お便り37 二尖弁がらみの2度の大きな手術を乗り越えた患者さんから

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大動脈弁は通常3尖つまり Bicuspic AVひらひら動く部分が3つあるのですが、

それがときに2つしかないことがあります。

これを二尖弁と呼びます。

二尖弁は必ずしも病気ではありません。

一生弁膜症にならずに過ごされる方も多数おられます。

しかし二尖弁には構造上壊れやすいという弱点があり、弁膜症手術を受けるかたも少なくありません。

 

  近年はこの二尖弁は上行大動脈や主肺動脈の壁にも構造的弱点がある、

動脈疾患であることが遺伝子学的に解明されました。

そこで、マルファン症候群等と同様の結合組織疾患とし34

フォローし安全の確保につとめる方針が一般化しつつあります。

 

下記の60代女性患者さんも二尖弁大動脈弁狭窄症上行大動脈瘤のため9年前、

当時私がいた京大病院大動脈弁置換術と上行大動脈置換術を行いました。

その当時は二尖弁にはまだ大動脈疾患という考え方はありませんでしたが、

私たちは安全のため、大動脈弁二尖弁の置換だけでなく、

拡張した上行大動脈を人工血管に取り換えるようにしていました。

すぐ元気になられ、その後健康な生活  を楽しんでおられました。

2007年ごろの京大病院のごたごた の際にも署名を集め支援をして下さいました。

その後も患者さんの会などでよくお会いしていましたが、

弓部大動脈瘤大動脈基部拡張が発生し、ハートセンターまで来られました。

 

弓部大動脈全置換術大動脈基部再建それも再手術とは大きな手術でしたが、

順調に回復されまもなく軽快退院されました。

 

以下はその患者さんからのお礼のお手紙です。

Person_0116二尖弁などの心臓手術を迷っておられる患者さんのお役にたてるようにと、詳しく書いて下さいました。

しかも、心がつたわりやすいようにと実名で。

 

患者さんと一体感を長年持てるのは医師としてこの上ない喜びです。

ありがとうございます。

 

***********患者さんからのお便り********

 

2002年3月、私は京都大学医学部心臓血管外科の米田正始教授に弁置換、人工血管の手術をして頂きました。

生れつき、心室中隔欠損症、心臓弁膜症の私は、手術後、呼吸が清々しく楽になり、肌の色が、みるみる白く赤みを増していくのを実感しました。

私にとって、不思議な事に、諸々の臓器、網の目のように広がる血管、リンパ管、神経等が、何ら損傷する事なく私は、元気に、生れ変わりました。

 

私は、三人の子供の結婚と、7人の孫達の誕生の世話、老いた母の看護、

母が岐阜市の老人保健施設喜びの里に入所した後の見舞い、

母が亡くなる前の1ヶ月間、母と笠松病院の病室で、起居を共にする事等が出来ました。


そして、私は、念願の絵画の作成に没頭し、

日本アンデパンダン展日本美術会の会員、日本水彩展、講談社フェーマス・スクール、アート・コンテストに入選し、

アメリカ、ニューヨーク市のオープンハウス・ギャラリーで、ジャパニーズ・アートポスター展にも出品する事が出来ました。

これも、すべて、米田正始先生が、多くの先生方達、スタッフの方達と完璧な心臓手術で、

私を健康にして下さったお蔭と思っています。


2度目の手術について、

私は、2010年11月13日、母の葬式を終えて、11月19日、

京都大学附属病院で、超音波検査を受けた結果、弓部大動脈瘤が見つかりました。

映像で、大動脈瘤の両側に、粥状の血の溜りを示して下さった時、

私は、いつも関西弁で検査結果を、丁寧に説明して下さり、患者の思いを聞いて下さる先生に、

「あー、かなんなー」と何度も、口にしました。

「私は、米田先生のところへ行きます」と言うと、先生は、すぐに、

CT検査をして、第1回目の手術の記録を渡して下さいました。

 

名古屋ハートセンターに連絡すると、

米田正始副院長は、第1回目の手術の時と同じように、すぐに診察して下さいました。

先生の優しい解り易い丁寧な説明を聞いていると、

手術の不安が消え、先生の励ましに、心が勇気づけられ安心しました。

12月2日に入院し、6日に手術をして下さる事になりました。

血栓がある6㎝の弓部大動脈瘤を抱えながら、

2~3ヶ月間、手術日を待たなければならなかったら、

その間、実に、辛い不安な生活だったと思います。

CT検査の結果、私は6㎝の弓部大動脈瘤と、その他にも二つありました。

2度目の手術は、前回の手術よりも、リスクが大きいでしたが、

米田正始先生の御執刀と、先生達、多くのスタッフの方達のお蔭で、

前回よりも短く5時間で終了しました。

生きるか、死ぬかというはざまで苦悩する心臓病患者にとって、

すぐに診察して頂き、手術日が早く決まり、

思いやりのある温かい説明、そして、

世界最高水準の心臓病治療をして頂ける事が出来るのは、

この上もなくありがたい事です。



ハートセンターの病室は、心穏やかな色調でまとめられ、

障子とカーテンで区切られたベッド、

心安らかに流れるクラシック音楽、

患者に合わせた減塩食、

毎日、隅々まで清掃して下さるスタッフの方達、

温かい言葉をかけて適切な処置をして下さる看護師さん達と検査技師の方達、

常に、患者の身体の状態を尋ね診察して下さる先生達、

ハートセンターは、何もかも患者の心と身体を配慮しての病院でした。

 

私は、2度、米田正始先生の御執刀で、生命を救って頂きました。

そして、私に、健康な身体と活力を与えて下さり、この上もない感謝の思いで一杯です。

退院後、友人のインターネットで、米田正始先生のホームページを拝読させて頂きました。

その中で、「大動脈疾患について」を検索したところ私の病状である弓部大動脈瘤について、

ある方の手術の経過の写真とその詳しい説明が記載されていました。

 

私が、麻酔で、意識を失っている5時間の間に、

米田先生、先生方達、スタッフの方達は、私には、不思議な事としか思えない高度な医療技術-ステップワイズアーチファースト法、選択的脳灌流等で、

手術をして頂いているのが分かりました。

 

