスで持ち帰りメッセージを造って行かれたのですが、私が発表させて頂いたミックス部門では「ミックス戦国時代」でした。的を得た表現と思います。HOCMのところでは、高梨先生が上の句「逆流が、止まったあとの」を言われたあとの下の句がなかなか出てこないため、不肖私が「流出路」と発言させて戴きました。なぜか大変受け、会場全体で「オーー」という声とともに拍手頂き、面白いところで評価いただき、不思議な光栄な気分でした。後の懇親会で大北先生が「米田先生が過去20年間発言した中で一番のでき」というご発言でもう一度バカ受けしていました。口の悪い先輩は良いとして、まあ皆さんの酒の肴になれて楽しいひとときでした。

会場のホテルは東京ベイを見渡せる素晴らしいところで、来年もぜひここでという希望が多数出ていました。

渡辺先生、アドバイザーの先生方、エドワーズ社の皆さん、お疲れ様でした。


平成26年7月13日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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オフポンプバイパス研究会の見聞録

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OPCAB研究会(日本AHVS研究会)に参加しました。

この会はかつて日本にまだオフポンプバイパス手術が普及していなかった頃、1990年代の終わりごろ、小坂眞一先生や南淵明宏先生らのご努力で立ち上がった研究会です。日本でのOPCABの普及に歴史的貢献をしたことで知られています。

私も2001年ごろ、まだ京都大学で勤務していたころに会長を務めさせて頂き、こうした研究会では初めてライブ手術を企画し、多くの皆様のご協力を得て大きな会場は満員御礼となり、将来ある若手に真剣な勉強の場を提供できたという想い出のある会です。

今回は北斗病院の藤松利浩先生が会長で、東京にて開催されました。

藤松先生の並々ならぬ熱意が伝わってくるような充実した会になりました。

というのはそのテーマ内容とファカルティがなかなかのものであったからです。

まず同先生の長年の友人である Mr. Paul Bannon(オーストラリア)、Mr. Hugh Paterson(同)、Dr. Deepak Puri(インド)がこの会のために来日され、熱演を振るわれたこと、力のこもった日本の現役プレーヤーが多数参加されたこと、そして研究会では珍しく全員参加の懇親会があったこと、2会場をもうけてコメディカルや若手に的を絞ったセッションがあったこと、などなどが印象的でした。

デービッド手術のセッションでは多数の経験を持つDr. Bannonが詳細な解説をされ、ついで神戸大学の大北裕先生が工夫して乗り切った難症例を提示されました。ここまでやれるのだという限界点を見せて頂きました。

石灰化大動脈における大動脈弁置換術AVRのセッションでも興味深い発表が続きました。このぐらいまでは我慢できるというレベルも術者によって意外に幅広いこともわかりました。岸和田徳洲会病院の東上震一先生の大動脈弁石灰切除はその再発率の高さから過去の手術になったとはいえ、含蓄が深く、工夫次第では今後また使えるような予感がしました。名古屋第二日赤の田嶋一喜先生の石灰化上行大動脈の処理は私たちも多数活用しており、心臓外科の進歩に貢献しておられる内容でした。

ランチョンセミナーは左室形成術がテーマでした。北海道大学の松居喜郎先生がここまでの世界と日本の左室形成術をレビューされました。私、米田正始は「左室形成術を失ってはならない」という大げさな(恐縮)テーマで、これほど患者さんに役立つ手術を、EBMデータをしっかりと蓄積検討し、育てていかねばならないことを解説しました。

というのは、術前に生きるか死ぬかの大変な状態だった患者さんたちが左室形成術によって蘇り、10年経っても元気に暮らしておられる、そうしたケースが増えて来たことを具体例をもってご報告しました。

会場のコンピュータの不都合で時間が不足し、重要症例を一例ご紹介できなかったのが残念です。それはある地方の大学の循環器内科で、この患者は重症なのでもはや心移植しかない、と断定されたあとで、移植を嫌って私のかんさいハートセンターまで来られたケースです。左室形成術(プラス私が考案した乳頭筋吊り上げ術・PHO)によってすっかり元気になられ、心機能も改善しました。これをその循環器内科の先生方にもぜひ知って頂きたく思いました。左室形成術がこれほど患者さんのお役に立っているのに、まだ内科の先生がご存じない、これは極めて残念なことで、そのために多数の患者さんが不幸になっているのは放置できません。