先生のホームページには、医療に関する事柄、諸々の事柄が記載され、

患者達の生命を1人でも多く、救いたいという先生の熱い思いや、

生命への愛にあふれ満ちていると思いました。

ありがとうございます。

 

2011年2月  山田瑞恵


*******************

初回手術から12年半、2回目からでも4年以上の月日が経ちました。

患者さんの会でお会いし、お元気な様子は存じていましたが、お葉書を頂きました。

こころを打つ、うれしいお便りでした。

心臓血管外科医になってよかったと想うひと時です。

お孫さんたちと楽しくお過ごしください。またお会いしましょう。

*******お便り その2******


IMG_0545b残暑お見舞い申し上げます。

先生、ご健勝のことと存じ上げます。

私は、おかげ様で日常生活を元気に過ごし好きな絵画を描き、いくつもの発表の機会に出品しています。

このお盆には、2回目の手術の後に生まれた8番目の孫が加わり、

3家族が集まり賑やかなお盆を迎えました。

これもあれもすべて先生のおかげと感謝しています。

大勢の患者達の生命を救い、そしてその後も多大のご配慮を頂き、誠に感謝しています。

先生のご健勝とご多幸を日々心よりお祈り申し上げています。

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
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自己心膜―便利で有用な手術材料、しかし注意点も【2025年最新版】

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Pericard

最終更新日 2025年1月5日

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◾️心膜とは

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心膜は心臓の周囲にある袋状の膜です(左図)。

普段は心臓を包み守っているのですが、

これが心臓手術に役立つため、

昔から心臓外科医に愛用されてきました。

患者さんご自身の心膜を自己心膜と呼び、

比較的しっかりした強度があり、かつご自身の組織ですので拒絶反応が起こらず、

炎症も起こりにくく、

そのまま使えば生きた組織なので感染にも比較的強いという特長もあるからです。

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◾️自己心膜の活用例

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たとえば心房中隔欠損症(略称ASD)の閉鎖には現在も自己心膜がしばしば使われます。

心膜周囲の組織をきれいにはがしてから使えば、

血栓もできにくく、フィットも良いため安全な手術材料として重宝されています。

 

心筋梗塞のために左室が壊れたときに、これを自己心膜のパッチで左室形成することもあります。

心筋こうそく後の心室中隔穿孔(心室中隔に穴が開きます)でも使うことがあります。

 .

Pericard4 弁膜症でも、たとえば感染性心内膜炎のそれも重症で

弁の付け根に膿が貯まり抗生物質も効かなくなる弁輪膿瘍でも

感染組織をすべて取り去ったあと、

自己心膜で再建することがあります

(右図はその一例です)。

生きた自己心膜は人工物よりは免疫抵抗力があるからで、実際役立つことが多いです。

大動脈弁輪拡張や大動脈基部再建でも使うことがあります。

 .

自己心膜だけでなくウシやブタの心膜も使いやすく有用で、

大動脈手術左室形成術などに活用することがありますが、

これらはグルタルアルデハイド処理してあるため抵抗力がなく、感染がらみの場合は弱くなります。

そのため感染性心内膜炎などの場合はグルタルアルデハイド処理していない自己心膜が有利です。

 .

図 マノージャン法 自己心膜は肺動脈や大動脈、あるいは僧帽弁大動脈弁の修復や拡大(右図)にも活用されることがあります。

大動脈は圧が高いため、自己心膜がしっかりしているケースではそのまま使用することもありますが、

心膜が薄いケースでは二重にして用いたり別のパッチで裏打ちすることもあります。

肺動脈や右室は圧が低いのですが、

先天性心疾患のなかには高圧の場合もあり、

そうしたときに何らかの補強がされることもあります。

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◾️弁形成術への活用

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僧帽弁の形成術では弁葉の補てんや拡張のために自己心膜を使うことがあります。

そのままでは時間とともに縮んだり石灰化しやすいため

グルタルアルデヒドで処理してから使うことも多いです。

長期成績が徐々に明らかになり、今後有望な方法として、

弁置換術に問題がある場合などに使うようにしています。

.

大動脈弁の形成術でも心膜を使うことがありますが、

従来の方法つまり弁を自己心膜で大きくする方法などは成人とくに高齢者では報告があまりなく、あっても良くない成績です。

今後の研究が待たれます。

 .

いずれの場合でも、弁の先端部に自己心膜を使うことは一般に少なく、

これはこうした使い方の長期の安定性が悪いという報告によるものです。

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◾️自己心膜で弁尖を置換すると?

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それでは弁全体を自己心膜で取り換えるのはどうでしょうか?

 

AVrepair peridard leaf extention 畏友・故Duranデュラン先生の報告(Duran C 他. Eur J Cardiothorac Surg 2005;28:200-5
)でも、

自己心膜大動脈弁手術にて10年で86%が再手術回避できており、

これは45歳で生体弁大動脈弁置換を受けた患者さんの成績(Banbury MK 他. Ann Thorac Surg 2001;72:753-7)と同じです。

つまり45歳より年上の患者さんでは生体弁はもっと長 Health_0152持ちするため、

45歳以上の患者さんでは自己心膜手術は患者さんには不利、

早めに再手術が必要となるわけです。

 .

自己心膜で弁全体を取り換える手術として考えられる弱点として以下が挙げられます。

.

1.心膜の構造と弁葉・弁尖の構造は違い、

心膜は必ずしも高圧での頻繁な折れ曲がり(心拍数70として一日10万回、一年で3650万回)に強いとは限らないこと


2.縫い付けるために針孔が多数でき、そこがミシン目効果を生じて、

ちょうど切手をちぎるときのように、弁がちぎれやすくなる


3.カルシウム(石灰)が沈着しない処理は特許や企業秘密でまだ一般化していないためカルシウム対策が少ない

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弁の先端部の一部だけ自己心膜で取り換える場合は力のかかり具合や折れ曲がりが少ないため必要な場合は使えると考えていますが、

弁の先端部全部を取り換えるのは何らの長期保証がなく、

しかも高齢者の場合は生体弁が16-20年も持つことが示されているため

ワーファリンなしの生活という意味でも生体弁のほうが有利と考えられるからです。

 .

一方、弁の根本の部分が感染性心内膜炎などで壊れたり穴が開いたときに自己心膜で補てんするのは

それほど折れまがらず比較的安定度が良い部位のためよく使われます。

 .

このように自己心膜はさまざまな活用法がありますが、

グルタルアルデハイド処理だけではその限界があることを知って使う必要があると考えます。

また心膜を取るためにあとでそこが欠損となり、

術後の癒着を増やすという副作用もあります。

癒着はもしもの再手術時にやや不利な状況をもたらすためゴアテックスシートなどを使用して予防に努めますが、

その効果には限界があります。

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◾️自己心膜での弁尖再建、最近の流れは

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Sick_0345歳以下の若い患者さんの場合は生体弁の耐久性が低下するため自己心膜手術の意義が出てくる可能性があります。

しかし自己心膜の耐久性も低下する恐れがあるため、まだこれからの研究課題です。

 .

私たちはこの方法を比較的若い患者さんに使い、良好な印象を得ていました。60歳前後までは生体弁の耐久性がやや弱いため、自己心膜をうまく使うようにシフトしつつあったのです。ただその後、自己心膜弁は長期的に感染性心内膜炎が起こりやすいというデータが出てきています。

逆流が起こらないように大きなサイズに設計されているため、乱流が起こり、このため感染性心内膜炎をおこしやすいのではないかという忠告を内科の先生から頂きました。

また生体弁のようなカルシウム処理もできないため、自己心膜が将来石灰化する恐れが否定できません。

まだまだ改良しなければならないのかも知れません。

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また生体弁の手術の後なら、カテーテル弁(TAVI)が安全に行いやすいため、

2度目の手術が安全に回避できるという利点があることもこれからの医療では念頭におく必要があります。自己心膜での弁尖再建(置換)では将来の TAVIが安全にできる保証はありません。大きな自己心膜弁尖が冠動脈入口部を塞ぐ恐れが大きいからです。

 

その後、私が現在手術をしている一宮西病院の澤崎先生が自己心膜での弁再建を改良され、それまでの方法よりも自然な血流が得られるためIE(感染性心内膜炎)も少ないというデータを得たため、この方法を愛用しています。またこの方法なら将来のTVI(バルブ・イン・バルブと呼びます)にも安全に対応できるため将来性があると思います。

 

総合的に患者さんの安全とQOL(生活の質)向上を考え、

オーダーメイド的にその方に一番適したものを提供する医療が今後主流になるでしょう。

同時に医学の鉄則は「患者さんに良いことはする、

しかし良いかどうか不明なことはしない」ですので、

慎重に検討を進めることが大切です。

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執筆:米田 正始
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収縮性心膜炎―心臓「周囲」の病気ですが重くなると危険な状態に【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月16日

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◆ 収縮性心膜炎とは?

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Normal and CP収縮性心膜炎はあまり一般には知られていませんが、決して珍しい病気ではなく、重度の心不全を引き起こす危険な疾患です。

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心臓は「心膜」という薄い膜に包まれています。本来は柔らかく心臓を保護していますが、この心膜が厚く硬くなると、まるで鎧のように心臓を締め付け、血液を送り出す働きを妨げてしまいます。


この結果、心臓自体に異常がなくても外側から押さえ込まれる形で重い心不全が発生します。

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◆ 原因は?

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かつては結核が主要な原因でしたが、現代では以下のケースが増えています:

  • 特発性(原因不明)

  • ウイルス感染後

  • 心臓手術の後遺症(術後出血や心嚢液貯留後に発症することあり)

  • PCI(カテーテルによる冠動脈治療)やペースメーカー植込み時の出血後に発生することもあります

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◆ 主な症状

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収縮性心膜炎では、心臓の動きが制限されるため以下のような症状が現れます:Ilm19_cb01054-s

  • 足や顔のむくみ

  • 肝臓の腫大によるお腹の張り

  • 少し歩いただけで息切れ

  • 重症化すると うっ血性肝障害 → 肝硬変 → 致死的な状態 へ進行

  • 腎臓機能の悪化

早期に治療を開始しないと、多臓器不全へ進む危険があります。

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◆ 診断方法

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  • 心エコーやCTで心膜の肥厚や硬化を確認

  • 心臓カテーテル検査で房室圧の上昇や「dip and plateau(ディップ・アンド・プラトー)波形」を確認
    これらで正確に診断できます。

Ilm09_dd05001-s.

◆ 治療の流れ

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  • 軽症:利尿剤などの薬物療法で対応可能

  • 重症:薬では限界があり、**心膜切除術(心膜を外科的に取り除く手術)**が必要

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分厚くなった心膜を心臓の前側・側方・横隔膜側までしっかり剥離すると、圧迫が解除され心臓の動きが改善します。

しかし世界的には手術死亡率が10%を超えることもあり、長期成績の課題も残っているのが現状です。

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◆ 私たちの工夫と新しい展開

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当院では以下の工夫を行い、成績向上を目指しています:

さらに従来の「心膜切除術だけでは改善しない患者さん」に対して、新しい術式を開発しました。

この方法では、従来の限界を超えて心機能が改善し、手術直後から患者さんが劇的に元気を取り戻すケースを経験しています。

2025年には米国胸部外科学会(AATS)で発表し、高い評価をいただきました。

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◆ まとめ

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  • 収縮性心膜炎は放置すれば致命的になりうる病気

  • 早期診断と適切な手術が予後改善のカギ

  • 当院では最新の外科手術と低侵襲手技を駆使し、安全性と生活の質(QOL)の両立を目指しています

  • 他施設で「手術しても改善が難しい」と言われた方でも、新しい術式で改善の可能性があります

まずは諦めずに専門外来へご相談ください。

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ミックス手術とは―小さい傷跡で患者さんにやさしい【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月24日