国際セッションではインドの先生らのご発表と、順天堂大学の加藤倫子先生がVADのエコーの発表をされました。さらにDr. Patersonが両側ITA(内胸動脈)でのYグラフトのお話をされ、内容だけでなくその見事な手術テクニックにも感嘆しました。この先生は私の左室形成術の発表にも敬意にあふれたご意見を下さり、昔からの仲間とはいえ、うれしく光栄に思いました。上記のBannon先生も含めて、オーストラリアは心臓外科先進国であることをあらためて感じました。世の中は広い、学ぶべきものは無限にあるといつも思います。

ビデオライブでは僧帽弁形成術がテーマで、小牧市民病院の澤崎優先生が弁尖の切除と人工腱索の比較を、東京医大の杭ノ瀬昌彦先生が高齢者へのミックス弁形成術を、倉敷中央病院の小宮達彦先生がバーロー症候群での弁形成を、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生が完全内視鏡下のミックス手術でのループテクニックを披露されました。私はその一部しか参加できませんでしたが、勉強になりました。

そのあと研究会らしからぬ懇親会がありましたが、残念ながら他学会の会議のため参加できませんでした。

総じてことしの日本Advanced Heart & Vascular Surgery/OPCAB研究会は内容的にも盛り上がり方でも大成功だったと思います。

会長の藤松先生、サポートを下さった北斗病院の皆様、ご苦労様でした。北斗病院ハートセンターの名前は十分に浸透したものと存じます。来年北海道で再会できればと楽しみにしております。

平成26年7月10日

米田正始 拝

 

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収縮性心膜炎のミックス手術

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収縮性心膜炎SSSHC141略称CP)は心膜の病気とは言え恐ろしいものです。

というのは心膜が鎧(よろい)あるいは卵の殻のように厚く硬く石灰化すると重症心不全になりますし、そのために肝臓その他の臓器がやられます。いのちにかかわることも少なくありません。

治療は軽症のあいだはお薬その他で水があまり貯まらないように、肺その他がなるべくうっ血しないように、二次的な肺炎その他の病気を予防するなどします。

しかし重症になるといのちの危険性から心臓手術が必要となります。

術式は心膜切除つまり厚く硬くなった肥厚心膜を丁寧に剥がして切除することです。

その場合、左心室や右心室を覆う心膜を完全に除去するとともに、できれば左心房や右心房にもなるべく負担がかからぬよう、しっかりと切除することが大切です。

私たちはこの収縮性心膜炎(CP)の外科治療をつぎの原則をもとにしてFotosearch_CCP01063組み立てています。

1.きちんと肥厚心膜を切除する。心臓の裏側や横隔膜面、横隔神経の背中側まで、必要に応じて対処できること。

2.原則として体外循環を使わないオフポンプで

3.なるべく創が小さいミックスMICSで。できれば侵襲が少ないポートアクセス法で

 

これまで標準アプローチは胸骨正中切開という、胸の前真ん中を縦に二分するような切り方でした。この方法の弱点があるとすれば心臓の裏側、左室後壁がやや盲点になりがちなことです(下図の左)。

CPのミックス皮膚切開左胸を開胸するMICS(ミックス法)(左図の右)では左室エリアの剥離は後壁も含めて比較的視野が良いです。しかし世間一般には右房までやや届きにくい傾向があり、右室などの心基部の剥離が不十分になる懸念があります。

いずれの場合でも体外循環を使えばやりやすくなりますが、出血が増え、それが将来の収縮性心内膜炎の再発原因になりかねないうえに、からだへの負担が増えて危険性が上がるためできるだけ体外循環を使わないオフポンプが望ましいと考えています。

またこれまでも他病院で心臓の裏側は心膜切除できないといわれて私のところへ逃げるようにしてこられた患者さんもおられます。裏側の処理ができない病院では不十分手術となり将来の再発が心配です。

私たちはオフポンプバイパス手術の技術を応用して、心臓を安全にひっくり返し、裏側の心膜を切除するようにしてきました。

しかし胸骨正中切開では骨を切るため術後の痛みもやや強く、仕事復帰も遅くなりがちです。そこでミックス手術を考慮するようになりました。

IMG_0361bそのなかでも一番傷跡(外科では創と書きます)が小さく体への負担が小さいポートアクセス法で収縮性心膜炎の手術を行うようにしています。この場合も右房右室がしっかりと剥離できるよう、ミックスの経験を活かして視野確保をしています。

写真右はその一例です。胸を持ち上げなければ創はほとんど見えません。

安全第一ですので、通常の心房中隔欠損症ASD僧帽弁形成術大動脈弁手術などの傷跡よりはやや大き目ですが、あまり目立たず、骨を切らないため痛みが少なく、あとの回復も良いという利点があります。