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◾️ミックスつまり低侵襲心臓手術とは

ミックスとは minimally invasive cardiac surgery(MICS)の略称で、ポートアクセスでの手術がその代表格です。小さい傷跡で骨も切らずにできる心臓手術のことを指すことが多いです。

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心臓手術はその最中に心臓を止めるあるいは一部止める必要から、

他臓器のオペよりも危険性の高い、大掛かりなものつまり高侵襲が当然と、長い間認識されてきました。

 

心臓手術といえども低侵襲つまりやさしさが求められるようになりました しかしこの20年あまり、安全性の向上と、低侵襲化(患者さんの体への負担を減らすこと)の社会要請を受けて、

低侵襲心臓手術の開発も行われてきました。

一般に低侵襲化イコール傷(創)が小さい小切開という印象がありますが、

小切開のために、安全なオペが多少たりとも危険性あるものになるというのは絶対に困ります。

 

実際低侵襲手術の代表格ともいえる内視鏡・腹腔鏡手術で

普通なら起こらない悲劇が起こったこと

(ある医大病院泌尿器科や別の大学病院腹部外科)は記憶に新しいところです。

低侵襲手術にさいしては目的つまり何のために行うか、

ということと、方法つまり安全確保のためにどうすべきか、が大切と思います。

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◾️ミックス(低侵襲心臓手術)には大きく2つのタイプがあります

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体外循環(ポンプ)の実例です。これを使わない手術がオフポンプ手術です。1.体外循環を使わない、あるいは大動脈遮断をやらない(つまり心拍を止めない)方法。

たとえばオフポンプ冠動脈バイパスステントグラフトを使ったハイブリッド手術などですね。

体外循環そのものは偉大な発明だったのですが、自然の状態と比べるとさまざまな副作用、限界、問題点のあることが知られています。

これをより新しい技術で克服しようというわけです。

最近ではTAVI(別名TAVR、つまり折りたたんだ生体弁をカテーテル等で入れる方法です)などもこの体外循環を避ける努力と言えましょう。

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2.通常の心臓手術たとえば心臓弁膜症を小さい皮膚切開つまり小さい傷で行う、そしてなるべく胸骨も切らない方法

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◾️狭義のミックス手術について

上記2.の小切開手術を解説します

古典的右開胸 ミックス手術は昔からありました。

典型的なものは心房中隔欠損症ASDに対する右開胸によるASD閉鎖術でした。

これは小さな穴を閉じるだけのもので、短時間でできるため、

この特徴を活かして心臓を一時的心室細動状態として穴を閉じました。

もちろん体外循環に乗せて患者さんの全身を守りながらです。

さらに三尖弁単独のオペでも同様のアプローチをとることが多くありました。

とくに再手術などでこの意義は大きく、

時間がかかり出血が増えやすい剥離操作を最小限にできるという大きな利点があります。

弓部大動脈瘤に対する左開胸手術もそのひとつで、

上行大動脈などの操作が不要なケースなどで役に立っています。

これらは患者さんからの評判も上々です。

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胸骨部分切開によるMICS

◾️1回目のミックス・ブーム

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その後1980年代から胸骨を部分的に切断して行うタイプのミックス手術が流行しました。

個人的には以下の疑問点があり、あまり施行しませんでした。それは

 

1.視野がやや悪いため、僧帽弁手術などでは両心房上方切開という方法(下図)を用いる必要があり

、そのために洞結節動脈を切断し、

長期的にペースメーカーになる危険性が高いこと、そして Cosgrove biatrial approach

 

2.部分的に切開した胸骨でも完全治癒までは月単位の時間がかかり、

社会復帰を著明に促進するほどではないように見えたこと、さらに

 

3.美容上一番問題になる首の下の皮膚切開は通常の胸骨正中切開のときの皮膚切開とそれほど変わらないため、

実際の美容効果も大きくないこと、などがそのころの理由です。

.

MICS3

◾️2回めのミックス・ブーム

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その後、2000年代に入って欧米を中心に右開胸によるミックス手術MICSが徐々に洗練され、

右開胸でも安全に大動脈遮断や脱血管挿入ができる方法が進歩したため、

導入の価値があると考えるようになりました。

胸骨部分切開にも進化がありましたし。

 .

◾️現在のミックスへ

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とくに僧帽弁形成術三尖弁形成術などであまり複雑でない患者さんで、

大動脈などに問題がないケースが良い適応と考えています。

近年は開発と熟練によって大動脈弁形成術や大動脈弁置換術、さらに複雑僧帽弁形成術にも安全に用いられるようになりました。

ミックス手術の代表格ともいえるポートアクセス法での僧帽弁形成術の標準的手術事例をしめします。視野出しがちょっと難しい事例や、やや複雑な弁形成の事例もご参照ください。

  Median MICS 右開胸のミックス手術でもいくつかのレベルがあり、

肉眼で心臓や弁を見ながら修復する方法と、

胸腔鏡で見ながらオペする方法があります。

 

 また、複数の心臓手術たとえば僧帽弁+大動脈弁の手術や、

複雑なことを行うときにも、

安全性をそこなわない範囲でミックス手術(MICS)を活用しています(左図)。 Ilm08_ad05007-s

 

これにより患者さんの精神的苦痛や負担を減らしよろこばれています。

私たちは数種類のミックス手術のラインアップをもち、その患者さんに最適のものを選ぶようにしています。

もちろん患者さんの年齢や状態、治療内容によっては

あえてミックス手術をやらないほうが患者さんのためになるという場合は、

相談の上、前向きに従来の切開法をもちいるようにしています。

 .

◾️ミックス、今後の流れ

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いずれにせよ、ミックス手術(MICS)は安全確保しつつ、IMG_0826

患者さんの早い社会復帰や仕事復帰を図ることが主目的で、

美容効果はその結果であり、目的ではないと考えます。

実例を右の写真で示します。

(術後半年の写真です。わたしたちの方法(LSH法)では実生活の中で傷跡はほとんど見えません。とくに女性の場合は乳腺の下のしわに隠れるようにしていっそう見えにくくなります)

ダビンチなどのロボットをもちいる術式はさらに進化した段階です。

優れた術者やチームによるロボット手術はその良さが十分発揮でき、

新しい医療としての意義があります。

ただし欧米で見られるように術者によっては課題があります。

たとえばロボットと慣れの問題から術者によっては時間がかかる傾向にあること、

つまり心臓を止める時間が長くなり低侵襲とは言えない場合があり危険性を高める恐れがあること、

そして保険が下りるようになった今でも、様々な形で患者さんの自己負担が多いこと、などです。

これからこうした課題を克服することでロボット手術の発展が期待されています。

 

CIMG2167b(左の写真はミックス手術による僧帽弁形成術後、7か月の患者さんです。

社会復帰も早く、創はこの時点ですでにあまり見えません。

右の乳腺(写真に向かって左側)の横に小さく見える線が創部です。

その他の線は普通の誰にでも見られる皮膚のしわです。

つまり目に見える創はあまりないわけです)

 

以上の諸点を考え、私たちは現時点では患者さ187382804んの安全を確保できる範囲で、

社会復帰とくに仕事復帰や高い生活の質QOLを早く回復させること、

そしてその範囲内で美容上のメリットが生じるようにできる、

もちろん保険が効き患者さんの負担が少ない、

そういうミックス手術を心掛けています。

その方法も4種類を持ちその患者さんの状況にあわせてベストのものを選ぶようにしています。

 .

◾️ミックスの注意点

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現在私たちのチームで何らかのミックス手術が使える心臓病は以下の通りです:

僧帽弁形成術同弁置換術大動脈弁形成術、同弁置換術

デービット手術ベントール手術

メイズ手術三尖弁形成術、同弁置換術

ASD心房中隔欠損症VSD心室中隔欠損症三心房心HOCM (肥大型閉塞性心筋症)

粘液腫などの心臓腫瘍の一部、その他です。

 

Ilm17_ca05007-sミックス手術(MICS)では通常の心臓手術以上に、術者やチームの力量の差がはっきりと出ます。

豊かな経験をもつ熟練外科医なら少々視野が狭くても工夫できるからです。

逆に普通の胸骨正中切開でも弁形成で冷や汗を流すレベルの外科医ではミックス手術は危険です。

患者さんにおかれましてはこうしたことも考慮に入れて調べられることが勧められます。

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執筆:米田 正始
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心臓手術と美容について―美容より安全が大切です。しかし美容にも有利に、、【2020年最新版】

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飽くなき安全性の追求で心臓手術の成績は大きく向上しました

最終更新日 2020年2月25日

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◾️かつて心臓手術は、、、

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心臓手術はかつては生きるか死ぬかの大仕事で、

美容どころではないという印象がぬぐえませんでした。

 .

現代でも他の臓器のオペと比べれば

まだまだ注意して大事にやるべき大事業であることに変わりはないと思いますが、

それでも多くのケースでは安全性がきわめて高くなり、

より早い社会復帰やなるべくきれいな状態をという考えが増えてきました。

 .

◾️その後、心臓手術は進化し、、

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私たちは安全第一という観点から心臓手術であまり美容を追及して来ませんでしたが、10年ほど前から

051_girl_500安全が高くなった分の余裕を、

安全な範囲内で少しは美容にも振り向けてもよいと考えるようになりました。

 .

以前から女性患者さんなどでご希望の方に、

なるべく小さい皮膚切開とくに胸の上の部分(首の少し下のところ)の皮膚切開はなるべく小さくし、

夏服が楽しく着られるようにして来ました。

 .

◾️そしてミックスの進歩

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MICS3 最近はミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術のことで、代表格がポートアクセスです)の器械が進歩しましたので、

それを活用し、

安全確保できるケースで右開胸、小切開手術を行うようにしています。

 .

私たちは以前から右開胸による同様のものを再手術、再々手術、再々々手術などでの三尖弁僧帽弁手術などで行ってきました。

もちろん安全性向上の目的です。

また心臓弁膜症いがいでも、心房中隔欠損症ASD、粘液腫などの安全なオペでも患者さんのご希望などを勘案して多数行って来ました。

 .

IMG_0344b IMG_0343bこうした経験を活かして
ミックスを行っています。

主に僧帽弁形成術や三尖弁形成術、

メイズ手術、あるいは僧帽弁置換術などでミックス手術を標準手術と考えています。技術や経験の蓄積により近年は大動脈弁置換術や大動脈弁形成術もなるべく同法で行うようにしています。

経験の蓄積に加えてこのために開発された新しい手術器械が役立っています。

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◾️ミックスの美容効果は結果です

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208541491このように私たちのミックス手術は一義的には安全な範囲内で早い社会復帰を促すことを目的としていますが、

創部が普通の服では見えないため結果的に美容上も喜ばれています。

上の写真はミックスでの心房中隔欠損症、術後3か月の写真です。

創は乳腺を持ち上げないと見えません。

世間一般のミックスでは副次創と呼ばれる小さな創がいくつもできるのですが、私たちは LSH法 と呼ぶ方法で写真のようにほとんど創がありません。

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MICS MVP1左の写真はミックス手術MICSによる僧帽弁形成術を受け元気になられた女性です。

やはり創はほとんどわかりません。

患者さんの心の負担を軽くするのに役立つことでしょう。

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◾️ミックスが医学的にできないケースにも出来るミックスが

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病気や手術の内容によって右小開胸が不向きなケースが少なくありません。

そうした場合でも小さい傷跡で、心の傷を小さくする事ができます。

恩師David先生譲りの方法で、正中ながら小さく皮膚切開をします。かなりの技術と経験を要しますが、患者さんの満足度は高いです。夏服が気兼ねなく着られるからです。

こうした方法も患者さんの状況やご希望に応じて使う事があります。

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◾️まとめ

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心臓手術における美容とは、安全の確保と、まず生きること、

ついで長期間元気に生きることを優先する Cgsh007-s

そのうえで早期の社会復帰や快適さ、

そして美容上のメリットという順番という心臓手術の基本方針は忘れないようにしています。その中で様々な方法と技術を駆使して患者さんの満足度を上げるようにしています。

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  ハートポートとは

  とくにポートアクセス手術とは
  
  その位置づけ
  
  それが前向きに安全な場合
  
  美しいLSH法とは
  
  かかる費用は?
  