これから収縮性心膜炎の手術も進化していきます。高い質を維持しつつ、より安全により早い仕事復帰をめざします。

 

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MICS SUMMIT 2014

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この6月21日に大阪で恒例のミックスサミットが開催されたため参加しました。

これまではサミット IN OSAKAとして内容ある研究会が大阪にて行われており、私も参加して楽しいひと時をもっていましたが、今回から全国区の研究会として正式に発足したのです。

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会長はこの会を育てられた大阪大学の澤芳樹先生で、最近話題の新しいグランフロント大阪にあるナレッジキャピタルにて開催されました。

関西胸部外科学会の翌日で皆さんの勉強疲れがちょっと懸念されましたが、なかなかどうして、熱い議論が多数でて大変盛り上がったように感じました。

朝一番はビデオセッションで心臓病センター榊原病院の都津川敏範先生が前側方開胸によるMICS₋AVRを、大和成和病院の菊地慶太先生がMICS₋CABGを話されました。

それから「MICSをはじめよう」という特別企画がありました。大分大学の宮本伸二先生がその開始時の苦労と工夫を、東京医大の杭ノ瀬昌彦先生はMICS₋AVRに進むにはというテーマで、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生は内視鏡下MICSへのステップアップ、そして心臓病センター榊原病院の坂口太一先生はMICS₋CABGをはじめるにはというテーマでお話されました。

いずれもこれからこうした心臓手術を始めようという先生方には参考になったものと思います。ただ短時間の発表を聴くだけでは、通常と少し違う状況でおこるさまざまな問題や合併症とその対策までは手が回らず、やはり時間をかけてチームを育て、熟練させるという作業が不可欠と感じました。

たとえばこの方法は良く見えるよと言われて、はいそうですかとやってみたら、全然見えない、さあ困ったどうしよう、というのが熟練していないチームではよくあります。私もポートアクセス手術の経験量が100例を大きく超えて、僧帽弁や三尖弁だけでなく大動脈弁もこなすようになって、さらにさまざまな心臓手術や再手術などもこなすようになって、本当に安心してできるようになったという覚えがあります。

そこからは趣向をかえて国際セッションとなりました。

イタリアのCampus Bio-Medico医科大学の Francisco MusumeciはヨーロッパにおけるMICSの現況を解説されました。大変幅広くやっておられるのは知っていましたので、あとで細かいところを質問などして充実したひとときでした。中でも開胸時から人工心肺に乗せることで肺を保護するというのは、体への侵襲つまり負担を増やすという一面はあるものの、肺にはやさしい、検討の価値があると思いました。1年ほど前から考えて来たのですが、そろそろ実行するときが来たように感じました。

オーストラリア・ブリスベーンの Prince Charles Hospitalの Trevor Fayers先生は弁膜症のミックスというテーマで話されました。私にとって懐かしの地であるオーストラリアでも盛り上がりがみられるようで、ロボットもぼつぼつ導入されているとのことでした。ひとつご質問をしました。オーストラリアは私的保険と公的保険の二本立てで前者は保険料が高いが選べる病院や医師が多く、公的保険ではその逆なのです。万民の平等が原則である日本では受けない制度ですが、ようするにお金持ちは多少の便宜を受ける代わりにより多額のおかねを出し、保険制度じたいが潤うのです。聞いてみますとロボットなどの高額医療はすべて私的保険の患者さんとのことでした。日本ではこうした高額医療を進めるのは患者さんの負担が極端に増えて大変だとあらためて思いました。

それからアメリカはNorthwestern大学の畏友、Chris Malaisrieが低侵襲のAVRを解説されました。これは関西胸部外科学会のときと同じテーマでしたので、もう少しつっこんだ質問をしてみました。彼の方法は私たちのポートアクセス法よりは創も目立ち社会復帰も遅れますが、動脈硬化が強い患者さんにも使えるという利点があり、私はこれまでも似た方法を使っていますが今後導入してみようかと思いました。患者さんの状況状態に合わせて一番適した方法を選ぶ、そうしたラインナップを増やせるという意味で有意義なお話でした。

ドイツはLubeck大学の Thorsten Hanke先生はドイツにおけるMICSを概説されました。新進気鋭のためかまだ三尖弁形成術などはやってないということで、もう少し頑張っていただきたく思いました。僧帽弁だけでなく必要に応じて三尖弁も治せることが患者さんの長期予後の改善に役立つからです。