  危険なの
  
  その術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ :ポートアクセス法による僧帽弁形成術
  
ビデオ :連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
  
僧帽弁

  ミックスによる僧帽弁形成術

  同、弁置換術

同、メイズ手術

  ポートアクセスによる弁形成術

大動脈弁

  ミックスによる弁置換術

  同、弁形成術

  同、デービッド手術

ポートアクセス法による弁置換術

三尖弁

  ミックス法による弁形成術

患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックスですみやかに社会復帰された患者さん

お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん

お便り54: ポートアクセス法で僧帽弁形成術を受けた若者患者さん

お便り59: 被災地支援へ!同法の弁形成術を受けられた患者さん

お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん

お便り62: ミックスの僧帽弁形成術と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん

お便り63: ポートアクセスの複雑弁形成術を受けられた患者さん

お便り65: 同法による僧帽弁形成術で元気になられた患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

お便り67: ミックスで右室二腔症の手術を受けられた患者さん

お便り68: ポートアクセス法の弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)をミックス法で受けた患者さん

お便り71: 同法で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん

お便り72: 二弁置換とメイズ手術をミックス法で受けた患者さん

お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動をミックスで克服

お便り74: ポートアクセス法で弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん

 

 

 

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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心臓手術と社会復帰、クルマ運転復帰の早さについて【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 術後の社会復帰・運転復帰はなぜ重要か

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health_0153

心臓手術を受けた患者さんから最も多くいただくご質問のひとつが、
「いつ仕事に復帰できますか?」「車の運転はいつから安全ですか?」 というものです。

心臓手術の目的は「命を救う」だけではありません。
その先にある 社会復帰、仕事復帰、趣味や運転の再開 こそが、生活の質(QOL)を取り戻す大切な目標です。

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復帰までの期間は、以下の要素によって左右されます。

  1. 手術の内容(弁形成術、冠動脈バイパス、大動脈手術など)

  2. 術前の心機能と術後回復のスピード

  3. 年齢・体力・合併症の有無

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◆ 一般的な復帰スケジュール

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標準的な胸骨正中切開(胸の中央を切開する方法)の場合、以下が目安となります。自宅で運動health_0122

  • 術翌日:立位や歩行開始

  • 術後10日前後:退院

  • デスクワーク:術後1~3週間で再開可能

  • 軽い家事や短距離運転:術後3~4週間から

  • 重労働・長距離運転・荷物運搬など:術後2~3か月以降

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👉 体力のある方では術後5日目で職場復帰された例もあり、逆に高齢や合併症を持つ方は回復に時間がかかります。

私たちは患者さんの状況に合わせ、たとえば術後数日で短時間だけ職場に顔を出す→再び入院で休養といった柔軟な対応も行っています。

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◆ MICS(小切開低侵襲手術)で復帰を早める

.ポートアクセス法による大動脈弁手術後の患者さんです.

最近注目されているのが MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery:小切開低侵襲心臓手術、ポートアクセス法 です。

  • 胸骨を切らずに手術可能

  • 傷が小さいため痛みが少なく、治癒も早い

  • 社会復帰・車の運転再開が術後3~4週間で可能 になるケースも

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右図はMICSによる大動脈弁手術後の傷跡です。従来の胸骨正中切開と比べて、ほとんど目立たず、日常生活への復帰が早いのが大きな利点です。

ただしMICSはすべての方に適応できるわけではなく、安全が最優先です。

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◆ 私たちの工夫 ― MICSができない場合も早い復帰へ

A301_058.

医学的な理由でMICSができない場合でも、
胸骨をしっかり再建し、痛みを最小化する独自の工夫で 早期の社会復帰・車の運転再開 を可能にしています。

この方法では術後すぐに両腕を上げる万歳運動が可能で、その後の上半身運動や社会復帰のスピードも速まります

。、、、続きを見る

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◆ 安全な体力回復の目安

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ilm01_bb02033-s術後リハビリでは、「会話ができる範囲の運動」 を基本としています。
これはオーストラリア式心リハビリに基づいた科学的で安全な方法です。

また、遠方から来院された患者さんには、

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  • 十分に体力が回復してから退院

  • 地元の病院と連携してリハビリ継続
    といったサポートも行っています。

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◆ まとめ

Ilm16_ac02010-s.

  • 社会復帰・運転再開の時期は 手術方法・体力・合併症 により個人差があります

  • デスクワークは1~3週間、重労働や長距離運転は2~3か月が目安

  • MICS手術なら3~4週間で復帰可能なケースも多い

  • MICSができない方でも、工夫を凝らした胸骨再建で早期復帰を支援

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心臓手術後の「社会復帰」「車の運転再開」でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

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◆参考ページ

心臓手術とはどういうもの?

そのこれからの方向

心臓外科の名医とは

さあ手術と言われたら?!

安全に必要な症例数は?

病院の立派さと心臓外科の立派さは別?

対象となる病気は?

医師の選び方

私のお勧めは?

美容について

必要な検査

術前のオリエンテーション

米田正始が考案した心臓手術は

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執筆:米田 正始
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Q8.心臓手術の相談にコネやカネは必要?【2020年最新版】

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Ilm18_ba02031-s最終更新日 2020年3月4日

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◾️昔は、、、

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かつて日本の医療ではそうしたものが良い診療を受けるために必要と思われていたふしがあります。

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たしかに永い付き合いのある患者さんとの人間関係は格別のものがありますし、

同じことは協力関係にある医師同士にも言えます。

そして仲間医師からのご紹介の患者さんには会う前から親しみを感じるのも事実です。

Ilm09_af10026-s.