午後の後半は臨床工学士(ME)、麻酔科、リハビリ、内科の先生方からそれぞれのお立場からの発表がありました。どれも優れた内容でした。とくに心臓病センター榊原病院のME長である畏友・中島康佑君の安全モニターのお話は出色のできで、これからこうした優れたMEさんが活躍してくれれば医療はさらに良くなるという意味でも素晴らしかったと思います。私のところのMEさんたちも立派に頑張ってくれていますが、彼ら同志の交流を図りたく思いました。プロとして最高の仕事をする、国際的にも活躍する、こうしたコメディカルが増えていくのが楽しみです。

また慶応大学循環器内科の鶴田ひかる先生は内科からみた適切なMICSはというテーマで心エコーの専門的立場からお話されました。見事なエコーと深い読み、鋭い考察、さすがエコーと弁膜症のスペシャリストと賛辞を贈ろうと思いました。長崎大学の江石清行先生が私が申し上げたかったことを全部述べて下さったため私は何も申しませんでしたが、私自身、かんさいハートセンターを立ち上げてこうした心エコーの本物の専門家と初めて一緒に仕事するようになってからの感動をあらためてかみしめていました。

ともあれこうしたチーム医療は極めて重要で、参考になりました。最後に慶応大学の岡本一真先生がMICSの合併症と注意点を話しされ、これまでの経験を活かすという観点から活発な議論がありました。私も発表で気になった左室破裂のケースについて質問討議いたしました。こうした負の側面を真摯に議論し、再発予防や的確な対処法を平素から鍛えあげておくことが何より重要かと思います。大阪大学の西宏之先生はレジストレーションの必要性を話しされました。これから重要になると思います。

日本の現況つまり心臓手術を行う施設が多すぎて、弁形成やミックスなどをあまりやっていない施設が大半という状況のなかで、これから安全にこれらをやっていくためには、ほんらい施設集約つまり病院を束ねて数を絞るという作業が必要です。しかしそれは各病院や大学の事情がありなかなか進みません。現実には治療成績が良い施設がより数を伸ばし、良くない施設は閉鎖して結果的に集約化が進むというのが日本の現実です。その過程で患者さんついで若い先生方やコメディカル諸君に迷惑がかからぬように守る、これが大切と感じました。

真剣でも楽しい勉強と交流をもてたMICS SUMMITでした。今回当番世話人の澤先生、お疲れ様でした。素晴らしい会をありがとうございました。

 

平成26年6月22日

米田正始 拝

 

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関西胸部外科学会にて

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この6月19日、20日に大阪で関西胸部外科学会第57回総会が開催されました。会長は畏友かつ大先輩の佐賀俊彦・近畿大学教授でした。

この IMG_0449 (2)学会は昔から多数の熱い先達の想い入れからユニークな発展をしてきたものです。ふつうは学会の地方会といえば近畿地方とか九州地方などの限定されたエリアでアットホームにやるのですが、この関西胸部だけは西日本の大半を網羅する大きな学会です。当然これまで多数の若手を育て、登竜門としても、また心臓血管胸部外科の学術的発展にも貢献してきました。私自身もその昔、何度も発表の機会を頂き、尊敬する先生方から何度も貴重なコメントを頂き勉強の糧とした思い出があります。

ちょうどそれは世界の心臓血管胸部外科の最高峰と言われるアメリカ胸部外科学会(AATS)に対してアメリカ西部の先生方が西部胸部外科学会(WTSA)を隆盛に維持してこられたのに似ていると私は思っています。

今回は佐賀先生がそのユニークさをいかんなく発揮された素晴らしい内容になったと思います。多数の座長を若手から登用し、若手の登竜門を前面に打ち出すべく症例報告のAwardセッションを多数組んだり、ヨーロッパ心臓胸部外科の受賞論文を発表していただいたり、海外からの招請演者も来日歴のないフレッシュな顔ぶれになったり、海外で活躍する同朋にシンポジウムをやってもらったり、腕によりをかけた学会でした。

中でも宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプロダクトマネージャーである森田泰弘さんに教育講演・安全管理セミナーとして講演していただいたのは圧巻でした。日本が世界に誇るイプシロンロケット、ミューVの開発秘話とその品質管理つまり医療における安全管理への努力を知ることができました。そもそも糸川博士のペンシルロケットからラムダロケット、ミューロケットがそれぞれ時代の最先端を行く優れものであったことをあらためて知りました。予算も少ない人員も少ない恵まれない環境の中で、これほどのものができたこと、さらにイプシロンロケットの場合はたった3年で完成させるという離れ業であったこと、その合間に皆で撮った写真の中の笑顔が素晴らしい、疲労困憊のはずなのに、なぜこれだけの笑顔があったのか、そこから先駆的プロジェクトにおける人材の大切さ、チームワークの大切さが実感できました。