◾️それでも心の絆が、、

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しかし見ず知らずでも心臓病の患者さんが救いをもとめて数ある病院の中から私たちの病院を選び、来て下さることに対して私は熱い気持ちをもってしまいます。

なかでも医師・薬剤師・看護師さんはじめ医療者の方が連絡を取ってこられるときや、

一般の方でもネットや本などで勉強してから私たちを選んでくださるときには光栄とさえ思います。 

昔の患者さんがそのご家族やご友人を紹介してくださる時には一段とうれしく、襟をさらに正して臨む気持ちになります。

患者さんにとって心臓手術は生きるか死ぬかの大事であり、その信頼にお応えすることが大切だからです。

 .

Lsse0104c-sまして九州・沖縄や東北・北海道などの遠方から心臓手術を受けに来て下さる場合などには「友あり遠方より来る」という心境で、

財政事情が許すなら交通費を何とかしてあげたいところですが自分の力ではどうにもならないため、

せめて距離のハンデを治療やもてなしの心で少しでも埋める努力をしています。

 .

◾️コネやカネより大切なもの

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185065040私の恩師たちは患者さんに育てて頂いたという気持ちを大切にせよと教えてくれました。

たしかに、気持ちや感動の前にはコネやカネは小さい存在なのです。

 .

心臓手術のご相談があるとき、形式的なことは気にしないでこちらへご連絡ください。

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執筆:米田 正始
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【第二十六号】 新型インフルエンザ第二波にご注意

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【第二十六号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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寒い日が続きますが、皆さんお元気でしょうか

最近新聞やネットで新型インフルエンザの第二波が流行し、今回は昨年とは違い

、大人を直撃し危険なときがあるという報道がされました。

心臓病の患者さんには通常よりしっかりした予防策が望ましいため、お知らせい

たします。

私のホームページのお知らせのところの「5.新型インフルエンザの第二波にご注

意を」をご覧ください。

http://www.masashikomeda.com/web/2011/01/news5newflu.html

私の実家の診療所、一般内科の外来でも風邪ひきはこのところ多いのですが、今

流行し始めた新型は普通とは違うタイプですので、一層ご注意ください。

このお知らせページの以前の記事もご参照ください。お役に立てれば幸いです。

平成23年1月25日

米田正始 拝

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Copyright (c) 2009 心臓血管情報WEB
http://www.masashikomeda.com
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5.新型インフルエンザの第二波にご注意を

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皆さんお元気でしょうか

Health_0044

最近以下のような報道があり、心臓病の患者さんには通常よりしっかりした予防策が望ましいため、お知らせいたします。

私の実家の診療所、一般内科の外来でも風邪ひきはこのところ多いのですが、普通とは違うタイプには一層ご注意ください。

このお知らせページの以前の記事もご参照ください。お役に立てれば幸いです。

 

米田正始 拝

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新型「第2波」、大人直撃 インフル、今後も増加懸念 高リスクの人はワクチンを

2011年1月24日   提供:共同通信社

インフルエンザが大人を中心に急激に広まってきた。検出されるウイルスは新型が中心で、新型流行の「第2波」が到来しているとみられる。国立感染症研究所は「患者増加は今後も続くだろう」と懸念しており、特に持病のある人や妊婦など重症化のリスクが高い人に、早めのワクチン接種を呼び掛けている。

全国約5千の定点医療機関から報告された患者数は10~16日の1週間で1機関当たり12・09人で、前週の5・06人の2倍以上。医療機関を受診したのは推計78万人で、20代が22%、30代が16%など20~50代を中心に大人が過半数を占める。

例年、インフルエンザの流行は子どもが中心。「通常は大人が流行の中心になることは、まずない」と同研究所感染症情報センターの安井良則(やすい・よしのり)主任研究官。原因は2009年に出現した新型だ。

新型の「第1波」は、09年8月から全国流行が始まり11月下旬にピークを迎え、10年3月ごろまで続いた。感染したのは小児や学生(5~19歳)が多く、20~50代は患者全体の30%弱だった。

安井さんによると、今シーズンの患者が多いのは、昨シーズンに新型に感染しなかったため、免疫をあまり持たない年齢層という。

過去の新型インフルエンザ発生時には、第2波の方が死者が多かった例もある。世界保健機関(WHO)によると、今シーズンは英国でも新型が流行、重症患者や死者が増え15~64歳が多い。

安井さんは「昨シーズンに比べ、流行拡大のスピードが速いのが心配だ。医療体制を破綻させないよう、かかったと思ったら大病院ではなく、近くのかかりつけ医を受診してほしい」と話している。

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インドのバルブ(弁膜症)サミットへ行って来ました

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寒い日が続きますが皆さんお元気でしょうか

この寒さの中でまことに申し訳ないのですが、私は先週末、インドのバルブサミット(弁膜症サミット)での講演のため温かいニューデリーまで行って参りました。

かつては弁膜症では欧米が先端を行っていたのですが、近年はアジアの健闘が少しずつ見えるようになりました。アジア諸国の経済力の伸展を背景にして、医学・医療の国際交流が盛んになり、アジアでも優れた心臓外科を行う基盤が整備されつつあるからと思います。

プログラムやポスターの表紙です せっかく会長のAshok Omer先生にお誘いいただいたので、今後の交流発展も考えて参加いたしました。今回のブログも専門的ですみません。一般読者には軽く流し読みして、新たな進歩が生まれつつあることだけ知っていただければ幸いです。まだまだ治せない心臓病のため涙を飲むことがある現状で、着実な進歩がなされていることを知って下さい。

インドは初めてなのですが、ニューデリー国際空港に降り立ってその立派さに感心、さすがは最近発展著しいインドと思ったのもつかの間、広い空港内の遠景がかすんでいるのです。外へでてもやはり景色がかすんでおり、霧がでるような状況ではなさそうなので、やはりこれはスモッグ!さすが現代の高度成長国インドです。中国とよく似ています。しかしスズキの小型車がたくさん走っているのはエコのために立派と思いました。

ともあれおかげで次第にノドがかゆくなり、持病のアレルギー性鼻炎もなんとなく調子が悪くなる始末。

ホテルについてシャワーをあびて一段落。考えてみれば夜中の0時に空港について、ホテルに落ち着いたのが2時半、しかし空港にも街中にも人やクルマがあふれている、元気な国です。