最後にイプシロンロケットの打ち上げのシーンを見て私は感動し涙を抑えるのに苦労しました。ただ美しいロケットが飛翔しているだけではない、それを支える人たちの尊さを実感したからです。素晴らしいセッションでした。

それ以外でも興味深いセッションは多数ありました。

たとえば最近ホットな領域のひとつであるMICSでは教育セッションが2つ組まれ、MICS手術を安全確実に導入するかを大阪大学の西宏之先生、慶応大学の岡本一真先生、愛媛大学の泉谷裕則先生らが解説されました。これからミックス手術をやっていこうという若い先生らの参考になったと思います。

ミックスの教育セッションの後半の前に、アフタヌーンティセミナーというちょっとおしゃれな休憩が入りました。ここではちょっと方向を変えて滋賀医大の浅井徹先生が冠動脈バイパス手術のときに高速エコーとドップラーでより精度の高い手術を行うことを紹介されました。これは私が10年前に発表(論文のページ参照)した内容を器械の進歩でさらに便利に進化させたもので、あの頃の努力が無駄ではなかったとうれしく思いました。

ミックス教育セミナーの後半はより細分化した領域の話でした。心臓病センター榊原病院の坂口太一先生はMICSでの冠動脈バイパス手術を、金沢大学の石川紀彦先生はダビンチをもちいたロボット手術を、そして都立多摩総合医療センターの大塚俊哉先生は心房細動のミックス手術を解説されました。それぞれこれからの展開が期待される、ホットな領域で皆の参考になったと思います。

なかでも大塚俊哉先生のオフポンプで左心耳を切除する方法はこれでワーファリンが安全に止められるデータとあいまって、これから皆で推進しようと盛り上がりました。循環器内科の先生方と一緒に展開したいものです。

ミックス関係では会長要望ビデオ演題で不肖私・米田正始もポートアクセス法による僧帽弁形成術と大動脈弁形成術の同時手術をご紹介し、さまざまなご意見を頂きました。私自身、つい数年前まではこのような手術ができるとは思っていなかったため、今昔の感がありました。

若手のための症例報告コンテストはにぎやかに多数の発表が行われました。私のかんさいハートセンターからも松濱稔先生と小澤達也先生が面白い症例を報告してくれました。松濱先生は、あと1週間のいのちと言われた心臓悪性腫瘍を心臓手術で治し、2年近くも自宅で人間らしく生きられたケースを報告しました。ネバーギブアップ精神が患者さんを2年とはいえ、有意義に延命できたこと、これからさらに治療法を磨きたく思いました。小澤先生は肝硬変と三尖弁閉鎖不全症の患者さんにポートアクセス法で三尖弁形成術を行い、元気に退院されたケースを発表しました。ポートアクセスに代表されるミックス手術は美容に良いだけでなく、体力の落ちた患者さんの救命にも役立つことを示してくれました。ご苦労様でした。

恒例の会長講演はもちろん佐賀先生がされました。ドン・キホーテ・デラマンチャの心臓外科人生というタイトルで、力強い心臓外科医の半生を知るなかから、どうすれば立派な心臓手術ができるか、どうすれば一流になれるのかというヒントを多くの若手諸君が学んでくれたのではないかと期待しています。

弁膜症のシンポジウム「複雑な修復法を用いた僧帽弁形成術の遠隔成績と成績向上のための工夫」ではさまざまなタイプの僧帽弁閉鎖不全症への外科治療の検討がなされました。倉敷中央病院の小宮達彦先生はBarlowタイプ(バーロータイプ)のそれを、小牧市民病院の澤崎優先生は砂時計型切除法を、大阪大学の戸田宏一先生は1ノットループテクニックを、大阪市立大学の柴田利彦先生はループ法200例の検討を、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生は自己心膜による僧帽弁再建を、そして私・米田正始は機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する乳頭筋吊り上げ術(PHO法と呼んでいます)を検討報告しました。なかでも機能性僧帽弁閉鎖不全症は世界的に予後が悪く、心臓外科の位置づけも不透明になっていますが、これから優れた治療成績を世に問うて、安心して心臓手術を受けていただけるよう、努力したく思いました。

興味深いディスカッションが続き、時間の都合で尻切れになりましたが、大変有意義なシンポだったと思います。たとえば僧帽弁形成術のあとSAM(前尖がまくれ上がってMRが再発する)をどうするかで熱い議論になりました。私はSAMは解決できる、だからSAMのために弁置換になるのはもったいない、手術中に十分直し、患者さんがスポーツでもなんでものびのびできるようにしよう、とコメントしました。静岡県立総合病院の坂口元一先生、良い質問と議論をありがとう。

大動脈のシンポジウムでは広範囲に進展した弓部大動脈病変に対する治療戦略と展望というタイトルでこれまた熱い議論が交わされました。大阪大学の倉谷徹先生と国立循環器病研究センターの湊谷謙司先生の軽快な司会のもとで、通常手術、術中ステントグラフト、ステントグラフト+デブランチ、などの方法が詳細に論じられました。倉敷中央病院の島本健先生の発表はそれぞれの方法の弱点を正視した優れもので大変参考になりました。他先生方のご発表もいずれも立派で今後に役立てるセッションになったと思います。

招請講演ではメルボルン大学 IMG_0435オースチン病院時代の畏友・George Matalanisが弓部大動脈手術と大動脈基部再建の講演をされました。私も是非聴きたかったのですが、同じ時間帯に別のセッションの司会がありできませんでした。しかしGeorgeとはその前の夜のパーティでゆっくり話でき、相変わらず活躍している内容を子細に学べてうれしく思いました。

アメリカはNorthwestern大学の Chris Malaisrie先生は2回講演されました。そのうち1回はランチオンセミナーで私が司会をさせて戴きました。講演は僧帽弁形成術と、MICSのAVRでいずれもしっかりとした準備と勉強・研究の上に成り立つ立派な内 IMG_0431容でした。実際米国を代表するアカデミック外科医になりつつあると思いました。この先生はかつて私の古巣であるスタンフォード大学で修練を受けたことがあり、いっそう親しみがわきました。講演のあとも一緒に食事しながら将来の交流がますます楽しみになると思いました。

学会1日目の夜に全員参加の懇親会がありました。和やかな楽しい会でしたが、近大マグロの解体ショーがあり、とれとれのマグロがふるまわれました。とくに中トロは絶品でした。これからマグロが入手困難になるだろうという予想のあるなかで、これだけ立派なマグロが養殖できるとなれば、私たちは一生マグロに別れを告げることなく楽しめることになり、一同感謝感謝の夜でした。

こうしてユニークかつ立派な関西胸部外科学会総会は盛会裏に終了しました。

会長の佐賀先生、関係の皆様、お疲れ様でした。おめでとうございます。

 

平成26年6月22日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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心臓再手術は何回までできるの?【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️心臓再手術の回数の限界は

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これはその患者さんの体力や心機能、おかれている状況によっても異なります。

私自身の経験は6回目までで、心臓手術そのもIlm17_bc03011-sのは十分できます。

そもそも再手術の難しさとは次の諸点が考えられます。その難しさは再手術の回数に比例して増えるという印象があり、しっかりと取り組むことが大切です。

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◾️心臓再手術の問題点

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1.心臓や大動脈が胸骨や肺と癒着していて、そこをはがすときに出血する恐れがある。さらに術後にじわじわと出血が続くことがあり得る。

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2.以前の心臓手術のためと、初回手術より長い病悩期間のため心機能や全身のちからが低下しているかも知れない。年齢も一回目より高いことが多い

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3.以前の手術で切除した組織があると、その組織欠損が再手術の障害になることがある

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などですね。いずれも多数回再手術では大きな問題になりがちです。

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◾️それら問題への対策は

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1.に対 6629578しては高い剥離技術でかなり対処できます。胸骨正中切開はピタリのところで骨だけを切ることが大切です。それにはソー(のこぎり)の特殊な使い方が役立ちます。

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剥離についてはかつては電気メスとはさみで行いましたが、現在はそれにハーモニックメス(微振動で熱を出して切るメス)が加わり、術後の出血も抑えやすくなりました。これも正しい表面で剥離する技術が大切で、組織をできるだけ傷めないことが術後の出血を減らすことにつながるのです。

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しかし大動脈が胸骨に食い込んでいるようなケースでは、その胸骨をのこぎりで切る操作じたいは昔と同じなので相応の工夫が必要です。十分工夫はできるのですが、そのために体外循環時間が延びる場合は2.の体力の問題が発生するため、多角的に考えて対処する必要があります

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2.については、ポイントを押さえて効果的かつコンパクトな、したがって短時間に仕上げる心臓手術が良いでしょう。止血には時間をかけても良いのですが、心臓を止める時間や体外循環時間はできるだけ短くしたいものです。

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3.は手術手技の工夫で対処します。組織欠損があまりにも大きいのはやや不利ですが。