さてその数時間後、1月15日土曜日から翌16日日曜日までの2日間、バルブサミットは行われました。

最近の低侵襲治療とくにTAVI(カテーテルで大動脈弁を入れる治療法です)に代表されるカテーテル弁に多くの時間がさかれるとともに、内科の優れた画像診断技術とくに心エコーの最先端や、心臓外科でしか救えないような患者さんの手術についての講演と討論も活発に行われました。全インドの会だけに、欧米やアジアからも多数の内科医や外科医が招かれ、国際シンポジウムの内容をもつものでした。

1日目の冒頭のシンポジウム1にはさすがにインドらしくリウマチ性弁膜症の最近の動向と治療の現況、そして新しい治療までが論じられました。リウマチ性弁膜症は古い病気と思われがちですが、アジアではまだまだ猛威をふるっており、先進国日本といえども、昔のリウマチ病変がもとになって年齢や動脈硬化的な変化が加わった複合病変が最近多いため、その的確な診断と治療が求められています。

シンポジウム2では感染性心内膜炎(略称IE)について、自然弁のそれから人工弁のそれまで、またより効果的な内科的治療や手術についてガイドラインとともに論じられました。現在でも重症のIEはてごわいものがあり、油断できません。その中でこうした議論は重要と思いました。

血行動態に関する基礎的なレクチャーのあと、シンポジウム3では症状の無い弁膜症朝から夕方まで画像に包まれて過ごした感があります
どうするかについてのセッションでした。症状は無い、しかしそのままにしておけば後で患者に大きな負担やリスクがかかることは弁膜症でもよく知られており、ガイドラインでも最近は病気によっては無症状でも手術を勧める方向にあり、タイムリーでした。

シンポジウム4では僧帽弁疾患、シンポジウム5では大動脈弁疾患の的確な病態把握と診断、とくに画像診断の最新の知見が紹介されました。なかでも圧格差の少ない、つまり心機能の悪い患者さんの大動脈弁狭窄症の危険性、予後の悪さ、そして病気の本質を見抜いて的確な治療をすることの重要性が論じられました。エキスパートの集まりとしてレベルの高さを感じました。

コーヒーブレイクをはさんでTAVIの現況がワシントンWashington大学のDean先生によって特別講演されました。年々進化するこの領域の姿が理解できました。この先生は内科医ですが内科教授と外科教授の両方を兼ねておられ、TAVIは常に複合チーム全体で行うことの重要性を説いておられました。カテーテル関係を何でも内科でやってしまうと、若い医師が外科に来なくなり、外科が崩壊すると内科も立ち往生してしまうと日頃から心配しているだけに、わが意を得たりと思いました。

引き続いてイギリスのSt Thomas病院(有名な心筋保護液のルーツです)のVinayak Bapat先生が経心尖部のTAVIの実際を紹介されました。そのあとのシンポジウムもTAVIのさまざまな側面を論じるもので、この領域の進歩の速さを物語るものでした。あとで外科医同士で今後の外科の貢献を論じ、それなりに盛り上がりました。

そのあとで開会のセレモニーとショーがあり、これが今回の出張での唯一の遊び時間となりました。滞在時間のうち寝る時間と食べる時間を除けば遊びはこの1時間だけというのは、インドも日本以上に勤勉な国になったのではと感じました。21世紀はインドと中国だという意見を思い出し、日本ものんびりしていると危ないと思いました。

二日目は朝から僧帽弁形成術のロボット手術がライブ中継され、そのあと、Eクリップというカテーテルでの簡易型弁形成の講演がシカゴ大学のFeldman先生によって行われました。

シンポジウム7では人工弁のさまざまな問題、血栓や感染などが論じられました。

シンポジウム8は僧帽弁閉鎖不全症のセッションでニューヨークのAasha Gopal先生が最新の3Dエコーを多用した、より正確で情報量の多い心エコーの講演をされました。外科手術では不肖私、米田正始が虚血性僧帽弁閉鎖不全症複雑弁形成術を実際の症例をもとにして解説しました。後尖のテザリングをともなう虚血性僧帽弁閉鎖不全症はこれまで形成が難しいと言われていましたが、それへの解決策ができたことを報告し、ありがたいコメントをいくつも戴きました。

さらに弁膜症に合併しがちな難治性心房細動とくに巨大左房例に対する心房縮小メイズ手術の実例を紹介し、使ってみたいというご意見やご質問を多数いただき、光栄に思いました。

それから先ほどのFeldman先生がカテーテルによる僧帽弁形成術を特別講演されました。主にEクリップによる簡略な形成のお話しでしたが、このデバイスは出来ては消えて行くカテーテルでの弁形成デバイスで生き残った珍しいもので、一部の患者さんにしか使えないとはいえ、うまく活用すれば治療成績の向上に役立つと思いました。

インドらしい美味なランチのあとでTAVIのライブがあり、さらにシンポジウム9では僧帽弁狭窄症、シンポジウム10では三尖弁閉鎖不全症が論じられました。僧帽弁狭窄症ではカテーテルによる弁切開が多く論じられ、症例を選べば役立つものと改めて思いました。ただカテーテルでの形成はかなり不十分であり、心房細動も治せず脳梗塞などの合併症も長期間には起こり得るため、カテーテルにこだわりすぎると外科手術なら長期間元気に暮らせるはずのものが、そうできないという結果に終わるケースも出てくる心配があり、やはり上記のように、総合チームで検討するのが良いと思いました。

そのあとでGopal先生による3Dエコーの特別講演と実例供覧があり、今後の治療・手術の成績向上に必ず役に立つと確信しました。

最後にFeldman先生がカテーテルによる僧帽弁置換術の歴史が紹介され、先人たちのたゆまぬ努力の跡に感心しました。しかし現在のテクノロジーおよび内科と外科の協力のもとでなら次第に実現の方向に進むと思いました。

二日間ぎっしりの内容で皆さんお疲れの様子でしたが、内容的にも盛況だったため、来年はより本格的にやりましょうということでお開きになりました。

2011年1月16日

米田正始 拝 (サミットが終わって、ホテルにてコーヒー休憩しながら)

 

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