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◾️総じて

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こうした努力と工Ilm18_ab01042-s夫の積み重ねで再手術は6回目といえども可能です。なお前回の手術を私たち自身が行っている場合の再手術はそれだけ楽で安全性が高くなります。というのは将来の手術を考えて、心臓や大動脈が骨や肺などと癒着しないように、心臓と周囲組織の間にバリアーを作るなど十分な配慮をするからです。再手術はじつは前回手術から始まっているわけです。患者さんの遠い将来まで見据える手術、これが安全性の向上に役立つと信じます。

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ともあれ誰も好んで再手術などしたくはないのですが(初回手術のほうがよほど楽です)、それしか患者さんの救命の道がないというときにはぜひともやらねばなりません。

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これまでに3回目から5回目の再手術をも多数行っています。現在の医誠会病院でも同じポリシーで頑張っています。元気に退院して行かれる患者さんのお顔を拝見し、喜びもひとしおです。

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第11回患者さんの会のご報告

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第11回患者さんの会は平成26年6月1日に京都駅前のキャンパスプラザにて盛大に行われました。ご参加下さいました患者さんたち、協力してくれた高の原中央病院の皆さんに感謝申し上げます。

今回はかんさいハートセンターが立ち上がってから初めての会でした。

実際、私自身がその立ち上 A335_002げのため多忙を極め、また要領の悪さからなかなか第11回が開催できず、久しぶりの会になりましたこと、お詫び申し上げます。

しかし会場は多数の患者さんでにぎわい、しかも皆さん活発にご質問やご意見を下さり、感謝に堪えません。

私の講演は「検査データの読み方」で、患者さんたちが平素外来で受けられた検査の結果をよりしっかりと理解し健康管理に役立てていただけるよう、ご説明させていただきました。

心臓外科手術、メタボや糖尿病、脂質異常症、CKD、高血圧、そしてそれらを予防するための生活の注意、糖質制限食、体によい食べ物とくにアマニ油など、多岐にわたるディスカッションで皆様のお役に立てる内容になったのであればうれしいことです。

また今回は当院栄養科の余呉淳子科長が栄養のお話をして下さり、しかも糖質制限のケーキを皆様にお出ししてくれました。今後の健康管理の一助になれば大慶です。

予定を超過しての会は盛会裏にお開きとなりました。

なお今回皆様に頂いたご意見をもとに、今後の患者さんの会を運営していきたく存じます。

今後の方向性として、これまでの京大病院、名古屋ハートセンターの患者さんたちと、現在の高の原中央病院かんさいハートセンターの患者さんたちも合流してもっとにぎやかに行えればと考えております。

会場は患者さんの負担減を考慮して、高の原中央病院講堂や適宜これまでのキャンパスプラザをうまく活用することを検討したく存じます。

皆様のさらなるご意見やご教示を頂けましたら幸いです。

最後に協力してくださった山田さん、高の原中央病院の皆さんに厚く御礼申し上げます。

平成26年6月1日

米田正始 拝

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第11回患者さんの会のお知らせです

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心地よい時候となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて第11回の患者さんの会を開催させていただくことになりました。サーバー・システムの不調のため新しい記事がUpできず申し訳なく思っております。

また、昨年後半に開催したかったのですが、かんさいハートセンター新設のためなかなか時間が取れず、失礼いたしました。

今回も前回と同じキャンパスプラザを予定しております。

今回は日ごろの心臓手術のあとの検診でのデータとくに血液検査のデータの読み方をお話したく思います。少し知識がつくと、外来でも地域や職場などの検診のときにもわかりやすく便利になるでしょう。

その他なんでも語り合いたいものです。ふるってご参加を。

----記----

第11回患者さんの会

日時:平成26年6月1日日曜日 午後1時30分から午後3時30分まで

場所: キャンパスプラザ京都

内容:近況報告(米田正始および何人かの患者さん。我と思わんかたどうぞ)

講演:「血液検査、データの読み方」 米田正始

せっかく受けた血液検査です。その結果を健康増進に活かしたいものです。そのための知識を伝授いたします。

質疑応答なんでも相談: 心臓手術やそれにまつわる悩み・疑問をどうぞ

(込み入ったご相談の場合はとりあえず簡略お話しし、後日また時間をもうけるなど致します)

連絡事項、新たな世話人さまなどのご相談、

高の原中央病院かんさいハートセンター心臓外科開設から半年がたち、かんさいハートの患者さんの会を立ち上げることを考えております。これまでの患者さんの会と合流してにぎやかにやるか、あるいは小ぶりでも直接話ができる会を続けるか、当日、皆様のご意見をいただきたく考えております。

お申込み: 準備の都合上、お早めにお申し込みください

参加費: おひとり1500円(含:会場費、飲食代、通信費、その他)

申し込み先: 高の原中央病院かんさいハートセンター 患者さんの会事務局(福崎、勇元)

〒631-0805 奈良市右京1-3-3 

電話0742-71-1030(代表)  FAX  0742-71-7005

メール: murao@takanohara-ch.or.jp 

 

*********** 会場のご案内 ***********

キャンパスプラザ京都
https://www.shinzougekashujutsu.com/.a/6a0128758a0c0f970c01676434ebfd970b-pi
〒600-8216 京都市下京区西洞院通塩小路下る
キャンパスプラザ京都
(ビックカメラ前、JR京都駅ビル駐車場西側)
TEL.(075)353-9111
FAX.(075)353-9121

 

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11b) 冠動脈瘤ーー重症では注意が必要 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年1月2日

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◾️冠動脈瘤とは?

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冠動脈瘤とは心臓に血液を送るたいせつな冠動脈の壁が壊れてこぶのように膨らむ病気です。Fotosearch_CAR05005

右図のうち赤い線は冠動脈を示します。ちなみに青い線は冠静脈です。(やや下のほうから見た図です)

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冠動脈瘤の成因として、先天性つまり生まれつきのタイプから後天性つまり生まれてから川崎病などの感染その他の原因で発症するタイプがあります。先天性心疾患である冠動脈瘻が原因で発生する冠動脈瘤もあります。

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◾️冠動脈瘤が悪化するとどうなるの?

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冠動脈瘤はその中で血流がよどんで血栓ができると心筋梗塞となりますし、瘤があまり大きくなると破裂して大出血します。いずれの場合でもいのちにかかわることがあり、油断禁物です。

とくに瘤破裂などが起こりそうな場合は心臓手術の適応となります(手術事例 冠動脈瘤)

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◾️冠動脈瘤を早期発見するために

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かつて冠動脈瘤の精密検査といえばカテーテル検査というやや大がかりな検査が必要でしたが現在はCTスキャンでとくに痛みや苦痛なく、10分ほどの短時間でかなり詳細までわかります。A309_085

造影剤は必要ですが、それも静脈からの点滴のため苦痛が少なく、点滴や飲水などを工夫することで腎臓への負担も最小限に出来ます。

さまざまな工夫により放射線被曝も少量に抑えることができており、患者さんにとって朗報です。

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予防が第一で、ついで早期発見です。見つかればほとんどの場合打つ手があります。

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◾️冠動脈瘤の治療は?

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冠動脈瘤が破裂しそうな時や、瘤の中に血栓ができて心筋梗塞などが発生しそうな場合には外科手術が考慮されます。

瘤を切開し、中にある血栓を摘除し、瘤をきれいな動脈に形成することが治療です。狭窄などがあれば冠動脈バイパスを付けることもあります。瘤が小さく、破裂や血栓の心配が少ない場合、しかし増大傾向がある時には瘤を外から包み込み、これ以上の拡大や進行を防ぐこともあります。これは体外循環を使わないオフポンプで出来るため患者さんの体の負担が軽くて済みます。

冠動脈瘻が原因で冠動脈瘤ができている場合は、瘻を徹底して閉鎖するようにしています。それにより長期の安定性が得られやすいからです。

私たちはその患者さんの冠動脈瘤と全身の状態に合わせて上記の手術法を選択しています。そして15MHzの高速エコーで瘤の内側の状態を確認しながらベストな形成を行なっています。

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◾️冠動脈瘤と川崎病との関係について

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この病気は川崎病の後遺症として起こり得ること 巨大な冠動脈瘤が知られています。

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写真右は川崎病の既往のある50代男性の冠動脈瘤(赤い矢印)です。巨大な瘤の中に血栓が多量にでき、それが下流へ流れて重要な冠動脈を閉塞させ心機能が大変低下していました。

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瘤や合併する冠動脈狭窄のために手術が役立つことが多々あります。

川崎病に特有な血管の炎症やそれによる血管内膜の破壊が強いケースほどバイパス手術は役に立ちます(心臓手術事例)。

というのはバイパス手術でもちいる内胸動脈グラフトが血管を守るホルモンを出せるからです。

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カテーテル治療PCIで使うステントとくに薬剤溶出性ステントは血管内膜を傷めるため川崎病では一層不利な状態になります。

なので、かつてこどもの頃、川崎病で冠動脈に多少でも病気が発生したかたは、定期健診を受けられることをお勧めします。

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